(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エチレン[A]、炭素原子数3〜20のα−オレフィン[B]及び非共役ポリエン[C]に由来する構造単位を含み、135℃デカリン溶液中で測定した極限粘度[η]が1.00〜5.00dl/gのエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]を熱分解して得られ、極限粘度[η]が0.01〜0.70dl/gであるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[II]であって、前記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]の下記式(i)で表されるB値が1.05以下であるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[II]。
B値=([EX]+2[Y])/{2[E]×([X]+[Y])} ・・・(i)
(式(i)中、[E]、[X]および[Y]は、エチレン、炭素原子数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンのモル分率をそれぞれ表し、[EX]は、エチレン・炭素原子数3〜20のα−オレフィンのダイアッド連鎖分率を表す。)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]]
本発明に用いるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、エチレン[A]と、炭素原子数3〜20のα−オレフィン[B]と非共役ポリエン[C]とが共重合、好ましくはランダムに共重合したポリマーである。
【0012】
炭素原子数3〜20のα−オレフィン[B]としては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセンおよび12−エチル−1−テトラデセンなどが挙げられる。なかでも、炭素原子数3〜10のα−オレフィンが好ましく、特にプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび1−オクテンが好ましく用いられる。これらのα−オレフィンは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
非共役ポリエン[C]としては、環状または鎖状の非共役ポリエンが用いられる。環状の非共役ポリエンとしては、例えば5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ノルボルナジエンおよびメチルテトラヒドロインデンなどが挙げられる。鎖状の非共役ポリエンとしては、例えば1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエンおよび4−エチリデン−1,7−ウンデカジエンなどが挙げられる。なかでも、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンおよび5−ビニル−2−ノルボルネンが好ましく用いられる。これらの環状または鎖状の非共役ポリエンは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]を構成するエチレン[A]から導かれる構成単位の含量は、好ましくは50〜90モル%であり、より好ましくは60〜80モル%であり、炭素原子数3〜20のα−オレフィン[B]から導かれる構成単位の含量は、好ましくは10〜50モル%であり、より好ましくは20〜40モル%である。ただし、エチレン[A]から導かれる構成単位および炭素原子数3〜20のα−オレフィン[B]から導かれる構成単位の合計を100モル%とする。
【0015】
さらに、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]を構成する非共役ポリエン[C]から導かれる構成単位の含量は、共重合体[I]中の全構成単位の合計100モル%中、好ましくは0.1〜5モル%であり、より好ましくは0.1〜3モル%である。
【0016】
各構成単位が上記範囲内にあると、ポリオレフィン樹脂との相溶性が優れているため好ましい。
【0017】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]の極限粘度[η]は1.00〜5.00dl/gであり、好ましくは1.00〜4.00dl/g、より好ましくは1.00〜3.50dl/gである。
【0018】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリイソブチレン換算の数平均分子量(Mn)は、通常10,000〜1,000,000であり、好ましくは10,000〜200,000である。また、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)から算出される分子量分布(Mw/Mn)は通常2.0〜10.0であり、好ましくは2.0〜7.0であり、より好ましくは2.0〜5.0、さらに好ましくは2.0〜4.0である。
【0019】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]の下記式(i)で表されるB値は1.05以下であることが好ましい。
【0020】
B値=([EX]+2[Y])/{2[E]×([X]+[Y])} ・・・(i)
(式(i)中、[E]、[X]および[Y]は、エチレン、炭素原子数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンのモル分率をそれぞれ表し、[EX]は、エチレン・炭素原子数3〜20のα−オレフィンのダイアッド連鎖分率を表す。)
B値を1.05以下とすることによって、後述するエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[II]の非共役ポリエンの導入量の分子量依存性が小さくなる。B値の範囲は、より好ましくは0.90〜1.05、特に好ましくは0.95〜1.05である。
【0021】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]の重合方法としては、特に限定はなく、通常はメタロセン触媒を主触媒として用い、(C
6H
5)
3CB(C
6F
5)
4等のホウ素系化合物を共触媒として用い、有機アルミニウム化合物を用い、ヘキサン等の脂肪族炭化水素を溶媒とし、攪拌機つき反応器による連続法またはバッチ法で行われる。
【0022】
エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]は、メタロセン触媒、好ましくは下記式(I)で示される構造のメタロセン触媒を用いて重合される共重合体であることが好ましい。
【0024】
上記式(I)は、[N−(1,1−ジメチルエチル)−1,1−ジメチル−1−[(1,2,3,3A,8A−η)−1,5,6,7−テトラヒドロ−2−メチル−S−インダセン−1−yl]シランアミネート(2−)−κN][(1,2,3,4−η)−1,3−ペンタジエン]−チタニウム(別名:(t−ブチルアミド)−ジメチル(η
5−2−メチル−s−インダセン−1−イル)シランチタニウム(II)1,3−ペンタジエン)である。
【0025】
上記のメタロセン触媒は、特表2001−522398号公報に記載の方法で合成することが可能である。
【0026】
[エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[II]]
本発明のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[II]は、以上説明した共重合体[I]を熱分解することによって得られる液状物である。例えば、共重合体[I]を過酸化物の存在下又は非存在下で加熱することにより共重合体[II]が得られる。
【0027】
加熱分解を過酸化物の非存在下で行う場合、加熱温度は、好ましくは300〜500℃、より好ましくは350〜450℃、特に好ましくは370〜410℃である。加熱分解反応を行う為の装置は特に限定されず、例えば、管型反応器、槽型反応器、1軸あるいは2軸の押出機が挙げられる。
【0028】
以上のような熱分解により得られるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[II]の極限粘度[η]は0.01〜0.70dl/gであり、好ましくは0.05〜0.50dl/gである。
【0029】
直接重合して得られた低分子量体では、エチレンとα−オレフィンと非共役ポリエンのうちでは、比較的共重合が困難な非共役ポリエンがより分子量が高い成分に多く導入されるものと推測される。一方、高分子量体の製造においては非共役ポリエンは分子量にかかわらず比較的均一に導入され易いとも考えられる。そのためこれを熱分解して得られた共重合体[II]も非共役ポリエンの導入量の分子量依存性が小さいものと推定している。
【0030】
また、B値が1.05以下であれば非共役ポリエンのランダム性が良いため、熱分解をしてもそのランダム性が保たれ、更に望ましいと考えられる。さらにB値が1.05以下であるエチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体を使用し、これを熱分解して液状共重合体を製造し、この液状共重合体を配合したゴム組成物のスコーチ時間を測定したところ、この液状共重合体と同等の組成の重合品を使用した場合のゴム組成物よりもスコーチ時間が速くなるという現象が生じる事も確認された。
【0031】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、以上説明した本発明のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[II]を含むことを特徴とする。好ましい形態は、極限粘度が1.0dl/g以上のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体100質量部あたり、本発明のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[II]5〜500質量部(好ましくは10〜100質量部、より好ましくは20〜50質量部)を含むゴム組成物である。
【0032】
ここで主成分となる極限粘度が1.0dl/g以上のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体としては、特に限定されないが、先に説明した共重合体[I]と同様のものを用いることが好ましい。すなわち、この場合の主成分となる共重合体の限粘度[η]は、好ましくは1.00〜5.00dl/g、より好ましくは1.00〜4.00dl/g、特に好ましくは1.00〜3.50dl/gである。
【0033】
このゴム組成物は、上記以外の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0034】
[補強剤]
ゴム組成物には、補強剤が含まれていてもよい。補強剤が含まれていると、ゴム組成物の加工性および、該ゴム組成物より得られる成形体の硬度のバランスに優れるため好ましい。
【0035】
補強剤としては、例えばカーボンブラック、微粉ケイ酸およびシリカなどが挙げられる。このうち、補強効果およびコストの観点からカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、各種の市販品を特に制限なく用いることができる。具体的には、FEF級カーボンブラック[旭カーボン(株)製、商品名 旭#60G]等が挙げられる。シリカの具体例としては、煙霧質シリカおよび沈降性シリカなどが挙げられる。これらのシリカは、ヘキサメチルジシラザン、クロロシランまたはアルコキシシラン等の反応性シランあるいは低分子シロキサン等で表面処理されていてもよい。また、これらのシリカの比表面積(BET法)は、好ましくは50m
2/g以上、より好ましくは100〜400m
2/gである。これらの補強剤の種類および配合量は、用途に応じて適宜選択できる。
【0036】
補強剤の配合量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]100質量部あたり、通常は300質量部以下、好ましくは200質量部以下である。また、補強剤としてカーボンブラックを用いる場合、カーボンブラックの配合量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]100質量部あたり、通常20〜200質量部、好ましくは50〜200質量部、より好ましくは60〜180質量部である。この範囲内でカーボンブラックを用いると、該ゴム組成物より得られる成形体の硬度のバランスに優れるため好ましい。
【0037】
[軟化剤]
ゴム組成物には、さらに軟化剤が含まれていてもよい。軟化剤はゴム組成物を調製するどの段階で添加するかにより、目的や効果が異なる。そのため、軟化剤の種類も様々である。軟化剤については、後述するゴム組成物の調製法で記す。
【0038】
[その他の添加剤]
ゴム組成物には、さらにその他の添加剤が含まれていてもよい。その他の添加剤とは、発泡剤、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、発泡助剤、加工助剤、老化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤および増粘剤等である。
【0039】
本発明(1)のゴム組成物を架橋または発泡させて発泡体を形成する場合、物理発泡および化学発泡のいずれを用いてもよいが、化学発泡の場合は以下の発泡剤が通常用いられる。
【0040】
重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機発泡剤;N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミドおよびN,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼンおよびバリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)およびジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4’−ジフェニルジスルホニルアジドおよびp−トルエンスルホニルアジド等のアジド化合物等。
【0041】
ゴム組成物に発泡剤が含まれている場合には、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]100質量部あたり、通常0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部含まれる。この範囲内で発泡剤を用いると、発泡性に優れるため好適である。上記充填剤としては、例えば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、酸化カルシウム、タルクおよびクレーなどの無機充填剤が挙げられる。これらの無機充填剤の種類および配合量は用途に応じて適宜選択できる。
【0042】
無機充填剤の配合量は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]100質量部あたり、通常300質量部以下、好ましくは200質量部以下、より好ましくは50〜150質量部である。
【0043】
上記加硫剤としては、例えば、イオウ、イオウ化合物および有機過酸化物などが挙げられる。イオウとしては、例えば、粉末イオウ、沈降イオウ、コロイドイオウ、表面処理イオウおよび不溶性イオウなどが挙げられる。イオウ化合物としては、例えば、塩化イオウ、二塩化イオウおよび高分子多硫化物などが挙げられる。また、加硫温度で活性イオウを放出して加硫するイオウ化合物、例えば、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドおよびジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなども用いられる。有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルヒドロパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−モノ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサンおよびα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0044】
ゴム組成物を架橋する場合、加硫剤はエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]100質量部あたり、通常0.05〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.3〜3質量部の割合で用いられる。
【0045】
また、その他の加硫剤としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル・スルフェンアミドおよびジチオジモルホリン等が挙げられる。また、加硫剤としてイオウまたはイオウ化合物を使用するときは、加硫促進剤を併用することが好ましい。
【0046】
加硫促進剤としては、具体的には、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾールおよびジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系化合物;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジオルソニトリルグアニジン、オルソニトリルバイグアナイドおよびジフェニルグアニジンフタレート等のグアニジン化合物;アセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミンおよびアセトアルデヒドアンモニア等のアルデヒドアミンおよびアルデヒド−アンモニア系化合物;2−メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系化合物;チオカルバニリド、ジエチルチオユリア、ジブチルチオユリア、トリメチルチオユリアおよびジオルソトリルチオユリア等のチオユリア系化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドおよびペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系化合物;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレンおよびジメチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオカルバミン酸塩系化合物;ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のザンテート系化合物;酸化亜鉛(亜鉛華)等の化合物を挙げることができる。
【0047】
加硫促進剤は単独で用いてもよいが、2種類以上を組み合わせて用いることが好ましい。加硫促進剤は、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体[I]100質量部あたり、通常0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜15質量部、より好ましくは1〜10質量部の割合で用いられる。なお、加硫促進助剤としては、ステアリン酸等を用いることができる。
【0048】
またゴム組成物を架橋する場合、上述の硫黄系加硫剤、有機過酸化物以外の公知の架橋剤として、例えばヒドロシリル系架橋剤、樹脂架橋剤を使用することもできる。
【0049】
ヒドロシリル系架橋剤は、1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物であり、共重合体ゴムと反応して架橋剤として作用する。ヒドロシリル系架橋剤の配合量は、共重合体ゴム[I]100質量部に対して、好ましくは1.7〜15質量部、より好ましくは1.7〜10質量部、特に好ましくは2.0〜10質量部である。ヒドロシリル系架橋剤の配合量が、前記範囲内であると、得られるゴム成形体の機械的強度が向上し、またゴム組成物のロール添加時間が短くなる傾向がある。
【0050】
ヒドロシリル系架橋剤としては、従来から製造・市販されているものが使用可能である。例えば、線状、環状、分岐状の各構造あるいは三次元網目状構造の樹脂状物など、何れの構造のものであってもよい。このようなヒドロシリル基系架橋剤は、通常、下記の一般組成式
【0052】
で表わされる化合物を使用することができる。
【0053】
上記一般組成式において、R
4は、脂肪族不飽和結合を除く、炭素原子数1〜10、特に炭素原子数1〜8の置換または非置換の1価炭化水素基である。この1価炭化水素基としては、メチル基やエチル基からはじまりノニル基やデシル基に至る、n−、iso−、sec−、tert−等の異性体を含むアルキル基、フェニル基、ハロゲン置換のアルキル基、例えばトリフロロプロピル基が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。上記一般組成式において、bは1≦b<3、好ましくは0.6<b<2.2、特に好ましくは1.5≦b≦2であり、cは1<c≦3、好ましくは1≦c<2であり、b+cは0<b+c≦3、好ましくは1.5<b+c≦2.7である。
【0054】
ヒドロシリル系架橋剤は、1分子中のケイ素原子数が好ましくは2〜1000個、特に好ましくは2〜300個、最も好ましくは4〜200個のオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。その具体例としては、シロキサンオリゴマー、分子鎖両末端封鎖オルガノハイドロジェンポリシロキサン、R
42(H)SiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなり、任意にR
43SiO
1/2単位、R
42SiO
2/2単位、R
4(H)SiO
2/2単位、(H)SiO
3/2またはR
4SiO
3/2単位を含み得るシリコーンレジンが挙げられる。
【0055】
ヒドロシリル系架橋剤を使用して共重合体ゴムとの架橋反応を行う場合、通常は、付加反応触媒を併せて使用する。この触媒としては、共重合体ゴムが有するアルケニル基と、ヒドロシリル系架橋剤のヒドロシリル基との付加反応(アルケンのヒドロシリル化反応)を促進するものであれば特に制限はないが、特に白金系触媒が好ましい。触媒の配合量は、共重合体ゴム[I]100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは0.05〜3質量部、特に好ましくは0.05〜2.5質量部である。0.05質量部以上であれば架橋速度が速くなり、5質量部以下であればコスト的に有利である。また、上記範囲内の配合量で白金系触媒を用いると、架橋密度が適度で強度特性および伸び特性に優れる加硫ゴム成形体を形成できる。
【0056】
具体的な白金系触媒は、通常、付加硬化型の硬化に使用される公知のものでよく、例えば米国特許第2,970,150号明細書に記載の微粉末金属白金触媒、米国特許第2,823,218号明細書に記載の塩化白金酸触媒、米国特許第3,159,601号公報明細書および米国特許第159,662号明細書に記載の白金と炭化水素との錯化合物、米国特許第3,516,946号明細書に記載の塩化白金酸とオレフィンとの錯化合物、米国特許第3,775,452号明細書および米国特許第3,814,780号明細書に記載の白金とビニルシロキサンとの錯化合物が挙げられる。
【0057】
より具体的には、例えば白金の単体(白金黒)、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体、あるいはアルミナ、シリカ等の担体に白金の担体を担持させたものが挙げられる。それらは、単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で混合して使用してもよい。
【0058】
樹脂架橋剤は、加熱等によってゴムに架橋反応を起させる合成樹脂である。例えば、フェノール樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、トリアジン・ホルムアルデヒド縮合物、ヘキサメトキシメチル・メラミン樹脂を使用できる。中でも、フェノール樹脂が好ましい。フェノール樹脂の具体例としては、フェノール、アルキルフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類との反応により合成される各種フェノール樹脂が挙げられる。また、フェノール樹脂のアルデヒドユニットに少なくとも一個のハロゲン原子が結合したハロゲン化フェノール樹脂を用いることもできる。特に、ベンゼンのオルト位またはパラ位にアルキル基が結合したアルキルフェノールと、ホルムアルデヒドとの反応によって得られるアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂が、ゴムとの相溶性に優れると共に反応性に富んでいて架橋反応開始時間を比較的早くできるので好ましい。アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂のアルキル基は、通常、炭素数が1から10のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等が挙げられる。また、このアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂のハロゲン化物も好適に用いられる。さらに、硫化−p−第三ブチルフェノールとアルデヒド類とを付加縮合させた変性アルキルフェノール樹脂や、アルキルフェノール・スルフィド樹脂も樹脂架橋剤として使用可能である。
【0059】
[架橋体および発泡体]
上記ゴム組成物から形成される成形体は、剛性、圧縮永久歪および形状記憶性等に優れる。この架橋体は、上記ゴム組成物を架橋することにより得られ、発泡体は、上記ゴム組成物を架橋および発泡することにより得られる。
【0060】
架橋体は、例えば以下の方法により得られる。
(1)前記加硫剤を含むゴム組成物を用い、所望形状に予備成形した後に加硫(架橋)する方法。
(2)加硫剤や架橋剤を含まないゴム組成物を、所望形状に予備成形した後に電子線を照射し、架橋する方法。
(3)有機過酸化物を含むゴム組成物を用い、所望形状に予備成形した後に架橋する方法。
(4)ヒドロシリル系架橋剤を含むゴム組成物を用い、所望形状に予備成形した後に架橋する方法。
(5)樹脂架橋剤を含むゴム組成物を用い、所望形状に予備成形した後に架橋する方法。
【0061】
上記(1)、(2)および(3)の方法において、予備成形は、押出成形機やインジェクション成形機等を用いて行うことができる。
【0062】
上記(1)の方法における加硫は、加硫剤を含むゴム組成物(加硫促進剤を含んでいてもよい)を、通常140〜300℃、好ましくは150〜270℃、より好ましくは150〜250℃で、通常0.5〜30分間、好ましくは0.5〜20分間、より好ましくは0.5〜15分間加熱することにより行う。
【0063】
また、上記(2)の方法における電子線照射は、ゴム組成物に0.1〜10MeVのエネルギーを有する電子線を、吸収線量が通常0.5〜35Mrad、好ましくは0.5〜20Mrad、より好ましくは1〜10Mradになるように照射することにより行う。
【0064】
上記(3)の方法における架橋は、有機過酸化物を含むゴム組成物(架橋助剤を含んでいてもよい)を通常150〜190℃、好ましくは160〜180℃で、通常3〜30分間、好ましくは5〜25分間、より好ましくは5〜20分間加熱することにより行う。
【0065】
上記(4)の方法における架橋は、ヒドロシリル系架橋剤を含むゴム組成物(触媒を含む)を通常150〜270℃で、通常1〜30分間加熱することにより行う。
【0066】
上記(5)の方法における架橋は、樹脂架橋剤を含むゴム組成物(架橋助剤を含んでいてもよい)を通常150℃〜180℃で、5〜40分間加熱することにより行う。
【0067】
発泡体は、例えば加硫剤および発泡剤を含むゴム組成物を、加熱および化学発泡させることにより架橋および発泡を行う方法により得られる。化学発泡においては、先に挙げた加硫剤および発泡剤を含むゴム組成物を加熱することによって、発泡剤が分解して炭酸ガスや窒素ガスを発生するため、気泡構造を有する発泡体が得られる。
【0068】
また、高圧ガスによる物理発泡も可能である。すなわち、例えば樹脂の融点付近の温度で押出する際に、押出機の途中に設けられた圧入孔から揮発性又は無機ガス系発泡剤を圧入して、口金から押し出すことにより発泡体を連続的に得ることができる。物理型発泡剤の具体例としては、フロン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の揮発性発泡剤、窒素、空気、水、炭酸ガス等の無機ガス系発泡剤が挙げられる。また、押出発泡に際し、炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化マグネシウム等の気泡核形成剤を添加してもよい。物理型発泡剤の配合割合は、共重合体ゴム[I]100質量部に対し、通常5〜60質量部、好ましくは10〜50質量部である。物理的発泡剤の配合割合が少なすぎると、発泡体の発泡性が低下し、逆に多すぎると、発泡体の強度が低下する。
【0069】
本発明のゴム組成物から形成される成形体は、剛性、圧縮永久歪および形状記憶性、耐重量変化性等に優れる。このため以下のような用途に用いることができる。
【0070】
〔用途〕
本発明のゴム組成物またはその架橋物を原料としてなるゴム成形体は、耐候性、耐熱老化性、耐ブリードアウト性および低温柔軟性が必要とされる分野において好適に用いられる。具体的には、自動車用部品、船舶用部品、土木建築用部品、医療用部品、電気・電子機器用部品、輸送機およびレジャー用部品、ホース(ラジエターホース、ヒーターホース等)、防振ゴム、シート、各種ベルト、各種パッキン、シーリング材、ポッティング材、コーティング材および接着剤等に好適に用いられる。
【0071】
自動車用部品としては、例えば、グラスランチャネル、ウェザーストリップスポンジ、ドアオープニングトリム、シール部材、グロメット、自動車エンジンのガスケット、電装部品もしくはオイルフィルターのシーリング材;イグナイタHICもしくは自動車用ハイブリッドICのポッティング材;自動車ボディ、自動車用窓ガラス、エンジンコントロール基板のコーティング材;オイルパンもしくはタイミングベルトカバー等のガスケット、モール、ヘッドランプレンズ、サンルーフシール、ミラー用の接着剤等が挙げられる。ウェザーストリップスポンジとしては、例えば、ドアウェザーストリップ、トランクウェザーストリップ、ラゲージウェザーストリップ、ルーフサイドレールウェザーストリップ、スライドドアウェザーストリップ、ベンチレーターウェザーストリップ、スライディングルーフウェザーストリップ、フロントウィンドゥウェザーストリップ、リアウィンドゥウェザーストリップ、クォーターウィンドゥウェザーストリップ、ロックピラーウェザーストリップ、ドアガラスアウターウェザーストリップ、ドアガラスインナーウェザーストリップ等が挙げられる。
【0072】
船舶用部品としては、例えば、配線接続分岐箱、電気系統部品もしくは電線用のシーリング材;電線もしくはガラス用の接着剤等が挙げられる。
【0073】
土木建築用部品としては、例えば、商業用ビルのガラススクリーン工法の付き合わせ目地、サッシとの間のガラス周り目地、トイレ、洗面所もしくはショーケース等における内装目地、バスタブ周り目地、プレハブ住宅用の外壁伸縮目地、サイジングボード用目地に使用される建材用シーラント; 複層ガラス用シーリング材;道路の補修に用いられる土木用シーラント;金属、ガラス、石材、スレート、コンクリートもしくは瓦用の塗料・接着剤;粘着シート、防水シートもしくは防振シート等が挙げられる。
【0074】
医療用部品としては、例えば、医薬用ゴム栓、シリンジガスケット、減圧血管用ゴム栓等が挙げられる。
【0075】
電気・電子機器用部品としては、例えば、重電部品、弱電部品、電気・電子機器の回路や基板のシーリング材、ポッティング材、コーティング材もしくは接着材;電線被覆の補修材;電線ジョイント部品の絶縁シール材;O A機器用ロール;振動吸収剤;グロメット;またはゲルもしくはコンデンサの封入材等が挙げられる。
【0076】
輸送機用部品としては、例えば、自動車、船舶、航空機または鉄道車輌等が挙げられる。
【0077】
レジャー用部品としては、例えば、スイミングキャップ、ダイビングマスク、耳栓等のスイミング部材;スポーツシューズ、野球グローブ等のゲル緩衝部材などが挙げられる。
【0078】
防振ゴムとしては、例えば、自動車用防振ゴム(エンジンマウント、液封エンジンマウント、ダンパープーリ、チェーンダンパー、キャブレーターマウント、トーショナルダンパー、ストラットマウント、ラバーブッシュ、バンパーゴム、ヘルパーゴム、スプリングシート、ショックアブソーバー、空気バネ、ボディマウント、バンパーガード、マフラーサポート、ゴムカップリング、センターベアリングサポート、クラッチ用ゴム、デフマウント、サスペンションブッシュ、すべりブッシュ、クッションストラットバー、ストッパ、ハンドルダンパー、ラジエーターサポーターまたはマフラーハンガー)、鉄道用防振ゴム(スラブマット、バラスマットまたは軌道マット)、産業機械用防振ゴム(エキスパンションジョイント、フレキシブルジョイント、ブッシュ、マウント)等が挙げられる。
【0079】
シートとしては、例えば、ルーフィングシート、止水シート等が挙げられる。
【0080】
各種ベルトとしては、伝動ベルト(Vベルト、平ベルト、歯付きベルト、タイミングベルト)、搬送用ベルト(軽搬送用ベルト、円筒型ベルト、ラフトップベルト、フランジ付き搬送用ベルト、U型ガイド付き搬送用ベルト、V型ガイド付き搬送用ベルト)等が挙げられる。
【0081】
シーリング材は、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、洗濯機、ガスメーター、電子レンジ、スチームアイロン、漏電ブレーカー用のシール材として好適に用いられる。なお、シーリング材とは、シール(封印,密封)する材料のことをいう。また、機械、電気、化学等各種工業において、接合部や接触部の水密、気密の目的で使用される材料も広義のシーリング材である。
【0082】
ポッティング材は、例えば、トランス高圧回路、プリント基板、可変抵抗部付き高電圧用トランス、電気絶縁部品、半導電部品、導電部品、太陽電池またはテレビ用フライバックトランスをポッティングするために好適に用いられる。
【0083】
コーティング材としては、例えば、高電圧用厚膜抵抗器もしくはハイブリッドIC等の各種回路素子;HIC、電気絶縁部品;半導電部品;導電部品;モジュール;印刷回路; セラミック基板;ダイオード、トランジスタもしくはボンディングワイヤー等のバッファー材; 半導電体素子;または光通信用オプティカルファイバーをコーティングするために好適に用いられる。
【0084】
接着剤としては、例えば、ブラウン管ウェッジ、ネック、電気絶縁部品、半導電部品または導電部品を接着するために好適に用いられる。
【0085】
上記以外に、本発明のゴム組成物またはその架橋物は、自動車用カップ・シール材(マスターシリンダーピストンカップ、ホイールシリンダーピストンカップ、等速ジョイントブーツ、ピンブーツ、ダストカバー、ピストンシール、パッキン、Oリング、ダイヤフラム、ダムウィンドシールド、ドアミラー用ブラケット、シールヘッドランプ、シールカウルトップ)、産業用シール材(コンデンサパッキン、Oリング、パッキン)、発泡体(ホース保護用スポンジ、クッション用スポンジ、断熱スポンジ、インシュレーションパイプ)、被覆電線、電線ジョイント、電気絶縁部品、半導電ゴム部品、OA機器ロール(帯電ロール、転写ロール、現像ロール、給紙ロール)、工業用ロール(製鉄用ロール、製紙用ロール、印刷用電線ロール)、アノードキャップ、プラグキャップ、イグニッションケーブル、ランプソケットカバー、端子カバー、ワイパーブレード、各種チューブ(バキュームチューブ、タイヤチューブ)、エアスプリング、シューズソール、シューズヒール、タイヤサイドウォール、ファブリックコーティングなどの用途に好適に用いられる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。以下の記載において「部」は「質量部」を示す。実施例中の各物性は、以下の方法により測定した。
【0087】
〔極限粘度〕
極限粘度[η]は、離合社製全自動極限粘度計を用いて、温度:135℃、測定溶媒:デカリンにて測定した。
【0088】
〔B値および組成〕
B値は、各モノマーのモル分率およびエチレン・炭素原子数3〜20のα−オレフィンのダイアッド連鎖分率より、下記式(
i)で与えられる。
【0089】
B値=([EX]+2[Y])/{2[E]×([X]+[Y])} …(i)
式(i)中、[E]、[X]および[Y]は、エチレン、炭素原子数3〜20のα−オレフィンおよび非共役ポリエンのモル分率をそれぞれ表し、[EX]は、エチレン・炭素原子数3〜20のα−オレフィンのダイアッド連鎖分率を表す。
【0090】
エチレン・炭素原子数3〜20のα−オレフィン・非共役ポリエン共重合体が、下記式(III)で表されるエチレン・プロピレン・ENB共重合体である場合および下記式(IV)で表されるエチレン・プロピレン・VNB共重合体である場合は、以下に示すような手順により、B値および組成を求めることができる。また、エチレン・プロピレン・ENB・VNB共重合体である場合は、ENBおよびVNBを1種の非共役ポリエン(ENB)として扱い、B値および組成を求めることができる。
【0091】
まず、下記9種のNMR積分値を求める。なお、NMR積分値は、ECX400P型核磁気共鳴装置(日本電子製)を用いて、測定温度:120℃、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=4/1、積算回数:8000回にて、
13CNMRのスペクトルを測定して得た。
【0092】
(1)αβ、(2)αγ+αδ、(3)βγ、(4)βδ、(5)γδ、(6)δδ、(7)3E、(8)3Z、(9)αα+1Z+5E+5Z+6E+6Z。
ここで、α、β、γおよびδは、注目しているメチレンシグナルから、メチン炭素(分岐)まで、それぞれ1ボンド、2ボンド、3ボンドおよび4ボンド離れていることを示す。また、上記(7)〜(9)における数字および英字からなるシンボルは、ENBに由来する炭素を表し、数字は下記式(III)および下記式(IV)の位置を表し、英字はそれぞれEがE体を表し、ZがZ体を表す。
【0093】
【化3】
【0094】
上記(2)は37〜39ppmの複数ピークの合計を表し、上記(6)は29〜31ppmの複数ピークの合計からγγとγδとのピークを除いた数値を表し、上記(9)は44〜48ppmの複数ピークの合計を採用する。
【0095】
また、ααは次の通り算出する。
αα=αα+1Z+5E+5Z+6E+6Z−2×3E−3×3Z
=(9)−2×(7)−3×(8)
ダイアッド連鎖分率は次の通り算出する。
PP(プロピレン・プロピレン連鎖)=αα+αβ/4
PE(プロピレン・エチレン連鎖)=αγ+αδ+αβ/2
EE(エチレン・エチレン連鎖)=(βδ+δδ)/2+(γδ+βγ)/4
NE(ENB・エチレン連鎖)+NP(ENB・プロピレン連鎖)+NN(ENB・ENB連鎖)=(3E+3Z)×2
したがって、組成は次の通り算出できる。
[E](エチレンモル分率)=(EE+PE/2+3E+3Z)/(PP+PE+EE+3E+3Z)
[X](α−オレフィンモル分率)=(PP+PE/2)/(PP+PE+EE+3E+3Z)
[Y](非共役ポリエンモル分率)=(3E+3Z)/(PP+PE+EE+3E+3Z)
また、ダイアッド連鎖分率[EX]は次のとおり算出する。
[EX]=PE/(PP+PE+EE+3E+3Z)
以上より、B値は次の通り算出することができる。
B値=([EX]+2[Y])/{2[E]×([X]+[Y])} …(
i)
なお、B値およびダイアッド分率については、Seger,M.R.およびMaciel,G.E.のAnal.Chem.2004,76,5734−5747を参考にすることができる。
【0096】
<最低粘度(Vm)、スコーチ時間(t5)、Δt>
未加硫ゴムの物性試験はJIS K6300に準拠して行なった。具体的には、ムーニー粘度計(島津製作所社製SMV202型)を用いて、125℃においてムーニー粘度の変化を測定し、測定開始から最低粘度(Vm)を求め、さらにその最低粘度Vmより5ポイント上昇するまでの時間を求め、これをスコーチ時間(t5、min)とした。また同様に35ポイント上昇するまでの時間(t35、min)を求め、Δt=t35−t5 を求めた。
【0097】
<硬度>
加硫成形体の平らな部分を重ねて12mmとし、JIS K6253に従い硬度(JIS−A)を測定した。
【0098】
<引張強度、引張伸び、圧縮永久歪>
厚さ2.2〜2.5mmのシート状のゴム配合物をプレス成型機を用いて、金型中で160℃、10分間の条件で加硫し、2mm(厚さ)×15cm(縦)×15cm(横)の加硫成形体を得る。得られた加硫成形体について、引張強度、引張伸び、圧縮永久歪を測定した。
【0099】
<重量変化率>
JIS K6258に準拠して、150℃で70時間、DOT3相当品ブレーキ油に浸
漬または所定の
温度、時間で老化性試験をした後の重量変化率を測定した。
【0100】
[実施例1]
<高分子量エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(I−1)の製造>
容積300LのSUS製攪拌機つき反応器を用いて、温度を80℃に保ち、液レベルを100Lとして、ヘキサンを26.8kg/h、エチレンを4.6kg/h、プロピレンを4.0kg/h、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)を1.2kg/hの速度で、水素を19NL/hの速度で、主触媒として[N−(1,1−ジメチルエチル)−1,1−ジメチル−1−[(1,2,3,3A,8A−η)−1,5,6,7−テトラヒドロ−2−メチル−S−インダセン−1−yl]シランアミネート(2−)−κN][(1,2,3,4−η)−1,3−ペンタジエン]−チタニウムを0.07mmol/h、共触媒として(C
6H
5)
3CB(C
6F
5)
4を0.28mmol/h、有機アルミニウム化合物としてTIBAを1.8mmol/hの速度で連続的に反応器へ供給し、エチレンとプロピレンと5−エチリデン−2−ノルボルネンとの三元共重合体(EPDM A−1)の重合液を得た。重合圧力は2.1MPa(ゲージ圧)とした。得られた重合液をフラッシュ乾燥により脱溶媒し、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(I−1)を得た。
【0101】
得られたエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(I−1)の極限粘度[η]は1.0dl/g、B値は1.02であった。
【0102】
なお、上記[N−(1,1−ジメチルエチル)−1,1−ジメチル−1−[(1,2,3,3A,8A−η)−1,5,6,7−テトラヒドロ−2−メチル−S−インダセン−1−yl]シランアミネート(2−)−κN][(1,2,3,4−η)−1,3−ペンタジエン]−チタニウムは、特表2001−522398号公報に記載の方法に準じて合成した。
【0103】
<低分子量エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(II−1)の製造>
撹拌装置、窒素導入管、コンデンサーを備えた1.5Lステンレス製熱分解装置に共重合体(I−1)を200g入れ、窒素雰囲気下で、380℃で4.5時間熱分解反応させた。得られた低分子量エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(II−1)の極限粘度[η]は、0.34dl/gであった。
【0104】
<ゴム組成物の調製>
ヘキサン溶媒中、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(I−1)100質量部に対して、低分子量エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(II−1)50部、補強剤として「シーストSO」カーボンブラック(商品名;東海カーボン株式会社製)80部とを、4.3L容量のバンバリーミキサーにより150℃で2分間混練し、加硫促進剤として酸化亜鉛5部、加工助剤としてステアリン酸1部、加硫剤としてイオウ1.5部、加硫促進剤としてテトラメチルチウラムジスルフィド1.0部および加硫促進剤として2−メルカプトベンゾチアゾール0.5部を配合し、8インチオープンロール(前後ロール温度:50℃、前ロール回転数:14rpm、後ロール回転数:16rpm)にて混練することで、ゴム組成物(以下「配合ゴム」ともいう。)を得た。配合ゴムを、100tプレス成形機により、厚さ2mmのシート形状に成形し、成形と同時に170℃で20分間加熱することによって架橋物を得た。この架橋物の各物性値を表1に示す。
【0105】
[実施例2]
製造条件を変更して表1に示す組成にしたこと以外は、実施例1と同様にして高分子量エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(I−2)を製造した。得られた共重合体(I−2)の極限粘度[η]は3.4dl/g、B値は1.02であった。
【0106】
この共重合体(I−2)を実施例1と同様にして熱分解した。得られた低分子量エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(II−2)の極限粘度[η]は、0.40dl/gであった。
【0107】
これら共重合体(I−2)及び(II−2)を用いて実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、架橋物を得た。各物性値を表1に示す。
【0108】
[実施例3]
5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)の代わりに5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)を使用し、製造条件を変更して表1に示す組成にしたこと以外は、実施例1と同様にして高分子量エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(I−3)を製造した。得られた共重合体(I−3)の極限粘度[η]は2.1dl/g、B値は1.02であった。
【0109】
この共重合体(I−3)を実施例1と同様にして熱分解した。得られた低分子量エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体(II−3)の極限粘度[η]は、0.58dl/gであった。
【0110】
これら共重合体(I−3)及び(II−3)を用いて実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、架橋物を得た。各物性値を表1に示す。
【0111】
[比較例1〜5]
共重合体(II)の代わりに、表1に示す共重合体を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてゴム組成物を調製し、架橋物を得た。各物性値を表1に示す。
【0112】
比較例1及び2の低分子量共重合体は、熱分解により得たものではなく、重合反応により得た低分子量エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体である。なお、その重合反応には、実施例1の共重合体(I−1)の製造に使用した触媒と同じメタロセン触媒を使用した。
【0113】
比較例3及び4の低分子量共重合体は、熱分解により得たものではなく、バナジウム触媒を用いた重合反応により得た低分子量エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体である。
【0114】
比較例5は、共重合体(II)の代わりに、市販のパラフィンオイル系オイル(出光興産社製商品名ダイアナプロセスオイルPW−380)を用いた例である。
【0115】
【表1】
【0116】
表中、「ENB」は5−エチリデン−2−ノルボルネン、「VNB」は5−ビニル−2−ノルボルネンである。
【0117】
表1に示す様に、実施例1〜3では低分子量エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエン共重合体
[II]の非共役ポリエン含量の分子量依存性が少ないので、各物性において安定した結果が得られた。一方、比較例1〜5では、物性が安定しておらず、また重量変化率が大きかった。