(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871756
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】アルカリ形燃料電池の活性化方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/88 20060101AFI20160216BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20160216BHJP
H01M 4/96 20060101ALI20160216BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20160216BHJP
【FI】
H01M4/88 Z
H01M4/90 M
H01M4/96 B
H01M8/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-201451(P2012-201451)
(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公開番号】特開2014-56750(P2014-56750A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(72)【発明者】
【氏名】谷口 晃
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼ 浩敏
【審査官】
太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/093651(WO,A1)
【文献】
特開平04−039869(JP,A)
【文献】
特開昭62−216172(JP,A)
【文献】
特開2012−169079(JP,A)
【文献】
特開2010−113889(JP,A)
【文献】
米国特許第6551960(US,B1)
【文献】
特開2003−223901(JP,A)
【文献】
特開2003−123812(JP,A)
【文献】
特開2008−192468(JP,A)
【文献】
特開2010−067509(JP,A)
【文献】
特開2005−293901(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/104570(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86 − 4/98
H01M 8/00 − 8/02
H01M 8/08 − 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性担体およびこれに担持された触媒を有する触媒電極を使用したアルカリ形燃料電池の活性化方法であって、燃料電池の電極触媒が、触媒表面への金属水酸化物絶縁皮膜の生成により不活性となったときに、外部電源と外部電極を使って、触媒電極を作用極として還元電流を流す処理を行うことにより、電極触媒表面の金属水酸化物絶縁皮膜を低減することを特徴とする、アルカリ形燃料電池の活性化方法。
【請求項2】
触媒電極の作用極に還元電流を流す処理が、電流密度−0.3〜−0.9mA/cm2で、1〜120分間保持するものであることを特徴とする、請求項1に記載のアルカリ形燃料電池の活性化方法。
【請求項3】
触媒電極が、ニッケル、鉄、コバルト、クロム、亜鉛、銅、およびマンガンよりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の金属またはその合金を担持した導電性担体よりなるものであることを特徴とする、請求項1または2に記載のアルカリ形燃料電池の活性化方法。
【請求項4】
触媒電極の導電性担体が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン化合物、カーボンナノホーン、グラファイト、およびこれらの誘導体よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つのカーボン系化合物よりなるものであることを特徴とする、請求項3に記載のアルカリ形燃料電池の活性化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ形燃料電池の活性化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルカリ形燃料電池(AFC, Alkaline Fuel Cell)は、をイオン伝導体とし、電解液を電極間のセパレータに含侵させてセルを構成している。最も構造が簡単であり、アルカリ雰囲気での使用であることから、酸化物等の安価な電極触媒を利用することができること、常温にて液体電解質を用いることからセル構成も単純にできるため、信頼性が高く、実用化されている燃料電池である。
【0003】
例えば下記の特許文献1には、苛性アルカリ水溶液を電解液とし、アノードに燃料水素ガスを、カソードに酸素ガスを供給するアルカリ形燃料電池の構造が開示されている。
【0004】
一方、改質した炭化水素系燃料から水素を取り出す場合、炭化水素が混入しているとアルカリ性電解液が炭酸塩を生じて劣化する。同様に空気を酸化剤として用いると電解液が二酸化炭素を吸収して劣化する。
【0005】
アルカリ形燃料電池の電極触媒は、貴金属(白金)以外ではニッケル系触媒が使用されることが多いが、アルカリ雰囲気にニッケル系触媒がおかれると、ニッケル金属の表面に絶縁被膜が形成されて、稼動開始から短時間で触媒活性が低下し、発電性能が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−4286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、導電性担体およびこれに担持された触媒を有する触媒電極を使用したアルカリ形燃料電池において、電極触媒表面の金属水酸化物絶縁被膜の低減が可能で、電極触媒活性が向上し、燃料電池の性能(発電性能)を回復させることができる、アルカリ形燃料電池の活性化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の従来技術の問題点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、燃料電池の電極触媒が、触媒表面への金属水酸化物絶縁皮膜の生成により不活性となったときに、触媒電極に還元処理を行うことで、電極触媒表面の金属水酸化物絶縁被膜を低減することができ、発電性能が向上するように改善されることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、導電性担体およびこれに担持された触媒を有する触媒電極を使用したアルカリ形燃料電池の活性化方法であって、燃料電池の電極触媒が、触媒表面への金属水酸化物絶縁皮膜の生成により不活性となったときに、外部電源と外部電極を使って、触媒電極を作用極として還元電流を流す処理を行うことにより、電極触媒表面の金属水酸化物絶縁皮膜を低減することを特徴としている。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載のアルカリ形燃料電池の活性化方法であって、触媒電極の作用極に還元電流を流す処理が、電流密度−0.3〜−0.9mA/cm
2で、1〜120分間保持するものであることを特徴としている。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のアルカリ形燃料電池の活性化方法であって、触媒電極が、ニッケル、鉄、コバルト、クロム、亜鉛、銅、およびマンガンよりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の金属またはその合金を担持した導電性担体よりなるものであることを特徴としている。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3に記載のアルカリ形燃料電池の活性化方法であって、触媒電極の導電性担体が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン化合物、カーボンナノホーン、グラファイト、およびこれらの誘導体よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つのカーボン系化合物よりなるものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明は、導電性担体およびこれに担持された触媒を有する触媒電極を使用したアルカリ形燃料電池の活性化方法であって、燃料電池の電極触媒が、触媒表面への金属水酸化物絶縁皮膜の生成により不活性となったときに、外部電源と外部電極を使って、触媒電極を作用極として還元電流を流す処理を行うことにより、電極触媒表面の金属水酸化物絶縁皮膜を低減することを特徴とするもので、請求項1に記載の発明によれば、アルカリ形燃料電池の電極触媒が、触媒表面への金属水酸化物絶縁皮膜の生成により不活性となったときに、触媒電極に還元処理を行うことで、電極触媒表面の金属水酸化物絶縁被膜を低減することができて、電極触媒活性が向上し、燃料電池の性能(発電性能)を回復させることができるという効果を奏する。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載のアルカリ形燃料電池の活性化方法であって、触媒電極の作用極に還元電流を流す処理が、電流密度−0.3〜−0.9mA/cm
2で、1〜120分間保持するものであることを特徴とするもので、請求項2に記載の発明によれば、触媒電極の作用極に、上記の電流密度で還元電流を流す還元処理を行うことにより、電極触媒表面の金属水酸化物絶縁被膜を低減することができ、電極触媒活性が向上し、燃料電池の性能(発電性能)を回復させることができるという効果を奏する。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のアルカリ形燃料電池の活性化方法であって、触媒電極が、ニッケル、鉄、コバルト、クロム、亜鉛、銅、およびマンガンよりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の金属またはその合金を担持した導電性担体よりなるものであることを特徴とするもので、請求項3に記載の発明によれば、上記触媒を具備する電極の作用極に、還元処理を行うことにより、電極触媒表面の金属水酸化物絶縁被膜を低減することができて、電極触媒活性が向上し、燃料電池の性能(発電性能)を回復させることができるという効果を奏する。
【0016】
請求項4の発明は、請求項3に記載のアルカリ形燃料電池の活性化方法であって、触媒電極の導電性担体が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン化合物、カーボンナノホーン、グラファイト、およびこれらの誘導体よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つのカーボン系化合物よりなるものであることを特徴とするもので、請求項4に記載の発明によれば、この導電性担体およびこれに担持された上記触媒を有する触媒電極の作用極に、還元処理を行うことにより、電極触媒表面の金属水酸化物絶縁被膜を低減することができて、電極触媒活性が向上し、燃料電池の性能(発電性能)を回復させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】固体高分子形燃料電池の基本構造を示す概念図である。
【
図2】回転電極法の装置の基本構造を示す概念図である。
【
図3】本発明の実施例において、ニッケル触媒電極の還元処理時間と還元電流の大きさの影響について示すグラフである。
【
図4】本発明の実施例において、ニッケル触媒電極の還元処理時間を一定とした場合の還元電流の大きさの影響について示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
つぎに、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
図1に示すように、アルカリ形燃料電池は、外部と連通する燃料流通孔(1a)を有するアノードセパレータ(1)および酸化剤ガス流通孔(2a)を有するカソードセパレータ(2)内の空間を、固体高分子電解質膜(7)の両面にそれぞれアノード電極触媒層(5)とカソード電極触媒層(6)とが接合された接合体で仕切って、さらに各電極層の上にそれぞれアノードガス拡散電極(集電体)(3)とカソード拡散電極(集電体)(4)が設置され、燃料流通孔(1a)を通して外部と連通する燃料室、および酸化剤ガス流通孔(2a)を通して外部と連通する酸化剤室が形成された基本構造を有している。
【0020】
そして、このような基本構造のアルカリ形燃料電池では、燃料室に燃料流通孔(1a)を通して、水素ガスあるいはメタノール等からなる燃料を供給するとともに、酸化剤室に酸化剤ガス流通孔(2a)を通して、酸化剤となる酸素や空気等の酸化剤ガスを供給し、さらに、両拡散電極(集電体)(3)(4)間に外部負荷回路を接続することにより、つぎのような機構により電気エネルギーを発生させている。
【0021】
一般に、アルカリ形燃料電池においては、カソード極に酸化剤(空気等)および水を供給すると、下記式(1)
1/2O
2+H
2O+2e
− → 2OH
− …(1)
で表される電極反応によりアニオン(OH
−)が生成される。カソード極で発生したアニオン(OH
−)は、アニオン伝導性電解質膜を介してアノード極側に伝達される。
【0022】
一方、アノード極では、供給された還元剤、例えば水素ガス(H
2)と伝達されたアニオン(OH
−)とが、下記式(2)
H
2+2OH
− → 2H
2O+2e
− …(2)
で表される電極反応を起こし、水(H
2O)および電子(e
−)を生成する。アルカリ形燃料電池では、このような電気化学反応により電力が取り出される。
【0023】
アルカリ形燃料電池は、カチオン(H
+)を通過させるカチオン伝導性固体高分子電解質膜(カチオン交換膜)を用いた燃料電池と比較して、耐酸性を考慮する必要がないため、燃料電池構成部材の材質をより広範囲から選択できるなどの利点を有している。
【0024】
アルカリ形燃料電池は、電解質が水溶液であるため、作動温度域は電解液が凍結・蒸発しない温度に制限される。また、温度によりイオンの移動度(拡散係数)が変わり、発電力に影響するため、温度条件が厳しい。
【0025】
アルカリ形燃料電池の運転条件を考えるうえで、アノードにニッケル系触媒を使用した場合、アノードが高電位におかれると、ニッケル系触媒は、アルカリ水溶液、配位性のある一酸化炭素、炭化水素、酸素および水蒸気等によりニッケル系触媒電極表面に絶縁被膜が形成されて、電極活性が低下するので、アノード電位を低電位に保つ必要がある。
【0026】
本発明は、導電性担体およびこれに担持された触媒を有する触媒電極を使用したアルカリ形燃料電池の活性化方法であって、燃料電池の電極触媒が、触媒表面への金属水酸化物絶縁皮膜の生成により不活性となったときに、外部電源と外部電極を使って、触媒電極を作用極として還元電流を流す処理を行うことにより、電極触媒表面の金属水酸化物絶縁皮膜を低減することを特徴としている。
【0027】
本発明によるアルカリ形燃料電池の活性化方法において、触媒電極の作用極に還元電流を流す処理が、電流密度−0.3〜−0.9mA/cm
2で、1〜120分間、好ましくは5〜90分間保持するものであることが好ましい。
【0028】
この触媒電極の作用極に還元電流を流す処理において、電流密度が小さいと、触媒電極表面の水酸化物絶縁皮膜を充分に低減することができず、また電流密度が大き過ぎても、水酸化物絶縁皮膜以外の導電性担体に担持する金属種が溶解するので、好ましくない。
【0029】
さらに、還元電流を流す処理が短いと、触媒電極表面の水酸化物絶縁皮膜を充分に低減することができず、また還元電流を流す処理によって、触媒電極表面の水酸化物絶縁皮膜の低減が充分に果たされた後は、それ以上の還元電流を流す処理が必要でなくなるものである。
【0030】
本発明によるアルカリ形燃料電池の活性化方法において、燃料電池の触媒電極は、ニッケル、鉄、コバルト、クロム、亜鉛、銅、およびマンガンよりなる群の中から選ばれた少なくとも1種の金属またはその合金を担持した導電性担体よりなるものであるが好ましい。
【0031】
これらの金属またはその合金を担持した導電性担体よりなる触媒電極は、アルカリ雰囲気などでは、触媒表面に水酸化皮膜等ができ、活性がとれなくなるものである。
【0032】
また、触媒電極の導電性担体としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン化合物、カーボンナノホーン、グラファイト、およびこれらの誘導体よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つのカーボン系化合物よりなるものを使用するのが好ましい。
【0033】
なお、燃料電池の触媒電極としては、特にニッケル系触媒電極が好ましい。このニッケル系触媒電極としては、ニッケル、またはニッケルと、スンカジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、および亜鉛よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの3d遷移金属との合金を担持したカーボン担体よりなるものを使用するのが好ましい。
【0034】
アルカリ形燃料電池の活性化方法においては、アノードおよびカソードのうち、少なくともアノードにニッケル系触媒等の触媒が使用されている場合に適用されるものである。例えばニッケル系触媒電極が高電位におかれると、ニッケル系触媒は、アルカリ水溶液、配位性のある一酸化炭素、炭化水素、酸素および水蒸気等によりニッケル系触媒電極表面に絶縁被膜が形成されて、電極活性が低下する。
【0035】
本発明のアルカリ形燃料電池の活性化方法によれば、燃料電池の組立て後に、電極の触媒が、触媒表面への水酸化ニッケル絶縁皮膜の生成により不活性となったときに、外部電源と外部電極を使って、触媒電極を作用極として還元電流を流す処理を行うことにより、触媒電極表面の水酸化ニッケル絶縁皮膜を低減することができる。
【0036】
ここで、アルカリ形燃料電池のアノードに触媒が使用されている場合は、アノードの触媒が活性化されて、電池性能は回復され、高効率運転が可能となる。またアノードおよびカソードの両方に触媒が使用されている場合は、アノードだけでなく、カソードの触媒も活性化されて、電池性能は回復され、高効率運転が可能となる。
【0037】
ところで、従来から燃料電池用の触媒活性能を評価するために、電極触媒への反応物質の供給速度を正確に制御できる回転電極法を用いた触媒活性能評価方法が多用されている。この方法は、反応物質を溶解させた電解液中で、触媒電極を回転させることによって反応物質を触媒電極へ供給し、電極触媒上で起こる電極反応の電流値から触媒活性能を評価する方法である。
【0038】
図2に、回転ディスク電極法の装置の基本構造を示す。回転ディスク電極法は、ディスク電極(作用極)(11)を回転させることによって電解質溶液の対流―拡散を積極的に利用する方法である。例えば、回転ディスク電極(作用極)(11)の基板としては、電極反応に不活性で化学的に安定なグラッシーカーボン円盤や金円盤などが用いられる。このディスク電極(作用極)(11)の基板上には触媒電極層(11a)を形成する。
【0039】
そして、回転ディスク電極(作用極)(11)を電解液(15)の入った電解槽(アクリル容器)(18)に設置し、回転させながら電気化学的な評価を行う。電解槽(アクリル容器)(18)の上面は、ゴム栓(17)で密閉されている。反応物質がガスの場合は、パージライン(16)よりバブリングさせながら供給し、また反応物質が液体の場合は、電解液(15)に直接添加することによって実施される。対極(12)には白金を、塩橋(14)を介して参照極(13)には銀・塩化銀電極などを用いる。
【0040】
なお、電解液(15)には、アルカリ形燃料電池用電極触媒の活性能評価には、KOHまたはNaOH水溶液などのアルカリ性電解液を用いる。アルカリの濃度は、通常、0.1mol/l〜8mol/lの範囲が好適である。
【0041】
回転ディスク電極法において、ディスク電極(作用極)(11)を電解液(15)の中で回転させると、物質移動は回転数によって規制され、良好な電流―電位曲線を得ることができる。例えば、回転数を上げて物質移動が律速となった場合には、限界電流が観測され、解析によって電子移動過程の速度定数を求めることができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
実施例1
本発明は、導電性担体およびこれに担持された触媒を有する触媒電極を使用したアルカリ形燃料電池の活性化方法であって、燃料電池の電極触媒が、触媒表面への金属水酸化物絶縁皮膜の生成により不活性となったときに、外部電源と外部電極を使って、触媒電極を作用極として還元電流を流す処理を行うことにより、電極触媒表面の金属水酸化物絶縁皮膜を低減することを特徴とするものである。
【0044】
まず、アルカリ形燃料電池に使用するニッケル担持カーボン触媒を、つぎのようにして調製した。
【0045】
硝酸ニッケルをエタノールに溶解させた溶液をカーボン担体と混合し、蒸発乾固をして、ニッケル含有カーボン担体粉末を得た。この粉末を石英ガラス菅に入れて、水素気流中、600℃で3時間保持してニッケル担持カーボン触媒(以下、Ni/Cと略す)を得た。
【0046】
こうして得られたアルカリ形燃料電池に使用するニッケル担持カーボン触媒は、これを還元処理しない場合、水素酸化電流はほとんど流れない。すなわち、アルカリ形燃料電池のアルカリ溶液中では、ニッケル触媒電極表面は絶縁物(水酸化ニッケルなど)で被覆されるので、水素酸化電流が流れない。
【0047】
そこで、回転ディスク電極法を用いて、本発明によるニッケルアルカリ形燃料電池の活性化方法の効果を確認した。
【0048】
図2の回転ディスク電極法の装置を参照すると、グラッシーカーボン円盤よりなるディスク電極(作用極)(11)の基板上に、上記ニッケル担持カーボン触媒よりなる触媒電極層(11a)を形成した。
【0049】
そして、この回転ディスク電極(作用極)(11)を電解液(15)の入った電解槽(アクリル容器)(18)に設置し、電解液(15)には0.5M水酸化カリウム溶液を使用した。対極(12)には白金線(白金電極)を用い、塩橋(14)を介して参照極(13)には銀・塩化銀電極(以下、Ag/AgClと略す)を用いた。触媒電極層(11a)の還元処理による効果を確認するため、電解液(15)中は、溶存酸素の影響のないように、パージライン(16)より水素ガスをバブリングさせながら供給して水素雰囲気に保ち、回転速度4000rpmで、還元電流を一定(−0.3mA/cm
2)とし、還元処理時間(5〜90min)を変えた場合と、還元処理時間を一定(5min)とし、還元電流(−0.3〜−0.9mA/cm
2)を変えた場合について、水素酸化電流を測定した。水素酸化電流の測定は、触媒電極層(11a)の電位を低電位(−0.6V vs. Ag/AgCl)に保持して行った。
【0050】
図3に、ニッケル触媒電極の還元処理時間と還元電流の大きさの影響について示す。同図の結果から明らかなように、還元電流を一定(−0.3mA/cm
2)とし、還元処理時間(5〜90min)を変えた場合、処理時間が長いほど、水素酸化電流は流れやすくなり、電極活性が向上する。これはニッケル系触媒電極層(11a)の表面を被覆していた絶縁物(水酸化ニッケルなど)が還元処理によって除去されたことによるものと考えられる。
【0051】
図4に、ニッケル触媒電極の還元処理時間を一定(5min)とした場合の還元電流の大きさの影響について示す。同図の結果から明らかなように、還元電流(−0.3〜−0.9mA/cm
2)を変えた場合、還元電流の大きさに関係なく、水素酸化電流はほぼ一定であった。
【0052】
ニッケル触媒電極の電極活性は、還元電流の大きさには影響は少なく、還元処理時間が長くなるほど絶縁被膜の影響が除かれ、活性が向上することが分かった。
【0053】
このことから、アルカリ形燃料電池の電極触媒が、触媒表面への金属水酸化物絶縁皮膜の生成により不活性となったときに、触媒電極に還元処理を行うことで、電極触媒表面の金属水酸化物絶縁被膜を低減することができて、電極触媒活性が向上し、燃料電池の性能(発電性能)を回復させ得ることが明らかである。
【符号の説明】
【0054】
1:アノードセパレータ
1a:燃料流通孔
2:カソードセパレータ
2a:酸化剤ガス流通孔
3:アノードガス拡散電極(集電体)
4:カソード拡散電極(集電体)
5:アノード電極触媒層
6:カソード電極触媒層
7:固体高分子電解質膜
11:ディスク電極(作用極)
11a:触媒電極層
12:対極
13:参照極
14:塩橋
15:電解液
16:パージライン
17:ゴム栓
18:電解槽(アクリル容器)