(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
供給される水を加熱して予熱温水とする太陽熱温水器と、供給される水及び前記太陽熱温水器から供給される予熱温水の少なくとも一方を加熱する給湯器と、を有する太陽熱給湯システムに用いられ、前記太陽熱温水器から供給される予熱温水及び当該予熱温水と冷水とが混合された混合水の少なくとも一方を検出対象水とし、当該検出対象水の流量に応じた出力を行う流量センサと、当該流量センサから得られた出力と流量値との相関データを記憶した相関データ記憶手段と、当該流量センサから出力が得られた場合に、前記相関データ記憶手段により記憶された相関データに基づいて、流量値を算出する流量算出手段と、前記太陽熱温水器により加熱される前の水温を検出する第1温度センサと、前記検出対象水の温度を検出する第2温度センサと、を備え、前記第1温度センサ及び前記第2温度センサからの信号値並びに前記流量算出手段により算出された流量値に基づき、前記太陽熱温水器の加熱によって前記給湯器における加熱の際に削減できた削減熱量を算出する削減熱量算出装置において、
前記第2温度センサにより検出される温度に対応する補正係数を記憶した補正係数記憶手段をさらに備え、
前記流量算出手段は、前記流量センサから出力が得られた場合に、当該出力から前記相関データに基づいて算出される流量値が所定流量値以下であるとき、前記第2温度センサにより検出される温度に対応する補正係数を前記補正係数記憶手段から抽出すると共に、前記相関データ記憶手段により記憶された相関データに加えて、前記補正係数記憶手段から抽出された補正係数に基づいて、流量値を算出し、当該出力から前記相関データに基づいて算出される流量値が所定流量値以下でないとき、前記補正係数記憶手段に記憶される補正係数に基づくことなく、その流量値を算出結果とする
ことを特徴とする削減熱量算出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、流量センサは、流量値に応じた出力を行うことが知られている。しかし、本件発明者らは、この出力が流体温度に依存して変化することを見出した。すなわち、本件発明者らは、温度が異なれば同じ流量であっても、流量センサからの出力が異なることを見出した。このため、流体温度を流量算出に考慮していない特許文献1に記載の太陽熱給湯システムでは流量の計測精度が悪く証書化の要件を満たさなくなってしまう可能性があった。
【0007】
なお、上記では証書化を例にして問題を挙げたが、特に証書化に限らず、削減熱量を算出するにあたり精度よく流量を計測したい他の場合(例えば削減熱量の表示内容をより正確にした場合)であっても共通する問題である。
【0008】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、削減熱量を算出するために流量をより精度良く計測することが可能な削減熱量算出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の削減熱量算出装置は、供給される水を加熱して予熱温水とする太陽熱温水器と、供給される水及び太陽熱温水器から供給される予熱温水の少なくとも一方を加熱する給湯器と、を有する太陽熱給湯システムに用いられ、太陽熱温水器から供給される予熱温水及び当該予熱温水と冷水とが混合された混合水の少なくとも一方を検出対象水とし、当該検出対象水の流量に応じた出力を行う流量センサと、当該流量センサから得られた出力と流量値との相関データを記憶した相関データ記憶手段と、当該流量センサから出力が得られた場合に、相関データ記憶手段により記憶された相関データに基づいて、流量値を算出する流量算出手段と、太陽熱温水器により加熱される前の水温を検出する第1温度センサと、検出対象水の温度を検出する第2温度センサと、を備え、第1温度センサ及び第2温度センサからの信号値並びに流量算出手段により算出された流量値に基づき、太陽熱温水器の加熱によって給湯器における加熱の際に削減できた削減熱量を算出する削減熱量算出装置において、第2温度センサにより検出される温度に対応する補正係数を記憶した補正係数記憶手段をさらに備え、流量算出手段は、流量センサから出力が得られた場合に、
当該出力から相関データに基づいて算出される流量値が所定流量値以下であるとき、第2温度センサにより検出される温度に対応する補正係数を補正係数記憶手段から抽出すると共に、相関データ記憶手段により記憶された相関データに加えて、補正係数記憶手段から抽出された補正係数に基づいて、流量値を算出
し、当該出力から相関データに基づいて算出される流量値が所定流量値以下でないとき、補正係数記憶手段に記憶される補正係数に基づくことなく、その流量値を算出結果とすることを特徴とする。
【0010】
この削減熱量算出装置によれば、流量センサから出力が得られた場合に、第2温度センサにより検出される温度に対応する補正係数を抽出すると共に、相関データに加えて抽出された補正係数に基づいて、流量値を算出する。ここで、本件発明者らは、流量センサの出力が流体温度の影響を受けることを見出した。すなわち、本件発明者らは、温度が異なれば同じ流量であっても、流量センサからの出力が異なることを見出した。よって、相関データのみならず、温度に対応する補正係数に基づいて流量値を算出することで温度影響分を加味して流量値を算出することとなり、より正確に流量値を算出することができる。従って、削減熱量を算出するために流量をより精度良く計測することができる。
さらに、流量センサから出力が得られた場合に、当該出力から相関データに基づいて算出される流量値が所定流量値以下でないとき、補正係数に基づくことなくその流量値を算出結果とする。ここで、本件発明者らは、流体流量がある程度大きい領域では、流量センサからの出力が流体温度に影響を受け難くなることを見出した。このため、流量値が所定流量値以下でないときには、補正係数を用いることなく流量値を算出することで、処理の簡素化を図ることができる。
【0011】
また、本発明の削減熱量算出装置において、補正係数記憶手段は、補正係数を、さらに流量センサから出力に対応させて記憶しており、流量算出手段は、流量センサから出力が得られた場合に、当該出力と第2温度センサにより検出される温度とに対応する補正係数を補正係数記憶手段から抽出すると共に、相関データ記憶手段により記憶された相関データに加えて、補正係数記憶手段から抽出された補正係数に基づいて、流量値を算出することが好ましい。
【0012】
この削減熱量算出装置によれば、流量センサから出力が得られた場合に、当該出力と第2温度センサにより検出される温度とに対応する補正係数を抽出すると共に、相関データに加えて抽出された補正係数に基づいて流量値を算出する。ここで、本件発明者らは、流量センサの出力が流体温度の影響を受けると共に、その影響度合いが流量に応じて異なることを見出した。このため、第2温度センサにより検出される温度のみならず、流量に応じた補正係数を記憶し、流量算出時には温度と流量とに基づいて補正係数を抽出することで、より一層精度良く流量を計測することができる。
【0013】
また、本発明の削減熱量算出装置において、補正係数記憶手段は、補正係数を、さらに流量センサの取付姿勢毎に記憶しており、流量算出手段は、流量センサから出力が得られた場合に、流量センサの取付姿勢と第2温度センサにより検出される温度とに対応する補正係数を補正係数記憶手段から抽出すると共に、相関データ記憶手段により記憶された相関データに加えて、補正係数記憶手段から抽出された補正係数に基づいて、流量値を算出することが好ましい。
【0014】
この削減熱量算出装置によれば、流量センサから出力が得られた場合に、流量センサの取付姿勢と第2温度センサにより検出される温度とに対応する補正係数を抽出すると共に、相関データに加えて抽出された補正係数に基づいて流量値を算出する。ここで、本件発明者らは、流量センサの出力が流体温度の影響を受けると共に、その影響度合いが流量センサの取付姿勢に応じて異なることを見出した。このため、第2温度センサにより検出される温度のみならず、流量センサの取付姿勢に応じた補正係数を記憶し、流量算出時には温度と流量センサの取付姿勢とに基づいて補正係数を抽出することで、より一層精度良く流量を計測することができる。
【0015】
また、本発明の削減熱量算出装置において、補正係数記憶手段は、流量センサの取付姿勢毎に調整値を記憶しており、流量算出手段は、流量センサから出力が得られた場合に、第2温度センサにより検出される温度に対応する補正係数を補正係数記憶手段から抽出すると共に、相関データ記憶手段により記憶された相関データに加えて、補正係数記憶手段から抽出された補正係数、及び、取付姿勢に応じた調整値に基づいて、流量値を算出することが好ましい。
【0016】
この削減熱量算出装置によれば、流量センサから出力が得られた場合に、第2温度センサにより検出される温度に対応する補正係数を抽出すると共に、相関データに加えて、抽出された補正係数と調整値とに基づいて流量値を算出する。ここで、本件発明者らは、流量センサの出力が流体温度の影響を受けると共に、その影響度合いが流量センサの取付姿勢に応じて異なることを見出した。このため、取付姿勢に応じた調整値を記憶しておき、流量の算出時に調整値を用いて取付姿勢毎の差を調整することにより、より一層精度良く流量を計測することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、削減熱量を算出するために流量をより精度良く計測することが可能な削減熱量算出装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、本実施形態に係る削減熱量算出装置を説明するのに先立って、太陽熱給湯システム1を説明する。
図1は、本実施形態に係る削減熱量算出装置を含む太陽熱給湯システムの構成図である。太陽熱給湯システム1は、水道管11と、冷水管12と、温水管13と、混合水管14と、加熱水管15とを備えている。さらに、太陽熱給湯システム1は、太陽熱温水器2と、混合弁3と、給湯器4とを備えている。
【0022】
水道管11は、台所、洗面所、風呂、トイレ等の住宅用水道器具の各々に水を供給するものである。また、水道管11は、分岐されており、分岐箇所に冷水管12が接続されている。冷水管12は、水道管11を介して流れてくる冷水を太陽熱温水器2まで導くものである。
【0023】
太陽熱温水器2は、集熱器21と熱媒配管22と貯湯槽23とを有している。集熱器21は、日当たりの良い住宅等の屋根などに設置され太陽熱を取り込んで熱媒を温めるものである。また、熱媒配管22は、集熱器21と貯湯槽23とを接続するものであり内部に熱媒が流れる構成となっている。熱媒は熱媒配管22を介して集熱器21と貯湯槽23とを循環する。貯湯槽23は、冷水管12からの冷水を導入すると共に、熱媒配管22を通じて流れてくる暖められた熱媒により冷水を加熱して予熱温水とし、貯湯しておくものである。
【0024】
温水管13は、貯湯槽23からの予熱温水を給湯器4側に供給するための配管である。この温水管13の終端には混合弁3が設置されており、温水管13からの予熱温水は混合弁3の温水流入口31から混合弁3に供給される。また、冷水管12は接続点Aにて分岐しており、冷水管12からの冷水は混合弁3の冷水流入口32を介して混合弁3に供給可能となっている。混合弁3は、上記の如く流入する予熱温水と冷水とを混ぜて混合水とする。
【0025】
混合水管14は、混合弁3の混合水流出口33と給湯器4とを接続する配管であり、混合水はこの配管14を介して混合弁3から給湯器4に供給される。なお、本実施形態において混合弁3は、混合水の温度が所定の温度となるように、温水と冷水との混合割合を自動的に調整する自動温度調節機能付湯水混合弁であるが、混合弁3の構成はこれに限られるものではない。
【0026】
給湯器4は、例えば、ガスバーナと熱交換器とを備えており、利用者等によって定められた温度の加熱水(即ち、湯)を生成するものである。この給湯器4は、住宅に設けられた給湯器用リモコン等と接続されており、給湯器用リモコン等から受信する制御信号に基づいて、例えば、電源オン、電源オフ、及び、生成する湯の温度が設定される。
【0027】
加熱水管15は、給湯器4と給湯側であるシャワー口等とを接続する配管である。給湯器4にて暖められた加熱水は、この加熱水管15を介して利用者等に供給されることとなる。
【0028】
以上の構成により、太陽熱給湯システム1は、水道管11からの冷水を太陽熱を利用した太陽熱温水器2によって予熱温水とし、これを給湯器4に供給するので給湯器4にて使用される燃料費や排出される二酸化炭素量等を削減することができる。
【0029】
次に、本実施形態に係る削減熱量算出装置5について説明する。削減熱量算出装置5は、太陽熱温水器2の利用によって削減された熱量を算出して積算表示するものであって、第1温度センサ51と、第2温度センサ52と、流量センサ53と、演算表示器54と、家内表示器55とを備えている。なお、削減熱量算出装置5は、削減された熱量に加えて、削減されたガス料金や二酸化炭素排出量を算出して積算表示する機能を備えていてもよい。
【0030】
第1温度センサ51は、冷水管12に配置され、太陽熱温水器2により加熱される前の水温、すなわち冷水の温度を検出するものである。第2温度センサ52は、温水管13に配置され、太陽熱温水器2により加熱されてから給湯器4に供給されるまでの予熱温水の温度を検出するものである。
【0031】
流量センサ53は、温水管13に配置され、太陽熱温水器2から給湯器4に供給される予熱温水の流量を検出するものである。流量センサ53は、例えば羽根車式のものであり、予熱温水が流れてくることにより羽根車が回転し、この回転数に応じた数のパルスを出力する構成となっている。なお、以下において流量センサ53は羽根車式のものとして説明するが、これに限らず、流量センサ53は他の構成のものであってもよい。
【0032】
演算表示器54は、太陽熱温水器2の利用により削減された熱量や二酸化炭素量を演算して積算表示する機能を有したものである。なお、表示機能に関しては、家内表示器55にも搭載されており、削減された熱量や二酸化炭素量は、演算表示器54及び家内表示器55に表示されることとなる。
【0033】
図2は、本実施形態に係る演算表示器54を示す構成図である。
図2に示すように、演算表示器54は、マイクロプロセッサ(MPU)54aを備えている。MPU54aは、予め定められたプログラムに従って動作するものであり、CPU54a1と、ROM54a2と、RAM54a3とを備えている。
【0034】
CPU54a1は、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを実行するものである。ROM54a2は、CPU51aにて実行するプログラム等を格納した読み出し専用のメモリである。RAM54a3は、各種のデータを格納すると共にCPU51aの処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリである。
【0035】
また、本実施形態においてROM51a2には、太陽熱温水器2の利用により削減された熱量、燃料費及び二酸化炭素量を算出するためのプログラムが格納されている。このため、このプログラムを実行するCPU54a1は、削減された燃料費や二酸化炭素量を算出することとなる。
【0036】
さらに、削減熱量算出装置5は、メモリ部54bと、表示部54cと、インタフェース部54dとを備えている。
【0037】
メモリ部54bは、電力供給が断たれた場合でも、格納された各種データの保持が可能な記録媒体であり、CPU54a1の処理作業に必要な各種格納エリアを有する電気的消去/書き換え可能なメモリ(EEPROM)等が用いられる。
【0038】
表示部54cは、LCD、LED等が用いられ、例えば、削減熱量算出装置5の本体部に利用者等が目視可能に設けられている。この表示部54cは、CPU54a1により算出された削減熱量、削減二酸化炭素量、及び削減燃料費等の各種表示を行う。なお、本実施形態において表示部54cは、野外に設置された削減熱量算出装置5の本体部に設けられているが、これに限らず、宅内表示器55のように家内に設けられてもよい。
【0039】
インタフェース部54dは、第1及び第2温度センサ51,52や流量センサ53と電気的に接続されており、各種センサ51〜53とMPU54aとの交信を可能としたものである。
【0040】
図3は、
図1及び
図2に示した演算表示器54の機能ブロック図である。
図3に示すように、演算表示器54は、相関データ記憶部(相関データ記憶手段)54eと、流量算出部(流量算出手段)54fと、削減量算出部54gとを備えている。
【0041】
相関データ記憶部54eは、流量センサ53から得られた出力(本実施形態ではパルス数)と流量値との相関データを記憶したものである。具体的に相関データ記憶部54eは、流量センサ53から得られたパルス数から流量値を算出するための算出式を相関データとして記憶している。
【0042】
流量算出部54fは、流量センサ53から出力が得られた場合に、相関データ記憶部54eにより記憶された相関データに基づいて、流量値を算出するものである。
【0043】
削減量算出部54gは、太陽熱温水器2の利用により削減された熱量、二酸化炭素量、及び燃料費等の各種削減量を算出するものである。具体的に削減量算出部54gは、流量算出部54fにより算出された流量値と、第1温度センサ51により検出された冷水の温度と、第2温度センサ52により検出された予熱温水の温度とから、削減された熱量を算出する。また、削減量算出部54gは、削減熱量と給湯効率や燃料単価とから削減燃料費を算出する。同様に、削減量算出部54gは、削減熱量と給湯効率や単位燃料当たりの二酸化炭素発生量とから、削減二酸化炭素量を算出する。
【0044】
ここで、削減熱量を正確に算出するためには、正確に予熱温水の流量を算出する必要がある。しかし、本件発明者らは、流量センサ53の出力が流体温度に依存して変化することを見出した。すなわち、本件発明者らは、温度が異なれば同じ流量であっても、流量センサ53からの出力が異なることを見出した。このため、削減熱量を正確に算出するために流体温度は非常に重要な要素となる。
【0045】
図4は、流体温度20℃を基準(変化量0%)として流体温度を変化させたときの出力変化量を示すグラフであり、流量が1.5l/minである場合の例を示している。なお、
図4において流量センサ53の取付姿勢は、垂直立ち上げとなっている。
【0046】
図4に示すように、流量が1.5l/minである場合には以下の変化を示す。すなわち、流体温度が5℃であるときには流体温度が20℃である場合と比較して流量センサ53からの出力が約1.5%減少してしまう。また、流体温度が40℃であるときには流体温度が20℃である場合と比較して流量センサ53からの出力が約1%増加してしまう。同様に、流体温度が60℃であるとき、及び流体温度が80℃であるときには流体温度が20℃である場合と比較して流量センサ53からの出力が約2%増加してしまう。
【0047】
このように、流量センサ53の出力は、正確に1.5l/minを示すとは限らず、流体である予熱温水の温度によって変化することとなる。
【0048】
図5は、流体温度20℃を基準(変化量0%)として流体温度を変化させたときの出力変化量を示すグラフであり、流量が5.0l/minである場合の例を示している。なお、
図5においても流量センサ53の取付姿勢は、垂直立ち上げとなっている。
【0049】
図5に示すように、流量が5.0l/minである場合には以下の変化を示す。すなわち、流体温度5℃、40℃、60℃及び80℃のいずれの場合においても、流体温度が20℃である場合と比較して、出力変化量は略0%となっている。このため、出力変化量は
図4に示した例よりも小さくなっている。よって、流量センサ53の出力は流体である予熱温水の温度によって変化するものの、その変化量は、流体の流量が大きくなるほど小さくなるといえる。このため、削減量を正確に算出するために流体温度のみならず、そのときの流体の流量も重要な要素となる。
【0050】
そこで、本実施形態に係る削減熱量算出装置5は、演算器54内に補正係数記憶部(補正係数記憶手段)54hを備えている。補正係数記憶部54hは、第2温度センサ52により検出される予熱温水の温度、及び、流量センサ53により検出される流量のそれぞれに対応した補正係数を記憶したものである。
【0051】
図6は、
図3に示した補正係数記憶部54hに記憶される補正係数を示した図である。
【0052】
図6に示すように、補正係数記憶部54hは、所定の温度幅を有した温度区分毎、及び、所定の流量幅を有した流量区分毎に補正係数を記憶している。具体的に補正係数記憶部54hは、7.5℃以下、7.5℃超15℃以下、15℃超25℃以下、25℃超35℃以下、35℃超50℃以下、50℃超70℃以下、及び、70℃超の7つの温度区分それぞれに対応して補正係数を記憶している。また、補正係数記憶部54hは、1.75l/min以下、1.75l/min超2.25l/min以下、2.25l/min超2.75l/min以下、2.75l/min超3.25l/min以下、3.25l/min超3.75l/min以下、3.75l/min超4.25l/min以下、及び、4.25l/min超の7つの流量区分それぞれに対応して補正係数を記憶している。すなわち、補正係数記憶部54hは、7つの温度区分と7つの流量区分とのそれぞれに対応した49の補正係数を記憶している。
【0053】
より具体的に説明すると補正係数記憶部54hは、流量が1.75l/min以下である場合、以下の補正係数を記憶している。すなわち、補正係数記憶部54hは、流体である予熱温水の温度が7.5℃以下であるときに、補正係数を「1.013」と記憶し、予熱温水の温度が7.5℃を超15℃以下の範囲内である場合、補正係数を「1.007」と記憶している。同様に、補正係数記憶部54hは、予熱温水の温度が15℃を超25℃以下の範囲内である場合、補正係数を「1.000」と記憶し、予熱温水の温度が25℃を超35℃以下の範囲内である場合、補正係数を「0.995」と記憶している。また、補正係数記憶部54hは、予熱温水の温度が35℃を超50℃以下の範囲内である場合、補正係数を「0.990」と記憶し、予熱温水の温度が50℃を超70℃以下の範囲内である場合、補正係数を「0.987」と記憶している。さらに、補正係数記憶部54hは、予熱温水の温度が70℃を上回る場合、補正係数を「0.987」と記憶している。
【0054】
また、補正係数記憶部54hは、流量が1.75l/min超2.25l/min以下である場合についても上記と同様に補正係数を記憶しており、具体的には温度が低い方から順に、「1.009」「1.005」「1.000」「0.997」「0.994」「0.992」「0.994」と記憶している。さらに補正係数記憶部54hは、他の流量区分についても同様に記憶している。
【0055】
このような補正係数を記憶しているため、本実施形態において流量算出部54fは、第2温度センサ52により検出される予熱温水の温度がどの温度区分に属するのかを確定すると共に、流量センサ53により検出される流量がどの流量区分に属するのかを確定し、属する温度区分及び流量区分に対応する補正係数を抽出する。そして、流量算出部54fは、流量センサ53からの出力と相関データ記憶部54eにより記憶される相関データのみならず、補正係数に基づいて、予熱温水の流量を算出することとなる。
【0056】
なお、上記流量の算出にあたり流量算出部54fは、流量センサ53からの出力と相関データとから流量値を算出し、この流量値に補正係数を乗じて流量値を補正することにより予熱温水の流量を算出してもよいし、流量センサ53からの出力に補正係数を乗じて補正出力とし、補正出力と相関データとから流量を算出するようにしてもよい。
【0057】
また、上記において補正係数は、温度区分及び流量区分毎に区分され、マトリクス状のデータとして記憶されているが、これに限るものではない。例えば補正係数記憶部54hは、予熱温水の温度を変数に有する補正係数算出式を、流量区分毎に記憶しておいてもよいし、予熱温水の流量を変数に有する補正係数算出式を、温度区分毎に記憶しておいてもよい。さらに補正係数記憶部54hは、両者を変数に有する補正係数算出式を有していてもよい。
【0058】
図7は、流体温度20℃を基準(変化量0%)として流体温度を変化させたときの出力変化量を示すグラフであり、流量が1.5l/minである場合の例を示している。なお、
図7において流量センサ53の取付姿勢は、水平設置となっている。
【0059】
図7に示すように、流量センサ53の取付姿勢が水平設置となっている場合、流体温度を変化させたときの出力変化量は
図4に示した垂直立ち上げの場合と異なってしまう。具体的に流体温度が5℃であるときには流体温度が20℃である場合と比較して流量センサ53からの出力が約2.0%減少してしまう。また、流体温度が40℃であるときには流体温度が20℃である場合と比較して、流量センサ53からの出力が約2%増加してしまう。同様に、流体温度が60℃であるときには、流体温度が20℃である場合と比較して、流量センサ53からの出力が約4%強増加してしまい、流体温度が80℃であるときには流体温度が20℃である場合と比較して、流量センサ53からの出力が約7%弱増加してしまう。
【0060】
このように、流量センサ53の取付姿勢によっては出力が変化してしまうこととなる。このため、本実施形態において演算表示器54は、姿勢情報入力部54iを備えている。姿勢情報入力部54iは、流量センサ53の取付姿勢に関する取付姿勢情報を入力するものであって、例えば外部からのスイッチ操作や、送信器からの信号を受信することにより取付姿勢情報を入力するものである。姿勢情報入力部54iを介して入力された姿勢情報は、演算表示器54に記憶される。
【0061】
また、これに対応して補正係数記憶部54hは、流量センサ53の取付姿勢毎に補正係数のマトリクスデータを記憶している。すなわち、補正係数記憶部54hは、
図6に示すデータを垂直立ち上げにおける補正係数のマトリクスデータとして記憶すると共に、水平設置や垂直立ち下げなどにおける補正係数のマトリクスデータについても記憶していることとなる。水平設置や垂直立ち下げなどにおける補正係数データは、
図6に示したものと同様であり、補正係数の数値が異なるものである。
【0062】
このような構成を備えるため、本実施形態において流量算出部54fは、姿勢情報入力部54iに入力された取付姿勢の情報を読み込み、予熱温水の温度及び流量に加えて、姿勢情報に基づいて、補正係数を抽出することとなる。これにより、より一層精度良く流量を計測することができるからである。
【0063】
次に、フローチャートを参照して本実施形態に係る削減熱量算出装置5の動作を説明する。
図8は、本実施形態に係る削減熱量算出装置5の動作を示すフローチャートであり、流量を算出するまでの処理を示している。
【0064】
図8に示すように、まず演算表示部54は流量が発生したか否かを判断する(S1)。この処理において演算表示部54は、流量センサ53から流量パルスが入力された場合に、流量が発生したと判断する。流量が発生していないと判断した場合(S1:NO)、発生したと判断されるまで、この処理が繰り返される。一方、流量が発生したと判断した場合(S1:YES)、流量算出部54fは、流量センサ53から出力される流量パルスから予熱温水の流量値を算出する(S2)。
【0065】
次いで、流量算出部54fは、ステップS2にて得られた流量値が所定流量値(例えば5.0l/min)以下であるか否かを判断する(S3)。流量値が所定流量値以下であると判断した場合(S3:YES)、流量算出部54fは、ステップS2にて算出した流量値が属する流量区分を判定する(S4)。すなわち、流量算出部54fは、上記した7つの流量区分のうち、いずれの流量区分に属するかを確定することとなる。
【0066】
次に、流量算出部54fは、第2温度センサ52から出力される温度情報を入力する(S5)。次いで、流量算出部54fは、ステップS5にて得られた温度情報から、温度区分を判定する(S6)。すなわち、流量算出部54fは、上記した7つの温度区分のうち、いずれの温度区分に属するかを確定することとなる。
【0067】
その後、流量算出部54fは、姿勢情報を読み込む(S7)。姿勢情報は、姿勢情報入力部54iを介して予め入力され、演算表示器54内に記憶されている。流量算出部54fは、この記憶された姿勢情報を読み込むこととなる。
【0068】
次いで、流量算出部54fは、ステップS4にて判定した流量区分、ステップS6にて判定した温度区分、及び、ステップS7にて読み込んだ姿勢情報から、補正係数を抽出する(S8)。次いで、流量算出部54fは、ステップS2において算出した流量値に対して補正係数を乗じることにより流量値を補正し、これを最終的な流量値とする(S9)。その後、
図8に示す処理は終了する。
【0069】
ところで、ステップS2において算出した流量値が所定流量値以下でないと判断した場合(S3:NO)、流量算出部54fは、補正係数を抽出することなく、
図8に示す処理は終了する。すなわち、補正係数を用いることなく、ステップS2において算出した流量値を最終的な算出結果とすることとなる。これは、
図5から明らかなように、流量が5.0l/min以上となると、流体温度による出力変化量が略ゼロとなるためであり、補正係数を乗じる必要が無くなるためである。
【0070】
このようにして、本実施形態に係る削減熱量算出装置5によれば、流量センサ53から出力が得られた場合に、第2温度センサ52により検出される温度に対応する補正係数を抽出すると共に、相関データに加えて抽出された補正係数に基づいて、流量値を算出する。ここで、本件発明者らは、流量センサ53の出力が流体温度の影響を受けることを見出した。すなわち、本件発明者らは、温度が異なれば同じ流量であっても、流量センサ53からの出力が異なることを見出した。よって、相関データのみならず、温度に対応する補正係数に基づいて流量値を算出することで温度影響分を加味して流量値を算出することとなり、より正確に流量値を算出することができる。従って、削減熱量を算出するために流量をより精度良く計測することができる。
【0071】
また、流量センサ53から出力が得られた場合に、当該出力と第2温度センサ52により検出される温度とに対応する補正係数を抽出すると共に、相関データに加えて抽出された補正係数に基づいて流量値を算出する。ここで、本件発明者らは、流量センサの出力が流体温度の影響を受けると共に、その影響度合いが流量に応じて異なることを見出した。このため、第2温度センサ52により検出される温度のみならず、流量に応じた補正係数を記憶し、流量算出時には温度と流量とに基づいて補正係数を抽出することで、より一層精度良く流量を計測することができる。
【0072】
また、流量センサ53から出力が得られた場合に、流量センサ53の取付姿勢と第2温度センサ52により検出される温度とに対応する補正係数を抽出すると共に、相関データに加えて抽出された補正係数に基づいて流量値を算出する。ここで、本件発明者らは、流量センサ53の出力が流体温度の影響を受けると共に、その影響度合いが流量センサ53の取付姿勢に応じて異なることを見出した。このため、第2温度センサ52により検出される温度のみならず、流量センサ53の取付姿勢に応じた補正係数を記憶し、流量算出時には温度と流量センサ53の取付姿勢とに基づいて補正係数を抽出することで、より一層精度良く流量を計測することができる。
【0073】
また、流量センサ53から出力が得られた場合に、当該出力から相関データに基づいて算出される流量値が所定流量値以下でないとき、補正係数に基づくことなくその流量値を算出結果とする。ここで、本件発明者らは、流体流量がある程度大きい領域では、流量センサ53からの出力が流体温度に影響を受け難くなることを見出した。このため、流量値が所定流量値以下でないときには、補正係数を用いることなく流量値を算出することで、処理の簡素化を図ることができる。
【0074】
次に、本発明に係る第2実施形態を説明する。第2実施形態に係る削減熱量算出装置5は第1実施形態のものと同様のものであるが、構成及び処理内容が一部異なっている。
【0075】
まず、第1実施形態において補正係数記憶部54hは、流量センサ53の取付姿勢毎に補正係数のマトリクスデータを記憶していた。これ対して第2実施形態に係る補正係数記憶部54hは、代表となる1つの取付姿勢のみについて補正係数のマトリクスデータを記憶している。さらに、第2実施形態に係る補正係数記憶部54hは、代表となる1つの取付姿勢についての補正係数を他の取付姿勢に合致するように調整するための調整値を記憶している。流量算出部54fは、この調整値により取付姿勢毎の補正係数マトリクスデータの記憶を不要としている。すなわち、本実施形態において補正係数記憶部54hが垂直立ち上げ(代表となる1つの取付姿勢)の補正係数のマトリクスデータのみを記憶している場合、この補正係数データに調整値を乗じることにより、例えば水平設置用や垂直立ち下げ用のデータに変換することができる。
【0076】
図9は、第2実施形態に係る削減熱量算出装置5の動作を示すフローチャートであり、流量を算出するまでの処理を示している。なお、
図9においてステップS11〜S16の処理は、
図8に示したステップS1〜S6の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0077】
ステップS17において流量算出部54fは、ステップS4にて判定した流量区分、及びステップS6にて判定した温度区分から、補正係数を抽出する(S17)。なお、第2実施形態では、この時点において姿勢情報を入力しておらず、まず対象となる補正係数を抽出する。
【0078】
次いで、流量算出部54fは姿勢情報を読み込む(S18)。その後、流量算出部54fは、代表となる1つの取付姿勢と、ステップS18において読み込んだ姿勢情報とが異なるか否かを判断する(S19)。異ならないと判断した場合(S19:NO)、処理はステップS21に移行する。
【0079】
異なると判断した場合(S19:YES)、流量算出部54fは、ステップS18において読み込んだ姿勢情報に合致するように、ステップS17において抽出した補正係数を調整値に基づいて調整する(S20)。次いで、流量算出部54fは、ステップS12において算出した流量値に対して補正係数を乗じることにより流量値を補正し、これを最終的な流量値とする(S21)。その後、
図9に示す処理は終了する。
【0080】
このようにして、第2実施形態に係る削減熱量算出装置5によれば、第1実施形態と同様に、削減熱量を算出するために流量をより精度良く計測することができる。また、流量算出時には温度と流量とに基づいて補正係数を抽出することで、より一層精度良く流量を計測することができる。また、流量値が所定流量値以下でないときには、補正係数を用いることなく流量値を算出することで、処理の簡素化を図ることができる。
【0081】
さらに、第2実施形態によれば、流量センサ53から出力が得られた場合に、第2温度センサ52により検出される温度に対応する補正係数を抽出すると共に、相関データに加えて、抽出された補正係数と調整値とに基づいて流量値を算出する。ここで、本件発明者らは、流量センサ53の出力が流体温度の影響を受けると共に、その影響度合いが流量センサ53の取付姿勢に応じて異なることを見出した。このため、取付姿勢に応じた調整値を記憶しておき、流量の算出時に調整値を用いて取付姿勢毎の差を調整することにより、より一層精度良く流量を計測することができる。
【0082】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0083】
例えば、本実施形態において太陽熱温水器2は、貯湯槽23に蓄えられた冷水を熱媒により加熱するものであるが、これに限らず、水道管11からの冷水を集熱器21まで導いて冷水を加熱するものであってもよい。また、太陽熱温水器2は、集熱器21と貯湯槽23とを備えるものに限らず、貯湯槽23を備えない一体型の太陽熱温水器2であってもよい。
【0084】
また、本実施形態において流量センサ53は羽根車式のものを例に説明したが、これに限らず、他のタイプの流量センサであっても、
図4に示すように流量出力が流体温度によって変化するものであれば適用可能である。
【0085】
また、本実施形態では太陽熱温水器2により加熱された予熱温水が給湯器4に供給される太陽熱給湯システム1を例に説明したが、これに限らず、太陽熱温水器2から給湯器4を介することなく直接需要者側に供給される太陽熱給湯システムに適用されてもよい。さらには、太陽熱温水器2により加熱された予熱温水を給湯器4を介して供給すると共に直接需要者側に供給する双方の機能を備えた太陽熱給湯システムに適用されてもよい。
【0086】
また、本実施形態に係る太陽熱給湯システム1においては、混合弁3を1つ備えているが、弁はこれに限らず複数備えていてもよい。さらには、混合弁3以外の弁を備えていてもよい。
【0087】
さらに、本実施形態に係る流量センサ53は、太陽熱温水器2から供給される予熱温水を検出対象水とし、当該検出対象水の流量に応じた出力を行うものであるが、これに限らず、予熱温水と冷水とが混合された混合水を検出対象水とし、この検出対象水の流量に応じた出力を行うように配置されていてもよい。