(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871712
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】環境に優しい耐久撥水性織物及び該織物を用いた繊維製品
(51)【国際特許分類】
D06M 15/277 20060101AFI20160216BHJP
A41D 31/00 20060101ALI20160216BHJP
D03D 15/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
D06M15/277
A41D31/00 C
A41D31/00 J
A41D31/00 501J
D03D15/00 E
D03D15/00 101
【請求項の数】7
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-115917(P2012-115917)
(22)【出願日】2012年5月21日
(65)【公開番号】特開2013-241700(P2013-241700A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2013年11月5日
【審判番号】不服2014-16498(P2014-16498/J1)
【審判請求日】2014年8月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】303046303
【氏名又は名称】旭化成せんい株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306024252
【氏名又は名称】株式会社マルサンアイ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】野津 芳政
(72)【発明者】
【氏名】大久保 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】村田 優治
【合議体】
【審判長】
栗林 敏彦
【審判官】
千葉 成就
【審判官】
蓮井 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−72525(JP,A)
【文献】
特開2009−263807(JP,A)
【文献】
特開2007−270374(JP,A)
【文献】
特開2013−49941(JP,A)
【文献】
特開平7−145565(JP,A)
【文献】
特許第5509342(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M15/277
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C6系のフッ素系撥水剤を含有し、かつ、洗濯処理JIS L 0217 103法 吊干し乾燥 による洗濯処理50回後のJIS L 1092 スプレー試験による撥水度が3以上であり、かつ、同洗濯処理100回後のJIS L 1092 スプレー試験による撥水度が3以上である織物であって、該織物はナイロン11を除くポリアミド素材から構成され、該織物を構成する経糸の一部又は全て及び/又は緯糸の一部又は全てが制電糸からなり、該織物の表面には帯電防止剤が付着していない前記織物。
【請求項2】
請求項1に記載の織物を一部又は全部に用いたスポーツ衣料。
【請求項3】
請求項1に記載の織物を一部又は全部に用いたアウトドアスポーツ衣料。
【請求項4】
請求項1に記載の織物を一部又は全部に用いたアウター衣料。
【請求項5】
請求項1に記載の織物を一部又は全部に用いた雨具。
【請求項6】
請求項1に記載の織物を一部又は全部に用いた防風具。
【請求項7】
請求項1に記載の織物を一部又は全部に用いた寝具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境負荷の少ないC6系のフッ素系撥水剤を用いた耐久撥水性のある織物、及び該織物を用いた繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料等の繊維製品は、雨天などでも快適性を求めるために、撥水機能を付与するための撥水(樹脂)加工が行われている。
【0003】
今日、撥水加工技術は、相応の進歩はしているものの、未だ実用に耐えうる充分な耐久性を有した商品は提供されていない。そのため長期間の着用では、摩擦や手などの皮脂の影響などもあって撥水性が低下し、雨水が衣料に浸みるなどの不快な思いをすることが多い。
【0004】
一方、近年の環境負荷問題から従来の所謂C8系と称される撥水剤の使用が制限され、性能は劣るが環境負荷の小さいC6系撥水剤へのシフトが余儀なくされており、環境に優しく、かつ、実用に耐えうる商品の技術開発が望まれている。
以下の特許文献1には、環境配慮型のフッ素系撥水剤が記載されているが、その到達性能は洗濯10回相当程度の耐久性能しか有していない。
また、以下の特許文献2においても、洗濯20回で撥水度3以上の布帛が記載されているのみである。
さらに、以下の特許文献3には、改質ポリアミド繊維とフッ素系樹脂の組み合わせによる耐久撥水技術が記載されているが、本発明に係る環境配慮型C6系のフッ素系撥水剤使用技術についての記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−247089号公報
【特許文献2】特開2007−314917号公報
【特許文献3】特開平9−67776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、前記した背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、性能は劣るが環境負荷の小さいC6系のフッ素系撥水剤を用いながらも、実用に耐えうる、長期間、充分な撥水性を維持することができる繊維、及び該繊維を用いた繊維製品(商品)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく、鋭意検討し実験を重ねた結果、以下の解決手段によりかかる課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りのものである。
【0008】
[1]C6系のフッ素系撥水剤を含有し、かつ、洗濯処理JIS L 0217 103法 吊干し乾燥 による洗濯処理50回後のJIS L 1092 スプレー試験による撥水度が3以上であ
り、かつ、同洗濯処理100回後のJIS L 1092 スプレー試験による撥水度が3以上である織物であって、該織物はナイロン11を除くポリアミド素材から構成され、該織物を構成する経糸の一部又は全て及び/又は緯糸の一部又は全てが制電糸からなり、該織物の表面には帯電防止剤が付着していない前記織物。
【0013】
[
2]前記[1
]に記載の織物を一部又は全部に用いたスポーツ衣料。
【0014】
[
3]前記[1
]に記載の織物を一部又は全部に用いたアウトドアスポーツ衣料。
【0015】
[4]前記[1
]に記載の織物を一部又は全部に用いたアウター衣料。
【0016】
[
5]前記[1
]に記載の織物を一部又は全部に用いた雨具。
【0017】
[
6]前記[1
]に記載の織物を一部又は全部に用いた防風具。
【0018】
[
7]前記[1
]に記載の織物を一部又は全部に用いた寝具。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る織物は、C6系のフッ素系撥水剤を含有し、かつ、洗濯処理JIS L 0217 103法による洗濯処理50回後のJIS L 1092 スプレー試験による撥水度が3以上であるため、環境に優しく、かつ、長期間、充分実用に耐える撥水性織物である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の織物は、PFOA(パーフルオロオクタン酸)やPFOS(パーフルオロスルホン酸)対策を講じた環境負荷の少ないC6系のフッ素系撥水剤による撥水加工が施されており、かつ、洗濯処理JIS L 0217 103法にて50回洗濯後のJIS L 1092法による撥水度が3以上であることを特徴とする。好ましくは、かかる撥水性能は、100回洗濯後の撥水度が3以上のものである。
【0021】
かかる撥水性能を有する織物を用いて作製された繊維製品、例えば、ダウンジャケットは、長期間繰り返し使用しても、雨天時に雨水の浸透などがなく、撥水効果が長期間維持され、充分な実用耐久性が発揮される。
【0022】
かかる特性を有する織物を得るためには、織物を構成する経糸の一部又は全て、及び/又は緯糸の一部又は全てが制電糸からなることが好ましい。制電糸を含むことで、染色仕上げ加工時に帯電防止剤の使用量を減らすことができる。
一般に、縫製段階や繊維製品になった後の静電気発生を防止するために、通常は、撥水加工時に帯電防止剤を0.3〜1.5容積%程度使用している。しかしながら、この帯電防止剤が撥水耐久性を阻害することは一般に知られており、使用量の低減又は不使用が望まれていた。したがって、帯電防止剤を全く使用しないことが最も好ましい。
【0023】
本明細書中、C6系フッ素系撥水剤とは、分子中の炭素原子が6であるフッ素系撥水剤であり、例えば、旭硝子製AG−E082、クラリアント製 NUVA N2114、日華化学製 NKガードS55、NKガードS80などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの撥水剤をシリコン系柔軟剤、イソシアネート系バインダー、触媒などを併用して通常の条件にて加工すればよい。C6系フッ素系撥水剤の浴中濃度としては、40g/L〜100g/Lが好ましい。この範囲であれば、風合いや他の加工剤への影響が小さいため、好ましい。
【0024】
織物を構成する素材は、特に限定されるものではないが、引き裂き強度などの物性や、風合いなどを含めた総合的なバランスから考えて、ポリアミドであることが好ましい。また、通常のフラットヤーン以外に、仮撚加工や撚糸加工、タスラン加工などの形態であってもよい。
【0025】
撥水加工を施した後、必要に応じて片面や両面のカレンダー加工を施したり、アクリルやウレタンなどの樹脂加工やラミネート加工を施しても構わない。
【0026】
本発明の繊維製品としては、スポーツ衣料、アウトドアスポーツ衣料、アウター衣料、雨具、防風具、寝具などが挙げられる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例及び比較例において用いた各種評価試験方法を以下に示す。
(1)洗濯処理:JIS L 0217 103法、吊干し
【0028】
(2)撥水度試験:JIS L 1092、スプレー試験
評価基準の以下のとおりである:
撥水度5:表面に湿潤や水滴の付着のないもの
撥水度4:表面に湿潤はないが、少量の小さな水滴の付着があるもの
撥水度3:表面に小さな個々の水滴状の湿潤を示すもの
撥水度2:表面の半分に湿潤を示し、小さな個々の湿潤が布を浸透する状態を示すもの
撥水度1:表面全体に湿潤を示すもの
【0029】
(3)通気度試験:JIS L 1096 A(フラジール法)
【0030】
(4)摩擦帯電圧:JIS L 1094
【0031】
[実施例1]
経糸にセミダル22デシテックス24フィラメントの市販ナイロン糸を用い、緯糸にブライト33デシテックス26フィラメントの市販ナイロン制電糸を用い、経糸密度192本/インチ、緯糸密度135本/インチで平織物を製織した。その生機を常法により精錬、プレセット後、ミーリング染料カヤノール ミーリングブルーBWを2%owfにて通常の助剤を併用しながら98℃×30分染色し、FIX剤サンライフE−37(日華製)を2%owf使用してFIX処理を実施、常法で乾燥した。次いで、以下の条件で撥水加工を施した。
【0032】
[撥水加工]
・撥水処方
C6系フッ素系撥水剤:NUVA N2114(クラリアント製) 60g/L
架橋剤:ベッカミンM3(DIC製) 3g/L
触媒:キャタリストACX(DIC製) 2g/L
シリコン系柔軟剤:3g/L
・ピックアップ率:30%
・乾燥:130℃×1分
【0033】
その後、ピンテンターで165℃×40秒で仕上げ、温度180℃で片面カレンダー加工した。
仕上がり後の織物は、経密度215本/インチ、緯密度138本/インチ、厚み0.01mm、通気度0.5cc、摩擦帯電圧3000Vの物性を有しており、撥水性能は、洗濯50回後のスプレー試験で撥水度4、洗濯100回後のスプレー試験では撥水度3であった。
【0034】
[比較例1]
緯糸に33デシテックス26フィラメントのブライトナイロンのレギュラー糸を用いた他は、実施例1と同じ規格の生機を作製し、実施例1と同じ条件で精錬、プレセット、染色、FIX処理、乾燥まで実施した。次いで、撥水加工を行ったが、帯電防止剤を8g/Lを付加した以外は実施例1と同処方にて加工し、実施例1と同条件にて仕上げ、片面カレンダー加工をした。
仕上がり後の織物は、経密度214本/インチ、緯密度139本/インチ、厚み0.01mm、通気度0.5cc、摩擦帯電圧は4500Vの物性を有しており、撥水性能は洗濯50回後のスプレー試験で撥水度2であった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る織物は、環境に優しく、雨天などに着用使用しても、長期間、実用的かつ充分に、撥水性能が維持されるので、スポーツ衣料、アウトドアスポーツ衣料、アウター衣料、雨具、防風具、寝具などの繊維製品に好適に利用できる。