(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、製品上がりのタイヤに対してはユニフォミティ(均一性)などを計測して良否を判定するタイヤ試験(タイヤユニフォミティ試験)が行われている。このタイヤ試験においては、タイヤユニフォミティマシンに備えられた負荷ドラムの外周面にタイヤを押付けた上で、このタイヤを回転させて負荷ドラムに設けられたロードセルなどでタイヤの半径方向や横方向に加わる荷重をユニフォミティ波形として計測し、計測されたユニフォミティ波形に基づいてタイヤユニフォミティの評価が行われる。
【0003】
ところで、タイヤユニフォミティマシンに設けられる負荷ドラムは、例えば断面が真円となる円筒形状に加工されるが、加工精度などの制約から厳密にはその断面は完全な真円とはならず、外周面に若干の凹凸は不可避的に発生する。このように、完全な真円となっていない負荷ドラムの外周面にタイヤを接触させた上でタイヤを回転させると、タイヤが負荷ドラムの外周面にわずかに存在する凹凸を通過する際に負荷ドラムの回転軸に回転振れが発生し、発生した回転振れがロードセルで計測されるユニフォミティ波形に誤差として含まれるようになる。その結果、このような誤差を含むユニフォミティ波形に基づいて算出されるタイヤユニフォミティの精度も低下してしまう可能性がある。
【0004】
そこで、このような負荷ドラムの回転振れに起因する誤差を、ロードセルなどで計測されたユニフォミティ波形から取り除く、言い換えれば計測されたユニフォミティ波形を補正するために、幾つかの補正方法が既に考えられている(特許文献1、特許文献2など)。
例えば、特許文献1の補正方法は、負荷ドラムの径外側に負荷ドラムの外周面の変位(タイヤの半径方向に沿った変位、あるいはタイヤの横方向に沿った変位)を検出可能な検出器(センサ)を設けておき、この検出器で検出される負荷ドラムの変位を回転振れとして計測する。そして、計測された負荷ドラムの回転振れにタイヤのバネ定数を乗じたものを、回転振れにより負荷ドラムに作用する力変動の波形として算出する。このようにして算出された力変動の波形を、回転振れに起因する誤差を補正するための補正波形として、実際に計測したユニフォミティ波形から差し引けば、ユニフォミティ波形を補正することができる。
【0005】
また、特許文献2の補正方法は、ロードセルで計測されたユニフォミティ波形を、タイヤの1回転毎のデータ区間に区切り、区切られたユニフォミティ波形同士を互いに重ね合わせるものである。このようにタイヤの1回転のデータ区間毎にユニフォミティ波形の重ね合わせを行えば、重ね合わせによって誤差が相殺され、平均的なユニフォミティ波形を得ることが可能となる。このような平均的なユニフォミティ波形を、ロードセルで実際に計測されたユニフォミティ波形から差し引けば、負荷ドラムの回転振れに起因する誤差分を含んだ波形が得られる。次に、得られた誤差分を含んだ波形を、負荷ドラムの1回転毎のデータ区間に区切り、区切られた波形同士を互いに重ね合わせれば、誤差分を含んだ波形を平均化して特許文献1と同様に回転振れに起因する誤差を補正するための補正波形を求めることが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の補正方法では、タイヤの種別(種類やサイズ)によっては、上述した補正波形を精度良く算出することが困難になる場合がある。
例えば、実際のタイヤユニフォミティマシンでは、タイヤを負荷ドラムに押し付ける位置を標準的な種類やサイズのタイヤにあわせて設定することが多い。ところが、タイヤユニフォミティマシンで計測されるタイヤには、標準的なタイヤよりも幅が広いものや狭いものがあり、このようなタイヤを試験する場合には、外周面の変位を検出する検出器の高さが最適な位置からずれたものとなってしまう。つまり、特許文献1の補正方法では、タイヤユニフォミティを計測するタイヤの種別によって検出器の設置位置が最適な位置からずれ、検出器の設置位置のずれによって算出される補正波形が適正なものからずれるため、精度の良い補正波形を求めることが困難となってしまう可能性がある。
【0008】
また、特許文献2に記載の補正方法においては、複数の波形を重ねて平均化する際に、僅かな位相ずれなどの誤差があると、このような誤差も重ね合わされて補正波形に加わってしまう。その結果、重ね合わせによってかえって誤差が大きくなり、特許文献1の補正方法と同様に精度の良い補正波形を求めることが困難となる場合がある。
本発明は、上述の問題を鑑みてなされたものであり、負荷ドラムの回転振れによる影響を、計測されたユニフォミティ波形から取り除き、タイヤユニフォミティの測定精度を向上させることができるタイヤのユニフォミティ波形の補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明のタイヤのユニフォミティ波形の補正方法は次の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明のタイヤのユニフォミティ波形の補正方法は、負荷ドラムをこの負荷ドラムとは径が異なるタイヤに押付けた上で、タイヤを回転させつつタイヤのユニフォミティを測定するに際しては、前記負荷ドラムに設けられたロードセル及び回転位相計を用いて、タイヤのユニフォミティ波形を計測すると共に、負荷ドラムの回転位相を計測しておき、計測されたユニフォミティ波形を、周波数変換することで周波数領域の波形に変換し、変換された周波数領域の波形におい
て前記負荷ドラムの回転数の整数倍数成分での振幅
を求め、
さらに、前記負荷ドラムの回転数の整数倍数成分に対応する回転位相を求め、求められた負荷ドラムの回転数の整数倍数成分での振幅及び位相を補正パラメータとして記憶しておき、前記タイヤのユニフォミティ波形を計測すると共に、記憶された補正パラメータを基にしてタイヤ計測時の負荷ドラムの回転位相範囲における補正波形を計算し、前記計算された補正波形を、計測されたユニフォミティ波形から差し引くことで、補正されたタイヤのユニフォミティ波形を算出することを特徴とするものである。
また、本発明のタイヤのユニフォミティ波形の他の補正方法は、負荷ドラムをこの負荷ドラムとは径が異なるタイヤに押付けた上で、タイヤを回転させつつタイヤのユニフォミティを測定するに際しては、前記負荷ドラムに設けられたロードセル及び回転位相計を用いて、タイヤのユニフォミティ波形を計測すると共に、負荷ドラムの回転位相を計測しておき、計測されたユニフォミティ波形を、周波数変換することで周波数領域の波形に変換し、変換された周波数領域の波形において、前記負荷ドラムの回転数の整数倍数成分における、周波数に関連した時間軸に関する波形を表すパラメータを求め、求められた負荷ドラムの回転数の整数倍数成分における、周波数に関連した時間軸に関する波形を表すパラメータを補正パラメータとして記憶しておき、前記タイヤのユニフォミティ波形を計測すると共に、記憶された補正パラメータを基にしてタイヤ計測時の負荷ドラムの回転位相範囲における補正波形を計算し、前記計算された補正波形を、計測されたユニフォミティ波形から差し引くことで、補正されたタイヤのユニフォミティ波形を算出することを特徴とするものである。
【0010】
なお、好ましくは、前記タイヤの種別毎に補正パラメータを予め求めておき、予め求められた補正パラメータに基づいて、前記タイヤの種別毎に前記補正波形を計算し、計算された補正波形を、計測されたユニフォミティ波形から差し引くことで、補正されたタイヤのユニフォミティ波形を算出するとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のタイヤのユニフォミティ波形の補正方法によれば、負荷ドラムの回転振れによる影響を計測されたユニフォミティ波形から取り除き、タイヤユニフォミティの測定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「第1実施形態」
本発明に係るタイヤTのユニフォミティ波形の補正方法が行われるタイヤユニフォミテ
ィマシン1を、まず図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、タイヤユニフォミティマシン1(タイヤユニフォミティ試験装置)は、製品上がりのタイヤTについてタイヤユニフォミティなどの特性を評価して製品検査を行うものであり、タイヤTを回転させた際に発生するタイヤ半径方向の力の変動(Radial Force Variation:RFV)やタイヤ横方向の力の変動(Lateral Force Variation:LFV)を製品検査として評価する構成とされている。
【0014】
具体的には、タイヤユニフォミティマシン1は、上下を向く軸心回りに回転自在に配備されたスピンドル軸2を有している。このスピンドル軸2の上端にはタイヤTを固定する上下一対のリム3が設けられていて、スピンドル軸2はリム3に固定されたタイヤTを上下を向く軸心回りに回転自在に支持できるようになっている。さらに、スピンドル軸2の側方には、その外周面に模擬路面が形成された略円筒状の負荷ドラム4が備えられている。この負荷ドラム4は、上下軸心回りに駆動回転すると共に、水平方向に移動自在とされており、スピンドル軸2に取り付けられたタイヤTに対してその外周面を近接・離反可能となっている。
【0015】
なお、本明細書の説明においては、
図1の紙面の上下をタイヤユニフォミティマシン1を説明する際の上下としている。また、
図1の紙面の左右をタイヤユニフォミティマシン1を説明する際の前後としている。さらに、
図1の紙面貫通方向をタイヤユニフォミティマシン1を説明する際の左右方向としている。
次に、タイヤユニフォミティマシン1を構成するスピンドル軸2および負荷ドラム4について、詳しく説明する。
【0016】
スピンドル軸2は、上下方向に沿って配備された長尺棒状の部材であり、その上端にはタイヤTの内周部を上下に挟み込んで固定するリム3が設けられている。スピンドル軸2の下端にはこのスピンドル軸2を回転させるモータ5が配備されていて、リム3により固定されたタイヤTをこのモータ5により正逆自在に回転できるようになっている。また、このスピンドル軸2は、スピンドルハウジング6の内部に上方から内挿された状態で配置されている。
【0017】
負荷ドラム4は、短尺な円筒状に形成されると共に上下方向に軸心を向けるようにして配備されたドラム部7と、このドラム部7を上下方向を向く軸回りに回転自在に支持する回転軸8と、回転軸8を回転自在に支持するフレーム9とを有している。また、この回転軸8の上端および下端には、負荷ドラム4に作用する荷重を計測するロードセル10が設けられており、上述したドラム部7および回転軸8はロードセル10を介してフレーム9に支持されている。さらに、負荷ドラム4は、前後方向に水平移動可能とされており、ドラム部7の外周面をタイヤTに所定の荷重で押し付けることができるようになっている。このようにしてロードセル10で計測された荷重は演算部11に送られる。
【0018】
上述した負荷ドラム4の側方には、負荷ドラム4の回転位相(周波数や位相)を計測する回転位相計12が配備されている。この回転位相計12は、ドラム部7に設けられた位置マーク13を読み取ることで、負荷ドラム4の回転位相を計測する構成となっている。つまり、ドラム部7の外周面には、周方向に亘って位置マーク13が(図例では外周面の上端側に)予め形成されている。そして、この位置マーク13から側方に距離をあけた位置に、回転位相計12が配備されている。この回転位相計12は、ドラム部7の外周面に設けられた位置マーク13を読み取ることで、ドラム部7の回転位相を計測可能となっている。この回転位相計12で計測された負荷ドラム4の回転位相は、上述したロードセル10で計測された荷重と同様に演算部11に送られる。
【0019】
演算部11は、ロードセル10で計測された荷重と、回転位相計12で計測された負荷ドラム4の回転位相とを用いて、補正波形(計測されたユニフォミティ波形から負荷ドラム4の影響を除去するための波形であって、補正を行う際に用いる波形)を算出する際に必要となる補正パラメータを算出するものである。また、この演算部11では、算出された補正パラメータを記憶しておいて、実際にタイヤTのユニフォミティを計測する際には記憶された補正パラメータに基づいて補正波形を算出し、算出された補正波形を用いてユニフォミティ波形を補正することも行われている。
【0020】
この演算部11には、具体的にはプロコンやパソコンなどが用いられており、次に示すような順番で信号が処理される。
以降では、演算部11において行われる信号処理の手順、言い換えれば本発明のユニフォミティ波形の補正方法を説明する。
本発明のユニフォミティ波形の補正方法は、ロードセル10及び回転位相計12を用いて、タイヤTのユニフォミティ波形を計測すると共に、負荷ドラム4の回転位相を計測しておき、計測されたユニフォミティ波形を、周波数変換することで周波数領域の波形に変換し、変換された周波数領域の波形において、負荷ドラム4の回転数の整数倍数成分での振幅及び位相
(周波数に関連した時間軸に関する波形を表すパラメータ)を求め、求められた負荷ドラム4の回転数の整数倍数成分での振幅及び位相
(周波数に関連した時間軸に関する波形を表すパラメータ)を補正パラメータとして記憶するものである。そして、タイヤTのユニフォミティ波形を計測すると共に、記憶された補正パラメータを基にしてタイヤユニフォミティ計測時の負荷ドラム4の回転位相範囲における補正波形を計算し、計算された補正波形を、計測されたユニフォミティ波形から差し引くことで、補正されたタイヤTのユニフォミティ波形を算出するものである。
【0021】
つまり、上述した補正パラメータを算出する際には、補正パラメータを求めようとするタイヤTをタイヤユニフォミティマシン1に装着して、ユニフォミティ波形や回転ドラム4の回転位相を予め計測しておく必要がある。
そこで、上下のリム3の間にタイヤTを挟み込み、スピンドル軸2の上部にタイヤTを取り付ける。そして、負荷ドラム4をスピンドル軸2側に水平移動させ、負荷ドラム4(ドラム部7)の外周面を所定の押付荷重でタイヤTに押し付ける。
【0022】
次に、モータ5を用いてスピンドル軸2を回転させる。そうすると、スピンドル軸2の上端に固定されたタイヤTも所定の回転数で回転し、タイヤTの回転に合わせてタイヤTと接触した負荷ドラム4が回転する。そして、負荷ドラム4に設けられたロードセル10でタイヤ半径方向や横方向に沿った荷重が計測される。
なお、このロードセル10で荷重を計測するときは、一般にタイヤTと負荷ドラム4とが異なる径に形成されているため、タイヤTの回転数とは異なる回転数で負荷ドラム4が回転する。それゆえ、負荷ドラム4の回転軸8に取り付けられたロードセル10では、タイヤTの回転位相に応じて変化する成分と、回転振れを有する負荷ドラム4の回転位相に応じて変化する成分とが重ね合わされたユニフォミティ波形が計測される。
【0023】
なお、上述したタイヤTの半径方向の荷重変動はRFV(Radial Force Variation)と呼ばれ、また横方向の荷重変動はLFV(Lateral Force Variation)と呼ばれる。以降の説明では、RFV値から補正波形を算出する方法を例に挙げて、本実施形態のユニフォミティ波形の補正方法を説明するが、LFV値も同様の手法で補正可能である。
図2(a)は、ロードセル10で計測された荷重のうち、RFVについてのユニフォミティ波形を示したものである。また、
図2(b)は、
図2(a)に示されるユニフォミティ波形の中で、0秒〜2秒を拡大して示したものである。例えば、タイヤTの回転数が60rpmの場合であれば、
図2(b)に拡大して示されるように、RFVのユニフォミティ波形は、1秒間のデータ周期で同じ波形が連続して繰り返されるような波形として計測される。
【0024】
このようにタイヤTの回転数が60rpm(回転周波数1Hz)の場合に、計測されたユニフォミティ波形をFFT(高速フーリエ変換)計算すると、
図3(a)および
図3(b)に示すように1Hzの倍数となる周波数(例えば、1Hz、2Hz、3Hz・・・など)にピークが得られる。この1Hzの倍数成分は、上述したようにタイヤTの回転位相に応じて変化するものであり、タイヤTのユニフォミティとして本来評価に用いるべきものである。
【0025】
一方、通常のユニフォミティ計測と同様に計測時間が1秒程度と短い場合は、分解能が低いため、
図3(a)に「折れ線」で示されるように、荷重の変化を大まかに捉えた粗い変化曲線しか得られない。しかし、タイヤユニフォミティの計測時間を数10秒以上と長くすると、分解能が高くなって荷重変化を精度良く捉えた緻密な変化曲線が得られる。例えば
図3(a)のようにタイヤユニフォミティの計測時間を64秒と長くすると、分解能
が高くなって1Hzの倍数となる周波数に鋭く立ち上がったピークが存在することが判断できるようになる(
図3(a)の「スパイク状の波形」)。
【0026】
また、
図3(a)のグラフでは、タイヤTの回転位相に応じて変化する鋭く立ち上がったピークの間に、高さが低い別のピークも観察されるようになる。これらのピークは、ロードセル10で計測される荷重のうち、上述したように負荷ドラム4の回転位相に応じて変化する成分となっている。
この負荷ドラム4の回転位相に応じて変化する成分は、ピークの高さがタイヤTの回転位相に応じて変化する成分ほど高くないので、
図3(b)に示すように縦軸のスケールを拡大して示すとピークが発生する周波数をより正確に判断することが可能となる。つまり、負荷ドラム4の回転位相に応じて変化する成分のピークは、1Hzとは異なる0.7Hzの倍数となる周波数毎に観測されており、周波数空間においてはタイヤTの回転位相に応じて変化する成分のピークと負荷ドラム4の回転位相に応じて変化する成分のピークとが明確に分離できることが分かる。
【0027】
そこで、本発明の補正方法では、この周波数空間において、負荷ドラム4の回転位相に応じて変化する成分のピークと、タイヤTの回転位相に応じて変化する成分のピークとを分離し、負荷ドラム4の回転位相に応じて変化する成分のピークだけを抽出する。
具体的には、本発明の補正方法では、負荷ドラム4の回転位相に応じて変化する成分のピークの振幅A
iのみを補正パラメータとしてまず算出する。また、上述した回転位相計12を用いて、負荷ドラム4の回転位相に応じて変化する各ピークが観測される回転位相φ
iを計測する。このようにして算出された振幅A
iと回転位相φ
iは、補正パラメータとして、演算部11に予め記憶される。以上が、補正パラメータの算出手順である。
【0028】
次に、このようにして算出された補正パラメータに基づいて補正波形を算出し、算出された補正波形を用いてユニフォミティ波形を補正する際に行われる信号処理の手順を説明する。この信号処理も、タイヤユニフォミティマシン1に備えられた演算部11にて行われる。
まず、上述した手順で、ユニフォミティを計測しようとするタイヤTについて、補正パラメータが予め求められているとする。このような状況において、タイヤTのユニフォミティを計測するには、最初に補正パラメータを算出する際と同じ手順で、スピンドル軸2にタイヤTを取り付け、負荷ドラム4の外周面を所定の押付荷重でタイヤTに押し付けた上で、モータ5を用いてスピンドル軸2を回転させる。そして、負荷ドラム4の回転軸8に取り付けられたロードセル10で、ユニフォミティ波形を計測する。なお、このとき計測されるタイヤTのユニフォミティ波形は、通常のユニフォミティ計測条件に従ったものであり、補正パラメータを求める時より短い1秒程度の計測時間に亘って計測を行ったものである。
【0029】
次に、回転位相計12では、ユニフォミティ計測が開始した時の回転位相θ
sと、例えば1秒間程度の計測時間が経過してユニフォミティ計測が終了した時の回転位相θ
eとを計測し、演算部11に記憶する。
そして、演算部11に記憶された振幅A
i及び回転位相φ
iを式(1)に代入し、次の式(1)を利用して逆フーリエ変換を行うことにより、上述した回転位相θ
s〜θ
eの位相範囲内で計測されたユニフォミティ波形に対する補正波形を算出することができる。
【0031】
なお、式(1)のA
1、A
2、A
3、・・・及びφ
1、φ
2、φ
3、・・・は、補正パラメータとして演算部11に記憶された数値を呼び出したものである。
また、式(1)のθは、次の式(2)に従って算出された位相の刻みで、回転位相θ
s〜θ
eの範囲でユニフォミティ波形のサンプリングに対応して計算される位相角である。
【0033】
ただし、θ=iΔθ(i=1,2,3・・・N
0)、またN
0は、ユニフォミティ波形の1秒間のサンプリング数を示している。
このようにして算出された補正波形は、周波数空間で分離された負荷ドラム4の回転位相に応じて変化する成分だけで構成されており、負荷ドラム4の回転に由来してユニフォミティ波形に加わる誤差、言い換えれば負荷ドラム4の回転振れによる影響を示したものとなっている。
【0034】
それゆえ、実際に計測されたユニフォミティ波形から、式(1)及び式(2)に基づいて得られた補正波形を差し引けば、補正後のユニフォミティ波形を得ることが可能となる。
例えば、
図4(a)は、60rpmの回転数で回転するタイヤTに対してユニフォミティ波形を求めた結果を示したものである。
図4(a)のグラフを見ると、図中において丸で囲まれた(A)〜(C)の部分に観察されるピークが、他のピークよりもピーク高さが低く、負荷ドラム4の回転位相に応じて変化する成分が誤差として作用していることが分かる。
【0035】
そこで、上述したように、予め演算部11に記憶された補正パラメータを式(1)に代入して、ユニフォミティの補正波形を求める。求められた補正波形は、
図4(b)に示すようにピーク高さが低く、またピークの発生周期も
図4(a)より長くなっており、負荷ドラム4の回転位相に応じて変化している。
次に、
図4(a)に示されるユニフォミティ波形から、
図4(b)に示される補正波形を差し引くと、
図4(c)に示されるようなユニフォミティ波形が得られる。この
図4(c)に示されるユニフォミティ波形では、
図4(a)における(A)〜(C)の部分に相当する12秒を超えた付近、15秒を超えた付近、18秒を超えた付近に確認されるピークの高さが、他の部分に確認されるピークとほぼ同じ高さとなっている。
【0036】
このことから、補正前のユニフォミティ波形に、誤差として加わっていた負荷ドラム4の回転位相に応じて変化する成分が取り除かれ、計測されたユニフォミティ波形が確実に補正されていることがわかる。
上述したように計測されたユニフォミティ波形を周波数領域の波形に変換し、周波数空間において負荷ドラム4の回転に由来するピークだけをタイヤTの回転に由来するピークから分離すれば、外乱の影響を排除して負荷ドラム4の回転に由来するピークだけを精度良く抽出することが可能となる。
【0037】
また、タイヤTの種別毎に長時間に亘って荷重と回転位相のデータを採取し、採集したデータを補正パラメータとして保有することが望ましい。このようにすれば、さまざまな種別のタイヤTに対して補正パラメータを予め用意することができ、短時間で補正波形を計算してユニフォミティ波形を補正し、タイヤTのユニフォミティを正確に評価することが可能となるからである。
【0038】
なお、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。