(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルタ再生手段は、粒子状物質の除去中であって且つエンジン回転制御手段によって上昇させたエンジン回転数が前記再生設定回転数以上になると、アクセル操作によってエンジン回転数を上昇させる要求を停止すること特徴とする請求項2に記載の作業機。
前記エンジン回転制御手段は、エンジン回転数をアクセル操作に応じて前記再生設定回転数よりも上昇させた後、操作部材の操作が行われていないときには、エンジン回転数を
再生設定回転数に下げることを特徴とする請求項2又は3に記載の作業機。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題を改善及び解決するために、ディーゼルエンジンなどに対する排出ガス規制が強化されている。建設機械などの作業機においても、厳しい排出ガス規制に対処するために排出ガスに含まれる粒子状物質(パーティキュレートマター)を低減させる技術が様々に開発されている。
一般的にディーゼルエンジンには、排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集する排出ガス浄化装置が設けられている。排出ガス浄化装置は、内部に設けたディーゼルパーティキュレートフィルタ(DPF)に排出ガスを通過させて粒子状物質を捕集する。この捕集された粒子状物質は排出ガス浄化装置のDPFに徐々に堆積するので、DPFが目詰まりを起こして排気系の空気抵抗が大きくならないように、粒子状物質を適宜除去してDPFを再生しなくてはならない。
【0003】
このようなDPFの再生に関する技術として特許文献1に開示されたものがある。
特許文献1の作業機のエンジン制御システムは、モード切換手段が特定のモードを選択しているときに、作業機の運転状態に応じてエンジン回転数を回転数指示装置が指示する回転数より低下させる制御を行う第1エンジン制御手段と、DPFの再生を行う再生装置が作動中であるかどうかを検出し、再生装置が作動中であるときは第1エンジン制御手段の制御を無効とし、回転数指示装置が指示する回転数を維持するようエンジン回転数を制御する第2エンジン制御手段とを備えている。つまり、特許文献1では、再生装置が作動中であるときは第1エンジン制御手段によるエンジン回転数の低下させる制御を無効にして回転数指示装置が指示する回転数を維持している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、再生装置が作動中であるときはエンジン回転数を低下させる制御を無効にして回転数指示装置が指示する回転数を維持しているため、回転数指示装置が指示する回転数が高い場合には、燃料消費が増加すると共にエンジンに余計な負荷を掛けてしまうという問題があった。
そこで、本発明は、燃料消費の増加を抑制できると共にエンジンにかかる負荷も低減することができる作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。
即ち、請求項1に係る発明
の作業機は、作業を行う作業装置と、前記作業装置に動力を供給するエンジンと、前記エンジンから排出された排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを備えた排出ガス浄化装置
と、前記排出ガス浄化装置のフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼させて除去するフィルタ再生手段と、前記作業装置を操作する操作部材の操作が行われていないときにはエンジン回転数を
アクセル操作に応じたアクセル設定回転数よりも低い目標回転数に設定
可能で且つ前記操作部材の操作が行われたときはエンジン回転数を前記アクセル設定回転数に設定可能なエンジン回転制御手段と、
を備え、前記エンジン回転制御手段は、前記
アクセル設定回転数が前記粒子状物質の除去に必要な再生設定回転数よりも
高く且つ前記目標回転数が前記再生設定回転数よりも低い場合において、前記粒子状物質の除去が必要で且つ前記操作部材の操作が行われた状況ではエンジン回転数を前記アクセル設定回転数に設定し、前記粒子状物質の除去が必要で且つ前記操作部材の操作が行われていない状況ではエンジン回転数を前記再生設定回転数に設定することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記フィルタ再生手段は、前記
アクセル設定回転数が前記再生設定回転数未満の場合において、
前記粒子状物質の除去が必要な状況では、前記操作部材の操作の有無に関わらず、前記エンジン回転数をアクセル操作によって上昇させることを
作業者に要求し、前記エンジン回転制御手段は、前記アクセル操作で設定された回転数までエンジン回転数を上昇させることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、前記フィルタ再生手段は、粒子状物質の除去中であって且つエンジン回転制御手段によって上昇させたエンジン回転数が前記再生設定回転数以上になると、アクセル操作によってエンジン回転数を上昇させる要求を停止すること特徴とする。
【0008】
請求項4に係る発明は、前記エンジン回転制御手段は、エンジン回転数をアクセル操作に応じて前記再生設定回転数よりも上昇させた後、操作部材の操作が行われていないときには、エンジン回転数を再生設定回転数に下げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1によれば、操作部材を操作して作業機によって作業を行いながら粒子状物質の除去を行っている状態から、作業機による作業を行わない状態(作業停止)に変化したときには、再生設定回転数よりも高くなっているエンジン回転数を自動的に再生設定回転数まで落としつつ粒子状物質の除去を継続することができる。即ち、作業停止時において、エンジン回転制御手段によるエンジン回転数の低下と、フィルタ再生手段による粒子状物質の除去との両立させることができるため、粒子状物質の除去を行うことができる構成でありながら、燃料消費の増加を抑制することができる。
【0010】
請求項2によれば、粒子状物質の除去を行う際にエンジン回転数が低い場合には、エンジン回転制御手段とフィルタ再生手段との連携によって、エンジン回転数を上昇させることができ、エンジン回転数の上昇によって粒子状物質の除去の促進を行うことができる。
請求項3によれば、エンジン回転数の上昇の要求の停止により、エンジン回転数が十分に上がったことを即座に認識することができる。
【0011】
請求項4によれば、粒子状物質の除去中にアクセル操作によるエンジン回転数の上昇後、操作部材の操作を行えば、エンジンによる動力を増加させた状態で、作業機による作業を行うことができ、操作部材の操作を行わなければ、エンジンによる動力を粒子状物質の除去に必要な最小限に低下させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しながら、本発明の各実施形態を説明する。
本発明の作業機は、バックホーやコンパクトトラックローダ(CTL)などの建設機械である。まず、
図6を用いて作業機の全体構成について説明する。
図6は、作業機の1つであるバックホー1の概略構成を示す側面図である。
図6に示すように、バックホー1は、下部の走行装置2と、上部の旋回体3とを備えている。
【0014】
走行装置2は、ゴム製覆帯を有する左右一対の走行体4を備えたクローラ式走行装置である。また、走行装置2には、ディーゼルエンジン5の出力で動作する油圧ポンプから得た油圧を用いてクローラを走行させる油圧モータが設けられると共に、前部にはドーザ6が設けられている。
旋回体3は、走行装置2上に旋回ベアリング7を介して上下方向の旋回軸回りに左右旋回自在に支持された旋回台8と、旋回台8の前部に備えられた作業装置9(掘削装置)とを有している。旋回台8上には、ディーゼルエンジン5、ラジエータ、運転席10、燃料タンク、作動油タンク、作動油タンクからの作動油を制御する制御弁等が設けられている。運転席10の周囲には、バックホー1に関する様々な情報を表示する表示装置11が設けられている。運転席10は、旋回台8上に設けられたキャビン12により囲まれている
。
【0015】
作業装置9は、ディーゼルエンジン5の動力によって作動するもので、旋回台8の前部に設けられた支持ブラケット13に左右揺動自在に支持されたスイングブラケット14と、上下揺動自在となるように基部側がスイングブラケット14に支持されたブーム15とを備えている。ブーム15の先端側には、前後揺動自在となるようにアーム16が支持されており、アーム16の先端側に、スクイ・ダンプ動作が可能となるようにバケット17が設けられている。
【0016】
スイングブラケット14は、旋回台12内に備えられたスイングシリンダの伸縮によって揺動する。ブーム15は、ブーム15とスイングブラケット14との間に設けられたブームシリンダ18の伸縮によって揺動する。アーム16は、アーム16とブーム15との間に設けられたアームシリンダ19の伸縮によって揺動する。バケット17は、バケット17とアーム16との間に設けられたバケットシリンダ20の伸縮によってスクイ・ダンプ動作を行う。スイングシリンダ、ブームシリンダ18、アームシリンダ19、及びバケットシリンダ20の各シリンダは、制御弁によって流量が制御された作動油によって伸縮動作するように構成されている。
【0017】
図1は、ディーゼルエンジンの制御システムの全体図を示しものである。
図1に示すように、バックホー1には、ディーゼルエンジン(エンジンという)の制御を行ったり、作業機1の全体の制御を行う制御装置24が設けられている。
具体的には、制御装置24は、主にエンジン5を制御するエンジン制御装置25と、主にバックホー1に搭載した作業装置9を制御する作業制御装置26とを備えている。
【0018】
エンジン制御装置25は、エンジン5や動力伝達系の各所に設置したセンサから情報を得て、エンジン5の状態に応じた最適な燃料噴射量や噴射時期、点火時期、アイドル回転数などを演算してエンジン5等に制御指令を出すものである。例えば、運転席10の周囲に設けたアクセル部材(アクセルレバー)を操作することによって、当該エンジン制御装置25がアクセルの操作量(開度)を検出して燃料噴射量などを増減させる。このようにアクセルレバーの操作(アクセル操作という)を行うことによって、エンジン5の回転数を増減させることができる。
【0019】
作業制御装置26は、バックホー1に備えられた各種装置(走行装置2、作業装置9等)を制御するものである。例えば、作業制御装置26では、流量制御、AI制御、DPF再生制御等を行う。
流量制御では、作業装置9を操作する操作部材(作業装置用操作部材)28の操作量等に基づいて、当該作業装置9のアクチュエータ(ブームシリンダ18、アームシリンダ19及びバケットシリンダ20)に流す作動油の流量などを制御する。例えば、操作部材28を中立位置より一方(左側)に揺動させて左側の操作量を入力すると、作業制御装置26は、操作量等に対応した電流(作動信号)を、アクチュエータを作動させるための制御弁に連結された電磁比例弁に出力し、当該電磁比例弁を動作させる。電磁比例弁が動作すると、制御弁のパイロット圧が制御され、アクチュエータが一方に動作する。操作部材28を中立位置より上記とは反対側に揺動させて右側の操作量を入力すると、左側に揺動したときとは反対側にアクチュエータを動作させる。このように、流量制御では、操作部材28の操作量等に応じてアクチュエータに供給する作動油の流量等を制御し、作業装置9に設けたアクチュエータを動作させる。
【0020】
AI制御は、作業制御装置26に設けられたエンジン回転制御手段29により行う。エンジン回転制御手段29は、作業制御装置26に格納されたプログラム等から構成されている。エンジン回転制御手段29によるAI制御では、アクチュエータを操作する操作部材28の操作がなされているとき、即ち、操作部材28が中立位置でないとき、アクセルレバーのアクセル操作に応じて、エンジン5のエンジン回転数を増減する。また、操作部材28が操作されていないとき(操作部材28が中立位置)であるとき、エンジン回転数をアクセルレバーとは別に、予め指定された目標回転数にする。
【0021】
さらに詳しく説明すると、エンジン回転制御手段29は、操作部材28が中立であるという信号が作業制御装置26に入力された場合、ガバナレバーの開度等を操作するオート
アイドルモータに制御信号を出力して、当該オートアイドルモータを制御し、当該カバナレバーの位置を、エンジン回転数が目標回転数となる位置に設定する。ガバナレバーの位置は、エンジン制御装置25に入力され、当該ガバナレバーの位置によってエンジン回転数が目標回転数に制御される。つまり、操作部材28が中立であるときは、エンジン回転制御手段29によってエンジン回転数が予め定められた目標回転数に固定される。なお、目標回転数は、作業機1の製造時等に作業制御装置26に予め設定されており、操作部材28が操作されていないときに燃料の消費を抑制する回転数、例えば、アイドリング回転数である1000rpmに設定されている。また、この目標回転数は、後述する再生設定回転数よりも低く設定されている。
【0022】
一方、エンジン回転制御手段29は、操作部材28が操作されているという信号が作業制御装置26に入力される場合、オートアイドルモータに制御信号を出力して当該オートアイドルモータを動作させ、エンジン回転数がアクセルレバーで設定された回転数となるように、ガバナレバーの位置をアクセルレバーに対応する位置に設定する。つまり、操作部材28を操作しているときは、エンジン回転制御手段29によって作業者によってアクセル操作することができるアクセルレバーで設定されたエンジン回転数に制御する。
【0023】
DPF再生制御は、作業制御装置26に設けられたフィルタ再生手段31により行う。フィルタ再生手段31は、作業制御装置26に格納されたプログラム等から構成されている。
このフィルタ再生手段31は、エンジン5の排出ガスに含まれる粒子状物質を捕集するためのフィルタ(DPF)30に堆積した粒子状物質を減少させてるというDPF再生制御を行う。DPF再生制御によって粒子状物質させることをDPF再生或いは再生という。DPF30は、エンジン5の燃焼ガスを排気する排気マニホールド35の中途に設けられた排出ガス浄化装置32内に設置されるもので、排出ガス浄化装置32内を通過する燃焼ガスに含まれる粒子状物質を捕集する。
【0024】
詳しく説明すると、フィルタ再生手段31は、まず、排出ガス浄化装置32の入口付近の排気圧力を検出する入側圧力センサ33と、排出ガス浄化装置32の出口付近の排気圧力を検出する出側圧力センサ34とに基づき、排出ガス浄化装置32の入側と出側での排気圧力の差、即ち、DPF30の出入側の差圧を求める。そして、フィルタ再生手段31は、求めた差圧(DPF30の目詰まりの程度)を、DPF30に堆積した堆積量(PM堆積量)に換算する。差圧とPM堆積量との関係は、過去の実績により予め分かっている。そして、フィルタ再生手段31は、PM堆積量が再生閾値よりも高いとDPF30の堆積量を減少させるDPF再生を行う。
【0025】
具体的には、PM堆積量が予め定められた再生堆積量を超えると、フィルタ再生手段31は、エンジン制御装置25に、エンジン5の吸気スロットルを絞る指令或いは、ポスト噴射を行う指令を出力して、排気マニホールド35(DPF30)内の排気温度を上昇させる。
また、DPF再生中(粒子状物質の除去中)に、エンジン5の回転数が粒子状物質の除去に必要な再生設定回転数未満(例えば、1800rpm未満)であるとき、フィルタ再生手段31は、運転席10に設けた表示装置40に、エンジン回転をアクセル操作によって上昇させる要求(上昇要求)を示す表示を行う。例えば、フィルタ再生手段31は、エンジン回転数が再生設定回転数未満であるとき、「エンジン回転を上げて下さい」という上昇要求の表示を表示装置40に出力する。なお、再生設定回転数は、粒子状物質の除去を行うに際して、DPF30内の温度が効率よく上昇する状態にするためのエンジン回転数である。例えば、エンジン回転数を再生設定回転数である1800rpmの回転以上にした状態で、DPF再生制御によってポスト噴射を実行すれば、DPF30内の温度が上昇し易くなり、DPF30内の温度が粒子状物質を燃焼させる600℃付近になる。
【0026】
作業機1を運転する作業者は、表示装置40に表示された上昇要求を見れば、アクセル操作によってエンジン回転数を上昇させる必要であることが分かるため、アクセル操作を行うことによりDPF再生中にエンジン回転数を上昇させることができる。ここで、エンジン回転数が再生設定回転数以上になると、フィルタ再生手段31は、上昇要求を停止し
、そのまま、PM堆積量が再生堆積量を下回るまで、DPF再生を実行する。
【0027】
以上、フィルタ再生手段31によれば、DPF30に堆積したPM堆積量が多くなると、当該フィルタ再生手段31によって、DPF再生を行いDPF30に溜まったPM堆積量を減少させることができる。
さて、上述したように、AI制御であってもDPF再生制御であってもエンジンを適宜制御することとしているが、本発明の作業機では、AI制御とDPF再生制御とを両立できるように、様々な状況に対応して制御処理を変更することとしている。以下、
図2〜5を用いて、AI制御及びDPF再生制御について詳しく説明する。
【0028】
図2は、DPF再生制御の開始時にエンジン回転数が再生設定回転数よりも高い場合のエンジン回転数の変化を示している。
図2に示す第1区間T1では、操作部材28の操作が行われている(操作ON)が、DPF再生制御は実行されていないとする(再生OFF)。また、第1区間では、アクセルレバーで設定されたエンジン回転数は、再生設定回転数よりも高く設定されているとする。このような場合、第1区間T1におけるエンジン回転数は、アクセルレバーで設定されたエンジン回転数(アクセル設定回転数)で回転することになる。
【0029】
次に、操作部材28の操作中(操作ON)に、フィルタ再生手段31によるDPF再生制御がポイントP1で開始された場合(再生OFF→再生ON)、操作部材28の操作中であるためAI制御によってエンジン回転数はそのままの状態(アクセル設定回転数)に維持され、この状態で、フィルタ再生手段31によりDPF再生制御(吸気絞りやポスト噴射)が実行される。このように、操作ON及び再生ONの第2区間T2においては、エンジン回転数が再生設定回転数よりも高いため、フィルタ再生手段31は、エンジン回転数を上昇させる要求は実行しない。
【0030】
そして、ポイントP2でDPF再生制御中に操作部材28の操作が行われなくなり、操作部材28が中立状態(操作ON→操作OFF)となった場合、操作部材28の操作が行われなくなったポイントP2の時点から操作部材28の操作が再開されるまでの間(第3区間T3)は、AI制御ではエンジン回転数をアクセル設定回転数よりも下げる。
詳しくは、エンジン回転制御手段29は、まず、操作部材28の操作が行われなくなったポイントP2で、AI制御によるエンジン回転数の目標回転数を再生設定回転数に変更し、操作部材28の操作が再開されるまで当該目標回転数を再生設定回転数に維持する。
【0031】
即ち、エンジン回転数が再生設定回転数よりも高い状態でDPF再生制御が開始されると、エンジン回転制御手段29は、AI制御による目標回転数をDPFの再生な回転数(再生設定回転数)にする。DPF再生制御中にAI制御による制御が実行されると、エンジン回転数は変更された再生設定回転数に維持されることになる。
このように、AI制御及びDPF再生制御では、フィルタ再生手段31による粒子状物質の除去中であって且つエンジン回転数が再生設定回転数よりも高い場合に、目標回転数を再生設定回転数にしてエンジン回転数を下げている。そのため、作業機によって作業を行いながらDPF再生を実行している状態から、作業機による作業を停止したとき(操作部材28を操作しないとき)は、自動的にエンジン回転数を落としつつもDPF再生を続けることができる。
【0032】
そして、ポイントP3でDPF再生制御中に操作部材28の操作が再開された場合(操作OFF→操作ON)、AI制御によるエンジン回転の低下の制御は解除され、エンジン回転数は、再び、アクセルレバーの設定値(アクセル設定回転数)に復帰する(第4区間T4)。ポイントP3の時点で、エンジン回転制御手段29は、AI制御による目標回転数を元の目標回転数(予め作業制御装置29に設定された目標回転数)に戻す。その後、操作部材28の操作は続けられ且つポイントP4にてDPF再生制御が終了した場合(再生ON→再生OFF)も、エンジン回転数はAI制御によってアクセル設定回転数に維持される。次に、操作ON及び再生OFFである状態から、ポイントP5にて操作部材28の操作のみが行われなくなると(操作ON→操作OFF)、AI制御によってエンジン回転数は元の目標回転数に設定され、以降、エンジン回転数は目標回転数になる。
【0033】
つまり、ポイントP3からポイントP5までの流れを見てみると、DPF再生制御中で
あって、操作部材28の操作を再開した時点(ポイントP3で目標回転数を再生設定回転数ではなく元の目標回転数に戻しているため、ポイントP5のように操作部材28の操作を中止したときに、即座に、AI制御によってエンジン回転数を目標回転数まで低下させることができる。
【0034】
図2のポイントP3では、DPF再生制御中(再生ON)で且つAI制御によってエンジン回転数の低下を実行している(操作OFF)ときに、操作部材28の操作が再開した場合を説明したが、再生ON及び操作OFFときに、途中でDPF再生制御が終了する場合(再生OFF)もある。この場合は、
図3の第5区間T5に示すように、エンジン回転数は変化する。詳しくは、ポイント6にてDPF再生制御が終了した場合(再生OFF)は、まず、エンジン回転制御手段29によって再生設定回転数に変更していたAI制御による目標回転数は元の目標回転数に復帰し、AI制御によってエンジン回転数が元の目標回転数に変更される。その後、ポイントP7のように、操作部材28の操作が開始されるとAI制御によってエンジン回転数はアクセル設定回転数になる(第6区間T6)
次に、
図4は、DPF再生制御の開始時にエンジン回転数が再生設定回転数よりも低い場合でのAI制御及びDPF再生制御について説明する。
【0035】
図4に示す第7区間T7では、操作部材28の操作が行われている(操作ON)が、DPF再生制御は実行されていないとする(再生OFF)。また、第7区間T7では、アクセルレバーで設定されたエンジン回転数(アクセル設定回転数)は、再生設定回転数よりも低く設定されているとする。このような場合、第7区間T7におけるエンジン回転数は、アクセル設定回転数で回転する。
【0036】
次に、操作部材28の操作中(操作ON)に、フィルタ再生手段31によるDPF再生制御がポイントP8で開始された場合(再生OFF→再生ON)、この場合も、操作部材28の操作中であるため、AI制御によってエンジン回転数はそのままの状態に維持された状態で、DPF再生制御が実行される(第8区間T8)。この操作ON及び再生ONの第8区間T8では、エンジン回転数が再生設定回転数よりも低いため、この状態が続くと、フィルタ再生手段31は、エンジン回転数を上昇させる要求を実行する。エンジン回転数の上昇の要求後、作業者がアクセルレバーを操作してエンジン回転数の設定値を上昇させると、アクセルレバーの設定値に伴い、AI制御によってエンジン回転数が上昇する。
【0037】
第8区間T8のポイントP9で、フィルタ再生手段31がエンジン回転数を上昇させる要求(上昇要求)を行い、ポイントP10にてアクセルレバーを操作してアクセル設定回転数を再生設定回転数よりも高くした場合、エンジン回転制御手段29は、ポイントP10からエンジン回転数をアクセル設定回転数に向けて上昇させる。ポイントP11にてエンジン回転数が設定回転数を超えると、フィルタ再生手段31は、エンジン回転数の上昇の要求を停止する(上昇要求停止)。また、エンジン回転数が再生設定回転数を超えてアクセル設定回転数になると、エンジン回転制御手段29は、エンジン回転数をアクセル設定回転数に固定する。
【0038】
つまり、フィルタ再生手段31は、粒子状物質の除去中であって且つエンジン回転数が再生設定回転数未満であるときは、エンジン回転数をアクセル操作によって上昇させることを要求し、一方、エンジン回転制御手段29は、アクセル操作によってエンジン回転数の上昇が指示されると、指示されたエンジン回転数(アクセル設定回転数)まで上昇させる。また、フィルタ再生手段31は、エンジン回転制御手段29によって上昇しているエンジン回転数が再生設定回転数以上になると上昇の要求を行わない。
【0039】
そのため、粒子状物質の除去を行う際にエンジン回転数が低い場合には、エンジン回転制御手段29とフィルタ再生手段31との連携によって、エンジン回転数を上昇させることができ、エンジン回転数の上昇によって粒子状物質の除去の促進を行うことができる。
さて、AI制御によって、エンジン回転数を再生設定回転数を超えて指定されたアクセル設定回転数まで上昇させた後、DPF再生制御が実行されている状態(再生ON)で、操作部材28の操作が行われなくなった(操作ON→操作OFF)場合、エンジン回転制御手段29は、AI制御による目標回転数を、DPF再生制御の再生設定回転数に設定する。
【0040】
例えば、ポイントP12で操作OFFになった場合、エンジン回転制御手段29は、エンジン回転数が再生設定回転数よりも高いため、目標回転数を再生設定回転数にする。即ち、エンジン回転制御手段29は、エンジン回転数を指示されたエンジン回転数まで上昇させた後、操作部材28の操作が行われない場合(未操作時)、エンジン回転数を、指示されたエンジン回転数(アクセルレバーの設定値)から再生設定回転数に下げることとしている。
【0041】
図4では、DPF再生制御の開始時や制御中に操作部材28を操作していることを中心に説明したが、DPF再生制御の開始時や制御中に操作部材28の操作を行っていない場合も考えられる。操作OFF及び再生OFFの場合、
図5の第9区間T9に示すように、エンジン回転数はAI制御によって目標回転数に維持される。第9区間T9のポイントP13でDPF再生制御が開始された場合、AI制御が働いているため、そのままのエンジン回転数でDPF再生制御(吸気絞りやポスト噴射)が実行される。操作OFF及び再生ONの第10区間T10では、エンジン回転数が目標回転数に設定されていて再生設定回転数よりも低いため、例えば、フィルタ再生手段31は、ポイントP14にて上昇要求を開始する。ポイントP15にて作業者がアクセルレバーを操作すると、
図4と同様に、アクセルレバーの設定値に伴い、AI制御によってエンジン回転数が上昇する。ポイントP16にてエンジン回転数が再生設定回転数を超えると、フィルタ再生手段31は上昇要求を停止する。ここで、エンジン回転数が再生設定回転数を超えてアクセル設定回転数に到達したとき(ポイントP17)、操作部材28の操作が行われていない(操作OFF)場合、AI制御によって目標回転数が再生設定回転数に設定され、エンジン回転数は再生設定回転数に下げられる(ポイントP18)。
【0042】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。