特許第5871684号(P5871684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871684
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】クランプ
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/08 20060101AFI20160216BHJP
   F16L 55/035 20060101ALI20160216BHJP
   F16B 2/22 20060101ALI20160216BHJP
   B60R 16/08 20060101ALI20160216BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   F16L3/08 Z
   F16L55/035
   F16B2/22 C
   B60R16/08 M
   F16F15/08 G
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-71817(P2012-71817)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-204637(P2013-204637A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努
(72)【発明者】
【氏名】松下 和彦
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−242478(JP,A)
【文献】 実開昭57−067178(JP,U)
【文献】 実開平06−058290(JP,U)
【文献】 実開昭57−190183(JP,U)
【文献】 特公昭47−025419(JP,B1)
【文献】 米国特許第05002243(US,A)
【文献】 特開2011−153663(JP,A)
【文献】 特開平07−071655(JP,A)
【文献】 特開2001−343089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/00− 3/23
F16L55/00−55/035
F16B 2/10
F16B 2/22
F16B 5/12
F16B37/08
F16F15/08
B60R16/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被固定部の取付け面に、その当接面を当接させた状態で取り付けられるクランプ本体と、
該クランプ本体に設けられ、チューブを移動不能に保持する保持部とを備えたクランプであって、
前記クランプ本体には、前記取付け面に当接させたときに弾性変形して反発力を発生させる少なくとも2つの弾性片が形成され、
前記クランプ本体及び前記保持部には、前記チューブを弾性支持する弾性部材が配設され、
前記クランプ本体に配設された弾性部材は、該クランプ本体の当接面から前記取付け面に向かって突出する突起部を有し、
該突起部は、前記弾性片の間に位置するよう配置され、かつ前記クランプ本体を取付け面に当接させたときに、該取付け面に当接するとともに、当接反力を前記チューブに伝達する
ことを特徴とするクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車に配索されるブレーキチューブ,フューエルチューブ等をダッシュパネル等の被固定部に固定するようにしたクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車に使用されるクランプでは、フューエルチューブ内を流れる燃料の脈動による振動やブレーキ作動による振動がクランプ本体を介して車体パネルに伝わる場合があり、またエンジンの挙動によりフューエルチューブが動いてクランプ本体が車体パネルから浮いてしまう場合があり、これらに起因して異音が発生するという懸念がある。
【0003】
このような異音の発生を抑制するために、例えば、特許文献1には、車体パネルに取り付けられた固定部材と、フューエルチューブを保持する保持体とを軟質樹脂製の振動吸収部材により連結するとともに、前記保持体を弾性部材を介在させて前記車体パネルに押圧付勢する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−343089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来のクランプでは、異音の発生は抑制できるものの、それぞれ別々に形成された固定部材と保持体とを軟質樹脂部材により連結する構造であるから、構造が複雑であり、コスト高になるという問題がある。
【0006】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、簡単な構造で、かつ低コストで異音の発生を抑制できるクランプを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被固定部の取付け面に、その当接面を当接させた状態で取り付けられるクランプ本体と、該クランプ本体に設けられ、チューブを移動不能に保持する保持部とを備えたクランプであって、前記クランプ本体には、前記取付け面に当接させたときに弾性変形して反発力を発生させる少なくとも2つの弾性片が形成され、前記クランプ本体及び前記保持部には、前記チューブを弾性支持する弾性部材が配設され、前記クランプ本体に配設された弾性部材は、該クランプ本体の当接面から前記取付け面に向かって突出する突起部を有し、該突起部は、前記弾性片の間に位置するよう配置され、かつ前記クランプ本体を取付け面に当接させたときに、該取付け面に当接するとともに、当接反力を前記チューブに伝達することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るクランプによれば、クランプ本体に、被固定部の取付け面に当接させたときに反発力を発生させる弾性片を形成し、前記クランプ本体に配設された弾性部材に該クランプ本体の当接面から突出する突起部を形成し、該突起部を、クランプ本体を取付け面に当接させたときに、該取付け面に当接させるとともに、当接反力をチューブに伝達させるようにした。
【0009】
このように構成したので、クランプ本体に形成された少なくとも2つの弾性片の反発力により、クランプ本体を被固定部に確実に当接させた状態で固定することができ、例えばフューエル脈動,ブレーキ作動等による振動やクランプ本体が取付け面から浮いてしまうことによる異音の発生を防止することができる。
【0010】
本発明では、前記弾性部材にクランプ本体の当接面から突出する突起部を設け、クランプ本体の取り付け時に突起部を取付け面に当接させたので、例えばフューエル脈動やブレーキ作動による振動がクランプ本体から被固定部に伝わるのを抑制することができ、この点からも異音の発生を防止できる。また何らかの外力によってクランプ本体が被固定部から浮いた場合にも、突起部は取付け面に当接しているので、クランプ本体が被固定部に干渉することによる異音の発生を防止できる。
【0011】
本発明では、前記突起部が取付け面に当接したときの当接反力をチューブに伝達させるようにしたので、弾性部材が弾性変形してチューブとの隙間をなくすことができ、例えばチューブがずれた状態で保持されている場合にも、チューブを確実に安定して保持することができる。
【0012】
このように本発明では、クランプ本体に弾性片を形成し、該クランプ本体に配設された弾性部材にクランプ本体の当接面から突出する突起部を形成するだけの構造であるので、従来構造に比べて簡単な構造で済み、低コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1によるクランプの平面図である。
図2】前記クランプの平面図である。
図3】前記クランプの取り付け状態の平面図である。
図4】前記クランプの断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1ないし図4は、本発明の実施例1によるクランプを説明するための図である。
【0016】
図において、1は自動車に採用される樹脂製クランプを示している。本実施例のクランプ1は、不図示の燃料ポンプにより加圧された燃料タンク内の燃料をエンジンに供給するフューエルチューブ2の長手方向中途部を保持した状態で被固定部であるダッシュパネル3の車外側に形成された取付け面3aに取り付けられている。
【0017】
前記クランプ1は、前記ダッシュパネル3の取付け面3aに、その当接面5aを当接させた状態で取り付けられる大略直方体状のクランプ本体5と、該クランプ本体5に設けられ、前記フューエルチューブ2を移動不能に保持する大略板状の保持部6とを備えている。
【0018】
前記クランプ1は、前記ダッシュパネル3の取付け面3aに溶接等により固定されたスタッドボルト4に前記クランプ本体5を嵌合させることにより固定されている。
【0019】
前記クランプ本体5の中央部及び左,右側端部には、それぞれ略半円弧状の保持凹部5b,5c,5dが形成されている。この中央の保持凹部5bに前記フューエルチューブ2が配置されている。また前記左,右の保持凹部5c,5dには、硬質パイプあるいはハーネス等のチューブ8,9が配置されている。
【0020】
前記保持部6は、前記クランプ本体2にこれの右コーナー部に設けられたヒンジピン7を介して回動可能に支持されている。
【0021】
前記保持部6には、前記中央の保持凹部5bに対向する把持凹部6aが形成されている。また前記保持部6には、前記右の保持凹部5dに配置されたチューブ9を該保持凹部5dとで把持する把持部6bが形成されている。
【0022】
前記クランプ本体5には、前記左の保持凹部5cに配置されたチューブ8を該保持凹部5cとで把持する弾性変形可能な保持片5eが一体に形成されている。
【0023】
前記保持部6のヒンジピン7の反対側には、弾性変形可能な上,下一対の係合爪6dが一体に形成されている。一方、前記クランプ本体5の係合爪6dに対応する部位には、該係合爪6dが係脱可能に係合するフック部5fが形成されている。前記係合爪6dをフック部5fに係合させることにより、前記保持部6はフューエルチューブ2及びチューブ9を把持した状態でクランプ本体5に固定される。
【0024】
前記クランプ本体5の中央の保持凹部5bと左の保持凹部5cとの間には、スタッドボルト挿入部5gが形成されている。このスタッドボルト挿入部5g内には、前述のスタッドボルト4の螺子に嵌合する複数の嵌合片5hが一体に形成されている。
【0025】
前記クランプ本体5の中央の保持凹部5b及び前記保持部6の把持凹部6aには、それぞれゴム製の第1,第2弾性部材13,14が配設されている。この第1,第2弾性部材13,14により前記フューエルチューブ2を弾性支持している。
【0026】
前記第1,第2弾性部材13,14は、略同一形状を有し、クランプ本体5の保持凹部5b及び保持部6の把持凹部6aにそれぞれ脱落不能に支持された本体部13a,14aと、該本体部13a,14aに形成され、前記フューエルチューブ2の外周面に当接する溝部13b,14bとを有する。
【0027】
前記溝部13b,14bは、これの底部とフューエルチューブ2との間に所定の隙間をなすよう形成されている。これによりフューエルチューブ2が第1,第2弾性部材13,14の軸線に対して傾斜した状態で配置してもクランプ可能となっている。
【0028】
前記クランプ本体5には、左,右一対の弾性片5i,5iが一体に形成されている。この左,右の弾性片5iは、前記クランプ本体5をダッシュパネル3の取付け面3aに押し付けて当接させたときに、弾性変形して該取付け面3aから離れる方向に反発力F1,F1を発生させる(図4参照)。
【0029】
前記左,右の弾性片5iは、前記クランプ本体5の当接面5aの外側に位置し、かつ外側に拡開するよう傾斜させて形成されている。
【0030】
そして前記クランプ本体5に配設された第1弾性部材13には、該クランプ本体5の当接面5aに形成された孔5a′から前記取付け面3aに向かって突出する突起部13cが一体に形成されている。この突起部13cは、前記左,右の弾性片5iの間に位置するよう配置されている。
【0031】
前記突起部13cの突出量は、該突起部13cが取付け面3aに押し付けられたときに所定の反力F2が発生するように設定されている。そして前記突起部13cは、前記クランプ本体5を前記スタッドボルト4に嵌合させつつ取付け面3aに押し当てたときに、該取付け面3aに当接して押圧されるとともに、該当接時の反力F2を本体部13aを介して前記フューエルチューブ2に伝達するように構成されている。
【0032】
本実施例によれば、クランプ本体5に、ダッシュパネル3の取付け面3aに当接させたときに反発力F1を発生させる左,右の弾性片5iを形成し、前記クランプ本体5に配設された第1弾性部材13に該クランプ本体5の当接面5aから突出する突起部13cを形成し、該突起部13cを、前記クランプ本体5を取付け面3aに押し付けて当接させたときに、該取付け面3aに当接させるとともに、当接時の反力F2を本体部13aを介してフューエルチューブ2に伝達させた。
【0033】
このように構成したので、クランプ本体5に形成された左,右の弾性片5iの反発力F1により、クランプ本体5をダッシュパネル3に確実に当接させた状態で固定することができ、フューエルチューブ2内を流れる燃料の脈動による振動やクランプ本体5が取付け面3aから浮いてしまうことによる耳障りな異音の発生を防止することができる。
【0034】
本実施例では、前記第1弾性部材13にクランプ本体5の当接面5aから突出する突起部13cを形成し、クランプ本体5の取り付け時に突起部13cを取付け面3aに押し付けて当接させたので、フューエル脈動による振動がクランプ本体5からダッシュパネル3に伝わるのを抑制することができ、この点からも異音の発生を防止できる。
【0035】
またエンジン振動等の外力により前記クランプ本体5がダッシュパネル3から浮いた場合にも、前記突起部13cは取付け面3aに押し付けられた状態で当接しているので、クランプ本体5がダッシュパネル3に干渉することによる異音の発生を防止できる。
【0036】
また本実施例では、前記突起部13cが取付け面3aに押し付けられて当接したときの当接反力F2をフューエルチューブ2に伝達させるようにしたので、弾性部材13の本体部13aが弾性変形してフューエルチューブ2との隙間をなくすことができ、フューエルチューブ2がずれた状態で保持されていてもフューエルチューブ2を確実に安定して保持することができる。
【0037】
このように本実施例では、クランプ本体5に一対の弾性片5iを形成し、該クランプ本体5に配設された第1弾性部材13にクランプ本体5の当接面5aから突出する突起部13cを形成するだけの構造であるので、従来構造に比べて簡単な構造で済み、低コストで実現できる。
【0038】
なお、前記実施例では、クランプ本体5をダッシュパネル3に固定されたスタッドボルト4に嵌合させることにより固定したが、本発明は、クランプ本体の当接面側にクリップを設け、該クリップを被固定部に形成された孔に挿着することにより取り付けるようにしてもよい。
【0039】
また前記実施例では、フューエルチューブをダッシュパネルに固定した場合を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えばブレーキブースタのマスタシリンダに接続されるブレーキチューブ,エアコン用チューブあるいはハーネス等のチューブにも適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 クランプ
2 フューエルチューブ
3 ダッシュパネル(被固定部)
3a 取付け面
5 クランプ本体
5a 当接面
5i 弾性片
6 保持部
13 第1弾性部材
13c 突起部
14 第2弾性部材
F1 反発力
F2 当接反力
図1
図2
図3
図4