(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原料水を電気分解し電解生成物を発生させこの電解生成物を導出口から排出させる電解槽と、この電解槽の動作を制御する制御部と、前記電解槽と連結され、この電解槽で得られた前記電解生成物を希釈水と混合し電解水とする混合部とを備えた電解水製造装置において、
前記電解槽は、この電解槽に形成された前記原料水の供給口から内部に所定量の前記原料水が予め充填され、前記供給口から新たな原料水が追加不能に閉口された状態で前記混合部に着脱自在に連結され、前記制御部は、前記予め充填された原料水を電気分解する時間を所定の単位時間毎に区切り、前記予め充填された原料水を電気分解する回数を複数回に設定するとともに、前記電解槽に前記単位時間毎に一定電流値の電流を通電することを特徴とする電解水製造装置。
前記一定電流値又は前記単位時間は、前記電解槽の電気的な接続が解除された際に変更可能とされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解水製造装置。
前記電解槽の交換時期を通知する工程が、前記電解槽に流れる電流の電圧値または電流値をモニターして、前記電解槽の交換時期を通知する工程を有する、請求項12に記載の電解水の製造方法。
前記電解槽の交換時期を通知する工程が、前記電気分解工程の回数、または前記単位時間の累計をモニターして、前記電解槽の交換時期を通知する工程を有する、請求項12記載の電解水の製造方法。
前記電解槽を交換した後の1回目の電気分解工程は、2回目以降の電気分解工程よりも単位時間を長くする、請求項11〜17のいずれか一項に記載の電解水の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<電解水製造装置>
以下、本発明の電解水製造装置の第1の実施形態について、
図1〜
図9を参照して説明する。なお、電解槽の筐体内部の詳細は、
図3〜
図6,
図24においてのみ示し、
図7,
図8、
図16〜
図20,
図22においては、同内部の詳細は省略して示している。
本発明に係る電解水製造装置は、例えば、塩化ナトリウム水溶液、塩酸水溶液等の塩素イオンを含有する原料水を電気分解し、電解酸化の作用により塩素ガス(電解生成物)を発生させ、発生した塩素ガスを水等の希釈水に溶解させて、水中に次亜塩素酸を生成させるものである。以下に説明する各実施形態においては、希塩酸を原料水として塩素ガスを生成し、塩素ガスを水道水に溶解させて次亜塩素酸を生成させる電解水製造装置を例として説明する。
【0013】
図1、
図2に示すように、電解水製造装置1Aは、原料水を電気分解し電解生成物を発生させ、この電解生成物を導出口2から排出させる電解槽3と、電解槽3で得られた電解生成物を希釈水と混合させるタンク(混合部)4と、電解槽3とタンク4とを連結させる配管5と、電解槽3を装着させる装着部6と、電解槽3の動作を制御する制御部7とを備えている。
【0014】
図3,
図4に示すように、電解槽3は、略直方体形状の筐体30と、筐体30の内部に配置された複数の電極板31,31・・と、中空孔32が形成されたスペーサ33,33・・とを備えた複極式電解槽であり、筐体30の内部に予め原料水(不図示。以下同様)が充填された状態で液密に封止されている。
筐体30は、側板34A、34Bと胴体35とを備えてなるものであり、これらは塩化ビニル樹脂、カーボネイト樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂により形成されている。
【0015】
側板34A、34Bは、所定の厚みを有する外観矩形の板状体であり、それぞれその幅方向中央部であって高さ方向中央よりやや下方に、厚さ方向に貫通する電極棒挿入孔36が形成されている。
【0016】
図5は、組み立てられた状態の電解槽3の縦断面図であり、電極棒挿入孔36の中心における断面を示している。
胴体35は、断面視長方形でスペーサ33よりも高さ寸法が大きく形成された筒状の部材であって、その一端部側に側板34Aが固定され、他端部側に側板34Bが固定されている。
【0017】
図3に示すように、電極棒挿入孔36,36が形成された側板34A,34Bに直交する胴体35の一方の側部35aには、胴体35の内孔に形成された空間Sに連通する導出口2を有する略円筒形状の突出壁部37が形成されている。側部35aには、突出壁部37を取り囲むように溝38が形成されており、その溝38内にはO(オー)リング39が配されている。
【0018】
図7(a)、(b)に示すように、導出口2には、環状に形成された突条からなる弁座27Aと、突出壁部37の基端側から弁座27Aに着座して導出口2を液密に封止する弁体27Bと弁体27Bを弁座27Aに向かって付勢させるバネ27Cとを備えた逆止弁27が設けられている。
また、
図4に示すように、側部35aに対向する側部35bには、取っ手40が設けられている。
【0019】
電極板31は、チタン合金等の金属製の板体であり、矩形(正方形)に形成されている。
各電極板31・・は、所定の間隔をおいて対向する側板34A,34B間に、それぞれ板面を側板34A,34B間方向の一方向に向けて並べて配列されており、各電極板31・・のうち、両端に配置される電極板31には、その中央部に金属製の電極棒45が固定されている。
図5に示すように、電極棒45は、一端部に頭部46が形成され、他端部外面に雄螺子部47が形成されたものであり、頭部46が電極板31の中央部に固定されている。
【0020】
図3に示すように、スペーサ33は、塩化ビニル樹脂、カーボネイト樹脂等の合成樹脂により形成された板状の部材であり、
図5,
図6に示すように、筐体30内の上部に空間S1を残して収納される高さ寸法で形成されている。スペーサ33を筐体30内に収納することにより形成される空間S1は、突出壁部37の導出口2と連通し、空間S1で収集した電解生成物を導出口2から排出できる構成となっている。
【0021】
図3,
図4に示すように、スペーサ33の中央部には、スペーサ33の板面間方向(厚さ方向)に貫通する中空孔32が形成されている。中空孔32は、その輪郭が矩形(正方形)であり、電極板31より各辺の寸法がやや小寸法となるように形成されている。
スペーサ33の一方向の板面33aには、その厚み方向に凹む段部50が形成されている。段部50は、一定の幅寸法をもって中空孔32の各辺に沿って凹んでおり、この段部50内には、
図5に示すように電極板31が嵌合されるようになっている。
【0022】
したがって、段部50各辺の外側の寸法は、電極板31の各辺より僅かに大きい寸法となっており、この段部50内に電極板31がしっくりと嵌合し、電極板31がスペーサ33の板面に沿う方向に徒に動かないようになっている。
【0023】
また、段部50の前記厚み方向の深さは、電極板31の厚みと略同一寸法とされており、電極板31が嵌合されたときに、電極板31の板面とスペーサ33の板面33aとが面一状態となるように形成されている。
【0024】
図3,
図4に示すように、スペーサ33の一方の板面33a側には、スペーサ33の対向する一対の角部近傍に嵌合凸部51,51が形成されており、他方の板面33bには、嵌合凸部51,51と対応する位置に嵌合凹部52,52が形成されている。これら嵌合凸部51、嵌合凹部52は、隣り合うスペーサ33,33同士を結合させるものであり、隣接するスペーサ33、33において、一方のスペーサ33の嵌合凹部52,52に他方のスペーサ33の嵌合凸部51,51を嵌合させることによって、各スペーサ33が相対的に位置決めされるようになっている。
【0025】
なお、複数のスペーサ33、33・・のうち、側板34Bに一番近いスペーサ33の嵌合凸部51は側板34Bに形成された不図示の嵌合凹部に嵌合されるようになっており、側板34Aに一番近いスペーサ33の嵌合凹部52には側板34Aに形成された不図示の嵌合凸部が嵌合されるようになっている。
【0026】
嵌合凸部51は、スペーサ33の板面33aから突出する円柱状の部分であり、その先端周縁部は面取りが施されている。嵌合凹部52は、嵌合凸部51がしっくりと嵌り合うように板面33bに形成された断面円形の穴である。
【0027】
図3に示すように、スペーサ33には、中空孔32の下辺の下方であって、同下辺の左右方向中央部に対応する位置に下方切欠53が形成されている。
下方切欠53は、スペーサ33の板面33a,33b間方向に貫通している。この下方切欠53と中空孔32との間は、板面33bに形成された下方流路53aによって結ばれており、後述するように下方切欠53を流動する原料水が下方流路53aを通って中空孔32内に導かれるようになっている。
下方流路53aは、下方切欠53から中空孔32へ向けて3路に分岐している。
【0028】
また、スペーサ33には、中空孔32の上辺の上方であって、同上辺の左右方向中央部に対応する位置にスペーサ33の板面33a,33b間方向に貫通する上方切欠54が形成されている。この上方切欠54と中空孔32との間も板面33bに形成された上方流路54aによって結ばれており、後述するように上方流路54aに導かれた電解生成物が上方切欠54内に進入することができるようになっている。
上方流路54aも、下方流路53aと同様の構成であり、上方切欠54から中空孔32へ向けて3路に分岐している。
【0029】
また、スペーサ33には、中空孔32の左右両側辺の両側方であって、同両側辺の上下方向中央部に対応する位置に側方切欠55,55が形成されている。
側方切欠55も、上述した下方切欠53、上方切欠54と同様にスペーサ33の板面33a,33b間方向に貫通している。この側方切欠55と中空孔32との間も板面33bに形成された側方流路55aによって結ばれている。
側方流路55aも、下方流路53a、上方流路54aと同様の構成であり、側方切欠55から中空孔32へ向けて3路に分岐している。
【0030】
上記の各構成要素からなる電解槽3は、
図5,
図6に示すように、筐体30内に電極板31、スペーサ33を配置して組み立てられている。
すなわち、電解槽3は、電極板31をスペーサ33の段部50に嵌合させ、この段部50に配された電極板31の端縁を覆うように、他のスペーサ33を当接させた状態でこれら電極板31及びスペーサ33を胴体35内に配置している。そして、胴体35の開口端を側板34A,34Bに挟み込ませて、液密に封止している。
【0031】
胴体35の側板34A,34Bによる封止は、側板34Aに一番近い電極板31に固定された電極棒45を側板34Aの電極棒挿入孔36に挿通させ、側板34Bに一番近い電極板31に固定された電極棒45を側板34Bの電極棒挿入孔36に挿通させ、各電極棒45の雄螺子部47にワッシャ48A、スプリングワッシャ48Bを介在させた状態で、ナット49を緊締することによって行っている。
【0032】
この場合、
図4に示す各スペーサ33の嵌合凸部51は、
図3に示す隣接するスペーサ33の嵌合凹部52に嵌合しており、
図5に示す側板34Bに一番近いスペーサ33の嵌合凸部51は、側板34Bの不図示の嵌合凹部に嵌合され、側板34Aに一番近いスペーサ33の嵌合凹部52には側板34Aの不図示の嵌合凸部が嵌合している。各スペーサ33は、上記の嵌合凸部51、嵌合凹部52の嵌合により互いに板面同士が密に接している。
【0033】
また、
図5に示すように、各電極板31は、スペーサ33の段部50内に嵌合しており、上記のように隣接するスペーサ33,33同士の板面が密に接していることから、各電極板31の周辺部分が隣接するスペーサ33によって自己が嵌合する段部50内に移動不能に保持されている。
なお、側板34Aに一番近い電極板31は、側板34Aの段部56内に嵌合している。
【0034】
以上の構成において、各スペーサ33の中空孔32は、隣接する2枚の電極板31によって区画され、これら電極板31,31同士が間隔をおいて配列されることにより形成された空間が原料水を電気分解する電解室Cを形成し、電解室C内に原料水が保持されている。
また、各スペーサ33の下方流路53a及び上方流路54aは、それぞれ電極板31及び隣接するスペーサ33によって覆われ、下方切欠53及び電解室C内、並びに、上方切欠54及び電解室C内をそれぞれ連通させる流体通路となっている。そして、互いに隣り合うスペーサ33,33の下方切欠53及び上方切欠54がそれぞれ連通しているため、隣り合う電解室Cは、下方流路53a及び上方流路54a並びに下方切欠53及び上方切欠54を介して互いに連通している。
【0035】
また、各スペーサ33の側方流路55aは、それぞれ電極板31及び隣接するスペーサ33によって覆われ、側方切欠55と電解室C内とを連通させる流体通路となっている。また、互いに隣り合うスペーサ33,33の側方切欠55が連通しているため、各スペーサ33の電解室Cは、側方流路55a及び側方切欠55を介して互いに連通している。
【0036】
更に、上方切欠54は、胴体35の上部の空間S1に向かって開口し、空間S1が導出口2に連通しているため、電解室Cにて生成された電解生成物は空間S1に収集された後、導出口2から導出されるようになっている。
電解槽3は、筐体30内の電解室C及び筐体30内の上部の空間S1に連通した導出口2のみにおいて開口しており、その他の箇所においては液密に封止されている。
【0037】
このようにして組み立てられた電解槽3の筐体30の内部には、その内部の空気を抜きつつ原料水を導出口2の先端から充填する専用の冶具(不図示)によって、予め所定量の原料水が充填されている。この電解槽3は、筐体30内に原料水が充填された後、装着部6に設置される前の状態において、導出口2が
図7(a),(b)に示す逆止弁27により液密に封止され、原料水の液漏れを防止できるようになっている。そして、電解槽3の装着時に逆止弁27が開弁され、通電可能状態とされたときに電解生成物が導出口2から排出可能とされ、装着部6に簡単に装着できるようになっている。
【0038】
したがって、この電解槽3によれば、業者において予め原料水を電解槽3内に充填しておき、導出口2を液密に封止して一般家庭等に流通させ、原料水の取り扱いに不慣れな一般家庭等のユーザーであっても電解槽3を簡便に保持しかつ取り扱うことができるようになっている。
【0039】
この構成において、電解槽3は、装着部6に装着した際に、突出壁部37が連結部19の嵌着部25に嵌着され、供給口が導出口2として機能するようになるとともに、新たな原料水を供給させる配管等を接続できなくなる(すなわち供給口とすることができなくなる)ため、「新たな原料水が追加不能に」となっている。
【0040】
また、上記構成でなくとも、原料水の供給口を導出口2とは別々に形成し、一旦所定量の原料水が筐体30内に充填された後は蓋部材等で供給口を閉塞するようになっていてもよい。この場合は、使用者が供給口を容易に開けられないように、鍵付きのキャップ等の開口制限手段を供給口に設けてもよい。
【0041】
あるいは、電解槽3を装着部6に装着した際には、電解槽3の表面の一部または全部が装着部6によって覆い隠されることになるが、このように、供給口を電解槽3が装着部6により覆い隠される箇所に形成することによって、電解槽3を装着部6に装着した状態で供給口が外部に露出しないように、すなわち新たな原料水を供給させる配管等と接続できなくし、「新たな原料水が追加不能に」されていてもよい。実際、
図8では、電解槽3の筐体30は、取っ手40が設けられた側部35bのみが露出しており、他の面は装着部6に覆われている。そこで、この側部35b以外の装着部6覆われている面のいずれかに原料水の供給口を設ければ、電解槽3を装着部6に装着した状態では「新たな原料水が追加不能に」なる。なお、原料水の供給口を導出口2とは別に設けた場合、導出口2を供給口からの原料水の供給時の空気抜き穴としてもよく、又は導出口2とは別に原料水の供給時にのみ開口させる空気抜き穴が設けられていてもよい。
【0042】
電解槽3内に充填された希塩酸の濃度は、所望する電解水の濃度(有効塩素濃度)、電解水の量、電気分解の回数、電流値、電圧の効率等に鑑みて所定の濃度に設定されている。
【0043】
そして、スペーサ33には、下方切欠53及び側方切欠55,55と下方流路53a,側方流路55aが形成されていることにより、電解室C,C・・間で原料水の分量が異なっていても、
図5、
図6に示すように電解槽3を適切な姿勢で静止させた際に、各電解室C内の原料水が流動し均一な水位となるようになっている。
【0044】
本実施形態では、電解槽3は、逆止弁27を有しており、装着部6に設置された際に逆止弁27が開弁されて導出口2が開口され、電極棒45を介して電極板31に通電した際に電気分解によって生成される塩素ガス(電解生成物)を導出口2から取り出せるようになっている。
【0045】
図7(a)に示すように、装着部6は、電解槽3を取り付け固定する箱型の部材である。装着部6には、電解槽3を載置させる底壁10、電解槽3を挿入方向に向かってガイドする天壁9、側壁11,11及び電解槽3を位置決めする後端壁(後端側すなわち矢印Y方向側の端壁)12とを備えている。
【0046】
図8(a)に示すように、装着部6の前端側(矢印X方向側)は電解槽3挿入のための開口部14とされている。また、側壁11,11の高さ方向中央部には、電解槽3の電極棒45,45を挿通させる挿通部13,13が電解槽3の挿入方向(矢印Y方向)に沿って形成されている。
挿通部13は、装着部6の開口部14から後端側Y方向中央部に至るまで形成されたスリットであり、中央部から開口部14近傍までは電極棒45よりも僅かに大きい一定寸法とされ、開口部14近傍で漸次上下に拡開するように切り欠かれて形成されている。
【0047】
同図(b)に示すように、挿通部13には、挿通部13を形成する側壁11の壁面(厚さ方向に貫通させた断面)11a,11bに沿って略U字状に折り曲げられた導電性のある帯状の金属製の板バネからなる端子接続部15が配され、電極棒45を挿通させた際に上下方向からこの電極棒45に当接するようになっている。また、端子接続部15の折り曲げ部には、側壁11の外方へ突出する突出片15pが形成されている。
上記した天壁9、底壁10、側壁11、挿通部13は、電解槽3を装着部6内に誘導しつつ、突出壁部37を嵌着凹部25に嵌入させるためのガイド部Gを構成している。
【0048】
天壁9の前端部とこれに対向する底壁10の前端部には前方へ突出するように係止部16A,16Bが設けられている。係止部16A,16Bは、天壁9及び底壁10の壁部にそれぞれスリット17,17が入り込んで形成され、双方の係止部16A,16B共に上下方向に弾性変形可能に形成されている。
係止部16A,16Bの下面及び上面には、天壁9の前端及び底壁10の前端近傍に爪部18,18が設けられている。
【0049】
爪部18は、後端側Y方向に向かって漸次傾斜する傾斜面と鉛直面を有し、電解槽3の挿入時に係止部16A,16Bを漸次拡開させてその挿入を許し、電解槽3の挿入が完了した時点で弾性復帰して電解槽3に係止し、この電解槽3の離脱を防止して固定するようになっている。なお、この係止部16A,16Bは、天壁9又は底壁10のいずれか一方に形成されたものであってもよい。
【0050】
図7(a)に示すように、装着部6の後端壁12の上端部には、後端側Y方向に突出した連結部19が形成されている。連結部19は、配管5との接続部5Tに向かって開口した貫通孔20を有している。接続部5Tは、配管5と貫通孔20とを気密状態で嵌合させるようになっている。
連結部19の内部には、連結部19の突出方向に凹み、電解槽3の突出壁部37を嵌着させる嵌着部25が形成されている。嵌着部25には、矢印X方向に突出する接続管28が突設されている。接続管28の貫通孔26の基端側は、貫通孔20に連通し、接続管28の貫通孔26の先端側は開口している。また、接続管28の先端開口部を形成する周壁には矢印X−Y方向に切り欠かれた切欠28aが形成されている。
【0051】
以上の構成の下に、装着部6は、電解槽3が開口部14から装着部6内に挿入された(すなわち、電解槽3を連結部19に対し相対的に移動させた)際に、天壁9、側壁11,11及び側壁11,11の挿入部13,13によって電解槽3をガイドし、突出壁部37を嵌着部25に挿入させるようになっている。そして、装着部6は、突出壁部37を嵌着部25に挿入させた際に、接続管28を逆止弁27の弁体27Bに当接させ、接続管28によって弁体27Bを導出口2の基端側(矢印X方向)に向けて相対的に押し込み、接続管28の切欠28aを介して導出口2と接続管28の貫通孔26ひいては貫通孔20とを連通させるようになっている。
また、電解槽3を装着部6から引き出す(すなわち、電解槽3を連結部19に対し相対的に移動させた)際には、天壁9、側壁11,11及び側壁11,11の挿入部13,13が電解槽3をガイドして、突出壁部37を嵌着部25から矢印X方向に引き抜き、弁体27Bから接続管28が離れることによって弁体27Bが弁座27Aに再び付勢して閉弁し、導出口2と貫通孔20,26との連通を解除するようになっている。
【0052】
なお、電解槽3には、導出口2を液密に封入する封止部材を備えることが好ましく、このような封止部材によって電解槽3内の原料水が導出口2から液漏れすることを防止することができる。前記の逆止弁27は、このような封止部材の一例である。
封止部材の他の例としては、導出口2を覆う膜状のシール材を例示することができる。このようなシール材を導出口2を覆うように導出口2に冠着すれば、シール材によって導出口2からの原料水の液漏れを防止することができる。電解槽3を装着部6に装着する際には、電解槽3を装着部6の開口部14に挿入するとともに導出口2を覆うシール材に接続管28を当接させ、電解槽3をそのまま装着部6に挿入していくことにより接続管28を導出口2の基端側(矢印X方向)に向けて相対的に押し込み、接続管28の先端によってシール材を破断する。接続管28がシール材を破断すれば、接続管28を介して導出口2と貫通孔20とが連通する。
【0053】
なお、封止部材としてシール材を使用する場合には、電解槽3の導出口2は上向に開口する形態であれば好ましい。すなわち、
図6においては電解槽3の導出口2は、横方向に開口しているが、この導出口2を電解槽3の筐体30の上壁部に設け、電解槽3の上方向に向けて開口するように構成する。一方で、装着部6は、開口部14が下を向くように構成する。これによって電解槽3を上方向に移動させて装着部6の開口部14に挿入して装着し、下方向に移動させて装着部6より離間させる。このような形態であれば電解槽3を取り外す際に導出口2から内部の液がこぼれ難くなるという効果が得られる。なお、後述する第1の実施形態の変形例7や変形例8(
図20〜
図23参照)のように、導出口2が上方向に開口していれば、シール部材を好適に用いることができる。
【0054】
次に、電解水製造装置1Aの他の構成について説明する。
図1に示すように、希釈水Wを貯留するタンク4は、電解水の製造時に希釈水Wを貯留させ、電解生成物を混合及び保持させる容器であり、タンク4の設置部4Jに着脱自在に設置されている。設置部4Jの下部には、配管5を通じて塩素ガス(電解生成物)を導入させる導入口8が設けられている。タンク4内には、ポンプ57が設けられており、希釈水と電解生成物とを撹拌、混合できるようになっている。
タンク4は、例えば
図2に示すように、PET等の樹脂製ボトルで、電解水の製造後に設置部4Jから取り外して持ち運べるように構成されている。
【0055】
配管5は、その一端がタンク4の導入口8に着脱自在に接続され、他端が装着部6に固定されるものであり、硬質の樹脂管又は金属管からなるものであっても樹脂製又は金属製のフレキシブル管であってもよい。なお、配管5は、硬質の樹脂管又は樹脂製のフレキシブル管が好ましい。
【0056】
制御部7は、
図1に示すように、定電流装置41及びタイマー42を有している。これらの定電流装置41及びタイマー42等は別々の部材を組み合わせて結線して構成してもよいが、シーケンサーやコンピュータ等にこれらの機能をまとめて一体に構成してもよい。ただし、定電流装置41及びタイマー42を別部材で構成して、必要であればランプ等の表示手段43aを追加して、できるだけ簡単な部品で構成するとメンテナンス等の面で好ましいといえる。
【0057】
図9に示すように、電解槽3は制御部7を介して電源Pと接続されている。すなわち、電源Pにスイッチ(電源スイッチ)Qを介してタイマー42が接続され、タイマー42の出力側に定電流装置41が接続され、定電流装置41の出力側に電解槽3が接続されている。また、ポンプ57は、スイッチQを介して電源Pに直接接続されている。
タイマー42は、電源スイッチQがONにされ、定電流装置41を介して電解槽3に電力が供給され始めてから、予め設定された所定の単位時間(すなわち連続して通電される1回の電気分解の時間)を測定し、所定の単位時間が経過した時に通電を自動停止するようになっている。
【0058】
また、定電流装置41は、電源Pからの電流を直流電流にし、電流値が一定となるように制御して電解槽3に通電するようになっている。なお、電流値は電解槽3と定電流装置41との間に設けられた電流計Aによってモニターされる。
本発明において、「電解槽3に一定電流値の電流(定電流ともいう。)を通電する」とは、電解槽3に流れる電流値が、予め設定された値(定電流値ともいう。)に保持されるように、電解槽3に印加される電圧(電解電圧ともいう。)を制御しながら通電することを意味する。本実施形態において、電流計Aによって測定される値が、電解槽3に流れる電流値である。
【0059】
図9においては、タイマー42にカウンター43の機能を兼用させることによって、単位時間毎に区切って電解槽3が通電された回数(回分数ということもある)を、タイマー42が作動した回数としてカウンター43の機能によってカウントし、所定の回数に達した時点で電解槽3の交換時期と判断する態様にすることができる。
または、電解槽3と定電流装置41との間に設けられた電流計Aにカウンター43の機能を兼用させることによって、単位時間毎に区切って通電される電流が、電解槽3に何回流れたかをカウントし、所定の回数に達した時点で電解槽3の交換時期と判断する態様にすることもできる。
【0060】
ここで、通電を1回行って原料水を電気分解したときに発生する電解生成物の量は、定電流の電流値と単位時間の積で表される電気量と相関する。したがって、得ようとする電解水の濃度(有効塩素濃度)及び電解水の容量に応じて必要な電解生成物(塩素ガス)の量を算定し、この量を生成するのに必要な電気量に基づいて、定電流の電流値及び単位時間を設定することができる。
そのために、定電流装置41とタイマー42は、それぞれ電流値と単位時間の長さを所望の値に設定することができ、また必要に応じて変更できるようになっている。
【0061】
具体的に説明すると、例えば3L(リットル)の水(希釈水)を有効塩素濃度20ppmの次亜塩素酸水(電解水)にするには、次のようにして必要な電気量を算定することができ、その結果によって電流値と単位時間を設定することができる。
すなわち、ファラデーの法則より、電気分解において電解槽3内を移動した電気量C(単位:クーロン)は、電流I(単位:アンペア)を流した時間をt(単位:秒)とすると、C=I・tである。1価イオンの1モルを分解するのに要する電気量(電子1molの電気量(電荷))はファラデー定数で表され、約96500クーロンである。
【0062】
希塩酸を充填した電解槽3に1アンペアの電流が1秒通電されたときの電気量は1クーロンとなり、1クーロンの電気量で得られる塩素(Cl)の量は、35.5(塩素ガス(Cl
2)の2分の1の分子量)×1/ファラデー定数=約0.368mgとなる。
したがって、3L(リットル)の水を有効塩素濃度20ppmの電解水にするには、20×3/0.368=163となり、約163クーロンの電気量が必要ということになる。C=I・tであるため、制御部7においては、上記のとおり必要な電気量Cを算定し、電極板31の枚数及び電流効率を勘案して、通電する定電流の電流値(I)及び単位時間(t)を設定することができる。電流効率とは、電解槽3に流れた電流のうち、目的とする電極反応に利用された分を百分率で表わしたもので、陽極側で実際に発生した塩素量と、塩素の理論発生量の比で定義される。電流効率は実測値に基づく値であり、同一構成の電解槽3(電極板)においては同一の値となる。
【0063】
また、1回の通電で原料水に流れる電気量から、1回の通電で消費される塩素量がわかるため、1回目の通電開始前の電解槽3内の原料水の塩素濃度と、該1回の通電で消費される塩素量とから、該電解槽3に通電できる最大回数を決定することができる。
【0064】
従来のバッチ式電解槽において、印加電圧を一定として電気分解を行う定電圧電気分解における塩素ガスの発生量は、時間の経過とともに減少することがわかっているが、電解槽3に流れる電流値が一定となるように電圧を印加して電気分解を行う定電流電気分解の場合については知られていなかった。
そこで本発明者等は、定電流電気分解における塩素発生量の経時変化を調べるために、下記試験例1〜3を行った。
【0065】
試験例1〜3においては、所定量の希塩酸(原料水)が封入された電解槽3に、電源として直流安定化電源(菊水電子工業社製、製品名:PAS60−6)を用いて、定電流を通電して電気分解し、発生した塩素ガスを毎分4リットルの流量で流れる水(希釈水)中に連続的に供給混合して電解水を製造した。通電を開始してから最初の1分間は15秒ごとに電解水を100mL採取し、その後は1分毎に電解水を100mL採取して有効塩素濃度を調べた。
【0066】
有効塩素濃度の測定は、塩素計(柴田化学社製、製品名:ハンディ水質計AQ−102)を用い、以下の手順で行った。まず、サンプルセルに、電解水のサンプルを10mL採取する。次いで、計測のセルホルダーにサンプルセルをセットし、ゼロ点調整を行う。次に、サンプルセルを取り出して発色試薬(市販品)を入れて混合する。計測のセルホルダーにサンプルセルをセットし、濃度を測定する。
【0067】
<試験例1>
本例で用いた電解槽3は、電極板31の板面寸法が50mm×50mmであり、電極板31,31間距離が3mm、セル数が9、電流効率は50%である。電解槽内の希塩酸(原料水)の量は52ml、該希塩酸(原料水)の通電開始前の塩酸濃度は6質量%、定電流値は1.0Aとした。
通電を開始してからの時間経過と定電流の電圧(電解電圧)との関係並びに時間経過と有効塩素濃度との関係を
図10に示す。
【0068】
この図に示すように、通電の開始直後の、原料水中の塩酸濃度が高い状態では、電流が通りやすいため電解電圧が12.5Vと低く、有効塩素濃度は20ppm以下と低い。その後、電解電圧は徐々に上昇し、有効塩素濃度は電気分解の初期において急に上昇する。そして、原料水中の塩酸がある程度消費されるまで電圧の変化が少なく、塩素ガスは一定の範囲内で生成される。そして有効塩素濃度がピークに達した後、塩酸(反応成分)の不足に伴って有効塩素濃度が急激に下降する。
【0069】
この場合の電解電圧と有効塩素濃度との関係を
図11に示す。この図に示されるように、有効塩素濃度は、電解電圧が17V〜18V付近で最大値を示し、それよりも電解電圧が大きい範囲では、電解電圧の増大に伴って有効塩素濃度が低下する。有効塩素濃度の最大値(43ppm)からその70%以上(43ppm〜30ppm)が得られる電圧の範囲は約13〜24V(極間電圧:約1.44V〜2.66V)程度であり、有効塩素濃度の最大値からその80%以上(43ppm〜34ppm)が得られる電圧の範囲は約14〜22V(極間電圧:約1.56V〜2.44V)程度である。したがって、電解電圧が13V〜24Vの範囲であると塩素ガス(電解生成物)が効率良く生成し、14V〜22Vの範囲であると、塩素ガス(電解生成物)が効率良く生成するとともに有効塩素濃度の経時変動がより小さい。
【0070】
<試験例2>
試験例1において、希塩酸(原料水)の通電開始前の塩酸濃度を0.75〜21質量%、定電流値を1.5Aに変更した。
図12は、通電開始前の原料水(希塩酸)の塩酸濃度が異なる場合の時間経過と電解電圧との関係を示したものである。
【0071】
この図によれば、塩酸濃度が0.75〜21質量%のいずれであっても、上記塩素ガス(電解生成物)が効率良く生成するのに好ましい電解電圧(約13V〜24V)が得られることが分かる。また好ましい電解電圧(約13V〜24V、極間電圧1.44V〜2.66V)が得られる時間が長い点では、塩酸濃度は1.5質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましい。一方、塩酸濃度が高すぎると、通電直後の電圧が低くて塩素ガスの生成効率が低く、上記好ましい電解電圧に達するまでの時間が長いため、塩酸濃度は9質量%以下がより好ましい。
【0072】
<試験例3>
本例で用いた電解槽3は、電極板31の板面寸法を50mm×50mmとし、電極板31,31間距離を3mm,6mm,9mm,または12mmとし、3つの電解室Cを設けた。電流効率は50%である。電解槽3内の希塩酸(原料水)の量はそれぞれ17ml,35ml,52ml,70ml、該希塩酸(原料水)の通電開始前の塩酸濃度は9質量%、定電流値は2.5Aとした。
図13は、電極板31,31間の距離が異なる場合の時間経過と電解電圧との関係を示したものである。
【0073】
この図によれば、電極板31,31間の距離が小さいほど、電解電圧の経時上昇が大きく、好ましい電解電圧に達するまでの時間が短い。
したがって、隣接する電極板どうしの距離を変更することによって、塩素ガスが効率良く生成する電解電圧に達するまでの時間を調整することができる。
【0074】
以上の構成を有する電解水製造装置1Aにおいて、電解槽3を装着部6に装着する場合には、
図7(a)、
図8(a)に示すように、筐体30内に予め希塩酸を封入させた電解槽3の取っ手40を持ち、突出壁部37を装着部6内の後端壁12に対向させて挿入する。そうすると、
図8(a)に示すように、電解槽3の筐体30の上壁部と下壁部とがそれぞれ係止部16A,16Bの爪部18,18に当接して係止部16A,16Bを上下に弾性変形させて拡開させ、電解槽3の挿入を許す。電解槽3は、装着部6の天壁9、底壁10及び両側壁11,11にガイドされつつ装着部6の後端壁12に向かって真っ直ぐに挿入される。
この際、電極棒45,45は、挿通部13,13に進入して端子接続部15,15に摺接しながら矢印Y方向に進行する。
【0075】
電解槽3が装着部6の後端壁12に当接すると、
図7(a)に示すようにO(オー)リング39が後端壁12の内面に密に当接するとともに、電解槽3の突出壁部37が嵌着部25に嵌着する。そして、接続管28により逆止弁27が開弁し、切欠28aを介して貫通孔20,26と導出口2とが連通し、電解槽3の内部の塩素ガスよりなる電解生成物が導出可能となる。また、突出壁部37が嵌着部25に嵌着することにより、導出口2が原料水を充填する供給口として封じられ、「新たな原料水が追加不能」な状態となる。一方、係止部16A,16Bは、電解槽3の突出壁部37が嵌着部25に嵌着して貫通孔20,26と導出口2とが気密状態で連通した際に、電解槽3の全体が装着部6内に収納されて爪部18が電解槽3の上壁部及び下壁部を乗り越えて弾性復帰し、爪部18が電解槽3の前端面に係合してこの電解槽3を係止する。
【0076】
<電解水の製造方法>
次に、電解水製造装置1Aを用いて電解水を製造する方法の実施形態について説明する。
まず
図5に示す電解槽3を用意する。具体的には、電解槽3に所定量の原料水(所定濃度の希塩酸)を充填して封止する。
電解水製造装置1Aを運転するには、
図8(a)に示すように電解槽3を装着部6に装着させて、同図(b)に示すように、電解槽3の電極棒45,45を端子接続部15,15に接続し、通電可能状態とする(電解槽装着工程)。
【0077】
また、
図1に示すようにタンク4に所定量の希釈水Wを充填して設置部4Jに設置する。
そして、電解槽3に一定電流値の電流(定電流)を、予め設定された単位時間だけ通電させて原料水(希塩酸)の電気分解を行う(電気分解工程)。1回の単位時間(1回あたりの通電時間)は、電解槽3内の原料水(希塩酸)中の反応成分の一部が消費される時間とし、該電解槽3に原料水を追加供給することなく、電気分解工程を複数回行う。
【0078】
本実施形態において、電気分解工程を複数回行う際の1回あたりの通電時間(単位時間)は一定とし、電気分解工程の回数をモニターする。この際、タイマー42がカウンター43の機能を有する。
すなわち、
図1、
図9に示すように、まず、制御部7の定電流装置41の電流値及びタイマー42の単位時間を設定して電源スイッチQを入れ、電解槽3に定電流を通電する。すると、タイマー42(カウンター43)が作動し1回目の通電をカウントする。
【0079】
タイマー42は、通電されることにより単位時間の計測を開始するとともに、定電流装置41に電力を供給し、定電流装置41から一定電流値の直流電流を電解槽3に通電する。電解槽3の電極棒45,45を介して電極板31,31・・に電流が流れると、予め筐体30内に封入された希塩酸が電気分解され、塩素ガス(電解生成物)が発生する。この電解生成物は、
図5に示す各電解室Cの上方に流動し、電解槽3内の空気を空間S1及び導出口2に押し出しながら充満していく。
【0080】
そして、電解槽3内の気体は、さらに生成される塩素ガス(電解生成物)によってスペーサ33,33・・間に形成された上方流路54aおよび導出口2に向けて押し出され、装着部6の連結部19に形成された貫通孔26及び貫通孔20を通って配管5に流動する。
こうして、電解槽3内で発生した電解生成物は、配管5を介して電解槽3と連結されたタンク4内に取り込まれ、ポンプ57によってタンク4内の希釈水Wに攪拌、混合されて溶解し、電解水となる(混合工程)。
定電流装置41の電源を入れてから所定の単位時間が経過すると、タイマー42によって定電流装置41の電源が自動的に切られる。電源が切られた後、タンク4を取り外し、タンク4内の電解水を所望の用途に使用する。
【0081】
そして、新たな所定量の希釈水Wが充填されたタンク4を設置部4Jに設置して、同様にして電気分解工程および混合工程を行うことにより、2回目の電解水の製造を行うことができる。
すなわち、所定量の希釈水Wが充填されたタンク4を設置部4Jに設置し、再び定電流装置41の電源を入れると、上記と同様にポンプ57、タイマー42(カウンター43)が作動し、所定の単位時間だけ、前回と同じ電流値の直流電流が電解槽3に通電され、電解生成物が発生する(電気分解工程)。生成された電解生成物は、1回目の電気分解で充満していた電解生成物と共に電解槽3内に充満し、次々に生成される電解生成物によってスペーサ33,33・・間に形成された上方流路54a、導出口2に向けて押し出され、
図7(a)に示す装着部6の連結部19に形成された貫通孔26及び貫通孔20を通って配管5に流動する。
【0082】
こうして、電解槽3内で発生した電解生成物は、配管5を介して電解槽3と連結されたタンク4内に取り込まれ、ポンプ57によってタンク4内の希釈水Wに攪拌、混合されて溶解し、電解水となる(混合工程)。
さらに、タンク4を、新たな所定量の希釈水Wが充填されたタンク4に交換して(希釈水の交換)、電気分解工程、および混合工程を繰り返すことにより、電解槽3を交換せずに、すなわち原料水を追加供給することなく、電解水の製造を繰り返し行うことができる。
【0083】
ここで、電解槽装着工程において電解槽3を装着した後、初めて電気分解を行う際には、電解槽3内の空間S1及び導出口2に存在する気体は電解生成物ではなく通常の空気である。したがって、1回目の単位時間では、電解槽3からタンク4へ空気のみが供給され、タンク4内の希釈水Wは電解水になっていない場合がある。または、1回目の単位時間では、電解槽3からタンク4へ、該空気と電解生成物が供給され、濃度(有効塩素濃度)が所望の値より低い電解水となっている。したがって、かかる場合は、1回目の単位時間が経過して定電流装置41の電源がタイマー42によって切断された後に、タンク4を取り外してその希釈水Wまたは低濃度の電解水を廃棄する方法を採ることができる。または、1回目の単位時間終了後に希釈水Wを交換せずに、さらに1回以上の単位時間の通電を追加的に行う方法で、単位時間の開始直後にタンク4へ電解生成物が供給されるようになるまで複数回連続して運転をする、などの対策をとってもよい。
何回目の単位時間で所望濃度の電解水が得られるようになるかは、予め、実際の製造時と同条件で、電解水の濃度(有効塩素濃度)を測定しながら、試験的に電気分解を行うことで知ることができる。
【0084】
なお本実施形態では毎回の単位時間が一定であるが、必ずしも一定でなくてもよい。例えば、新しい電解槽3を装着した直後の、1回目の電気分解工程は、2回目以降の電気分解よりも、通電時間を長くすることによって、1回目の電気分解工程から所望の濃度の電解水が得られるようにすることもできる。
【0085】
[電解槽の交換時期の通知]
上記の要領で、単位時間の電気分解を繰り返すと、電解槽3に予め充填された原料水中の反応成分は漸次消耗していくので、電解槽3の交換が必要となる。したがって、電解水を繰り返し製造する工程の後に、電解槽3の交換時期を通知する工程を有することが好ましい。
電解槽3の交換時期は、例えば、電気分解工程の回数または単位時間(通電時間)の累計をモニターする方法で検知することができる。好ましくは以下のようにして検知することができる。
【0086】
すなわち、上述したように電気分解反応においては、原料水に通電された電気量1クーロン当たり1モルの塩素(Cl)が消費されて、1/2モルの塩素ガス(Cl
2)が生成される。したがって、通電開始前の原料水中に存在するClの量と、単位時間に原料水に流れる電気量とから、電解槽3を交換せずに行うことができる電気分解工程の最大回数を求めることができる。
単位時間に原料水に流れる電気量は、電解槽3の構成(電解槽3の構造、原料水(希塩酸)の量および濃度)が一定であれば、電解槽3に通電される電流値(定電流値)と通電時間の一方または両方が変更されることよって変わる。
【0087】
電解槽3の構造、原料水(希塩酸)の量および濃度が決まっているとき、1回の単位時間の電気分解で得ようとする電解水の量および濃度(有効塩素濃度)に応じて、1回の電気分解工程で通電される電流値(定電流値)と通電時間(単位時間)が設定されると、該設定値に応じて電気分解工程の最大回数が算出される。該最大回数以下の範囲で、電解槽3の交換時期までの電気分解工程の回数(N)を設定する。または、該電流値と通電時間の設定値に応じて、電気分解工程の最大回数に相当する通電時間の累計の最大値が算出される。該通電時間の累計の最大値以下の範囲で、電解槽3の交換時期までの電気分解工程の通電時間の累計(T)を設定する。
【0088】
そして、制御部7において、電気分解工程の回数または通電時間の累計をモニターし、前記電気分解工程の回数が前記(N)に達したことを検知したら、または通電時間の累計が前記(T)に達したことを検知したら、表示用のランプを点灯させるなどして、使用者に電解槽3の交換時期に達したことを通知する。
【0089】
電解水製造装置1Aは、電解槽3の構成、電気分解工程における電流値(定電流値)および通電時間(単位時間)が予め決められていて変更できない構成でもよく、これらを変更できるように構成されていてもよい。
電気分解工程における電流値(定電流値)と単位時間の一方または両方を変更して設定可能に構成されている場合は、該電流値または単位時間が変更されると、変更後の設定値に応じて、電解槽3の交換時期までの、電気分解工程の回数(N)または通電時間の累計(T)が新たに設定されるように構成される。
【0090】
電解槽3の容量と希塩酸(原料水)の濃度によって、電解槽3を交換せずに得られる塩素ガス(電解生成物)の総生成量(電気分解工程の最大回数)が決まる。
したがって、電解槽3の構成が変更されて、原料水の量と濃度の一方または両方が変更されたときは、変更後の値に応じて、電解槽3の交換時期までの、電気分解工程の回数(N)または通電時間の累計(T)が新たに設定されるように構成される。
また、電解槽3内の電極板の枚数によって電解効率が変化する。したがって、得ようとする電解水の有効塩素濃度が一定であれば、電解槽3内の電極板の枚数を変更することによって、該有効塩素濃度を得るための電解時間(単位時間)を変えることができる。
【0091】
または、電解槽3の交換時期を、電解槽3に通電される定電流の電圧値または電流値をモニターする方法で検知することもできる。
すなわち、単位時間の電気分解を繰り返して原料水中に存在する反応成分の量が少なくなると、電流は流れ難くなり、定電流の電圧値が上昇する。したがって電解槽3に流れる定電流の電圧値が予め設定されたしきい値より高くなったことを検知したら、または電流値が予め設定されたしきい値より低くなったことを検知したら、表示用のランプを点灯させるなどして、使用者に電解槽3の交換時期に達したことを通知する。該電圧値のしきい値は、例えば上記試験例1の結果に基づけば、極間電圧が2.7V以上が好ましく、2.4V以上がより好ましい。
なお、電解槽の交換時期を適知する手段・方法としては、以上述べてきたもののほか、生成する電解水の有効塩素濃度やpH等を測定するまたは検知するなどの手段・方法を採用することもできる。
【0092】
電解槽3の交換は、装着部6の係止部16A,16Bを拡開させて係止を解除し、電解槽3の取っ手40を把持して電解槽3を装着部6から引き出し、原料水(希塩酸)が充填された新しい電解槽3と交換し、装着部6に装着させて配管5を介してタンク4と連結することにより、再度電解水を製造することが可能となる。
【0093】
このように、本実施形態によれば、電解槽3内の原料水の全量を一度に連続して電気分解して電解水を製造するのではなく、電解槽3に定電流を所定の単位時間に区切って複数回数通電することによって、原料水を追加供給することなく、所定量の電解水の製造を繰り返し行うことができる。したがって、電解水の1回の使用量が少ない一般家庭等においても、所望の量の電解水を、電解槽3を逐一交換することなく繰り返し製造できるという効果が得られる。
【0094】
また、予め原料水が充填された状態の電解槽3が装着部6に着脱自在であり、所定回数電気分解した後に新しい原料水が充填された電解槽3に、容易に交換することができる。
【0095】
また、タンク4が着脱自在となっているため、電解水の製造後にタンク4を設置部4Jから取り外して自由に持ち運んで利用することができる。また、所望の形状及び容量を有するタンク4を設置部4Jに設置ないし接続して、このタンク4に電解水を直接製造し貯留することができる。
また、封入された希塩酸の濃度又は容量が異なる電解槽3を選択して装着部6に装着することにより、電解槽3で製造できる電解水の濃度、製造回数等を容易に変更することができる。したがって、家庭等での電解水製造装置の使用が格段に便宜的となるという効果が得られる。
【0096】
また、本実施形態の電解水製造装置1Aによれば、電解槽3が着脱自在に設置される構成であるが、電解槽3に予め希塩酸が封入され、電解槽3と希塩酸の供給部との接続が不要となることから、電解槽3の着脱時に、電解槽3と装着部6との接続箇所を最小限に抑えられる。
【0097】
また、導出口2において封止部材として逆止弁27が設けられており、電解槽3を装着部6に装着したときにのみ導出口2を開口させるようになっている。したがって、ユーザーが電解槽3から原料水が液漏れすることを懸念することなく、また導出口2が開口する方向に関係なく、容易に電解槽3を取り扱うことができるという効果が得られる。
【0098】
また、装着部6の天壁9、底壁10および側壁11,11及び挿通部13,13が電解槽3を挿入する際のガイドGとなるため、電解槽3を適切な姿勢にして、容易に電解槽3の突出壁部37を装着部6の嵌着部25に正対させて挿入することができる。したがって、電解槽3の突出壁部37又は装着部6に形成された嵌着部25の損傷を回避することができるという効果が得られる。
【0099】
また、
図7(a),(b)、
図8(a)に示すように、電解槽3の側部35aが装着部6の後端壁12の内面に当接した際に電解槽3の突出壁部37が嵌着部25に確実に嵌着するようになっており、更にこの時点で装着部6の前端に設けられた上下の係止部16A,16Bが電解槽3に係止するようになっている。したがって、装着部6は、電解槽3を確実に装着しかつ固定することができるという効果が得られる。また、係止部16A,16Bが上下に弾性変形可能となっており、電解槽3の挿入時には弾性変形して拡開し、装入完了時に弾性復帰して電解槽3に係止する構成となっているため、電解槽3が確実に装着されたことをユーザーが確認しやすいという効果が得られる。
【0100】
また、端子接続部15が挿通部13に配されており、電解槽3の装着部6への装着において、電極棒45,45が挿通部13,13に挿通され電極棒45と端子接続部15とが接続されるようになっている。したがって、電解槽3の着脱において電極棒45と端子接続部15との別途の接続作業を省略することができる。
このように、電解水製造装置1Aによれば、電解槽3を係止部16A,16Bが係止するまで装着部6に挿入するだけで、ワンタッチで必要な接続、すなわち、電解槽3とタンク4に接続された配管5との接続及び電極棒45と端子接続部15との電気的接続を行うことができるという効果が得られる。
【0101】
<変形例>
次に、上記第1の実施形態の変形例1〜9について説明する。これらの変形例の説明においては、前述した第1の実施形態の電解水製造装置1Aと異なる点についてのみ説明し、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
図14に示すように、変形例1においては、電解槽3を装着部6aに挿入完了し所定の設置位置に配置した際の電解槽3の係止及び固定方法において第1の実施形態の電解水製造装置1Aと異なっている。
【0102】
本変形例1の係止部は、
図8(a)に示す係止部16A,16Bの代わりに、装着部6aの天壁9と底壁10との間に跨って配置されるスライド蓋60とされ、電解槽3を装着部6a内に保持固定するようになっている。また、電解槽3として、
図4に示す取っ手40を有しないものが用いられる。
【0103】
スライド蓋60は、天壁9の上面に当接する上壁部61と上壁部61に対して垂直に折曲し、底壁10まで延在する側壁部62と、側壁部62に対して垂直に折曲し上壁部61に対向する下壁部63を備えている。上壁部61及び下壁部63の先端部はそれぞれ互いに対向する方向に折曲する係合爪61a,63aを備えている。
【0104】
一方、装着部6aの天壁9の上面と底壁10の下面とには、スライド蓋60を装着部6aの前後XY方向に直交する方向にスライドさせて側壁部62を天壁9及び底壁10の前端に当接させた際に、係合爪61a,63aを挿通させる溝64,64が形成されている。
以上の構成の下に、本変形例1においては、電解槽3を装着部6aに装着した後に、スライド蓋60を装着部6aの開口部14に嵌着させて電解槽3を装着部6aに容易かつ確実に固定することができる。
【0105】
次に、第1の実施形態の電解水製造装置1Aの変形例2について説明する。
図15に示すように、変形例2においては、電解槽3を装着部6b内の所定の設置位置に配置した際に電解槽3を係止及び固定する方法において第1の実施形態の電解水製造装置1Aと異なっている。
【0106】
変形例2の係止部は、底壁10の前端部近傍を軸として回動可能とされた回動蓋70とされ、電解槽3を装着部6b内に保持固定している。
この回動蓋70は、軸受部71と、この軸受部71を支点として回動し開口部14の上下方向に跨って電解槽3を保持する保持固定部72と、装着部6bの天壁9に係止して回動蓋70自体を固定する係止爪部73とを有している。
【0107】
軸受部71は、底壁10の前端下面近傍に固定されており、底壁10に支持された軸体74を中心として回動可能とされている。
保持固定部72は、電解槽3の取っ手40を間に挟んで開口部14の上下方向に跨る帯状に形成された平板の板状体であり、電解槽3に当接してこれを装着部6b内に保持固定するようになっている。
係止爪部73は、回動蓋70が開口部14を閉じた状態において保持固定部72の端部から前方X方向に延出した後、U字状に折曲して後方Y方向に延在しており、Y方向に延在している平板部73aの下面に天壁9に係止可能な爪部73bを有している。
一方、装着部6bの天壁9の前端側には、係止爪部73を上方に位置させた際に係止爪部73bを係止させるための孔部9tが形成されている。
【0108】
この構成の下に、変形例2においては、電解槽3を装着部6bに挿入する際には、回動蓋70を電解槽3の下方に向けて開口部14を開口させておき、電解槽3の装着部6bへの装着後に、軸受部71を支点として保持固定部72及び係止爪部73を回動させて上方に持ち上げ、天壁9の孔部9tの前端縁に係止させる。この操作によって電解槽3を装着部6bに容易かつ確実に固定することができる。
【0109】
次に、第1の実施形態の電解水製造装置1Aの変形例3について説明する。
図16(a)、(b)に示すように、変形例3においては、電解槽3を装着部6c内の所定の設置位置に配置した際に電解槽3を係止及び固定する方法において第1の実施形態の電解水製造装置1Aと異なっている。
【0110】
図16(a)に示すように、変形例3の係止部は、装着部6cに設けられたフランジ80の開口部81に螺合可能な円板形状の蓋82とされ、電解槽3を装着部6c内に保持固定している。
装着部6cの前端部は、装着部6cの天壁9,底壁10及び両側壁11,11が外方に張り出したフランジ80となっている。フランジ80の内側は電解槽3をその挿入方向に内包し得る大きさの円形の開口部81とされており、矢印X方向に向かって小径孔83と大径孔84とが形成されている。大径孔84の周面には、雌螺子部85が形成されている。
【0111】
フランジ80の開口部81には、円板状の蓋82が螺入され、装着部6c内に電解槽3を装着した際に、電解槽3を装着部6c内に固定できるようになっている。
蓋82は、大径部86と小径部87とにより構成されている。大径部86の外周面には雄螺子部88が形成され、小径部87の外周面には溝89が形成され、この溝89にOリング90が装着されている。
【0112】
また、
図16(b)に示すように、蓋82の外側の板面82aには、円形の凹部91とこの凹部91の中心を通る直線状の把持部92が形成されている。また、蓋82の内側の板面82bには、凹所93が形成されており、蓋82を開口部81に螺入しているときは電解槽3の取っ手40が板面82bに当接して摩擦・磨耗するのを回避し、螺入が完了する時点で凹所93が取っ手40に当接して電解槽3を固定できるようになっている。
【0113】
次に、第1の実施形態の電解水製造装置1Aの変形例4について説明する。
図17に示すように、変形例4においては、装着部6dに設けられた端子接続部100と電解槽3に設けられた端子104において第1の実施形態の電解水製造装置1Aと異なっている。
【0114】
変形例4の端子接続部100は、装着部6dの天壁9に前後X−Y方向に形成された溝101内に延在するように配置されている。この端子接続部100は後端部102が上方に突出するように略垂直に折曲されており、前端部103が斜め前方へ向けて上方に折曲されたものであり、溝101の天面101aに嵌着されている。
【0115】
一方、電解槽3の上面には図示しない電極棒からリード線を介して電気的に接続された端子104が突出している。端子104はバネ性を有する金属製の板材により形成されたものであって、中央部が上方へ膨出するように折り曲げられたものである。端子104は、電解槽3が装着部6dに挿入された際に端子接続部100に摺接して電気的導通がとれるようになっている。
【0116】
端子接続部100と端子104を上記の構成とすることにより、電解槽3の装着部6dへの挿入と同時に適確に電解槽3と
図1に示す制御部7との電気的導通を図ることができ、不図示の電極棒と制御部7との間で配線等を接続する手間が省けるという効果が得られる。
なお、端子接続部100と端子104は、底壁10側又は側壁11側に上記と同様の要領で設けた場合であっても、同様の効果が得られる。
【0117】
次に、第1の実施形態の電解水製造装置1Aの変形例5について説明する。
図18(a)、(b)に示すように、変形例5においては、装着部6eに設けられた端子接続部110と電解槽3に設けられた端子114において第1の実施形態の電解水製造装置1Aと異なっている。
【0118】
変形例5の端子接続部110は、帯状の金属製板部材を用いて形成されたものであり、平坦に形成された本体部110aの一端部110bにおいて垂直に折り曲げられ、他端部110cにおいて、端子挟持部111が溶接されている。端子接続部110の本体部110aは、装着部6eの後端壁12の内部に埋設されており、一端部110bが後端壁12の外方へ突出している。また、端子接続部110の端子挟持部111は、装着部6eの内側に突出している。
【0119】
端子挟持部111は、導電性を有する帯状の金属製板部材を環状に折曲し、その金属端同士の間に隙間112を設けた状態で互いに拡開する方向へ折り曲げたものであり、環状に折曲された部分113が本体部110aに溶接されている。
一方、電解槽3の端子114は、導電性のある金属部材により板状に形成され、端子挟持部111の隙間112に挿入可能な位置及び向きで、筐体30の側部35aから突出するように固定されている。この端子114は、図示しないリード線により電極棒45と電気的導通がとられている。
【0120】
以上の構成の下に、変形例5においては、電解槽3を装着部6eの所定位置まで挿入することにより、端子接続部110の端子挟持部111の隙間112に電解槽3の端子114を嵌着させて互いに電気的に接続することができ、電極棒45と
図1に示す制御部7との間で配線等を接続する手間が省けるという効果が得られる。また、端子114は、電解槽3が装着部6eの所定位置まで挿入されない限り、すなわち、電解槽3の突出壁部37が装着部6eの嵌着部25に適切に嵌着しない限り端子接続部110に接続されないため、電解槽3が確実に装着されていない状態で通電されることを回避し、誤動作を防止することができるという効果が得られる。
【0121】
次に、第1の実施形態の電解水製造装置1Aの変形例6について説明する。
図19(a)、(b)に示すように、変形例6においては、電解槽3の装着部6fへの装着方法において電解水製造装置1Aと異なっている。すなわち、装着部6fは、電解槽3を回動可能に掛止させる固定掛止部120を有している。そして、電解槽3は、固定掛止部120に掛止する可動掛止部121を有しており、固定掛止部120を支点として電解槽3を回動させて装着部6fに装着できるようになっている。
【0122】
固定掛止部120は、装着部6fの後端壁12の上端において立ち上がり、後端側Y方向に折曲している。この固定掛止部120は、X−Y方向に直交する方向に所定寸法延在している。
装着部6fは、電解槽3を上方から挿入し嵌着させるようになっているため、天壁9を有していない。また、
図19(b)に示すように、側壁11,11には、可動掛止部121の先端部を固定掛止部120の先端部に掛止させた状態で、可動掛止部121の先端を中心とする電極棒45の回動軌跡上に金属製の端子接続部123を備えた挿通部124が形成されている。
【0123】
更に、底壁10には、
図8(a)に示す電解水製造装置1Aの爪部18と同様の構成を有する爪部125が形成されている。
可動掛止部121は、電解槽3の後端側において上面から立ち上がった後、Y方向に折曲し、その先端部で固定掛止部120に巻きつくように下方に折曲している。
【0124】
この構成の下に、変形例6においては、固定掛止部120に可動掛止部121を掛止させて固定掛止部120を支点として電解槽3を下方に回動させるだけで、電極棒45が端子接続部123と電気的導通がとれる状態となる。また、側壁11,11及び挿通部124が電解槽3を装着部6fの所定位置に向かって確実に誘導することができる。更に、電解槽3が底壁10及び後端壁12に当接した際に、突出壁部37と嵌着部25とを気密状態で嵌着させることができ、更に爪部125により電解槽3を上下方向に移動させることなく確実に保持固定することができる。したがって、変形例6によれば、電解槽3を簡便かつ適確に装着部6fに配置することができるとともに、電解槽3を装着部6fに設置するだけで簡単かつ確実に必要な接続をすることができるという効果が得られる。
【0125】
次に、第1の実施形態の電解水製造装置1Aの変形例7について説明する
図20に示すように、変形例7においては、電解槽3の導出口130と装着部6gの連結部131において第1の実施形態の電解水製造装置1Aと異なる。
電解槽3の導出口130は、水平方向に形成される
図6に示す空間S1から鉛直方向に形成され、筐体30の上壁部に下方に凹む嵌着凹部132内で開口するように形成されている。また、筐体30の前端には、X−Y方向に直交する仮想軸線L1に沿って円周面を形成するように膨出した膨出部139を有している。この膨出部139は、装着部6gの後述する板バネ137を係止する係止部を構成している。
【0126】
一方、装着部6gには、下方に向かって突出する突出壁部133を備えた連結部131がエルボ134の一端に接続され、エルボ134の他端にフレキシブル管135が接続されている。
連結部131は、その内部に貫通孔131Rを有し、後端壁12に設けられた軸受部136に回動可能に取り付けられた板バネ137に固定されている。
板バネ137は、軸受部136から前端側X方向に向かって延在し、先端部において円弧を描くように湾曲した後に再び矢印X方向に延在している。この先端部は、電解槽3を固定する被係止部138を構成している。
【0127】
この構成の下に、
図21に示すように、連結部131は、エルボ134及びフレキシブル管135と共に、板バネ137の回動に伴って電解槽3の嵌着凹部132に接近して簡便に嵌着し、又は離脱して離間するようになっている。
そして、電解槽3を装着部6gに装着し、電解槽3の導出口130と連結部131の貫通孔131Rとを気密に連通させるにあたっては、板バネ137を持ち上げて装着部6gを開口した状態で電解槽3を設置する。その後、板バネ137を下降させて電解槽3の嵌着凹部132に突出壁部133を嵌着させるとともに、被係止部138を膨出部139に係止させる。この変形例によっても、電解槽3を装着部6に簡便に装着することができる。
【0128】
次に、第1の実施形態の電解水製造装置1Aの変形例8について説明する。
図22に示すように、変形例8においては、電解槽3の筐体140が円柱形に形成され、装着部6hが筐体140の形状に合わせて形成された天壁141と側壁142とを備えている。
電解槽3の筐体140には、円柱形の中心軸線を共通の軸線L2とする円柱形状の突出壁部143が上壁部に形成されている。突出壁部143には、不図示の流路に連通する導出口144が形成されている。
また、突出壁部143の外周面上には、雄螺子部143aが形成されている。
【0129】
図22、
図23に示すように、電解槽3の下壁部には、電解槽3を軸線L2を中心として回転させる際に指を引っ掛けて下壁部をつまむための凹所153が形成されている。
また、電解槽3の下壁部の中心部分には円形の導電性金属板からなる端子151が配置されており、またその外周にはリング状の導電性金属板からなる端子152が配置されている。これらの端子151及び152は、電解槽3内部の電極にそれぞれ結線されている。
【0130】
図22に示すように、装着部6hの天壁141には、上方に突出する連結部145が設けられている。
連結部145には、突出壁部143を嵌着させる嵌着部146が形成されており、突出壁部143を螺合させるための雌螺子部147が嵌着部146の周面に形成されている。
【0131】
雌螺子部147の上部は導出口144と連通する貫通孔148が形成され、連結部145に連結された配管5に塩素ガス(電解生成物)を流動させることができるようになっている。
図23に示すように、側壁142の下端部には、
図8に示す係止部16A,16Bと同様に係止部149,149.が形成され、電解槽3を保持できるようになっている。また、係止部149,149間方向に直交する方向には、
図15に示す回動蓋70と同様に形成された回動蓋150が設けられ、電解槽3を一層確実に保持できるようになっている。
この回動蓋150には、円柱形状の端子接続部150a及び150bが貫通しており、この端子接続部150a及び150bは不図示のリード線により制御部7(
図1参照)に結線されている。
【0132】
以上の構成の下に、変形例8において、電解槽3を装着部6hに装着する場合には、回動蓋150を下方に回動させて装着部6hを開口し、電解槽3を側壁142の内部に挿入する。そして、突出壁部143が嵌着部146に挿入されて当接した際に、電解槽3の下壁部の凹所153に指を入れて下壁部を把持し、電解槽3を回転させて突出壁部143を嵌着部146に螺入させる。突出壁部143が確実に嵌着部146に螺入されたら、電解槽3の全体が装着部6h内に収まり、係止部149,149が電解槽3に係合して固定される。そこで、回動蓋150を上方へ向けて回動させ、側壁142に係止させて電解槽3の固定を完了させる。
【0133】
そして回動蓋150を側壁142に係止させると、回動蓋150を貫通している端子接続部150aは、電解槽3の下壁部の円形の端子151に接触し、また端子接続部150bは、電解槽3の下壁部のリング状の端子152に接触する。かくして端子151、152には端子接続部150a、150bを介して通電が行われる。
【0134】
このような構成とすることで、電解槽3を装着部6hの側壁142をガイド部として容易にこの装着部6hに装着することができるとともに、電解槽3を一方向に回転させるだけで突出壁部143が嵌着部146に螺合して軸線L2を共通の軸線として電解槽3を装着部6hに確実に嵌着及び固定することができるという効果が得られる。
また、係合部149及び回動蓋150によって電解槽3をより確実に保持することができるという効果が得られる。
【0135】
次に、第1の実施形態の電解水製造装置1Aの変形例9について説明する。
図24(a)に示すように、変形例9においては、電解槽3iの筐体30i内に設置された複数の電極板31,31・・及びスペーサ33,33・・を隣接配置して形成される複数の電解室C(
図5参照。以下同様)の外に、電気分解の対象となる原料水を貯留させる貯留スペースMが形成されたものであってもよい。
【0136】
本変形例において、貯留スペースMは、電極板31を段部50(
図4参照)に嵌合させた複数のスペーサ33,33・・を側板34Bに寄せて筐体30i内に隣接配置させた状態で、これら複数のスペーサ33,33の側端に位置するスペーサ33と側板34Aとの間に形成されている。
電解槽3iには、各電解室Cとこの貯留スペースMとに全体として略均一な濃度の原料水が充填されている。
【0137】
電解槽3iに通電した場合には、電解室C内の反応成分が電気分解により減少していくが、貯留スペースM内の反応成分が、下方切欠53(
図3参照。以下同様)及び下方流路53a並びに側方切欠55,55及び側方流路55a,55aを通じて電解室C内に拡散して流動する。したがって、電解槽3i内に貯留スペースMを有していないものよりも全体として長時間電気分解を行いより多くの電解生成物を生成することができる。すなわち、電解槽3iを交換するまでの使用期間を長期化させ、より一層交換頻度を低減させながらも、少量ずつに分けて電解水を製造することができるという効果が得られる。
【0138】
なお、本変形例では、貯留スペースMを側端に位置するスペーサ33の側方に設けたが、貯留スペースMは、複数のスペーサ33,33・・の上方に設けられたものであってもよい。貯留スペースMが上方に設けられた場合には、塩酸等のように、水よりも比重が重く、水の下方に沈下する反応成分を含んだ原料水を充填した場合に、電解室C内の反応成分が電気分解されるに従い原料水を沈下させることができる。したがって、ポンプ等を使用することなく反応成分を電解室C内に好適に充填することができるという効果が得られる。
【0139】
また、貯留スペースMは、側端に位置するスペーサ33の側方及び上方の双方に設けられていてもよい。あるいは、貯留スペースMは、複数のスペーサ33,33・・を筐体30iの側板34A,34Bの双方から離間した位置に配置させて、両端に位置するスペーサ33,33の両側方に設けたものであってもよい。また更に、貯留スペースMは、両端に位置するスペーサ33,33の両側方及び上方に設けられたものであってもよい。上記いずれの場合であっても、電解槽3は、上記した効果と同様の効果を得ることができる。
【0140】
なお、筐体30において、電極板31を嵌合させたスペーサ33を隣接配置する空間Sと、貯留スペースMとの間は、
図24(b)に示すように、開口部250Aを備えた仕切板30Rにより仕切られていても、またあるいは、スペーサ33を設置する空間Sと、貯留スペースMとが、少なくとも一つの開口部250Aにおいて連通させた2以上の筐体30A、30B・・からなるものであってもよい。いずれの態様であっても、筐体30A,30B・・に予め原料水が充填され、筐体30A,30B・・に新たな原料水が追加不能に供給口が封止され、筐体30Aと筐体30Bとが一体的に着脱,交換されるものであるであればよい。
【0141】
なお、この場合、電解生成物は生成後には浮上するため、電解生成物を導出するための導出口2は電解槽30において可及的に高い位置に開口していることが好ましい。例えば筐体30Aの最上部に導出口2を開口させることができる。
【0142】
次に、本発明の第2の実施形態として電解水製造装置1Bについて説明する。本実施形態の説明においては、第1の実施形態の電解水製造装置1Aと異なる点についてのみ説明し、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
図25に示すように、電解水製造装置1Bは、希釈水を貯留するタンク4が、配管5を介して電解槽3の上方に着脱不能に設けられ、タンク4の底部に連結された取水口160をから電解液が取り出されるようになっている。
【0143】
タンク4の上部には、開閉自在な蓋部162が取り付けられており、この蓋部162を開けて希釈水を注入できるようになっている。タンク4の内部には、水位センサー161が設置されており、水位センサー161で検知する水量以下の場合に制御部(不図示)によって電解槽3の駆動が規制されるようになっている。したがって、希釈水が不十分又は無い状態で電解生成物がタンク4内に充填され、所望の濃度以上の電解水が製造されたり、タンク4内に電解生成物のみが充満したりすることを防止することができるという効果が得られる。
【0144】
次に、本発明の第3の実施形態として電解水製造装置1Cについて説明する。本実施形態の説明においては、第1の実施形態の電解水製造装置1Aと異なる点についてのみ説明し、同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
図26に示すように、電解水製造装置1Cは、希釈水の供給源とする貯留部170と、電解槽3及びこれを着脱させる装着部6と、貯留部170内の希釈水及び電解槽3の電解生成物を取り出す配管(混合部)5と、不図示の制御部と、前記電解生成物と希釈水とを混合させて収容するポット171と、貯留部170、電解槽3、装着部6及び配管5を内部に収容するとともに、ポット171を載置させる台座172となる筐体173を備えている。
【0145】
貯留部170は、直方体形状の槽であり内部に希釈水を吸い上げるポンプ174と水位センサー175を備えている。
配管5は、一端部5aがポンプ174を介して貯留部170に接続されるとともに、軸線が上下方向に配置され、上端において折曲して水平方向に延びている。
配管5の一端部5aと他端部5bとの間には、分岐管5Gが設けられておりこの分岐管5Gに電解槽3の突出壁部37が接続されている。
【0146】
ポット171は、底板部171aと底板部171aを囲繞するように立ち上がる周壁部171bと、周壁部171bの上端に被冠される蓋部171cと取っ手171dを備えており、更に取っ手171dの反対側に突出する電解水の注入及び注出口171eを備えている。
筐体173は、貯留部170を収容するとともにポット171を着脱自在に載置させる台座部173Aと、配管5、不図示の制御部及び電解槽3を収容する駆動機構部173Bとを備えている。
【0147】
上記の構成の下に、電解水製造装置1Cの使用時には、不図示の電源を入れてポンプ174、不図示の制御部及び電解槽3を作動させ、ポンプ174により汲み上げられた希釈水と電解生成物とを配管5内で合流させ、配管5の他端部5bからポット171内部に落下させつつ注入できるようになっている。
したがって、電解水製造装置1Cは、希釈水の1回の汲み出し量に応じて電解生成物の量を決定し、更に電解槽3へ通電する単位時間及び電流値を設定する。そして、希釈水を上方に向けて汲み出し、電解生成物と合流させた後に、ポット171に落下させつつ注入することができる。したがって、このように注入することによって希釈水と電解生成物とをポット171内において確実に混合させることができるという効果が得られる。
【0148】
次に、本発明の第4の実施形態として電解水製造装置1Dについて説明する。
第4の実施形態に係る電解水製造装置は、原料水を電気分解し電解生成物を発生させこの電解生成物を導出口から排出させる電解槽と、この電解槽の動作を制御する制御部と、前記電解槽と連結されこの電解槽で得られた前記電解生成物を希釈水と混合し電解水とする混合部と、この混合部に貯留された前記希釈水を吸水する吸水配管と、吸水配管に具備されたポンプと、前記吸水配管により吸水された前記希釈水と前記電解槽から導出された前記電解生成物とを合流させ導出させる導出配管とを備え、
前記電解槽と、前記ポンプと、前記導出配管とはケーシング内に固定され、
このケーシングは、前記混合部に着脱自在に設置されるとともに、この混合部に装着された際に、前記吸水配管の管路と前記導出配管の管路とがそれぞれ前記混合部内に連通されてこれら吸水配管と導出配管とにより前記混合部内に貯留された前記希釈水を吸水及び導出可能とされている。
そして、前記電解槽は、この電解槽に形成された前記原料水の供給口から内部に所定量の前記原料水が予め充填された状態で前記導出配管に接続され、前記供給口から新たな原料水が追加不能とされ、前記制御部は、前記予め充填された原料水を電気分解する時間を所定の単位時間毎に区切り、前記予め充填された原料水を電気分解する回数を複数回に設定するとともに、前記電解槽に前記単位時間毎に一定電流値の電流を通電することを特徴としている。
【0149】
具体的には、電解水製造装置1Dは、
図27に示すように、電解槽3と、制御部7と、希釈水を吸水する吸水配管5Bに具備されたポンプ180と、これらを収容し固定したケーシング181とが、希釈水を貯留したポット(混合部)182の上方に着脱自在に設置されて構成されている。そして、導出配管5A,吸水配管5Bとそれぞれ接続された配管5C,5Dがケーシング181の底部から下方に突出してポット182内に挿入されている。また、希釈水が予めポット182内に貯留されている。
【0150】
ケーシング181は、天板部181aと天板部181aを囲繞し垂下する側板部181bと底板部181cとを備えており、底板部181cが一部開口している。このケーシング181に、電解槽3、ポンプ180、導出配管5A及び吸水配管5Bが適宜固定されている。ケーシング181の下端には、ポット182に係合させる被係合部(不図示)が設けられている。
【0151】
電解槽3の導出口2には、導出配管5Aが接続され、この導出配管5A内に電解生成物を導出することができるようになっている。
ポンプ180は、吸水配管5Bに設けられている。吸水配管5Bは、電解槽3に接続された導出配管5Aに接続されており、ポンプ180から汲み上げられた希釈水Wと、希釈水Wと電解槽3で得られた電解生成物とが導出配管5Aにおいて合流し、ポット182内に向けて導出されるようになっている。また、ポンプ180は、吸水の有無を検出する検出部(不図示)を備えており、検出結果を制御部7に送信するようになっている。
制御部7は、ポンプ180により吸水が検知された場合には電解槽3に通電し、ポンプ180により吸水が検知されなかった場合には電解槽3に通電しないよう設定されている。
【0152】
ポット182は、底板部182aと底板部182aを囲繞して立ち上がる側板部182bとを備え、上方が開口部182kとされた容器部186と、容器部186の開口部182kに着脱自在に被冠される蓋部187とを備えている。
容器部186は、電解槽3を1回又は所定回数通電し、所定の濃度の電解水を混合させることができる希釈水を貯留することができる内容積を有しており、その上端の一部に製造された電解水を注水させることができる注水口188を備えている。
蓋部187は、連結部189aに固定された配管5Cと、連結部189bに固定された配管5Dとを備えている。
【0153】
蓋部187の上面は、ケーシング181を着脱可能とする装着部187aとされており、ケーシング181の装着時に、連結部189aを介して配管5Cと吸水配管5Bとが接続され、双方の管路が連通するとともに、連結部189bを介して配管5Dと導出配管5Aとが接続され、双方の管路が連通するようになっている。また、装着部187aには、ケーシング181を確実に固定させる係合部(不図示)を備えている。この構成の下に、電解槽3を備えたケーシング181は、その装着ができるように専用に構成されたポット182にて安定的に取り付けられ、好適に使用できるようになっている。
【0154】
配管5Cの先端は、ポット182内の所定の高さに位置するように設置され、前記高さまで希釈水Wが貯留されていない場合に希釈水Wを吸水できないようにされている。
一方、配管5Dは、その一端部5aにおいて折曲し、導出配管5A及び配管5D内を流動する希釈水Wと電解生成物とが一端部5aの壁部に衝突し、乱流を起こすことによってよく混ざるように構成されている。なお、導出配管5Aは、一端部5a以外においても屈曲した部分を有し、希釈水Wと電解生成物とを衝突させてよりよく混合させ得るようになっていてもよい。
【0155】
また、配管5Dの一端部5aは、ポット182内の下部に位置するように設置され、希釈水Wと電解生成物とを希釈水W内に放出することによってポット182内の希釈水を攪拌できるようになっている。
【0156】
上記の電解水製造装置1Dによって電解水を製造する場合、ポット182内に所定の高さまで、すなわち所定量の希釈水Wを貯留しておき、電源スイッチ(不図示)を入れてポンプ180及び電解槽3を駆動させる。そうすると、ポンプ180が配管5Cの先端から希釈水Wを吸水し、吸水配管5B更には導出配管5Aとの接続部に向かって汲み上げられる。
【0157】
一方、電解槽3は、一定電流値の電流が所定時間通電されることにより、電解生成物を生成し、この電解生成物を順次導出配管5Aに導出する。そして、前記汲み上げられた希釈水Wと電解生成物とが導出配管5Aにおいて混合され、配管5Dの先端に向かって導出され、一端部5aにおいて配管5Dの内壁に衝突して乱流を起こして混合される。その後、混合された希釈水Wと電解生成物とは、配管5Dの先端からポット182内の下部に放出される。混合された希釈水W及び電解生成物がポット182の希釈水W内で所定時間連続して放出されると、希釈水Wに水流ができ、希釈水W及び電解生成物が希釈水W全体に攪拌し、漸次所定濃度の電解生成物を含む電解水とされる。
【0158】
一方、ポット182内に所定の高さまで希釈水Wが貯留されていない場合には、ポンプ180が希釈水Wを吸水していないことを検出して制御部7にその信号を送り、制御部7によって電解槽3の作動が規制される。
【0159】
以上の構成により、電解水製造装置1Dによれば、ケーシング181を専用のポット182の装着部187aに装着し固定するだけで、ポット182内に簡単に電解水の製造準備をすることができる。
【0160】
そして、ポンプ182に接続された配管5Cの先端から希釈水Wを吸水することができた場合にのみ制御部7が電解槽3に通電し、ポット182内に配管5Cの先端位置に対応する高さ以下までしか希釈水Wが貯留されていない場合には、所定量の希釈水が満たされていないと判断して電解槽3の作動を規制することができる。したがって、所定濃度以上の電解水を生成したり、ポット182内に電解生成物のみを供給したりするということを防止して、簡単かつ適切に電解水を製造することができるという効果が得られる。
【0161】
また、ケーシング181をポット182に着脱自在に装着できるように構成されていることにより、電解槽3内の原料水が使用済みになった場合に、新たな原料水を充填させた電解槽3を備えたケーシング181ごと取替える仕様とすることができる。したがって、ユーザに電解槽3を交換させることを回避して、簡便かつ安心して使用させることができるという効果が得られる。
【0162】
なお、上記の実施形態において、導出配管5Aと配管5Dとは一体的に形成され、又は、吸水配管5Bと配管5Cとが一体的に形成されていてもよい。
また、電解槽3内の原料水が使用済みになった場合に、ケーシング181を取り外して電解槽3のみを交換できるように構成されていてもよい。
【0163】
以上、第1〜第4の実施形態及びその変形例1〜9においては、希釈水Wは予め水道等からタンク4に供給しておく構成となっているが、
図28において、第5の実施形態として示すように、電解水製造装置1Eは、水道等から希釈水を供給する配管190a及び希釈水と電解生成物とを合流させて電解水を貯留させるタンク(不図示)に導出する配管190bを有し、配管190a,190bの間に希釈水を
図1に示すタンク4に移送するポンプ191を設けたものであってもよい。この場合、配管190bには分岐管192が設けられ、電解槽3に接続された配管5と接続して直接塩素ガスを供給できるようになっている。また、ポンプ191には、吸水したことを制御部7に検知する検知手段が設けられており、吸水を検知した際に制御部7が所定の電流値で単位時間電解槽3に通電し、電解生成物を生成するようになっている。
【0164】
このような構成とすることで、配管190aをフレキシブル管で水道に接続し、外部電源を接続できる環境であれば、電解水製造装置1Eを任意の場所に持ち運んで、例えば
図29に示すように、浴槽等の任意のタンク4に容易に電解水を貯留させることができるという効果が得られる。
【0165】
また、
図30において第6の実施形態として示すように、電解水製造装置1Fが、水道蛇口200の吐水口201に着脱自在に取り付けられる構成とされたものであってもよい。
この場合、電解槽3及び制御部7は、水道水の吐水管202の下方等の取水を妨げない位置に配置させるようになっている。制御部7は、乾電池等のバッテリ及び電源スイッチ(不図示)を備えている。制御部7への給電は、バッテリに代えて配線等を用いて外部電源に接続されるものであってもよい。
【0166】
配管203は、吐水口201に接続された水道水の供給口204と、電解水を吐出する吐出口205と、電解槽3の導出口2が連結された連結部206に向かって水道水を流動させ、導出口2から導出される塩素ガス(電解生成物)と水道水を合流させて混合しつつ吐出口に導く流路207R(混合部)とを備えている。この場合、配管203には不図示の吸水検知手段が設けられており、吸水を検知した際に制御部7に信号を送信し、制御部7が電解槽3に所定の電流値を単位時間通電し電解生成物を生成するようになっている。この電解水製造装置1Fは、所定の容積を有する容器(不図示)を吐出口205の下方に設置し、この容器に所定量の水が貯留されるまで流水を中断させること無く電解生成物を含んだ水を吐出させて使用することができる。なお、電解槽3による電気分解の単位時間は、容器に貯留される電解水の量に応じて設定される。
このような構成とすることで、水道水に簡便に電解水製造装置1Fを装着し、例えば手洗い時等、任意のときに不図示の電源スイッチを入れることにより簡便に電解水を使用することができる。
【0167】
また、第1〜第6の実施形態、その変形例1〜9及び前述したその他の例における電解槽3は、筐体30の大きさを変更し、又は、電極板31を保持するスペーサ33,33同士の間に配置する電極板31を有しないスペーサ33を配置して電解室Cの容量及び電極板31,31間の距離を変更することができるようにしたものであってもよい。
このような構成とすることにより、電解槽3内に保持できる希塩酸の量を変更することができるので、一の電解槽3で製造できる電解水の製造回数を容易に変更することができるという効果が得られる。
【0168】
第1〜第6の実施形態、その変形例1〜9及び前述したその他の例における電解水製造装置1A等は、一定電流値(定電流の電流値)及び単位時間のいずれか一方又は両方を選択的に変更できるようにして、電解水の製造時間や電解水の濃度を適宜調整できるようにしておけるのが望ましい。
【0169】
この場合、一定電流値又は単位時間、すなわち制御部7の定電流装置41,タイマー42の設定変更及びカウンター43のリセットは、電解槽3の交換時、すなわち電解槽3の電極棒45,45と装着部6の端子接続部15,15等とが離間して電気的な接続が解除された際に可能とすることが好ましい。具体的には、電解槽3の交換時までは設定の変更ないし選択ができないようにロックされ、電解槽3の交換時にロックが解除されて初めて一定電流値又は単位時間の選択が可能となるように構成されていることが好ましい。
【0170】
このように構成することで、電解槽3を設定した回数分だけ通電し終える前に定電流値や単位時間を変更することによって電気分解できる回数の設定が狂ったり、単位時間で得られる電解生成物の量が不用意に変動して所望する塩素濃度の電解水が得られなくなったりするという不都合を防止することができるという効果が得られる。
【0171】
上記した第1〜第6の実施形態及びその変形例1〜9において、電解槽3に設けられた突出壁部37,143には、電解槽3から液体の通過を防止し気体のみを透過させる気体透過性兼疎水性フィルターが設けられていてもよい。
【0172】
また、第1〜第6の実施形態及びその変形例1〜9において、電解槽3の突出壁部37,143の先端面にシールを貼着しておくとともに、装着部6の連結部19等内に前記シールを破断可能な先端部を有する接続管を設けたものであってもよい。このような構成とすることで、電解槽3の装着前に電解槽3から液漏れすることを防止することができ、使用時には容易に導出口2,144と貫通孔20,148とを連通させることができる。
【0173】
なお、第1〜第6の実施形態及びその変形例1〜9においては、電解槽3をワンタッチで装着させる装着部6を設けた構成としたが、電解槽3は第1の実施形態の電解槽3と同様の構成とし、例えば
図31に示すように、装着部6を用いず電解槽3の電極棒45,45を制御部7の端子接続部15,15に接続するとともに、配管5を電解槽3の導出口2に直接連結する構成としたものであってもよい。
このような構成であっても、電解槽3をワンタッチで装着できることによる効果を除いて電解水製造装置1Aと同様の効果が得られる。
【0174】
なお、上記した変形例1〜8の装着部6a〜6hは、適宜組み合わせて適用することも可能である。
例えば、
図8、
図17、18等に示す端子と端子接続部との接続構造は、変形例6の電解槽3及び装着部6に採用できる。
【実施例】
【0175】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。なお、実施例1では
図2に示す装置を使用し、同様に実施例2では
図1、実施例3では
図29、実施例4〜9では
図1に各々示す装置を各々使用した。
実施例1〜3は、所定の条件で電解槽3に定電流を通電させた場合、実際に得られる有効塩素濃度を理論上算出される有効塩素濃度から推定することが可能かを検証したものである。また、実施例4〜9は、希塩酸が封入された一の電解槽3によって、3リットルの微酸性電解水を何回製造できるかを調べたものである。
有効塩素濃度は、官報第3378号(平成14年6月10日)「次亜塩素酸水の成分規格」に示された測定方法によって測定した。なお、ヨウ素滴定法(社団法人日本水道協会、「上水試験方法 1993年版」、第218〜219頁、平成5年11月15日)によっても測定することができる。
【0176】
[実施例1]
(電解水製造装置)
実施例1においては、電解槽3として、容量が52ml、10枚の電極板31,31・・による9つの電解室Cを有するものを用いた。タンク4としては、2リットル容量のペットボトルを用いた。希塩酸としては、3%の塩酸を電解槽3に封入した。該電解槽3の電流効率は50%である。電流値は、0.8A,1.6A,2.4Aから選択的に設定できるようにした。
【0177】
(電気分解の方法)
3%の希塩酸が充填され封止された電解槽3を装着部6に装着した。ペットボトルに2リットルの水道水を入れ開口部に逆流防止弁を取り付けて設置した。その上で、所定の電流値の定電流を通電させ、希塩酸を15秒間電気分解して、逆流防止弁を外した。電流値[A]=(必要有効塩素濃度[ppm]×必要製造量[L]/(35.5/96500×1000×電解時間[sec]×セル数×電流効率[%]/100)であるので、10ppmを得るには0.805A、20ppmを得るには1.610A、30ppmを得るには、2.416Aの電流を流すことが必要となる。
総塩素量の理論値は、総塩素量[mg]=電解電流値[A]×35.5/96500×1000×セル数×電解時間[sec]で求められる。
【0178】
【表1】
【0179】
(結果)
電気分解の結果は、表1に示すように、電流値が0.8Aの場合、総塩素量の理論値が39.7mg、電流効率を考慮した有効塩素濃度の理論値が9.9ppmとなるところ、実際に測定された有効塩素濃度は、9.6ppmであった。
また、電流値が1.6Aの場合、総塩素量の理論値が79.5mg、電流効率を考慮した有効塩素濃度の理論値が19.9ppmとなるところ、実際に測定された有効塩素濃度は、17.9ppmであった。
【0180】
また、電流値が2.4Aの場合、総塩素量の理論値が119.2mg、電流効率を考慮した有効塩素濃度の理論値が29.8ppmとなるところ、実際に測定された有効塩素濃度は、33.6ppmであった。
以上のとおり、いずれの場合にも、ほぼ理論値から想定される範囲の有効塩素濃度の電解水が得られた。
【0181】
[実施例2]
(電解水製造装置)
本例においては、電解槽3として、容量が35ml、7枚の電極板31,31・・による6つの電解室Cを有するものを用いた。タンク4としては、3リットル容量のものを用いた。希塩酸としては、6%の塩酸を電解槽3に封入した。電流値は、2.5Aとし、単位時間(電解電圧印加時間)は、10秒,20秒,30秒から選択的に設定できるようにした。
【0182】
(電気分解の方法)
6%の希塩酸が充填され封止された電解槽3を装着部6に装着した。タンクに3リットルの水道水を入れ水中ポンプで攪拌を開始した。電流値2.5Aを所定の単位時間流して電気分解した。電解時間(秒)=(必要有効塩素濃度[ppm]×必要製造量[L]/(35.5/96500×1000×電流値[A]×セル数×電流効率[%]/100)であるので、10ppmを得るには10.9秒、20ppmを得るには21.7秒、30ppmを得るには、30.6秒電流を流すことが必要となる。
【0183】
【表2】
【0184】
(結果)
電気分解の結果は、表2に示すように、単位時間が10秒の場合、総塩素量の理論値が55.2mg、電流効率を考慮した有効塩素濃度の理論値が9.2ppmとなるところ、実際に測定された有効塩素濃度は、13.3ppmであった。
また、単位時間が20秒の場合、総塩素量の理論値が110.4mg、電流効率を考慮した有効塩素濃度の理論値が18.4ppmとなるところ、実際に測定された有効塩素濃度は、22.8ppmであった。
【0185】
また、単位時間が30秒の場合、総塩素量の理論値が165.6mg、電流効率を考慮した有効塩素濃度の理論値が27.6ppmとなるところ、実際に測定された有効塩素濃度は、31.5ppmであった。
以上のとおり、いずれの場合にも、ほぼ理論値から想定される範囲の有効塩素濃度の電解殺菌水を製造することができた。
【0186】
[実施例3]
(電解水製造装置)
実施例3においては、電解槽3として、容量が140ml、25枚の電極板31,31・・による24の電解室Cを有するものを用いた。タンク4としては、400リットル容量(内寸1000×850×500mm)の水槽を用いた(満水で約400Lの水槽に8割の水位で使用した)。希塩酸としては、6%の塩酸を電解槽3に封入した。電流値は、2.5Aとし、単位時間(電解電圧印加時間)は150秒とした。
【0187】
(電気分解の方法)
6%の希塩酸が充填され封止された電解槽を設置した。水槽に深さ400mm(約340リットル)の水道水を入れ水中ポンプで攪拌を開始した。電流値2.5Aを150秒流して電気分解した。電気分解後、水中ポンプを1分攪拌して終了した。電解槽を交換することなく、タンク4としての水槽を交換して再び同様の電気分解を行った。この操作を繰り返して合計3回の電気分解を行った。
24セルの電解槽に2.5Aの電流を1秒流すと、総塩素量(理論値)は2.5×35.5/96500×1000×24×1=22.08mgとなり、340Lを5ppmにするには、塩素量5×340=1700mgが必要となる。
【0188】
【表3】
【0189】
(結果)
電気分解の結果は、表3に示すように、単位時間を150秒として電気分解を行い、水槽の水道水に塩素を溶解させたところ、1回目の電気分解では、総塩素量の理論値が3312mg、電流効率を考慮した有効塩素濃度の理論値が4.9ppmとなるところ、実際に測定された有効塩素濃度は、5.8ppmであった。
【0190】
また、水槽内の電解水を廃棄し新たに水道水を貯留して、2回目に上記と同条件で電気分解したところ、実際に測定された有効塩素濃度は、6.7ppmであった。
また、同様にして3回目の電気分解をしたところ実際に測定された有効塩素濃度は、6.2ppmであった。
以上のとおり、いずれの場合にも、ほぼ理論値から想定される範囲の有効塩素濃度の電解殺菌水を製造することができた。
【0191】
[実施例4〜9]
(電解水製造装置)
実施例4〜9は、希塩酸が封入された一の電解槽3によって、3リットルの電解水(微酸性電解水)を何回製造できるかを調べたものである。実施例4〜9の電解槽3、電流値[A]、単位時間[秒]、塩酸濃度[%]の条件は表4に示すとおりである。
【0192】
【表4】
【0193】
(電気分解の方法)
3リットルのタンクに水道水を貯留させて、本体に設置し、水中ポンプで攪拌を開始した。所定の電流値で所定の単位時間電気分解した。電気分解後、水中ポンプを10秒攪拌して終了した。その後、タンクの電解水(次亜塩素酸水)をペットボトル等の別の容器に移して空にした。上記の手順を繰り返し、定電流が維持できなくなった時点で電解槽3の使用を終了した。
【0194】
【表5】
【0195】
(結果)
表5に示すように、それぞれの実施例において、電解槽3に1回の希塩酸充填のみで、複数回の電気分解が可能であり、さらに一定範囲の有効塩素濃度の電解水を生成できることが確認できた。
また、電流値と単位時間の調整によって、塩素濃度を調整することができることが分かった。具体的に例えば、pH4.0〜7.5(好ましくはpH4.0〜7.5)、塩素濃度1〜60ppm(好ましくは10〜30ppm、とくに好ましくは10〜20ppm)の次亜塩素酸水がタンク4に生成することが可能であることが分かった。