特許第5871652号(P5871652)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5871652アルコール中の溶存酸素除去方法、アルコール供給装置並びに洗浄液供給装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871652
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】アルコール中の溶存酸素除去方法、アルコール供給装置並びに洗浄液供給装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/90 20060101AFI20160216BHJP
   C07C 31/10 20060101ALI20160216BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   C07C29/90
   C07C31/10
   H01L21/304 647A
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-37379(P2012-37379)
(22)【出願日】2012年2月23日
(65)【公開番号】特開2013-173678(P2013-173678A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2014年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】村山 雅美
(72)【発明者】
【氏名】菅原 広
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一重
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−142804(JP,A)
【文献】 特開2011−141234(JP,A)
【文献】 特開平4−149001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 29/00−35/52
H01L 21/00−21/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物の洗浄と乾燥の少なくともいずれかに用いられるアルコールを供給するアルコール供給装置であって、
水素が吸蔵された水素吸蔵金属触媒が充填された溶存酸素除去装置と、前記溶存酸素除去装置の後段に位置し、前記溶存酸素除去装置において溶存酸素の除去の際に発生した水を除去する水分除去装置と、を有し、前記溶存酸素除去装置は、アルコールを前記水素吸蔵金属触媒と接触させることによって、前記アルコールから前記溶存酸素を除去する、アルコール供給装置。
【請求項2】
前記溶存酸素除去装置で得られた液のアルコール濃度を測定するアルコール濃度測定装置と、
前記水分除去装置をバイパスするバイパスラインと、
前記アルコール濃度測定装置で測定されたアルコール濃度が所定値以上である場合には、前記溶存酸素除去装置で得られた液が前記バイパスラインを通り、前記アルコール濃度測定装置で測定されたアルコール濃度が前記所定値を下回った場合には、前記溶存酸素除去装置で得られた液が前記水分除去装置を通るように前記バイパスラインを制御する制御手段と、
を有する、請求項に記載のアルコール供給装置。
【請求項3】
物の洗浄に用いられる洗浄液の供給装置であって、
水素が吸蔵された水素吸蔵金属触媒が充填された溶存酸素除去装置と、純水供給手段と、前記溶存酸素除去装置及び前記純水供給手段の後段に位置し、前記溶存酸素除去装置で得られたアルコールと前記純水供給手段から供給された純水との混合液を貯蔵する混合水貯留槽と、を有し、前記溶存酸素除去装置は、アルコールを前記水素吸蔵金属触媒と接触させることによって、前記アルコールから溶存酸素を除去する洗浄液供給装置。
【請求項4】
物の洗浄に用いられる洗浄液の供給装置であって、
アルコール供給手段と、純水供給手段と、アルコール供給手段及び純水供給手段の後段に位置し、前記アルコール供給手段から供給されたアルコールと前記純水供給手段から供給された純水との混合液を貯蔵する混合水貯留槽と、前記混合水貯留槽の後段に位置し、水素が吸蔵された水素吸蔵金属触媒が充填された溶存酸素除去装置と、を有し、前記溶存酸素除去装置は、アルコールを前記水素吸蔵金属触媒と接触させることによって、前記アルコールから溶存酸素を除去する洗浄液供給装置。
【請求項5】
溶存酸素を含むアルコールを水素が吸蔵された水素吸蔵金属触媒と接触させて、前記アルコールから前記溶存酸素を除去することを有するアルコール中の溶存酸素除去方法であって、前記アルコールを前記水素吸蔵金属触媒と接触させると同時に、前記水素吸蔵金属触媒に水素をさらに吸蔵させることを有する、アルコール中の溶存酸素除去方法。
【請求項6】
溶存酸素を含むアルコールを水素が吸蔵された水素吸蔵金属触媒と接触させて、前記アルコールから前記溶存酸素を除去することを有するアルコール中の溶存酸素除去方法であって、前記アルコールから前記溶存酸素を除去した後、前記溶存酸素の除去の際に発生した水を除去することを有する、アルコール中の溶存酸素除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール中の溶存酸素除去装置及び方法、並びにこの装置を用いたアルコール供給装置及び洗浄液供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程で使用される超純水は、基板表面の酸化を防止するため、真空脱気や膜脱気により超純水中の溶存酸素(DO)濃度を例えば10ppb以下、さらには1ppb以下まで低減させることが要求されている。
【0003】
半導体製造工程では超純水以外にも、多くの薬液が使用されている。特にイソプロピルアルコール(IPA)は、基板洗浄後の再洗浄液や乾燥工程の乾燥液として多く使用される。現在のところIPA中の溶存酸素濃度は管理されていない。しかしながら、半導体デバイスの高度化、微細化、高密度化が進むにつれて、IPA中の溶存酸素が半導体デバイスの予期せぬ酸化を起こし、歩留りを低下させることも考えられる。したがって、IPA中の溶存酸素を低濃度まで除去することが必要となる可能性がある。
【0004】
特許文献1には、有機溶媒を含む薬液の脱気方法が開示されている。この方法によれば、薬液をポリオレフィン製の均質膜の片側に通液し、均質膜の他方側を減圧することによって、薬液中の酸素が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−105797号公報
【特許文献2】特開2010−214321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法で低濃度まで溶存酸素の脱気を行うには、真空ポンプの容量を大きくしたり、処理量を少なくしたりすることが必要である。このことは、装置の設置スペース及び電力使用量の増加につながる。
【0007】
本発明は、簡易な構成でアルコール中の溶存酸素を効率的に除去することが可能なアルコール中の溶存酸素除去装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアルコール中の溶存酸素除去方法、溶存酸素を含むアルコールを水素吸蔵金属触媒と接触させて、アルコールから溶存酸素を除去する。本発明のアルコール中の溶存酸素除去方法は、アルコールから溶存酸素を除去した後、溶存酸素の除去の際に発生した水を除去することを有する。
【0009】
溶存酸素を含むアルコールを水素が吸蔵された水素吸蔵金属触媒に通液することによって、水素が吸蔵された水素吸蔵金属触媒の表面では、アルコール中の溶存酸素と水素吸蔵金属触媒に吸蔵されている水素とから水が生成される(2H2+O2→2H2O)。この化学反応を利用することによって、アルコール中の溶存酸素が簡易な構成で効率的に除去される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な構成でアルコール中の溶存酸素を効率的に除去することが可能なアルコール中の溶存酸素除去装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態に係るアルコール供給装置の概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る洗浄液供給装置の概略構成を示す模式図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係る洗浄液供給装置の概略構成を示す模式図である。
図4】実施例1で用いた装置の概略構成を示す模式図である。
図5】実施例2で用いた装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係るアルコール供給装置(IPA供給装置1)の概略構成を示す模式図である。
【0013】
本実施形態に係るIPA供給装置1は、半導体デバイスの乾燥に用いられるIPA乾燥液を半導体デバイス製造装置101に供給する。IPA供給装置1は、IPAを貯留するIPA貯留槽2と、IPA貯留槽2にIPAを供給するIPA供給ライン11と、IPA乾燥液を半導体デバイス製造装置101に供給するIPA供給ライン3と、半導体デバイス製造装置101から排出されるIPA乾燥液をIPA貯留槽2に戻す回収ライン4と、を有している。IPA供給ライン3上にはIPA乾燥液中の溶存酸素を除去するための溶存酸素除去装置5と、その後段に位置する水分除去装置6と、が備えられている。本実施形態のIPA供給装置1は、半導体デバイスの乾燥以外にも、IPAを物の洗浄と乾燥の少なくともいずれかに用いる場合に広く適用することができる。
【0014】
溶存酸素除去装置5は、容器内に水素吸蔵金属触媒51を充填したものである。以下の記載では、水素吸蔵金属触媒51は、IPA乾燥液または後述する洗浄液を通水する前に水素がすでに吸蔵されている水素吸蔵金属触媒を意味する。水素吸蔵金属触媒51を充填する際には、あらかじめ水素が吸蔵された水素吸蔵金属触媒を容器内に設置してもよいし、水素が吸蔵されていない水素吸蔵金属を容器内に設置した後、IPA乾燥液または後述する洗浄液を通水する前に、触媒に水素ガスを接触させたり、水素を含む水などを通水させたりして、水素を水素吸蔵金属に吸蔵させてもよい。水素吸蔵金属は、圧力や温度を利用して比較的簡単に水素を吸蔵する。水素吸蔵金属は、可逆的に水素を放出することもできる。溶存酸素を含むIPA乾燥液を水素吸蔵金属触媒51と接触させることによって、水素吸蔵金属触媒51の表面で、IPA乾燥液中の溶存酸素と水素吸蔵金属触媒51に吸蔵されている水素とが2H2+O2→2H2Oの反応を生じ、IPA乾燥液中の溶存酸素の少なくとも一部が除去される。水素吸蔵金属としては、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、バナジウム(Mg)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)などが利用可能であり、白金族金属が好ましい。特に、白金若しくはパラジウム、または白金とパラジウムの合金は触媒活性が高く、水素吸蔵金属として好ましい。
【0015】
水素吸蔵金属触媒51の形態は特に限定されるものではないが、活性炭やイオン交換樹脂などの担体に水素吸蔵金属を担持させた形態が好ましい。特に、担体として、陰イオン交換樹脂などの陰イオン交換体、または繊維状若しくはモノリス状の陰イオン交換体を使用するのが好ましい。
【0016】
溶存酸素除去装置5を通過し溶存酸素が取り除かれたIPA乾燥液は、溶存酸素の分解により生成した水分や、水素吸蔵金属触媒51から溶出した水分により、含有する水分が増加する(IPA濃度が低下する)。高精度の管理が求められる半導体製造においては、IPA濃度の変動が歩留りに影響する可能性があり、特に高純度のIPA供給が要求される半導体乾燥工程ではIPA中の水分が歩留りに大きな影響を及ぼす可能性がある。そのため、IPA供給装置1は、溶存酸素除去装置5において溶存酸素の除去などの際に発生した水を除去する水分除去装置6を有している。水分除去装置6は、溶存酸素除去装置5の後段に位置しており、溶存酸素が除去されたIPAに含まれる水を除去する。
【0017】
水分除去装置6の構成は特に限定されないが、脱水膜を有する構成が好ましく、溶存酸素除去装置5を通過したIPA乾燥液中の水分を浸透気化法(PV法;Pervaporation)または蒸発気化(VP法;Vapor Permeation)により除去するのが好ましい。脱水膜は、例えば、透水性膜モジュールとして構成することができる。膜としてはポリイミド系、セルロース系、ポリビニルアルコール系等の高分子系若しくはゼオライト等の無機系素材からなる膜を用いることができる。機械的強度、脱水性能等の観点から、ゼオライトを素材とする膜を脱水膜として用いることが好ましい。
【0018】
溶存酸素除去装置5で得られた液は、IPA乾燥液中の水分濃度が所定値を超えた場合(IPA乾燥液中のIPA濃度が所定値を下回った場合)にのみ、溶存酸素除去装置5の後段に設けられた水分除去装置6を通るようになっている。すなわち、上記の所定の場合にのみ、IPA乾燥液中の水分が除去されて、IPA乾燥液の水分濃度(IPA濃度)が調整されるようになっている。このため、IPA供給装置1は、溶存酸素除去装置5で得られた液のIPA濃度を測定するアルコール濃度測定装置7(アルコール濃度計)と、水分除去装置6をバイパスするバイパスライン8と、を有している。アルコール濃度測定装置7は溶存酸素除去装置5の後段(溶存酸素除去装置5と水分除去装置6との間)に設置されている。バイパスライン8はIPA供給ライン3から分岐して水分除去装置6をバイパスして、再びIPA供給ライン3に合流している。
【0019】
溶存酸素除去装置5を通過したIPA乾燥液の、アルコール濃度測定装置7で測定された水分濃度が所定値を超えた場合(IPA乾燥液中のIPA濃度が所定値を下回った場合)、溶存酸素除去装置5で得られた液は水分除去装置6に通され、IPA濃度が所定値内に調整されて、半導体デバイス製造装置101に供給される。溶存酸素除去装置5を通過したIPA乾燥液の水分濃度が所定値以下である場合(IPA乾燥液中のIPA濃度が所定値以上である場合)は、溶存酸素除去装置5で得られた液は水分除去装置6と並列に設けられたバイパスライン8に通され、半導体デバイス製造装置101に供給される。バイパスライン8の制御手段19は、バイパスライン8とIPA供給ライン3とにそれぞれ設けられた弁91,92と、測定されたIPA濃度に基づいて弁91,92を制御する制御ユニット(図示せず)と、を有している。
【0020】
IPA供給装置1は、水素吸蔵金属触媒51に水素を吸蔵させる水素添加装置9を有している。溶存酸素を含むIPA乾燥液を水素吸蔵金属触媒51と接触させることによって触媒に吸蔵された水素がIPA乾燥液中の溶存酸素と反応して水を生成するため、水素吸蔵金属触媒51の水素吸蔵量は減少する。そのため、水素が消費された水素吸蔵金属触媒51にさらに水素を添加して、触媒に水素を再吸蔵させる。これにより触媒を有効に活用することができる。
【0021】
水素の添加方法は特に限定されないが、水素吸蔵金属触媒51(溶存酸素除去装置5)の前段(溶存酸素除去装置5とIPA貯留槽2との間)でガス溶解膜(図示せず)を介して水素ガスをIPA乾燥液中に添加する方法や、水素水や水素ガスで触媒を再生する方法などがある。前者はIPA乾燥液に水素を添加する方法であり、後者は水素吸蔵金属触媒51に直接水素を添加する方法である。いずれの方法でも、IPAを水素吸蔵金属触媒51と接触させるのと同時に、水素吸蔵金属触媒51に水素が吸蔵される。
【0022】
半導体デバイス製造装置101から排出されたIPA乾燥液に含まれる不純物を除去し、IPA乾燥液を精製するため、回収ライン4上にはIPA精製装置10が備えられている。IPA精製装置10は、溶存酸素除去装置5と水分除去装置6との間に設けることもできるし、水分除去装置6と半導体デバイス製造装置101との間に設けることもできる。IPA精製装置10としては、金属やイオンを主に除去する必要がある場合は、イオン交換樹脂やイオン吸着膜を用いることが好ましく、微粒子を主に除去する必要がある場合は、フィルター(精密ろ過フィルター)を用いるのが好ましい。
〔第2の実施形態〕
図2は、本発明の第2の実施形態に係る洗浄液供給装置の概略構成を示す模式図である。
【0023】
本実施形態に係る洗浄液供給装置21は、IPAと純水とを混合して洗浄液を製造し、半導体デバイス製造装置101に供給する。
【0024】
洗浄液供給装置21は、IPAと純水とを混合して所定のIPA濃度の洗浄液を製造し貯留する混合水貯留槽22と、混合水貯留槽22にIPAを供給するIPA供給ライン31(アルコール供給手段)と、混合水貯留槽22に純水を供給する純水供給ライン32(純水供給手段)と、洗浄液を半導体デバイス製造装置101に送る洗浄液供給ライン23と、半導体デバイス製造装置101から排出される洗浄液を混合水貯留槽22に戻す回収ライン24と、を有している。IPA供給ライン31上にはIPA中の溶存酸素を除去するための溶存酸素除去装置25が備えられている。混合水貯留槽22は溶存酸素除去装置25及び純水供給ライン32の後段に位置しており、溶存酸素除去装置25で得られたIPAと純水供給ライン32から供給された純水との混合液を貯蔵する。混合水貯留槽22は、IPA濃度を測定するアルコール濃度測定装置27(アルコール濃度計)を備えている。本実施形態の洗浄液供給装置21は、半導体デバイスの洗浄以外にも、IPAと純水との混合液を物の洗浄と乾燥の少なくともいずれかに用いる場合に広く適用することができる。
【0025】
溶存酸素除去装置25の構成は第1の実施形態の溶存酸素除去装置5と同様であり、水素吸蔵金属の形態、材料、作動原理も第1の実施形態の溶存酸素除去装置5と同様とすることができる。
【0026】
溶存酸素除去装置25を通過し溶存酸素が取り除かれたIPAは、溶存酸素の分解により生成した水分や、触媒から溶出した水分により、含有する水分が増加する。このため、第1の実施形態と同様の水分除去装置を設けることができる(図示せず)。
【0027】
水素添加装置29及び洗浄液精製装置30についても、第1の実施形態と同様に設けることができる。これらの装置の構成及び作動方法は第1実施形態の水素添加装置9及びIPA精製装置10と同様とすることができる。
【0028】
〔第3の実施形態〕
図3は、本発明の第3の実施形態に係る洗浄液供給装置の概略構成を示す模式図である。
【0029】
本実施形態に係る洗浄液供給装置41は、IPAと純水とを混合して洗浄液を製造し、半導体デバイス製造装置101に供給する。
【0030】
洗浄液供給装置41は、IPAと純水とを混合して所定のIPA濃度の洗浄液を製造し貯留する混合水貯留槽42と、混合水貯留槽42にIPAを供給するIPA供給ライン51(アルコール供給手段)と、混合水貯留槽42に純水を供給する純水供給ライン52(純水供給手段)と、洗浄液を半導体デバイス製造装置101に送る洗浄液供給ライン43と、半導体デバイス製造装置101から排出される洗浄液を混合水貯留槽42に戻す回収ライン44と、を有している。洗浄液供給ライン43上には洗浄液中の溶存酸素を除去するための溶存酸素除去装置45と、その後段に位置する水分除去装置46と、が備えられている。混合水貯留槽42はIPA供給ライン51と純水供給ライン52の後段に位置しており、IPA供給ライン51から供給されたIPAと純水供給ライン52から供給された純水との混合液を貯蔵する。溶存酸素除去装置45は混合水貯留槽42の後段に位置している。本実施形態の洗浄液供給装置41は、半導体デバイスの洗浄以外にも、IPAと純水との混合液を物の洗浄と乾燥の少なくともいずれかに用いる場合に広く適用することができる。
【0031】
溶存酸素除去装置45の構成は第1の実施形態の溶存酸素除去装置5と同様であり、水素吸蔵金属の形態、材料、作動原理も第1の実施形態の溶存酸素除去装置5と同様とすることができる。
【0032】
溶存酸素除去装置45を通過し溶存酸素が取り除かれた洗浄液は、溶存酸素の分解により生成した水分や、触媒から溶出した水分により、含有する水分が増加する。IPAと純水の混合液を洗浄に用いる場合は、IPA濃度が2〜3%程度の低濃度溶液からIPA濃度が50%程度の比較的高濃度の溶液まで、様々な溶液が用いられる。特に、高濃度の溶液が用いられる場合、水分の除去が必要となる場合もある。このため、第1の実施形態と同様の水分除去装置46が設けられている。
【0033】
アルコール濃度測定装置47、バイパスライン48、バイパスライン48の制御手段59、水素添加装置49及び洗浄液精製装置50についても、第1の実施形態と同様に設けることができる。これらの装置の構成及び作動方法は第1実施形態のアルコール濃度測定装置7、バイパスライン8、バイパスライン8の制御手段19、水素添加装置9及びIPA精製装置10と同様とすることができる。水素添加装置49は、本実施形態では溶存酸素除去装置45に直接接続されているが、IPA供給ライン51または純水供給ライン52に設けることもできるし、混合水貯留槽42と溶存酸素除去装置45の間に設けることもできる。洗浄液精製装置50は、洗浄液供給ライン43上に設けることもできる。溶存酸素除去装置45及び水分除去装置46は回収ライン44上に設けることもでき、洗浄液供給ライン43と回収ライン44の双方に設けることもできる。
【0034】
〔実施例1〕
IPA濃度5%のIPA水溶液を、図4に示す装置に流量100mL/minで通液した。水素吸蔵金属触媒は、パラジウム(ナノ粒子)を陰イオン交換体に担持させたものを用いた。あらかじめ水素吸蔵金属触媒に飽和水素水を通水し、十分に水素を吸蔵させた後、5%IPAを水素吸蔵金属触媒に通液した。
【0035】
表1に、水素吸蔵金属触媒に通液する前後の5%IPA水溶液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素計(オービスフェア社製、model3600)を用いて測定した結果を示す。溶存酸素濃度は、水素吸蔵金属触媒に通液する前は1.3ppmであったのに対し、水素吸蔵金属触媒に通液した後には8.0ppbまで低減された。水素吸蔵金属触媒に通液する前後のIPA濃度を、アルコール濃度計(アタゴ社製、PR-60PA)を用いて測定したところ、水素吸蔵金属触媒に通液する前は5.1%であり、水素吸蔵金属触媒に通液した後は5.0%であった。
〔実施例2〕
IPA濃度6%のIPA水溶液を、図5に示す装置に流量100mL/minで通液した。水素をガス溶解膜で6%IPA水溶液に溶解させ、その後、6%IPA水溶液を水素吸蔵金属触媒に通液した。水素吸蔵金属触媒は、パラジウム(ナノ粒子)を陰イオン交換体に担持させたものを用いた。
【0036】
表1に、水素吸蔵金属触媒に通液する前後の6%IPA水溶液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素計(オービスフェア社製、model3600)を用いて測定した結果を示す。溶存酸素濃度は、水素吸蔵金属触媒に通液する前は3.3ppmであったのに対し、水素吸蔵金属触媒に通液した後には4.6ppbまで低減された。水素吸蔵金属触媒に通液する前後のIPA濃度を、アルコール濃度計(アタゴ社製、PR-60PA)を用いて測定したところ、水素吸蔵金属触媒に通液する前は6.4%であり、水素吸蔵金属触媒に通液した後は6.2%であった。
【0037】
【表1】
【符号の説明】
【0038】
1 IPA供給装置
2 IPA貯留槽
5,25,45 溶存酸素除去装置
6,46 水分除去装置
7,27,47 アルコール濃度測定装置
8,48 バイパスライン
9,29,49 水素添加装置
10,30,50 IPA精製装置
21,41 洗浄液供給装置
22,42 混合水貯留槽
51 水素吸蔵金属触媒
101 半導体デバイス製造装置
図1
図2
図3
図4
図5