【実施例1】
【0012】
以下、添付図面1〜3を参照して、本発明による直線作動機のシリーズの実施例1の構成及び作用を説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0013】
まず、
図1(a)に、最も基本的な形態の直線作動機10を示す。直線作動機10は、モータ12、減速機部14、直線作動部16を具えている。モータ12の回転が、回転軸18、これと連結される入力軸20、歯車減速機構22を通じて、出力軸24に伝達され、ブラケット26を介して減速機部14に連結された直線作動部16を作動させる。直線作動部16はボールねじであり、ねじ軸28、ナット30、これらにより直線運動を行うロッド32、及びこれらを収容する外筒34からなる。
なお、本実施例において、直線作動機10は、モータと直線作動部が減速機の同一側面上に連結された折返し型装置である。
【0014】
上記のような構成を有する直線作動機10は、複数のサイズにおいて、複数の駆動推力、複数の速度から、用途に応じて適宜選択できるように構成される。一例として、表2に、各サイズが、3つの駆動推力、3段階の速度から構成されている本実施例のシリーズを示す。駆動推力・速度のバリエーションは、このように少なくとも3段階ずつあることが好ましい。また、駆動推力・速度はいずれも2倍の間隔に設定されているが、速度は1.5〜2倍の間隔であればよい。
なお、表中、「シリンダサイズ」とは、減速機部+直線作動部を組合わせたもののサイズを指す。
各サイズにおいて、減速機部のケース及びブラケットを共通とすれば、部品点数の削減に資する。
【0015】
【表2】
【0016】
上記のような本実施例のシリーズにおいては、モータ容量W、推力F、速度Vの関係を、W(n1×F、n2×V)(n1=1、0.5、0.25、n2=0.5、1、1.5、2等の実数)で表したとき、同一のシリンダサイズ内において、基準となる速度V(n2=1)におけるn1×n2の値が、表内の対角線上における他のn1×n2の値と等しいか、又はそれ以下となる場合に、モータ容量Wが同一となるように構成されている。
例えば、サイズCを見ると、
(1)W(1F、0.5V):推力(n1=1)、速度(n2=0.5)
(2)W(0.5F、1V):推力(n1=0.5)、速度(n2=1)
(3)W(0.25F、2V):推力(n1=0.25)、速度(n2=2)
のそれぞれについて、n1×n2≦0.5となっており、モータ容量は共通である。
また、それぞれn1×n2≦0.25、n1×n2≦1.0となる上下の対角線上の速度と推力の組み合わせについても、同様にモータ容量は共通となる。
【0017】
モータ容量が同一であるということは、インターフェースが共通であるということを意味するから、このような構成を採ることにより、アダプタ共通化を実現することができる。すなわち、各サイズのモータに取付けるインターフェースは3種類あり、直線作動部との心間距離の関係から、最も小さいインターフェースをアダプタの両サイドのフランジに採用し、アダプタを共通化する。他の2種のインターフェースが必要な場合は、それぞれに対応したアタッチメントを減速機側及び/又はモータ側に配して、モータ・減速機部・直線作動部を連結する。
【0018】
以下、図面を参照しつつ具体的に説明すると、直線作動機10において、モータ12と減速機部14は、アダプタ36と減速機部側面に設けられた取付孔38を介して連結されている(
図1(b))。アダプタ36は、減速機側フランジ36aとモータ側フランジ36bとを有し、減速機側フランジ36a内にオイルシール40を具えている。これにより、減速機の潤滑油が漏出しないよう封止することができる。
【0019】
このアダプタ36は、シリーズ全体において共通化する。すなわち、1種のみを準備し、シリーズを構成する各種の直線作動機において共通して使用できるものとする。そして、このために、各種のモータと減速機部の組合せに対応できるよう、さらにアタッチメント42を4種用意する。アタッチメントは、アダプタと組合わせて用いられアダプタとモータとを連結するモータ側用アタッチメント(42M)2種(a、b)、アダプタと減速機部とを連結する減速機側用アタッチメント(42G)1種(c)、アダプタを用いずアタッチメントのみを介してモータと減速機部を連結させる場合に用いる直結用(42A)1種(d)の合計4種あることが好ましい。なお、モータ側用アタッチメントは、単独で、(アダプタ無しの)直結用アタッチメントとしても用いることができる。
【0020】
これにより、
図2〜4に示すように、モータと減速機部の連結手段は、両者のサイズと対応関係によって、さらに、アダプタとモータとの間及び/又はアダプタと減速機部との間にアタッチメントを介在させる方法、或いは、アタッチメントのみを用いる方法、さらには、アダプタやアタッチメントを介することなく、取付孔38を介してモータを減速機部に直結させる方法等、適宜各種の方法を採ることができる。
すなわち、
図2に示すように、モータと減速機部の連結手段は、
I)アダプタのみ
II)アダプタ+モータ側アタッチメント
III)アダプタ+減速機側アタッチメント
IV)アダプタ+モータ側アタッチメント+減速機側アタッチメント
V)アダプタ無し
VI)アダプタ無し+アタッチメントのみ
の6通り(アダプタ有り4通り+アダプタ無し2通り)あることになる。
【0021】
従って、アダプタは、シリーズにおいて共通して用いることができるものが1種、アタッチメントは同様に4種用意されるが、シリーズ全体に渡って、すなわち表2に示される組合せの全てにおいて網羅的に、このアダプタ及び/又はアタッチメントが常に必ず用いられなければならないわけではない。モータと減速機部の組合せにより直結させることができる場合を除き、シリーズ内において必要な範囲で共有化されればよく、従来1つのシリーズにおいて複数種のアダプタが準備されていたのに対し、1つのシリーズにおいて1種のアダプタと4種のアタッチメントを用意すればよく、これらを組合わせることによって工数・在庫・コスト削減が可能となるという点が、必要十分条件である。
このように、本発明の構成によって、表2のようにモータの容量や規格に応じて都度設計を行うことによるコストや在庫の増大という課題を解決することができる。
【0022】
さらに、表2のように多種の組合せから選択できるように構成されていることから、直線作動部の長寿命化を望む場合には、適宜そのような選択をすることも可能である。例えば、サイズC、推力F、速度Vの場合、直線作動部の寿命は1.0であるが、半分の推力でよければ、モータ容量は半分のものにサイズダウンすることができ、荷重は2分の1、直線作動部の寿命は8倍となる(上方向矢印)。この場合、減速機ケース、直線作動部、アダプタは共通のものを用いることができ、変更する必要がない。
また、推力、速度、モータ容量を維持したい場合には、サイズアップを選択することにより、シリンダ容量に対して荷重が2分の1となり、直線作動部の寿命を8倍とすることができる(下方向矢印)。
このように、幅広い選択肢を提供し得る本発明のシリーズにより、部品共通化によるコスト削減の他、直線作動部の長寿命化も図ることができる。
【実施例2】
【0023】
本発明の直線作動機は、さらに、安全装置を具えることができ、その一例が、トルクリミッタ方式による安全装置50である(
図5)。基本的構成は直線作動機10と同じであるから、符号は
図1記載のものに従い、説明は省略する。
一対の摩擦板52a、52bに挟まれた歯車54の中心孔にブシュ56が配され、皿ばね58が適当な予圧を持ってハブ60に圧縮挿入され、調整ナット62によって抜け止めされている。駆動源の回転が、歯車を介してねじ軸28に伝えられた際、ねじ軸28に過負荷が作用し、皿ばね58の予圧を超えると、摩擦板52a、52bがスリップして、これに挟まれた歯車が空転する。これにより、ねじ軸28への動力伝達が遮断され、モータ12の焼損や直線作動部16の破損を防止する。
トルクリミッタは調整式であり、直線作動部16の定格推力の150〜200%で摩擦板がスリップするよう、皿ばね荷重が調整される。従って、表2記載のような各推力に応じて、安全装置が作動する限界荷重を適宜設定することができる。
【0024】
安全装置は、
図6に示すような、推力検知ばね方式の安全装置70によることもできる。直線作動部16のブラケット26内に、ばねホルダ72、74を軸方向に摺動可能なように嵌入し、これらの間に、ばねユニット76を適当な予圧を持って圧縮挿入し、ばねストッパ78によって抜け止めし、止めナット80によりねじ軸に固定する。
ロッド32は、その押出力がばねの予圧を超えると、ねじ軸を介してばねを圧縮して後退し、逆に負荷を牽引すると、同様にばねを圧縮して前進する。そこで、ロッド推力が許容最大値に達したか否かを検知するため、ばねホルダ外径部にガイド82を介して取付けられたストライカ84を、ブラケット26に設けた孔から突出させ、ブラケット26に取付けたケース86内のリミットスイッチを作動させる。
ストライカは調整式であり、定格推力の150〜200%でリミットスイッチを作動させるように設定される。ばねユニット76は、ばね寿命を考慮して、ばねの種類、組合せ、カラーの厚みの組合せにより、その許容撓み量を最大撓み量の約75%に制限し、定格推力の150%の荷重が作用した状態において適正量(2.5〜5.0mm)に撓むことが必要である。
このように、トルクリミッタ方式による場合と同様、表2記載のような各推力に応じて、安全装置が作動する限界荷重を適宜設定することができる。
【0025】
以上見てきたとおり、本発明の直線作動機のシリーズによれば、部品、特にアダプタの共通化により、都度設計排除による工数削減、在庫やコストの低減を図ることができる上、ユーザーは多数の選択肢の中から用途に応じて、モータ・減速機・直線作動部の適宜の組合せを選択することができ、また直線作動部の長寿命化を図ることが可能となる。