特許第5871663号(P5871663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871663
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】バイナリ発電装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F01K 25/10 20060101AFI20160216BHJP
   F01K 9/00 20060101ALI20160216BHJP
   F01K 13/02 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   F01K25/10
   F01K25/10 W
   F01K25/10 S
   F01K25/10 Q
   F01K9/00 A
   F01K13/02 E
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-45471(P2012-45471)
(22)【出願日】2012年3月1日
(65)【公開番号】特開2013-181456(P2013-181456A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和雄
(72)【発明者】
【氏名】松田 治幸
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】西村 真
(72)【発明者】
【氏名】松村 昌義
(72)【発明者】
【氏名】足立 成人
(72)【発明者】
【氏名】成川 裕
【審査官】 佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−133446(JP,A)
【文献】 特開昭57−091385(JP,A)
【文献】 特開昭59−068505(JP,A)
【文献】 特開昭62−111095(JP,A)
【文献】 特開昭62−206260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 25/00−10
F01K 13/02
F01K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水を熱源として作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器で蒸発した作動媒体の蒸気を膨張させて回転駆動力を発生する膨張機と、前記膨張機で膨張した作動媒体の蒸気を液体に凝縮する凝縮器とを備え、前記回転駆動力を用いて発電機を駆動するバイナリ発電装置であって、前記蒸発器から排出された温水を冷却する熱交換器へ冷却水を供給および前記熱交換器から冷却水を回収するための接続部を、前記凝縮器の冷却水出口側に設けたバイナリ発電装置を制御するに際し、
前記バイナリ発電装置に設けられた蒸発器において、所望のピンチ温度差を維持して排出された温水を、前記バイナリ発電装置に設けられた熱交換器において、所望の温度以下となるように冷却し系外の利用先へ供給すると共に、前記熱交換器の出口における温水の温度を計測して、前記凝縮器からの冷却水の流量を制御することにより、前記蒸発器から排出された温水を冷却する
ことを特徴とするバイナリ発電装置の制御方法。
【請求項2】
温水を熱源として作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器で蒸発した作動媒体の蒸気を膨張させて回転駆動力を発生する膨張機と、前記膨張機で膨張した作動媒体の蒸気を液体に凝縮する凝縮器とを備え、前記回転駆動力を用いて発電機を駆動するバイナリ発電装置であって、前記蒸発器から排出された温水を冷却する熱交換器が設けられ、前記凝縮器の冷却水出口側から冷却水を前記熱交換器へ供給するように構成されているバイナリ発電装置を制御するに際し、
前記バイナリ発電装置に設けられた蒸発器において、所望のピンチ温度差を維持して排出された温水を、前記バイナリ発電装置に設けられた熱交換器において、所望の温度以下となるように冷却し系外の利用先へ供給すると共に、前記熱交換器の出口における温水の温度を計測して、前記凝縮器からの冷却水の流量を制御することにより、前記蒸発器から排出された温水を冷却する
ことを特徴とするバイナリ発電装置の制御方法。
【請求項3】
前記バイナリ発電装置に、凝縮器の冷却水を冷却する冷却装置を設けておき、
前記冷却装置の冷却容量から凝縮器において必要な冷却容量を減算した量よりも少ない分を、前記熱交換器での冷却で用いるようにすることを特徴とする請求項1又は2に記載のバイナリ発電装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイナリ発電装置に関する技術であって、特に、このバイナリ発電装置の発電出力を低下させないで暖房または/および給湯の用途等に熱供給することができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策のため化石燃料の代替エネルギーとして再生可能エネルギーの導入が図られており、太陽光発電システム、風力発電システム、マイクロ水力発電システムが着目されている。さらに、蒸気タービンを回転させるほどの熱量を持たない低温の熱源(たとえば地熱)から低沸点の作動媒体の熱サイクルへ熱を移動し、この循環サイクル内で作動媒体を用いた発電を行うバイナリ発電システムも着目されている。
【0003】
このような発電システムにおいて、暖房または/および給湯の用途等に熱供給する技術も開発され、特開2006−292273号公報(特許文献1)は、このような熱電供給システムの一例を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−292273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したような熱電供給システムにおいて、熱源である温水と作動媒体(冷媒液)との間で熱交換する蒸発器が設けられる。この蒸発器の1次側に温水を供給することにより、2次側の冷媒液が、温水から受けた熱で蒸発され冷媒ガスとなる。冷媒液を蒸発させた温水は蒸発器の1次側出口から排出される。この蒸発器から排出された温水を所望の温度にできると、この温水を暖房または/および給湯等に使用するために供給することができる。
【0006】
しかしながら、この所望の温度は、顧客により異なる。熱供給のために顧客が要望する温度になるように、蒸発器出口における温水の温度を低めに設定すると、蒸発器内におけるピンチ温度差(1次側の温水と2次側の冷媒液との温度差の最小値)が所望の温度差以下になってしまい、冷媒液を十分に蒸発させることができなくなり、発電出力が低下する可能性がある。このため、従来の熱電供給システムでは、発電出力を低下させないことと、顧客が要望する温度まで温水の温度を低下させることとを、両立させることができない。
【0007】
さらに、斯かる発電装置のみを顧客へ提供する場合、言い換えれば、発電装置がパッケージ化されて製造販売される場合においては、上述のように顧客が要望する温水の温度が異なるため、熱供給のための温水を取り出すようには一般的には設計されていない。このため、発電装置の購入後に、発電出力を低下させないように、所望の温度まで温水の温度を低下させることができたとしても、そのためには、大幅な改造工事が必要となり、実現することは容易ではない。
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、発電出力を低下させることなく、かつ、設備導入後であっても大幅に装置を改造する必要なく、バイナリ発電装置における熱源である温水を要望する温度にして供給することができる、バイナリ発電装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係るバイナリ発電装置およびその制御方法は、以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明のある局面に係るバイナリ発電装置は、温水を熱源として作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器で蒸発した作動媒体の蒸気を膨張させて回転駆動力を発生する膨張機と、前記膨張機で膨張した作動媒体の蒸気を液体に凝縮する凝縮器とを備え、前記回転駆動力を用いて発電機を駆動する。このバイナリ発電装置において、前記蒸発機か
ら排出された温水を冷却する熱交換器へ冷却水を供給および前記熱交換器から冷却水を回収するための接続部を、前記凝縮器の冷却水出口側に設けたことを特徴とする。
【0010】
また、このようなバイナリ発電装置において、前記蒸発器から排出された温水を冷却する熱交換器が設けられ、前記凝縮器の冷却水出口側から冷却水を前記熱交換器へ供給するように構成されていることを特徴とする。
また、本発明の別の局面に係る発電装置の制御方法は、上述したバイナリ発電装置を制御するに際し、前記バイナリ発電装置に設けられた蒸発器において、所望のピンチ温度差を維持して排出された温水を、前記バイナリ発電装置に設けられた熱交換器において、所望の温度以下となるように冷却することを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記バイナリ発電装置に、凝縮器の冷却水を冷却する冷却装置を設けておき、前記冷却装置の冷却容量から凝縮器において必要な冷却容量を減算した量よりも少ない分を、前記熱交換器での冷却で用いるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記熱交換器の出口における温水の温度を計測して、前記凝縮器からの冷却水の流量を制御することにより、前記蒸発器から排出された温水を冷却するように構成することができる。
なお、本発明にかかるバイナリ発電装置の制御方法の最も好ましい形態としては、温水を熱源として作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器で蒸発した作動媒体の蒸気を膨張させて回転駆動力を発生する膨張機と、前記膨張機で膨張した作動媒体の蒸気を液体に凝縮する凝縮器とを備え、前記回転駆動力を用いて発電機を駆動するバイナリ発電装置であって、前記蒸発器から排出された温水を冷却する熱交換器へ冷却水を供給および前記熱交換器から冷却水を回収するための接続部を、前記凝縮器の冷却水出口側に設けたバイナリ発電装置を制御するに際し、前記バイナリ発電装置に設けられた蒸発器において、所望のピンチ温度差を維持して排出された温水を、前記バイナリ発電装置に設けられた熱交換器において、所望の温度以下となるように冷却し系外の利用先へ供給すると共に、前記熱交換器の出口における温水の温度を計測して、前記凝縮器からの冷却水の流量を制御することにより、前記蒸発器から排出された温水を冷却することを特徴とする。
また、本発明にかかるバイナリ発電装置の制御方法の最も好ましい別の形態としては、温水を熱源として作動媒体を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器で蒸発した作動媒体の蒸気を膨張させて回転駆動力を発生する膨張機と、前記膨張機で膨張した作動媒体の蒸気を液体に凝縮する凝縮器とを備え、前記回転駆動力を用いて発電機を駆動するバイナリ発電装置であって、前記蒸発器から排出された温水を冷却する熱交換器が設けられ、前記凝縮器の冷却水出口側から冷却水を前記熱交換器へ供給するように構成されているバイナリ発電装置を制御するに際し、前記バイナリ発電装置に設けられた蒸発器において、所望のピンチ温度差を維持して排出された温水を、前記バイナリ発電装置に設けられた熱交換器において、所望の温度以下となるように冷却し系外の利用先へ供給すると共に、前記熱交換器の出口における温水の温度を計測して、前記凝縮器からの冷却水の流量を制御することにより、前記蒸発器から排出された温水を冷却することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るバイナリ発電装置の制御方法を用いることにより、発電出力を低下させることなく、かつ、設備導入後であっても大幅に装置を改造する必要なく、バイナリ発電装置における熱源である温水を要望する温度にして供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係るバイナリ発電装置を示す図である。
図2】本発明の第2実施形態に係るバイナリ発電装置を示す図である。
図3図2における三方弁の動作を説明するための図である。
図4】本発明の第2実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係るバイナリ発電装置100およびその制御方法を、図面に基づき詳しく説明する。なお、以下の説明では、異なる実施形態であっても同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0015】
[全体構成]
図1に示すように、本実施形態に係るバイナリ発電装置100は、膨張機30で発生した回転駆動力を用いて発電機40を駆動することにより発電を行うものである。なお、以下においては、蒸発器10の熱源として用いる加熱媒体を温水として、凝縮器60の冷媒として用いる冷却媒体を水として説明する。
【0016】
図1に示すように、バイナリ発電装置100は、液体の冷媒(冷媒液)を蒸発させる蒸発器10と、この蒸発器10で蒸発した冷媒ガスを過熱(スーパーヒート)状態に加熱する過熱器20と、冷媒ガスの蒸気を膨張させて回転駆動力を発生する膨張機30と、膨張機30で膨張させられた冷媒ガスを液体に凝縮する凝縮器60と、この凝縮器60で凝縮させられた冷媒液を循環させる冷媒ポンプ70とを、閉ループ状の循環配管上に備えている。冷媒ポンプ70は、冷媒液を蒸発器10へ向けて圧送する。
【0017】
本実施形態に係るバイナリ発電装置100は、このような機器から構成される従来のバイナリ発電装置に加えて、蒸発器10の温水出口に温水出口温度調整熱交換器50(以下、出口熱交換器50と記載)を設け、その出口熱交換器50の2次側に、凝縮器60の2次側から排出された冷却水を供給するようにしたことを特徴とする。
蒸発器10および過熱器20は、いずれも熱源である温水と冷媒液との間で熱交換する機器であって、蒸発器10および過熱器20の1次側に温水を供給することにより、2次側の冷媒液が温水から受けた熱で蒸発し、さらに過熱状態まで加熱されるようになっている。本実施形態においては蒸発器10と過熱器20とを別体の機器として記載しているが、一体の熱交換器であってもよく、さらに、過熱器20を備えない構成であっても、予熱
器を備える構成であっても構わない。
【0018】
膨張機30は、冷媒ガスを膨張させることにより回転駆動する駆動部を有している。本実施形態における膨張機は、スクリュ型であっても、ラジアル型であっても、スクロール型であっても構わない。スクリュ型膨張機である場合には、駆動部としてスクリュロータを有している。このスクリュロータで発生した回転駆動力は発電機40へ伝えられ、発電機40で発電が行われる。
【0019】
凝縮器60は、水と冷媒ガスとの間で熱交換する機器であって、凝縮器60の2次側に水を供給することで1次側の冷媒ガスを凝縮できるようになっている。凝縮器60の2次側の冷却水は、冷却水ポンプ64により冷却塔62(および後述する出口熱交換器50)との間で循環されて、凝縮器60において冷媒ガスを凝縮して冷媒液へ、気相から液層へ相転移させる。
【0020】
出口熱交換器50の2次側の冷却水は、凝縮器60の2次側の冷却水が使用される。より詳しくは、凝縮器60の2次側の冷却水出口と出口熱交換器50の2次側の冷却水入口とが制御バルブ52を介して接続され、出口熱交換器50の2次側の冷却水出口と冷却塔62の入口とが接続されている。すなわち、蒸発器10から排出された温水を冷却する出口熱交換器50が設けられ、凝縮器60の冷却水出口側から冷却水を出口熱交換器50へ供給し、出口熱交換器50で温水を冷却した冷却水を冷却塔62へ回収するように構成されている。
【0021】
このように、本実施形態に係るバイナリ発電装置100は、蒸発器10における1次側から排出された温水を冷却する熱交換器として、出口熱交換器50を備える。出口熱交換器50は、温水を冷却し、顧客の要望する温度まで低下させる。この場合において、出口熱交換器50出口における温水の温度が温度計54により計測されて、この計測結果に基づいて、温水を冷却する冷却水の流量を制御バルブ52で調整することにより、出口熱交換器50出口における温水の温度が所望の温度まで冷却される。
【0022】
このとき、蒸発器10において、所望のピンチ温度差(1次側の温水と2次側の冷媒液との温度差の最小値)を維持して排出された温水が出口熱交換器50において、所望の温度以下となるように冷却される。このため、蒸発器10(および過熱器20)では、ピンチ温度差が所望の温度差以上を確保でき、冷媒液を十分に蒸発させることができるので、発電出力が低下することがない。さらに、この出口熱交換器50の2次側に供給される冷却水は凝縮器60の冷却水を流用しているので以下の制限を有する。
【0023】
冷却塔62(冷却装置)の冷却容量から凝縮器60において必要な冷却容量を減算した量よりも少ない分が、出口熱交換器50での冷却で用いられる。このため、凝縮器60では、冷媒ガスを所望の圧力および所望の温度の冷媒液に凝縮できるので、発電出力が低下することがない。これらの制御方法の詳細については後述する。
上述したバイナリ発電装置100で発電を行う際には、温水ポンプを用いて温水を蒸発器10および過熱器20の1次側に送る。蒸発器10および過熱器20の2次側に供給される冷媒液は(水より)低沸点の有機媒体であるため、容易に蒸発して、冷媒液から過熱状態の冷媒ガスへ変化する。冷媒液を過熱状態の冷媒ガスへ変化させた温水は、出口熱交換器50で冷却される。
【0024】
このようにして得られた冷媒ガスは膨張機30に送られ、膨張機30内で膨張してスクリュロータ(駆動部)を回転させ、ロータの回転軸が発電機40の回転軸が回転されて、発電機40で発電される。
このようにしてスクリュロータを回転させるのに用いられた冷媒ガスは、凝縮器60に送られる。凝縮器60の2次側には冷却水ポンプ64を用いて冷却水が冷却塔62との間で循環されており、凝縮器60での熱交換により1次側の冷媒ガスが凝縮されて冷媒液に戻る。このようにして凝縮器60で液体になった冷媒液は、冷媒ポンプ70を用いて再び蒸発器10および過熱器20へ送られ蒸発に用いられる。このような冷媒(冷媒液および冷媒ガス)が循環するサイクル(バイナリサイクル)においては、膨張機30で冷媒ガスが膨張し、膨張する冷媒ガスによりスクリュロータが回転して回転駆動力が生じる。
【0025】
[制御方法]
上述したように、蒸発器10出口における温水の温度が温度計54により計測される。この計測結果に基づいて出口熱交換器50の温水出口温度が所望の温度になるように、出口熱交換器50へ供給される流量を制御バルブ52により調整する。
この場合においても、以下の制限を超えては、出口熱交換器50へ冷却水が供給されることはない。冷却塔62(冷却装置)の冷却容量Q(1)から凝縮器60において必要な冷却容量Q(2)を減算した量Q(3)よりも少ない分しか、出口熱交換器50での冷却に用いられない。なお、通常は、Q(3)>0となるように、Q(1)は余裕を持って設計されている。
【0026】
すなわち、Q(3)>0を維持している限り、温度計54により計測された結果に基づいて、出口熱交換器50の温水出口温度が所望の温度になるように、冷却水の流量が制御バルブ52で調整される。
出口熱交換器50の温水入口温度(蒸発器10の温水出口温度)が高く、または/および、顧客の要望する所望の温水温度が低い場合には、出口熱交換器50において必要な冷却容量Q(4)がQ(3)を超える場合がある。この場合には、温水を所望の温度まで低下させることよりも、凝縮器60において必要な冷却容量Q(2)が確保すること(発電出力が低下しないこと)を優先させる。このため、出口熱交換器50へ供給される冷却水の流量が制御バルブ52により制限される(インターロックがかかる)。
【0027】
なお、上述したQ(1)〜Q(4)の算出方法は、特に制限されるものはなく、本実施形態に係るバイナリ発電装置の効果が発現できる方法であれば構わない。
このようにして、本実施形態に係るバイナリ発電装置100によると、暖房または/および給湯に利用するための、顧客が要望する温度の温水を得ることができるともに、発電電力を低下させることもない。
【0028】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態に係るバイナリ発電装置200について説明する。なお、同一の符号を付した同一の部品についての説明は繰り返さない。さらに、制御方法は、上述の第1実施形態と同じであるため、制御方法についての説明は繰り返さない。
図2に示すように、本実施形態に係るバイナリ発電装置200は、パッケージ部分210とそれ以外の部分(冷却塔62、冷却水ポンプ64、出口熱交換器50、制御バルブ52、温度計54)とで構成される。パッケージ部分210は、バイナリ発電装置200の製造販売会社により、製造されて販売される部分である。なお、このパッケージ部分210に含まれる部品は、限定的に考えられるべきではなく、バイナリ発電装置の基本的な部品と後述する接続部(三方弁、開閉バルブ)とを含むものであれば構わない。たとえば、冷却水ポンプ64はパッケージ部分210に含まれても構わない。
【0029】
本実施形態に係るバイナリ発電装置200は、パッケージ部分210に、三方弁262および三方弁264を備えることを特徴とする。これらの三方弁262および三方弁264は、凝縮器60の冷却水出口と冷却塔62との間に設けられる。より詳しくは、これらの三方弁262および三方弁264は、凝縮器60の冷却水出口と冷却塔62に接続される接続バルブ(図示しない)との間に直列に設けられる。
【0030】
顧客が出口熱交換器50を使用しない場合には、これらの三方弁262および三方弁264は、図3(A)に示すように用いられ、顧客が出口熱交換器50を使用する場合には、これらの三方弁262および三方弁264は、図3(B)に示すように用いられる。
図3(A)に示す状態においては、(1)三方弁262の凝縮器60側および冷却塔62側が開状態、かつ、出口熱交換器50側が閉状態で、(2)三方弁264の凝縮器60側および冷却塔62側が開状態、かつ、出口熱交換器50側が閉状態で、三方弁262と三方弁264とが直接連通している。このため、冷却水ポンプ64により、冷却水は、凝縮器60と冷却塔62との間で循環される。
【0031】
一方、図3(B)に示す状態においては、(1)三方弁262の凝縮器60側および出口熱交換器50側が開状態、かつ、冷却塔62側が閉状態で、(2)三方弁264の冷却塔62側および出口熱交換器50側が開状態、かつ、凝縮器60側が閉状態で、三方弁262と三方弁264とが出口熱交換器50を介して連通している。このため、冷却水ポン
プ64により、冷却水は、凝縮器60および出口熱交換器50と冷却塔62との間で循環される。このとき、上述したように、蒸発器10において、所望のピンチ温度差を維持して排出された温水が出口熱交換器50において、所望の温度以下となるように冷却される。さらに、冷却塔62(冷却装置)の冷却容量から凝縮器60において必要な冷却容量を減算した量よりも少ない分が、出口熱交換器50での冷却で用いられる。
【0032】
なお、図3(A)に示す凝縮器60の冷却水の状態と、図3(B)に示す凝縮器60および出口熱交換器50の冷却水の状態とを実現できるものであれば、接続部は2つの三方弁に限定されるものではない。すなわち、凝縮器60の冷却水出口側に、蒸発器10から排出された温水を冷却する出口熱交換器50へ冷却水を供給、および、出口熱交換器50から冷却水を回収するための接続部が、パッケージ210内に設けられていればよい。
【0033】
たとえば、図4に示すように、接続部として3つの開閉バルブを設けても構わない。開閉バルブ362は凝縮器60と冷却塔62との間に設けられ、この開閉バルブ362の前(凝縮器60側)には供給配管374との分岐部が設けられ、この開閉バルブ362の後(冷却塔62側)には回収配管376との合流部が設けられる。開閉バルブ364は供給配管374に、開閉バルブ366は回収配管376に、それぞれに設けられる。
【0034】
図4(A)に示す状態においては、開閉バルブ362が開状態、かつ、開閉バルブ364および開閉バルブ366が閉状態で、冷却水ポンプ64により、冷却水は、凝縮器60と冷却塔62との間で循環される。
一方、図4(B)に示す状態においては、開閉バルブ362が閉状態、かつ、開閉バルブ364および開閉バルブ366が開状態で、冷却水ポンプ64により、冷却水は、凝縮器60および出口熱交換器50と冷却塔62との間で循環される。
【0035】
このようにして、本実施形態に係るバイナリ発電装置200によると、設備導入後であっても大幅に装置を改造する必要なく、暖房または/および給湯に利用するための、顧客が要望する温度の温水を得ることができるともに、発電電力を低下させることもない。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0036】
また、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0037】
10 蒸発器
20 過熱器
30 膨張機
40 発電機
50 温水出口温度調整熱交換器(出口熱交換器)
60 凝縮器
70 冷媒ポンプ
100 バイナリ発電装置
262、264 三方弁
362、364、366 開閉バルブ
374 供給配管
376 回収配管
図1
図2
図3
図4