(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記雨水ますの上面部が地表面に露出しており、該上面部に、外部と雨水ます内とを連通させる点検口が設けられ、前記第2のフィルタ部は前記雨水ますの流出口に配設されている請求項2に記載の貯留利水施設。
前記雨水ますの流入口に、下流側の管端が下を向いたエルボ管が配設され、該下流側の管端が前記第1のフィルタ部の鉛直上方に配置されている請求項4に記載の貯留利水施設。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1には、上述のように先に貯留槽で雨水を貯蓄してから、該貯留槽から溢れた雨水を浸透槽へ案内する構成のみ開示されており、優先して浸透槽へ雨水を案内し、浸透槽で処理しきれない雨水について貯留槽へ導入し得る構成は開示されていない。また、各槽に流入する雨水に含まれる夾雑物は、周知技術であるフィルタにより適切に除去できるが、優先して浸透槽へ雨水を案内し、処理しきれない雨水を貯留槽へ案内し得る構成について、フィルタの適切な配置や、該フィルタの点検や交換が容易となる構成は未だ提案されていない。また、上記の特許文献1に開示された構成は、浸透槽及び貯留槽からなる二層構造となるため、両槽を埋設するために地中深く掘削しなければならず、掘削量が多く施工負担が大きいという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、貯留浸透槽と利水槽とを兼ね備えており、かつ雨水に含まれる夾雑物を適切に除去しつつ一方の槽に優先して雨水を流入させることができる貯留利水施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、雨水を一時貯留して地中に浸透させることができ、また雨水を利水用として蓄えることもできる貯留利水施設であって、地中に埋設された第1の槽と第2の槽とを有し
ており、該第1の槽の上部に雨水ますが配設され
ており、該雨水ますの
底壁部分には、該雨水ます内と該第1の槽内とを連通させる連通口が形成されており、また、該雨水ますの
側壁部分であって、前記連通口より少なくとも上側に、該雨水ます内へ雨水を流入させる流入口が形成されていると共に、
該雨水ますの側壁部分であって、該連通口と該流入口との間の高さ位置に、該雨水ます内の雨水を前記第2の槽へ流出させる流出口が形成されており、さらに前記連通口に、該連通口を通過する雨水が透水可能な第1のフィルタ部が配設されていると共に、前記流出口
に、該第2の槽に流入する雨水が透水可能な第2のフィルタ部が配設されており、前記第1の槽が、雨水を一時貯留する貯留空間を有し、該貯留空間内に流入した雨水を地中に浸透させる貯留浸透槽、及び、雨水を利水用として蓄える貯蓄空間を有する利水槽のうちいずれか一方であり、前記第2の槽が、いずれか他方であ
り、第1のフィルタ部の目の大きさと第2のフィルタ部の目の大きさとが異なっていることを特徴とする貯留利水施設である。
【0008】
かかる構成とすることにより、雨水ますに流入した雨水を、互いに機能が異なる槽のうち一方の槽に優先して案内することが可能となる。また、このとき、適切に夾雑物を除去することができる。ここで、第1の槽を貯留浸透槽とし、かつ第2の槽を利水槽としてもよいし、逆に第1の槽を利水槽とし、かつ第2の槽を貯留浸透槽としてもよい。さらに詳述すると、上記構成は、雨水ますを用い、該雨水ますにおいて連通口、流入口、及び流出口を上記の高さ位置にそれぞれ設定したため、雨水ますに流入した雨水を優先的に第1の槽に流入させ、該雨水ますへの流入量が増える等して例えば雨水が該第1の槽において満水となると、今度は該第1の槽から溢れた雨水を該雨水ますの流出口を介して第2の槽へ案内することができる。このとき、第1の槽に流入しようとする雨水に含まれる枯葉等の夾雑物は、前記第1のフィルタ部によって除去され、第2の槽に流入しようとする雨水に含まれる夾雑物は、第2のフィルタ部によって除去される。したがって、例えば第1の槽を貯留浸透槽とすると、前記第1のフィルタ部により貯留浸透槽の目詰まりを抑制しつつ、雨水ます内に流入した雨水を優先的に地中へ浸透させることができる。一方、例えば第1の槽を利水槽とすると、前記第1のフィルタ部により適切に夾雑物が除去された利水用の雨水が優先的に得られる。なお、第1の槽と第2の槽のうちいずれか一方は、すでに地中に埋設されている既存の槽であってもよい。すなわち、単一の機能しか備えていない既存の槽を第1の槽(あるいは第2の槽)とし、これに機能の異なるもう一つの槽を新規に追加して本発明に係る第2の槽(あるいは第1の槽)とすることも可能である。なお、雨水ますを第1の槽の上部に配置すると、該雨水ますがますとしての機能を果たすと共に、該第1の槽の点検口としての機能も果たすこととなる。このため、第1の槽の保守管理が行いやすくなる。また、雨水ますを第1の槽の上部に配置することにより、該雨水ますを設置する際の掘削作業の負担が軽減されることにもなる。
【0009】
また、前記第1の槽が貯留浸透槽であり、前記第2の槽が利水槽であって、前記第2のフィルタ部の目開きが、前記第1のフィルタ部の目開きよりも小さくなるように設定されている構成が提案される。
【0010】
上記構成にあって、第1の槽が満水となり、第1の槽から溢れた雨水が雨水ます内に滞留するようになると、第1のフィルタ部によって一旦除去された夾雑物が該雨水ます内で浮遊して巻き上げられ、このような夾雑物が該雨水ますの流出口を通過しようとする。しかし、該第2のフィルタ部の目開きは、該第1のフィルタ部の見開きより小さくなるように設定されているため、該第1のフィルタ部上にあった夾雑物が利水槽の貯蓄空間に流入してしまうことが確実に防止される。なお、前記貯留浸透槽内の雨水には、シルト等の粒子も含まれているが、該貯留浸透槽内においてほぼ沈降するため、利水槽側には流れ込むことがほとんどない。
【0011】
ところで、上記構成において、貯留利水施設の施工コストを低く抑えるなどの条件があったり、地中に障害物があったりすることで、貯留浸透槽及び利水槽を地中深くに埋設できないことがある。そうすると、設置可能な上記雨水ますの全高は制限され、連通口と流出口との離間距離が小さくなって互いに接近した配置となり、第1のフィルタ部上に堆積した夾雑物がますます流出口に流入しやすい構造となる。しかし、本発明にかかる構成によれば、第2のフィルタ部により確実に利水槽への夾雑物の浸入を阻止することができるため、槽の埋設深さを浅くして施工することができる。
【0012】
さらに上記構成は、前記雨水ますの上面部が地表面に露出しており、該上面部に、外部と雨水ます内とを連通させる点検口が設けられ、前記第2のフィルタ部は前記雨水ますの流出口に配設されていることが望ましい。
【0013】
上記構成とすることにより、第1のフィルタ部と第2のフィルタ部とを、共に雨水ますの点検口を介して点検あるいは交換を行うことができるため、フィルタ部のメンテナンス作業が簡素化され、作業負担が軽減される。
【0014】
また、前記第1の槽が利水槽であり、前記第2の槽が貯留浸透槽である構成にあって、前記雨水ますの第1のフィルタ部が貯蓄空間内に露出しており、該第1のフィルタ部は容器形状である構成としてもよい。
【0015】
上記構成にあって、前記第1のフィルタ部の目開きは、前記連通口を通過する雨水が利水可能となるように設定されるため、出来る限り小さいものが選定される。したがって、該第1のフィルタ部は夾雑物等が堆積して目詰まりが発生し易く、短期間で利水用の水が溜まりにくい状態となり易い。このため、該第1のフィルタ部のメンテナンスが頻繁となるという問題が生じ得る。しかし、該第1のフィルタ部を上記形状としたため、該第1のフィルタ部の底部に夾雑物等が堆積しても、該底部を囲繞する第1のフィルタ部の側壁部から雨水が透水し、さらに透水した雨水が該フィルタ部表面を伝って貯蓄空間に滴下される。このため、該第1のフィルタ部の透水性能をより一層長く維持することができる。また、該第1のフィルタ部にあっては、前記流入口から雨水が流下した際に該第1のフィルタ部の内部空間で雨水の一時的な滞留が発生し、これにより該第1のフィルタ部の底部に堆積した夾雑物がかき混ぜられて夾雑物の撹拌が促進され、一時的に目詰まりが解消される。このように本発明は、前記第1のフィルタ部を容器形状として、意図的に雨水が滞留しやすい空間をその内側に形成することで夾雑物の掻き混ぜ効果をねらった構成であり、これにより該第1のフィルタ部の目詰まりの進行を遅らせ、該第1のフィルタ部のメンテナンス作業の負担を軽減しようとするものである。なお、雨水ますに流入する雨水量が急激に多くなって該雨水ます内の水量が増加した場合は、上記の流出口を介して貯留浸透槽へ雨水が案内され、適切に地中へ浸透させることができる。
【0016】
さらに、前記雨水ますの流入口に、下流側の管端が下を向いたエルボ管が配設され、該下流側の管端が前記第1のフィルタ部の鉛直上方に配置されている構成が望ましい。
【0017】
上記構成とすることにより、雨水ますに流入した雨水を前記フィルタ部に直接落下させることが可能となり、落下時の衝撃を利用して、該第1のフィルタ部上に堆積した夾雑物の撹拌をより一層促進させることができる。
【0018】
また、前記第1のフィルタ部の最下端に、該第1のフィルタ部を通過する雨水に含まれる泥が堆積する泥溜め部が配設されていてもよい。
【0019】
上記構成とすることにより、前記第1のフィルタ部に堆積した夾雑物を泥溜め部に収集することが可能となる。なお、該第1のフィルタ部は容器形状であり、その最下端に泥溜め部が形成されるため、効率良く夾雑物や泥等を該泥溜め部に流入させて収集することが可能である。
【0020】
また、前記第1の槽と前記第2の槽とが左右に連続して設けられており、該第1の槽内と該第2の槽内とが単一の仕切壁により仕切られている構成としてもよい。
【0021】
このように互いに異なる機能の槽が隣接して配置されることにより、槽を埋設するための深さを可及的に浅くすることができ、また貯留利水施設の省スペース化を図ることも可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる貯留利水施設は、雨水ますに流入した雨水を、適正に夾雑物を除去しつつ互いに機能が異なる槽のうち一方に優先的に流入させることができる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の貯留利水施設を具体化した実施例を詳細に説明する。
【0025】
〔実施例1〕
図1に示すように、貯留利水施設1Aは、第1の槽としての貯留浸透槽30Aと、第2の槽としての利水槽30Bとを備えている。該貯留浸透槽30Aは、内部に貯留空間を有し、該貯留空間で一時的に雨水を貯留しつつ、周壁に多数形成された浸透孔(図示省略)を介して地中に雨水を徐々に浸透させることができる。一方、前記利水槽30Bは、内部に貯蓄空間を有し、雨水を利水用として貯蓄することができる。
【0026】
また、前記貯留浸透槽30Aと前記利水槽30Bは、地中に埋設された状態で左右に連続して並設されており、該貯留浸透槽30Aの貯留空間と、該利水槽30Bの貯蓄空間とが単一の仕切り壁31によって仕切られた構造となっている。これにより、互いに異なる機能の槽が隣接して配置された場合であっても貯留利水施設1Aの省スペース化を図ることができる。また、各槽を埋設するために必要な深さを可及的に浅くすることもできる。なお、各槽30A,30Bは、公知技術が好適に採用可能である。
【0027】
また、前記貯留浸透槽30Aの上部には、第1雨水ます10が配設されている。さらに詳述すると、該第1雨水ます10の周壁における側壁部分には流入口11が形成され、該流入口11に流入管12が接続されている。そして、該流入管12を介して、該第1雨水ます10内に雨水が流入可能となっている。また、該第1雨水ます10の周壁における底壁部分には、前記貯留浸透槽30Aの貯留空間と該第1雨水ます10内とを連通するための連通口13が形成されている。また、該連通口13には、該連通口13を覆うように平板形状の第1フィルタ14が取り付けられている。なお、該連通口13を通過しようとする雨水に含まれる夾雑物を除去するための該第1フィルタ14により、本発明の第1のフィルタ部が構成される。
【0028】
さらに、前記第1雨水ます10の周壁にあって、前記連通口13より上側の位置にあり、かつ前記流入口11より下側の位置の側壁部分には、流出口15が形成されている。そして、該流出口15に、中継管17の一端が接続されている。また、該第1雨水ます10内における該流出口15には、該流出口15を覆うようにドーム状の第2フィルタ16が取り付けられている。なお、該流出口15を通過しようとする雨水に含まれる夾雑物を除去するための第2フィルタ16により、本発明の第2のフィルタ部が構成される。
【0029】
さらに、前記第2フィルタ16の目開きは、前記第1フィルタ14の目開きよりも小さくなるように設定されている。該目開きは、該フィルタを通過できる夾雑物の寸法に基づき規定されるいわば網目の大きさであって、例えば、単位をmmとする数値で表される公知の指標である。
【0030】
また、前記第1雨水ます10の上端には、地表面に露出する点検口18が形成されており、該点検口18にはます蓋19が取り付けられている。
【0031】
さらに、前記利水槽30Bの上部には第2雨水ます20が配設されている。そして、該第2雨水ます20の周壁における側壁部分に流入口21が形成され、該流入口21に、前記中継管17の他端が接続されている。そして、該中継管17を介して、該第2雨水ます20内に雨水が流入可能となっている。また、前記第1雨水ます10と同様に、該第2雨水ます20の底壁部分には、該利水槽30Bの貯蓄空間と該第2雨水ます20内とを連通するための連通口22が形成されている。さらに、該第2雨水ます20の上端には、ます蓋24が取り付けられた点検口23が形成されている。
【0032】
加えて、前記第2雨水ます20には、利水槽30B内の雨水を利用可能とすべく、貯蓄空間内の雨水を汲み上げるポンプ25が配設されている。また、該利水槽30Bには、水道水供給管26が接続されており、該貯蓄空間に水道水を供給することが可能となっている。
【0033】
上記した貯留利水施設1Aにおいて、建物の雨どい等から集まる雨水が前記流入管12を介して第1雨水ます10内に流入すると、該雨水は、まず該第1雨水ます10の底部に設けられた連通口13を通過して、貯留浸透槽30A内に導入される。このとき、該連通口13を通過しようとする雨水に含まれる夾雑物は、前記第1フィルタ14により捕捉される。そして、該第1フィルタ14を通過した貯留浸透槽30A内の雨水は、徐々に地中へ排出される。このように、第1フィルタ14によって夾雑物が除去されるため、該貯留浸透槽30Aの目詰まりが抑制される。
【0034】
図2に示すように、仮に前記流入管12を介して第1雨水ます10内に雨水が大量に流入し、前記貯留浸透槽30Aが満水となると、該貯留浸透槽30Aから溢れた雨水は該第1雨水ます10内に滞留し始める。そして、滞留する雨水が前記流出口15に達する量になると、該第1雨水ます10内の雨水は流出口15を介して利水槽30Bへ導入され始める。ここで、第1雨水ます10に雨水が滞留すると、前記第1フィルタ14によって一旦除去されて該第1フィルタ14上に堆積していた夾雑物が該第1雨水ます10内で浮遊して巻き上げられ、このような夾雑物が前記流出口15を通過して利水槽30Bへ流れようとする。ここで、利水槽30Bで貯蓄する雨水は、貯留浸透槽30A内に導入される雨水に比べてより一層夾雑物が除去されていることが求められる。本実施例では、該流出口15に配設されている前記第2フィルタ16の目開きが、該第1フィルタ14の見開きより小さくなるように設定されているため、該第1フィルタ14によって除去された夾雑物が利水槽30Bの貯蓄空間に流入してしまうことが確実に防止される。したがって、例えば、貯留浸透槽30A及び利水槽30Bを地中深くに埋設できない場合、第1雨水ます10の全高は制限されるため該連通口13と該流出口15との離間距離が小さくなってしまい、第1フィルタ14上に堆積した夾雑物が該流出口15に流入しやすい構造となるが、利水槽30Bに夾雑物が浸入してしまうことが確実に防止できる。なお、前記貯留浸透槽30A内の雨水には、シルト等の粒子も含まれているが、該貯留浸透槽30A内においてほぼ沈降するため、該利水槽30B側には流れ込むことはほとんどない。
【0035】
ところで、第1雨水ます10の中心軸線に向かって突き出されているドーム形状の第2フィルタ16は、前記第1フィルタ14の鉛直上方に配置されている。したがって、第2フィルタ16によって捕捉された夾雑物は、該第2フィルタ16からはがれ落ちたときには、該第1フィルタ14上に落ちることになる。このため、一旦第1フィルタ14によって捕捉された夾雑物を再度第1フィルタ14上に堆積させることができ、夾雑物が第1雨水ます10内で散乱してしまうことを抑制することができる。
【0036】
なお、上記のように、前記第1雨水ます10において、連通口13、流入口11、及び流出口15を上記の高さ位置にそれぞれ設定したため、該第1雨水ます10に流入した雨水を連通口13を介して優先的に貯留浸透槽30Aに流入させ、該第1雨水ます10への流入量が増える等した場合に限り、該貯留浸透槽30Aから溢れた雨水を該流出口15を介して利水槽30Bへ案内することができる。このとき、該流入口11を該流出口15より高い位置に配置したため、該流入口11へ雨水が逆流してしまうことを防止することができる。なお、前記連通口13、前記流入口11、及び前記流出口15の寸法、配設向き、あるいは配設位置等は、上記したような優先順位に基づく雨水の流れを妨げない範囲で、適宜設計変更可能である。例えば、連通口13の上端が流出口15の下端より低い構成とすることにより、雨水は優先的に連通口13に流入しやすくなる。また、流入口11の下端が流出口15の上端より高い構成とすることにより、雨水は優先的に流出口15に流入し、雨水が流入口11に逆流してしまうことを防止できる。
【0037】
前記貯留浸透槽30Aのメンテナンス作業は、前記第1雨水ます10の点検口18を介して行うことができる。また、該第1雨水ます10内に取り付けられている前記第1フィルタ14及び前記第2フィルタ16のメンテナンス作業も、該第1雨水ます10の点検口18を介して一挙に行うことができる。
【0038】
〔実施例2〕
実施例2にかかる貯留利水施設1Bを
図3に従って説明する。ただし、実施例1と共通する箇所については説明を簡略又は省略し、図面においては同じ符号を付すこととする。
【0039】
上記実施例1の貯留利水施設1Aは、共に単一の貯留浸透槽30Aと利水槽30Bとで構成されているが、
図3に示す構成のように、第2の槽としての利水槽30Bに補助的に補助利水槽30Cが接続されている構成としてもよい。具体的には、補助利水槽30Cの上部に補助雨水ます40が配設され、前記第2雨水ます20と該補助雨水ます40とが配管を介して接続されている。かかる構成とすることにより、全体として利水の貯蓄量を増やすことができる。
【0040】
〔実施例3〕
実施例3にかかる貯留利水施設1Cを
図4に従って説明する。ただし、実施例1,2と共通する箇所については説明を簡略又は省略し、図面においては同じ符号を付すこととする。
【0041】
図4に示すように、貯留利水施設1Cは、第1の槽としての利水槽30Bと、第2の槽としての貯留浸透槽30Aを備えている。
【0042】
前記利水槽30Bの上部には、第1雨水ます10が配設されており、該第1雨水ます10の周壁における底壁部分に形成された連通口13に、第1フィルタ54が配設されている。
【0043】
図5に示すように、前記第1フィルタ54は、平底形状の底部56Aと、該底部56Aの周縁から立ち上がる側壁部56Bとを有する容器形状をなし、連通口13に取り付けられた状態で該第1フィルタ54の外表面の多数の網目(図示省略)が利水槽30Bの貯蓄空間内に露出している。
【0044】
また、前記第1雨水ます10内であって、該第1雨水ます10の周壁に形成された流入口11には、下流側の管端が下を向いたエルボ管55が配設されており、該エルボ管55の下流側の管端が前記第1フィルタ54のほぼ鉛直上方に配置されている。
【0045】
さらに、前記第1雨水ます10に形成された流出口15には、中継管17の一端が接続され、該中継管17の他端が、前記貯留浸透槽30Aの上部に配設された第2雨水ます20の流入口21に接続されている。
【0046】
上記構成にあって、第1雨水ます10内に雨水が流入すると、該雨水は、まず連通口13を介して利水槽30Bに導入される。該連通口13を通過しようとする雨水に含まれる夾雑物は、前記第1フィルタ54によって除去される。ここで、該第1フィルタ54の目開きは、利水に適した雨水を貯蓄すべく出来る限り小さいものが選定される。したがって、該第1フィルタ54は短期間で目詰まりが発生し易い。しかし、該第1フィルタ54を上記形状としたため、
図5に示すように、該第1フィルタ54の底部56A全域に夾雑物が堆積しても、該底部56Aを囲繞する側壁部56Bの網目から雨水が外部へ透水し、さらに、透水した雨水が該第1フィルタ54の外表面を伝って利水槽30B内に滴下される。また、前記第1雨水ます10の流入口11から雨水が落下した際に該第1フィルタ54の側壁部56Bに囲まれた内部空間で雨水の一時的な滞留が発生し、これにより該第1フィルタ54の底部56Aに堆積した夾雑物がかき混ぜられて夾雑物の撹拌が促進され、一時的に目詰まりが解消される。さらに、前記エルボ管55を配設したため、該第1雨水ます10に流入した雨水が該第1フィルタ54に直接落下することとなり、落下時の衝撃を利用して、該第1フィルタ54上に堆積した夾雑物の撹拌をより一層促進させることができる。
【0047】
なお、例えば雨水量が急激に多くなって第1雨水ます10内の水量が増加した場合は、該第1雨水ます10の流出口15を介して貯留浸透槽30Aへ雨水が案内され、適切に地中へ排出される。第2フィルタ16の目開きは、第1フィルタ54の見開きより大きくても構わない。
【0048】
〔実施例4〕
実施例4にかかる貯留利水施設1Dを
図6に従って説明する。ただし、実施例1〜3と共通する箇所については説明を簡略又は省略し、図面においては同じ符号を付すこととする。
【0049】
上記実施例3の貯留利水施設1Cは、共に単一の貯留浸透槽30Aと利水槽30Bとで構成されているが、
図6に示す構成のように、第1の槽としての利水槽30Bに対して、さらにもう一つの補助利水槽30Cが接続されている構成としてもよい。特に
図6に示す構成は、第1雨水ます10にあって、補助利水槽30Cに接続される補助流出口61が流出口15より下側に配設されており、第2の槽としての貯留浸透槽30Aよりも優先して前記補助利水槽30Cに雨水が流入するような配管構造となっている。かかる構成とすることにより、全体として利水の貯蓄量を増やすことができる。
【0050】
また、実施例3,4における第1フィルタ54は、
図7に示すように、その最下端に、該第1フィルタ54を通過する雨水に含まれる泥が堆積する筒形状の泥溜め部57が配設されていてもよい。上記構成とすることにより、第1フィルタ54に堆積した夾雑物を泥溜め部57に集めることが可能となり、該第1フィルタ54のメンテナンス作業が簡単なものとなる。また、第1フィルタ54の形状は、容器形状であれば他のものであってもよく、下に凸となるように配置された半球状のドーム型であってもよいし、下に凸となるように配置された円錐型のものであってもよい。
【0051】
また、実施例1〜4において、第2フィルタ16は、メンテナンス容易性の観点から第1雨水ます10の流出口15に取り付けられている構成が好ましいが、第2の槽への夾雑物の浸入を防止することができるという条件を満たせば、該流出口15から第2の槽に至るまでの任意の位置に配設されてもよい。
【0052】
〔実施例5〕
実施例5にかかる貯留利水施設1Eを
図8に従って説明する。ただし、実施例1〜4と共通する箇所については説明を簡略又は省略し、図面においては同じ符号を付すこととする。
【0053】
図8a,bに示すように、貯留利水施設1Eは、第1の槽として貯留浸透槽30Aを備え、第2の槽として利水槽30Bを備えている。さらに、該貯留浸透槽30Aの上部には、連通口13と流出口15とを少なくとも備える第1雨水ます10が配設されている。そして、該第1雨水ます10内には、該流出口15に接続されたエルボ管60が配置されている。さらに詳述すると、該エルボ管60の上側の管端は、該流出口15に接続されており、一方、該エルボ管60の下側の管端は、鉛直下方を向いており、前記連通口13に配設された第1フィルタ14の上面にほぼ密着状に当接されている。これにより、該エルボ管60の内部空間と該第1雨水ます10の内部空間とが、該エルボ管60の周壁によって遮断された構成となっている。なお、前記流出口15には、第2フィルタ16も配設されている。
【0054】
かかる構成にあって、
図8aに示すように、第1雨水ます10内に雨水が流入すると、該雨水は連通口13を通過して貯留浸透槽30Aへ流入する。また、該連通口13を通過しようとする雨水に含まれている夾雑物は、前記第1フィルタ14によって捕捉される。当然、該夾雑物は、前記エルボ管60内には浸入できないため、該エルボ管60の下側の管端により囲まれた第1フィルタ14上面の領域には夾雑物が堆積することがない。そして、
図8bに示すように、第1雨水ます10内に大量の雨水が流入して貯留浸透槽30Aから雨水が溢れ出した場合、その雨水は、連通口13を介して、該第1雨水ます10内に溢れ出すものと、前記エルボ管60内に溢れ出すものとに分かれることとなる。ここで、上述のように、エルボ管60の下側の管端に囲まれた第1フィルタ14上面の領域には夾雑物が堆積しないため、第1フィルタ14を上向きに通過してエルボ管60内に浸入した雨水は、第1フィルタ14上の夾雑物を含むことなく利水槽30Bに案内される。かかる構成とすることにより、第1フィルタ14上の夾雑物を第2フィルタ16に付着させてしまうことを防止できるため、第2フィルタ16のメンテナンスの負担を軽減することができる。
【0055】
また、実施例1〜5にあって、第1の槽と第2の槽のうちいずれか一方は、すでに地中に埋設されている既存の槽であってもよい。すなわち、施工時において、単一の機能しか備えていない既存の槽を第1の槽(あるいは第2の槽)とし、これに機能の異なるもう一つの槽を新規に追加して第2の槽(あるいは第1の槽)とすることも可能である。また、第1の槽と第2の槽とが、適度に離れて配設されていても勿論よい。
【0056】
また、第1フィルタ14,54及び第2フィルタ16は、上記のような市販品で構成されていてもよいし、雨水ます10の連通口13又は流出口15に一体的に成形されたスリットにより構成されていてもよい。
【0057】
また、第1雨水ます10が既製品を利用して構成される場合、該第1雨水ます10の下端部が貯留浸透槽30Aあるいは利水槽30B内に挿入された状態で、該第1雨水ます10がこれらの槽30A,30Bの上部に配設されてもよい。かかる構成とすることにより、該槽30A,30Bから上方に突き出された第1雨水ます10の全高が、挿入することなく配設した場合に比して低くなるため、貯留利水施設1A〜1Dを埋設するための深さが浅くなり、全体として掘削量が減少する利点がある。