【実施例1】
【0015】
本発明の空気調和機及びその制御方法の実施例1を
図1〜
図3により説明する。
図1は、本実施例における空気調和機の冷凍サイクル構成図である。図において、100は室外機、200は室内機である。前記室外機100は前記室内機200に対してH1(m)だけ高い位置に設置されている。
【0016】
前記室外機100には、圧縮機1、四方弁2、冷房運転時に凝縮器となる室外熱交換器3、サブクーラ34、室外膨張弁4、液阻止弁60、ガス阻止弁61及びアキュムレータ9などが設けられている。また、前記室外熱交換器3にはその液側にディストリビュータ33が、そのガス側にはガス側ヘッダ36が設けられている。
前記室内機200には、室内膨張弁(弁装置)6及び冷房運転時に蒸発器となる室内熱交換器7などが設けられている。
【0017】
5は前記室外機100の液阻止弁60側と前記室内機200の室内膨張弁6側とを接続している液側接続配管、8は前記室外機100のガス阻止弁61側と前記室内機200の室内熱交換器7側とを接続しているガス側接続配管である。
また、本実施例では、
図1に示すように、前記液側接続配管5と前記室内機200とは、室内熱交換器7の高さ寸法Hhexに対し、その下部から上方に向って1/4までの高さ寸法範囲位置で接続されている。また、前記ガス側接続配管8と前記室内機200とは、室内熱交換器7の高さ寸法Hhexに対し、その上部から下方に向って1/4までの高さ寸法範囲位置で接続されている。このように前記液側接続配管5とガス側接続配管8を前記室内機200に接続する構成とすることにより、前記室外側熱交換器3からは前記液側接続配管5を介して前記室内熱交換器7側に液冷媒が流れ易くなり、また前記室内熱交換器7からは前記ガス側接続配管8を介して、前記室外熱交換器3側にガス冷媒が流れ易くなる。
【0018】
そして、前記圧縮機1、四方弁2、室外熱交換器3、サブクーラ34、室外膨張弁4、液阻止弁60、液側接続配管5、室内膨張弁6、室内熱交換器7、ガス側接続配管8、ガス阻止弁61、再び四方弁2、アキュムレータ9と経由して前記圧縮機1に再び接続されるように、これらの機器が冷媒配管で環状に接続されて強制循環による冷凍サイクル運転(強制循環運転)ができるようになっている。
【0019】
また、本実施例では、前記ガス阻止弁61と前記室外熱交換器3のガス側とを接続するバイパス配管(第1のバイパス配管)20が設けられており、このバイパス配管20には第1の開閉弁21とバイパス逆止弁25が設けられている。更に、前記室外熱交換器3のガス側と前記四方弁2を接続する冷媒配管の途中には第2の開閉弁22が設けられ、前記ガス阻止弁61と前記四方弁2とを接続する冷媒配管の途中には第3の開閉弁23が設けられている。この第3開閉弁23と前記ガス阻止弁61との間に前記バイパス配管20の一端が接続され、このバイパス配管20の他端は、前記第2開閉弁22と前記室外熱交換器3のガス側ヘッダ36とを接続している冷媒配管35に接続されている。
【0020】
このように構成することにより、自然循環による冷凍サイクル運転(自然循環運転)も可能な構成となっている。即ち、前記第1の開閉弁21を開くと共に、前記第2及び第3の開閉弁22,23を閉じることにより、蒸発器(室内熱交換器7)からのガス冷媒を、前記圧縮機1には流さず、前記バイパス配管20を介して凝縮器(室外熱交換器3)に流すことにより、自然循環冷房運転が可能となる。従って、前記第1〜第3の各開閉弁21〜23は、強制循環運転と自然循環運転とを切り替える切替回路を構成している。
【0021】
更に、本実施例では、前記第3開閉弁23と前記ガス阻止弁61との間の冷媒配管(ガス側接続配管)と、前記室外膨張弁4と前記液阻止弁60との間の冷媒配管(液側接続配管)とを接続するバイパス配管(第2のバイパス配管)30を設け、このバイパス配管30には余剰冷媒を溜めるための冷媒貯留器10が設けられている。また、前記冷媒貯留器10の両側の前記バイパス配管30には、該バイパス配管30を開閉するためのガス側開閉弁26と液側開閉弁27が設けられている。
前記バイパス配管30は、前記室外熱交換器3と、前記室内熱交換器7を接続している前記液側接続配管5と前記ガス側接続配管8とを接続するように設けられていれば良く、好ましくは
図1に示すように、室外機100内のガス側接続配管8側近傍(ガス阻止弁61付近)と液側接続配管5側近傍(液阻止弁付近)とを接続するように設けると良い。
【0022】
なお、
図1において、24は圧縮機1への冷媒の逆流を防止するための吐出逆止弁である。また、40は前記圧縮機1の吐出側温度を検出するための吐出温度センサ、41は前記室外熱交換器3の液温度センサ、42は前記サブクーラ34出口の液冷媒の温度を検出するサブクーラ出口温度センサ、43は前記室内熱交換器7の液温度センサ、44は前記室内熱交換器7のガス温度センサ、45は前記室内熱交換器7に吸い込まれる室内空気の温度を検出する室内吸込温度センサ、46は前記室内熱交換器7で熱交換されて室内に吹き出された空気の温度を検出する室内吹出温度センサ、47は前記室外熱交換器3に吸い込まれる室外空気の温度を検出するための室外吸込温度センサ、48は前記圧縮機1から吐出される冷媒の圧力を検出する吐出圧力センサである。
【0023】
これらの各センサ40〜48からの検出データは前記室外機100や前記室内機200、或いはリモコンや遠隔監視装置(図示せず)などに設けられた制御装置70に送られ、この制御装置70は前記各センサなどからの情報に基づいて前記圧縮機1、四方弁(切替回路)2、室外膨張弁4、室内膨張弁6、前記各開閉弁21〜23,26,27,前記室外ファン50、前記室内ファン51などを制御するように構成されている。
【0024】
また、前記制御装置70はマイクロコンピュータなどにより構成され、各センサ40〜48からの入力された情報や、前記各制御対象1,2,4,6,21〜23,26,27,50,51の制御情報が記憶されるように構成されている。
【0025】
更に、前記制御装置70には、自然循環運転中に該自然循環運転が停止したことを判定する停止判定装置71が設けられている。この停止判定装置71は、例えば、自然循環冷房運転時における冷却能力を検出することで自然循環運転の停止有無を判定する。本実施例では、前記停止判定装置は、前記蒸発器の室内吸込温度センサ45で検出された吸込空気温度と、前記室内吹出温度センサ46で検出された吹出空気温度との差を求め、その差が所定値以下なら自然循環運転が停止していると判定するようにしている。この停止判定装置71は、前記凝縮器用ファン(室外送風機50)の回転数、前記蒸発器用ファン(室内送風機51)の回転数、前記室内膨張弁(弁装置)6の開度、前記室外吸込温度センサ47で検出された室外空気温度(凝縮器の吸込空気温度)、前記室内吸込温度センサ45で検出された室内空気温度(蒸発器の吸込空気温度)などの各情報の少なくとも1以上も加えて、自然循環運転の停止判定をするとなお好ましい。
【0026】
冷凍サイクル中には、所定量の冷媒が封入されており、例えばR410A、R407C、R404A、R134a、R32、R1234yf、R1234ze、R152a、R744、R717、R290、R600aなどの冷媒、またはこれらの混合物などが使用されている。冷媒の選定に当たっては、圧力損失が低く、蒸発潜熱が大きいものであれば、強制循環運転及び自然循環運転の効率を高くできるため、望ましい。
【0027】
現在パッケージエアコン(業務用エアコン)やルームエアコンで広く使用されているR410Aは、電力消費を抑えて地球温暖化への間接影響を少なくすることができる。
また、蒸発潜熱が大きいR32を使用すれば、同一能力で運転する時の冷媒循環量を少なくすることができ、R410Aより低圧力損失になり、運転効率が向上するから、電力消費に伴って排出される二酸化炭素を少なくすることができる。加えてR32は、冷媒のGWP(地球温暖化係数)が小さいため、冷媒が大気中へ漏洩した際に生じる地球温暖化の直接影響を少なくすることが可能である。R32使用時の低圧力損失特性は、自然循環運転時のように、冷凍サイクルを駆動するための差圧が非常に小さい場合でも、安定した循環を維持することが容易であることから、自然循環運転と強制循環運転とを切り替えて使用するタイプの空気調和機用の冷媒として特に有効である。なお、前記冷媒として、R32だけでなく、R32の割合を50%以上(〜100%未満)とした冷媒を使用しても良い。
【0028】
圧縮機1を駆動させる強制循環運転時には、冷房運転、暖房運転共に、前記第1の開閉弁21を閉にすると共に、前記第2の開閉弁22と第3の開閉弁23は開に制御される。そして、強制循環冷房運転時には、圧縮機1の吐出側と室外熱交換器3のガス側が接続され、またアキュムレータ9とガス阻止弁61側が接続されるように前記四方弁2が切替えられる。これにより、圧縮機1で圧縮されて高温高圧となった冷媒は、四方弁2を通って前記室外熱交換器3に導かれ、室外送風機(凝縮器用ファン)50から送風される室外空気により冷却されて凝縮し、液冷媒となる。この液冷媒は、その後、全開状態に制御されている室外膨張弁4を通過して液阻止弁60、液側接続配管5を通り、前記室内機200へと送られる。
【0029】
この室内機200に送られた前記液冷媒は、室内膨張弁(弁装置)6により所定量減圧されて、低圧の気液二相流となり、室内熱交換器(蒸発器)7に流入する。ここで、気液二相流の低圧冷媒は室内送風機(蒸発器用ファン)51からの室内空気と熱交換して蒸発し、低圧ガス冷媒になると共に、前記室内空気は冷却されることにより、冷房作用が為される。
【0030】
その後、前記低圧ガス冷媒は、前記ガス側接続配管8を通って前記室外機100へ戻り、ガス阻止弁61を通過後、四方弁2からアキュムレータ9へ流れて、圧縮機1へと吸い込まれる。
【0031】
このように、空気調和機における強制循環冷房運転では、圧縮機1で冷媒を圧縮し、室外熱交換器3で凝縮させ、室内膨張弁6で減圧して、室内熱交換器7で蒸発させるという一連の冷凍サイクルを構成している。
【0032】
強制循環暖房運転時には、前記四方弁2を、圧縮機1の吐出側とガス阻止弁61側とが、またアキュムレータ9と室外熱交換器3のガス側とが接続されるように切替える。冷凍サイクルの動作は、強制循環冷房運転時の場合に対して、室内熱交換器7が凝縮器として作用し、また室外熱交換器3は蒸発器として作用することになり、室内空気に対して暖房作用が為されることになる。即ち、冷凍サイクルの動作は逆になり、室内熱交換器7と室外熱交換器3の状態が逆転する。しかし、冷凍サイクルの原理は同一であるため、その他の詳細な説明は省略する。
【0033】
次に、自然循環冷房運転時(自然循環運転)の動作について、
図1の冷凍サイクル構成図及び
図2のモリエル線図を用いて説明する。強制循環冷房運転から自然循環冷房運転に切り替える場合、前記制御装置70により、まず前記圧縮機1の運転を停止し、その後前記切替回路を構成する第1〜第3の開閉弁21〜23を操作して行う。即ち、第1の開閉弁21を開くと共に、第2の開閉弁22と第3の開閉弁23は閉じるように制御する。
【0034】
これにより、圧縮機1、四方弁2及びアキュムレータ9への冷媒循環は絶たれるため、不要な冷媒の溜まり込みが防止され、自然循環運転時の冷媒量が確保され易くなる。また、圧縮機1を再起動する際の液戻りによる液圧縮等を防止でき、信頼性低下に繋がるような不具合が発生するのも防止できる。
【0035】
なお、自然循環運転が実施できるのは、前記室外吸込温度センサ47で検出された室外空気温度Toが前記室内吸込温度センサ45で検出された室内空気温度Tiよりも低い場合であり、例えば、次式が成立する場合に自然循環冷房運転を実施する。
To<Ti−10 (K)
この自然循環運転による冷媒の駆動力は、液冷媒とガス冷媒の密度差と、室外機と室内機間の設置高低差H1から生じるヘッド差ΔPであり、このヘッド差ΔPは次式で求めることができる。
ΔP=(ρ
L−ρ
g)・g・H1
ここで、ρ
Lは冷媒液密度(kg/m
3)、ρ
gは冷媒ガス密度(kg/m
3)、gは重力加速度(m/s
2)、H1は室外機と室内機間の高低差(m)である。
【0036】
即ち、
図1に示した冷凍サイクル構成図において、室外熱交換器(凝縮器)3内の冷媒は、室外送風機(凝縮器用ファン)50により送風された室外空気(室内空気より低温)により、冷却されて凝縮し、液冷媒となって、前記ヘッド差ΔPにより、循環を開始する。
【0037】
この自然循環運転では、室外膨張弁4は全開状態に制御されるので、前記室外熱交換器3からの液冷媒は前記室外膨張弁4をそのまま通過し、更に液阻止弁60を通過後、液側接続配管5を通って室内機200へ導かれる。
【0038】
この室内機200では、前記蒸発器としての室内熱交換器7の上流側に設けられているほぼ全開状態の室内膨張弁(弁装置)6を通過し、前記室内熱交換器(蒸発器)7に導入される。なお、室外機100と室内機200間の設置高低差H1が大きい場合には、前記室内膨張弁6の開度を調節して流量制御し、これにより冷却能力を制御する容量制御を実施する場合もある。
【0039】
この容量制御においては、前記室内吸込温度センサ45で検出された前記蒸発器の吸込空気温度と、空調対象室内の設定空気温度との差に基づいて、まずは前記凝縮器用ファン(室外送風機)50を制御して行う。前記凝縮器用ファン50の制御だけでは容量制御が不十分の場合には、次に前記蒸発器用ファン(室内送風機)51の制御を行なう。これでもなお容量制御が不十分の場合には、前記蒸発器上流側の弁装置6の開度を制御して容量制御を行なう。このような順序で、必要に応じて、例えば、前記各ファン50,51を低速側へ、前記弁装置6を低開度側へ順に制御することで、低容量側への容量制御が可能となる。
【0040】
なお、本実施例では、前記蒸発器(室内熱交換器7)の上流に設けた弁装置6を室内膨張弁のみで構成している例で説明したが、前記弁装置6を、膨張弁と、これをバイパスするバイパス回路と、このバイパス回路を開閉する開閉弁で構成し、自然循環冷房運転時には、前記膨張弁を全閉とし、前記開閉弁を開いて前記パイパス回路を冷媒が通過するように構成しても良い。
【0041】
室内熱交換器7に流入した前記液冷媒は、室内送風機(蒸発器用ファン)51により送風される室内空気と熱交換して加熱され、蒸発してガス冷媒となる。この時前記室内空気は冷却されて室内を冷房する。
【0042】
前記室内熱交換器7のガス冷媒は、ガス側接続配管8を通過して上昇し、上方に設置された前記室外機100に流入して、ガス阻止弁61を通過後、第1の開閉弁21、バイパス逆止弁25を通って、再び前記室外熱交換器(凝縮器)3へ戻るという一連の冷凍サイクルを構成する。
【0043】
ここで、
図2のモリエル線図上に自然循環運転時の運転状態を示すと、a→bは室外熱交換器(凝縮器)3での凝縮作用を、b→cは室外機100から室内機200への液冷媒の下降により液ヘッド差ΔPLが増大し、圧力が上昇している様子を示している。前記液ヘッド差ΔPLは、
ΔPL=ρ
L・g・H1
で求めることができる。なお、
図2のb→cは、液側接続配管5の圧損ΔPLpipe分も考慮されている。また、Δhは前記蒸発器及び凝縮器における比エンタルピ差、Grは通常の自然循環運転時の冷媒循環量、SCcoは凝縮器出口過冷却度、SHeoは蒸発器出口過熱度である。
【0044】
次に、c→dは室内熱交換器(蒸発器)7での蒸発作用を、d→aは室内機200から室外機100へのガス冷媒の上昇によるガス側接続配管8での圧力損失ΔPgpipeとガスヘッド差ΔPg(=ρ
g・g・H1)により圧力が低下している様子を示している。このように、冷媒がa→b→c→d→aと自然循環することにより、自然循環運転の冷凍サイクルを構成している。
【0045】
これに対し、
図3のモリエル線図上に示したのは、凝縮器用ファン(室外送風機50)と蒸発器用ファン(室内送風機51)の回転数を抑えた場合の自然循環冷房の運転状態である。凝縮器用ファンの回転数を低速に制御すると、凝縮器(室外熱交換器3)での冷媒状態はa´→b´と比エンタルピ差Δh´へと小さくなり、凝縮器出口状態は液冷媒にガス冷媒が混入した気液二相状態となる。また、蒸発器用ファンを低速に制御すると、蒸発器での冷媒状態はc´→d´となり、蒸発器出口ではガス冷媒に液冷媒が混入した気液二相状態になる。
【0046】
凝縮器(室外熱交換器3)出口状態が気液二相状態になると、凝縮器から蒸発器(室内熱交換器7)へと冷媒が下降する液側接続配管内も気液二相状態となり、液側冷媒の液ヘッド差ΔPL´は、
ΔPL´=ρ
L´・g・H1
となる。ここで、液側接続配管5内の平均冷媒密度ρ
L´(kg/m
3)はガス冷媒の混入により、満液状態で運転された場合に比べて小さくなるため、液側接続配管5内のヘッドが減少する。
【0047】
また、蒸発器出口状態が気液二相状態になると、蒸発器から凝縮器へと冷媒が上昇するガス側接続配管8内も気液二相状態になり、ガス側冷媒のガスヘッド差ΔPg´は、
ΔPg´=ρ
g´・g・H1
となる。ガス側接続配管8内冷媒の平均冷媒密度ρ
L´(kg/m
3)は液冷媒の混入により、ガスのみで運転された場合に比べて大きくなるため、ガス側接続配管8内のヘッドが増加して、冷媒循環を妨げる方向の力が作用する。
【0048】
更に、前記各接続配管5,8内をそれぞれ液冷媒のみ、或いはガス冷媒のみが循環した場合に比べ、冷媒が気液二相状態で流れた場合の前記各接続配管内の圧力損失は増大する。従って、
図3に示した自然循環冷房運転時の冷媒循環量Gr´は、
図2に示した通常の自然循環運転時の冷媒循環量Grよりも減少し、前記蒸発器及び凝縮器における比エンタルピ差も
図3に示したΔh´のように減少するから、これらの相乗効果により冷房能力Q´は、
Q´=Gr´・Δh´
へと減少する。これにより、室内の冷房負荷に応じて、冷房能力を調整することが可能である。
【0049】
しかしながら、空調を行っている室内温度を調整するために、前記凝縮器用ファンと蒸発器用ファンの回転数を低下させる制御を実施した場合、前述したように、液側接続配管5へのガス冷媒の混入や、ガス側接続配管8への液冷媒の混入により、液側接続配管5での下降流、ガス側接続配管8での上昇流が阻害されることがある。
例えば、冷媒循環量Gr´が少なくなることにより、液側接続配管5内のガス冷媒が蒸発器側に下降することができなくなったり、ガス側接続配管8内の液冷媒が凝縮器側に上昇することができなくなることがある。このため冷媒循環が意図せずに停止して自然循環運転ができなくなることがあった。
【0050】
自然循環冷房運転が停止すると、冷房能力が発揮できなくなり、空調を行っている室内の温度上昇をもたらし、対人空調として使用している場合には居住者に対する快適性を損ね、電算機などの機器の空調として使用していた場合には、機器の安定運転を損ねるといった問題が生じる。
【0051】
そこで、本実施例の空気調和機では、自然循環運転中に、前記蒸発器における吸込空気温度と吹出空気温度の温度差が、予め定めた所定時間以上ゼロになっている場合には、自然循環運転が停止している判断し、次に説明する自然循環再起動制御へと移行させる。
【0052】
自然循環再起動制御では、まず、蒸発器(室内熱交換器7)の上流側(自然循環運転時における上流側)に設置された前記室内膨張弁(弁装置)6を閉止すると共に、前記凝縮器用ファン(室外送風機50)、前記蒸発器用ファン(室内送風機51)を増速して運転する。これにより、前記凝縮器(室外熱交換器3)内には液冷媒が貯められていき、前記蒸発器内では冷媒がガス化してガス冷媒が増えていくので液冷媒は減少していく。
【0053】
また、本実施例では、
図1で説明したように、凝縮器と蒸発器を接続している液側接続配管を、前記蒸発器(室内熱交換器7)の高さ寸法Hhexに対し、該蒸発器下部から上方に向って1/4までの高さ寸法範囲位置で前記蒸発器に接続すると共に、前記ガス側接続配管8を、前記蒸発器の高さ寸法Hhexに対し、該蒸発器上部から下方に向って1/4までの高さ寸法範囲位置で前記蒸発器に接続しているので、前記凝縮器から前記液側接続配管5側に液冷媒が流れ易くなり、その結果、前記液側接続配管5内は液冷媒で満たされる状態となる。一方、前記ガス側接続配管8内はガス冷媒で満たされるように状態変化していく。
【0054】
このように、前記液側接続配管5は液冷媒で、前記ガス側接続配管8はガス冷媒で満たされるように状態変化していくことにより、自然循環運転を再起動するための十分なヘッド差が作用するようになる。上述したような制御状態を一定時間保持した後、前記室内膨張弁(弁)6を開放することにより、自然循環運転を再起動させることができる。
【0055】
更に、自然循環運転の再起動を容易にする為には、液側接続配管5を凝縮器3から蒸発器7に至るまでの経路を下降のみで構成して、途中に逆勾配となる部分(トラップとなる部分)が生じないようにすることで、液側接続配管5へのガス冷媒の溜まり込みを防止することが可能となり、より再起動し易くなる効果が得られる。また、好ましくは、蒸発器7から凝縮器3までのガス側接続配管8の経路を上昇のみで構成して、途中に逆勾配となる部分(トラップとなる部分)が生じないようにすることで、このガス側接続配管8途中に液冷媒が溜まり込むのを防止することができ、更に再起動がし易くなる。
【0056】
上記した自然循環の再起動制御を行った後において、再度冷房能力の発生が検知できない場合、つまり、前記室内吹出温度センサ46で検出される蒸発器7からの吹出空気温度が、前記室内吸込温度センサ45で検出される蒸発器7への吸込空気温度よりも低くならない状態が一定時間以上継続したした場合には、前記制御装置70は、強制循環冷房運転への切替え制御を行なう。即ち、前記制御装置70は、前記切替回路を構成している第1〜第3の開閉弁21〜23を強制循環冷房運転可能に切り替えると共に、前記圧縮機1を起動するように制御する。
【0057】
更に詳しく説明すれば、前記第1の開閉弁21を閉にすると共に、前記第2の開閉弁22と第3の開閉弁23を開に制御する。その後、圧縮機1が起動され、該圧縮機1により圧縮されて高温高圧となった冷媒は、四方弁2を通って前記室外熱交換器3に導かれ、室外送風機50から送風される室外空気により冷却されて凝縮し、液冷媒となる。この液冷媒は、その後、全開状態に制御されている室外膨張弁4を通過し、更に前記液阻止弁60、液側接続配管5を通って前記室内機200へと送られる。
【0058】
この室内機200に送られた前記液冷媒は、前記室内膨張弁6により所定量減圧されて、低圧の気液二相流となり、室内熱交換器7に流入する。ここで、気液二相流の低圧冷媒は室内送風機51からの室内空気と熱交換して蒸発し、自らは低圧ガス冷媒になると共に前記室内空気を冷却し、冷房作用が為される。
【0059】
その後、前記低圧ガス冷媒は、前記ガス側接続配管8を通って室外機100へ戻り、ガス阻止弁61を通過後、四方弁2からアキュムレータ9へ流れて、前記圧縮機1に再び吸い込まれるという強制循環冷房運転が行われる。
【0060】
このように、強制循環冷房運転を一定時間行うことにより、前記液側接続配管5は液冷媒で満たされ、前記ガス側接続配管8はガス冷媒で満たされる状態になる。このため、その後の自然循環運転への切り替えを確実に行うことができる。
【0061】
本実施例によれば、自然循環運転において、前記液側接続配管5やガス側接続配管8内の冷媒状態が理想的な状態とならずに、自然循環運転が停止した場合でも、安定した自然循環運転への再起動を速やかに行なわせることのできる空気調和機を得ることができる。
また、本実施例によれば、自然循環運転が不意に停止すると、その停止状態を速やかに且つ正確に判定して、安定した自然循環運転へ速やかに再起動できるから、無駄な電力消費を押さえることが可能になると共に、空調する室内温度の上昇による快適性への悪影響も低減できる。