特許第5871795号(P5871795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5871795液相間で成分を移動させるマイクロ流体システム及び対応する方法、並びに上記成分を抽出するための上記システムの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871795
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】液相間で成分を移動させるマイクロ流体システム及び対応する方法、並びに上記成分を抽出するための上記システムの使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20160216BHJP
   B01D 11/04 20060101ALI20160216BHJP
   B01J 13/14 20060101ALI20160216BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20160216BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20160216BHJP
   C12M 3/08 20060101ALI20160216BHJP
   B01D 43/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   B01J19/00 321
   B01D11/04 D
   B01J13/14
   B81B1/00
   C12N5/07
   C12M3/08
   B01D43/00 Z
【請求項の数】16
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2012-515537(P2012-515537)
(86)(22)【出願日】2010年6月18日
(65)【公表番号】特表2012-529983(P2012-529983A)
(43)【公表日】2012年11月29日
(86)【国際出願番号】FR2010000453
(87)【国際公開番号】WO2010146261
(87)【国際公開日】20101223
【審査請求日】2013年6月5日
(31)【優先権主張番号】09/02988
(32)【優先日】2009年6月19日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506423291
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジィ アトミーク エ オ ゼネ ルジイ アルテアナティーフ
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルティエ ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ル ヴォー ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】リブラ フロランス
【審査官】 原 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−358453(JP,A)
【文献】 特表2008−538282(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0159999(US,A1)
【文献】 特開2004−354364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/00−13/22,19/00−19/32
B01D 11/00−11/04,43/00
B81B 1/00
C12M 3/06−3/08
C12N 5/00−5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロチャネルのネットワークがエッチングされるとともに保護カバー(2)によって覆われる基板(3)を有し、マイクロメートルサイズ又はミリメートルサイズの成分(E、E’)の抽出ユニット(10〜1010)を備えるマイクロ流体システム(1)であって、
前記抽出ユニットは、
枯渇されるべき第1の相(A、Ph1)が循環する枯渇用マイクロチャネル(11、211、511、611、811、911、1011)と、
富化されるべき第2の相(B、Ph2)が循環する少なくとも1つの富化用マイクロチャネル(12、212、512、613、713、912、1012)であって、前記枯渇用マイクロチャネル及び当該富化用マイクロチャネルは2つの接合部、すなわち上流接合部(Ja)及び下流接合部(Jb)において合流して前記接合部間に移動チャンバー(13〜513)を形成し、各接合部は、前記マイクロチャネルの中心軸が平行であるか又は前記接合部の両側に鋭角を形成する、前記少なくとも1つの富化用マイクロチャネル(12、212、512、613、713、912、1012)と、
前記枯渇用マイクロチャネルに配置されており、前記成分を前記枯渇用マイクロチャネルから前記少なくとも1つの富化用マイクロチャネルへ移動させるように構成されている移動手段(14、214a、214b、314、414a、514、614、714a、714b、814、814a、814b、1014)と、
を備え、
前記移動手段は、前記枯渇用マイクロチャネルの中心軸を横断して延びる少なくとも1列の離間している複数のブロック(14、214a、214b、314、514、614、714a、714b、814、1014)を含み、
前記抽出ユニットは、前記接合部間の前記移動手段の下流に配置され、相互に接触する前記相の間の界面を安定化させる界面安定化手段(16〜1016、15a、15b)を備え、
前記界面安定化手段は、前記接合部間で或る距離にわたって延びており、
−前記下流接合部に隣接する最も下流側のピラーを備えた1列の離間している複数のピラー、又は
−前記下流接合部から延びる不透過性の分離仕切り(15)であって、親油性又は疎水性の材料を有し前記下流接合部(Jb)の領域に配置され前記マイクロチャネルの少なくとも一方と面した表面コーティング(15a、15b)を備える不透過性の分離仕切り(15)を備えることを特徴とする、システム(1)。
【請求項2】
前記界面安定化手段(16〜1016、15a、15b)が前記1列の離間している複数のピラーを備える場合には、前記1列の複数のピラーの方向に延びる線上に前記下流接合部(Jb)が設けられ、前記複数のピラーの間の間隔は成分(E、E’)の直径よりも小さいように選択されることにより、前記1列の複数のピラーは、前記少なくとも1列の離間している複数のブロックによって前記第1の相(A、Ph1)から分離された前記成分(E、E’)の戻り防止機能を行い、
前記界面安定化手段(16〜1016、15a、15b)が前記分離仕切り(15)を備える場合には、前記分離仕切り(15)の一端が前記少なくとも1列の複数のブロックに隣接するように位置決めされ、前記分離仕切り(15)の他端が前記下流接合部(Jb)に接続されることにより、前記分離仕切り(15)は、前記少なくとも1列の複数のブロックによって前記第1の相(A、Ph1)から分離された前記成分(E、E’)の戻り防止機能を行うことを特徴とする、請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項3】
前記界面安定化手段(16〜1016)は前記1列の複数のピラーを備え、前記複数のピラーのそれぞれが前記マイクロチャネルの縦断面で多角形断面を有し、
前記複数のピラーは等間隔に離間しており、前記少なくとも1列の複数のブロック(14〜1014)に隣接した最も上流側のピラーを備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム(1)。
【請求項4】
前記上流接合部(Ja)及び前記下流接合部(Jb)は、前記チャンバー(13〜513)内の前記第1の相(A)及び前記第2の相(B)の流れの平行度を高めるように構成され相(A、B)間で或る距離にわたって延びる不透過性の分離仕切り(15)によって、対向する前記接合部の方向に延長していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1列の複数のブロック(14〜1014)は、円筒形ブロックで形成され、前記マイクロチャネルの方向に対して5度〜85度の角度を形成し、
前記ブロックは、前記成分(E、E’)を前記富化用マイクロチャネルに向かって強制的に移動させるよう、前記成分(E、E’)の幾つか又は全てを選択的に方向転換させるように構成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項6】
前記移動手段は、前記チャンバー(13)内に前記枯渇用マイクロチャネル(211)に沿って連続的に配置される複数の前記ブロックの列(214a、214b、714a、714b)を含んでおり、
前記富化用マイクロチャネル(212)は、前記チャンバー(13)より下流側が、遠位出口(212b1)と、前記遠位出口(212b1)より前記枯渇用マイクロチャネル(211)に近い位置にある近位出口(212b2)とに分岐しており、
前記複数の前記ブロックの列(214a、214b、714a、714b)は、
前記上流接合部(Ja)に隣接する上流列(214a、714a)であって、前記枯渇用マイクロチャネル(211)の通路断面の全部にわたって及び前記隣接する富化用マイクロチャネル(212)の通路断面の少なくとも一部にわたって延前記上流列(214a、714a)と、
前記下流接合部(Jb)に隣接する少なくとも1つの下流列(214b、714b)であって、前記枯渇用マイクロチャネル(211)の通路断面にわたってのみ延びる前記上流列の通路断面よりも小さい通路断面にわたって延び、前記遠位出口及び前記枯渇用マイクロチャネルとともにY字形の接合部を形成する前記近位出口(212b2)に連結されている、前記下流列(214b、714b)と、
を含むことを特徴とする、請求項5に記載のシステム(1)。
【請求項7】
前記移動手段(314)は、前記チャンバー(13)内に前記枯渇用マイクロチャネル(11)及び前記富化用マイクロチャネル(12)を横断して配置されている前記ブロックの列を含み、
前記ブロックの列は、前記成分(E)を通過させて1つの列から次の列への通過毎に前記成分を徐々に方向転換させることができることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項8】
前記移動手段は、前記成分(E)を前記第1の相(A)から前記第2の相(B)へ方向転換させ、前記チャンバー(413)に対向して形成される前記枯渇用マイクロチャネル(811)の側壁の内部突起からなり、前記枯渇用マイクロチャネルの縦断面で三角形の断面を有する少なくとも1つのデフレクター(414a、814a、814b)をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項9】
前記抽出ユニット(1010)の前記富化用マイクロチャネル(12)は、下流が圧力損失を低減する手段に連結されており、
前記圧力損失を低減する手段は、前記マイクロチャネルのネットワークにも含まれ、前記第1の相(A)の液滴が前記第2の相(B)に進入することを防止するために前記第1の相の圧力よりも高い前記第2の相の圧力を維持するように構成されており、また、前記第1の相及び前記第2の相に関して同様の速度を得るように構成されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のシステム(1)。
【請求項10】
前記抽出ユニット(1010)の上流に連結される前記成分(E、E’)のカプセル化ユニット(40)をさらに備え、
前記抽出ユニットは、前記カプセル化ユニットの出口において得られる各ポリマーカプセルの架橋によってゲル化を提供するように構成されており、
前記カプセル化ユニットと前記抽出ユニットとの間には、プレゲル化モジュール(PG)が任意選択的に介装されており、
前記抽出ユニットの下流に追加のカプセル化モジュール(30)が任意選択的に設けられていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
マイクロメートルサイズ又はミリメートルサイズの成分(E、E’)を、前記枯渇用マイクロチャネルを循環する枯渇されるべき第1の液相(A、Ph1)から、少なくとも1つの前記富化用マイクロチャネルを循環する富化されるべき第2の液相(B、Ph2〜Ph4)へ抽出するためのマイクロ流体システム(1)の使用であって、
前記マイクロ流体システム(1)が富化用マイクロチャネルを1つ備える場合には、前記第1の液相(A、Ph1)と第2の液相(B、Ph2)とは不混和性であり、
前記マイクロ流体システム(1)が富化用マイクロチャネルを複数備える場合には、隣接する富化用マイクロチャネルは上流接合部及び下流接合部からなる2つの接合部において合流しており、隣接する富化用マイクロチャネルを循環する前記第2の液相が前記二つの接合部の間で接触し、前記第1の液相(A、Ph1)と複数の前記第2の液相(B、Ph2〜Ph4)とは不混和性であり、隣接する富化用マイクロチャネルを循環する2つの前記第2の液相は互いに混和性又は不混和性である請求項1〜10のいずれか1項に記載のマイクロ流体システム(1)の使用。
【請求項12】
前記成分(E、E’)をそれぞれコーティングするカプセルを、前記カプセルを含有している枯渇されるべき油性有機相(A、Ph1)から、前記油性相と不混和性であるとともにポリイオンをベースとするゲル化剤を含有している富化されるべき水相(B、Ph4)へ移動させることによって、前記システム内で前記成分の周りに予め形成されているとともにアルギン酸塩ヒドロゲルをベースとしたポリマーコーティングカプセルを架橋することによりゲル化を行うことからなることを特徴とする、請求項11に記載のマイクロ流体システム(1)の使用。
【請求項13】
枯渇されるべき第1の相(A)、及び相互に混和性である富化されるべき第2の相(B、Ph2〜Ph4)を対で用いること、並びに前記移動チャンバー(13)の下流で前記第2の相(B、Ph2〜Ph4)の横断濃度勾配(F1)を生成することにあることを特徴とする、請求項11に記載のマイクロ流体システム(1)の使用。
【請求項14】
マイクロメートルサイズ又はミリメートルサイズの成分(E、E’)を、マイクロ流体システム(1)の基板(3)にエッチングされる枯渇用マイクロチャネル(11、211、511、611、811、911、1011)を循環する枯渇されるべき第1の液相(A、Ph1)から、マイクロ流体システム(1)の基板(3)にエッチングされる少なくとも1つの富化用マイクロチャネル(12、212、512、613、713、912、1012)を循環する富化されるべき第2の液相(B、Ph2〜Ph4)へ抽出する方法であって、
前記マイクロ流体システム(1)が富化用マイクロチャネルを1つ備える場合には、前記第1の液相(A、Ph1)と第2の液相(B、Ph2)とは不混和性であり、
前記マイクロ流体システム(1)が富化用マイクロチャネルを複数備える場合には、隣接する富化用マイクロチャネルは上流接合部及び下流接合部からなる2つの接合部において合流しており、隣接する富化用マイクロチャネルを循環する前記第2の液相が前記二つの接合部の間で接触し、前記第1の液相(A、Ph1)と複数の前記第2の液相(B、Ph2〜Ph4)とは不混和性であり、隣接する富化用マイクロチャネルを循環する前記2つの第2の液相は互いに混和性又は不混和性であり、
マイクロ流体システム(1)の基板(3)にエッチングされる枯渇用マイクロチャネル(11、211、511、611、811、911、1011)及び少なくとも1つの富化用マイクロチャネル(12、212、512、613、713、912、1012)において強制対流によって層流状態で流される前記相のそれぞれの流れを、前記流れが、互いに平行であるか又は前記マイクロチャネル間の2つの上流接合部(Ja)及び下流接合部(Jb)において合流することによって鋭角を形成し、前記成分を一方の相から他方の相へ強制的に移動させるよう、前記流れの相互接触の間中、平行なままであるように接触させることを含み、
前記方法は、前記成分を、前記枯渇用マイクロチャネルの中心軸を横断して延びる少なくとも1列の離間している複数のブロック(14、214a、214b、314、514、614、714a、714b、814、1014)によって前記枯渇用マイクロチャネルから前記少なくとも1つの富化用マイクロチャネルへ移動させ、次いで前記ブロックの下流及び前記下流接合部の上流で界面安定化を行うことを含むことを特徴としており、
前記界面安定化は、
−相(A、B)間の1列の複数のピラー(16〜1016)、又は、
−相(A、B)間で或る距離にわたって延びる不透過性の分離仕切り(15)であって、親油性又は疎水性の材料を有し前記下流接合部(Jb)の領域に配置され前記マイクロチャネルの少なくとも一方と面した表面コーティング(15a、15b)を備える不透過性の分離仕切り(15)、
によって行われ、
前記複数のピラー又は前記不透過性の分離仕切り(15)は前記少なくとも1列の複数のブロック(14、214a、214b、314、514、614、714a、714b、814、1014)の下流に配置されることを特徴とする方法。
【請求項15】
前記1列の複数のピラーの複数ピラー(16)の間の間隔が成分(E、E’)の直径よりも小さいように選択されることにより、前記第1の相(A、Ph1)から分離された前記成分(E、E’)の戻り防止機能を行うことをさらに含むことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
マイクロチャネルのネットワークがエッチングされるとともに保護カバー(2)によって覆われる基板(3)を有し、マイクロメートルサイズ又はミリメートルサイズの成分(E、E’)の抽出ユニット(510)を備えるマイクロ流体システム(1)であって、
前記抽出ユニットは、
枯渇されるべき第1の相(A)が循環する枯渇用マイクロチャネル(511)と、
富化されるべき第2の相(B)が循環する少なくとも1つの富化用マイクロチャネル(512)であって、前記枯渇用及び富化用マイクロチャネルは2つのY字形の接合部、すなわち上流接合部(Ja)及び下流接合部(Jb)において合流して前記接合部間に移動チャンバー(513)を形成し、各接合部は、前記マイクロチャネルの中心軸が平行であるか又は前記接合部の両側に鋭角を形成する、前記少なくとも1つの富化用マイクロチャネル(512)と、
前記枯渇用マイクロチャネルに配置されており、前記成分を前記枯渇用マイクロチャネルから前記少なくとも1つの富化用マイクロチャネルへ移動させるように構成されている移動手段(514)と、
相互に接触する前記流れ間の界面を安定化させる界面安定化手段(514)と、
を備え、
前記枯渇用マイクロチャネル(511)の入口(511a)の入口側壁の入口端と前記下流接合部(Jb)との間には、前記枯渇用マイクロチャネル及び前記富化用マイクロチャネルの縦断面でそれぞれが正方形である一列の復数のブロック(514)が等間隔に離間して直線上に形成されており、前記入口側壁は、前記上流接合部(Ja)に対して前記枯渇用マイクロチャネルの反対側にあり、
前記一列のブロックは、前記下流接合部(Jb)に近接して位置付けられた下流ブロックを含み、前記流れ間の界面は前記下流ブロックと重なり、
前記界面が重なる下流ブロックは前記界面安定化手段を形成し、
前記出口は、前記成分(E)を、前記成分(E)の経路から方向転換させることなく前記枯渇用マイクロチャネルの前記入口(511a)から前記富化用マイクロチャネルの前記出口(512b)へ導くように、前記枯渇用マイクロチャネルの前記入口(511a)と同軸であり、
前記1列の複数のブロックは、前記移動手段をも構成することを特徴とするシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロメートルサイズ又はミリメートルサイズの成分を1つの液相から少なくとも1つの他の液相へ抽出するユニットを備えるマイクロ流体システム、上記抽出を行う、好ましくは上記成分をコーティングするポリマーカプセルを架橋によってゲル化するための、上記マイクロ流体システムの使用、及び上記成分を抽出する対応する方法に関する。本発明は、小サイズの生物学的又は非生物学的な成分、例えば非限定的な例として、DNA鎖、たんぱく質、細胞、細胞集団、又はさらには磁気ビーズ若しくは蛍光粒子等のバイオテクノロジー用途における補助対象物に適用される。
【背景技術】
【0002】
1つの液相から別の不混和性の液相への小サイズの成分の移動は、かなり重要な課題である。本発明では、例えば専ら拡散によって行われるそのような移動に関して、特許文献1を引用することができる。強制対流による移動に関しては、通常は成分を流動させるように方向付ける力によって成分を抑制することが必要であり、特に2相系の場合にこの力は上記成分が2つの液体間の界面を横断するのに十分でなければならないため、一般的に困難である。この場合、2つの液体間の表面張力及び毛細管力によって通路が妨げられる。この移動を受動的に行うには、例えばピラーのネットワーク(a network of pillars:ピラー網)又はピラーの単純に配向されたラインである複数の形態をとることができるデフレクターの原理を用いることが知られている。
【0003】
このピラーのネットワークの技法は、「決定論的横変位」(DLD)によって選別するように開発されている。この技法(特にD. W. Inglis, J. A. Davis, R. H. Austin及びJ. C. Sturmによる記事である、非特許文献1を参照されたい)は、選別されるべき粒子の軌道を摂動する場合があるか又は摂動しない場合がある障害物の周期的なネットワークの使用に基づくものである。(装置の幾何学的形状によって決まる)臨界サイズDcよりも小さい粒子は全体的にピラーによって方向転換(diverted:偏向)されないが、Dcよりも大きい粒子は、ブロックの各列において同じ方向に方向転換され、これはサイズによる粒子の分離を可能にする。しかし、この「DLD」技法は、本発明者らの知っている限りでは、例えば特許文献2、特許文献3又は特許文献4において示されているように、今までのところ、キャリア流体の変化なく単一相で粒子を選別する場合にしか用いられていないようである。
【0004】
ポリマー液滴のゲル化は、キャリア流体の変化が必要な典型的な例である。バイオテクノロジーでは、生体対象物を含有するそのような液滴の使用はますます期待されている。それにもかかわらず、液滴の製造ステップに続いて行わなければならないゲル化ステップは、現在のところ技術的な障壁となっている。実際のところ、通常はヒドロゲル(例えばアルギン酸塩ヒドロゲル)をベースとするこれらの液滴又はカプセルは、有機相(例えばダイズ油)中で生成され、ヒドロゲルのゲル化を得るために、架橋剤としてカルシウムイオン等のポリイオンを含有する水相に移動されなければならない。既存の技法は、各自の最初の球状形状をできる限り保たなければならないカプセルのかなりの変形を生じさせるため、全て不十分なものである。したがって、移動は、高強度の力をカプセルに加えるように「容赦なく」行われてはならず、このことは、カプセル化されるべき成分が大サイズ(5μm〜1mm)であり、例えば細胞又は細胞集団のように脆弱である場合に一層顕著である。
【0005】
例えばランゲルハンス島のような細胞をマイクロカプセルにカプセル化する目的は、これらの細胞を移植時の免疫系による攻撃から保護することである。カプセルの多孔性は、カプセル化された細胞の代謝に必要不可欠である低分子量の分子(栄養素、酸素等)の進入は許可するが、免疫系の抗体又は細胞等のより高分子量の物質の進入は阻止するようなものでなければならない。カプセルのこの選択的な透過性は、供与者のカプセル化された細胞と被移植者の免疫系の細胞との間の直接的な接触がないことを確実にし、これによって、移植時に用いられる免疫抑制治療(重度の副作用を有する治療)の量を制限することが可能となる。生成されるカプセルは、それらの選択的な透過性に加えて、生体適合性があり、機械的に強く、かつカプセル化されることになる細胞にとって好適なサイズでなければならない。
【0006】
細胞をコーティングするカプセルの形成後、保護層を固化するためにカプセルのゲル化に進む必要がある。
【0007】
細胞を含有するアルギン酸塩のカプセルのゲル化は、従来から外部ゲル化の方法によって行われており、この場合、細胞の生存度を最大限にするために7に近いpHでの、アルギン酸塩カプセルへのポリカチオンの拡散によって、アルギン酸塩ビーズがポリカチオン浴(通常はCaCl)中で架橋される。この技法は、かなり均質(高多分散性)かつ球状であるカプセルを得ることができないという欠点を有する。特に、円形の「減速」チャンバーにおける接触を使用し、各アルギン酸塩カプセルを架橋剤として炭酸カルシウムを含有する水性液滴と融合させることからなるマイクロ流体システムを提示している、K. Liu, H. J. Ding, Y. Chen, X.Z. Zhaoの記事である、非特許文献2を参照することができるが、この場合、必要とされる球状の幾何学的形状とは大幅に異なるゲル化されたカプセルが得られる。
【0008】
アルギン酸塩カプセルをアルギン酸塩相中で炭酸カルシウムの結晶と接触させることによってこれらのアルギン酸カプセルをゲル化することからなる、内部ゲル化の方法もある。アルギン酸塩の液滴が酢酸を含有する溶液中に浸漬されると、カルシウムイオンが放出されてアルギン酸塩と結合することによってゲル化を可能にする。この方法は、より均質でおおよそ球状のカプセルを得ることを可能にするが、6.4に近い酸性のpHで使用されなければならず、細胞の生存度に関して悪影響を伴うという欠点を有する。この内部ゲル化の方法を使用するマイクロ流体システムの説明に関しては、V. L. Workman, S. B. Dunnett, P. Kille, and D. D.Palmerによる記事である、非特許文献3を参照することができる。
【0009】
カプセル化/ゲル化の既知の技法は以下の欠点も有する:
−カプセルのサイズが、カプセル化されるべき細胞又は島のサイズにとって好適ではない。
−ほとんどの場合に外部ゲル化が続いて行われるカプセル化(この場合、カプセルはポリカチオン浴中への浸漬によってゲル化される)は自動ではなく手動であり、このことは、カプセル毎の架橋時間のばらつきにつながる。
−液滴のサイズが小さくなるにつれて、ゲル化されたカプセルのサイズの分散が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第787 029号
【特許文献2】国際公開第2004/037374号
【特許文献3】米国特許出願公開第2007059781号
【特許文献4】米国特許出願公開第2007026381号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Critical particle size for fractionation by deterministic lateral displacement, Lab Chip 6: 655-658, 2006
【非特許文献2】Droplet-based synthetic method using microflow focusing and droplet fusion, Microfluid, Nanofluid, Vol. 3, pp. 239-243, 2007
【非特許文献3】On-chip alginate microencapsulation of functional cells, Macromolecular rapid communications, Vol. 29(2), pp. 165-170, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の1つの目的は、特にカプセルのゲル化に関して上述の欠点を克服することを可能にするマイクロ流体システムであって、当該システムは、マイクロチャネルのネットワークがエッチングされるとともに保護カバーで覆われる基板を有し、マイクロメートルサイズ又はミリメートルサイズの成分を抽出するユニットを備えており、前記抽出ユニットは、
−枯渇されるべき(to be depleted:貧化されるべき)第1の相が循環する枯渇用(depleting)マイクロチャネルと、
−富化されるべき(to be enriched)第2の相が循環する少なくとも1つの富化用(enriching)マイクロチャネルであって、前記枯渇用マイクロチャネル及び当該富化用マイクロチャネルは対になって2つの上流接合部及び下流接合部において合流して前記接合部間に移動チャンバーを形成し、各接合部は、前記マイクロチャネルの中心軸が平行であるか又は接合部の両側に鋭角を形成する、前記少なくとも1つの富化用マイクロチャネルと、
−前記枯渇用マイクロチャネルに配置され、前記成分を前記枯渇用マイクロチャネルから前記少なくとも1つの富化用マイクロチャネルへ移動させるように構成されている移動手段と、
を備える、マイクロ流体システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、本発明によるマイクロ流体システムは、前記移動手段が前記枯渇用マイクロチャネルの中心軸を横断して延びるブロックを備えるようなものであり、かつ前記抽出ユニットが、前記接合部間の移動手段の下流に配置されるとともに、下流接合部の領域にマイクロチャネルの少なくとも一方と面して位置するピラー又は他の表面コーティングを含む界面安定化手段をさらに備えるようなものである。
【0014】
細胞集団をコーティングするカプセルのような抽出されるべき成分の「サイズ」とは、本明細書では例えば、前記成分のそれぞれの直径、又はより包括的には最大横断寸法を意味する。
【0015】
ミリメートルサイズとは、およそ100μm〜数mmの成分のサイズを意味する。マイクロメートルサイズとは、100μm未満の成分のサイズを意味する。
【0016】
各マイクロチャネルの軸とは、マイクロチャネル内の液体の流れ方向に対して平行な中心軸を意味する。
【0017】
本発明の別の特徴によると、前記界面安定化手段は、前記ブロック付近に位置付けることができ、前記下流接合部と概ね位置合わせされ、また、前記界面安定化手段は、前記ブロック等によって前記第1の相から分離された前記成分の戻り防止(nonreturn:逆止)機能をさらに行うことができ、前記ブロック等は、前記戻り防止機能を行う別個の手段と関連付けられている。
【0018】
有利には、これらの界面安定化手段は、好ましくは突出縁を有する前記ピラーを含むことができ、前記ピラーの最後のものは前記下流接合部に隣接することができ、前記ピラーは、第1のピラーが移動手段の最後のブロックに隣接した状態で等間隔で離間していることができる。ピラーの縁が突出しているということは、界面間に良好な結合部が存在することを意味する。
【0019】
前記ピラーは、界面安定化・戻り防止手段として用いられる場合、移動される成分のサイズよりも小さいと予想される距離だけ、対になって互いから分離している。
【0020】
本発明の別の特徴によると、前記移動チャンバーは前記上流接合部と対応する下流接合部との間に連続的に延び、好ましくは、流れがこのチャンバーに沿っておおよそ平行なままであるようにも設計される。
【0021】
有利には、前記上流接合部及び前記対応する下流接合部はそれぞれ、上方から見て、
−概ねV字形状(この場合前記ユニットは好ましくはY字形の接合部の形状を有する)、又は
−概ねU字形状(この場合、前記ユニットは好ましくは1つ又は複数のともに接合されたH字の形状を有し、前記H字の拡大されたクロスバーが前記チャンバーを形成し、前記H字の直立部分(upright)が入口及び出口を形成する)を有することができる。
【0022】
したがって、前記上流接合部及び前記下流接合部の双方は、好ましくは、前記接合部に収束し、また前記接合部から分岐する2つの相の流れ(streams or flows)が、おおよそ平行であるか又は間に鋭角を形成する軸にそれぞれ中心決めされるようなものである。この流れの平行度又は鋭角は、対応する接合部自体(すなわち前記接合部の外壁)を特徴付ける平行度又は鋭角と混同されるべきではなく、以下でより詳細に説明するように、当該接合部の内部の幾何学的形状を示していることに留意するべきである。
【0023】
また有利には、前記上流接合部及び前記下流接合部は、前記チャンバー内の前記流れの平行度を高めるように構成され相間で或る距離にわたって延びる不透過性の分離仕切りによって、対向する前記接合部の方向に延長することができる。上流接合部及び下流接合部のそれぞれの壁の内面を延長する前記上流及び下流の分離仕切りは、前記接合部がそれぞれ前記壁の外面において直角又はさらには鈍角を形成する場合であっても、おおよそ平行であって合流及び分離する隣接する流れの方向を提供することを可能にすることに留意するべきである。換言すると、これらの分離仕切りは、接合部において合流するか又は前記接合部から離れる流れがおおよそ平行であるように2つの入口又は2つの出口間の大きすぎる(特に90度以上の)接合部角度を補正することができる。
【0024】
有利には、前記界面安定化手段の上述の変形例に関連して、前記界面安定化手段は、前記分離仕切りの少なくとも一方の面に位置する前記表面コーティングを含むことができる。
【0025】
本発明の別の特徴によると、前記システムには、前記入口及び前記出口における強制対流によって相を循環させるように圧力下で前記相を循環させる外部手段が設けられ、前記移動手段は、専ら受動的な流体力学を用いる流体力学的タイプのものである。
【0026】
マイクロ流体システムの抽出ユニットは、例えば上述した特許文献1における単に拡散による移動を用いる抽出ユニットとは異なることに留意するべきである。その上、前記ユニットは、特に生体対象物の場合に操作中の成分に損傷を与える可能性がある能動的方法、例えば電気的方法を使用せず、受動的方法(用いられる唯一のエネルギー源はシステムの外部にあるマイクロポンプである)を使用する。
【0027】
枯渇用マイクロチャネル及び富化用マイクロチャネル内をそれぞれ循環する流体は同じ方向に流れる。これらは好ましくは不混和性であり、これは、これらの2つの流体間に十分に画定された界面があることを意味する。「十分に画定された」とは、数nm未満の小さい厚さにわたって延びることを意味する。
【0028】
本発明の第1の実施の形態によると、円筒形ブロックのような突出縁を有しない壁を好ましくは有する前記移動ブロックは、前記マイクロチャネルの方向に対して5度〜85度、好ましくは20度〜60度の角度を形成する少なくとも1つの列で配置され、前記ブロックは、前記成分を前記隣接する富化用マイクロチャネルに向かって強制的に移動させるように前記成分の幾つか又は全てを選択的に方向転換させるように構成されている。したがって、前記ブロックの列は、前記枯渇用マイクロチャネル内を循環している流体の流れ方向を横断して延びることに留意するべきである。
【0029】
有利には、前記例による移動手段は、移動チャンバー内に枯渇用マイクロチャネルに沿って連続して配置される複数列のブロックを含むことができ、前記ブロックは、
−前記上流接合部に隣接する上流列であって、前記隣接する枯渇用マイクロチャネルの通路断面の少なくとも一部にさらに延び、その障害物が、前記上流障害物間の間隔よりも大きい、より大きいサイズの少なくとも1つのカテゴリーの成分の通路を妨げ、かつ前記成分を前記富化用マイクロチャネルの遠位出口に方向転換させる(したがって前記富化用マイクロチャネルがこの上流列に連結される)ように寸法決め及び離間されている、上流列と、
−前記下流接合部に隣接する少なくとも1つの下流列であって、上流列の通路断面よりも小さい通路断面にわたって延び、その障害物が、前記上流列を横断した、前記下流障害物間の間隔よりも大きく、先行する成分より小さいサイズの少なくとも他のカテゴリーの成分の通路を妨げ、かつ前記成分を、前記富化用マイクロチャネルに方向転換させ、前記遠位出口及び枯渇用マイクロチャネルとともに例えばY字形の接合部を形成ししたがって前記下流列に連結されている富化用マイクロチャネルの近位出口へ前記成分を導くように寸法決め及び離間されている、下流列と、
を備える。
【0030】
前記第1の実施の形態の変形例によると、前記方向転換移動手段は、枯渇用マイクロチャネルを横断して、また用途によっては富化用マイクロチャネルを横断してチャンバー内に配置されるブロックの列の形態で配置することができ、成分を通過させて1つの列から次の列への通過毎にこれらの成分を徐々に方向転換させることができる決定論的横変位(「DLD」)を得るように設計されている。
【0031】
前記第1の実施の形態の別の変形例によると、前記方向転換移動手段は、前記移動チャンバーに対向して形成されている前記枯渇用マイクロチャネルの側壁の内部突起からなるとともに例えば三角形の断面を有する少なくとも1つのデフレクターをさらに(すなわち前記ブロックに加えて)備えることができる。
【0032】
相互に接触する前記流れ間の界面を安定化させるように構成されている前記界面安定化手段に関して、前記界面安定化手段は、一方の相(特に枯渇されるべき相)の液滴が別の相(特に富化されるべき相)に形成されることを防止することを可能にすることに留意するべきである。前記安定化手段は、隣接するマイクロチャネル内を循環している2つの相が不混和性である場合に有用である。
【0033】
上述したように、前記移動チャンバーは、いわゆる戻り防止機能を提供する戻り防止手段も備えることができ、すなわち、戻り防止手段は、富化相に移動された前記成分が枯渇相に戻されることに抗する。前記移動チャンバーは、界面安定化・戻り防止手段を備えることができ、すなわち、界面安定化機能及び戻り防止機能を同時に提供する。
【0034】
前記界面安定化手段及び前記戻り防止手段は、前記移動手段の下流の、下流接合部の延長部に概ね位置付けられる、前記流れ間の界面ゾーンに配置される。界面安定化手段は前記界面ゾーンの上流に配置することもできる。
【0035】
本発明の第2の実施の形態によると、前記枯渇用マイクロチャネル及び前記富化用マイクロチャネルは、Y字形の接合部の形態のそれらの上流接合部及び下流接合部を有し、例えば正方形の断面の前記移動ブロックは、前記上流接合部の下流に前記下流接合部に隣接して位置付けられ、前記ブロックは、前記富化用マイクロチャネルの入口と対向する前記枯渇用マイクロチャネルの入口の側壁の延長部、及び前記富化用マイクロチャネルの出口の延長部に等間隔に離間しており、前記出口は、前記成分を前記成分の経路から方向転換させることなく前記枯渇用マイクロチャネルの前記入口から前記富化用マイクロチャネルの前記出口へ導くように、前記枯渇用マイクロチャネルの前記入口とおおよそ同軸である。
【0036】
有利には、抽出されるべき成分の分散を使用しない前記移動手段は、専ら、枯渇用チャネル内を循環する流体の流れ方向を横断して延びるそのようなブロックの列からなることができる。この場合、前記ブロック間の間隔は、分離されるべき成分のサイズよりも小さい。第1の部分では、そのようなブロックの列は枯渇用マイクロチャネルから富化用マイクロチャネルへ成分を移動させる手段を構成し、第2の部分では、前記ブロックの列は枯渇用マイクロチャネル及び富化用マイクロチャネル内をそれぞれ循環している流体間の界面と接触する。前記第2の部分において、この場合、ブロックの列は、分離された成分の界面安定化・戻り防止手段を構成する。
【0037】
上述の2つの実施の形態に共通の本発明の別の特徴によると、前記抽出ユニットは、下流を、コイルのような、水頭損失を低減する少なくとも1つの手段に連結することができ、当該手段は、マイクロチャネルの前記ネットワークにも含まれ、第1の枯渇相の液滴が第2の富化相に進入することを阻止するよう、第2の富化相の圧力を第1の枯渇相の圧力よりもわずかに高く保つように、かつ界面の両側におおよそ等しい流量を有するように構成される。前記コイル(これは本発明の実施態様の一例にすぎない)の代わりに、水頭損失を低減することを可能にする任意の手段を用いることができることに留意するべきである。
【0038】
同様に前記2つの実施の形態に共通の本発明の別の特徴によると、前記抽出ユニットは、上流を、この場合も同様に前記マイクロ流体システムに含まれる、細胞集団等の成分をカプセル化するユニットに(この場合、抽出ユニットは、カプセル化ユニットの出口において得られる各ポリマーカプセルの架橋によるゲル化を提供するように構成される)、前記カプセル化ユニット及び抽出ユニット間に任意選択的に介装されるプレゲル化モジュールに、並びに、抽出ユニットの下流に設けることができる、例えばマイクロ流体流フォーカシング装置(「MFFD」)タイプの追加のカプセル化モジュールに連結することができる。
【0039】
概して、本発明によるマイクロ流体システムは好ましくは、得られたゲル化カプセルを必要であれば個体に移植することが可能でなければならないため、滅菌可能であるべきであることに留意されたい。本発明によるシステムは、非限定的な例としてプラスチック(例えばPDMS)、ガラス、又はシリコンで作製することができる。
【0040】
上述の特徴のセットによって規定されるような本発明によるマイクロ流体システムは、有利には、例えばランゲルハンス島である細胞集団のようなマイクロメートルサイズ又はミリメートルサイズの成分を、枯渇されるべき第1の液相から、前記第1の相又は隣接する中間相と混和性であるものとすることができるか又は不混和性であるものとすることができる富化されるべき少なくとも1つの第2の液相へ抽出するために用いることができる。
【0041】
本発明の好ましい実施の形態によると、前記使用は、前記成分をそれぞれコーティングするカプセルを、前記カプセルを含有している枯渇されるべき油性有機相から、前記油性相と不混和性であるとともに好ましくはカルシウムイオン等のポリイオンをベースとするゲル化剤を含有している富化されるべき水相へ移動させることによって、前記マイクロ流体システム内で前記成分の周りに予め形成されているとともに例えばアルギン酸塩ヒドロゲルをベースとするポリマーコーティングカプセルを架橋することによりゲル化を行うことからなる。
【0042】
前記予め形成されたカプセルは単層又は多層であるものとすることができ、有利には生体適合性があり、機械的に強く、かつ選択的な透過性を有することに留意されたい。カプセル化に用いられるポリマーは例えば、カプセル化に最も一般的に用いられるポリマーであるアルギン酸塩ヒドロゲルとすることができる。しかし、カプセル化ユニットが、選択されたポリマーが必要とするゲル化のタイプに適合されていれば、非限定的な例としてキトサン、カラギーナン、アガロースゲル、ポリエチレングリコール(PEG)等の他のカプセル化材料を選択することができる。
【0043】
本発明の別の実施の形態によると、前記使用は、相互に混和性である枯渇されるべき第1の相及び富化されるべき第2の相を対で用いること、並びに前記移動チャンバーの下流で横断濃度勾配を生成することからなる。
【0044】
本発明による、例えばランゲルハンス島である細胞集団のようなマイクロメートルサイズ又はミリメートルサイズの成分を、枯渇されるべき第1の液相から、前記第1の相又は隣接する中間相と混和性であるか又は不混和性である富化されるべき少なくとも1つの第2の液相へ抽出する方法が、マイクロ流体システムの基板にエッチングされる枯渇用マイクロチャネル及び少なくとも1つの富化用マイクロチャネルにおいて強制対流によって層流状態(好ましくは「超層流(hyperlaminar)」、すなわちレイノルズ数が1未満)で流される、前記相のそれぞれの流れを、前記流れが、一方では互いにおおよそ平行であるか又は前記マイクロチャネル間の2つの上流接合部及び下流接合部において合流することによって鋭角を形成し、他方では前記成分を専ら受動的な流体力学によって一方の相から他方の相へ強制的に移動させるよう、前記流れの相互接触の間中、平行なままであるように接触させることを含む。
【0045】
本発明によると、前記方法は、前記枯渇用マイクロチャネルの中心軸を横断して延びるブロックによる前記枯渇用マイクロチャネルから前記少なくとも1つの富化用マイクロチャネルへの前記成分の移動、並びに次いで前記ブロックの下流及び前記下流接合部の上流で行われる界面安定化を含むようなものである。
【0046】
有利には、前記界面安定化は、前記ブロック付近に位置付けられるとともに前記下流接合部と概ね位置合わせされるピラーの配置によって、又は前記下流接合部の領域に前記マイクロチャネルの少なくとも一方に面して位置する表面処理によって行うことができ、前記表面処理は例えば親油性又は疎水性のタイプのものである。
【0047】
本発明の別の特徴によると、前記方法は、前記ブロックによって、前記第1の相から分離された前記成分の戻り防止機能を行うことをさらに含むことができ、前記戻り防止機能は前記安定化に起因するものであるか又は前記安定化とは別個に行われる。
【0048】
既知であるように、ランゲルハンス島のサイズは、平均して1μm〜10μmである1つの細胞と比較して20μm〜400μmと様々であることができ、これらの島は、それらが脆弱であること及びそれらの凝集力が小さいことに起因して単一の細胞よりもさらにより慎重に操作しなければならず、この操作は本発明のマイクロ流体システムによって提供される。
【0049】
本発明の他の利点、特徴及び詳細は、単に例として与えられる添付の図面を参照して、以下で与えられる説明の残りの部分から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明によるマイクロ流体システムの、基板の酸化を示すその製造プロセスの第1のステップの概略断面図である。
図2図1のシステムの、上記酸化された基板上に感光樹脂を塗布する(spread)ところを示すその製造プロセスの第2のステップの概略断面図である。
図3図2のシステムの、マイクロチャネルを形成するためのフォトリソグラフィー及びドライエッチングである次のステップの結果を示す、その製造プロセスの第3のステップの概略断面図である。
図4図3のシステムの、ディープエッチングのステップの結果を示す、その製造プロセスの第4のステップの概略断面図である。
図5図4のシステムの、樹脂の剥離及びウェットエッチングによる脱酸のステップの結果を示す、その製造プロセスの第5のステップの概略断面図である。
図6図5のシステムの、酸化のステップの結果を示す、その製造プロセスの第6のステップの概略断面図である。
図7図6のシステムの、マイクロチャネルの断面を画定するために保護カバーをシールするステップの結果を示す、その製造プロセスの第7のステップの概略断面図である。
図8】本発明の第1の実施形態の例による、カプセル化された成分を枯渇されるべき相から富化されるべき相へ移動させるために前記カプセル化された成分を方向転換させるところを示す、マイクロ流体システムの2相抽出ユニットの概略部分上面図である。
図8a図8の変形例としての本発明の第1の実施形態の別の例による、マイクロ流体システムの2相抽出ユニットの概略部分上面図である。
図8b図8の2相抽出ユニットの別の変形例の概略部分上面図である。
図9】第1の実施形態に従った図8の変形例による2相抽出ユニットの概略部分上面図であり、これらの成分を方向転換させるところも示す。
図10】これらの成分の2つのサイズカテゴリーのそれぞれの方向転換を示す、第1の実施形態に従った図8の別の変形例による2相抽出ユニットの概略部分上面図である。
図11図8図10による抽出ユニットの2つの入口を有する上流接合部の寸法例を示す概略部分上面図である。
図12図8図10による抽出ユニットの2つの入口を有する下流接合部の寸法例を示す概略部分上面図である。
図13】これらの成分が徐々に方向転換するところを示す、第1の実施形態に従った図8の別の変形例による2相抽出ユニットの概略部分上面図である。
図14】デフレクターによってこれらの成分が方向転換するところを示す、第1の実施形態に従った図8の別の変形例による2相抽出ユニットの概略部分上面図である。
図14a】デフレクターが図8図12の方向転換手段に連結されている、図14の変形例による2相抽出ユニットの概略部分上面図である。
図15】本発明の第2の実施形態の一例による、これらの成分を枯渇されるべき相からこれらの相によって富化されるべき相へ移動させるためにこれらの成分を方向転換させることなく導くところを示す、2相抽出ユニットの概略部分上面図である。
図16】本発明の第1の実施形態の一例による、成分を2つの相へ、それぞれ中間相へ、次いでこれらの成分によって富化されるべき相へそれらを連続的に移動させるために方向転換させることを示す、3相抽出ユニットの概略部分上面図である。
図17】第1の実施形態に従った図16の変形例による、2つのサイズカテゴリーのこれらの成分を他の2つの相へそれぞれ方向転換させるところを示す、3相抽出ユニットの概略部分上面図である。
図18】抽出ユニットが図8によるものであり、上流がカプセルプレゲル化モジュールに、下流が抽出された成分の二重カプセル化を得るために追加のカプセル化モジュールに連結されている、本発明によるマイクロ流体システムの概略部分上面図である。
図19】これらのモジュールに連結されている抽出ユニットが3層カプセルを最終的に得るために4つの相を用いるという点のみが図18とは異なっている、図18の変形例によるマイクロ流体システムの概略部分上面図である。
図19a図15の原理に従った抽出ユニットを順次使用する、図19の変形例によるマイクロ流体システムの概略部分上面図である。
図20図18又は図19によるシステムによって得られるゲル化されたカプセルの概略断面図であり、このカプセルにおいて得られる各成分の中心決めを示す。
図21】組み合わせた図8及び図14の変形例による本発明の第1の実施形態に従った、デフレクターを有する2相抽出ユニットを上面図で部分的に示す顕微鏡写真である(方向転換される成分は見えない)。
図22図8におけるようなタイプの抽出ユニットにおいて有用な移動手段及び安定化・戻り防止手段の一例の概略上面図である。
図23図21におけるようなタイプのデフレクターを有する抽出ユニットにおいて有用な移動手段及び安定化/戻り防止手段の別の例の概略上面図である。
図24図21におけるようなタイプの、但しより大きいデフレクターを有する抽出ユニットにおいて有用な移動手段及び安定化/戻り防止手段の別の例の概略上面図である。
図25図21の変形例によるものであるがデフレクターを有しない、本発明の第1の実施形態に従った2相抽出ユニットを上面図で部分的に示す顕微鏡写真である(方向転換される成分は見えない)。
図26】カプセルゲル化のための抽出ユニットの上流が抽出されるべき成分をカプセル化するユニットに連結されており、下流が枯渇及び富化されるべき2つの相のそれぞれの圧力及び流量を調節するコイルに連結されている、本発明によるマイクロ流体システムの概略上面図を示す顕微鏡写真である。
図27】抽出ユニットに連結されている図26のコイルを局所的に上面図で、またより大きな縮尺で示す顕微鏡写真である。
図28図26のカプセル化ユニットを局所的に上面図で、またより大きな縮尺で示す顕微鏡写真である。
図29】コイルに連結されている図26の抽出ユニットを局所的に上面図で、またより大きな縮尺で示す顕微鏡写真である。
図30図22におけるようなタイプである図29の抽出ユニットを局所的に上面図で、またさらに大きな縮尺で示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明によるマイクロ流体システム1を、例えば図1図7を参照して以下のように製造することができ、図1図7は、シリコンマイクロエレクトロニクスの既知の方法、すなわち特にリソグラフィー、ディープエッチング、酸化、「剥離」、及び保護カバー2を基板3にシールすることに基づく種々のステップを呈する。このシリコン技術は、(マイクロメートル程度の)非常に精密であるという利点を有し、エッチングの深さ又はパターンの幅に関する制約を有しない。より詳細には、マイクロシステム1の製造手順は以下の通りである。
【0052】
酸化ケイ素4(図1)が、シリコン基板上に成膜される。次いで、感光樹脂5が、前面への塗布によって成膜され(図2)、その後に酸化ケイ素4が、フォトリソグラフィー及び酸化ケイ素4のドライエッチングによって、樹脂5の層を通してシリコン基板3までエッチングされる(図3)。
【0053】
次いで、この基板3が、ディープエッチング6によって、所望されるマイクロチャネルの深さまでエッチングされ(図4)、その後に樹脂が「剥離」される(図5)。次いで、残っている熱酸化ケイ素4が、ウェットエッチングによる脱酸によって除去され(図5)、その後に、新たな熱酸化物7の層が成膜される(図6)。
【0054】
次いで、得られたチップが切り出され、ガラス又は観察を可能にすべく透明である何らかの他の材料で作られた保護カバー2が、例えば陽極シール又は直接シールによってシールされる(図7)。
【0055】
マイクロチャネル又は毛管(図示せず)の組み立ての前に、疎水シラン化形式の表面処理を行うことも可能である。
【0056】
上述の手順は、たどることができる多数の製造手順のうちの1つである。さらには、基板3について、例えばPDMS(ポリジメチルシロキサン)又は別のエラストマー等といったシリコン以外の材料も、例えばフォトリソグラフィーによって前もって作製された「マスター」(すなわち、母型)上への成形によって、使用することが可能である。
【0057】
図8の抽出ユニット10は、それぞれ枯渇用11及び富化用12である2つのマイクロチャネルを有し、これらのマイクロチャネルは基板3上でおおよそ平行に並列しており、これらのマイクロチャネル内で、一方は抽出されるべき成分Eが枯渇されるべき相Aであり他方は富化されるべき相Bである2つの液相が単に強制対流によって循環させるように意図されており、これらの相は、好ましくは互いに不混和であるように選択される(成分Eをコーティングするポリマーカプセルをゲル化するためにユニット10を用いる好ましい場合では、これらの相A及びBはそれぞれ油相及び水相である)。マイクロチャネル11は入口11a及び出口11bを有し、マイクロチャネル12は入口12a及び出口12bを有し、入口12a及び出口12bはそれぞれ入口11a及び出口11bとともに、双方ともY字形の接合部として上流接合部Ja及び下流接合部Jbを形成する(すなわち非常に小さい鋭角でくっつけられて僅かに外方に広がる分岐を有するV字を形成する)。マイクロチャネル11及び12は、これらの接合部Ja及びJb間でともに接合され、「超層流」状態(レイノルズ数が1未満)で循環している相A及びBを相互に接触させるように設計されている移動チャンバー13を形成することで、チャンバー13内に位置する専ら流体力学的な手段14によって、この実施態様ではカプセル化された細胞集団等の成分Eをマイクロチャネル11からマイクロチャネル12へ方向転換させることによりこれらの成分を移動させる。
【0058】
これらのY字形の接合部Ja及びJbの結果として、相A及びBの流れが収束してJaの下流で互いに接触し、相A及びBが互いに接触した状態での循環中に互いに平行なままであることが予想される移動チャンバー13内でのこれらの相の流れのように毎回おおよそ平行である方向にJbの上流で互いから分岐する。相A及びBは好ましくは同じ方向に循環する。
【0059】
チャンバー13内の流れのこの平行度をさらに最適化するために、各接合部Ja、Jbの内側の接続点において相A及びBに対して不透過性である分離仕切り15を、この接合部Ja、Jbの内側(すなわちその壁の内面)のこれらの二等分線におおよそ中心決めするように追加することが予想される。換言すると、これらの2つの仕切り15は互いに向かって方向付けられており、互いに、並びにチャンバー13内の相A及びB間の接触界面とおおよそ位置合わせされている。
【0060】
図8aにおいて分かるように、上流接合部Jaの仕切り15は、仕切り15の軸上に位置合わせされている一列の分離ピラー16によって延長することができる。変形例として、この上流仕切り15を、この上流接合部Jaの二等分線の軸上に位置合わせされているそのようなピラー16と入れ替えることができることに留意するべきである。
【0061】
図8において分かるように、抽出ユニット10は本質的に、
−相A及びBの接触が始まるゾーンZ1、
−チャンバー13内に位置付けられ、この例では一列の等間隔で離間しているブロック(好ましくは成分Eを変質させないように円筒形である)から形成される方向転換移動手段14が存在するゾーンZ2であって、上記ブロック14は、マイクロチャネル11の方向に対して約45度の角度で、このマイクロチャネル11の通路断面を横切ってほとんど相A及びB間の界面まで(すなわちマイクロチャネル11及び12が合流するゾーンまで)延び、成分Eの通過に抗し、これらの成分をマイクロチャネル12へ方向転換させる、ゾーンZ2、
−相A及びBの流れに対して平行であり、好ましくは多角形断面(例えば正方形)である一列のピラー16を含むゾーンZ3であって、上記ピラー16は相A及びB間の界面を安定化させるとともに、相Bに移動した成分が相Aに戻ることを防止するように設計されている(ピラー16間の間隔は成分Eの直径よりも小さいように選択される)、ゾーンZ3、並びに
−成分Eが枯渇しているか又はなくなっている相A及び成分Eが富化した相Bの分離を可能にする2つの独立した出口11b及び12bを介して相A及びBの排出を可能にするゾーンZ4、
に分けることができる。
【0062】
2つの相A及びBの界面に位置決めされる第3の出口を追加することが可能であり、この第3の出口は成分Eがない相A及びBの混合物を収集することが意図されることに留意するべきである。
【0063】
また、単一の列のブロック14は相Aの流れを妨げることなく「単分散」(すなわちおおよそ同じサイズの)成分Eを方向転換することを可能にすること、及びしたがってブロック14間の間隔は成分Eの直径よりも小さいことに留意するべきである。したがって、一列のブロック14はフィルターとして働き、すなわち、相Aの流れの方向に、サイズがフィルターのメッシュを超える成分の通過を阻止し、上記メッシュは本明細書では2つの連続するブロック14間の間隔によって規定される。ブロック14の列の上述の角度に関しては、流速に応じるものであり、したがって例えば30度〜85度で多様であることができ、上記ブロック14への成分Eの衝突を回避するか又は最小限に抑えるために、比較的高い速度の場合は小さくされる。
【0064】
さらに、戻り防止・界面安定化機能を提供するピラー16間の間隔が十分に小さいように選択される場合、ユニット10の寸法に対してかなりの距離にわたって上記安定化を行うことができることに留意するべきである。この実施形態によると、ピラー16は界面安定化手段及び戻り防止手段の双方を構成する。
【0065】
図8bに示されるように、界面安定化手段は、マイクロチャネルの内壁に下流接合部Jbにおいて施される表面処理を含むことができる。図8bに示される例では、表面処理は分離仕切り15の部分に施され、この部分を、これと接触する液相によって湿潤可能とする。図示の例では、相Aは有機であり、相Bは水性である。界面安定化手段はこの場合、(方向転換ブロック14を有する)枯渇用マイクロチャネル11を画定する(すなわち枯渇用マイクロチャネル11の方を向く)この仕切り15の面15aに施される表面処理である。この処理はこの場合、この部分15aを有機相Aによって湿潤可能とするようにこの部分15aを親油性又は疎水性にする処理である。上記処理は例えば、例えばシラン化によって部分15aに親油性又は疎水性の材料を成膜することを含むことができる。
【0066】
代替的に又は同時に、接合部Jbにおいて富化用マイクロチャネル12を画定する(すなわち富化用マイクロチャネル12の方を向く)分離仕切り15の面15bに処理を施すことができる。この部分15bの表面を親水性にするこの直前に述べた処理は、上記表面に親水性材料(例えばSiO又は親水性シラン)を固着することを含むことができる。
【0067】
したがって、仕切り15によって画定されているマイクロチャネル11又は12内を循環している液相A又はBによって湿潤可能となった上記仕切り15は界面安定化手段を構成することができる。粒子移動ブロック14に隣接するように位置決めされている上記仕切り15は、移動される成分Eに対する戻り防止手段も形成する。
【0068】
図9に示されるように、本発明による抽出ユニット110は、有利には相Bにおける横断濃度勾配(矢印F1を参照のこと)を用いることができ、この場合ブロック14の列はマイクロチャネル11からマイクロチャネル12へ横断して延びるため、成分Eは相Bへ移動されると、この濃度勾配を横断する。この移動によって行われるゲル化が急速である場合、この方法は、成分Eをコーティングするポリマーカプセルの膨潤を制限することができる。一変形例として、各カプセルの高度な化学コーティングを行うために二重の濃度勾配を用いることが可能である。
【0069】
「多分散」(すなわち様々なサイズカテゴリーを有する)成分Eの集団の場合に関する図10に示されるように、本発明による抽出ユニット210は、おおよそ平行な斜めの少なくとも2列のブロック214a及び214bを有することができ、直径がより大きいブロック214aの列は、上流に配置されているとともに、最大成分Eのみをマイクロチャネル212遠位ゾーン(すなわち図において上側)へ方向転換させ、次いでマイクロチャネル212の対向する遠位出口212b1へガイドする枯渇用マイクロチャネル211及び富化用マイクロチャネル212の双方に延び、一方で他のより小さい成分E’は、この列214aを通って、先行する列の下流にありマイクロチャネル211のみを横切って延びる列214bによって同じく方向転換される。これらの成分E’はこの場合、マイクロチャネル212の近位ゾーン(すなわち図において下側)において成分Eの下流で相Bに同様に入り(rejoin)、マイクロチャネル212の対向する近位出口212b2へ導かれる。ブロック214a及び214bは同様の直径を有することもできる。この場合、2つの連続するブロック214a間の間隔は2つの連続するブロック214b間の間隔よりも大きい。
【0070】
図11及び図12は、決して限定的ではない指針として、図8におけるような抽出ユニット10を製造するのに使用可能な寸法値を示す。
【0071】
まず、各接合部Ja、Jb付近のマイクロチャネル11及び12のそれぞれの横断幅Wca及びWorgは同一又は同様であるものとすることができ、これらの幅は約1.2Φから10Φまで様々であるものとすることができ(ここで、Φは抽出されるべき成分Eの平均直径である)、移動チャンバー13の横断幅は例えばWca+Worgの和に等しいと規定される。
【0072】
さらに、上流接合部Jaの内側端(例えば上流接合部Jaを延長する仕切り15の内側端によって形成される)と(接合部Jaの上記端におおよそ対向して位置付けられる)対応する列の方向転換ブロック14の最後のブロックとの間の軸方向距離Wwinは、約1.5Φ〜50Φとすることができる。下流接合部Jbの内側端(例えば下流接合部Jbを延長する仕切り15の内側端によって形成される)とこの同じ最後のブロック14との間の軸方向距離Wsepに関しては、約1.5Φ〜20Φとすることができる。
【0073】
図8図10において見られるブロック14、214a、214bの各列に関して、これらのブロック間の間隔は、約Φ/5からΦ/2まで様々であるものとすることができ、各ブロックの直径は約Φ/10〜Φ/5とすることができる。ピラー16間の間隔及びそれらの直径にも同じことが当てはまる。
【0074】
図13における変形例では、抽出ユニット310は、成分Eを相Aから相Bへ方向転換させる、成分Eを移動させる手段が、斜めのブロック314の複数の列からなるという点が図8における実施形態とは本質的に異なり、ブロック314の複数の列は、マイクロチャネル11及び12に対して横断方向に配置され、これらのブロック間の間隔が成分Eの直径よりも大きいため成分Eを通過させて1つの列から次の列への通過毎にこれらの成分を徐々に方向転換させることができる決定論的横変位(「DLD」)を得るように設計されている。ブロック314は、方向転換されるべき成分Eの流れ線が2つの相A及びB間の界面に向かって徐々に移動するように配置されている。したがって、分離されるべき成分Eはそれらの流れ線をたどり、界面へ徐々に移動する。このタイプの構成は、方向転換されるべき成分のフィルターを構成しないが、漸進的な方向転換手段を構成する。この変形例によると、2つの不混和性相A及びBが好ましくは用いられる。さらにこの変形例によると、界面安定化・戻り防止手段16が移動手段314の下流に配置される。
【0075】
図14における変形例では、抽出ユニット410のチャンバー413内で成分Eを相Aから相Bへ方向転換させる移動手段は、デフレクター414aからなる。成分Eは、毛細管力が十分である場合に上記相Bと接触することで吸着される。しかし、方向転換された成分Eの相Bによる吸着は十分には生じない可能性があるため、移動はあまり効果的でなくなることを指摘しておくべきである。
【0076】
図14の変形例である図14aに示されるように、デフレクター414aは、一方では相A及びB間の界面に対しておおよそ斜めにデフレクター414aを延長する方向転換ブロック14で、他方では安定化/戻り防止ピラー16で補うことができる。方向転換ブロック14は、成分Eが枯渇される流体(枯渇用マイクロチャネルを流れる流体)の流れ方向に方向転換される成分Eの通過を阻止するフィルターを構成するように配置される。これらのピラー16を用いて、そのようなピラー16を有せずかつ相Bに吸着される成分が相Aに戻る可能性がある図14のユニット410によって提供される移動よりも、効果的な移動が得られることに留意するべきである。
【0077】
図15の例では、本発明の第2の実施形態による抽出ユニット510はさらに、その枯渇用マイクロチャネル511及び富化用マイクロチャネル512を有し、これらのマイクロチャネルはY字形の接合部の形態のそれらの上流接合部Ja及び下流接合部Jbを有するが、相Aから相Bへの成分Eの移動はこの場合はこれらの成分Eを幾分も方向転換させることなく行われる。実際には、上流接合部Jaの下流で好ましくは移動チャンバー513の全長にあり、マイクロチャネル511の入口511aの側壁及びマイクロチャネル512の出口512bの側壁の延長部で下流接合部Jbまで延びる(入口511a及び出口512bはおおよそ同軸であると予想される)、等間隔に離間したピラー514(例えば正方形の断面)の位置合わせが、枯渇されるべき相Aの上記入口511aから富化されるべき相Bの上記出口512bまでほとんど直線で成分Eを導くように設計されている。したがってこのピラー514の位置合わせは、成分Eがたどる方向に対して平行に延びる。
【0078】
本発明のこの第2の実施形態では、ピラー514への成分Eの衝突が回避され、このことは、ランゲルハンス島等のほとんど凝集していない細胞集団のような脆弱な成分の抽出の場合に特に重要であることに留意するべきである。
【0079】
上記図15において分かるように、相A及びB間の界面は、チャンバー513のより下流、すなわち接合部Jbに近接して位置付けられる最後のピラー514と「重なる(rest)」傾向を有することも留意される。換言すると、これらのピラー514は界面安定化手段を形成する。また、ピラー514は成分Eのマイクロチャネル511の出口511bへの通過も防止するように設計されているため、チャンバー513の全長における相Aの流れの軸に沿ったそれらの位置合わせはこの目的で好ましい。したがって、相A及びB間の界面が支持されるピラー514は、界面安定化・戻り防止手段も構成する。
【0080】
この第2の実施形態によると、ピラー514の列は相Aの流れ方向に対して横断して延びる。ピラー514の列は、枯渇用マイクロチャネル511における相Aの流れ方向への成分Eの通過を阻止するという意味で、分離されるべきこれらの成分のフィルターを構成する。この場合、この実施形態によると、このピラー514の列は移動手段及び界面安定化・戻り防止手段の双方を構成することが理解されるであろう。
【0081】
また好ましくは、相Aが相Bと混合されることを防止するために、抽出中に、例えば図26及び図27に示されるコイル20によって、相A中の圧力よりも僅かに高い相B中の圧力を維持するためのステップ(又は例えばチャネルの断面を減らすことによって水頭損失を低減する何らかの他の手段)がとられる。このことは、相Aの液滴が相B中に出現することを防止し、逆に、相A中での相Bの液滴の形成は受け入れることができると規定される。水頭損失を低減する上記手段20は相A及びBの圧力を調整することを可能にするだけではなく、移動チャンバーにおいて互いにかなり近いそれらのそれぞれの速度を維持することも可能にし、したがって一方の相から別の相へ移動される成分への過剰なせん断力を回避することに留意するべきである。
【0082】
図16に示されるように、本発明による抽出ユニット610が、3つの入口611a〜613a、3つの出口611b〜613b、2つの上流接合部Ja及び2つの下流接合部Jbを画定する平行なマイクロチャネル611、612及び613内を循環する3つ以上の異なる相Ph1〜Ph3を用いることができる。枯渇用マイクロチャネル611、中間のマイクロチャネル612を横切って形成されて中間のマイクロチャネル612が富化用マイクロチャネル613と合流するところ(すなわち相2及び相3間の界面)で終端する斜めの列の方向転換ブロック614の延長によって、成分Eが相2及び次いで相3に強制的に通される。このように相2を通ることによって、例えば、これらの成分Eをコーティングするカプセルを相3によって完全にゲル化する前に上記カプセルの表面を化学的又は生物学的に修飾することを可能にすることができる。このユニット610の場合、好ましくは相2と不混和性である相1が用いられ、一方で相2及び3は予想される用途に応じて互いに混和性であるものとすることができる。
【0083】
図17に示されるように、成分E、E’の2つ又は2つ以上のサイズカテゴリーが存在する場合、抽出ユニット710において、図10におけるような複数列のブロック714a及び714b、並びに3つ又は3つ以上の不混和液相Ph1〜Ph3を用いることが可能である。ブロック714a及び714bの列は成分E及びE’それぞれのフィルターを構成する。実際には、ブロック714a及び714bの列は、それらのそれぞれのマイクロチャネルの流れ方向に応じてこれらの成分E及びE’の通路を阻止する。上記図17から、より小さい成分E’は相2に位置し、上流列714aを横断して下流列714bによって方向転換された後で(中間マイクロチャネル712の出口712bを介して)相2を離れ、一方でより大きい成分Eは上流列714aによって方向転換されて相3に直接到達して(富化用マイクロチャネル713の出口713bを介して)相3を離れることが分かる。図16及び図17に記載される実施形態では、ピラー16が界面安定化手段(特に2つの隣接するマイクロチャネルを流れる2つの相が不混和性である場合に)及び戻り防止手段の双方を構成することが留意される。
【0084】
図18及び図19は、細胞集団のような抽出されるべき成分Eをコーティングするカプセルのゲル化に関して、図8図15を参照して上記で提示されたように、それぞれ有機相(相A)において用いられるプレゲル化、次いで水相(相B)へ移動されることによるゲル化という2つのステップを示す。
【0085】
プレゲル化は、
−ポリマーカプセルのゲル化を可能にするポリイオンのナノ結晶(通常はアルギン酸塩又は同様のものである)であって、これらのナノ結晶は例えば、連続する有機相と必ずしも混和性ではない(例えば油溶剤又は過フッ素化溶剤をベースとする)酢酸カルシウム、塩化カルシウム、チタン酸バリウム、リン酸カルシウム又は塩化バリウムを有することができる、ポリイオンのナノ結晶、又は
−ゲル化を可能にするポリイオンを含有するナノエマルションとの接触によって得ることができる。
【0086】
これらのポリイオンとの接触によってプレゲル化が起こり、カプセルの外側エンベロープは、その表面を強化しカプセルの球状形状を維持するのに十分である非常に僅かな厚さまで架橋する。
【0087】
プレゲル化は多くの利点を提供し、本発明者らは特に、プレゲル化によって、カプセルの球状形状を保ち、カプセルを生理学的状態に維持し、カプセル化及びゲル化を自動化し、単層カプセル化を行い、かつ最終的に「付随する(satellite)」液滴を除去することが可能となると述べることができる。これらの「付随する」液滴は、それらのサイズが小さいことに起因して枯渇用チャネルの流れをたどってフィルターとして働くブロック14間のスペースを通るため、実際にはプレゲル化の下流で除去される。
【0088】
図18及び図19において分かるように、プレゲル化モジュールPGが図8の抽出ユニット10の上流に連結されており、抽出ユニット10は有利には下流が任意選択的な追加のカプセル化モジュール30に連結される。モジュールPGによってプレゲル化されたカプセルは、それらのキャリア流体(油相A)中に入ると、ユニット10に進入してブロック14の列によって第2の不混和性相B(水性)へ移動される。界面安定化手段及び戻り防止手段16もそこに配置することができる。この例では、これらの手段は、これらの2つの機能を同時に提供するピラー16の形態である。カルシウムイオン(又はゲル化を可能にする他のポリイオン)が上記相Bに加えられると、アルギン酸塩コーティングの完全な架橋が起こり、安定したカプセルが得られる。
【0089】
しかし、不混和性相Bがゲル化ポリイオンを含有していない場合、現在はあまり用いられていないがカプセル化された細胞のスペースを残すという利点を提供するとともに分割する、液体のコアを有するカプセルを形成することが可能であることに留意するべきである。
【0090】
本発明によるマイクロ流体システムは中性のpHにおいてゲル化を行うことで細胞の生存度を最大限に高めることを可能にするが、これは、カプセルが最初にゲル化されて次に液体のコアがクエン酸又はEDTA等の作用物質によって溶解される、従来の方法によるそのコアを有するこれらのカプセルのカプセル化の場合は可能ではないことにも留意するべきである。
【0091】
図18及び図19に示されている追加のカプセル化モジュール30は、二重コーティングによって最適な質のカプセル化を提供することが意図される。例えば「MFFD」(「マイクロ流体流フォーカシング装置」)タイプのこのモジュール30は、例えばアルギン酸塩溶液のカプセルを含有する水相Bに連結されている。したがって、本発明では、異なるものとすることがきる(例えば異なる濃度のアルギン酸塩、又は他のアルギン酸塩/PLL(PLLはポリ−L−リシンである))2つのコーティングC1及びC2を有し、かつ図20において分かるように一方の同じ側に2つの中心がずれている可能性が低いためカプセルC内の各成分(例えば細胞集団)の中心決めが改善された、多層カプセルCが得られる。
【0092】
この構成は、カプセルのゲル化中に突起が出現する可能性を最小限に抑え、この突起は、ポリマーシェルによって覆われていないか又は非常に薄くしか覆われていないカプセル化された成分の部分を示す。いかなる突起も有しないゲル化されたカプセルの製造は、カプセル化された成分が生体に移植されることが意図される場合に、いかなる免疫反応も回避する(そのような反応は移植片拒絶につながる可能性があるため)ために特に重要である。
【0093】
図19において分かるように、例えばアルギン酸塩/PLL/アルギン酸塩カプセル化のようなカプセル化ステップ及びゲル化ステップ(2つのステージ10、10’’を用いた抽出による適用)の数を増やすことによって多カプセル化も行うことができる。好ましくは、この目的で、
−Ph1:有機相+カルシウムナノ結晶、
−Ph2:水相+カルシウム、
−Ph3:水相+PLL、及び
−Ph4:水相+アルギン酸塩を有する4つの相Ph1〜Ph4、
が用いられる。
【0094】
この例では、水相Ph2〜Ph4は互いに混和性であるが、有機相Ph1のみが他の3つの相と混和性ではない。ピラー16からなる界面安定化手段は、移動ブロック14と、相1及び2が循環するマイクロチャネルの下流接合部との間に設けられ、上記相は不混和性である。
【0095】
図19aにおける変形例では、それぞれが図15におけるようなタイプである、複数の非方向転換抽出ユニット510’及び510’’を順に配置することによって多カプセル化が行われる。この図において分かるように、第1の抽出ユニット510’は、枯渇されるべき相Aによって運ばれる細胞を含有する液滴の形態の成分Eを、ピラー514によって、これらの液滴のゲル化を行う富化されるべき相Bの出口まで直線で導くように設計されており、第2の抽出ユニット510’’は、同様のピラー514によって、相Bにおいてゲル化された液滴を、新鮮なカプセル化材料を含有する第3の相Cの出口まで導くように設計されている。これらのゲル化及びカプセル化された液滴は次いで、出口において液滴の二重カプセル化を得るために第4の相D(新たなキャリア相)と接触する。
【0096】
図21の抽出ユニット810(その一部を図23に概略的に示す)は、上流接合部Ja及び下流接合部Jbが上面図でそれぞれU字形状を有し、この場合ユニット810がH字形状を有し、その拡大したクロスバーが移動チャンバーを形成し、その直立部が入口811a、812a及び出口811b、812bを形成するようなものである。斜めの列の円筒形の方向転換ブロック814(40μmに等しい直径を有する)が、枯渇用マイクロチャネル811の外側側壁に形成されている三角形の断面の内部デフレクター814aと組み合わせられ、上記壁に対して例えば30度の角度αをなす内部デフレクター814aの傾斜は、ブロック814によって同じ方向に延長される。指針として、この例に示されている寸法h、E及びgは、それぞれ800μm、80μm及び40μmである。例えば成分の界面安定化及び戻り防止用に意図されるダイヤモンド形のピラー816に関して、これらのピラー816は40μmの対角線を有する。例として挙げた値は、200μmの深さを有する装置に関して計算したものである。
【0097】
図22及び図24における変形例は、上流デフレクターを欠いており、図21及び図23のデフレクターと同様であるが、枯渇用マイクロチャネル811の幅とほとんど同じ大きさであり、横断高さがかなり大きいデフレクター814bが設けられている方向転換ブロック814の列をそれぞれ示す。
【0098】
図25の抽出ユニット910は、成分の界面安定化及び戻り防止のためのピラーの位置合わせを欠いている点のみが図21の抽出ユニットとは異なる。実際には、抽出ユニットの移動手段はこの場合、これらの成分をマイクロチャネル912へ方向転換するように枯渇用マイクロチャネル911の外側側壁から下流接合部Jbへ延びる斜めの列の円筒形ブロックから専ら構成されていることが分かる。角度α並びに距離h及びEは例えば図21におけるものと同じである。
【0099】
図26及びそれに続く図に示されているマイクロ流体システムは、基板3における200μmのマイクロチャネルの深さに好適である。図26及び図27において見られるコイル20は、枯渇相の液滴が富化相に進入することを防止するために、抽出ユニット1010(図30を参照のこと)内に、枯渇相における液体の圧力よりも高い上記富化相における液体の圧力を維持するように設けられている。したがって、これらの相の流体力学的抵抗は、相の粘度に応じて調整される。図27に示されるように、富化用マイクロチャネル1012の特徴は、ユニット1010内のその開始点A’及び到達点B’に関して規定することができる。
【0100】
図26の差込図の「ズーム1」に対応する)図28に示されるカプセル化ユニット40は「MFFD」タイプのものであり、その可視寸法は例えば、
a=200μm b=1.2mm c=800μm d=300μm
e=300μm f=650μm α=30度である。
【0101】
図26の差込図の「ズーム2」に対応する)図29に示されるように、枯渇用マイクロチャネル1011の特徴は、ユニット1010から離れたその開始点C’及びマイクロ流体システムの出口における到達点D’に関して規定することができる。
【0102】
図26の差込図の「ズーム3」に対応する)図30に示されるように、このH字形の抽出ユニット1010は図21における抽出ユニットと同様である(同じ寸法h、g、E及びα)が、デフレクター814aを省いており、移動手段として、斜めの列の円筒形ブロック1014及び安定化/戻り防止ピラー1016の位置合わせのみを有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図14a
図15
図16
図17
図18
図19
図19a
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30