(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記冷媒が、前記一般式(A)で示される化合物として、ジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、プロパン(R290)およびイソブタン(R600a)から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の冷凍機用作動流体組成物。
前記基油が炭素/酸素モル比が2.5以上5.8以下のポリオールエステルを含有し、該ポリオールエステルが、炭素数4〜9の脂肪酸と炭素数4〜12の多価アルコールとから合成されるポリオールエステルである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の冷凍機用作動流体組成物。
前記基油が炭素/酸素モル比が2.5以上5.8以下のポリアルキレングリコール化合物を含有し、該ポリアルキレングリコール化合物が、プロピレンオキサイドの単独重合鎖またはプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合鎖を有し、その両末端の少なくとも一方がエーテル結合で封鎖された化合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0026】
本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、
モノフルオロエタンを含有する冷媒と、
ポリオールエステル、ポリビニルエーテルおよびポリアルキレングリコール化合物から選ばれる少なくとも1種を基油として含有し、該基油の炭素/酸素モル比が2.5以上5.8以下である冷凍機油と、
を含有する。
C
2H
nF
6−n (A)
[式中、nは1または2を示す。]
【0027】
本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物において、冷媒と冷凍機油との配合割合は特に制限されないが、冷媒と冷凍機油の質量比が90:10〜30:70であることが好ましく、より好ましくは80:20〜40:60である。
【0028】
次に、冷凍機用作動流体組成物の含有成分について詳述する。
【0029】
[冷媒]
本実施形態における冷媒はモノフルオロエタン(HFC−161)を含有する。モノフルオロエタンは分子内にフッ素を1個有し、特徴的な特性を示す。
【0030】
すなわち、まず、冷媒としてHCFC−22が使用されてきた分野において、低GWP冷媒として熱力学特性から最も適しているのはプロパン(R290)である。しかし、プロパンは強燃性であることから安全面の大きな問題と、かつ冷凍機油と共存した場合、冷凍機油に溶けすぎて油の粘度を大幅に下げ、潤滑性を低下させるという課題がある。
【0031】
これに対してモノフルオロエタンは、GWPが100以下と小さく、沸点が−37℃であり、HCFC−22の沸点−41℃と接近しており熱力学特性が類似で、単独でも冷媒としての熱力学特性、冷凍機油との相溶性、安定性が良好である。また、可燃性ではあるものの、プロパンの爆発下限値である2.1容量%に対しHFC−161の爆発下限値は5.0容量%であり、さらにプロパンより沸点が5℃高く、低圧であり冷媒リークを起こしにくくはるかに安全性が高い。室内の冷媒濃度が5.0容量%に達することは殆ど無い。また、分子内にフッ素を有することから冷凍機油への溶解量がプロパンよりはるかに少なく、冷凍・空調装置1つあたりの冷媒チャージ量が少なくて済み、相応の安全対策をすることにより実用化は可能であると考えられる。共存する冷凍機油への溶解量が少ないことにより、冷凍機油の粘度低下も小さく、潤滑性に関しても有利な方向であり、分子内に二重結合が無いことから安定性も問題はない。
【0032】
また、本実施形態における冷媒は、モノフルオロエタンに加えて、下記一般式(A)で示される化合物および二酸化炭素から選ばれる少なくとも1種を更に含有してもよい。
C
pH
qF
r (A)
[式中、pは1〜4の整数を示し、qは1〜10の整数を示し、rは0〜5の整数を示す。]
【0033】
本実施形態における冷媒が上記一般式(A)で示される化合物および二酸化炭素から選ばれる少なくとも1種を含有することによって、モノフルオロエタンに由来する可燃性を低減することができる。また、冷媒組成の調整により、使用目的に応じた冷媒の熱力学特性の調整を容易かつ確実に行うことができ、システムの高効率化の点で有効である。
【0034】
モノフルオロエタンと組み合わせる好ましい成分について、括弧内に沸点、GWP、燃焼性を付記して列挙すると、HFC−32(−52℃、675、微燃性)、HFC−152a(−25℃、120、可燃性)、HFC−143a(−47℃、4300、微燃性)、HFC−134a(−26℃、1300、不燃性)、HFC−125(−49℃、3400、不燃性)、HFO−1234ze(−19℃、6、微燃性)、HFO−1234yf(−29℃、4、微燃性)、プロパン(−42℃、3、強燃性)、イソブタン(−12℃、3、強燃性)、二酸化炭素(−78℃、1、不燃性)が挙げられる。これらの成分は2種以上を組み合わせてもよい。
【0035】
例えば、本実施形態における冷媒(混合冷媒)の安全性を高めるためには、不燃性冷媒を配合すればよいが、不燃性のHFC冷媒は総じてGWPが高い。そこで、微燃性冷媒を配合して特性のバランスをとる方法がある。特に、二酸化炭素は不燃であり、GWPの基準化合物で1と小さいことから、熱力学特性に影響しない範囲での配合は有効である。
また、効率を高めるためには高圧な冷媒、つまり沸点の低い冷媒を配合することになるが、プロパンは強燃性であることから、HFC−32、HFC−143a、HFC−125が候補となる。
【0036】
GWPを小さくするには、HFO−1234ze、HFO−1234yf、二酸化炭素さらにはプロパン、イソブタンが好ましい。
【0037】
また、HCFC−22が使われてきた分野以外に適用するために混合冷媒の圧力を下げる場合は、総合的な特性バランスを考慮し、沸点が−30℃より高いHFC−134a、HFO−1234ze、HFO−1234yfなどの比較的圧力の低い冷媒から選定することになる。
【0038】
本実施形態における冷媒がモノフルオロエタンと上記成分との混合冷媒の場合、当該混合冷媒中のモノフルオロエタンの含有割合が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。また、GWPについては300以下とすることが、地球環境保護の観点から好ましく、200以下、さらに150以下がより好ましい。本実施形態において使用される混合冷媒は、共沸混合物であることが好ましいが、冷媒として必要な物性を有していれば特に共沸混合物である必要はない。
【0039】
[冷凍機油]
本実施形態に係る冷凍機油はポリオールエステル、ポリビニルエーテルおよびポリアルキレングリコール化合物から選ばれる少なくとも1種を基油として含有し、該基油の炭素/酸素モル比は2.5以上5.8以下である。基油中の炭素および酸素については、一般的な元素分析法により定量分析することができる。炭素分析については燃焼により二酸化炭素に変換した後の熱伝導度法やガスクロマトグラフィー法などがあり、酸素分析については炭素により一酸化炭素に導き定量分析する炭素還元法が一般的であり、Shutze−Unterzaucher法が広く実用化されている。
【0040】
なお、基油が2種以上の混合基油である場合、混合基油の炭素/酸素モル比が2.5以上5.8以下である限りにおいて、混合基油に含まれる各成分の炭素/酸素モル比は特に制限されないが、ポリオールエステル、ポリビニルエーテルおよびポリアルキレングリコール化合物の各々の炭素/酸素モル比が2.5以上5.8以下であることが好ましい。これらの好ましい例については後述する。
【0041】
[ポリオールエステル]
ポリオールエステルは、多価アルコールとカルボン酸とから合成されるエステルであり、炭素/酸素モル比が、好ましくは2.5以上5.8以下であり、より好ましくは3.2以上5.0以下であり、更に好ましくは4.0以上5.0以下である。カルボン酸としては、脂肪酸(1価脂肪族カルボン酸)、特には飽和脂肪酸が好ましく用いられ、その炭素数は4以上9以下が、特には5以上9以下が好ましい。ポリオールエステルは、多価アルコールの水酸基の一部がエステル化されずに水酸基のまま残っている部分エステルであっても良く、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであっても良く、また部分エステルと完全エステルの混合物であっても良いが、水酸基価が好ましくは10mgKOH/g以下、さらに好ましくは5mgKOH/g以下、最も好ましくは3mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0042】
[脂肪酸]
(a)冷媒の主成分である上記一般式(A)で示されるハイドロフルオロエタン、ジフルオロメタンおよび2,3,3,3−テトラフルオロプロペンのうち、冷凍機油との相溶性に劣るジフルオロメタンの割合が多い場合、例えば冷媒中のジフルオロメタンの割合が40質量%以上の場合には、ポリオールエステルを構成する脂肪酸のうち、分岐脂肪酸の割合が50〜100モル%、特には70〜100モル%、更には90〜100モル%が好ましい。
【0043】
炭素数4〜9の分岐脂肪酸としては、具体的には、分岐状のブタン酸、分岐状のペンタン酸、分岐状のヘキサン酸、分岐状のヘプタン酸、分岐状のオクタン酸、分岐状のノナン酸が挙げられる。さらに具体的には、α位および/またはβ位に分岐を有する脂肪酸が好ましく、イソブタン酸、2−メチルブタン酸、2−メチルペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−メチルヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸などが好ましく、中でも2−エチルヘキサン酸および/または3,5,5−トリメチルヘキサン酸が最も好ましい。なお、炭素数5〜9の分岐脂肪酸以外の脂肪酸を含んでいてもよい。
【0044】
(b)冷媒の主成分のうち、上記一般式(A)で示されるハイドロフルオロエタンおよびジフルオロメタンの含有量の合計よりも2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの含有量の合計が多い場合には、冷凍機油と相溶しやすくなることから、脂肪酸の内、直鎖脂肪酸の割合が50〜95モル%、特には60〜90モル%、更には70〜85モル%が好ましい。
【0045】
炭素数4〜9の直鎖脂肪酸としては、具体的には、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸が挙げられる。中でもペンタン酸および/またはヘプタン酸が、特には両者の混合酸が最も好ましい。直鎖のペンタン酸の含有量は、特に相溶性の点から、30モル%以上が好ましく、他方、特に加水分解安定性の点から、50モル%以下、特には45モル%以下が好ましい。ヘプタン酸の含有量は、潤滑性の点から20モル%以上、特には25モル%以上が、更には30モル%以上好ましい。他方、特に加水分解安定性の点から、50モル%以下、好ましくは45モル%以下である。直鎖脂肪酸以外の分岐脂肪酸としては、炭素数5〜9の分岐脂肪酸が、特には2−エチルヘキサン酸および/または3,5,5−トリメチルヘキサン酸が好ましい。3,5,5−トリメチルヘキサン酸の含有量は、特に加水分解安定性の点から、5モル%以上、特には10モル%以上が好ましく、他方、特に相溶性および潤滑性の点から、30モル%以下、特には25%以下が好ましい。
【0046】
上記(b)の場合の好ましい脂肪酸としては、具体的には、直鎖のペンタン酸および直鎖のヘプタン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸の混合酸が好ましく、この混合酸が直鎖のペンタン酸を30〜50モル%、直鎖のヘプタン酸を20〜50モル%および3,5,5−トリメチルヘキサン酸を5〜30モル%含有するものであることがより好ましい。
【0047】
[多価アルコール]
ポリオールエステルを構成する多価アルコールとしては、水酸基を2〜6個有する多価アルコールが好ましく用いられる。多価アルコールの炭素数としては、4〜12、特には5〜10が好ましい。ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールが好ましい。冷媒との相溶性および加水分解安定性に特に優れることからペンタエリスリトールまたはペンタエリスリトールとジ−(ペンタエリスリトール)の混合エステルが最も好ましい。
【0048】
[ポリビニルエーテル]
ポリビニルエーテルの炭素/酸素モル比は、好ましく2.5以上5.8以下であり、より好ましくは3.2以上5.8以下であり、更に好ましくは4.0以上5.0以下である。炭素/酸素モル比がこの範囲未満では吸湿性が高くなり、この範囲を超えると相溶性が低下する。また、ポリビニルエーテルの重量平均分子量は、好ましくは200以上3000以下、より好ましくは500以上1500以下である。
【0049】
本実施形態において好ましく用いられるポリビニルエーテルは、下記一般式(1)で表される構造単位をする。
【化2】
[式中、R
1,R
2およびR
3は同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R
4は炭素数1〜10の二価の炭化水素基または炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R
5は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mは前記ポリビニルエーテルについてのmの平均値が0〜10となるような数を示し、R
1〜R
5は構造単位毎に同一であっても異なっていてもよく、一の構造単位においてmが2以上である場合には、複数のR
4Oは同一でも異なっていてもよい。]
【0050】
上記一般式(1)におけるR
1、R
2およびR
3は、少なくとも1つが水素原子、特には全てが水素原子であることが好ましい。一般式(1)におけるmは0以上10以下、特には0以上5以下が、更には0であることが好ましい。一般式(1)におけるR
5は炭素数1〜20の炭化水素基を示す。この炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、アリール基、アリールアルキル基などが挙げられ、アルキル基、特には炭素数1以上5以下のアルキル基が好ましい。
【0051】
本実施形態に係るポリビニルエーテルは、一般式(1)で表される構造単位が同一である単独重合体であっても、2種以上の構造単位で構成される共重合体であってもよいが、共重合体とすることにより、相溶性を満足しつつ潤滑性、絶縁性、吸湿性等を一層向上させることができる効果がある。この際、原料となるモノマーの種類、開始剤の種類ならびに共重合体の比率を選ぶことにより、油剤の上記性能を目的レベルに合わせることが可能となる。従って、冷凍システムあるいは空調システムにおけるコンプレッサーの型式、潤滑部の材質および冷凍能力や冷媒の種類等により異なる潤滑性、相溶性等の要求に応じた油剤を自在に得ることができるという効果がある。共重合体はブロック共重合体またはランダム共重合体のいずれであってもよい。
【0052】
本実施形態にかかるポリビニルエーテルが共重合体である場合、当該共重合体は、上記一般式(1)で表され且つR
5が炭素数1〜3のアルキル基である構造単位(1−1)と、上記一般式(1)で表され且つR
5が炭素数3〜20、好ましくは3〜10、更に好ましくは3〜8のアルキル基である構造単位(1−2)と、を含むことが好ましい。構造単位(1−1)におけるR
5としてはエチル基が特に好ましく、また、構造単位(1−2)におけるR5としてはイソブチル基が特に好ましい。さらに、本実施形態に係るポリビニルエーテルが上記の構造単位(1−1)および(1−2)を含む共重合体である場合、構造単位(1−1)と構造単位(1−2)とのモル比は、5:95〜95:5が好ましく、20:80〜90:10がより好ましく、更には70:30〜90:10が好ましい。当該モル比が上記範囲を逸脱する場合は冷媒との相溶性が不十分となり、また、吸湿性が高くなる傾向にある。
【0053】
本実施形態に係るポリビニルエーテルは、上記一般式(1)で表される構造単位のみで構成されるものであってもよいが、下記一般式(2)で表される構造単位をさらに含む共重合体であってもよい。この場合、共重合体はブロック共重合体またはランダム共重合体のいずれであってもよい。
【化3】
[式中、R
6〜R
9は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。]
【0054】
〔ポリビニルエーテルの末端構造〕
本実施形態に係るポリビニルエーテルは、それぞれ対応するビニルエーテル系モノマーの重合、および対応するオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーと対応するビニルエーテル系モノマーとの共重合により製造することができる。一般式(1)で表される構造単位に対応するビニルエーテル系モノマーとしては、下記一般式(3)で表されるモノマーが好適である。
【化4】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびmは、それぞれ一般式(1)中のR
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびmと同一の定義内容を示す。]
【0055】
本実施形態に係るポリビニルエーテルとしては、以下の末端構造を有するものが好適である。
(A)一方の末端が、一般式(4)または(5)で表され、かつ他方の末端が一般式(6)または(7)で表される構造を有するもの。
【化5】
[式中、R
11、R
21およびR
31は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R
41は炭素数1〜10の二価の炭化水素基または炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R
51は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mはポリビニルエーテルについてのmの平均値が0〜10となるような数を示し、mが2以上の場合には、複数のR
41Oは同一でも異なっていてもよい。]
【化6】
[式中、R
61、R
71、R
81およびR
91は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。]
【化7】
[式中、R
12,R
22およびR
32は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示し、R
42は炭素数1〜10の二価の炭化水素基または炭素数2〜20の二価のエーテル結合酸素含有炭化水素基を示し、R
52は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、mはポリビニルエーテルについてのmの平均値が0〜10となるような数を示し、mが2以上の場合には、複数のR
41Oは同一でも異なっていてもよい。]
【化8】
[式中、R
62、R
72、R
82およびR
92は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。]
【0056】
(B)一方の末端が上記一般式(4)または(5)で表され、かつ他方の末端が下記一般式(8)で表される構造を有するもの。
【化9】
[式中、R
13、R
23およびR
33は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基を示す。]
【0057】
このようなポリビニルエーテル系化合物の中で、特に次に挙げるものが本実施形態に係る冷凍機油の主成分として好適である。
(1)一方の末端が一般式(5)または(6)で表され、かつ他方の末端が一般式(7)または(8)で表される構造を有し、一般式(1)におけるR
1、R
2およびR
3が共に水素原子、mが0〜4の数、R
4が炭素数2〜4の二価の炭化水素基およびR
5が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
(2)一般式(1)で表される構造単位のみを有するものであって、一方の末端が一般式(5)で表され、かつ他方の末端が一般式(7)で表される構造を有し、一般式(1)におけるR
1、R
2およびR
3が共に水素原子、mが0〜4の数、R
4が炭素数2〜4の二価の炭化水素基およびR
5が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
(3)一方の末端が一般式(5)または(6)で表され、かつ他方の末端が一般式(9)で表される構造を有し、一般式(1)におけるR
1、R
2およびR
3が共に水素原子、mが0〜4の数、R
4が炭素数2〜4の二価の炭化水素基およびR
5が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
(4)一般式(1)で表される構造単位のみを有するものであって、その一方の末端が一般式(III)で表され、かつ他方の末端が一般式(9)で表される構造を有し、一般式(1)におけるR
1、R
2およびR
3が共に水素原子、mが0〜4の数、R
4が炭素数2〜4の二価の炭化水素基およびR
5が炭素数1〜20の二価の炭化水素基およびR
5が炭素数1〜20の炭化水素基であるもの。
(5)上記(1)〜(4)の各々であって、一般式(1)におけるR
5が炭素数1〜3の炭化水素基である構造単位と該R
5が炭素数3〜20の炭化水素基である構造単位を有するもの。
【0058】
〔ポリビニルエーテルの製造〕
本実施形態に係るポリビニルエーテルは、前記したモノマーをラジカル重合、カチオン重合、放射線重合などによって製造することができる。重合反応終了後、必要に応じて通常の分離・精製方法を施すことにより、目的とする一般式(1)で表される構造単位を有するポリビニルエーテル系化合物が得られる。
【0059】
本実施形態にかかるポリビニルエーテルは、前記したように炭素/酸素モル比が所定の範囲にあることが必要であるが、原料モノマーの炭素/酸素モル比を調節することにより、該モル比が前記範囲にあるポリマーを製造することができる。すなわち、炭素/酸素モル比が大きいモノマーの比率が大きければ、炭素/酸素モル比の大きなポリマーが得られ、炭素/酸素モル比の小さいモノマーの比率が大きければ、炭素/酸素モル比の小さなポリマーが得られる。なお、ビニルエーテル系モノマーとオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとを共重合させる場合には、ビニルエーテル系モノマーの炭素/酸素モル比より炭素/酸素モル比の大きなポリマーが得られるが、その割合は、使用するオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーの比率やその炭素数により調節することができる。
【0060】
また、上記一般式(1)で表されるポリビニルエーテルの製造工程において、副反応を起こして分子中にアリール基などの不飽和基が形成される場合がある。ポリビニルエーテル分子中に不飽和基が形成されると、ポリビニルエーテル自体の熱安定性が低下する、重合物を生成してスラッジを生成する、あるいは抗酸化性(酸化防止性)が低下して過酸化物を生成するといった現象が起こりやすくなる。特に、過酸化物が生成すると、分解してカルボニル基を有する化合物を生成し、さらにカルボニル基を有する化合物がスラッジを生成してキャピラリ詰まりが起こりやすくなる。このため、本実施形態に係るポリビニルエーテルとしては、不飽和基等に由来する不飽和度が低いものが好ましく、具体的には0.04meq/g以下であることが好ましく、0.03meq/g以下であることがより好ましく、0.02meq/g以下であることが最も好ましい。また、過酸化物価は10.0meq/kg以下であることが好ましく、5.0meq/kg以下であることがより好ましく、1.0meq/kgであることが最も好ましい。さらに、カルボニル価は、100重量ppm以下であることが好ましく、50重量ppm以下であることがより好ましく、20重量ppm以下であることが最も好ましい。
【0061】
なお、本発明における不飽和度、過酸化物価およびカルボニル価とは、それぞれ日本油化学会制定の基準油脂分析試験法により測定した値をいう。すなわち、本発明における不飽和度とは、試料にウィス液(ICl−酢酸溶液)を反応させ、暗所に放置し、その後、過剰のIClをヨウ素に還元し、ヨウ素分をチオ硫酸ナトリウムで滴定してヨウ素価を算出し、このヨウ素価をビニル当量に換算した値(meq/g)をいい;本発明における過酸化物価とは、試料にヨウ化カリウムを加え、生じた遊離のヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定し、この遊離のヨウ素を試料1kgに対するミリ当量数に換算した値(meq/kg)をいい;本発明におけるカルボニル価とは、試料に2,4−ジニトロフェニルヒドラジンを作用させ、発色性あるキノイドイオンを生ぜしめ、この試料の480nmにおける吸光度を測定し、予めシンナムアルデヒドを標準物質として求めた検量線を基に、カルボニル量に換算した値(重量ppm)をいう。また、水酸基価は特に限定されないが、10mgKOH/g、好ましくは5mgKOH/g、さらに好ましくは3mgKOH/gであるのが望ましい。
【0062】
[ポリアルキレングリコール化合物]
本実施形態に係るポリアルキレングリコール(PAG)化合物の炭素/酸素モル比は、好ましくは2.5以上5.8以下であり、好ましくは2.5以上4.0以下であり、更に好ましくは2.7以上3.5以下である。モル比がこの範囲未満では吸湿性が高く、電気絶縁性が低くなり、この範囲を超えると相溶性が低下する。当該ポリアルキレングリコール化合物の重量平均分子量は、好ましくは200以上3000以下、より好ましくは500以上1500以下である。
【0063】
[ポリアルキレングリコールの構造単位]
ポリアルキレングリコールは種々の化学構造のものがあるが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどが基本化合物で、単位構造はオキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレンであり、それぞれモノマーであるエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドを原料として、開環重合により得ることができる。
【0064】
ポリアルキレングリコールとしては、例えば下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
R
1−〔(OR
2)
f−OR
3〕
g (1)
[式(1)中、R
1は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアシル基または水酸基を2〜8個有する化合物の残基を表し、R
2は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、R
3は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数2〜10のアシル基を表し、fは1〜80の整数を表し、gは1〜8の整数を表す。]
【0065】
上記一般式(1)において、R
1、R
3で表されるアルキル基は直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。当該アルキル基の炭素数は好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜6である。アルキル基の炭素数が10を超えると作動媒体との相溶性が低下する傾向にある。
【0066】
また、R
1、R
3で表されるアシル基のアルキル基部分は直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。アシル基の炭素数は、好ましくは2〜10であり、より好ましくは2〜6である。当該アシル基の炭素数が10を超えると作動媒体との相溶性が低下し、相分離を生じる場合がある。
【0067】
R
1、R
3で表される基が、ともにアルキル基である場合、あるいはともにアシル基である場合、R
1、R
3で表される基は同一でも異なっていてもよい。さらに、gが2以上の場合は、同一分子中の複数のR
1、R
3で表される基は同一でも異なっていてもよい。
【0068】
R
1で表される基が水酸基を2〜8個有する化合物の残基である場合、この化合物は鎖状のものであってもよいし、環状のものであってもよい。
【0069】
上記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールの中でも、R
1、R
3のうちの少なくとも1つがアルキル基(より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)であることが好ましく、特にメチル基であることが作動媒体との相溶性の点から好ましい。
【0070】
さらには、熱・化学安定性の点から、R
1とR
3との双方がアルキル基(より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)であることが好ましく、とりわけ双方がメチル基であることが好ましい。
【0071】
製造容易性およびコストの点から、R
1またはR
3のいずれか一方がアルキル基(より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)であり、他方が水素原子であることが好ましく、とりわけ一方がメチル基であり、他方が水素原子であることが好ましい。また、潤滑性およびスラッジ溶解性の点からは、R
1およびR
3の双方が水素原子であることが好ましい。
【0072】
上記一般式(1)中のR
2は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、このようなアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。また、OR
2で表される繰り返し単位のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。同一分子中のオキシアルキレン基は同一であってもよく、また、2種以上のオキシアルキレン基が含まれていてもよい。
【0073】
上記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールの中でも、作動媒体との相溶性および粘度−温度特性の観点からは、オキシエチレン基(EO)とオキシプロピレン基(PO)とを含む共重合体が好ましく、このような場合、焼付荷重、粘度−温度特性の点から、オキシエチレン基とオキシプロピレン基との総和に占めるオキシエチレン基の割合(EO/(PO+EO))が0.1〜0.8の範囲にあることが好ましく、0.3〜0.6の範囲にあることがより好ましい。
【0074】
また、吸湿性や熱・酸化安定性の点ではEO/(PO+EO)の値が0〜0.5の範囲にあることが好ましく、0〜0.2の範囲にあることがより好ましく、0(すなわちプロピレンオキサイド単独重合体)であることが最も好ましい。
【0075】
上記一般式(1)中のfは、オキシアルキレン基OR
2の繰り返し数(重合度)を表し、1〜80の整数である。また、gは1〜8の整数である。例えばR
1がアルキル基またはアシル基である場合、gは1である。R
1が水酸基を2〜8個有する化合物の残基である場合、gは当該化合物が有する水酸基の数となる。
【0076】
また、fとgとの積(f×g)については特に制限されないが、前記した冷凍機用潤滑油としての要求性能をバランスよく満たすためには、f×gの平均値が6〜80となるようにすることが好ましい。
【0077】
一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールの数平均分子量は好ましくは500〜3000、さらに好ましくは600〜2000、より好ましくは600〜1500であり、nは当該ポリアルキレングリコールの数平均分子量が上記の条件を満たすような数であることが好ましい。ポリアルキレングリコールの数平均分子量が低すぎる場合には冷媒共存下での潤滑性が不十分となる。他方、数平均分子量が高すぎる場合には、低温条件下で冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が狭くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害が起こりやすくなる。
【0078】
ポリアルキレングリコールの水酸基価は特に限定されないが、100mgKOH/g以下、好ましくは50mgKOH/g以下、さらに好ましくは30mgKOH/g以下、最も好ましくは10mgKOH/g以下であるのが望ましい。
【0079】
本実施形態に係るポリアルキレングリコールは、従来より公知の方法を用いて合成することができる(「アルキレンオキシド重合体」、柴田満太他、海文堂、平成2年11月20日発行)。例えば、アルコール(R
1OH;R
1は上記一般式(1)中のR
1と同一の定義内容を表す)に所定のアルキレンオキサイドの1種以上を付加重合させ、さらに末端水酸基をエーテル化もしくはエステル化することによって、上記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールが得られる。なお、上記の製造工程において異なる2種以上のアルキレンオキサイドを使用する場合、得られるポリアルキレングリコールはランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよいが、より酸化安定性および潤滑性に優れる傾向にあることからブロック共重合体であることが好ましく、より低温流動性に優れる傾向にあることからランダム共重合体であることが好ましい。
【0080】
本実施形態に係るポリアルキレングリコールの100℃における動粘度は5〜20mm
2/sであることが好ましく、好ましくは6〜18mm
2/s、より好ましくは7〜16mm
2/s、さらに好ましくは8〜15mm
2/s、最も好ましくは10〜15mm
2/sである。100℃における動粘度が前記下限値未満であると冷媒共存下での潤滑性が不十分となり、他方、前記上限値を超えると、冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が狭くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害が起こりやすくなる。また、当該ポリアルキレングリコールの40℃における動粘度は、40℃における動粘度が10〜200mm
2/sであることが好ましく、20〜150mm
2/sであることがより好ましい。40℃における動粘度が10mm
2/s未満であると潤滑性や圧縮機の密閉性が低下するという傾向にあり、また、200mm
2/sを越えると、低温条件下で冷媒に対して相溶性を示す組成範囲が狭くなり、冷媒圧縮機の潤滑不良や蒸発器における熱交換の阻害が起こりやすくなる傾向にある。
【0081】
また、上記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールの流動点は−10℃以下であることが好ましく、−20〜−50℃であることがより好ましい。流動点が−10℃以上のポリアルキレングリコールを用いると、低温時に冷媒循環システム内で冷凍機油が固化しやすくなる傾向にある。
【0082】
また、上記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールの製造工程において、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが副反応を起こして分子中にアリール基などの不飽和基が形成される場合がある。ポリアルキレングリコール分子中に不飽和基が形成されると、ポリアルキレングリコール自体の熱安定性が低下する、重合物を生成してスラッジを生成する、あるいは抗酸化性(酸化防止性)が低下して過酸化物を生成するといった現象が起こりやすくなる。特に、過酸化物が生成すると、分解してカルボニル基を有する化合物を生成し、さらにカルボニル基を有する化合物がスラッジを生成してキャピラリ詰まりが起こりやすくなる。
【0083】
したがって、本実施形態に係るポリアルキレングリコールとしては、不飽和基等に由来する不飽和度が低いものが好ましく、具体的には0.04meq/g以下であることが好ましく、0.03meq/g以下であることがより好ましく、0.02meq/g以下であることが最も好ましい。また、過酸化物価は10.0meq/kg以下であることが好ましく、5.0meq/kg以下であることがより好ましく、1.0meq/kgであることが最も好ましい。さらに、カルボニル価は、100重量ppm以下であることが好ましく、50重量ppm以下であることがより好ましく、20重量ppm以下であることが最も好ましい。
【0084】
本実施形態において、不飽和度、過酸化物価およびカルボニル価の低いポリアルキレングリコールを得るためには、プロピレンオキサイドを反応させる際の反応温度を120℃以下(より好ましくは110℃以下)とすることが好ましい。また、製造に際してアルカリ触媒を使用することがあれば、これを除去するために無機系の吸着剤、例えば、活性炭、活性白土、ベントナイト、ドロマイト、アルミノシリケート等を使用すると、不飽和度を減ずることができる。また、当該ポリアルキレングリコールを製造または使用する際に酸素との接触を極力避けたり、酸化防止剤を添加することによっても過酸化物価またはカルボニル価の上昇を防ぐことができる。
【0085】
本実施形態に係るポリアルキレングリコール化合物は、炭素/酸素モル比が所定の範囲であることが必要であるが、原料モノマーのタイプ、混合比を選定、調節することにより、該モル比が前記範囲にある重合体を製造することができる。
【0086】
冷凍機油中のポリオールエステル、ポリビニルエーテルあるいはポリアルキレン化合物の含有量は、潤滑性、相溶性、熱・化学的安定性、電気絶縁性など冷凍機油に要求される特性に優れるためには、冷凍機油全量を基準として、合計で80質量%以上、特には90質量%以上が好ましい。基油として、後述のポリオールエステル、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコール化合物以外に、鉱油、オレフィン重合体、ナフタレン化合物、アルキルベンゼン等の炭化水素系油、ならびにカーボネート、ケトン、ポリフェニルエーテル、シリコーン、ポリシロキサン、パーフルオロエーテルなどの酸素を含有する合成油を併用して用いても良い。酸素を含有する合成油としては、上記の中でもカーボネート、ケトンが好ましく用いられる。
【0087】
冷凍機油の動粘度は特に限定されないが、40℃における動粘度は、好ましくは3〜1000mm
2/s、より好ましくは4〜500mm
2/s、最も好ましくは5〜400mm
2/sとすることができる。また、100℃における動粘度は好ましくは1〜100mm
2/s、より好ましくは2〜50mm
2/sとすることができる。
【0088】
冷凍機油の体積抵抗率は特に限定されないが、好ましくは1.0×10
9Ω・m以上、より好ましくは1.0×10
10Ω・m以上、最も好ましくは1.0×10
11Ω・m以上とすることができる。特に、密閉型の冷凍機用に用いる場合には高い電気絶縁性が必要となる傾向にある。なお、本発明において、体積抵抗率とは、JIS C 2101「電気絶縁油試験方法」に準拠して測定した25℃での値を意味する。
【0089】
冷凍機油の水分含有量は特に限定されないが、冷凍機油全量基準で好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下とすることができる。特に密閉型の冷凍機用に用いる場合には、冷凍機油の熱・化学的安定性や電気絶縁性への影響の観点から、水分含有量が少ないことが求められる。
【0090】
冷凍機油の酸価は特に限定されないが、冷凍機または配管に用いられている金属への腐食を防止するため、および本実施形態に係る冷凍機油に含有されるエステルの分解を防止するため、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下とすることができる。なお、本発明において、酸価とは、JISK2501「石油製品および潤滑油−中和価試験方法」に準拠して測定した酸価を意味する。
【0091】
冷凍機油の灰分は特に限定されないが、本実施形態に係る冷凍機油の熱・化学的安定性を高めスラッジ等の発生を抑制するため、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下とすることができる。なお、本発明において、灰分とは、JISK2272「原油および石油製品の灰分ならびに硫酸灰分試験方法」に準拠して測定した灰分の値を意味する。
【0092】
本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、必要に応じてさらに各種添加剤を配合した形で使用することもできる。なお、以下の説明において、添加剤の含有量については、冷凍機油組成物全量を基準として示すが、冷凍機用流体組成物におけるこれらの成分の含有量は、冷凍機油組成物全量を基準とし、含有量は5質量%以下、特には、2質量%以下が好ましい。
【0093】
本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物の耐摩耗性、耐荷重性をさらに改良するために、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、チオリン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステルおよび亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン化合物を配合することができる。これらのリン化合物は、リン酸または亜リン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体である。
【0094】
また、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、その熱・化学的安定性をさらに改良するために、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、アリルオキシラン化合物、アルキルオキシラン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステルおよびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物を含有することができる。
【0095】
また、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、その性能をさらに高めるため、必要に応じて従来公知の冷凍機油用添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えばジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ビスフェノールA等のフェノール系の酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン等のアミン系の酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛などの摩耗防止剤、塩素化パラフィン、硫黄化合物等の極圧剤、脂肪酸等の油性剤、シリコーン系等の消泡剤、ベンゾトリアゾール等の金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するルームエアコン、冷蔵庫、あるいは開放型または密閉型のカーエアコンに好ましく用いられる。また、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物および冷凍機油は、除湿機、給湯器、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置等に好ましく用いられる。さらに、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物および冷凍機油は、遠心式の圧縮機を有するものにも好ましく用いられる。
【実施例】
【0097】
以下、実施例および比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0098】
[冷凍機油]
まず、以下に示す基油1〜4に酸化防止剤であるジ−ter.−ブチル−p−クレゾ−ル(DBPC)を0.1質量%添加し、冷凍機油1〜4を調製した。冷凍機油1〜4の各種性状を表1に示す。
[基油〕
基油1:2−エチルヘキサン酸および3,5,5−トリメチルヘキサン酸の混合脂肪酸(混合比(モル比):50/50)とペンタエリスリトールとのエステル。炭素/酸素モル比:4.8
基油2:n−ペンタン酸、n−ヘプタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸の混合脂肪酸(混合比(モル比):40/40/20)とペンタエリスリトールとのエステル。炭素/酸素モル比:3.3
基油3:エチルビニルエーテルとイソブチルビニルエーテルの共重合体(エチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル=7/1(モル比)。重量平均分子量:910、炭素/酸素モル比:4.3
基油4:ポリプロピレングリコ−ルの両末端をメチルエーテル化した化合物。重量平均分子量:1100、炭素/酸素モル比:2.9
基油5:ポリオキシエチレングリコールとポリオキシプロピレングリコールの共重合体であって、片末端をメチルエーテル化した化合物。重量平均分子量:1700、炭素/酸素モル比:2.7
【0099】
【表1】
【0100】
[実施例1〜11、比較例1〜9]
実施例1〜11および比較例1〜9においては、それぞれ上記の冷凍機油1〜4のいずれかと、表2〜4に示す冷媒とを組み合わせた冷凍機用作動流体組成物について、以下に示す評価試験を実施した。なお、後述するように、冷凍機用作動流体組成物における冷媒と冷凍機油との質量比は、試験ごとに変更した。
【0101】
冷媒として、実施例にはHFC−161単独、あるいは、HFC−161に、総合的な特性を考慮し、強燃性、可燃性ではなく、GWPが比較的小さいHFC−134a、HFC−32、HFO−1234yf、二酸化炭素(R744)を、GWPが300以下になるように配合した混合冷媒A、B、Cを用いた。なお、GWPについてHFC−161の確定した値が公表されていないことから、最大値である100を用いて計算した。
比較例には、GWP値、燃焼性、熱力学特性から新冷媒として有力候補であるHFC−32、HFO−1234yfを用いた。
[冷媒]
HFC−161:モノフルオロエタン(GWP:約100)
HFC−134a:1,1,1,2−テトラフルオロエタン(GWP:1300)
HFC−32:ジフルオロメタン(GWP:675)
HFO−1234yf:2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(GWP:4)
混合冷媒A:HFC−161/HFC−134a=85/15(質量比、GWP:280)
混合冷媒B:HFC−161/HFC−32/R744=60/20/20(質量比、GWP:195)
混合冷媒C:HFC−161/HFO−1234yf=60/40(質量比、GWP:62)
【0102】
次に、実施例1〜11および比較例1〜9の冷凍機用作動流体組成物について、以下に示す評価試験を実施した。その結果を表2〜4に示す。
【0103】
[相溶性の評価]
JIS−K−2211「冷凍機油」の「冷媒との相溶性試験方法」に準拠し、混合冷媒を含む上記冷媒のそれぞれ18gに対して冷凍機油を2g配合し、冷媒と冷凍機油とが0℃において相互に溶解しているかを観察した。得られた結果を表2〜4に示す。表中、「相溶」は冷媒と冷凍機油とが相互に溶解したことを意味し、「分離」は冷媒と冷凍機油とが2層に分離したことを意味する。
【0104】
[熱・化学的安定性の評価]
JIS−K−2211に準拠し、水分を100ppm以下に調整した冷凍機油(初期色相L0.5)1gと、上記の各種冷媒1gと、触媒(鉄、銅、アルミの各線)とをガラス管に封入した後、鉄製の保護管に入れ175℃に加熱して1週間保持し試験した。試験後に、冷凍機油の色相および触媒の色変化を評価した。色相は、ASTMD156に準拠して評価した。また、触媒の色変化は、外観を目視で観察し、変化なし、光沢なし、黒化のいずれに該当するかを評価した。光沢なし、黒化の場合は冷凍機油と冷媒の混合液体、つまり作動流体が劣化しているといえる。得られた結果を表2〜4に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】