特許第5871782号(P5871782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871782
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】デマンドコントローラ及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/14 20060101AFI20160216BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20160216BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20160216BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20160216BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   H02J3/14
   H02J3/46
   H02J3/38 130
   H02J3/32
   H02J7/35 K
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-258307(P2012-258307)
(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-107923(P2014-107923A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 正寿
【審査官】 田中 寛人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−284586(JP,A)
【文献】 特開2009−247188(JP,A)
【文献】 特開2012−175849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00−7/12、7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備に対する、デマンド契約先の電力会社から供給される受電電力、太陽光発電システムから供給される太陽光電力及び蓄電池に蓄積された電力の供給を制御するデマンドコントローラにおいて、
前記設備による前記受電電力の消費に関する受電電力情報を取得する受電電力情報取得手段と、
前記設備による前記太陽光電力の消費に関する太陽光電力情報を取得する太陽光電力情報取得手段と、
前記受電電力情報及び前記太陽光電力情報を用いて、現在のデマンド期間における前記設備の消費電力量の予測値を算出する電力量予測値算出手段と、
前記電力量予測値算出手段により算出された予測値が予め設定された受電電力量の目標値を上回った場合、前記設備への蓄電池の放電開始を指示する指示手段と、
を有し、
前記電力量予測値算出手段は、
現時点における前記太陽光電力から、現在のデマンド期間の開始時点から現時点までの間における前記太陽光電力の最小値を減算することによって前記太陽光電力の変動量を算出し、
現在のデマンド期間の現時点から終了時点までの前記設備の受電電力量の予測値を、現時点における前記受電電力と算出した前記太陽光電力の変動量とを加算した電力が現時点から現在のデマンド期間の終了時点までの間、受電されるものとして算出することを特徴とするデマンドコントローラ。
【請求項2】
設備に対する、デマンド契約先の電力会社から供給される受電電力、太陽光発電システムから供給される太陽光電力及び蓄電池に蓄積された電力の供給を制御するデマンドコントローラを形成するコンピュータを、
前記設備による前記受電電力の消費に関する受電電力情報を取得する受電電力情報取得手段、
前記設備による前記太陽光電力の消費に関する太陽光電力情報を取得する太陽光電力情報取得手段、
前記受電電力情報及び前記太陽光電力情報を用いて、現在のデマンド期間における前記設備の消費電力量の予測値を算出する電力量予測値算出手段、
前記電力量予測値算出手段により算出された予測値が予め設定された受電電力量の目標値を上回った場合、前記設備への蓄電池の放電開始を指示する指示手段、
として機能させ、
前記電力量予測値算出手段は、
現時点における前記太陽光電力から、現在のデマンド期間の開始時点から現時点までの間における前記太陽光電力の最小値を減算することによって前記太陽光電力の変動量を算出し、
現在のデマンド期間の現時点から終了時点までの前記設備の受電電力量の予測値を、現時点における前記受電電力と算出した前記太陽光電力の変動量とを加算した電力が現時点から現在のデマンド期間の終了時点までの間、受電されるものとして算出することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デマンドコントローラ及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力の供給契約としてデマンド契約している企業においては、近年、ビル、工場等に太陽光発電システムの導入が進んでおり、太陽光発電システムから供給される電力を利用することによってピーク時間帯における受電電力が抑えられる一定の効果が得られている。
【0003】
ただ、太陽光発電システムは、天気の影響を受けやすいため、天気の不順や急変に対応しきれない場合が発生しうる。
【0004】
そこで、従来では、太陽光発電システムの不安定な電力供給を補完するために蓄電池を併設する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−018763号公報
【特許文献2】特開2011−196968号公報
【特許文献3】特開2010−186840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、太陽光発電システムと蓄電池とを併設したデマンド管理システムにおいて、デマンド契約先から供給される受電電力量がデマンド値を従来に比してより確実に超えないように電力制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るデマンドコントローラは、設備に対する、デマンド契約先の電力会社から供給される受電電力、太陽光発電システムから供給される太陽光電力及び蓄電池に蓄積された電力の供給を制御するデマンドコントローラにおいて、前記設備による前記受電電力の消費に関する受電電力情報を取得する受電電力情報取得手段と、前記設備による前記太陽光電力の消費に関する太陽光電力情報を取得する太陽光電力情報取得手段と、前記受電電力情報及び前記太陽光電力情報を用いて、現在のデマンド期間における前記設備の消費電力量の予測値を算出する電力量予測値算出手段と、前記電力量予測値算出手段により算出された予測値が予め設定された受電電力量の目標値を上回った場合、前記設備への蓄電池の放電開始を指示する指示手段と、を有し、前記電力量予測値算出手段は、現時点における前記太陽光電力から、現在のデマンド期間の開始時点から現時点までの間における前記太陽光電力の最小値を減算することによって前記太陽光電力の変動量を算出し、現在のデマンド期間の現時点から終了時点までの前記設備の受電電力量の予測値を、現時点における前記受電電力と算出した前記太陽光電力の変動量とを加算した電力が現時点から現在のデマンド期間の終了時点までの間、受電されるものとして算出することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るプログラムは、設備に対する、デマンド契約先の電力会社から供給される受電電力、太陽光発電システムから供給される太陽光電力及び蓄電池に蓄積された電力の供給を制御するデマンドコントローラを形成するコンピュータを、前記設備による前記受電電力の消費に関する受電電力情報を取得する受電電力情報取得手段、前記設備による前記太陽光電力の消費に関する太陽光電力情報を取得する太陽光電力情報取得手段、前記受電電力情報及び前記太陽光電力情報を用いて、現在のデマンド期間における前記設備の消費電力量の予測値を算出する電力量予測値算出手段、前記電力量予測値算出手段により算出された予測値が予め設定された受電電力量の目標値を上回った場合、前記設備への蓄電池の放電開始を指示する指示手段、として機能させ、前記電力量予測値算出手段は、現時点における前記太陽光電力から、現在のデマンド期間の開始時点から現時点までの間における前記太陽光電力の最小値を減算することによって前記太陽光電力の変動量を算出し、現在のデマンド期間の現時点から終了時点までの前記設備の受電電力量の予測値を、現時点における前記受電電力と算出した前記太陽光電力の変動量とを加算した電力が現時点から現在のデマンド期間の終了時点までの間、受電されるものとして算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、デマンド契約先から供給される受電電力量がデマンド値を従来に比してより確実に超えないように電力制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るデマンドコントローラを有するデマンド管理システムの一実施の形態を示したブロック構成図である。
図2】本実施の形態におけるデマンドコントローラを形成するコンピュータのハードウェア構成図である。
図3】本実施の形態における電力制御処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。まず、はじめに、本実施の形態において用いる語句等について説明する。
・「負荷設備」というのは、ビル、工場等で電力を消費する空調、照明等の設備の総称である。また、単に「設備」ともいう。
・「受電電カ」とは、ビル、工場等の受電点を通して電力会社から負荷設備に供給される電力のことをいう。
・「デマンド契約」とは、電気料金のうちの基本料金が電力会社からの受電点における最大受電電力(デマンド)により決定される契約のことをいう。なお、最大受電電力(デマンド)は、30分毎の平均電力として計測される。
・「デマンド期間」とは、デマンドを計測するための30分毎の各期間のことをいう。デマンド期間のうち現時点が属するデマンド期間を「現在のデマンド期間」と称することにする。
・「デマンド値」とは、デマンド期間における、予め設定された受電電力量の目標値のことをいう。通常は、デマンド契約における契約電力(過去1年間の最大値)の1/2を用いる。例えば、契約電力が400kWの場合のデマンド値は、400kW×(1/2)h=200kWhとなる。
・「太陽光電力」とは、太陽光発電システムにより発電される電力のことをいう。
・電力量の「予測値」とは、現在のデマンド期間の受電電力量を何らかの方法で予測した値のことをいう。また、現時点をx分とすると、デマンド期間の開始から現時点まで(00分〜x分)の電力量を「実績値」、現時点からデマンド期間の終了まで(x分〜30分)の電力量を「残期間予測値」と称することにする。予測値=実績値+残期間予測値の関係が成り立つ。
・各電力の一般的な関係
(1)蓄電池の放電も充電もない状態では、基本的に次式の関係が成り立つ。
設備の消費電力=受電電力+太陽光電力
【0014】
設備の消費電力を一定とした場合、好天で太陽光電力が大きい時には受電電力が小さくなり、逆に太陽光電力が小さくなった時には受電電力が大きくなる。
【0015】
太陽光電力が設備の消費電力を上回る場合には、上式の受電電力はマイナスとなる(すなわち、電力会社への逆潮流が発生する)。但し、本実施の形態では、消費電力が大きい場合のデマンドコントロールを扱うので、逆潮流は考慮しない。
(2)蓄電池が放電している状態では、次の関係式となる。
設備の消費電力=受電電力+太陽光電力+蓄電池の放電電力
(3)蓄電池が充電されている状態では、次の関係式となる。
設備の消費電力=受電電力+太陽光電カ−蓄電池の充電電力
【0016】
但し、本実施の形態では、消費電力が大きい場合のデマンドコントロールを扱うので、蓄電池の充電は考慮しない。
【0017】
実施の形態1.
図1は、本発明に係るデマンドコントローラを有するデマンド管理システムの一実施の形態を示したブロック構成図である。図1には、受電点2と、デマンドコントローラ10と、電力を消費する負荷設備4と、パワーコンディショナ30と、デマンドコントローラ10、負荷設備4及びパワーコンディショナ30を接続する電力線6とが示されている。受電点2は、デマンド契約先の電力供給側(電力会社)からの送電を受ける。負荷設備4は、上記の通り電力を消費する設備である。図1には、便宜的に1つのブロックで図示したが、実際には、1又は複数の設備が含まれている。パワーコンディショナ30は、太陽光発電システムに含まれる太陽電池34及び蓄電池35を接続し、太陽光発電システム及び蓄電池35を利用する上で、発電された電気を負荷設備4で使用できるように変換する機器である。デマンドコントローラ10は、負荷設備4における受電電力の消費電力量がデマンド値を超えないように電力供給等の管理を行うデマンド管理装置である。本実施の形態におけるデマンドコントローラ10は、負荷設備4に対する、デマンド契約先の電力会社から供給される受電電力、太陽光発電システムにより発電される太陽光電力及び蓄電池35に蓄積された電力の供給を制御する。
【0018】
図2は、本実施の形態におけるデマンドコントローラ10を形成するコンピュータのハードウェア構成図である。本実施の形態においてデマンドコントローラ10を形成するコンピュータは、従前から存在する汎用的なハードウェア構成で実現できる。すなわち、コンピュータは、図2に示したようにCPU41、ROM42、RAM43、ハードディスクドライブ(HDD)44を接続したHDDコントローラ45、デマンド管理に必要な情報設定等の際に用いる、入力手段として設けられたマウス46とキーボード47、及び電力の供給状態等デマンド監視に用いるデータを表示する表示装置として設けられたディスプレイ48をそれぞれ接続する入出力コントローラ49、受電点2からの受電電力情報やパワーコンディショナ30からの太陽光電力情報の受信、また電力の供給の開始や停止等の指示情報の送信に用いる通信手段として設けられたネットワークコントローラ50を内部バス51に接続して構成される。
【0019】
なお、パワーコンディショナ30のハードウェア構成も図2に例示したように図示できる。もちろん、必要に応じてマウス等の構成要素を持たせなくてもよい。
【0020】
図1に戻り、本実施の形態におけるデマンドコントローラ10は、受電電力情報取得部11、太陽光電力情報取得部12、計時部13、予測値算出部14、パワコン制御部15、負荷設備動作制御部16、制御部17、受電電力情報蓄積部21、太陽光電力情報蓄積部22及び電力量目標値記憶部23を有している。
【0021】
受電電力情報取得部11は、受電電力情報取得手段として設けられ、負荷設備4による受電電力の消費に関する受電電力情報を取得し、受電電力情報蓄積部21に蓄積する。太陽光電力情報取得部12は、太陽光電力情報取得手段として設けられ、負荷設備4による太陽光電力の消費に関する太陽光電力情報を取得し、太陽光電力情報蓄積部22に蓄積する。計時部13は、いわゆるタイマ機能を提供する手段であり、本実施の形態では、1分の経過を制御部17に通知する。予測値算出部14は、電力量予測値算出手段として設けられ、受電電力情報及び太陽光電力情報を用いて、デマンド値を算出する現在のデマンド期間(30分)における受電電力量の予測値を算出する。パワコン制御部15は、指示手段として設けられ、蓄電池35の放電の開始/終了等パワーコンディショナ30に対して動作制御に関連する指示を送る。特に、本実施の形態においては、予測値算出部14により算出された予測値がデマンド値を上回った場合、負荷設備4への蓄電池35の放電開始を指示する。デマンド値は、電力量目標値記憶部23に記憶されている。負荷設備動作制御部16は、負荷設備4に含まれる1又は複数の電気機器に対し、動作の開始/停止や抑制等動作に関連する指示を行う。「抑制」というのは、能力を抑えた状態での稼動(フル稼動ではない状態、省エネモード等)のことをいう。制御部17は、デマンドコントローラ10に含まれる構成要素11〜16の動作制御を行う。
【0022】
デマンドコントローラ10における各構成要素11〜17は、デマンドコントローラ10を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPU41で動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、各記憶部21〜23は、デマンドコントローラ10に搭載されたHDD44にて実現される。あるいは、RAM43又は外部にある記憶手段をネットワーク経由で利用してもよい。
【0023】
パワーコンディショナ30は、太陽光発電制御部31、太陽光電力情報通知部32及び蓄電池電力制御部33を有している。太陽光発電制御部31は、太陽電池34を用いた太陽光発電システムにおける電力制御を行う。太陽光電力情報通知部32は、太陽光電力情報として太陽光発電システムからの出力値(太陽光電力)をデマンドコントローラ10に通知する。本実施の形態では、1分周期で太陽光電力情報を通知すればよい。蓄電池電力制御部33は、蓄電池35の放電の開始/停止、蓄電等蓄電池35に対する電力制御を行う。パワーコンディショナ30における各構成要素31〜33は、パワーコンディショナ30に含まれるコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPUで動作するプログラムとの協調動作により実現される。
【0024】
また、本実施の形態で用いるプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROMやDVD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。通信手段や記録媒体から提供されたプログラムはコンピュータにインストールされ、コンピュータのCPU41がプログラムを順次実行することで各種処理が実現される。
【0025】
ところで、受電電力量の予測値は、現在のデマンド期間の開始時点から現時点までの受電電力量(実績値)と、現在のデマンド期間の現時点から終了時点までの受電電力量(残期間予測値)とを合算して算出できる。本実施の形態における予測値算出部14は、残期間予測値を、現時点における受電電力と算出した太陽光電力の変動量とを加算した電力が現時点から現在のデマンド期間の終了時点までの間、受電されるものとして算出することを特徴としている。この受電電力量の予測に関しては、追って詳述する。
【0026】
次に、本実施の形態における電力制御処理を図3に示したフローチャートを用いて説明する。デマンド管理では、デマンド値を計算する期間(デマンド期間)を30分の長さとし、このデマンド期間において受電電力量の予測値がデマンド値を超えないよう監視する。図3に示した電力制御処理は、デマンド期間において定周期的に繰り返し実行される。ここでは、1分毎に繰り返すものとして説明する。
【0027】
制御部17は、計時部13から1分が経過するたびにその時間経過の通知を受けることになるが、あるタイミングで受けた通知によってデマンド期間を開始する。そして、1分間隔で計時部13から1分経過の通知を受けるたびに、デマンド期間の終了時点まで、つまり通知を30回受ける度毎に電力制御処理の実行を開始する。なお、現在のデマンド期間における電力制御処理が終了すると、次のデマンド期間における電力制御処理が開始されることになる。
【0028】
ステップ101において、デマンド期間において計時部13から通知を受けると、制御部17は、受電電力情報取得部11及び太陽光電力情報取得部12を起動する。受電電力情報取得部11は、起動されると、受電点メータからの電力量パルスを受けることで現時点における受電電力を受電電力情報として取得し、受電電力情報蓄積部21に蓄積する。一方、太陽光電力情報取得部12は、起動されると、太陽光電力情報として現時点における太陽光発電システムから供給されている電力の出力値、すなわち太陽光電力を取得し、太陽光電力情報蓄積部22に蓄積する。受電電力情報及び太陽光電力情報の取得は、いずれを先に実行してもよいし、同時並行して実行してもよい。
【0029】
ステップ102において、現時点における受電電力情報及び太陽光電力情報が取得されたことを確認すると、制御部17は、予測値算出部14を起動する。予測値算出部14は、起動されると、次のように、現在のデマンド期間(30分)における受電電力量の予測値を算出する。
【0030】
すなわち、予測値算出部14は、受電電力情報蓄積部21から現在のデマンド期間の開始時点から現時点までの間に蓄積された受電電力を取得し、これらの積算値、すなわち現在のデマンド期間の開始時点から現時点までの受電電力量W2を算出する。
【0031】
更に、予測値算出部14は、太陽光電力情報蓄積部22から現在のデマンド期間の開始時点から現時点までの間に蓄積された太陽光電力を取得し、これらの中で最も小さい太陽光電力(最小値)pminを抽出する。なお、太陽光電力の最小値は、直前に実行した電力制御処理において求めた最小値を一時保持しておき、その最小値と今回取得した現時点の太陽光電力とを比較し、小さい方を最小値として記憶するようにしてもよい。そして、予測値算出部14は、現時点の太陽光電力pから太陽光電力(最小値)pminを減算することで太陽光電力の変動値Δpを算出する。
【0032】
そして、受電電力量の予測値Wを、
W=W2+(w+Δp)×(30−x)/60
という計算式にて算出する。
【0033】
但し、W2は現時点までの受電電力量、wは現時点の受電電力、xは開始時点から現時点までの経過時間(分)である。wは、直近の1分間の電力量を60倍する等の方法で把握することができる。
【0034】
ところで、現在のデマンド期間の現時点から終了時点における予測値を算出する項の電力を(w+Δp)としたのは、次の理由に基づく。
【0035】
天気が安定している場合、太陽光発電システムからは、太陽光電力の安定供給が見込めるので、負荷設備4が要求する電力量が一定であるという前提のもと、残期間における受電電力は、現時点の受電電力で供給し続ければよいと考えられる。従って、残期間における受電電力量(残期間予測値)は、w×(30−x)/60と算出できる。なお、xは開始時点から現時点までの経過時間であるので、(30−x)は残期間を示す。
【0036】
これに対し、天気が安定しないと、太陽光発電システムからの出力値pは安定しない。晴天の状態において雲が広がることで出力値pが減少した場合、その減少分を受電電力で補う必要がある。そこで、受電電力が補う分を次のようにして求める。
【0037】
すなわち、現在のデマンド期間の開始時点から現時点までの間に取得された太陽光電力の中から最小値pminを抽出する。太陽光電力(最小値)pminが出力された時点というのは、当該期間内において日照が最も悪かった時点と考えられる。本実施の形態においては、残期間における天気は、その最悪な時点より悪くなることはないと想定することにした。つまり、太陽光発電システムからは、少なくとも太陽光電力(最小値)pminは出力されるので、受電電力として、現時点の受電電力wに加えて、現時点の太陽光電力pから最小値pminを減算した電力Δp(=p−pmin)を供給すればよいということになる。従って、残期間における受電電力量(残期間予測値)は、(w+Δp)×(30−x)/60と算出できる。
【0038】
ステップ103において、制御部17は、電力量目標値記憶部23から受電電力量の目標値W1を取得する。なお、受電電力量の目標値は、予測値Wの算出後でなくても、次の比較処理までに取得しておけばよい。
【0039】
ここで、制御部17は、消費電力量の予測値Wと受電電力量の目標値W1とを比較する。ここで、予測値Wが目標値W1以下の場合(ステップ104でN)、現在のデマンド期間における平均使用電力はデマンド値を超えないと推定できる。よって、制御部17は、パワーコンディショナ30に蓄電池35の放電の停止を、負荷設備動作制御部16に負荷設備4の中の電気機器に対する停止又は抑制という設定の解除を、それぞれ指示する(ステップ108)。
【0040】
パワコン制御部15は、この指示に応じて、蓄電池35が放電中の場合には、蓄電池35の放電の停止をパワーコンディショナ30に指示する。放電中か否かは、過去の指示の履歴から判断してもよいし、パワーコンディショナ30に問い合わせてもよい。あるいは、蓄電池35の放電の停止をパワーコンディショナ30に無条件に指示し、パワーコンディショナ30において蓄電池35が放電中か否かを判定させるようにしてもよい。一方、負荷設備動作制御部16は、この指示に応じて、負荷設備4の中に停止又は抑制中の電気機器が存在すれば、停止又は抑制という設定を解除することで元の運転状態に戻す。なお、負荷設備4の状態は、直前に指示した内容を保持しておき、その指示内容を参照することで認識するようにしてもよい。また、複数の電気機器が停止又は抑制中の場合は、段階的に解除するようにしてもよい。
【0041】
一方、予測値Wが目標値W1を上回る場合(ステップ104でY)、蓄電池35が放電中の場合には(ステップ105でY)、電力の供給増加が見込めないので、制御部17は、負荷設備動作制御部16に、負荷設備4に含まれる特定の電気機器の停止又は電力の供給の抑制を指示する(ステップ109)。特定の電気機器というのは、電力の供給が制限される電気機器である。制限される電気機器には、優先順位が予め設定されており、その優先順位に従って電力の供給が制限される。この制限される電気機器の選択及び制限量、また優先順位の設定等に関しては、本実施の形態の特徴ではないので説明を省略する。
【0042】
蓄電池35が放電中でない場合(ステップ105でN)、蓄電池35が放電可能な状態でなければ(ステップ106でN)、制御部17は、上記と同様、負荷設備4に含まれる特定の電気機器の停止又は電力の供給の抑制を指示する(ステップ109)。一方、蓄電池35が放電可能な状態であれば(ステップ106でY)、制御部17は、パワーコンディショナ30に蓄電池35の放電の開始を指示する(ステップ107)。
【0043】
本実施の形態においては、以上説明したように現在のデマンド期間における平均使用電力がデマンド値を超えないように電力の供給制御を行う。
【0044】
実施の形態2.
本実施の形態における装置構成及び処理手順は、実施の形態1において用いた図1乃至図3と同じでよい。本実施の形態は、予測値算出部14における残期間における受電電力量(残期間予測値)の算出方法のみが異なる。つまり、本実施の形態は、図3に示したステップ102における処理が異なるだけなので、この処理について説明する。
【0045】
上記実施の形態1においては、現在のデマンド期間の開始時点から現時点までの間の最悪の時点の太陽光発電システムからの出力値pminを求め、この出力値pminに基づいて残期間における受電電力(w+Δp)を設定するようにした。つまり、開始時点から現時点までの間の最悪の時点における太陽光電力pminは維持できると予測したとも言える。残期間における天気が、現時点までの最悪の時点よりも悪くなった場合には、太陽光電力pminが更新される。図3に示した電力制御処理は、定周期的に繰り返し実行されるので、その時点でのΔp(=p−pmin)を用いた電力制御が行われる。
【0046】
これに対し、本実施の形態では、現時点以降、天気が急変して太陽光発電システムからの太陽光電力の供給が全く見込めなくなった場合、つまり、太陽光電力pが0kWになった場合、その分pを受電電力で補う必要がある。本実施の形態では、このような最悪な場合を想定して、残期間における受電電力量(残期間予測値)を、(w+p)×(30−x)/60と求めるようにした。
【0047】
本実施の形態においては、以上説明したように、太陽光発電システムからの出力値分全体を受電電力で補う場合を想定して、現在のデマンド期間における消費電力量を予測するようにした。これにより、現在のデマンド期間における平均使用電力がデマンド値を超えないように電力の供給制御を行う。
【0048】
本実施の形態においては、太陽光電力Pが0kWになるという最悪のケースを想定して電力制御を行うため、デマンド値の超過をより確実に防ぐことができる一方、天気の安定した状態においても蓄電池放電が指示される確率が大きくなり、蓄電電力が無駄に消費される場合もあり得る。そのため、デマンド期間のうち、例えば始めの25分間に実施の形態1による電力制御を行って、天気の安定した状態における無駄な蓄電池放電を防止し、最後の5分間に本実施の形態による電力制御を行って、デマンド値超過防止の確実性を増すといった組合せが有効である。
【0049】
なお、本実施の形態では、デマンド管理、負荷設備4への電力供給制御を行うため、前述した電力制御処理機能をデマンドコントローラ10に搭載することが最適であり、また搭載した場合を例にして説明したが、電力制御処理機能を別装置に搭載させて、デマンドコントローラ10と連携動作させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0050】
2 受電点、4 負荷設備、6 電力線、10 デマンドコントローラ、11 受電電力情報取得部、12 太陽光電力情報取得部、13 計時部、14 予測値算出部、15 パワコン制御部、16 負荷設備動作制御部、17 制御部、21 受電電力情報蓄積部、22 太陽光電力情報蓄積部、23 電力量目標値記憶部、30 パワーコンディショナ、31 太陽光発電制御部、32 太陽光電力情報通知部、33 蓄電池電力制御部、34 太陽電池、35 蓄電池、41 CPU、42 ROM、43 RAM、44 ハードディスクドライブ(HDD)、45 HDDコントローラ、46 マウス、47 キーボード、48 ディスプレイ、49 入出力コントローラ、50 ネットワークコントローラ、51 内部バス。
図1
図2
図3