(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871666
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】貯留浸透槽用筒状体における側板部材同士の結合構造、該結合構造を有する貯留浸透槽用筒状体、貯留浸透槽用箱体、
(51)【国際特許分類】
E03F 1/00 20060101AFI20160216BHJP
E03F 5/10 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
E03F1/00 A
E03F5/10 A
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-49244(P2012-49244)
(22)【出願日】2012年3月6日
(65)【公開番号】特開2013-185315(P2013-185315A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】堀 昌広
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晃
(72)【発明者】
【氏名】荒原 隆文
(72)【発明者】
【氏名】大石 幸徳
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 稔
(72)【発明者】
【氏名】中島 修一
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/041297(WO,A1)
【文献】
特開2006−214103(JP,A)
【文献】
特開2007−056611(JP,A)
【文献】
特開2008−082007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00〜 11/00
E03B 1/00〜 11/16
B65D 88/00〜 90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の側板部材が互いに結合してなる貯留浸透槽用筒状体における側板部材同士の結合構造であって、
一方の側板部材の側縁部には、移動規制部、及びスライド係合部が該側縁部の側縁に沿ってそれぞれ1つ以上配設されてなり、
他方の側板部材の側縁部であって前記移動規制部に対応する位置には被移動規制部が配設されてなり、前記スライド係合部に対応する位置には被スライド係合部が配設されてなり、
前記移動規制部及び前記被移動規制部は、該移動規制部及び該被移動規制部が係合した状態で、互いに所定の方向にのみ相対移動可能となる係合機構を有しており、
前記側板部材同士が前記貯留浸透槽用筒状体の軸線に直交する第1の方向に沿って接近して前記移動規制部と前記被移動規制部とが係合してなり、かつ該移動規制部及び該被移動規制部は係合した状態で該第1の方向に直交する第2の方向にのみ相対移動可能な係合機構を有しており、さらに該移動規制部と該被移動規制部とが係合状態のまま該側板部材同士が該第2の方向に沿って相対移動して前記スライド係合部と前記被スライド係合部とが互いに係合した状態で側板部材同士が結合されてなる
ことを特徴とする貯留浸透槽用筒状体における側板部材同士の結合構造。
【請求項2】
前記一方の側板部材の前記移動規制部と、前記他方の側板部材の前記被移動規制部とは、共に各側板部材の側縁部から突成された板片形状からなり、
該移動規制部と該被移動規制部とが係合した際は、該移動規制部と該被移動規制部とが互いに重なった状態となっており、相対的にスライド可能な方向が前記第2の方向とされており、
前記一方の側板部材の前記スライド係合部は、該側板部材の側縁部から突出した首部と、該首部の先端に配設され、かつ該首部よりも幅広な幅広頭部と、からなり、
前記他方の側板部材の前記被スライド係合部は、該側板部材の側縁部に形成された孔部からなり、
さらに該孔部には、前記幅広頭部より幅狭で前記首部が通過可能な幅狭孔部と、該幅狭孔部と連続し、かつ該幅狭孔部よりも幅広で前記幅広頭部が挿通可能な幅広孔部と、が形成されており、
前記移動規制部と前記被移動規制部とが係合した際に、該スライド係合部の幅広頭部は該被スライド係合部の孔部の幅広孔部に挿通されてなり、さらに該側板部材同士が前記第2の方向に沿って相対移動した際に該スライド係合部の該首部が該被スライド係合部の孔部の幅狭孔部に位置して該スライド係合部と該被スライド係合部とが前記第1の方向において係止されてなり、該スライド係合部と該被スライド係合部とが互いに係合した状態となっている請求項1に記載の貯留浸透槽用筒状体における側板部材同士の結合構造。
【請求項3】
前記被スライド係合部の孔部の幅広孔部は、前記第2の方向に沿って前記幅狭孔部の両側に形成されている請求項2に記載の貯留浸透槽用筒状体における側板部材同士の結合構造。
【請求項4】
前記一方の側板部材と、前記他方の側板部材とが、互いに同一寸法形状である請求項3に記載の貯留浸透槽用筒状体における側板部材同士の結合構造。
【請求項5】
前記側板部材は、前記貯留浸透槽用筒状体の軸線に直交する断面においてL字形状である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の貯留浸透槽用筒状体における側板部材同士の結合構造。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の貯留浸透槽用筒状体における側板部材同士の結合構造を有する貯留浸透槽用筒状体。
【請求項7】
請求項6に記載の貯留浸透槽用筒状体の一端に天板が配設されてなり、該貯留浸透槽用筒状体の他端に底板が配設されてなることを特徴とする貯留浸透槽用箱体。
【請求項8】
請求項6に記載の貯留浸透槽用筒状体を構成する側板部材同士の結合方法であって、
一方の側板部材と他方の側板部材とを、前記貯留浸透槽用筒状体の軸線に直交する第1の方向に沿って接近させることにより、前記移動規制部と前記被移動規制部とを、該第1の方向に直交する第2の方向にのみ相対移動可能に係合させ、次いで該移動規制部と該被移動規制部とを係合状態としたまま該側板部材同士を該第2の方向に沿って相対移動させることにより、前記スライド係合部と前記被スライド係合部とを互いに係合させて、側板部材同士を結合させる
ことを特徴とする貯留浸透槽用筒状体を構成する側板部材同士の結合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば雨水を貯留浸透するための槽に用いられる貯留浸透槽用筒状体(以下、適宜、筒状体ともいう)に関し、特に、該筒状体を構成する側板部材同士の結合構造、該結合構造を有する貯留浸透槽用筒状体、貯留浸透槽用箱体、及び該貯留浸透槽用筒状体を構成する側板部材同士の結合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、雨水を一時的に貯留し、貯留した雨水を地中に緩やかに浸透させて排水する雨水用の貯留浸透槽が提案されている。該貯留浸透槽は、掘削して形成された凹部に透水シートが敷かれ、その上に複数の貯留浸透槽用筒状体が積み上げられて構成されていることが一般的である。
【0003】
また、前記筒状体はコンクリート製であったが、近年、施工や運搬の容易さから、樹脂製のものが提案されている(例えば特許文献1、2)。かかる構成にあっては、樹脂製の側板部材を施工現場等において複数結合することによって筒状体とするものがある。また、同様の構成を有した排水ますも既に提案されている(例えば特許文献3)。
【0004】
具体的に上記した特許文献1〜3においては、側板部材同士を結合するために、一方の側板部の側縁部に全長にわたって形成した凹部と、他方の側板部の側縁部に全長にわたって形成した凸部とをスライドさせながら係合させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3556776号公報
【特許文献2】特開2006−214103号公報
【特許文献3】特開平8−291551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来構成のように、側板部材の全長にわたって凹部と凸部とが設けられた場合、筒状体を組み立てる際に側板部材にたわみやゆがみが生じ、凹凸がうまく嵌合しにくく、側板部材同士の結合作業に手間がかかるという問題が生じる。また、結合作業に必要な作業スペースとして、最低でも側板部材2枚分の長さに相当するスペースを要し、限られた空間で作業を行う施工現場においては大変不便な構成であった。
【0007】
そこで本発明は、側板部の結合作業が容易で、作業空間も広くとらずに済む貯留浸透槽用筒状体を構成することができる側板部材同士の結合構造、該結合構造を有する貯留浸透槽用筒状体、及び該貯留浸透槽用筒状体を構成する側板部材同士の結合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の側板部材が互いに結合してなる貯留浸透槽用筒状体における側板部材同士の結合構造であって、一方の側板部材の側縁部には、移動規制部、及びスライド係合部が該側縁部の側縁に沿ってそれぞれ1つ以上配設され
てなり、他方の側板部材の側縁部であって前記移動規制部に対応する位置には被移動規制部が配設され
てなり、前記スライド係合部に対応する位置には被スライド係合部が配設され
てなり、前記移動規制部及び前記被移動規制部は、該移動規制部及び該被移動規制部が係合した状態で、互いに所定の方向にのみ相対移動可能となる係合機構を有して
おり、前記側板部材同士が前記貯留浸透槽用筒状体の軸線に直交する第1の方向に沿って接近して前記移動規制部と前記被移動規制部とが係合してなり、かつ該移動規制部及び該被移動規制部は係合した状態で該第1の方向に直交する第2の方向にのみ相対移動可能な係合機構を有しており、さらに該移動規制部と該被移動規制部とが係合状態のまま該側板部材同士が該第2の方向に沿って相対移動して前記スライド係合部と前記被スライド係合部とが互いに係合した状態で側板部材同士が結合されてなることを特徴とする貯留浸透槽用筒状体における側板部材同士の結合構造である。
【0009】
かかる構成にあって、まず、互いに結合部位が向き合う位置におかれた側板部材同士が接近することにより、前記移動規制部と前記被移動規制部とが互いに係合した状態が得られる。このとき、該側板部材同士は、所定の方向にのみ相対移動が許容されており、側板部材同士が遊嵌して仮止め状態となっている。この仮止め作業は、単に結合しようとする2枚の側板部材の結合部位を接近させるのみであるから、従来のように側板部材2枚分の長さを有する作業空間は不要である。また、上記の仮止め状態で側板部材同士が相対的に移動されて前記スライド係合部と前記被スライド係合部とが互いに係合される。この作業は、事前に前記移動規制部と前記被移動規制部とが係合して側板部材同士が容易に離開しないように仮止めされており、各側板部材のたわみが抑えられているため、極めて簡単な作業となる。
さらに、かかる構成にあって、前記移動規制部と前記被移動規制部とが互いに係合した状態を得るには、まず、互いに結合部位が向き合う位置におかれた側板部材同士を、前記筒状体の軸線に直交した第1の方向に沿って相対的に移動させる。前記移動規制部と前記被移動規制部とが互いに係合した状態となると、該側板部材同士は該第1の方向と直交する第2の方向に沿った相対移動のみが許容され、仮止め状態となる。この仮止め状態を得る作業は、単に結合しようとする2枚の側板部材の結合部位を第1の方向に沿って接近させるのみであるから、従来のように側板部材2枚分の長さを有する作業空間は不要である。
【0012】
さらに、上記の仮止め状態で側板部材同士が前記第2の方向に沿って相対的に移動されることにより、前記スライド係合部と前記被スライド係合部とが互いに係合される。この作業は、事前に前記移動規制部と前記被移動規制部とが係合して側板部材同士が容易に離開しないように仮止めされており、各側板部材のたわみが抑えられているため、極めて簡単な作業となる。特に、従来構成のように側板部材同士をその全長にわたって相対移動させる必要がなく、スライド係合部と被スライド係合部とが互いに係合する位置までスライドさせるだけでよいため、全体として作業効率が飛躍的に向上する。また、スライド係合部を側板部材の全長にわたって形成する必要がないことから、該側板部材のたわみやゆがみを考慮した大きなクリアランス(いわゆる遊び、隙間)を設定する必要がなく、より精度の高い結合構造とすることができる。さらに、本発明にかかる結合構造は、第1の方向に沿った相対移動で係合する移動規制部及び被移動規制部、並びに、第2の方向に沿った相対移動で係合するスライド係合部及び被スライド係合部を備え、このように2種類の相異なる方向に基づき係合する係合手段によって側板部材同士が結合するため、側板部材同士が外れにくい。
【0013】
上記構成にあっては、前記一方の側板部材の前記移動規制部と、前記他方の側板部材の前記被移動規制部とは、共に各側板部材の側縁部から突成された板片形状からなり、該移動規制部と該被移動規制部とが係合した際は、該移動規制部と該被移動規制部とが互いに重なった状態となり、相対的にスライド可能な方向が前記第2の方向とされており、前記一方の側板部材の前記スライド係合部は、該側板部材の側縁部から突出した首部と、該首部の先端に配設され、かつ該首部よりも幅広な幅広頭部と、からなり、前記他方の側板部材の前記被スライド係合部は、該側板部材の側縁部に形成された孔部からなり、さらに該孔部には、前記幅広頭部より幅狭で前記首部が通過可能な幅狭孔部と、該幅狭孔部と連続し、かつ該幅狭孔部よりも幅広で前記幅広頭部が挿通可能な幅広孔部と、が形成されており、前記移動規制部と前記被移動規制部とが係合した際に、該スライド係合部の幅広頭部は該被スライド係合部の孔部の幅広孔部に挿通され、さらに該側板部材同士が前記第2の方向に沿って相対移動することにより該スライド係合部の該首部が該被スライド係合部の孔部の幅狭孔部に位置することで、該スライド係合部と該被スライド係合部とが前記第1の方向において係止され、該スライド係合部と該被スライド係合部とが互いに係合した状態となる構成が望ましい。
【0014】
かかる構成とすることにより、簡易構造で、移動規制部及び被移動規制部に係る係合機構を構成することが可能となる。また、該移動規制部と該被移動規制部とが互いに係合した状態のまま、スライド係合部の首部を被スライド係合部の幅狭孔部に位置させて、該スライド係合部と該被スライド係合部とを係合させることができる。したがって、スライド係合部と被スライド係合部とを係合させる際の側板部同士のがたつきが抑制されるため、例えば前記首部の横幅と、前記幅狭孔部の横幅との間でいわゆる遊びの間隔をできる限り小さくし、作業性を損なうことなく組付け精度を大幅に向上させることができる。また、側板部材同士を第2の方向に沿って相対移動させる作業は、幅広頭部の長さ分だけ側板部材をスライド移動させればよいため、作業スペースを従来に比べて小さくすることができる。
【0015】
また、上記第2の方向に沿った側板部材同士の相対移動においては、どちらの側板部材を移動させるか、もしくは両方の側板部材を移動させるかは、作業現場の状況によって自由に選択できることが望ましい。したがって、前記被スライド係合部の孔部の幅広孔部は、前記第2の方向に沿って前記幅狭孔部の両側に形成されている構成が望ましい。
【0016】
かかる構成にあっては、前記移動規制部と前記被移動規制部とを係合状態とする際に、幅狭孔部の両側にある幅広孔部のうちいずれか一方を適宜選択して前記スライド係合部の幅広頭部を挿通し、側板部材同士を第2の方向に沿って相対移動させることができる。このため、側板部材同士を第2の方向に沿って相対移動させる際に、該第2の方向のどちら側からでも結合作業が行える。
【0017】
さらに、前記一方の側板部材と、前記他方の側板部材とが、互いに同一寸法形状である構成が提案される。
【0018】
かかる構成とすることにより、共通の金型等を用いて一方の側板部材と他方の側板部材とを大量生産することが可能となり、全体として貯留浸透槽用筒状体の製造コストを抑えることが可能となる。また、1種類の側板部材を互いに結合させて貯留浸透槽用筒状体を構成することができるため、全体として該貯留浸透槽用筒状体の部品点数を減らすことも可能となる。なお、このように一方の側板部材と他方の側板部材とを互いに同一寸法形状とした場合にあっては、前記被スライド係合部の孔部の幅広孔部が前記第2の方向に沿って前記幅狭孔部の両側に形成されていると、適切に両側板部材を結合させることが可能となる。
【0019】
また、前記側板部材は、前記貯留浸透槽用筒状体の軸線に直交する断面においてL字形状であってもよい。
【0020】
かかる構成とすることにより、該側板部材の製造時において、L字に曲がった角部にリブなどを設けて、あらかじめ強度を高めておくことができる。また、例えば平板状の側板部材を4枚用いて断面矩形の筒状体を構成するよりも側板部材の結合箇所が少なくなるため強度的に安定し、施工現場等における結合作業の手間も軽減することができる。また、一体成形された筒状体に比べて成形コストを抑えることができるし、製造工場等から運搬する際にも手間がかかりにくい。
【0021】
また、本発明は、上記貯留浸透槽用筒状体における側板部材同士の結合構造を有する貯留浸透槽用筒状体である。
【0022】
上記構成を適用した筒状体は、上記したとおり施工現場等での側板部材同士の結合が容易で、また最初から一体成形されたものよりも場所をとらず、余計な作業負担が軽減される。また、かかる構成の筒状体を備えた貯留浸透槽は、作業現場が狭小であったり作業期間が限定されていたりする場合であっても、従来に比べてはるかに容易、かつ短工期で施工することが可能となる。
【0023】
また、本発明は、上記の貯留浸透槽用筒状体の一端に天板が配設され、該貯留浸透槽用筒状体の他端に底板が配設されてなることを特徴とする貯留浸透槽用箱体である。
【0024】
かかる構成とすることにより、貯留浸透槽用筒状体を構成する側板部材が天板と底板とで挟持されるため、側板部材同士が貯留浸透槽用筒状体の軸方向に沿って位置ずれしてしまうことが防止される。
【0025】
また、本発明は、上記貯留浸透槽用筒状体を構成する側板部材同士の結合方法であって、一方の側板部材と他方の側板部材とを、前記貯留浸透槽用筒状体の軸線に直交する第1の方向に沿って接近させることにより、前記移動規制部と前記被移動規制部とを、該第1の方向に直交する第2の方向にのみ相対移動可能に係合させ、次いで該移動規制部と該被移動規制部とを係合状態としたまま該側板部材同士を該第2の方向に沿って相対移動させることにより、前記スライド係合部と前記被スライド係合部とを互いに係合させて、側板部材同士を結合させることを特徴とする貯留浸透槽用筒状体を構成する側板部材同士の結合方法である。
【0026】
かかる構成とすることにより、貯留浸透槽用筒状体を効率良く組み立てることが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明にかかる前記結合構造は、結合作業が容易で、作業空間も広くとらずに済み、さらに、得られる筒状体はがたつきが抑制される優れた効果がある。
【0028】
また、本発明の前記貯留浸透槽用筒状体は、施工現場での側板部材同士の結合が容易で、また最初から一体成形されたものよりも場所をとらず、余計な作業負担を軽減できる効果がある。
【0029】
また、本発明の前記貯留浸透槽用箱体は、側板部材が天板と底板とで挟持されるため、側板部材同士の位置ずれが防止できる効果がある。
【0030】
また、本発明の前記結合方法は、移動規制部と被移動規制部とを係合状態とし、この係合状態のままスライド係合部と被スライド係合部とを係合させる構成であるため、従来構成に比べて作業者にかかる負担がおおいに軽減される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】一方の側板部材の結合部分を拡大して示す拡大斜視図。
【
図3】他方の側板部材の結合部分を拡大して示す拡大斜視図。
【
図5】移動規制部の突起と被移動規制部の突起とを示す説明図。
【
図6】移動規制部と被移動規制部とを係合させた状態の側板部材同士を示す拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を具体化した実施例を詳細に説明する。なお、便宜上、貯留浸透槽用筒状体2の軸線に沿う方向をZ軸方向(
図1等参照)とし、該軸線に直交する第1の方向をX軸方向(
図1等参照)とし、該第1の方向に直交する第2の方向をY軸方向(
図1等参照)として説明する。なお、通常、前記筒状体2は、その軸線が鉛直方向に沿うように使用されることが一般的であるが、勿論これに限定されない。
【0033】
(貯留浸透槽用筒状体2)
図1に示すように、断面矩形状の貯留浸透槽用筒状体2は、互いに向き合う一対の側板部材3,4によって構成されている。該側板部材3,4は、樹脂製であり、多数の透水孔hが設けられ、筒状体2の軸線(Z軸方向)に直交する断面(XY平面)においてL字形状とされている。また、一対の側板部材3,4は、互いに同一寸法形状であり共通の金型で作製される。
【0034】
ここに、前記側板部材3、4の左右両端に形成された縦長帯状の側縁部5,6が、一対の側板部材3,4において互いに突き合わされて結合することで、前記筒状体2とされる。
【0035】
(結合構造1)
側板部材3,4同士の結合構造1について詳述する。
図1に示すように、結合構造1は、移動規制部11、被移動規制部21、スライド係合部15、及び被スライド係合部25を備えている。さらに詳述すると、各側板部材3,4の一方の側縁部5には、該側縁部5の側縁に沿って移動規制部11とスライド係合部15とが交互に均等配置されており、全体として移動規制部11が3つ、スライド係合部15が2つ設けられている。また、各側板部材3,4の他方の側縁部6であって、前記移動規制部11に対応する位置には、被移動規制部21がそれぞれ設けられ、前記スライド係合部15に対応する位置には、被スライド係合部25がそれぞれ設けられている。
【0036】
以下、
図2に従って一方の側板部材3における一側の側縁部5について詳述する。なお、他方の側板部材4の一側の側縁部5については、これと同様の構成であるため説明を省略する。
【0037】
図2に拡大して示すように、前記側縁部5に配設された前記移動規制部11は、該側縁部5からL字状に折曲されながら突成されている板片形状の突起12からなる。また、該突起12の先端には、規制爪13が突き出されている。なお、前記突起12は、その板面がZ軸方向に沿うように形成されている。
【0038】
また、前記側縁部5に配設された前記スライド係合部15は、該側縁部5からX軸方向に突出した首部16と、該首部16の先端に配設され、かつ該首部16よりも幅広な幅広頭部17とからなる。
【0039】
以下、
図3に従って他方の側板部材4における他側の側縁部6について詳述する。なお、一方の側板部材3の他側の側縁部6については、これと同様の構成であるため説明を省略する。
【0040】
図3に拡大して示すように、前記側縁部6に配設された前記被移動規制部21は、該側縁部6から突成されている板片形状の突起22からなる。また、該突起22の先端には、被規制爪23が折曲されて突き出されている。
【0041】
また、前記側縁部6に配設された前記被スライド係合部25は、該側縁部6に形成された孔部26からなる。さらに、該孔部26は、中央に配置された幅狭孔部26bと、該幅狭孔部26bに連続し、かつ該幅狭孔部26bよりも幅広な幅広孔部26a,26aとが形成されている。なお、本実施例においては、幅広孔部26aが、Z軸方向に沿って幅狭孔部26bの両側にそれぞれ形成されている。
【0042】
ここに、前記スライド係合部15と、前記被スライド係合部25とについて、さらに詳述すると、該被スライド係合部25の幅広孔部26aは、該スライド係合部15の幅広頭部17が挿脱自在な大きさに設定されている。また、該被スライド係合部25の幅狭孔部26bは、該スライド係合部15の首部16が通過自在な大きさに設定され、かつ前記幅広頭部17よりは幅狭の大きさに設定されている。
【0043】
(結合構造1及び結合方法)
以下、筒状体2を得るべく、側板部材3,4同士を結合する手順を説明する。なお、以下、一方の側板部材3の側縁部5と、他方の側板部材4の側縁部6とを結合させる手順について説明し、一方の側板部材3の側縁部6と、他方の側板部材4の側縁部5とを結合させる手順については同様の手順となるため説明を省略する。
【0044】
(第1段)
まず第1段として、
図4に示すように、一方の側板部材3の側縁部5と、他方の側板部材4の側縁部6とを対向して配置する。そして、該側板部材4における被スライド係合部25の孔部26の幅広孔部26aに、該側板部材3におけるスライド係合部15の幅広頭部17を挿通するようにして、該側板部材3,4同士をX軸方向(すなわち第1の方向)に沿って接近させる。そうすると、
図5aに示すように、前記移動規制部11の突起12と、前記被移動規制部21の突起22とが付き当たり、かつ該突起12,22同士が撓みながら、
図5bに示すように、前記突起12の規制爪13と、前記突起22の被規制爪23とが互いに係止される。そして、
図6に示すように、前記移動規制部11と前記被移動規制部21とが係合し、側縁部5,6同士が突き合わされる。
【0045】
このように前記移動規制部11と前記被移動規制部21とが係合した状態にあっては、突起12,22同士が重なった状態となり、該移動規制部11と該被移動規制部21とが、Y軸方向には移動が規制され、Z軸方向には互いにスライド可能となる。すなわち、移動規制部11と被移動規制部21がこのような係合機構を有することにより、側板部材3,4同士がZ軸方向に沿ってのみ相対移動が許容される遊嵌状態となり、側板部材3,4同士が仮止めされた状態となる。
【0046】
(第2段)
次いで第2段として、前記移動規制部11と前記被移動規制部21とを係合状態としたまま、前記側板部材3,4同士を、唯一の移動可能な方向であるZ軸方向に沿って相対移動させ、
図7に示すように、前記スライド係合部15の首部16を前記被スライド係合部25の幅狭孔部26bに位置させる。そうすると、該幅狭孔部26上に前記幅広頭部17が臨むこととなり、該スライド係合部15と該被スライド係合部25とがX軸方向において係止されることとなる。これによって、側板部材3,4同士の結合作業が完了し、
図1に示すような筒状体2が得られる。なお、前記一対の側板部材3,4は、互いに同一寸法形状であるため、一方の側板部材3の側縁部5と他方の側板部材4の側縁部6における結合構造1において、一方(例えば上側)の幅広孔部26aに幅広頭部17を挿通して結合させた場合、一方の側板部材3の側縁部6と他方の側板部材4の側縁部5における結合構造1においては、他方(例えば下側)の幅広孔部26aに幅広頭部17を挿通して結合させることとなる。
【0047】
このように、本実施例の結合構造1においては、X軸方向(第1の方向)に側板部材3,4を移動させることで移動規制部11と被移動規制部とがまず遊嵌し、これにより両側板部材3,4の移動が所定方向に制限されることで、その後の作業者の負担が軽減される。
【0048】
また、上記構成は、スライド係合部15と被スライド係合部25とを係合させる際の側板部3,4同士のがたつきが抑制されるため、前記首部16の横幅と、前記幅狭孔部26bの横幅との間でいわゆる遊びの間隔をできる限り小さくし、作業性を損なうことなく組付け精度を向上させることができる。
【0049】
また、移動規制部11やスライド係合部15、またこれらに対応する被移動規制部21や被スライド係合部25を各側縁部5,6に複数配設することで、十分な強度を有する筒状体2とすることができる。特に、側縁部5,6において移動規制部11とスライド係合部15とを、あるいは被移動規制部21と被スライド係合部25とを交互に均等配置しておくことにより、スライド係合部15と被スライド係合部25とを係合させる際に、該スライド係合部15及び該被スライド係合部25の周辺部にあたる側縁部5,6のたわみを抑えて作業を容易にすることができる。
【0050】
また、本実施例の結合構造1は、側板部材3,4同士を相対移動させる距離が従来構成に比べて短いため、側板部材3,4の結合作業に要するスペースが狭くても作業が行える。
【0051】
さらに、被スライド係合部25の幅広孔部26aが、幅狭孔部26bの両側に設けられているために、作業者は、Y軸方向において所望する側から側板部材3,4をスライドさせて結合作業を行うことが可能となる。
【0052】
なお、上記筒状体2が貯留浸透槽に使用される際には、該筒状体2の上端に天板(図示省略)が配設され、下端に底板(図示省略)が配設されて貯留浸透槽用箱体とされた上で使用される。このように天板と底板が配設されることにより、側板部材3,4同士の上下方向でのスライドが規制される。なお、貯留浸透槽の施工については、周知のものが好適に用いられる。
【0053】
本発明は、上記実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。
【0054】
例えば、側縁部5,6に配設される前記移動規制部11、前記スライド係合部15、前記被移動規制部21、あるいは前記被スライド係合部25の数は適宜変更可能である。
【0055】
また、側板部材3、4の側縁部5には移動規制部11及びスライド係合部15が配設され、側縁部6には被移動規制部21及び被スライド係合部25が配設されているが、一方の側板部材3の側縁部5、6に移動規制部11及びスライド係合部15が配設され、他方の側板部材4の側縁部5,6に被移動規制部21及び被スライド係合部25が配設されてもよい。
【0056】
また、側板部材3,4には、強度を増すための凹凸やリブが設けられていても構わない。
【0057】
また、前記被スライド係合部25の孔部26は、幅広孔部26aと幅狭孔部26bとが一つずつ形成された構成であってもよい。
【0058】
またさらに、側板部材3,4は筒状体2の軸線に直交する断面においてL字形状である必要はなく、平板形状の側板部材を3枚以上採用して断面多角形状の筒状体としてもよい。また、断面半円状の側板部材を2つ突き合わせて、円筒形状の筒状体としてもよい。
【0059】
側板部材3,4の材料としては、製造又は加工の容易さや運搬、施工作業の容易さを考慮して、樹脂製のものが好ましい。また、再生PPや再生PETなどを使用することで、環境への配慮を図ることもできる。
【符号の説明】
【0060】
1 結合構造
2 貯留浸透槽用筒状体
3,4 側板部材
5,6 側縁部
11 移動規制部
15 スライド係合部
16 首部
17 幅広頭部
21 被移動規制部
25 被スライド係合部
26 孔部
26a 幅広孔部
26b 幅狭孔部
h 透水孔