(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871739
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20060101AFI20160216BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20160216BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G02B27/01
B60R11/02 C
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-164354(P2012-164354)
(22)【出願日】2012年7月25日
(65)【公開番号】特開2014-26018(P2014-26018A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2014年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道
(72)【発明者】
【氏名】荒井 和夫
【審査官】
小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−113059(JP,A)
【文献】
特表2002−528041(JP,A)
【文献】
実開平04−131530(JP,U)
【文献】
特開2000−276079(JP,A)
【文献】
特開平09−033856(JP,A)
【文献】
実開平05−026590(JP,U)
【文献】
特開平08−091094(JP,A)
【文献】
特開2000−203308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00 − 37/06
B60R 11/02
G02B 27/01
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドシールドとドライバー・シートとの間に設けられて、透明領域部、および光の拡散機能を有する複数の目盛り表示意匠部を設けたコンバイナと、
前記複数の目盛り表示意匠部のうち、一部の目盛り表示意匠部および該一部の目盛り表示意匠部の周囲の透明領域部に向けて選択的に照明可能な照明手段と、
を備えたことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
ウインドシールドとドライバー・シートとの間に設けられて、透明領域部、および光の拡散機能を有する複数の目盛り表示意匠部を設けたコンバイナと、
前記複数の目盛り表示意匠部のうち、全ての目盛り表示意匠部および該全ての目盛り表示意匠部の周囲の透明領域に向けて照明可能であるとともに、前記複数の目盛り表示意匠部のうち、一部の目盛り表示意匠部および該一部の目盛り表示意匠部の周囲の透明領域部に向けて、他の目盛り表示意匠部を照明する輝度よりも高い輝度で選択的に照明可能な照明手段と、
を備えたことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用表示装置において、
前記照明手段は、前記表示意匠部と該表示意匠部を除く前記コンバイナの表示エリア全体との間の輝度差および表示色のうちの少なくとも一方を異ならせて選択的に照明する、
ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちの1項に記載の車両用表示装置において、
前記表示意匠部の一部の形成位置は、該表示意匠部の他部の形成位置に比べて前記コンバイナの厚さ方向に異ならせた、
ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちの1項に記載の車両用表示装置において、
前記表示意匠部は、第1表示意匠部と、該第1表示意匠部とは異なる位置にて該第1表示意匠部で表示する表示内容とは別の表示内容を任意表示する第2表示意匠部と、を有する、
ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車両用表示装置において、
照明手段から発した光を表示意匠部に向ける導光手段を設けた、
ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用表示装置において、
導光手段は、コンバイナの入光面に設けられた、光拡散面、レンズ、プリズムのいずれかである、
ことを特徴とする車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバーが車両前方を注視したまま、ドライバーの視界をほとんど妨げることなく、車両情報などに関する情報をドライバーに提示可能な車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような表示装置の一つとして、特許文献1に記載のものが知られている。
この従来の車両用表示装置は、ホログラムを用いて2つの光源によりアナログ表示が可能なものである。
すなわち、レーザー光源の前面にシリンドリカル・レンズを配置して、このレンズにより、レーザー光源から発せられある幅をもったレーザー光線を焦線にする。この焦線の位置にムーブメントに取り付けたミラーを配置して、焦線をダッシュボードの開口部を通過させてホログラムに照射することで、ウインドシールドの後方でドライバーの前方に指針としてドライバーが視認できるようにする。
また、ダッシュボードの上面のホログラムの位置よりドライバー寄りに光源を配置し、ホログラムを照射することで、ウインドシールドの後方でドライバーの前方に文字板としてドライバーが視認できるようにしている。
【0003】
また、従来の別の車両用表示装置としては、特許文献2に記載のものが知られている。この従来の車両用表示装置は、発光表示手段から情報を含む光をウインドシールドに向けて発し、その光の表示像をドライバーに視認させる乗り物用表示システムであって、光の表示像はウインドシールドの面上に結像させるものである。
光発光手段は、光の表示像をウインドシールドの面上に結像させる光学部材を有し、ウインドシールドの少なくとも一部には拡散板が配されて、この拡散面上に表示像が結像するようにしている。拡散板は、乳白色の表示スクリーンである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−26590号公報
【特許文献2】特開平8−91094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の車両用表示装置は、それぞれ以下の問題を有する。
すなわち、前者の従来の車両用表示装置にあっては、ホログラムのコストが高いだけでなく、ホログラムを用いているため、ホログラムの車両前方側面に当たる外光を車両前方側へ反射してしまい、この結果、対向車のドライバーや対向歩行者などをその反射光で幻惑させてしまうことがある、といった問題がある。
【0006】
また、後者の従来の車両用表示装置にあっては、表示スクリーンとして乳白色の拡散板をその全体に用いているため、任意の方向から入射した外光を、反射・透過し、いずれの方向にも拡散光線として放出する。この結果、表示意匠以外の表示スクリーンの部分でも拡散光線が発せられるので、表示コントラストが低下し、表示の視認性が低下したり、対向車対向車のドライバーなどをその反射光で幻惑させてしまったりする、といった問題点がある。
また、表示スクリーンに乳白色の拡散板を用いているため、いろいろな外光が表示スクリーンに入射して表示スクリーン全体の輝度を上げ、表示スクリーン全体が明るい乳白色に輝くようになる。この結果、ドライバーは表示スクリーンを通して車両前方の景色を視認することが困難になる、といった問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、車両前方への外光の反射を抑え、かつドライバーが表示スクリーンを通して車両前方の景色をできるだけ、より良く視認できるようにした車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、請求項1に記載の本発明による車両用表示装置は、
ウインドシールドとドライバー・シートとの間に設けられて、透明領域部、および光拡散機能を有する
複数の目盛り表示意匠部を設けたコンバイナと、
複数の目盛り表示意匠部のうち、一部の目盛り表示意匠部およびこの
一部の目盛り表示意匠部の周囲の透明領域部
に向けて選択的に照明可能な照明手段と、を備えた、
ことを特徴とする。
また請求項2に記載の本発明による車両用表示装置は、
ウインドシールドとドライバー・シートとの間に設けられて、透明領域部、および光の拡散機能を有する複数の目盛り表示意匠部を設けたコンバイナと、
前記複数の目盛り表示意匠部のうち、全ての目盛り表示意匠部および該全ての目盛り表示意匠部の周囲の透明領域に向けて照明可能であるとともに、前記複数の目盛り表示意匠部のうち、一部の目盛り表示意匠部および該一部の目盛り表示意匠部の周囲の透明領域部に向けて、他の目盛り表示意匠部を照明する輝度よりも高い輝度で選択的に照明可能な照明手段と、を備えた、
ことを特徴とする。
【0009】
また、請求項
3に記載の発明の車両用表示装置は、
請求項1
又は2に記載の車両用表示装置において、
照明手段が、表示意匠部とこの表示意匠部を除くコンバイナの表示エリア全体との間の輝度差および表示色のうちの少なくとも一方を異ならせて選択的に照明する、
ことを特徴とする。
【0010】
また、請求項
4に記載の発明の車両用表示装置は、
請求項1
乃至3のいずれか1項に記載の車両用表示装置において、
表示意匠部の一部の形成位置を、この表示意匠部の他部の形成位置に比べてコンバイナの厚さ方向に異ならせた、
ことを特徴とする。
【0011】
また、請求項
5に記載の発明の車両用表示装置は、
請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の車両用表示装置において、
表示意匠部が、第1表示意匠部と、この第1表示意匠部とは異なる位置にて第1表示意匠部で表示する表示内容とは別の表示内容を任意表示する第2表示意匠部と、を有する、
ことを特徴とする。
【0012】
また、請求項
6に記載の発明の車両用表示装置は、
請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の車両用表示装置において、
照明手段から発した光を表示意匠部に向ける導光手段を設けた、
ことを特徴とする。
【0013】
また、請求項
7に記載の発明の車両用表示装置は、
請求項
7に記載の車両用表示装置において、
導光手段が、コンバイナの入光面に設けられた、光拡散面、レンズ、プリズムのいずれかである、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の本発明の車両用表示装置にあっては、透明領域部と表示意匠部とをそれぞれ設け、表示意匠部およびこの表示意匠部の周囲の透明領域部を選択的に照明可能にしたので、車両前方への外光の反射を抑えて対向車のドライバー等が反射光により幻惑しないようにするとともに、ドライバーが表示エリアの透明領域部を通して車両前方の景色をできるだけ、より良く視認できるようにすることが可能になる。
【0015】
請求項2に記載の本発明の車両用表示装置にあっては、表示意匠部とこの表示意匠部を除くコンバイナの表示エリア全体との間の輝度差および表示色のうちの少なくとも一方を異ならせて選択的に照明するので、表示意匠部の視認性をさらに向上させることができる。
【0016】
請求項3に記載の本発明の車両用表示装置にあっては、表示意匠部の一部の形成位置を、この表示意匠部の他部の形成位置に比べて厚さ方向に異ならせたので、立体的な表示を行うことができ、意匠の意外性や面白さ、見栄え等の向上を図ることが可能となる。
【0017】
請求項4に記載の本発明の車両用表示装置にあっては、表示意匠部が、第1表示意匠部と、第1表示意匠部で表示する表示内容とは別の表示内容を任意表示する第2表示意匠部と、を有するので、別の照明手段を増やすことなく、第2表示意匠部にとは異なる内容の情報を任意に表示することができ、この結果表示内容や表現力をさらに向上させることができる。
【0018】
請求項5に記載の本発明の車両用表示装置にあっては、照明手段から発した光を表示意匠部に向ける導光手段を設けたので、照明手段から発せられた光にて、この光の範囲より広い範囲で表示意匠を照明したり、表示意匠部の表示輝度を向上させたりすることができる。
【0019】
請求項6に記載の本発明の車両用表示装置にあっては、導光手段を安価、かつ容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例1の車両用表示装置を模式的に示した側面図である。
【
図2】実施例1の車両用表示装置で用いる表示スクリーンを構成する透明体およびその一部に設けた表示意匠部の拡大図である。
【
図3】(a)は実施例1の車両用表示装置の表示スクリーンに設けた表示意匠部を示す図であり、(b)は実施例1の車両用表示装置のプロジェクタで表示スクリーン上での照明可能な照明範囲を示した図である。
【
図4】表示スクリーン上の表示意匠部とその照明範囲との関係を示した部分拡大図であり、(a)はそれらの位置関係を示した図、(b)は周囲が明るいときの表示例を示した図、(c)は周囲が暗いときの表示例を示した図である。
【
図5】本発明の実施例2の車両用表示装置で用いる表示スクリーンを示した正面図である。
【
図6】本発明の実施例3の車両用表示装置で用いる表示スクリーンを示した正面図であり、(a)は表示意匠部を示す図、(b)はプロジェクタによる表示スクリーンの照明範囲を示す図、(c)はその表示例を示す図である。
【
図7】本発明の実施例4の車両用表示装置であって、ここで用いる表示スクリーンを構成する透明体と、その一部に設けた表示意匠部および光拡散面とを示した側面図である。
【
図8】本発明の実施例5の車両用表示装置であって、ここで用いる表示スクリーンを構成する透明体と、その一部に設けた表示意匠部およびレンズ面とを示した側面図である。
【
図9】本発明の実施例6の車両用表示装置であって、ここで用いる表示スクリーンを構成する透明体と、その一部に設けた表示意匠部およびプリズム部とを示した側面図である。
【
図10】本発明の実施例7の車両用表示装置であって、ここで用いる表示スクリーンを構成する透明体と、その一部に設けた表示意匠部および実施例6とは異なる形状のプリズム部とを示した側面図である。
【
図11】本発明の実施例8の車両用表示装置であって、ここで用いる表示スクリーンを構成する2枚の透明体と、これらの間に設けた表示意匠部とを示した側面図である。
【
図12】本発明の各実施例の車両用表示装置で用いる表示スクリーンに設けた表示意匠部を丸形状で構成した例を示した正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
なお、以下の各実施例にあっては、実質的に同じ部品/部分については同じ番号を付して、その説明を省略する。
【実施例1】
【0022】
まず、実施例1の車両用表示装置の全体構成を説明する。
この実施例1の車両用表示装置は、
図1に示すように、自動車の前部のウインドシールド1の車両後方側に配置されたダッシュボード2に設けられる。
この車両用表示装置は、プロジェクタ3と、表示スクリーン4と、図示しないコントローラと、を備えている。
なお、本実施例では、車両用表示装置は、車速を表示する装置である。
【0023】
プロジェクタ3は、LED(発光ダイオード)を有し照明光5を投射可能な装置であって、ダッシュボード2の内部に配置されている。
プロジェクタ3は、表示スクリーン4より車両前方側の、ダッシュボード2の一部を切り欠いて形成し開口2aを通して、照明光5で表示スクリーン2の車両前方側面を照射可能に構成してある。
【0024】
表示スクリーン4は、
図1および
図2に示すように、板状の透明体4aと、この透明体4aの車両後方側(ドライバー・シート7側)の表面に設けられた表示意匠部40と、を備えている。
透明体4aは、この底部がダッシュボード2の開口2aより車両後方側に取り付けられるとともに、その先端側が車両前方側へ向けて傾斜されて、ドライバー・シート7に着座して運転姿勢にあるドライバーの目Eから、その表示意匠部40が見やすいようにしてある。
なお、表示スクリーン4は本願発明のコンバイナに、また透明体4aは本発明の透明領域部に、それぞれ相当する。
【0025】
ここで、表示意匠部40は、光透過機能を有するとともに光拡散機能を持つ白色印刷、あるいは細かいドット形状の凸凹、梨地処理などにより、透明体4aのドライバー側表面に設けられる。
なお、この表示意匠部40は、昼間は周囲の環境光を反射した表示光6をドライバー側に向けて発し、プロジェクタ3の照明がなくとも、ドライバーが容易に視認できるものである。
【0026】
この表示意匠部40は、
図3(a)に示すように、本実施例ではほぼ円に近い円弧状の目盛り意匠部4bと速度の大きさを表す数字記号意匠部4dと、を備えている。
目盛り意匠部4bは、半径方向に延びる矩形の棒状の記号でそれぞれの速度の大きさを表すようにして、長い棒記号の間に4個の短い矩形の棒記号がそれぞれ等間隔で円弧上に並べられて、1目盛りが2Km/h分を表すようにしてある。
一方、速度の大きさ(Km/h)を表す数字記号意匠部4dは、0、20、40、・・・と20おきに160までの数字が描かれており、対応する目盛り意匠部4bの棒状記号の内側に円弧に沿って配置してある。
なお、目盛り意匠部4bおよび数字記号意匠部4dは、本願発明の第1表示意匠部に相当する。
【0027】
また、
図3(b)は、プロジェクタ3が照射可能な表示スクリーン4上での照明範囲を示す。この照明範囲は、目盛り意匠部4bと数字記号意匠部4dの位置に一致するとともに、これらよりわずかに広くしてこれら意匠部4b、4dの周囲の近傍まで広がるようにしてある。
図4(a)に、
図3(a)の一部を拡大して、表示意匠部40(同図中、ドットで色を付けた部分)と、この周囲の近傍で照明される範囲4c(同図中、細線で囲んだ白い部分)との例を、示す。
なお、
図4(b)、(c)については、車両用表示装置の作用を説明する際に説明する。
【0028】
次に、実施例1の車両用表示装置の作用について、説明する。
図示しないイグニッション・スイッチをONにして、車両の電源がONになると、車両用表示装置は昼間と夜間とで、それぞれ以下のように異なった作動する。
【0029】
まず、昼間には、表示意匠部40の全体には周囲の光が入って来て、表示意匠部40で拡散することで、ドライバーが視認可能な状態にある。また、同時に、走行速度に対応する数字、たとえば「10」を表示する場合には、コントローラは、プロジェクタ3に照明光5を指示表示する「10」の目盛りの部分pに向けて照射させる。
そうすると、目盛り「10」の部分pは、
図4(b)に示すようにその光拡散機能により輝度が上昇する。なお、同図では、輝度の上昇は便宜上、表示意匠部40であるドットの集まりを、より多くして他より濃い目(黒く)に描いてあるが、実際にはより明るく見える。
【0030】
一方、表示意匠部40の目盛り意匠部4bのうち、指示表示する「10」の部分pの周囲近傍4cとなる部分qにも、プロジェクタ3からの照明光5が選択的に当たるが、この部分は透明体4aそのものであって光の拡散機能を持たないので、ここでの照明光5はそのまま透過してしまい、ドライバーには何ら認識されない。
この透過光は、ウインドシールド1あるいは図示しない車室内のルーフに達するものの、その照明面積はごく小さい面積に抑えてあるので、実用上問題となるようなことはない。
以上のように、表示意匠部40の目盛り意匠部4bのうち、「10」に相当する目盛りの部分pのみが他の部分より輝度が高く表示されるので、ドライバーはその表示をよく認識することができ、走行速度が10Km/hであることを認識することができる。
【0031】
なお、外光の強さに応じて表示意匠部40の全体の輝度も変化する。
したがって、それらの全体の部分とそれらのうちの選択表示する部分との間で輝度差を充分確保して視認性を向上させるには、たとえば、照度センサで外光の照度をモニタして、この外光の照度情報を基に、選択して指示表示する部分pを照明するプロジェクタ3の照明光5の照度を適切に制御することで、必要な輝度差を確保できるので、その視認性を低下させることはない。
なお、この場合、高い照度の外光が入っても、プロジェクタ3による選択表示のための照度アップを行っても、その照明範囲が狭いことから、表示装置全体の消費電力や発熱量の増加等は問題にならない。
【0032】
一方、夜間に「10」を表示する場合には、表示意匠部40の全体およびその周囲近傍4cを、比較的低い照度にてプロジェクタ3で照明する。この結果、ドライバーは、表示意匠部40の全体を視認できる。また、プロジェクタ3は、表示意匠部40の目盛り意匠部4bのうち、「10」に相当する目盛りの部分pおよびこの周囲近傍qを比較的高い照度にて照明する。
【0033】
そうすると、比較的低い輝度で表示された表示意匠部4bの全体の中で、「10」に相当する目盛りの部分pが比較的高い輝度にて表示されるので、これらの輝度差によりドライバーは、表示意匠部40の全体を視認しながら、「10」に相当する目盛りの部分pをより確実に視認することができるようになる。
なお、この場合も、「10」に相当する目盛りの部分pの周囲近傍qをも比較的高い輝度で照明するものの、昼間の場合での説明と同様に、これらの部分はドライバーには何ら認識されることはない。
【0034】
なお、上記目盛り意匠部4bでの指示表示部分pの表示を行うにあたっては、上記目盛り意匠部4bの表示に加えて、0Km/h、20Km/h、40Km/h、・・・等の数字記号意匠部4dのうち、対応する数字の部分この周囲近傍とともにプロジェクタ3で照明表示される。
【0035】
以上、説明したように、実施例1の車両用表示装置にあっては、表示スクリーン4は表示意匠部40以外の部分が透明であるため、この部分を通してドライバーはその車両前方側の視界をみることができる。すなわち、ドライバーは、前方を注視したまま、その視界をほとんど妨げられることなく、車両情報(本実施例では車速)を得ることが可能となる。
【0036】
また、実施例1の車両用表示装置では、外光が入射しても、表示スクリーン4上の表示意匠部40の全体の輝度が上がるだけであり、表示意匠部40以外の部分は光拡散機能を有しないので、ドライバーからみると、透明のままであり、前方の視界を確保できる。
【0037】
さらに、実施例1の車両用表示装置にあっては、ホログラムを用いる場合のように、装置が高価になることもなく、またホログラムによる外光の不要な反射により他車のドライバー等の眩惑を招くことはない。
なお、本実施例の車両用表示装置にあっては、光拡散機能を持つ表示意匠部40は、外光やプロジェクタ3による選択的な照明により輝度を持つため、他車のドライバーからも視認できるが、これらの面積は小さいので、他車のドライバーを眩惑させるような心配はない。
【0038】
さらに、実施例1の車両用表示装置は、可動機構を有しないので、経年変化による表示指示精度や応答速度の劣化等は極めて低くなる。
【0039】
なお、上記実施例1の車両用表示装置にあっては、プロジェクタ3にて、表示意匠部40に選択表示させる部分pとそれ以外の部分とに輝度差を付与することで良好な視認性を得るようにしたが、これに加えて表示色の差を付与するようにしてもよい。
すなわち、
図4において、たとえば、表示意匠部40は白色印刷で設け、昼間のように周囲が明るいときはプロジェクタ3で指示照明する部分pおよびその周囲近傍qを緑色で選択的に照明するようにしてもよい。
【0040】
一方、夜間のように周囲が暗いときは表示意匠部40の全体を白色以外の色で照明し、指示する部分pやこの周囲近傍qは緑色のより高い照度で照明する。
また、指示する部分pは、指示表示する内容等に応じて変えるようにしてもよい。たとえば、100Km/h以下では緑色で照明し、100Km/hを超えたら赤色で照明して速度大なので運転注意との警報をドライバーに認識させる。
このように、指示する部分の色を変えることで、表示内容をさらに拡充することが可能となる。
【実施例2】
【0041】
次に、本発明の実施例2の車両用表示装置について説明する。
実施例2の車両用表示装置にあっては、実施例1の
図1で示したのと同じ構成を用いる。ただし、表示スクリーン4を構成する透明体4aは、実施例1ではすべての部分で同じ板厚の透明板4aを用いていたのに対し、実施例2の車両用表示装置では、表示スクリーン40を構成する透明体4aは、その内周側部分をその外周側部分より薄く形成する。また、表示意匠部40の目盛り意匠部4b、数字意匠部4dを形成する面が実施例1のものと異なるように構成してある。
【0042】
すなわち、
図5に示すように、目盛り意匠部4bをドライバー側表面に形成した外周側部分8aは、同じ肉厚とするとともに、この外周側部分8aは、その内周側でドライバー側表面とは反対側の面に数字記号意匠部4dを形成した内周側部分8bよりも厚く形成してある。
また、内周側部分8bは、より内側(中心側)に向かうにしたがって、より薄くなって行くようにドライバー側面が傾斜した形状を有する。
さらに、目盛り意匠部4bのうち、0Km/h、20Km/h、40Km/hに相当する目盛りは、内径側部分を他の目盛りより長くして内周側部分8bに傾斜面上にかかるように形成してある。
【0043】
なお、
図5は、表示スクリーン40のドライバー側からみた正面図を示すが、その表示意匠部80の左下端から一転鎖線を下方に伸ばした部分には表示スクリーン4の側面(したがって側面図であり、断面図も同じとなる)を便宜上表示しており、その断面形状は横に細長い台形形状である。
その他の構成は、実施例1と同様に構成してある。
【0044】
実施例2車両用表示装置では、実施例1と同様に、表示意匠部40の指示部分pやこの周囲近傍qをプロジェクタ3で選択的に照明する。
ただ、実施例2の車両用表示装置にあっては、表示スクリーン4での表示意匠部40の目盛り意匠部4bと数字記号意匠部4dの形成位置が、表示スクリーン4の厚さ方向に異ならせてある。
このため、目盛り意匠部4bの目盛りと数字記号意匠部4dの数字記号との間で奥行き方向の距離差が、また、目盛り意匠部4b中の長い目盛りが傾斜面まで一部が伸びてその内側端部分が奥に向けて延びて行くように見えるため、ある種の3次元(3D)表示効果が得られる。
これにより、表示意匠の意外性や面白さを出すことが可能となるので、表示装置の商品性を向上させることができる。
【実施例3】
【0045】
次に、本発明の実施例3の車両用表示装置について、説明する。
実施例3の車両用表示装置にあっては、
図6(a)に示すように、実施例1あるいは実施例2のものと同じ構成を用い、この表示スクリーン4(実施例1でも実施例2でもよい)の構成に、任意表示意匠部41aをさらに追加したものである。
任意表示意匠部41aは、円弧状に配設した表示意匠部40(目盛り意匠部4bおよびこの内側の数字記号表示部4d)の内側の中央位置やや下側に設けてあり、透明体4aの一部のドライバー側表面を微細な凸凹形状として光拡散スクリーン機能を付与したものである。
なお、任意表示意匠部41aは、本発明の第2表示意匠部に相当する。
【0046】
また、
図6(b)は、プロジェクタ3により照明可能な範囲を示し、実施例1、実施例2の場合の照明範囲(たとえば図(b))に加えて、任意表示意匠部41aに対応する範囲も照明可能とされる。
したがって、実施例3の車両用表示器も、実施例1、実施例2と同様の作用を有し、
図6(c)に示すように、たとえば40Km/hの速度で走行中であれば、目盛り意匠部4bの相当目盛りpおよびこの周囲近傍q(図示は省略)とこの内側の数字記号表示部4dの「40」とをプロジェクタ3からの照明光で照明するとともに、さらに任意表示意匠部41aも照明して経済運転走行中を意味する「ECO」の文字をも照明する。
この場合、任意表示意匠部41aを設けた分、外光の入射により光拡散スクリーン部の輝度が高くなるため、その分、ドライバーの前方視野が狭まるものの、任意表示意匠部41aの面積を限定すれば前方視界の確保に実用上問題ない。
なお、この表示は、経済運転域から外れたときは照明を停止する。
【0047】
実施例4の車両用表示装置にあっては、実施例1および実施例2の効果に加え、プロジェクタを増やすことなく、任意表示の機能を得ることができ、表現内容の情報量や質、表示内容の表現力等を向上させることが可能となる。
【実施例4】
【0048】
次に、本発明の実施例4の車両用表示装置について、説明する。
実施例4の車両用表示装置にあっては、
図7に示すように、表示スクリーン4の透明体4aの構成が一部異なるだけで、残りの構成は実施例1〜実施例3のいずれかの構成と同じである。
【0049】
すなわち、実施例4の車両用表示装置では、板状の透明体4aの、ドライバーとは反対側の面に、光拡散面42を設けている。この光拡散面42は、プロジェクタ3から拡散面42に入ってきた照明光5を拡散して、表示意匠部40に表示光6として向かわせるものである。
【0050】
したがって、実施例4の車両用表示装置は、実施例1〜実施例3の効果に加え、プロジェクタ3での照射範囲が同じであっても、より広い表示意匠部40を照明することが可能となる。
【実施例5】
【0051】
次に、本発明の実施例5の車両用表示装置について、説明する。
実施例5の車両用表示装置にあっては、
図8に示すように、表示スクリーン4の透明体4aの構成が一部異なるだけで、残りの構成は実施例1〜実施例4のいずれかの構成と同じである。
【0052】
すなわち、実施例5の車両用表示装置では、板状の透明体4aの、ドライバーとは反対側の面に、レンズ面43を設けている。このレンズ面43は、プロジェクタ3からレンズ面43に入ってきた照明光5を収束してその光束を狭めながら表示意匠部40に向かわせるものである。
ここで、レンズ面43は、本発明の導光手段に相当する。
【0053】
したがって、実施例5の車両用表示装置は、実施例1〜実施例4の効果に加え、同じプロジェクタ3を用いても、レンズ面43により表示意匠部40を照明する照度がより増大するため、その表示輝度を高くすることが可能となる。
【実施例6】
【0054】
次に、本発明の実施例6の車両用表示装置について、説明する。
実施例6の車両用表示装置にあっては、
図9に示すように、表示スクリーン4の透明体4aの構成が一部異なるだけで、残りの構成は実施例1〜実施例4のいずれかの構成と同じである。
【0055】
すなわち、実施例6の車両用表示装置では、板状の透明体4aの、ドライバーとは反対側の面に、複数のプリズムからなるプリズム部44を設けている。このプリズム部44は、プロジェクタ3からプリズム部44に入ってきた照明光5の光路を屈折することなく、板状の透明体4aに入射させて表示意匠部40に向かわせるものである。
ここで、プリズム部44は、本発明の導光手段に相当する。
【0056】
したがって、実施例6の車両用表示装置は、実施例1〜実施例4の効果に加え、透明体4aに入射する際の表面反射損失が減少してその分、表示意匠部40を照明する照度が増大するため、その表示輝度を高くすることが可能となる。
【実施例7】
【0057】
次に、本発明の実施例7の車両用表示装置について、説明する。
実施例7の車両用表示装置にあっては、
図10に示すように、表示スクリーン4の透明体4aの構成が一部異なるだけで、残りの構成は実施例1〜実施例4のいずれかの構成と同じである。
【0058】
すなわち、実施例7の車両用表示装置では、板状の透明体4aの、ドライバーとは反対側の面に、第1面45aと第2面45bとで断面三角形をなすプリズムからなるプリズム部45を設けている。
このプリズム部45の第1面45aは、プロジェクタ3からレンズ面43に入ってきた照明光5の進行方向に対して垂直方向に延び、ここから入ってきた照明光5を屈折させることなく、第2面45bに向かわせる。第2面45bでは、入って来た照明光を全反射して表示意匠部40に向かわせる。
ここで、プリズム部45は、本発明の導光手段に相当する。
【0059】
したがって、実施例7の車両用表示装置は、実施例1〜実施例4の効果に加え、表示意匠部40に達する照明光の光束の方向がドライバーからの観察方向にほぼ一致するようにして、その表示輝度を高くすることが可能となる。
【実施例8】
【0060】
次に、本発明の実施例8の車両用表示装置について、説明する。
実施例8の車両用表示装置にあっては、
図11に示すように、表示スクリーン4の構成が異なるだけで、残りの構成は実施例1〜実施例4のいずれかの構成と同じである。
【0061】
すなわち、実施例8の車両用表示装置では、板状の第1透明体4aの、ドライバーとは反対側の面に、さらに別の板状の第2透明体46を重ね合わせて貼り合わせることで、表示スクリーン4を構成する。
意匠表示部40は、第1透明体4aの照明光入射面側に印刷で設けて、第1透明体4aと第2透明体46との間に配置されるようにする。
【0062】
したがって、実施例6の車両用表示装置は、実施例1〜実施例4の効果に加え、ドライバーには、表示意匠部40の表示意匠があたかも両透明体4aおよび46内で浮遊しているように見え、表示意匠の意外性や面白さを出すことが可能となって、表示装置の商品性を向上させることができる。
【実施例9】
【0063】
次に、本発明の実施例9の車両用表示装置について、説明する。
実施例9の車両用表示装置にあっては、
図12に示すように、表示スクリーン4の表示意匠部40の構成が異なるだけで、残りの構成は実施例1〜実施例4のいずれかの構成と同じである。
【0064】
すなわち、表示意匠部40の目盛り意匠部4bは、上記実施例の矩形の棒記号に代えて、丸形状としたものである。
このような様々な意匠を表示意匠部40に用いることで、表示意匠の意外性や面白さを出すことが可能となって、表示装置の商品性を向上させることができるようになる。
なお、表示意匠部40は、矩形の棒状形状や丸形状に限られず、これら以外の形状でも良い。
【0065】
以上、本発明を上記各実施例に基づき説明してきたが、本発明はこれらの実施例に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更等があった場合でも、本発明に含まれる。
【0066】
たとえば、本発明の車両用表示装置は、速度計だけでなく、他の表示内容を表示する表示装置に適用してもよい。その場合、表示意匠は、当然それぞれ表示内容に合ったものにする。
【0067】
また、プロジェクタ3による照明は、繰り返し点滅を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 ウインドシールド
2 ダッシュボード
2a 開口
3 プロジェクタ(照明手段)
4 表示スクリーン(コンバイナ)
4a 透明体(透明領域部)
40 表示意匠部
4a 透明板、第1透明体(透明領域部)
4b 目盛り意匠部(第1表示意匠部)
4c 周囲近傍
4d 数字記号意匠部(第1表示意匠部)
5 照明光
6 表示光
7 ドライバー・シート
8a 外周側部分
8b 内周側部分
41a 任意表示意匠部(第2表示意匠部)
42 光拡散面
43 レンズ面
44 プリズム部
45 プリズム部
45a 第1面
45b 第2面
46 第2透明体(透明領域部)