特許第5871694号(P5871694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871694
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】繰出容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/12 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   A45D40/12
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-78772(P2012-78772)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-208154(P2013-208154A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2014年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘幸
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−178915(JP,U)
【文献】 特開平11−18830(JP,A)
【文献】 実開昭60−143513(JP,U)
【文献】 実開平6−62920(JP,U)
【文献】 特表2000−509631(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0208394(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/00−40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒部、および該内筒部に、周方向に相対的に回転可能に外装された外筒部を有する容器本体と、
前記内筒部内に容器軸方向に進退可能に配設され、前記容器本体内に収容される内容物を保持する保持部と、を備え、
前記保持部は、前記内容物を容器軸方向の一方側に突出させた状態で保持するとともに前記内筒部と前記外筒部との周方向の相対的な回転に伴って容器軸方向に進退させられ、前記一方側に前進することで、前記内容物を前記容器本体における前記一方側の開口部から突出させ、
前記内筒部には、前記外筒部が前記一方側にずらされて外装され、
前記内筒部において前記外筒部よりも容器軸方向の他方側に位置する部分には、有底筒状の外装体が、前記内筒部に対する周方向の相対的な回転が規制された状態で外装された繰出容器であって、
前記外装体の底壁部には、前記内筒部における前記他方側の開口部に開口する孔部が容器軸方向に貫設され、
前記底壁部における前記孔部の周縁部には、前記内筒部の内周面に設けられた被係合部に係合する弾性係合部が直接、連結され、
前記弾性係合部は、容器軸方向に弾性変形させられた状態で前記被係合部に前記一方側から係合し、弾性復元力により前記内筒部を前記他方側に付勢して前記底壁部に圧接させていることを特徴とする繰出容器。
【請求項2】
請求項1記載の繰出容器であって、
前記弾性係合部は、前記孔部の周縁部において周方向に離間した部分に各別に連結された一対の連結部と、これらの両連結部を接続し前記被係合部に当接する本体部と、を備えていることを特徴とする繰出容器。
【請求項3】
請求項2記載の繰出容器であって、
前記弾性係合部は、容器軸を間に挟んで一対配置されていることを特徴とする繰出容器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の繰出容器であって、
前記孔部は、前記外装体の底壁部に固着された被覆部材により前記他方側から覆われていることを特徴とする繰出容器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の繰出容器であって、
前記外筒部を前記内筒部に対して前記一方側に付勢し、前記外筒部に設けられた突き当て部を、前記内筒部に設けられた受け部に圧接させる付勢部材を備えていることを特徴とする繰出容器。
【請求項6】
請求項5記載の繰出容器であって、
前記付勢部材は、容器軸方向に交互に湾曲しつつ周方向に延在する環状に形成されていることを特徴とする繰出容器。
【請求項7】
請求項5または6に記載の繰出容器であって、
前記内筒部において前記外筒部よりも前記他方側に位置する部分には、径方向の外側に張り出す張り出し部が形成され、
前記付勢部材は、前記張り出し部と前記外筒部との間に配設されていることを特徴とする繰出容器。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載の繰出容器であって、
前記付勢部材には、前記外筒部、前記外筒部に対する径方向の内側から圧接する圧接部材が、周方向に複数設けられ、または周方向の全周にわたって設けられていることを特徴とする繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような繰出容器が知られている。繰出容器は、内筒部、および該内筒部に、周方向に相対的に回転可能に外装された外筒部を有する容器本体と、内筒部内に容器軸方向に進退可能に配設され、容器本体内に収容される内容物を保持する保持部と、を備えている。保持部は、内容物を容器軸方向の一方側に突出させた状態で保持するとともに内筒部と外筒部との周方向の相対的な回転に伴って容器軸方向に進退させられ、前記一方側に前進することで、内容物を容器本体における前記一方側の開口部から突出させる。
ところで、この種の繰出容器として、内筒部に、前記外筒部が前記一方側にずらされて外装され、かつ内筒部において外筒部よりも容器軸方向の他方側に位置する部分に、有底筒状の外装体が、内筒部に対する周方向の相対的な回転が規制された状態で外装された構成も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第2528703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の繰出容器では、例えば操作時などに、容器本体の内筒部と外装体とが容器軸方向にがたつくのを抑えることについて、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、容器本体の内筒部と外装体とが容器軸方向にがたつくのを抑えることができる繰出容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る繰出容器は、内筒部、および該内筒部に、周方向に相対的に回転可能に外装された外筒部を有する容器本体と、前記内筒部内に容器軸方向に進退可能に配設され、前記容器本体内に収容される内容物を保持する保持部と、を備え、前記保持部は、前記内容物を容器軸方向の一方側に突出させた状態で保持するとともに前記内筒部と前記外筒部との周方向の相対的な回転に伴って容器軸方向に進退させられ、前記一方側に前進することで、前記内容物を前記容器本体における前記一方側の開口部から突出させ、前記内筒部には、前記外筒部が前記一方側にずらされて外装され、前記内筒部において前記外筒部よりも容器軸方向の他方側に位置する部分には、有底筒状の外装体が、前記内筒部に対する周方向の相対的な回転が規制された状態で外装された繰出容器であって、前記外装体の底壁部には、前記内筒部における前記他方側の開口部に開口する孔部が容器軸方向に貫設され、前記底壁部における前記孔部の周縁部には、前記内筒部の内周面に設けられた被係合部に係合する弾性係合部が直接、連結され、前記弾性係合部は、容器軸方向に弾性変形させられた状態で前記被係合部に前記一方側から係合し、弾性復元力により前記内筒部を前記他方側に付勢して前記底壁部に圧接させていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、弾性係合部が、容器軸方向に弾性変形させられた状態で内筒部の被係合部に前記一方側から係合し、弾性復元力により内筒部を前記他方側に付勢して外装体に圧接させているので、外装体に対する容器本体の内筒部の容器軸方向の移動を、弾性係合部および外装体により容器軸方向の両側から規制することが可能になり、容器本体の内筒部と外装体とが容器軸方向にがたつくのを効果的に抑えることができる。
またこのように、弾性係合部の弾性復元力により内筒部を前記他方側に付勢することでがたつきを抑えるので、仮に内筒部や外装体などの寸法が製造公差内でばらついたとしても、がたつきを確実に抑えることができる。
【0008】
また、前記弾性係合部は、前記孔部の周縁部において周方向に離間した部分に各別に連結された一対の連結部と、これらの両連結部を接続し前記被係合部に当接する本体部と、を備えていてもよい。
【0009】
この場合、弾性係合部が、前記一対の連結部と前記本体部とを備えているので、本体部が内筒部の被係合部から受ける力を一対の連結部に分散させて受け止めることが可能になり、弾性係合部の弾性復元力により確実に内筒部を前記他方側に付勢して、容器本体の内筒部と外装体とが容器軸方向にがたつくのをより効果的に抑えることができる。
【0010】
また、前記弾性係合部は、容器軸を間に挟んで一対配置されていてもよい。
【0011】
この場合、弾性係合部が、容器軸を間に挟んで一対配置されているので、内筒部において容器軸を間に挟んで位置する部分に、弾性係合部の弾性復元力を各別に作用させることが可能になり、容器本体の内筒部と外装体とが容器軸方向にがたつくのをより一層効果的に抑えることができる。
また弾性係合部が、容器軸を間に挟んで一対配置されているので、弾性係合部を被係合部に係合させるときに、両弾性係合部を互いに接近する方向に弾性変形させながら、弾性係合部の本体部を被係合部に対して前記他方側から前記一方側に移動させた後、両弾性係合部を互いに離間する方向に復元変形させることで、弾性係合部の本体部に被係合部を容器軸方向に乗り越えさせることが可能になり、当該繰出容器の組立作業の簡便化を図ることができる。
【0012】
また、前記孔部は、前記外装体の底壁部に固着された被覆部材により前記他方側から覆われていてもよい。
【0013】
この場合、孔部が、前記被覆部材により前記他方側から覆われているので、内筒部内に孔部を通して例えば埃などの異物が入り込むのを抑えることができる。
【0014】
また、前記外筒部を前記内筒部に対して前記一方側に付勢し、前記外筒部に設けられた突き当て部を、前記内筒部に設けられた受け部に圧接させる付勢部材を備えていてもよい。
【0015】
この場合、前記付勢部材が備えられているので、内筒部に対する外筒部の容器軸方向の移動を、付勢部材および受け部により容器軸方向の両側から規制することが可能になり、内筒部と外筒部とが容器軸方向にがたつくのを効果的に抑えることができる。
またこのように、付勢部材により外筒部を内筒部に対して付勢することでがたつきを抑えるので、仮に内筒部や外筒部などの寸法が製造公差内でばらついたとしても、がたつきを確実に抑えることができる。
【0016】
また、前記付勢部材は、容器軸方向に交互に湾曲しつつ周方向に延在する環状に形成されていてもよい。
【0017】
この場合、付勢部材が、容器軸方向に交互に湾曲しつつ周方向に延在する環状に形成されているので、当該繰出容器の構造の簡素化を図ることができる。
【0018】
また、前記内筒部において前記外筒部よりも前記他方側に位置する部分には、径方向の外側に張り出す張り出し部が形成され、前記付勢部材は、前記張り出し部と前記外筒部との間に配設されていてもよい。
【0019】
この場合、付勢部材が、内筒部の張り出し部と外筒部との間に配設されているので、例えば付勢部材が、内筒部とは異なる部材と、外筒部と、の間に配設されている場合に比べて、付勢部材により外筒部を内筒部に対して前記一方側に確実に付勢して、外筒部の突き当て部を内筒部の受け部に強く圧接することが可能になり、内筒部と外筒部とが容器軸方向にがたつくのを一層効果的に抑えることができる。
【0020】
なお付勢部材が、容器軸方向に交互に湾曲しつつ周方向に延在する環状に形成されている場合には、付勢部材のうち、前記一方側に向けて凸をなす部分を外筒部に当接させ、かつ前記他方側に向けて凸をなす部分を内筒部の張り出し部に当接させることが可能になり、付勢部材を、内筒部および外筒部のいずれにも、周方向に間隔をあけて間欠的に当接させることができる。これにより、例えば付勢部材が、内筒部および外筒部のいずれにも、周方向の全周にわたって連続的に当接している場合に比べて、付勢部材と内筒部との間、および付勢部材と外筒部との間それぞれに生じる摩擦力を低減させることが可能になり、内筒部と外筒部とを周方向に円滑に相対的に回転させ操作性を確保することができる。
【0021】
また、前記付勢部材には、前記外筒部、前記外筒部に対する径方向の内側から圧接する圧接部材が、周方向に複数設けられ、または周方向の全周にわたって設けられていてもよい。
【0022】
この場合、付勢部材に前記圧接部材が設けられているので、外筒部と内筒部とが径方向にがたつくのを抑えつつ、内筒部と外筒部とが意図せずに周方向に相対的に回転するのを抑制することが可能であるとともに、内筒部と外筒部とが容器軸方向にがたつくのをより効果的に抑えることができる。
なお圧接部材が、付勢部材と一体に形成されている場合には、部品点数の増加も抑えることが可能になり、構造の複雑化を抑制することもできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る繰出容器によれば、容器本体の内筒部と外装体とが容器軸方向にがたつくのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る繰出容器の部分的な縦断面図である。
図2図1に示す繰出容器における要部の縦断面図である。
図3図1に示す繰出容器を構成する付勢部材の部分的な側面図である。
図4図1に示す繰出容器を構成する外装体の底面図である。
図5図1に示すA−A断面矢視図である。
図6】本発明の一変形例に係る繰出容器における要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る繰出容器を説明する。
図1に示すように、繰出容器10は、内筒部11、および該内筒部11に、周方向に相対的に回転可能に外装された外筒部12を有する容器本体13と、内筒部11内に容器軸O方向に進退可能に配設され、容器本体13内に収容される内容物Aを保持する保持部14と、を備えている。保持部14は、内容物Aを容器軸O方向の前側(一方側)に突出させた状態で保持するとともに内筒部11と外筒部12との周方向の相対的な回転に伴って容器軸O方向に進退させられ、前側に前進することで、内容物Aを容器本体13における前側の開口部から突出させる。
【0026】
ここで、内筒部11および外筒部12の中心軸線は共通軸上に位置している。以下、この共通軸を容器軸Oといい、この容器軸Oに沿って、保持部14に対して内容物Aが突出する方向を前側といい、その反対側(他方側)を後側という。また、容器軸Oに直交する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。
なお前記内容物Aとしては、例えば化粧料(口紅、リップクリームもしくはスティックアイシャドーなど)、薬剤または糊などが棒状に形成されてなる棒状体があげられる。
【0027】
内筒部11は、後側の基部分(内筒部において外筒部よりも容器軸方向の他方側に位置する部分)15と前側の被着部分16とが容器軸O方向に連結されてなる。
基部分15は、後側の小径部15aと前側の大径部(張り出し部)15bとが容器軸O方向に連結された2段筒状に形成されている。小径部15aの外周面には、容器軸O方向に延在する内縦リブ15cが、周方向に間隔をあけて複数配置されている。内縦リブ15cの前端縁は、大径部15bの後端面に連結されている。
基部分15の内周面には、径方向の内側に向けて突出する被係合部17が設けられている。被係合部17は、基部分15の前記小径部15aに配設され、周方向に延在する環状に形成されている。被係合部17の内径は、当該被係合部17の後側から前側に向かうに従い漸次、小さくなっている。
【0028】
被着部分16は、基部分15の前端面における内周縁から前方に向けて突設され、基部分15よりも容器軸O方向に長くなっている。被着部分16の内周面と、基部分15における前記大径部15bの内周面と、は面一になっている。被着部分16の外周面は、大径部15bの外周面よりも径方向の内側に位置しており、基部分15の大径部15bは、被着部分16よりも径方向の外側に向けて張り出している。
被着部分16の前端部には、径方向の外側に向けて突出する受け部18が設けられている。受け部18は、周方向に延在する環状に形成されている。受け部18の外径は、当該受け部18の前側から後側に向かうに従い漸次、大きくなっており、受け部18の外周面は、前記縦断面視において容器軸Oに対して傾斜している。
【0029】
外筒部12は、内筒部11に対して前側にずらされて外装され、図示の例では、内筒部11における前記被着部分16に外装されている。外筒部12は、径方向の内側に位置する本体筒19と、径方向の外側に位置する化粧筒20と、を備えている。外筒部12は、これらの本体筒19および化粧筒20が互いに別体に形成されるとともに、化粧筒20内に本体筒19が嵌合されてなる。
【0030】
本体筒19は、化粧筒20よりも容器軸O方向に短くなっており、化粧筒20の容器軸O方向の内側に位置している。図2に示すように、本体筒19の後端縁は、化粧筒20の後端縁よりも前側に位置しており、本体筒19の後端縁および化粧筒20の後端部の内周面により、後方および径方向の内側に向けて開口する環状凹部21が画成されている。
図1に示すように、化粧筒20の前端部は、その全周にわたって径方向の内側に向けて湾曲されており、内筒部11の前記被着部分16の前端部を前方から覆っている。
【0031】
図2に示すように、本体筒19と化粧筒20との間には、これらの本体筒19と化粧筒20との容器軸O方向の相対的な移動を規制する規制手段22が設けられている。規制手段22は、本体筒19の外周面に設けられた周溝22aと、化粧筒20の内周面に設けられ周溝22a内に嵌合された突条22bと、を備えている。図示の例では、突条22bは、化粧筒20が径方向の内側に向けて屈曲されてなる。
なお、外筒部12の本体筒19および化粧筒20は、異なる材料で形成されていてもよく、例えば本体筒19が合成樹脂材料で形成され、かつ化粧筒20が金属材料で形成される等してもよい。
【0032】
図1に示すように、保持部14は、内筒部11内に、容器軸O方向に摺動可能に嵌合されている。保持部14は、容器軸O方向の両側に向けて開口する筒状に形成されている。保持部14内には、内容物Aが容器軸Oと同軸に配置された状態で嵌合されている。
保持部14には、内筒部11に形成された径方向に貫通する内孔23、および外筒部12に形成された径方向の内側に向けて開口する外孔24に一体に挿通された装着突起25が設けられている。装着突起25は、容器軸Oを間に挟むように一対配設され、互いに同形同大となっている。
【0033】
内孔23および外孔24のうちのいずれか一方は、周方向に螺旋をなすように延在し、他方は容器軸O方向に延在している。本実施形態では、内孔23が容器軸O方向に延在し、外孔24が周方向に螺旋をなすように延在している。内孔23は、内筒部11の前記被着部分16に、容器軸Oを間に挟むように一対配設され、互いに同形同大となっている。外孔24は、外筒部12の本体筒19に、容器軸Oを間に挟むように一対配設され、互いに同形同大となっている。外孔24は、本体筒19の内周面に溝状に形成され、径方向の外側に向けて非開口となっている。
【0034】
ここで本実施形態では、当該繰出容器10には、外筒部12を内筒部11に対して前側に付勢し、外筒部12に設けられた突き当て部26を、内筒部11の前記受け部18に圧接させる付勢部材27と、内筒部11の前記基部分15に、内筒部11に対する周方向の相対的な回転が規制された状態で外装された有底筒状の外装体28と、外装体28に着脱可能に装着され、容器本体13における前側の開口部を覆う有頂筒状のオーバーキャップ33と、が更に備えられている。
【0035】
付勢部材27は、内筒部11の前記大径部15bと外筒部12との間に、図示の例では、大径部15bの前端面と外筒部12の後端縁との間に配設されている。図3に示すように、付勢部材27は、容器軸O方向に交互に湾曲しつつ周方向に延在する環状に形成されている。図2に示すように、付勢部材27は、内筒部11の前記被着部分16に、容器軸O方向に弾性変形させられた状態で外装されている。付勢部材27のうち、前側に向けて凸をなす第1凸部分27aは外筒部12に当接し、かつ後側に向けて凸をなす第2凸部分27bは内筒部11の大径部15bに当接している。
【0036】
付勢部材27には、筒部1に径方向の内側から圧接する圧接部材29が、周方向に複数設けられている。圧接部材29は、付勢部材27と一体に形成されている。図3に示すように、圧接部材29は、付勢部材27に、周方向に間隔をあけて複数設けられ、付勢部材27の前記第1凸部分27aから前方に向けて突設されている。図2に示すように、圧接部材29は、前記環状凹部21内に配置されており、筒部1における前記化粧筒20の内周面に圧接されている。なお図示の例では、圧接部材29の前端部には、化粧筒20の内周面に圧接する圧接突起29aが、径方向の外側に向けて突設されている。
図1に示すように、突き当て部26は、外筒部12の前記本体筒19における前端部により構成されている。突き当て部26は、内筒部11の前記受け部18における後端縁に、後方から圧接している。
【0037】
外装体28は、内筒部11の前記基部分15および外筒部12に一体に外装され、付勢部材27を径方向の外側から全周にわたって覆っている。外装体28の内周面には、容器軸O方向に延在する外縦リブ28aが、周方向に間隔をあけて複数配置されている。外縦リブ28aは、内筒部11における複数の前記内縦リブ15cのうち、周方向に隣り合うもの同士の間に位置している。これらの外縦リブ28aと内縦リブ15cとは、互いに噛み合っており、内筒部11に対する外装体28の周方向の相対的な回転を規制している。なお外縦リブ28aの後端縁は、外装体28の底壁部に連結されている。
【0038】
外装体28の底壁部には、内筒部11における後側の開口部に開口する孔部30が容器軸O方向に貫設されている。孔部30は、容器軸Oと同軸に配置され、当該繰出容器10を後側から見た底面視において円形状をなしている。孔部30は、内筒部11における後側の開口部よりも大径であり、内筒部11の前記小径部15aの外径よりも小径である。
外装体28の底壁部における孔部30の周縁部には、内筒部11の前記被係合部17に係合する弾性係合部31が連結されている。図1図4および図5に示すように、弾性係合部31は、外装体28と一体に形成されている。弾性係合部31は、前記孔部30の周縁部において周方向に離間した部分に各別に連結された一対の連結部31aと、これらの両連結部31aを接続し被係合部17に当接する本体部31bと、を備えている。図4に示すように、弾性係合部31は、容器軸Oを間に挟んで一対配置されている。
【0039】
一対の弾性係合部31は、互いに同形同大となっており、前記底面視において容器軸Oを間に挟んで対称に配置されている。一対の連結部31aは、孔部30の内周面において周方向に離間した各部分から、前記底面視において互いに接近する方向に直線状に突設されている。本体部31bは、一対の連結部31aの各突端部の間に架設され、前記底面視において周方向に沿って円弧状に延在している。本体部31bのうち、周方向の中央部分は、この中央部分よりも周方向の外側に位置する外側部分よりも、径方向に沿った大きさが大きくなっている。
図1および図5に示すように、連結部31aは、全長にわたって容器軸O方向の位置が同等となっている。本体部31bの前記外側部分は、周方向の外側から内側に向かうに従い漸次、前側に向けて延在している。本体部31bの前記中央部分は、全長にわたって容器軸O方向の位置が同等となっている。
【0040】
そして本実施形態では、弾性係合部31は、容器軸O方向に弾性変形させられた状態で内筒部11の前記被係合部17に前側から係合し、弾性復元力により内筒部11を後側に付勢して外装体28に圧接させている。弾性係合部31は、本体部31bが弾性変形しながら本体部31bのうちの中央部分が被係合部17に前側から当接することで、内筒部11を後側に付勢しており、内筒部11の後端面を、外装体28の底壁部に前側から圧接させている。
【0041】
なお図1に示すように、弾性係合部31の本体部31bにおける前記中央部分には、前側および径方向の外側を向く面取り部31cが形成されている。この面取り部31c、および内筒部11の前記被係合部17における内周面は、弾性係合部31を被係合部17に係合させるため、弾性係合部31の本体部31bを被係合部17の後側から前側に移動させるときに、互いに摺動し合うことで、被係合部17に対する本体部31bの容器軸O方向の乗り越えを案内するように構成されていてもよい。
【0042】
また前記孔部30は、外装体28の底壁部に固着された被覆部材32により後側から覆われている。外装体28の底壁部の外周縁には、後方に向けて張り出す環状の脚部28bが配設されており、被覆部材32は、底壁部における脚部28bの内側に固着されている。被覆部材32は、容器軸O方向に沿った大きさが脚部28bよりも小さいシート状に形成され、孔部30を後方から閉塞している。
【0043】
前記繰出容器10の使用に際しては、外装体28からオーバーキャップ33を離脱させた後、外装体28と容器本体13の外筒部12とを各別に把持し、これらの外装体28と外筒部12とを周方向に相対的に回転させて、内筒部11と外筒部12とを周方向に相対的に回転させる。このとき外筒部12を、内筒部11に対して周方向の一方側に相対的に回転させ、装着突起25を、内孔23および外孔24の双方に沿って前側に移動させることで保持部14を前進させ、内容物Aを容器本体13の前側の開口部から前方に向けて突出させる。
内容物Aを使用した後には、外装体28と外筒部12とを周方向に相対的に反対側に回転させ、装着突起25を、内孔23および外孔24の双方に沿って後側に移動させる。すると、保持部14が後退させられ、内容物Aが容器本体13の前側の開口部から後方に向けて没入する。このように保持部14は、内筒部11内を容器軸O方向に進退することで、内容物Aを、容器本体13の前側の開口部に対して出没させる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る繰出容器10によれば、弾性係合部31が、容器軸O方向に弾性変形させられた状態で内筒部11の被係合部17に前側から係合し、弾性復元力により内筒部11を後側に付勢して外装体28に圧接させているので、外装体28に対する容器本体13の内筒部11の容器軸O方向の移動を、弾性係合部31および外装体28により容器軸O方向の両側から規制することが可能になり、容器本体13の内筒部11と外装体28とが容器軸O方向にがたつくのを効果的に抑えることができる。
またこのように、弾性係合部31の弾性復元力により内筒部11を後側に付勢することでがたつきを抑えるので、仮に内筒部11や外装体28などの寸法が製造公差内でばらついたとしても、がたつきを確実に抑えることができる。
【0045】
また弾性係合部31が、前記一対の連結部31aと前記本体部31bとを備えているので、本体部31bが内筒部11の被係合部17から受ける力を一対の連結部31aに分散させて受け止めることが可能になり、弾性係合部31の弾性復元力により確実に内筒部11を後側に付勢して、容器本体13の内筒部11と外装体28とが容器軸O方向にがたつくのをより効果的に抑えることができる。
【0046】
さらに弾性係合部31が、容器軸Oを間に挟んで一対配置されているので、内筒部11において容器軸Oを間に挟んで位置する部分に、弾性係合部31の弾性復元力を各別に作用させることが可能になり、容器本体13の内筒部11と外装体28とが容器軸O方向にがたつくのをより一層効果的に抑えることができる。
また弾性係合部31が、容器軸Oを間に挟んで一対配置されているので、弾性係合部31を被係合部17に係合させるときに、両弾性係合部31を互いに接近する方向に弾性変形させながら、弾性係合部31の本体部31bを被係合部17に対して後側から前側に移動させた後、両弾性係合部31を互いに離間する方向に復元変形させることで、弾性係合部31の本体部31bに被係合部17を容器軸O方向に乗り越えさせることが可能になり、当該繰出容器10の組立作業の簡便化を図ることができる。
【0047】
また孔部30が、前記被覆部材32により後側から覆われているので、内筒部11内に孔部30を通して例えば埃などの異物が入り込むのを抑えることができる。
【0048】
さらに、前記付勢部材27が備えられているので、内筒部11に対する外筒部12の容器軸O方向の移動を、付勢部材27および受け部18により容器軸O方向の両側から規制することが可能になり、内筒部11と外筒部12とが容器軸O方向にがたつくのを効果的に抑えることができる。
またこのように、付勢部材27により外筒部12を内筒部11に対して付勢することでがたつきを抑えるので、仮に内筒部11や外筒部12などの寸法が製造公差内でばらついたとしても、がたつきを確実に抑えることができる。
【0049】
また付勢部材27が、容器軸O方向に交互に湾曲しつつ周方向に延在する環状に形成されているので、当該繰出容器10の構造の簡素化を図ることができる。
さらに付勢部材27が、内筒部11の張り出し部と外筒部12との間に配設されているので、例えば付勢部材27が、内筒部11とは異なる部材と、外筒部12と、の間に配設されている場合に比べて、付勢部材27により外筒部12を内筒部11に対して前側に確実に付勢して、外筒部12の突き当て部26を内筒部11の受け部18に強く圧接することが可能になり、内筒部11と外筒部12とが容器軸O方向にがたつくのを一層効果的に抑えることができる。
【0050】
なお本実施形態のように、付勢部材27が、容器軸O方向に交互に湾曲しつつ周方向に延在する環状に形成されている場合には、付勢部材27のうちの前記第1凸部分27aを外筒部12に当接させ、かつ前記第2凸部分27bを内筒部11の前記大径部15bに当接させることが可能になり、付勢部材27を、内筒部11および外筒部12のいずれにも、周方向に間隔をあけて間欠的に当接させることができる。これにより、例えば付勢部材が、内筒部および外筒部のいずれにも、周方向の全周にわたって連続的に当接している場合に比べて、付勢部材27と内筒部11との間、および付勢部材27と外筒部12との間それぞれに生じる摩擦力を低減させることが可能になり、内筒部11と外筒部12とを周方向に円滑に相対的に回転させ操作性を確保することができる。
【0051】
また、付勢部材27に前記圧接部材29が設けられているので、外筒部12と内筒部11とが径方向にがたつくのを抑えつつ、内筒部11と外筒部12とが意図せずに周方向に相対的に回転するのを抑制することが可能であるとともに、内筒部11と外筒部12とが容器軸O方向にがたつくのをより効果的に抑えることができる。
なお本実施形態のように、圧接部材29が、付勢部材27と一体に形成されている場合には、部品点数の増加も抑えることが可能になり、構造の複雑化を抑制することもできる。
【0052】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、オーバーキャップ33および被覆部材32はなくてもよい。
また前記実施形態では、付勢部材27のうちの前記第1凸部分27aが外筒部12に当接するものとしたが、これに限られない。例えば、圧接部材の前端縁が、外筒部の本体筒の後端縁に当接し、付勢部材が、圧接部材を介して外筒部を前側に付勢可能である場合などには、付勢部材が、外筒部に当接していなくてもよい。
【0053】
また前記実施形態では、圧接部材29が、周方向に複数設けられているものとしたが、これに限られず、周方向の全周にわたって設けられていてもよい。
さらに前記実施形態では、圧接部材29が、筒部1に径方向の内側から圧接するものとしたが、これに限られず、径方向の外側から圧接してもよい。
さらにまた図6に示す繰出容器40のように、圧接部材29はなくてもよい。
【0054】
また前記実施形態では、付勢部材27が、内筒部11の大径部15bと外筒部12との間に配設されているものとしたが、これに限られず、例えば外装体と外筒部との間に配設されていてもよい。
さらに前記実施形態では、付勢部材27が、容器軸O方向に交互に湾曲しつつ周方向に延在する環状に形成されているものとしたが、これに限られず、例えばコイルスプリング等を採用してもよい。
【0055】
また前記実施形態では、受け部18は、内筒部11の被着部分16の前端部に設けられているものとしたが、これに限られず、例えば、被着部分において前端部とは異なる部分に設けてもよい。
さらに前記実施形態では、突き当て部26が、外筒部12の本体筒19における前端部により構成されているものとしたが、これに限られず、例えば外筒部の化粧筒における前端部により構成してもよい。
さらにまた、付勢部材27、突き当て部26および受け部18はなくてもよい。
【0056】
また前記実施形態では、弾性係合部31が、容器軸Oを間に挟んで一対配置されているものとしたが、これに限られず、例えば弾性係合部が、1つだけであってもよく、周方向に間隔をあけて3つ以上配置されていてもよい。
さらに前記実施形態では、弾性係合部31が、一対の連結部31aおよび本体部31bを備え、本体部31bが連結部31aにより両持ちされた構造であるものとしたが、これに限られない。例えば、弾性係合部が、被係合部に当接する本体部と、本体部と孔部の内周面とを連結する1つの連結部と、を備え、本体部が連結部により片持ちされた構造であってもよい。
【0057】
また前記実施形態では、外筒部12は、本体筒19と化粧筒20とが別体に形成されたものとしたが、これに限られず、例えば外筒部が1つの筒状体により構成されるものであってもよい。
さらに前記実施形態では、内孔23が、容器軸O方向に延在し、外孔24が、周方向に螺旋をなすように延在するものとしたが、これに限られず、例えば内孔が、周方向に螺旋をなすように延在するものとし、外孔が、容器軸方向に延在していてもよい。
【0058】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10、40 繰出容器
11 内筒部
12 外筒部
13 容器本体
14 保持部
15 基部分(内筒部において外筒部よりも容器軸方向の他方側に位置する部分)
15b 大径部(張り出し部)
17 被係合部
18 受け部
26 突き当て部
27 付勢部材
28 外装体
29 圧接部材
30 孔部
31 弾性係合部
31a 連結部
31b 本体部
32 被覆部材
A 内容物
O 容器軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6