(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871690
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】ダクト内風量計および計測方法
(51)【国際特許分類】
G01F 1/28 20060101AFI20160216BHJP
G01L 5/10 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
G01F1/28 Z
G01L5/10 Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-76757(P2012-76757)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-205337(P2013-205337A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100076130
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 憲治
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲司
(72)【発明者】
【氏名】入部 真武
【審査官】
山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−221808(JP,A)
【文献】
特開平11−190740(JP,A)
【文献】
特開平5−119052(JP,A)
【文献】
特開平7−173904(JP,A)
【文献】
特開2000−278833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/20
G01F 1/28
G01P 5/02
G01L 1/00
G01L 5/04−5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクト内の風量を計測するダクト内風量計であって、
前記ダクト内を横断して配置された、線状または面状のセンサ部材と、
前記センサ部材に張力を加える巻き取りモータと、
前記巻き取りモータの回転位置を検知する回転位置検出部と、
前記センサ部材に加えられた張力を検知する演算部とを有し、
無風状態において、前記巻き取りモータでセンサ部材に所定の張力を加えると共に、この時の前記巻き取りモータの回転位置を前記回転位置検出部で検知し、前記演算部は、その回転位置を基準位置とし、
前記演算部は、送風状態において、前記回転位置検出部で検知された前記巻き取りモータの回転位置を前記基準位置に保持させるように、前記巻き取りモータを制御して、この時の前記センサ部材に加えられた張力を検知し、前記検知された張力に基づいて前記ダクト内の風量を計測し、
前記演算部は、前記センサ部材にまだ伸びが発生する前に、無風状態において、前記巻き取りモータでセンサ部材に所定の張力を加えた際に、前記回転位置検出部で検知された初期位置と、前記基準位置とを比較して、前記センサ部材の伸びを検知し、前記ダクト内の風量の計測を補正することを特徴とする、ダクト内風量計。
【請求項2】
前記演算部は、前記巻き取りモータの電流値から前記センサ部材に加えられた張力を検知することを特徴とする、請求項1に記載のダクト内風量計。
【請求項3】
請求項1または2に記載のダクト内風量計を用いた風量の計測方法であって、
無風状態において、前記巻き取りモータで、前記センサ部材に所定の張力を加えると共に、この時の前記巻き取りモータの回転位置を前記回転位置検出部で検知し、その回転位置を基準位置とし、
送風状態において、前記回転位置検出部で検知された前記巻き取りモータの回転位置を前記基準位置に保持させるように、前記巻き取りモータを制御して、この時の前記センサ部材に加えられた張力を検知し、
前記検知された張力に基づいて前記ダクト内の風量を計測し、
前記センサ部材にまだ伸びが発生する前に、無風状態において、前記巻き取りモータでセンサ部材に所定の張力を加えた際に、前記回転位置検出部で検知された初期位置と、前記基準位置とを比較して、前記センサ部材の伸びを検知し、前記ダクト内の風量の計測を補正することを特徴とする、計測方法。
【請求項4】
前記センサ部材に加えられた張力は、前記巻き取りモータの電流値から検知されることを特徴とする、請求項3に記載の計測方法。
【請求項5】
風速計をダクト内に取り付けた際に、無風状態において、前記巻き取りモータで、前記センサ部材に所定の張力を加え、この時に前記回転位置検出部で検知される前記巻き取りモータの回転位置を初期位置とすることを特徴とする、請求項3または4に記載の計測方法。
【請求項6】
前記センサ部材の伸びが閾値を超えた場合は、前記センサ部材が劣化したと判断することを特徴とする、請求項3〜5のいずれかに記載の計測方法。
【請求項7】
前記巻き取りモータが回転し続けた場合は、前記センサ部材が断線したと判断することを特徴とする、請求項3〜6のいずれかに記載の計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に付設されたダクト内の風量を計測するダクト内風量計と、そのダクト内風量計を用いた風量の計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ビルや工場等の建物には、空調用のダクトが付設されている。そして、送風効率の向上や、空調設計精度の向上などのために、ダクト内の風量を正確に計測することが要求される。
【0003】
従来、ダクト内風量を計測する場合、熱線式風速計などにより風速を計測し、その値にダクト断面積を掛け合わせることで風量を算出する方法が一般的に用いられている。しかし熱線式風速計などは、計測場所が「点」計測となる。それに対しダクト内の風速分布は、特にファンやダクトの継手付近で風が乱れ、場所によって計測される風速が大きく変化する。また、ファンやダクトの継手付近を避けて計測を行ったとしても、壁面付近の風速と中心部の風速は大きく異なる。従って、ダクト内を通過する風の風量を正確に計測するためには、ダクト断面方向に対し複数点の風速計測を行い、それらの平均値から風量を算出する必要がある。しかし、この方法では一箇所当りの計測に多大な時間がかかり、また測定者ごとの誤差も発生しやすい。更にダクト内の風速を計測する場合、一般的にはダクトに測定孔を設け、そこからセンサを挿入して計測を行う。そのため、風速を検出するセンサ部がダクトのどの位置にあるのかを目視により確認することができず、測定者の感覚に頼るところが大きい。
【0004】
上記の問題を解決する手法として、特許文献1の風量計が開示されている。これは、ダクト内を横断するように糸状のセンサを張り、風によりセンサ部が受ける力を歪センサ等で計測することで、ダクト内の平均風速を算出する方法である。
【0005】
また、ダクト内での計測ではないが、特許文献2には、重錘により鉛直方向に引っ張られた線材の中間に球体を支持し、風が球体に当ったときの重錘の鉛直方向への上昇長から風速値を算出する風速計が開示されている。また、特許文献3には、気球を係留した複数本の糸にかかる張力を検出することにより、閉塞空間内の風速と風向を測定する、風向風速測定装置が開示されている。また、特許文献4には、線状態の風圧サンプルに負荷される風荷重から風圧を計測する風圧サンプラーが開示されている。さらに、特許文献5には、流路内の流体の流れを振動体の振動によって検出するフローセンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−221808号公報
【特許文献2】特開平11−190740号公報
【特許文献3】特開平5−119052号公報
【特許文献4】実公昭59−32912号公報
【特許文献5】特開平5−333036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ダクト内に糸状のセンサを張る場合、計測対象となるダクトのサイズは様々であり、それぞれのサイズに合わせた長さのセンサを用意する必要がある。またダクト内を通過する風、中でも空調用に用いられるダクトの中を通過する風は、1日を通して環境(温度や湿度)が大きく変化する。そのような環境下で、糸状のセンサーに一定の張力を掛け続けると、次第にセンサ自体が変形(伸び)してしまう。センサ自体の長さが変化してしまうと、従来の風量計では精度低下に直結し、場合によっては計測自体ができなくなる問題があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、センサ部材の伸びが生じてもダクト内の風量を安定して精度良く計測できるダクト内風量計と計測方法を提供することを目的とする。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明によれば、ダクト内の風量を計測するダクト内風量計であって、前記ダクト内を横断して配置された、線状または面状のセンサ部材と、前記センサ部材に張力を加える巻き取りモータと、前記巻き取りモータの回転位置を検知する回転位置検出部と、前記センサ部材に加えられた張力を検知する演算部とを有し、無風状態において、前記巻き取りモータでセンサ部材に所定の張力を加えると共に、この時の前記巻き取りモータの回転位置を前記回転位置検出部で検知し、前記演算部は、その回転位置を基準位置とし、前記演算部は、送風状態において、前記回転位置検出部で検知された前記巻き取りモータの回転位置を前記基準位置に保持させるように、前記巻き取りモータを制御して、この時の前記センサ部材に加えられた張力を検知し、前記検知された張力に基づいて前記ダクト内の風量を計測し、前記演算部は、前記センサ部材にまだ伸びが発生する前に、無風状態において、前記巻き取りモータでセンサ部材に所定の張力を加えた際に、前記回転位置検出部で検知された初期位置と、前記基準位置とを比較して、前記センサ部材の伸びを検知し、前記ダクト内の風量の計測を補正することを特徴とする、ダクト内風量計が提供される。
【0010】
このダクト内風量計において、前記演算部は、前記巻き取りモータの電流値から前記センサ部材に加えられた張力を検知するものであっても良い。
【0011】
また、本発明によれば、これらのダクト内風量計を用いた風量の計測方法であって、無風状態において、前記巻き取りモータで、前記ダクト内を横断して配置された線状または面状のセンサ部材に所定の張力を加えると共に、この時の前記巻き取りモータの回転位置を前記回転位置検出部で検知し、その回転位置を基準位置とし、送風状態において、前記回転位置検出部で検知された前記巻き取りモータの回転位置を前記基準位置に保持させるように、前記巻き取りモータを制御して、この時の前記センサ部材に加えられた張力を検知し、前記検知された張力に基づいて前記ダクト内の風量を計測し、前記センサ部材にまだ伸びが発生する前に、無風状態において、前記巻き取りモータでセンサ部材に所定の張力を加えた際に、前記回転位置検出部で検知された初期位置と、前記基準位置とを比較して、前記センサ部材の伸びを検知し、前記ダクト内の風量の計測を補正することを特徴とする、計測方法が提供される。
【0012】
この計測方法において、前記センサ部材に加えられた張力は、前記巻き取りモータの電流値から検知されても良い。また、風速計をダクト内に取り付けた際に、無風状態において、前記巻き取りモータで、前記センサ部材に所定の張力を加え、この時に前記回転位置検出部で検知される前記巻き取りモータの回転位置を初期位置としても良い。また、前記センサ部材の伸びが閾値を超えた場合は、前記センサ部材が劣化したと判断しても良い。また、前記巻き取りモータが回転し続けた場合は、前記センサ部材が断線したと判断しても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、無風状態においてセンサ部材に所定の張力を加えて、この時の巻き取りモータの回転位置を基準位置とし、この基準位置に保持したまま、送風状態においてセンサ部材に加えられた張力を検知しているので、無風状態におけるセンサ部材の張力と、送風状態のセンサ部材の張力を比較することにより、ダクト内の平均流速を正確に計測することが可能となる。この場合、例えセンサ部材に伸びが生じていたとしても、無風状態におけるセンサ部材の張力と、送風状態のセンサ部材の張力を比較しているので、センサ部材の伸びはキャンセルされ、センサ部材の伸びの影響を受けることなく、ダクト内の平均流速を計測することが可能となる。この場合、センサ部材の伸び量に基づいて張力を補正することにより、センサ部材の伸びが生じてもダクト内の流速を安定して精度良く計測することが可能である。そして、こうして計測されたダクト内の平均流速と、ダクトの断面積を掛け合わせることにより、ダクト内の風量を安定して精度良く計測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態にかかるダクト内風量計の構成の概略を示す説明図であり、無風状態を示している。
【
図2】本発明の実施の形態にかかるダクト内風量計の構成の概略を示す説明図であり、送風状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
図1、2に示すように、ダクト1の始端部にファン2が取り付けてある。このファン2が稼動すると、ダクト1内は送風状態となり、ファン2が停止すると、ダクト1内は無風状態となる。ファン2に電力を送る配線3には、電流計4が装着されており、この電流計4で測定される電流値に基づいて、ファン2の稼動(送風状態)と停止(無風状態)が検知される。
【0017】
ダクト1には、ダクト1内の風量Qを計測するための、本発明の実施形態にかかる風速計10が装着されている。ダクト1の上下面には、互いに対向する位置に一対の開口部11、12が設けられている。上側の開口部11は、ダクト1の上面側に取り付けられた板状のセンサ取付金具15によって塞がれている。一方、下側の開口部12の外側には、外板ボックス16がダクト1の下面に取り付けられている。
【0018】
外板ボックス16の内部には、線状または面状のセンサ部材20が巻きつけられたローラ21と、ローラ21を回転駆動する巻き取りモータ22が収められている。ローラ21から繰り出されたセンサ部材20が、開口部12を通して外板ボックス16内からダクト1内に引き出されており、センサ部材20の先端は、センサ取付金具15に支持された留め具23に取り付けられている。これにより、センサ部材20は、ダクト1内を上下方向に横断するように配置されている。なお、留め具23は、ビス留め等の手段により、センサ部材20に対して取り外し自在に支持されている。
【0019】
外板ボックス16内において、開口部12の外側には、センサ部材20の下側位置を規制するための従動ローラ24が配置されている。また、巻き取りモータ22は、図中においてローラ21を時計回転方向に回転させるように回転トルクを与えており、これにより、ダクト1内を横断するように配置されたセンサ部材21に張力が加えられている。
【0020】
また、外板ボックス16の内部には、巻き取りモータ22の回転位置Xを検知する回転位置検出部としてのエンコーダ30と、巻き取りモータ22に加えられる電流値iを検知する電流計31も収納されている。これらエンコーダ30で検知された巻き取りモータ22の回転位置Xと、電流計31で検知された巻き取りモータ22に加えられる電流値iは、演算部32に入力されている。また、演算部32は、モータ22に加えられる電流値iを調整し、巻き取りモータ22の回転位置Xを制御することが可能である。更に、演算部32は、巻き取りモータ22に加えられる電流値iからセンサ部材20に加えられた張力Fを演算して求めることも可能である。
【0021】
次に、以上のように構成された風速計10を用いて、ダクト1内の風量Qを計測する方法を説明する。なお、以下に説明するように、先ず、調整運転を行った後、実際の計測運転を実施する。また、この風速計10において、以下に説明するように、計測の補正や、センサ部材20の劣化および断線を判断することができる。
【0022】
[調整運転]
調整運転を行う場合、
図3に示すように、ファン2の稼動を停止させ、無風状態にする(S1)。なお、ファン2の停止は、電流計4で測定される電流値に基づいて検知される。
【0023】
そして、この無風状態において、巻き取りモータ22を稼動させ、ローラ21にセンサ部材20を巻き取る方向の回転トルクを与える。これにより、
図1に示すように、ダクト1内を横断して配置された線状または面状のセンサ部材20に所定の張力F1を加える(S2)。
【0024】
この場合、センサ部材20の先端は、留め具23を介してセンサ取付金具15に固定されているため、ローラ21が回転してセンサ部材20を一定量巻取ると、それ以降センサ部材20を巻き取ることができず、巻き取りモータ22の負荷が増し、巻き取りモータ22に流れる電流i1が大きくなる。この電流値i1を予め設定しておき、電流が所定の電流値i1になったら巻き取りモータ22の稼動状態を保持するようにする。これにより、センサ部材20に所定の張力F1を掛け続けることが可能となる。この方法を用いれば、調整運転を行う際に、センサ部材20に常に所定の張力F1を加えることができ、風速計10の設置による誤差や、計測者による測定誤差などをなくすことが可能となる。
【0025】
また、センサ部材20に加えられた所定の張力F1は、この調整運転の際に、巻き取りモータ22に供給されている電流値i1から演算して求めることができる。調整運転において、巻き取りモータ22に加えられている電流値i1は、電流計31で検知されて、演算部32に入力される。演算部32は、電流値i1から張力F1を求める演算を行う。
【0026】
また一方で、調整運転を行っている時の巻き取りモータ22の回転位置Xがエンコーダ30で検知されて、演算部32に入力される。演算部32は、その回転位置Xを基準位置(X=X0)として記憶する(S3)。こうして、予め調整運転が終了する。なお、この無風状態での調整運転は、風速計10の基準(いわゆるゼ口点補正)となる重要な作業である。この風速計10は、調整運転における張力の調整を巻き取りモータ22で行うため、特許文献1に記載されているバネなどと違い張力を付与する装置の劣化がない。
【0027】
また、ダクト1内に風速計10を取り付けてから初めて調整運転を行う場合であれば、そのときの回転位置X(=基準位置X0)を、初期位置X1として演算部32を記憶しておく。これにより、後述するように、センサ部材20が仮に「伸び」などの変形が発生した場合にも、計測の補正を実施できる。なお、この初期位置X1は、センサ部材20にまだ伸びが発生する前に、巻き取りモータ22の稼動によりセンサ部材20に所定の張力F1を加えた際に検知される回転位置X(=基準位置X0)である。そして、演算部32は、このようにまだ伸びが生ずる前に、センサ部材20に所定の張力F1を加えた際に検知される回転位置X(=基準位置X0)を初期位置X1として記憶しておく。
【0028】
[計測運転]
次に、実際の計測運転を行う場合、
図4に示すように、ファン2を稼動させて送風を行い、ダクト1内を送風状態にする(S10)。なお、ファン2の稼動によって送風状態となったことは、電流計4で測定される電流値に基づいて検知される。
【0029】
この送風状態では、
図2に示すように、ダクト1内に風が流れ、ダクト1内を横断して配置されたセンサ部材20に風が衝突して、センサ部材20をダクト1の下流側(
図2において、右方向)に押し出すように、センサ部材20の断面積(送風に対する投影面積)と風速の2乗に比例した力がセンサ部材20に作用することとなる。これにより、ローラ21はセンサ部材20を繰り出す方向(
図2において反時計回転方向)に回転しようとする。
【0030】
しかしながら、エンコーダで検知されている巻き取りモータ22の回転位置Xは、基準位置(X=X0)に保持させるように制御され、これにより、センサ部材20の繰り出し(ローラ21の反時計回転方向への回転)は規制される(S11)。
【0031】
この場合、巻き取りモータ22の回転位置Xの制御は、巻き取りモータ22に電流値i2の電流を加えることにより行われる。すなわち、送風状態では、センサ部材20に送風が衝突して、ローラ21がセンサ部材20を繰り出す方向に回転しようとするが、巻き取りモータ22の回転位置Xが基準位置(X=X0)に常に保持されるように、巻き取りモータ22に加える電流の電流値i2が増加させられる。そして、巻き取りモータ22に加える電流の電流値i2が増加したことにより、ローラ21に与えられる回転トルクも大きくなり、その結果、センサ部材20に加えられている張力もF1よりも大きいF2となる。
【0032】
送風状態においてセンサ部材20に加えられる張力F2は、巻き取りモータ22に供給されている電流の電流値i2から演算して求められる(S12)。送風運転において、巻き取りモータ22に加えられている電流の電流値i2は、電流計31で検知されて、演算部32に入力される。演算部32は、電流値i2から張力F2を求める演算を行う。
【0033】
そして演算部32は、こうして検知された張力F2に基づいてダクト1内における平均風速Vを求める(S13)。ここで、平均風速Vは、次のようにして演算部32において演算して求められる。
【0034】
すなわち、演算部32は、送風状態においてセンサ部材20に加えられる張力F2と、無風状態においてセンサ部材20に加えられる所定の張力F1とを比較し、無風状態に対する張力の増加分ΔF(=F2−F1)を求める。ここで、ダクト1内の平均風速Vが大きくなるにしたがって、この増加分ΔFは大きくなる関係にあり、次式(1)で示すことができる。
V=f(ΔF) ・・・ (1)
【0035】
上記式(1)における関係(関数f)は、例えば、ダクト1内の平均風速Vと増加分ΔFとの関係を、予め実機を使用して実験的に調べておくことにより、定めることができる。そして、演算部32は、かかる関係(関数f)によって、張力F2から平均風速Vを求めることが可能となる。
【0036】
そして、ダクト1内における風量Qは、演算部32において、次式(2)によって演算され、計測される(S14)。
Q=V×S ・・・ (2)
ここで、Sはダクト1内の断面積である。
【0037】
以上のように、本発明の実施の形態にかかる風速計10によれば、巻き取りモータ22の回転位置Xを常に基準位置(X=X0)に保持しつつ、無風状態におけるセンサ部材20の張力F1に対する送風状態のセンサ部材20の張力F2の増加分ΔF(=F2−F1)に基づいて、ダクト1内の平均流速Vを正確に求めることができ、その結果、ダクト1内における風量Qを正確に計測することが可能となる。この場合、例えセンサ部材20に伸びが生じていたとしても、無風状態におけるセンサ部材20の張力F1に対する送風状態のセンサ部材20の張力F2の増加分ΔF(=F2−F1)を用いて演算しているので、センサ部材20の伸びはキャンセルされ、センサ部材20の伸びの影響を受けることなく、ダクト1内の平均流速Vを求め、ダクト1内の風量Qを安定して精度良く計測することが可能となる。なお、後述するように、センサ部材20の伸び量に基づいて張力を補正することにより、センサ部材20の伸びが生じてもダクト内の平均流速Vを更に精度良く計測することが可能となる。
【0038】
また、この風速計10は、ローラ21にセンサ部材20が長めに巻きつけられており、センサ部材20をダクト1内を横断して取り付ける際には、センサ部材20をローラ21から繰り出すので、設置するダクト1のサイズに合わせてセンサ部材20の長さを自由に調整できる。なお、特許文献1に示された技術では、センサ部に直接歪センサ、もしくはバネが接続されているため、センサ部の長さをダクトごとに調整する必要がある。
【0039】
[計測の補正、センサ部材20の劣化および断線の判断]
本発明の実施の形態にかかる風速計10は、センサ部材20が常に張力を加えた状態で配置され、ダクト1内の環境にさらされる。このため、長期間使用すると、センサ部材20に伸びが発生する心配がある。ここで、上述したように、送風状態においてセンサ部材20に掛かる力は、センサ部材20の断面積(送風に対する投影面積)とダクト1内の風速の2乗に比例する。すなわち、センサ部材20が伸びるということは、その分だけ風を受けるセンサ部材20の断面積が小さくなることを意味している。センサ部材20の断面積が小さくなると、送風状態においてセンサ部材20に加えられる張力F2が比例して小さくなり、その結果、風速が少なめに計測され、精度低下につながる。
【0040】
また、センサ部材20が一定量以上伸びてしまうと、センサ部材20の断線の危険性が出てくる。さらに、センサ部材20が断線した場合、修理が必要となる。この風速計10では、そのようなセンサ部材20の伸びに対応した計測の補正や、センサ部材20の劣化および断線を判断することが可能である。
【0041】
先に説明したように、調整運転では、センサ部材20に所定の張力F1が加えられ、その時の巻き取りモータ22の回転位置Xがエンコーダ30で検知されて、演算部32に入力される。一方、演算部32には、上述したように、風速計10をダクト1内に取り付けてから初めて調整運転を行ったときの回転位置Xが初期位置X1として記憶されている。そこで、センサ部材20の伸びによる計測誤差の補正を行う場合、演算部32は、先ず、実際に調整運転が行われた際に検知された回転位置Xと、初期位置X1を比較することにより、現在のセンサ部材20の伸び量を計測する。
【0042】
このように、実際に調整運転が行われた際に検知された回転位置Xと、初期位置X1を比較することにより、現在のセンサ部材20の伸び量を計測することができるが、一方で、センサ部材20が伸びたとしても、センサ部材20全体の体積は変化しない。センサ部材20の伸び量はセンサ部材20の直径の減少量に比例する。したがって、センサ部材20の伸び量からセンサ部材20の直径の減少量を知ることができ、その結果、センサ部材20の断面積の減少量が求められる。こうして求めたセンサ部材20の断面積の減少量に基づいて、送風状態においてセンサ部材20に加えられる張力F2を補正することで、センサ部材20の伸びが生じてもダクト1内の平均流速Vを正確に求めることができ、その結果、風量Qを正確に計測することが可能となる。
【0043】
このような、センサ部材20が伸びに起因する計測の補正は、風速計10をダクト1に設置後、例えば1ヵ月後に行った調整運転において検知された回転位置Xと、初期位置X1を比較することにより行われる。そして、算出された伸び量から、センサ部材20の断面積の減少量を計算し、その値をもとに補正を行う。なお、このように補正に用いられる初期位置X1は、センサ部材20にまだ伸びが発生する前に、センサ部材20に所定の張力F1を加えた際に検知される回転位置X(=基準位置X0)である。したがって、ダクト1内に風速計10を取り付けてから初めて調整運転を行った際に計測された回転位置X(=基準位置X0)でなくても構わない。
【0044】
また、この風速計10では、センサ部材20が一定量伸びると断線の危険性が出てくる。これを避けるため、上述したようにセンサ部材20が伸びに起因した補正を行う際に計測されたセンサ部材20の伸び量に対し、一定の闇値を設け、劣化判断・部品交換の判断材料とする。例えば、センサ部材20の伸び量に対し、一定の閾値を超えた場合は、センサ部材20が劣化したと判断し、センサ部材20の交換や、センサ取付金具15とセンサ部材20の取り付け状態の点検、ローラ21と巻き取りモータ22の点検などを適宜行う。
【0045】
また、仮にセンサ部材20の断線や、センサ支持金具15の脱落等が発生した場合、調整運転において、巻き取りモータ22が停止せずに永遠に回り続けることになる。これを利用して、調整運転時に例えば1分間、巻き取りモータ22が回り続けた場合は、センサ部材20が断線していると判断し、信号を発信する。このように、調整運転において、巻き取りモータ22の回転時間からセンサ部材20の断線や、センサ支持金具15の脱落等の不具合を判断することも可能である。
【0046】
以上、本発明の好適な実施の形態の一例を説明したが、本発明はここに示した形態に限定されない。例えば、外板ボックス16内においてセンサ部材20の下側位置を規制している従動ローラ24は無くても良い。また、線状のセンサ部材20は、ひも状の部材、糸状の部材、帯状の部材など、送風に大きな影響を与えずにダクト1内を横断して配置可能な種々の部材を使用することができる。また、巻き取りモータ22の回転位置を検知する回転位置検出部として、エンコーダ30を例示して説明したが、エンコーダ30に限られず、巻き取りモータ22の回転位置を検知できるものであれば、他の任意の手段を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、ダクト内の風量の計測に有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 ダクト
2 ファン
3 配線
4 電流計
10 風速計
11、12 開口部
15 センサ取付金具
16 外板ボックス
20 センサ部材
21 ローラ21
22 巻き取りモータ
23 留め具
24 従動ローラ
30 エンコーダ
31 電流計
32 演算部