(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項2記載の液卵の加熱処理装置において、前記予熱ユニットは液卵を加熱流路内に流しながらジュール熱により発熱させて液卵を前記予熱温度に加熱するジュール加熱ユニットであることを特徴とする液卵の加熱処理装置。
【背景技術】
【0002】
卵料理を顧客に提供する飲食業や、卵を素材とした食品を製造する食品加工業においては、工場で予め加熱殺菌されて容器に詰められた液卵が使用されている。このような調理用食品として用いられる殺菌液卵には、卵黄のみの液卵黄、卵白のみの液卵白、および卵白と卵黄とが混合された液全卵がある。調理用の殺菌液卵を量産するには、特許文献1に記載されるように、殻付き卵を割卵機械により割卵し、ストレーナによりカラザや卵カラの破片等と液卵とをまず分離する。分離された液卵は、そのまま加熱処理されるか、または容器に冷蔵保存された後に加熱処理される。
【0003】
液卵を加熱殺菌するために、従来では、ジュール加熱機等の加熱機により60℃で3.5分加熱する方式の他に、特許文献1に記載されるように、バッチ式殺菌タンク、プレート式熱交換機、またはジュール加熱機により液卵を58℃で10分間加熱する方法が提案されている。また、特許文献2に記載されるように、加熱工程を二段階に分けて第1の加熱工程では57〜60℃で1〜60秒加熱し、冷却後に第2の加熱工程では55〜58℃で3.5〜10分間加熱する方法が提案されており、それぞれの加熱工程にはプレート式の間接加熱型の熱交換機が使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、卵スープを調理する際に、割卵して殻から取り出した未殺菌の液卵を熱湯に投入すると、卵が固まった状態となった卵スープを調理することができる。これに対し、従来の技術で殺菌処理された液卵を熱湯に投入すると、液卵が固まった状態とならずに、熱湯が濁ったように卵が熱湯に分散されて白濁してしまうことが判明している。この白濁現象は、卵スープを調理する場合に限らず、他の卵料理においても、加熱殺菌された液卵は加熱しても凝集性に問題点があった。このように、殺菌液卵が未殺菌液卵に比して凝集性が悪くなるという現象は、特に、殺菌処理された液卵を量産するために、プレート式やチューブ式の間接加熱型の熱交換機を使用して液卵を連続的に流路に搬送しながら殺菌温度まで加熱処理した液卵においては、ジュール加熱機により液卵を加熱した場合よりも顕著であることが知られている。
【0006】
間接加熱型の熱交換機により液卵を加熱すると、熱交換機の内部を液卵が蛇行して流れることになり、加熱開始から終了までの間に液卵は大きな剪断力を受けることになるとともに大きな熱ダメージを受けることになるので、ジュール加熱機により液卵を加熱処理した場合よりも、間接加熱式の熱交換機により殺菌処理した液卵を調理すると、白濁してしまうのであると考えられる。しかしながら、ジュール加熱機により液卵を殺菌処理した場合も、殺菌処理後の液卵を調理すると、白濁してしまうことがある。
【0007】
種々の実験によると、液卵をその蛋白質変成温度よりも低い温度で予熱した後に、殺菌温度にまで加熱する前に、液卵を予熱温度で保持し、予熱温度に保持した後に、殺菌温度に加熱すると、加熱方式が間接加熱型の熱交換機やジュール加熱式の加熱機のいずれの加熱方式であっても、殺菌処理後の液卵は凝縮性が高まり、白濁しないことが判明した。
【0008】
本発明の目的は、加熱処理された液卵の凝集特性を未殺菌液卵に近い凝集特性とする加熱処理技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液卵の加熱処理方法は、液卵を加熱殺菌するための液卵の加熱処理方法であって、割卵して殻から取り出された未殺菌の液卵を、液卵の蛋白質変成温度よりも低い温度を予熱温度として当該予熱温度に加熱する予熱工程と、前記予熱温度に加熱された液卵を前記予熱温度に保持する予熱温度保持工程と、前記予熱温度に保持された後の液卵をジュール熱により発熱させて液卵を殺菌温度に加熱する殺菌加熱工程と、前記殺菌温度に加熱された液卵を前記殺菌温度に保持する殺菌温度保持工程と、を有し、前記予熱温度を40℃以上であり53℃未満とし、前記予熱温度の保持時間を1分以上とし、前記殺菌温度と殺菌温度保持時間とを、前記殺菌温度が60
℃であり前記殺菌温度保持時間が3.5分
相当の殺菌処理基準とすることを特徴とする。
【0010】
本発明の液卵の加熱処理装置は、液卵を加熱殺菌するための液卵の加熱処理装置であって、割卵して殻から取り出された未殺菌の液卵を、液卵の蛋白質変成温度よりも低い温度を予熱温度として当該予熱温度に加熱する予熱ユニットと、前記予熱温度に加熱された液卵を前記予熱温度に保持する予熱温度保持ユニットと、前記予熱温度に保持された後の液卵をジュール熱により発熱させて液卵を殺菌温度に加熱する殺菌加熱ユニットと、前記殺菌温度に加熱された液卵を前記殺菌温度に保持する殺菌温度保持ユニットと、を有し、前記予熱温度を40℃以上であり53℃未満とし、前記予熱温度の保持時間の1分以上とし、前記殺菌温度と殺菌温度保持時間とを、前記殺菌温度が60
℃であり前記殺菌温度保持時間が3.5分
相当の殺菌処理基準とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液卵をその蛋白質変成温度よりも低い予熱温度にまで加熱した後に、予熱温度を保持するようにしたので、予熱温度保持工程において、予熱温度となった液卵は糸状に繋がった状態や固まった状態に再生される。再生された状態の液卵を、ジュール加熱により短時間で殺菌温度まで通電加熱した後、殺菌温度に一定時間以上保持することにより、液卵の加熱処理が完了する。このようにして加熱殺菌された液卵を調理すると、未殺菌液卵に近い凝集性を有する殺菌液卵が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図示する加熱処理装置は、未殺菌の全卵を処理対象物として、調理用の液卵を加熱殺菌処理するために適用されている。液卵の加熱処理工程は、
図1に示されるように、割卵工程11〜包装工程17を有しており、割卵工程11においては、図示しない割卵機により割卵されて殻から卵黄と卵白とが取り出される。取り出された卵黄と卵白は、図示しない攪拌機により撹拌される。撹拌された液卵は、そのまま予熱工程12に搬送されるか、1日程度冷蔵保存された後に予熱工程12に搬送される。この予熱工程12においては、割卵して殻から取り出された未殺菌の初期温度T0の液卵を、液卵の蛋白質変成温度よりも低い予熱温度T1に加熱し、予熱温度保持工程13において一定時間予熱温度に保持される。
【0014】
液卵の蛋白質変成温度は53℃以上となっている。液卵を53℃以上にまで連続的に加熱すると、撹拌された液卵は繋がった状態とならないが、この蛋白質変成温度よりも低い温度を予熱温度T1として、例えば、40〜53℃程度に液卵を予熱した後に、予熱温度保持工程13においてその予熱温度T1に液卵を予熱温度保持時間H1以上に保持すると、予熱時に分離された状態の液卵は繋がった状態に再生することが実験により判明した。分離された液卵を再生するためには、予熱温度保持工程13において、予熱温度に1分以上保持する必要があることが判明しており、予熱温度に1分以上液卵を保持すると、分離された液卵を再生させることができた。
【0015】
予熱温度保持工程13を終了した液卵は、殺菌加熱工程14に搬送されて殺菌温度T2まで加熱される。この殺菌加熱工程14においては、液卵をジュール熱により発熱させて殺菌温度T2にまで、100秒程度の短時間で殺菌加熱される。殺菌温度T2に加熱された液卵は、殺菌温度保持工程15において殺菌温度T2に殺菌保持時間H2以上保持されて、殺菌加熱処理される。殺菌処理条件は、殺菌温度T2を60℃とした場合には殺菌温度保持時間H2を3.5
分とすることが殺菌処理基準となる。この殺菌処理基準となる殺菌温度保持時間H2は、殺菌温度T2が61℃のときは、2.30分以上であり、殺菌温度T2が62℃のときは、1.52分以上であり、殺菌温度T2が63℃のときは、1.00分以上である。このように、殺菌温度T2を高くすると、殺菌温度保持時間H2を短くしても、60℃、3.5分相当の殺菌処理基準を満たすことになる。殺菌温度T2の温度を上述の温度よりも高くした場合に、殺菌処理基準を満たす殺菌温度保持時間H2の最小値は、以下の通りであり、カッコ内は殺菌温度に対応した殺菌温度保持時間を示す。
【0016】
T2=64℃(H2=0.66分)、T2=65℃(H2=0.43分)、T2=66℃(H2=0.28分)、T2=67℃(H2=0.19分)、T2=68℃(H2=0.12分)、T2=69℃(H2=0.081分)、T2=70℃(H2=0.053分)、T2=71℃(H2=0.035分)、T2=72℃(H2=0.023分)、T2=73℃(H2=0.015分)、T2=74℃(H2=0.010分)、T2=7
5℃(H2=0.007分)
このように、殺菌温度T2を高くした場合には、カッコ内の殺菌温度保持時間H2以上に、殺菌温度T2で保持すると、60℃、3.5分相当の殺菌処理基準が満たされる。
【0017】
殺菌処理された液卵は、冷却工程16において常温ないし冷蔵保存温度T0まで冷却され、包装工程17において容器やパッケージに包装される。ただし、加熱処理された液卵の冷却方式としては、自然冷却方式としても良い。
【0018】
図2は
図1に示される加熱処理方法を具体化した液卵の加熱処理装置20を示す概略図である。この液卵の加熱処理装置20は、割卵されて撹拌された液卵が投入されるホッパ21を有し、このホッパ21は配管22aにより予熱ユニット23に接続されており、ホッパ21内の液卵は連続的に予熱ユニット23に搬送される。この予熱ユニット23は電極が対となって設けられた加熱流路を有しており、液卵を加熱流路に搬送しながらジュール熱により発熱させて予熱温度T1にまで一気に液卵を加熱する。配管22aには、この配管22a内の流路を開放する状態と流路を閉塞する状態との開閉するための開閉弁24が設けられるとともに、ホッパ21内の液卵を予熱ユニット23に供給するためのポンプ25が設けられている。
【0019】
蛋白質変成温度よりも低い温度を予熱温度T1として、予熱ユニット23により予熱された液卵は、予熱温度保持ユニット26に配管22bにより搬送される。この予熱温度保持ユニット26においては、予熱温度T1まで加熱された液卵が上述した予熱温度保持時間H1、予熱温度T1に保持される。蛋白質変成温度よりも低い予熱温度T1に液卵を保持すると、撹拌状態となって予熱された液卵が糸状に繋がった状態に再生され、再生された後の液卵は、配管22cにより殺菌加熱ユニット27に搬送される。この殺菌加熱ユニット27は、予熱温度T1に保持された後の液卵をジュール熱により発熱させて殺菌温度T2まで加熱するジュール加熱ユニットにより形成されている。ジュール加熱により液卵を蛋白質変成温度以上の所望の殺菌温度T2にまで短時間で加熱することができるので、液卵に加えられる熱ダメージを少なくすることができる。
【0020】
殺菌温度T2まで加熱された液卵は、殺菌温度保持ユニット28に配管22dにより搬送されて、この殺菌温度保持ユニット28により殺菌温度保持時間H2にわたり保持される。これにより、液卵の加熱殺菌処理が終了する。加熱殺菌処理が終了した液卵は、冷却ユニット29に配管22eにより搬送されて、冷却ユニット29により冷蔵温度ないし常温にまで冷却される。冷却ユニット29は液卵を案内する冷却流路30の外側に冷却液が供給される冷却ジャケット31を有し、この冷却ジャケット31には冷却機32からの冷却液が循環供給される。冷却ユニット29により冷却された液卵は、配管22fにより回収容器33に搬送される。所定量の液卵が回収容器33に供給されると、回収容器33内の液卵は包装工程17に搬送されて容器やパッケージに収容される。
【0021】
図5は
図2に示された殺菌加熱ユニット27の拡大断面図である。この殺菌加熱ユニット27は、液卵を案内する加熱流路41が形成された断面円形の加熱パイプつまり管状部材42を有している。管状部材42は7つのリング状の電極43とこれらの間に配置される6つの円筒体44とにより構成されている。このように、ジュール加熱式の殺菌加熱ユニット27は、複数の電極43と複数の円筒体44とにより構成される管状部材42を有し、管状部材42には隣り合う電極43が対をなして設けられている。それぞれの電極43はチタンなどの導体により形成され、それぞれの円筒体44は樹脂等の絶縁体により形成されている。管状部材42の両端部には絶縁体からなる流入側と流出側のジョイント部45,46が取り付けられている。流入側のジョイント部45には配管22cが接続され、流出側のジョイント部46には配管22dが接続される。それぞれの電極43には電源ユニット47がケーブルを介して接続されており、液卵の流れる方向に隣り合って対をなす電極43が相互に逆極性となるように電源ユニット47から高周波電流が供給される。なお、殺菌加熱ユニット27に設けられる電極43の数は加熱温度等に応じて任意に設定される。
【0022】
図2に示される予熱ユニット23は、殺菌加熱ユニット27と同様に、ジュール加熱式となっており、リング状の複数の電極と、これらの間に配置される複数円筒体とを有している。
図2に示される予熱温度保持ユニット26と殺菌温度保持ユニット28は、それぞれ内部に加熱流路が設けられており、予熱温度保持ユニット26は内部に液卵を案内する流路が設けられ、外部には液卵を予熱温度に保持するために断熱材が設けられている。同様に、殺菌温度保持ユニット28は内部に液卵を案内する流路が設けられ、外部には液卵を殺菌温度に保持するために断熱材が設けられている。ただし、予熱温度および殺菌加熱温度の低下を防止するために、予熱温度保持ユニット26と殺菌温度保持ユニット28に外側に保温媒体が循環供給されるジャケットを設けるようにしても良い。
【0023】
図3は他の実施の形態である液卵の加熱処理装置を示す概略図である。
図3においては、
図2に示した加熱処理装置の構成部材と共通する部材には同一の符号が付されている。
図3に示されるように、予熱ユニット23aは、ホッパ21内の液卵が供給される加熱流路35の外側には加熱ジャケット36が設けられており、この加熱ジャケット36には加熱機37により加熱された加熱媒体が循環供給される。このように、
図2に示した予熱ユニット23がジュール加熱式であるのに対して、予熱ユニット23aは間接加熱式となっている。
【0024】
図4(A)は
図2に示される液卵の加熱処理装置により加熱処理したときにおける液卵の温度変化を示す特性線図であり、
図4(B)は
図3に示される液卵の加熱処理装置により加熱処理したときにおける液卵の温度変化を示す特性線図である。
【0025】
図4(A)に示されるように、5〜10℃程度に冷蔵保存された液卵をジュール加熱式の予熱ユニット23により液卵をその蛋白質変成温度よりも低い予熱温度T1として、例えば50℃まで加熱し、予熱温度保持ユニット26により予熱温度T1に1分間以上の予熱温度保持時間H1にわたって保持した。その後、ジュール加熱式の殺菌加熱ユニット27により60℃の殺菌温度T2に加熱した。加熱に要する時間は100秒程度であり、殺菌温度T2として60℃にまで加熱された後の液卵を、殺菌温度保持ユニット28により殺菌温度T2で3.5分保持した。殺菌処理された液卵を保存温度まで冷却した。このようにして加熱処理された液卵を、熱湯に注入したところ、液卵は、未殺菌液卵とほぼ同様の凝集性を有しており、液卵は白濁することが無かった。
【0026】
図4(B)に示すように、間接加熱型の予熱ユニット23aにより蛋白質変性温度よりも低い温度である予熱温度T1にまで予熱すると、ジュール式の予熱ユニット23よりも予熱温度T1にまで昇温させるための時間は長くなる。しかしながら、間接加熱型の予熱ユニット23aにより予熱温度T1まで加熱するようにしても、
図4(A)と同様に予熱温度に保持し、殺菌温度T2にまで加熱し、殺菌温度T2に保持して加熱処理を行った液卵は、未殺菌液卵とほぼ同様の凝集性を有しており、液卵は白濁することが無かった。
【0027】
一方、予熱温度T1に保持した後の液卵を、予熱温度T1に保持することなく、間接加熱型の加熱機により殺菌温度T2まで加熱した。このように、予熱温度保持工程を経過することなく、蛋白質変成温度以上の加熱温度にまで連続的に加熱処理を行ったところ、その加熱処理後の液卵を熱湯に注入すると、液卵は凝集性を有することなく、白濁してしまった。
【0028】
このように、蛋白質変性温度以下の予熱温度T1にまで加熱する予熱工程と、その温度に一定時間以上保持する予熱温度保持工程とを経過した後に、ジュール加熱式の殺菌加熱ユニット27により短時間で蛋白質変性温度以上の殺菌温度に加熱すると、加熱処理後の液卵は未殺菌液卵とほぼ同様の凝集性を有することが判明した。
【実施例】
【0029】
予熱温度T1を液卵の蛋白質変成温度である53℃未満の温度である50℃とし、予熱温度保持時間H1を変化させて多数の液卵を予熱温度で保持した後に、それぞれについて殺菌温度T2を60℃とし、殺菌温度保持時間H2を3.5分とした殺菌処理基準で加熱殺菌処理を行った液卵について、凝集性を確認した。凝集性の確認は、加熱殺菌処理された液卵を熱湯に注入してかき玉を製造することにより行った。
【0030】
予熱温度保持時間H1を30秒とし、殺菌処理基準で加熱殺菌処理を行った液卵は、お湯には濁りがあり、液卵に薄い膜状の繋がりが得られたが、繋がりは若干弱かった。このため、未殺菌液卵を用いてかき玉を製造した場合と比較すると、凝集性が悪いことが判明した。
【0031】
これに対し、予熱温度保持時間H1を1分とした場合と、1.5分とした場合のそれぞれについて、殺菌処理基準で加熱殺菌処理を行った液卵は、粘度があり膜が厚く繋がった状態となり、お湯に白濁も無かった。予熱温度保持時間H1を2分とした場合と、2.5分とした場合のそれぞれについて、殺菌処理基準で加熱殺菌処理を行った液卵は、お湯に僅かな濁りがあったが、粘度があり、膜状には繋がらずに固まり、未殺菌液卵に近い凝集性が得られた。予熱温度保持時間H1を3分とした場合と、3.5分とした場合と、4分とした場合のそれぞれについて、殺菌処理基準で加熱殺菌処理を行った液卵は、さらに粘度が高くなり、膜状には繋がらずに固まり、未殺菌液卵に近い凝集性が得られた。予熱温度保持時間H1を4.5分とした場合と、5分とした場合のそれぞれについて、殺菌処理基準で加熱殺菌処理を行った液卵は、大きな固まりの凝集物となった。お湯に濁りが発生したが、液卵の白濁はなく、未殺菌液卵に近い凝集性のかき玉が得られた。
【0032】
さらに、予熱温度保持時間H1を6分とした場合と、7分とした場合と、8分とした場合と、10分とした場合のそれぞれについて、殺菌処理基準で加熱殺菌処理を行った液卵は、凝集物が小さくバラバラな状態となり、お湯の濁りも上述した場合よりも強くなったが、液卵の白濁はなく、未殺菌液卵に近い凝集性のかき玉が得られた。
【0033】
このように、予熱温度T1を50℃とし、予熱温度保持時間H1を変化させて多数の液卵を予熱温度で保持した場合には、予熱温度保持時間H1を1分以上とすれば、予熱温度の保持を行わずに加熱殺菌処理した殺菌液卵に比較して、未殺菌液卵に近い凝縮性を有する殺菌液卵が得られることが判明した。ただし、予熱温度保持時間H1を長くすると、連続的に殺菌液卵を加熱処理するための時間が長くなるので、処理の効率を考慮すると、予熱温度保持時間H1を短くすることが好ましい。
【0034】
予熱温度T1としては、液卵の蛋白質変性温度よりも低い温度であれば、50℃以下でも良く、予熱温度T1を40℃とした場合についても同様の結果が得られるが、ジュール熱による加熱殺菌温度までの加熱時間を考慮すると、予熱温度T1としては、液卵の蛋白質変性温度である53℃よりも低い温度であって、それに近い温度とすることが好ましい。
【0035】
図2および
図3に示される加熱処理装置の予熱ユニット23,23においては、液卵を管路内に搬送しながら予熱しており、予熱温度保持ユニット26も液卵を管路内に搬送しながら、所定時間予熱温度を保持するようにしているが、それぞれの予熱ユニットとして、容器を使用することにより、バッチ式の予熱ユニットとしても良い。同様に、予熱温度保持ユニットとしても、バッチ式の予熱温度保持ユニットとしても良い。それぞれの場合には、殺菌加熱ユニット27と殺菌温度保持ユニット28が連続式となる。
【0036】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、ジュール加熱式の予熱ユニット23および殺菌加熱ユニット27としては、加熱流路が形成された断面四角形の加熱パイプの内面に2枚の板状の電極を相互に対向させて配置するようにした形態としても良く、加熱パイプの両端面に相互に対向させて板状の電極を取り付けるようにした形態としても良い。