(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者らは、上記課題を解決するために、エアギャップレス構造の表示パネルの気泡の発生や剥離の原因とメカニズムについて鋭意研究した結果、高温高湿下に、水蒸気や炭酸ガスなどが発生し、透明粘着性樹脂層へ拡散して気泡となって滞留したり、場合によっては表示パネルとの剥離を生じさせていることを発見した。そして、このガスの透明粘着性樹脂層側への拡散を特定のガスバリアー層で防止することにより気泡の発生や剥離を防止することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明により、
透明硬質樹脂基板上に、下地層、ガスバリアー層が順次積層されてなる表示パネル用透明保護板であって、
前記下地層が、ウレタンアクリレート系接着性樹脂(A)90〜20質量部と、アルコキシシラン化合物およびその加水分解物、シランカップリング剤およびその加水分解物、並びにシリカ微粒子からなる群より選ばれる少なくとも一つの珪素化合物(B)10〜80質量部とを含有する下地材を重合させてなる硬化体からなり、
前記ガスバリアー層が、ポリシラザン化合物(C)をアミン系触媒(D)の存在下に硬化させてなる硬化体の層であることを特徴とする前記表示パネル用透明保護板[I]が提供される。
上記表示パネル用透明保護板[I]において、更に下記の態様とすることが好適である。
(1)下地層の厚みが0.5〜20μmであり、ガスバリアー層の厚みが0.05〜2μmであること
(2)透明硬質樹脂基板が、ポリメチルメタアクリレート樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、またはポリメチルメタアクリレート系樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂との積層樹脂であること。
【0009】
本発明により、また、
透明硬質樹脂基板上に、下地層、ガスバリアー層、透明粘着層が順次積層されてなる表示パネル用透明保護板であって、
前記下地層が、ウレタンアクリレート系接着性樹脂(A)90〜20質量部と、アルコキシシラン化合物およびその加水分解物、シランカップリング剤およびその加水分解物、並びにシリカ微粒子からなる群より選ばれる少なくとも一つの珪素化合物(B)10〜80質量部とからなり、
前記ガスバリアー層が、ポリシラザン化合物(C)をアミン系触媒(D)の存在下に硬化させてなる硬化体の層であることを特徴とする前記表示パネル用透明保護板[II]が提供される。
上記表示パネル用透明保護板[II]において、更に下記の態様とすることが好適である。
(3)透明粘着層が、アクリル系粘着剤からなること
(4)下地層の厚みが0.5〜20μmであり、ガスバリアー層の厚みが0.05〜2μmであること
(5)透明硬質樹脂基板が、ポリメチルメタアクリレート樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、またはポリメチルメタアクリレート系樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂との積層樹脂であること。
【0010】
即ち、本発明は、表示パネル上に、透明粘着層、ガスバリアー層、下地層、透明硬質樹脂基板が順次積層されてなる表示装置
の製造方法であって、
前記下地層
は、ウレタンアクリレート系接着性樹脂(A)90〜20質量部と、アルコキシシラン化合物およびその加水分解物、並びにシランカップリング剤およびその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一つの珪素化合物(B)10〜80質量部とを含有する下地材を重合
させて形成され、
前記ガスバリアー層
は、ポリシラザン化合物(C)をアミン系触媒(D)の存在下に硬化
させて形成されることを特徴とする前記表示装置
の製造方法である。
上記表示装置の製造方法の発明においては、
1)透明硬質樹脂基板上に、ウレタンアクリレート系接着性樹脂(A)90〜20質量部と、アルコキシシラン化合物およびその加水分解物、並びにシランカップリング剤およびその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一つの珪素化合物(B)10〜80質量部とを含有する下地材を重合させてその硬化体からなる下地層を形成した後、当該下地層上にポリシラザン化合物(C)をアミン系触媒(D)の存在下に硬化させてその硬化体の層からなるガスバリアー層を積層してなる透明保護板を予め作製し、次いで、表示パネルの表面に当該透明保護板のガスバリアー層面を透明粘着層を介在させて接合すること、2)表示パネルが、液晶表示パネルであること
が好適である。
【0011】
本発明の表示装置は、上記基本構造を有するものであるが、好ましくは、前記表示パネル用透明保護板[I]と表示パネルとが、透明保護板[I]のガスバリアー層と表示パネル表面とを対面させ、透明粘着剤を用いて貼り合わされたもの、或いは、前記透明保護板[II]が、その透明粘着層を介して表示パネル上に積層されたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の表示装置は、視野性や耐衝撃強度に優れるだけでなく、高温高湿下での気泡の発生や保護板の剥離を防止できる。この結果、高温高湿下に晒されることがあるカーナビゲーション用の液晶表示装置やタッチパネルとして好適に使用できる。
また、液晶パネルやタッチパネルなどの表示パネルの表面に簡便に装着が可能で、上記諸特性を発現する表示装置とすることができる表示パネル用透明保護板が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の表示パネル用透明保護板[I]は、透明硬質樹脂基板上に、下地層、ガスバリアー層が順次積層されて構成されている。
【0015】
〈透明硬質樹脂基板〉
透明硬質樹脂基板としては、耐衝撃強度に優れ視野性の障害にならない透明硬質樹脂であれば何ら制限はない。透明性及び耐衝撃強度の観点から、ポリメチルメタアクリレート樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、或いはポリメチルメタアクリレート系樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂との積層樹脂からなる基板が好ましい。積層樹脂基板の具体的な構成としては、芳香族ポリカーボネート樹脂の片面にポリメチルメタアクリレート系樹脂が積層された積層樹脂基板、或いは両面にポリメチルメタアクリレート系樹脂が積層された積層樹脂基板などが挙げられる。
当該基板の厚みは、要求される透明度や耐衝撃強度から適宜選択して設計されるが、通常、0.5〜3.0mmの範囲に設定される。
【0016】
〈下地層〉
下地層は、後出する特定組成のガスバリアー層と上記透明硬質樹脂基板との密着性の観点から、ウレタンアクリレート系接着性樹脂(A)90〜20質量部と、珪素化合物(B)10〜80質量部とを含有する下地材を重合させてなる硬化体からなること、および、該珪素化合物(B)が、アルコキシシラン化合物およびその加水分解物、シランカップリング剤およびその加水分解物、並びにシリカ微粒子からなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物であることが重要である。
【0017】
この下地層がない場合は、ガスバリアー層と透明硬質樹脂基板とが剥離する。また、下地層を形成する下地材が、ウレタンアクリレート系接着性樹脂(A)が20質量部未満、珪素化合物が80質量部を超える場合は、高温高湿下だけでなく初期の密着性も劣り上記両者の剥離がおこる。アクリレート系接着性樹脂(A)が90質量部を超え、珪素化合物が10質量部未満の場合は、初期密着性は十分であるが高温高湿条件下では剥離が起こる。
従って、下地材が、ウレタンアクリレート系接着性樹脂(A)90〜20質量部と、アルコキシシラン化合物およびその加水分解物、シランカップリング剤およびその加水分解物、並びにシリカ微粒子からなる群より選ばれる少なくとも一つの珪素化合物(B)10〜80質量部から構成されない場合は、実質的に下地層として機能しない。
【0018】
この下地層は、後出のガスバリアー層、特にポリシラザン化合物の硬化体との初期の密着性のみならず高温高湿下やヒートショック下での密着性に優れ、更には当該ガスバリアー層のクラック発生を防止する観点から、接着性樹脂としてウレタンアクリレート系接着性樹脂を使用する必要があり、他の接着性樹脂では本発明の効果が発現しない。
ウレタンアクリレート系接着性樹脂(A)は、代表的には、二個以上のイソシアネート基を含有する有機イソシアネート化合物とヒドロキシ基含有アクリレート化合物とを重付加反応させて製造される、分子内にウレタン結合を有し末端が(メタ)アクリレート基である重合性ウレタンアクリレート化合物(モノマー)、或いはそのオリゴマーやプレポリマーからなる反応性樹脂である。
【0019】
具体的には、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー;グリセリンジ(メタ)アクリレートトリレンジイソシアネートウレタンオリゴマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンオリゴマー、グリセリンジ(メタ)アクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンオリゴマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリレンジイソシアネートウレタンオリゴマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレオリゴマー等が挙げられるが、これらは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0020】
重合性ウレタンアクリレートオリゴマーは市販されており、例えば、アートレジンUN−3320HA、同UN−3320HB、同UN−3320HC、同UN−3320HS、同UN−904〔何れも、根上工業社製〕;UA−306H(ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー)、UA−306T(ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー)、UA−306I(ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー)、UA−510H(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー)〔いずれも共栄社化学社製〕;UX−5000、UX−5002D−M20、UX−5003D、UX−5005、DPHA−40H〔いずれも日本化薬社製〕;UV−1700B、UV−7550B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7610B、UV−7620EA、UV−7630B、UV−7640B、UV−7650B〔いずれも日本合成化学工業社製〕;U−4HA、U−6HA、U−6LPA、UA−1100H、UA−53H、UA−33H〔いずれも新中村化学工業社製〕などとして一般に入手可能である。
【0021】
なお、ウレタンアクリレート系接着性樹脂(A)には、上記モノマー、オリゴマー,プレポリマー以外の多官能性(メタ)アクリレート化合物を、本発明の目的を損なわない範囲で一部配合しても良い。その具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用しても良い。
【0022】
下地材中に配合されるアルコキシシラン化合物としては、テトラエトキシシランやテトラメトキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物、メチルトリメトキシシランやメチルトリエトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシラン化合物が挙げられる。
該アルコキシシラン化合物は、硝酸や塩酸などの酸触媒または水酸化ナトリウムや臭化テトラブチルアンモニウムなどのアルカリ触媒の存在下に、その一部また全部が加水分解されたアルコキシシラン化合物の加水分解物であってもよい。該加水分解物の加水分解の程度は特に限定されないが、加水分解と共に縮重合反応が進んで重合度が増加し液中に析出してくるので、固形分が析出しない程度までとすることが好ましい。
【0023】
シランカップリング剤としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピトリメトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
該シランカップリング剤は、硝酸や塩酸などの酸触媒または水酸化ナトリウムや臭化テトラブチルアンモニウムなどのアルカリ触媒の存在下に、その一部また全部が加水分解されたシランカップリング剤の加水分解物であってもよい。該加水分解物の加水分解の程度は特に限定されないが、加水分解と共に縮重合反応が進んで重合度が増加し液中に析出してくるので、固形分が析出しない程度までとすることが好ましい。
【0024】
シリカ微粒子は、粒子径が1〜50nm程度のコロイド状シリカ微粒子であり、通常、アルコールや水などの分散媒中に懸濁されたコロイド状シリカゾルが好適に使用される。例えば、有機溶媒に分散させた「オルガノゾル」シリーズや水に分散させた「スノーテックス」シリーズとして、日産化学工業社から市販されている。その他、扶桑化学工業社製「クォートロン」や日揮触媒化成社製「OSCAL」シリーズ製品も、コロイド状シリカゾルとして使用できる。
【0025】
下地材は、上記ウレタンアクリレート系接着性樹脂(A)および珪素化合物(B)、更に光重合開始剤或いは化学重合開始剤を、トルエン、メチルアルコール、酢酸ブチルなどの溶媒に溶解して溶液としたものである。この下地材溶液を前記透明硬質樹脂基板に塗布した後乾燥し、次いで加熱または光照射して重合させ、硬化させる。この結果、本発明の下地層が形成される。下地層の厚みは、樹脂基板との密着性やポリシラザン化合物硬化体のクラック防止を考慮して、通常、0.5〜20μmの範囲に設定される。
上記下地材溶液中には、必要に応じて紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング材等の添加剤を配合してもよい。
【0026】
下地材を構成する上記各成分の混合順序や混合条件は特に制限はなく、室温付近で、任意に混合攪拌して下地材とされる。なお、市販のコロイド状シリカゾルを使用した時は、分散媒である溶媒が下地材中に必然的に混入することになる。
下地材に使用される溶剤は、ウレタンアクリレート系接着性樹脂(A)を溶解する能力の高いトルエンやキシレン等の芳香族化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル化合物;アセトン、MEK、MIBK、ジアセトンアルコール等のケトン化合物等が適している。その他、メチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の溶剤も使用できる。
前出の珪素化合物(B)を溶解する能力の高い溶剤としては、メタノール、エタノール、NPA、IPA、ブタノール等のアルコール化合物;メチルセロソルブやエチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ化合物が挙げられる。
重合硬化して形成された下地層において、下地材溶液中の溶媒は前記乾燥工程により除去される。重合開始剤は下地層中に残存するが、微量であり特に問題は生じない。
下地材溶液の塗工方法は特に制限されず、ディップコート法、ロールコート法、ダイコート法、フローコート法、スプレー法等の方法が採用されるが、外観品位や膜厚制御の観点からディップコート法が好適である。
【0027】
〈ガスバリアー層〉
本発明のガスバリアー層は、ポリシラザン化合物(C)をアミン系触媒(D)の存在下に硬化させた硬化体から構成されることが重要である。
ポリシラザン化合物(C)は、−(SiH
2−NH)−を基本単位とする重合体であり、水と容易に反応してシリカ(酸化ケイ素)に転化する化合物である。具体的には、有機基を含まないぺルヒドロポリシラザン、アルコキシ基がケイ素原子に結合したポリシラザン、アルキル基がケイ素原子や窒素原子に結合したポリシラザンが挙げられ、所望物性に応じて選択される。強度並びにガスバリアー性の観点から、ぺルヒドロポリシラザンが好ましく採用される。ポリシラザン化合物(C)の分子量は、溶媒への溶解性や得られるシリカの均一性の観点から、数平均分子量で200〜50000であることが好ましい。
【0028】
上記ポリシラザン化合物(C)のシリカへの転化反応を促進するために触媒を使用するが、本発明においては、アミン系触媒(D)を使用することに特徴がある。パラジウムなどの金属触媒は高い硬化温度を必要とし、高温下での硬化は、下地層や透明硬質樹脂基板を劣化させるので適さない。これに対して、アミン系触媒は、室温〜150℃の低温で転化反応が進行するので好ましい。
当該アミン触媒としては、モノ(nーブチル)アミンなどのモノアルキルアミン、ジペンチルアミンなどのジアルキルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン等が用いられる。アミン触媒の配合量は、触媒効果と硬化した層の透明性を考慮して、ポリシラザン化合物(C)100質量部に対して、0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部の範囲から選択される。
【0029】
ポリシラザン化合物(C)およびアミン系触媒(D)は、キシレンなどの有機溶媒に溶解された溶液状態で市販されているので、この市販品を利用することが簡便で好ましい。例えば、AZエレクトロニックマテリアルズ社から「アクアミカ」シリーズとして市販されている。次に、本発明のガスバリアー層を形成する方法を説明する。
有機溶媒にポリシラザン化合物(C)およびアミン系触媒(D)を溶解して調製したガスバリアー層形成用溶液(市販品:固形分約10%)を、ディップコートで、前記下地層の上に塗布する。塗布後必要に応じて乾燥し、次いで、80〜100℃で、1〜24時間程度、転化反応を進行させる。この結果、ガスバリアー層は、実質的にシリカのち密な層となり、炭酸ガス、水蒸気などのガスを遮断して、気泡の発生、更には剥離を防止することができる。
このガスバリアー層の厚みは、前記種々のガスの不透過性の観点から、0.05〜2.0μmの範囲に設定される。なお、ガスバリアー層形成用溶液の塗工方法は特に制限されず、前出の下地材溶液の塗工方法に準じて実施される。
【0030】
〈透明粘着層〉
上記方法で得られた表示パネル用透明保護板[I]は、そのガスバリアー層を後述する表示パネルの表面に対面させ、両者間に透明粘着層を介在させて積層される。透明粘着層の厚みは、特に制限はなく、通常、10〜500μmの範囲から任意に選択される。
この透明粘着層には、高い透明性と紫外線や湿度に対する高い耐久性の観点から、アクリル系粘着剤が好適に使用される、アクリル系粘着剤は、アクリルポリマーを基本成分とする、基本的に粘着付与剤を必要としない粘着剤である。当該アクリルポリマーは、代表的には、粘着成分として寄与するブチルアクリレートや2-エチルヘキシルアクリレートなどの高級アルキルアクリレート、凝集成分として寄与するメチル(メタ)アクリレートや酢酸ビニル、並びに改質成分として寄与するアクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸アミドなどの、三種のモノマーの共重合体である。
【0031】
上記アクリル系粘着剤はトルエンや酢酸エチルに溶解して溶液とし、該溶液を塗布、乾燥して、透明粘着層としても良いが、アクリル系粘着剤の両面をポリエチレンテレフタレートなどの離型フィルムで挟んだ高透明性両面テープが市販されているので、これを利用して、透明粘着層を形成することが簡便で好ましい。市販の高透明性両面テープとしては、「高透明性両面テープ♯5400シリーズ」(積水化学工業社製)、「高透明粘着シート」(日立化成社製)、「高透明性接着剤転写テープ」(3M社製)などが入手可能である。なお、透明粘着層をアクリル系粘着剤の溶液から形成する場合の塗工方法は特に制限されず、前出の下地材溶液の塗工方法に準じて実施される。
【0032】
本発明の表示パネル用透明保護板[II]は、透明硬質樹脂基板上に、下地層、ガスバリアー層、および上記透明粘着層が順次積層されて構成されているものであり、前出の表示パネル用透明保護板[I]のガスバリアー層上に直接透明粘着層が、上記透明粘着層の形成方法に準じて積層されたものである。
なお、表示パネル用透明保護板[I]および[II]の表面(視野面)には、必要に応じて反射防止膜などの副次的層を積層しても良い。
本発明の表示パネル用透明保護板[I]および[II]は、通常、表面の擦傷、並びに表面機能の低下を防止するため、各々両面にポリエチレンテレフタレートなどの離型フィルムを積層して出荷され、保管される。
【0033】
〈表示装置〉
本発明の表示装置は、好ましくは、前出の表示パネル用透明保護板[I]および同[II]が、表示パネル上に積層されたものである。表示パネル用透明保護板[I]の場合は、両者間に別途用意した透明粘着層を介在させて積層する。表示パネル用透明保護板[II]の場合は、透明保護板[II]の表面に存在する透明粘着層を直接表示パネル上に圧着して積層するものである。
表示パネルとしては、携帯電話やカーナビゲーション用の液晶パネルやタッチパネルなどの公知の表示パネルが何ら制限なく用いることができ、その方式や構造は問わない。一般に、液晶パネルの場合は、パネルを構成する偏光板やガラス上に、本発明の表示パネル用透明保護板[I]または同[II]が積層される。タッチパネルの場合は、タッチパネルのタッチ側表面に直接積層される。
【実施例】
【0034】
本発明を次の実施例で更に説明する。次の実施例は、説明のためのものであり、いかなる意味においても本発明はこれに限定されるものではない。また、実施例の中で説明されている特徴の組み合わせすべてが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
以下の実施例及び比較例で用いた各種成分と略号、並びに試験方法は、以下の通りである。
【0035】
(A)ウレタンアクリレート系接着性樹脂
A−1:ウレタンオリゴマーポリアクリレート「UN-3320HA」
(根上工業社製)
A−2:ウレタンオリゴマーポリアクリレート「UN-904」
(根上工業社製)
A−3:ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシ
アネートウレタンプレポリマー「UA−306H」(共栄社化学
社製)
A−4:ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネ
ートウレタンプレポリマー「UA−306I」(共栄社化学社製
)
A−5:「UX−5000」(日本化薬社製)
A−6:「UV−1700B」(日本合成化学工業社製)
A−7:「UV−7600B」(日本合成化学工業社製)
A−8:「UA−1100H」(新中村化学工業社製)
A−9:「UA−53H」(新中村化学工業社製)
(B)ケイ素化合物
B−1:テトラエトキシシラン(和光純薬社製)
B−2:γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン「KBM-50
3」(信越化学社製)
B−3:コロイダルシリカゾル「IPA-ST」(日産化学工業社製;固
形分30%)
B−4:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン100重量部を
0.02N塩酸22.9重量部を用いて室温で加水分解させて得
た反応物(均一溶液)
B−5:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン100重量部を
0.02N塩酸21.8重量部を用いて室温で加水分解させて得
た反応物(均一溶液)
B−6:3−アミノプロピルトリメトキシシラン
B−7:2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラ
ン100重量部を0.02N塩酸22.0重量部を室温で加水分
解させて得た反応物(均一溶液)
B−8:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン100重量部を
0.05N塩酸11.4重量部を用いて室温で加水分解させて得
た反応物(均一溶液)
B−9:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン100重量部を
0.05N塩酸11.5重量部を用いて室温で加水分解させて得
た反応物(均一溶液)
【0036】
(C)光重合開始剤
C−1:1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニル−ケトン 「イルガ
キュア184」(チバジャパン社製)
(D)溶剤
D−1:トルエン
D−2:イソプロピルアルコール
D−3:メチルアルコール
D−4:酢酸ブチルエステル
(E)ポリシラザン化合物と触媒の混合物
E−1:ポリシラザン/アミン系触媒「アクアミカNP110」(AZエ
レクトロニックマテリアル社製;固形分10%、キシレン溶媒)
E−2:ポリシラザン/アミン系触媒「アクアミカNAX110」(AZ
エレクトロニックマテリアル社製;固形分10%、キシレン溶媒
)
E−3:ポリシラザン/パラジウム系触媒「アクアミカNL110」(A
Zエレクトロニックマテリアル社製;固形分10%、キシレン溶
媒)
(F)透明粘着剤
F−1:アクリル系粘着剤「高透明両面テープ♯5410」(積水化学工
業社製、膜厚 100μm)
(G)透明硬質樹脂基板
PC:ポリカーボネート板「ユーピロンNF2000」(三菱瓦斯化学社
製;厚み 2.0 mm、100×100mm)
PMMA:ポリメチルメタアクリレート板「アクリライトL001」(三
菱レイヨン社製;厚み 2.0 mm、100×100mm)
【0037】
〔ガスバリアー層の初期密着性試験〕
透明硬質樹脂基板上に下地材溶液を塗布、乾燥した後、紫外線を照射して硬化させ下地層を形成する。次いで、この下地層の上にガスバリアー層を形成するための溶液組成物を塗布した後、所定時間所定温度で硬化させてガスバリアー層を形成する。形成されたガスバリアー層に、カッターで縦横が直行するようにクロスに傷を入れる(クロスカット)。この上にニチバン製24mm幅セロテープを気泡が混入しないように貼り付けた後、一気に剥がす。この操作を三回行い、以下の基準で判定した。
○:一回も、ガスバリアー層の剥がれがない。
×:一部でもガスバリアー層の剥がれが、少なくとも一回生じた。
【0038】
〔ガスバリアー層の高温高湿密着性試験〕
上記方法でガスバリアー層を形成した表示パネル用透明保護板を、温度65℃、湿度90%の環境に保った恒温恒湿器(タバイエスペック社、オーブンタイプ)内に72時間静置した。静置後、保護板を取り出して常温に戻し、次いで、前記方法でクロスカットを行い、同じ基準で判定した。
【0039】
[ガスの発生試験]
前記方法でガスバリアー層を形成した表示パネル用透明保護板のガスバリアー層面とソーダガラスを、透明粘着剤(テープ)を用いて貼り合わせた。この構造物を、上記高温高湿密着性試験と同じ条件に保持した後、取り出し、構造物を肉眼で観察して気泡の発生の有無を確認した。
有り:気泡の存在が確認できた。
無し:肉眼で判別できる気泡が認められなかった。
【0040】
実施例1
ポリカーボネート樹脂板上に、ウレタンオリゴマーポリアクリレート(UN−3320HA;根上工業製)60質量部、テトラエトキシシラン(和光純薬製)40質量部、および1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニル−ケトン「イルガキュア184」(チバジャパン製)2.4質量部を、トルエン・イソプロピルアルコール混合溶媒(トルエン116.7質量部、イソプロピルアルコール116.7質量部)に室温で溶解した下地材溶液を、ディップコートで塗布した。次いで、70℃で10分乾燥した後、「UV照射装置」(アイグラフィックス社製)を用いて、室温下、300mj/cm2の紫外線を照射して重合硬化させ膜厚3μmの下地層を形成した。次に、この下地層の上に、ポリシラザン及びアミン系触媒を含むガスバリアー層形成用溶液「アクアミカNP110」(AZエレクトロニックマテリアル社製;固形分10%、キシレン溶媒)をディップコートで塗布し、100℃の熱風循環オーブン中で5時間反応を行い、ガスバリアー層を形成した。形成されたガスバリアー層の膜厚は1μmであった。
得られた表示パネル用透明保護板の密着試験を、前記試験方法に準じて実施した。また、ガスの発生の有無は、表示パネルの代替品としてソーダガラスを使用して当該ガラス上に装着して、前記試験方法に準じて実施した。ガラス上への装着には、アクリル系粘着剤「高透明両面テープ♯5410」(膜厚100μm;積水化学工業社製)を、ラミネーターを使用して装着した。評価結果を併せて表1に示す。
【0041】
実施例
2、5〜6、比較例1〜7
表1に示す透明硬質樹脂基板、下地材溶液、ガスバリアー層形成用溶液、透明粘着剤(テープ)を各々用いて、実施例1に準じて表示パネル用透明保護板を作製し、同様に評価を行った。形成された各層の膜厚並びに評価結果を併せて表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
下地層が存在しない比較例2においては、ガスの発生は認められなかったが、初期の段階から密着性が悪い。下地層中にケイ素化合物が存在しない場合は高温高湿下での密着性が悪く(比較例3)、ケイ素化合物がウレタンアクリレート系接着性樹脂に対して過剰に存在した場合、初期の段階から密着性が悪いだけでなくガスの発生も防止できない(比較例5)。下地層中にウレタンアクリレート系接着性樹脂が存在しない場合は、初期の段階から密着性が悪い(比較例4)。ガスバリアー層が存在しない場合はガスの発生を防止できなかった(比較例6)。パラジウム系触媒を用いてガスバリアー層を形成した場合、100℃程度では十分に転化反応が進行せず、ガスバリアー機能が充分に発現しないことが分かる(比較例7)。
【0044】
実施例
8〜13
表2に示す透明硬質樹脂基板、下地材溶液、ガスバリアー層形成用溶液、透明粘着剤(テープ)を各々用いて、実施例1に準じて表示パネル用透明保護板を作製し、同様に評価を行った。形成された各層の膜厚並びに評価結果を併せて表2に示す。
アルコキシシラン化合物の加水分解物、或いはシランカップリング剤の加水分解物を用いて下地層を形成した場合も、良好な結果が得られた。
【0045】
【表2】