(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように被覆層部に接着性材料を含有させることにより、使用時に排泄物処理材どうしを付着させて塊状にする機能を高めることができる。しかしながら、かかる構成の排泄物処理材の製造においては、被覆層部を形成する際に、接着性材料が粒状芯部からの水分の滲出を妨げるため、被覆材料が粒状芯部に付着しにくくなり、それにより被覆材料のロス率(粒状芯部に付着せずに無駄になる被覆材料の割合)が大きいという問題があった。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、製造時に被覆材料のロス率を小さく抑えることが可能な吸水処理材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による吸水処理材は、粒状芯部と、上記粒状芯部を覆う被覆層部と、を備え、上記被覆層部は、接着性材料を含まない第1の層と、上記第1の層を覆い、接着性材料を含む第2の層と、を有することを特徴とする。
【0006】
この吸水処理材においては、被覆層部が、第1の層と、その外側に設けられた第2の層とを有している。それゆえ、この吸水処理材の製造においては、第2の層の形成に先立って、第1の層の形成を行うことができる。第1の層は接着性材料を含んでいないため、その形成においては、接着性材料によって粒状芯部からの水分の滲出が妨げられることがない。そのため、接着性材料による水分滲出の妨害がない状態で、被覆層部の一部を形成することができる。したがって、被覆材料を効率良く粒状芯部に付着させ、それにより被覆材料のロス率を小さく抑えることができる。
【0007】
本発明による吸水処理材の製造方法は、粒状芯部を形成する工程と、上記粒状芯部を覆う被覆層部を形成する工程と、を備え、上記被覆層部を形成する工程は、上記粒状芯部を覆うように、接着性材料を含まない第1の層を形成する工程と、上記第1の層を覆うように、接着性材料を含む第2の層を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
この製造方法においては、第2の層の形成に先立って、第1の層の形成が行われる。第1の層は接着性材料を含んでいないため、その形成においては、接着性材料によって粒状芯部からの水分の滲出が妨げられることがない。そのため、接着性材料による水分滲出の妨害がない状態で、被覆層部の一部を形成することができる。したがって、被覆材料を効率良く粒状芯部に付着させ、それにより被覆材料のロス率を小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製造時に被覆材料のロス率を小さく抑えることが可能な吸水処理材及びその製造方法が実現される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明による吸水処理材及びその製造方法の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[構成]
【0012】
図1は、本発明による吸水処理材の一実施形態を示す模式図である。吸水処理材1は、猫や犬等の愛玩動物用の排泄物処理材であり、粒状芯部10、及び被覆層部20を備えている。
<粒状芯部10>
【0013】
粒状芯部10は、小塊の形状に形成されていればよく、完全な球形等である必要はない。粒状芯部10の形状としては、例えば、柱状体(細長形)、扁平形等が考えられる。また、粒状芯部10を構成する材料(芯部材料)としては、保水性能を有している保水性材料であればよく、例えば、紙類、繊維類、木材類、植物類、プラスチック類、ゴム類、有機性汚泥材質等を用いることができる。これらを2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0014】
紙類は、パルプを原材料としているものであれば種類は問わない。バージンパルプはもちろん、各種の廃材等を用いることができる。例えば、薄葉紙廃材、衛生用紙廃材、トイレットペーパー廃材、ティッシュペーパー廃材、化粧紙廃材、ちり紙廃材、紙綿廃材、紙タオル廃材、便座シート廃材、新聞紙屑、雑誌屑、バフ粉(主として印刷会社において、製本の切断時や削り時に発生する微細な紙粉)、機械パルプ廃材、化学パルプ廃材、チタン紙廃材、セミケミカルパルプ廃材、綿状パルプ廃材、木材パルプ廃材、古紙パルプの粉砕物、フラッフパルプ、吸水性繊維廃材、不織布廃材、不織布製造時に発生する紙粉、製紙工程において発生する紙粉、衛生材料製造時に発生する紙粉、ラミネート紙廃材、ラミネート紙の印刷屑、ラミネート紙の端屑、ダンボール屑、損紙(衛生材メーカーで発生するトリムロス、製紙メーカーで発生する紙屑等)、包装紙、板紙、使用済み切符、パンチ屑等を使用することができる。
【0015】
繊維類は、布等の原材料となる糸状の物質であり、種類は問わない。天然繊維であってもよいし化学繊維であってもよい。例えば、繊維工場から廃棄される繊維くず(木綿くず、羊毛くず、麻くず、糸くず、布くず、綿くず、くずまゆ、レーヨンくず、ナイロンくず、ポリエステルくず、ロープくず)等を使用することができる。
【0016】
木材類としては、各種廃木材(構造物の廃木材、木製品の製造で発生する廃木材、木製家具、木製パレット、鉋くず、おがくず、バーク類、梱包材くず、板きれ、廃チップ、伐採・伐根で生じた廃木材、剪定枝、木粉等)を使用することができる。
【0017】
植物類は、種類は問わず、例えば、ササ、竹、落葉、刈草はもちろん、植物性残渣等を使用することもできる。ここで、植物性残渣とは、食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業又は飲食店等において原料として使用した植物の固形状の不要物をいう。例として、ソースかす、しょうゆかす、こうじかす、酒かす、ビールかす、あめかす、海苔かす、でんぷんかす、豆腐かす、おから、あんかす、茶殻、焙煎コーヒー豆の抽出残渣、米・麦粉、大豆かす、果実の皮・種子、野菜くず、薬草かす、油かす等が挙げられる。
【0018】
プラスチック類は、合成高分子化合物の固形状物質(例えば、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリ塩化ビフェニール、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニリデン、アクリル樹脂、ポリウレタン(ウレタンフォーム)、生分解性プラスチック等)であれば種類は問わない。プラスチック類として、各種廃材を使用してもよい。例えば、廃プラスチック類、廃ポリウレタン、廃スチロール(発泡スチロールを含む)、廃農業用フィルム、各種合成樹脂系包装材料のくず、廃写真フィルム、廃ポリ容器類、電線の被覆くず、ライニングくず、廃ポリマー、塗料かす、接着剤かす、廃ベークランド(プリント基盤等)等を使用することができる。
【0019】
また、排泄物処理材の廃材のプラスチックに富む分離産物、紙おむつ廃材(衛生材メーカーで発生する規格外品の紙おむつの外装体など)のプラスチックに富む分離産物、生理用ナプキン廃材のプラスチックに富む分離産物、乳パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、汗パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、失禁パッド廃材のプラスチックに富む分離産物、動物用シーツ廃材のプラスチックに富む分離産物、寝具用シーツ廃材のプラスチックに富む分級等による分離産物、マスク廃材のプラスチックに富む分離産物、アイマスク廃材のプラスチックに富む分離産物、座席用ヘッドカバー廃材のプラスチックに富む分離産物、塩化ビニル壁紙廃材、枕カバー廃材のプラスチックに富む分離産物、合成樹脂繊維廃材等を使用することもできる。
【0020】
また、排泄物処理材の廃材、紙おむつ廃材、生理用ナプキン廃材、乳パッド廃材、汗パッド廃材、失禁パッド廃材、動物用シーツ廃材、寝具用シーツ廃材、マスク廃材、アイマスク廃材、座席用ヘッドカバー廃材、枕カバー廃材等を使用することができる。
【0021】
プラスチック類は灰分が少ないため、それを用いた場合、焼却処分後の減量化が可能となるとともに、焼却時における発熱量を高くすることができる。
【0022】
ゴム類は、伸縮性に優れた高分子材料であれば種類は問わない。天然ゴムであってもよいし合成ゴムであってもよい。ゴム類として、各種廃材を使用してもよい。例えば、廃タイヤ、合成ゴムくず等を使用することができる。
【0023】
有機性汚泥としては、例えば、工場廃水等の処理後に残る泥状物質、各種製造業の製造工程において生ずる泥状物質を用いることができる。例えば、製紙スラッジ、パルプスラッジ、下水汚泥、消化汚泥(余剰汚泥)、糊かす等を使用することができる。
【0024】
芯部材料として、性状が異なる2種類以上の保水性材料を適宜組み合わせた場合、それらの材料の相乗効果により、保水性能を効果的に向上させることができる。
【0025】
例えば、フラッフパルプ(紙類)と植物性残渣(オカラ等)との組み合わせ、フラッフパルプ(紙類)と植物性残渣(オカラ等)と木材類(木粉)との組み合わせ、フラッフパルプ(紙類)と植物性残渣(オカラ等)と有機性汚泥(パルプスラッジ)との組み合わせ、植物性残渣(オカラ等)と有機性汚泥(パルプスラッジ)との組み合わせ、プラスチック類(塩化ビニル壁紙)と有機性汚泥(パルプスラッジ)との組み合わせ等が考えられる。
【0026】
また、保水性能が低い保水性材料を用いた場合であっても、他の保水性材料と組み合わせることにより、高い保水性能を実現することが可能である。それゆえ、保水性能が低い材料であっても保水性材料として好適に用いることができるので、保水性材料の選択の幅が広がる。
【0027】
なお、芯部材料には、保水性能を阻害することなく、他の効果を奏することが可能な物質を配合してもよい。かかる物質としては、例えば、脱臭材料、消臭材料、殺菌作用を有する物質、着色物質、検査用指示薬等が挙げられる。
<被覆層部20>
【0028】
被覆層部20は、粒状芯部10を覆っている。本実施形態において被覆層部20は、粒状芯部10の表面全体を覆っている。この被覆層部20は、複数の層から構成されている。本実施形態において被覆層部20は、被覆層22(第1の層)、被覆層24(第2の層)、及び被覆層26(第3の層)を有する。具体的には、粒状芯部10を覆うように被覆層22が設けられ、被覆層22を覆うように被覆層24が設けられ、被覆層24を覆うように被覆層26が設けられている。
【0029】
被覆層部20は、使用時に尿等の排泄物で濡れた吸水処理材1どうしを付着させて塊状にする機能を有する。かかる機能を高めるため、被覆層部20には接着性材料が含まれている。この接着性材料は、被覆層22、被覆層24及び被覆層26のうち被覆層24のみに含まれている。すなわち、被覆層22及び被覆層26は、接着性材料を含んでおらず、非接着性材料のみによって構成されている。他方、被覆層24は、接着性材料を含んでいる。被覆層24は、接着性材料のみによって構成されていてもよいし、非接着性材料と接着性材料との混合物によって構成されていてもよい。
【0030】
非接着性材料としては、例えば紙粉を用いることができる。すなわち、被覆層22及び被覆層26は、紙粉によって構成することができる。また、被覆層24は、紙粉と接着性材料との混合物によって構成することができる。
【0031】
紙粉としては、例えば、薄葉紙、薄葉紙廃材、衛生用紙、衛生用紙廃材、トイレットペーパー用紙、トイレットペーパー廃材、ティッシュペーパー用紙、ティッシュペーパー廃材、化粧紙用紙、化粧紙廃材、ちり紙用紙、ちり紙廃材、紙綿、紙綿廃材、紙タオル、紙タオル廃材、便座シート廃材、機械パルプ、機械パルプ廃材、化学パルプ、化学パルプ廃材、セミケミカルパルプ、セミケミカルパルプ廃材、綿状パルプ、綿状パルプ廃材、木材パルプ、木材パルプ廃材、古紙パルプの粉砕物、フラッフパルプ、吸水性繊維廃材、吸水性樹脂を含む紙粉、製本時に発生する紙粉、不織布製造時に発生する紙粉、製紙工程において発生する紙粉、衛生材料製造時に発生する紙粉等を用いることができる。これらの2種類以上の材料を混合して使用してもよい。何れも、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.3mm以下の粒度の粒状物に粉砕されて使用される。
【0032】
接着性材料としては、公知の各種の物質を用いることができ、例えば、糊料、フェノール樹脂系接着剤、酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤、吸水性樹脂等が存在する。かかる接着性材料としては、例えば、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、デキストリン、アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ビニルエステル、ベントナイト、プルラン、カゼイン、ゼラチン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0033】
なお、被覆層部20を構成する材料(被覆材料)には、保水性能を阻害することなく、他の効果を奏することが可能な物質を配合してもよい。かかる物質としては、例えば、浸透剤、膨潤剤、脱臭材料、消臭材料、殺菌作用を有する物質、着色物質、検査用指示薬等が挙げられる。
[製造方法]
【0034】
図2(a)〜
図2(c)を参照しつつ、本発明による吸水処理材の製造方法の一実施形態として、吸水処理材1の製造方法の一例を説明する。この製造方法は、造粒工程(粒状芯部10を形成する工程)、被覆工程(被覆層部20を形成する工程)、分粒工程、及び乾燥工程を含んでいる。
<造粒工程>
【0035】
本工程は、粒状芯部10を形成する工程である。本工程においては、芯部材料を破砕機で所定の大きさに粉砕し、当該粉砕された芯部材料を所定の割合でミキサーに投入して混ぜ合わせる。そして、加水した後、当該芯部材料を造粒機によって押出造粒することにより、粒状芯部10を形成する(
図2(a))。
<被覆工程>
【0036】
本工程は、粒状芯部10を覆うように被覆層部20を形成する工程である。本工程においては、コーティング装置等を用いて、粒状芯部10の周囲に被覆材料を散布又は噴霧し、被覆層部20を形成する。
【0037】
この工程は、被覆層22を形成する工程と、被覆層24を形成する工程と、被覆層26を形成する工程とを含む。具体的には、まず、粒状芯部10を覆うように被覆層22を形成する(
図2(b))。次に、被覆層22を覆うように被覆層24を形成する(
図2(c))。続いて、被覆層24を覆うように被覆層26を形成することにより、
図1に示した構造の吸水処理材を得る。すなわち、被覆層部20を形成する工程においては、被覆層22、被覆層24及び被覆層26が、時間差をもって順番に形成される。
<分粒工程>
【0038】
本工程は、吸水処理材の寸法が所定の規格になるように分粒する工程である。本工程においては、所定の寸法の篩目を有する篩に、前工程で製造された吸水処理材を通過させることにより、所定の規格を満たす吸水処理材のみを抽出する。
<乾燥工程>
【0039】
本工程は、前工程で抽出された吸水処理材を乾燥機で乾燥させる工程である。粒状芯部10の含水率が高過ぎると、吸水処理材1の保存時にカビ等が生じる原因となる。それゆえ、本工程においては、吸水処理材1の含水率が3重量%以上12重量%以下の範囲内となるように乾燥させることが好ましい。
[作用効果]
【0040】
吸水処理材1においては、
図1で説明したように、被覆層部20が、被覆層22と、その外側に設けられた被覆層24とを有している。それゆえ、この吸水処理材1の製造においては、被覆層24の形成に先立って、被覆層22の形成を行うことができる。実際、本実施形態に係る製造方法においては、被覆層24の形成に先立って、被覆層22の形成が行われている。被覆層22は接着性材料を含んでいないため、その形成においては、接着性材料によって粒状芯部10からの水分の滲出が妨げられることがない。そのため、接着性材料による水分滲出の妨害がない状態で、被覆層部20の一部を形成することができる。したがって、被覆材料を効率良く粒状芯部10に付着させ、それにより被覆材料のロス率を小さく抑えることができる。
【0041】
ところで、従来の吸水処理材において被覆層部を形成する場合、粒状芯部の表面に凹凸が存在することから、均一な厚みで被覆材料を付着させることが困難であった。厚みが不均一であると、被覆材料の剥離が生じ易くなるという問題がある。また、被覆材料の厚みが小さい部分から吸水処理材の外部に水分が滲出することにより、製造中の吸水処理材どうしが付着して塊状になってしまうという問題もある。このように塊状になった吸水処理材は、乾燥工程において乾燥むらを生じさせ、それにより製造後の吸水処理材の吸水・保水性能の低下につながるため、製造中に除去する必要がある。それゆえ、これらの問題もまた、材料のロス率を高める要因であった。
【0042】
この点、本実施形態においては、被覆層24の形成に先立って被覆層22が形成されるため、粒状芯部10の表面の凹凸が緩和される。これにより、被覆材料の付着面が比較的滑らかな状態で被覆層24,26の形成を行うことができるので、厚みの均一性が高い被覆層部20を得ることができる。そのため、吸水処理材1の製造時において、被覆材料の剥離及び吸水処理材どうしの付着を生じにくくすることができる。
[本発明の他の実施形態]
【0043】
本発明による吸水処理材及びその製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態においては、被覆層部20が、被覆層22、被覆層24及び被覆層26からなる3層構造である例を示した。しかし、被覆層部20は、被覆層22及び被覆層24からなる2層構造であってもよい。すなわち、吸水処理材1において被覆層26を設けることは必須ではない。また、被覆層部20を形成する工程において被覆層26を形成することも必須ではない。