特許第5871801号(P5871801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5871801フリーピストン・スターリング・サイクル機関の軸受支持機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871801
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】フリーピストン・スターリング・サイクル機関の軸受支持機構
(51)【国際特許分類】
   F02G 1/053 20060101AFI20160216BHJP
【FI】
   F02G1/053 Z
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-528837(P2012-528837)
(86)(22)【出願日】2010年9月2日
(65)【公表番号】特表2013-504712(P2013-504712A)
(43)【公表日】2013年2月7日
(86)【国際出願番号】US2010047643
(87)【国際公開番号】WO2011031616
(87)【国際公開日】20110317
【審査請求日】2013年8月30日
(31)【優先権主張番号】61/241,081
(32)【優先日】2009年9月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/872,381
(32)【優先日】2010年8月31日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512005829
【氏名又は名称】グローバル・クーリング・インク
【氏名又は名称原語表記】GlobalCooling, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・エム・バーコウィッツ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンナク・クウォン
【審査官】 佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−133299(JP,A)
【文献】 特開2007−089344(JP,A)
【文献】 米国特許第04277948(US,A)
【文献】 実開昭59−176382(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0157801(US,A1)
【文献】 特開2004−309080(JP,A)
【文献】 特表2006−522275(JP,A)
【文献】 特表平09−510534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02G 1/043、053
F01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状でフリーのパワー・ピストンとディスプレーサ・ピストンとを収容するケーシングを含み、
それぞれの上記ピストンは、所定のシール長さと軸中心とを備える間隙密封手段を有すると共に、上記ケーシングに装着されたシリンダ内で往復運動するフリーピストン・スターリング・サイクル機関の軸受支持機構であって、
(a)それぞれの上記ピストンは、このピストンの直径の0.3〜1.5倍の範囲のシール長さを有し、
(b)それぞれの上記ピストンの一端には、可撓性のない(non-compliant)コネクティング・ロッドが固定され、
(c)それぞれの上記ピストンとコネクティング・ロッドとは、上記ケーシング内に2つの軸受のみによって支持され、この2つの軸受は、
イ.それぞれの上記ピストンとこのピストンのシリンダとの間の境界であって、このピストンの間隙密封手段に形成された気体軸受、及び
ロ.上記ケーシングに固定され、それぞれの上記コネクティング・ロッドとの固定個所に延伸する半径方向に可動なばね軸受であって、
(d)上記気体軸受から、上記半径方向に可動なばね軸受の上記コネクティング・ロッドとの固定個所までの距離が、それぞれ上記ピストンのシール長さより長いことを特徴とする。
【請求項2】
上記間隙密封手段の中心から上記半径方向に可動なばね軸受の上記コネクティング・ロッドとの固定個所までの距離Lが、それぞれ次の「数3A」で表されることを特徴とする請求項1に記載のフリーピストン・スターリング・サイクル機関の軸受支持機構。
【数3A】
ここでAは、上記半径方向に可動なばね軸受の上記コネクティング・ロッドとの固定個所における、軸中心からの半径方向の許容されるずれ長さ、
Sは上記ピストンのシール長さ、及び
gは、上記ピストンとこのピストンのシリンダとの間の直径間隙である。
【請求項3】
上記半径方向に可動なばね軸受の上記コネクティング・ロッドとの固定個所における、軸中心からの半径方向の許容されるずれ長さAは、それぞれ上記直径間隙gより大きい
ことを特徴とする請求項2に記載のフリーピストン・スターリング・サイクル機関の軸受支持機構。
【請求項4】
それぞれの上記ピストンと、このピストンのシリンダとの間の直径間隙は、12〜50μmの範囲にある
ことを特徴とする請求項3に記載のフリーピストン・スターリング・サイクル機関の軸受支持機構。
【請求項5】
上記半径方向に可動なばね軸受は、それぞれ平面ばねである
ことを特徴とする請求項4に記載のフリーピストン・スターリング・サイクル機関の軸受支持機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーピストン・スターリング・サイクル機関に関し、特に、パワー・ピストン、ディスプレーサ、及びこれらにそれぞれ連結するコネクティング・ロッドを支持する、非接触型の軸受支持機構に関する。本発明は、非接触型の軸受について、軸心合わせの困難性の低減、より正確な軸心合わせ、またはこれらの双方を可能にするような、簡単かつ信頼性のある手段を提供することによって、フリーピストン・スターリング・サイクル機関の寿命、信頼性及び製造コストを改善する。
【背景技術】
【0002】
フリーピストン・スターリング・サイクル機関については、従来から極めて多様な構造が提示されているが、殆どの構造は、同一あるいは異なるシリンダ内において往復運動するディスプレーサ・ピストン、及びパワー・ピストンを備えている。パワー・ピストン、そして往々にディスプレーサ・ピストンの終端部は、通常、ピストンと共に往復運動するコネクティング・ロッドに堅固に結合される。これらの構成部品は、全体を1単位(unit)として、スターリング機関のケーシング内に支持される。ケーシングには、作動ガスが収納されており、この作動ガスは、膨張空間と圧縮空間との間を往復して、交互に膨張と圧縮とを繰り返えす。
【0003】
スターリング機関は、次のいずれかの形態に設計される。
(1)外部熱源から熱エネルギを膨張空間に供給して駆動するパワー・ピストンとディスプレーサ・ピストンとを有し、圧縮空間から熱を移動して機械的負荷を駆動する原動機として作動するエンジンの形態。
(2)原動機によって往復運動するパワー・ピストン(ときにはディスプレーサ・ピストンも)有し、膨張空間から圧縮空間に熱エネルギーを汲み上げて、冷却熱源から暖房熱源に熱を汲み上げることができるヒートポンプの形態。
ここでヒートポンプの形態は、スターリング機関を使用して、膨張空間に熱的連結した対象を極低温も含む温度に冷却し、あるいは圧縮空間に熱的連結した対象を家庭暖房用の熱交換機のように加熱する。したがって、スターリング機関という用語には、通常スターリング・エンジンとスターリング・ヒートポンップとの双方が含まれ、後者は、しばしば冷却機と呼ばれる。スターリング・エンジン及びスターリング・ヒートポンプは、双方とも、電磁モーター及び発電機のように、基本的には同じ動力変換機であって、2種類の動力形態の間において、いずれかの方向に動力を変換することができる。
【0004】
フリーピストン機関の往復運動する部品の摩擦による摩滅を最小限にするためには、往復運動する部品とシリンダや他の支持とが、ケーシング内において接触することを避けるのが望ましい。従来のような潤滑剤は、作動ガスの特性をかなり劣化させ、その結果、フリーピストン・スターリング機関の熱効率を大きく低下させるため、この目的を達成するためには使用できない。かかる理由によって、フリーピストン・スターリング・サイクル機関は、通常、気体軸受と、平面ばねのような半径方向に可動するばね軸受とを使用する。両種類の軸受共、公知の技術であるが、これらの機能のある面は、本発明と関連するため、気体軸受とばね軸受とについて、ある程度説明することが望ましい。
【0005】
軸受とは、相互に関連しつつ運動する少なくとも2の部品を支持し、案内し、そしてこれらの間の運動摩擦を低減する装置を意味する。軸受は、2つの部品を、相互に関連するものの、一方の部品が他方の部品に対して、一つ、またはそれ以上の運動方向に動けるような位置、または方向に支持する。多くの場合、部品間の摩擦力と、一方の部品が他方の部品に許容される運動方向に向かって与える力とを最小化することが望まれる。非接触軸受は、相互に関連して動く部品を、相互に接触させないように支持する。軸受は、平面ばね軸受のように、双方の部品に接触するが、相互の部品が擦れたり、滑ったりすることはない。
【0006】
気体軸受(gas bearing)は、非接触型軸受の1形態であって、しばしばフリーピストン・スターリング機関に使用され、ピストンをシリンダの内側面から分離させ、あるいはコネクティングロッドを円筒形の穴の内側面から分離させる。気体軸受は、ガス、典型的にはスターリング機関の作動ガスを使用しており、相互に関連して運動する表面の間に押し込まれて、潤滑剤として機能し、相互に関連して運動する表面を、互いに分離した状態に維持する。気体軸受構造は、気体が流れるループを有し、作動ガスが、ピストンまたはシリンダの出口孔から、ピストンとシリンダとの間の隙間に送り込まれる。効率的な空気軸受を構成するために、2つの可動表面の間の嵌め合い間隙は、狭く(close fitting clearance)しなければならず、スターリング機関の気体軸受の間隙範囲は、当業者に知られている。少なくとも3つの出口孔を、円筒形の曲面の回りに、好ましくは等間隔(120度)で設けなければならず、これにより半径方向内側に向かう中心力(centering force)を生じさせて、軸心位置から半径方向に外れようとするピストンを中心方向に向かわせる。空気軸受は、狭い嵌め合い間隙を要求されるので、もしも一つの部品の円筒面と他の部品の円筒面との間の嵌め合い間隙を、両者の間に気体軸受を設けるために、狭くする場合には、2つの円筒面の接触を避けるため、両者の軸心を一致させなければならない。
【0007】
一つの部品の円筒面と他の部品の円筒面との間の狭い嵌め合い間隙は、間隙密封手段(clearance seal)にもなる。通常、例えばピストンと、このピストンが往復運動するシリンダとのような2つの部品の間は、密封手段を設けることが望ましい。密閉手段は、ピストンとシリンダとの間において、ピストンの一方の端から他方の端に向かう流体の流れ防止または最小限にすることを意図している。しかるに同時に、磨耗を避けるために、ピストンとシリンダとが接触することを回避することが求められ、このため気体軸受が使用される。完全ではないが、ピストンとシリンダとの間の間隙は、十分小さくすることができ、これによって非接触軸受と、相応に有効な密封手段との双方を提供できる。狭い嵌め合い間隙を使用するこのような密封手段は、間隙密封手段(clearance seal)といえる。間隙密封手段の密封長さは、この間隙密封手段を形成するピストンの円筒形の曲面部分、すなわち狭い嵌め合い間隙部分の、軸方向長さに沿う有効な長さとして定義できる。極一般的には、密封長さは、ピストンの全長となる。しかるにピストンが何度も、シリンダに沿ってシリンダから突出する位置に外れるような場合は、間隙密封手段の有効な密封長さは、多少短くなり、さらに詳しくは、間隙密封手段において、ピストンとシリンダとが重なる時間平均長さとなる。間隙密封手段の軸中心とは、この間隙密封手段の軸方向に相対する両端の中間位置における、軸方向に沿う中心と定義される。この中間位置が軸中心となり、間隙密封手段の位置を定義するために使用する。
【0008】
半径方向に可動なばね軸受は、他の形式の非接触型軸受であって、これまでフリーピストン・スターリング機関に使用されてきた。半径方向に可動なばね軸受という用語は、一般的には使用されないが、本発明の実施例に使用する軸受の一つに対する最適な表現であると信じるので、採用する。半径方向に可動なばね軸受は、2つの部品を相互に連結するばねであって、このばねは、一方の部品が他の部品と接触しないで運動するように支持する。この軸受は、中心軸位置における安定した状態から外れて変移する場合に、この中心軸からの変移とは逆の半径方向にばね力を与える。この半径方向のばね力は、軸からの変移がないときにはゼロとなり、このことは、横方向の負荷が掛からないことを意味する。軸方向のばね力を加えることも可能であり、かかる場合は、軸方向と半径方向との2つのばね力の成分を有する。したがって半径方向に可動なばね軸受は、半径方向のばね力成分を有するばねであって、軸心位置においては、半径方向のばね力を与えず、軸方向のばね力もゼロまたは限定したものにすることができる。本発明の半径方向に可動なばね軸受は、軸方向に変移するときに、横方向の力を生じないようにすべきである。
【0009】
一般的に使用されている従来技術による半径方向に可動なばね軸受の1例は、平面ばねである、典型的な平面ばねは、中心のハブから外側のリブに、らせん状、あるいは渦巻き状に延伸する腕部を有している。腕部、ハブ及びリブは、外力が負荷されていないときには、通常平面状になっている。腕部の平面に沿う幅は、通常、厚さより大きくしてある。軸受として用いる平面ばねは、半径方向には非常に変形し難くいものの、軸方向にはかなり変形し易いばね力を有している。
【0010】
線条を渦巻き状に巻いた普通のコイルばねは、軸方向に向って配置する場合には、半径方向に可動なばね軸受としては使用できない。軸方向に変形するときに、かなりの横方向の力が生じるからである。しかしながら、往復運動の軸の周りに、半径方向を向く数個のコイルばねを配置すれば、半径方向に可動なばね軸受として使用することができる。らせん状または渦巻状のばねは、平面ばねや、線条を平面上でらせん状に巻いたばねと同様に使用でき、これらのばねは、線条の端部が位置する中心部分と線条の最外周辺とにおいて、他の部品に連結されている。円錐状のコイルばねは、使用可能かもしれないが、上記コイルばねのように横方向の力が生じる危険性がある。
【0011】
従来から、スターリング・サイクルエンジンや冷却機において、作動ガスの汚染を回避するために油性の潤滑剤を使用しないで、内部部品の磨耗を防止することに多大な努力が費やされてきた。フリーピストン構成は、横方向の力を大幅に減少する。なぜならば、フリーピストン構成は、クランク軸に連結されたコネクティングロッドのような、横方向の力を生み出す作動伝達機構を有していないからである。しかしながら、過度な磨耗を回避するためには、往復運動する部品を支持する軸受が依然として必要となる。従来から、近接した表面の接触を避けつつピストンを往復運動させるような、狭い嵌め合い間隙を有するフリーピストンを支持するという課題を解決するために、2つの手段が適用されてきた。
【0012】
最初の手段は、米国特許5,920,133(発明者、ペンスウイックイ等)、及び米国特許5,522,214(発明者、ベケット等)に記載され、たわみ軸受支持(flexural bearing support)と呼ばれており、可動部品を全て平面ばねによって支持して、シリンダと可動部品(パワー・ピストンまたはディスプレーサ・ピストン)とを接触させない。この軸受支持機構を、ディスプレーサ配置型(posted-displacer configuration)のフリーピストン・スターリング機関に適用したものを図1に示す。すなわちピストン2は、たわみ軸受支持4と6とによって、このピストン上の点8と10とにおいて支持され、狭い嵌め合い間隙Aが、シリンダ12との間に保たれている。ディスプレーサ14も同様に、たわみ軸受支持16と18とによって、点20と22とにおいて支持され、狭い嵌め合い間隙BとCとが保たれている。これらの全てのたわみ軸受支持は、平面ばねである。たわみ軸受支持4と6とは、支持機構にしっかりと保持され、軸方向に限定された作動があっても、本質的には、半径方向に移動しない。支持機構は、ケーシング26に固定されているため、たわみ軸受支持4と6との外周辺リムは、実質的にケーシング26に固定されている。ケーシングに固定されるとは、直接的または間接的に、ケーシングと関連する固定位置に取り付けることを意味する。なぜなら構成部品は、ケーシングに固定される内挿部品に固定することができるからである。たわみ軸受支持16と18とは、これらの外周部分がディスプレーサ14の外周の内側に、中心部分がディスプレーサ・ロッド28に、それぞれ固定される。ディスプレーサ・ロッド28は、シリンダ12に堅く連結され、シリンダ12は、ケーシング26に固定される。フリーピストン機関が、エンジンかヒートポンプであるかによって、リニアー発電機または電動機30が、電力または機械的な力を供給する。ケーシング26は、気密に密封され、作動ガスを収納する。
【0013】
図1に示す従来技術の問題点は、パワー・ピストン2が、シリンダ12と接触しないように、たわみ軸受支持4と6との軸心を、精密に一致させなければならないことである。同様に、ディスプレーサ・ピストン14が、シリンダ12と接触しないように、たわみ軸受支持16と18との軸心を、精密に一致させなければならない。さらに、たわみ軸受支持は、重力場において往復運動の軸が垂直でない状態で機関を運転する場合にピストンの重量を支持するため、および他の横方向荷重が掛かるピストンを支持するためには、十分な剛性を持たなければならない。
【0014】
軸心を一致させるという課題の困難性を、図2に示す。図2は、シリンダ42内で往復運動するピストン40を示す線図である。間隙は、原理を適正に描くために、かなり誇張してある。ピストン40は、このピストンの端面に同心状に固定されたコネクティング・ロッド44を有している。ここで「コネクティング・ロッド」とは、ピストンを他の部品に結合する、本質的に剛体連結(rigid link)を意味する。通常コネクティング・ロッドの「ロッド」は、堅固な筒状の棒を意味するが、全断面にわたって単一の堅固な材料である必要はなく、外周が円筒形であったり、断面形状が軸対称であったりする必要はない。例えば、コネクティング・ロッドが、管であったり、IやL字断面の梁であったりしてもよい。したがって、ここで使用する「ロッド」という用語は、一本の堅固な棒に限らず、他の形状の堅固な連結アームを含み、全体として機械的には一本の連結アームとして作動する複数の細いアームも含まれる。たいていコネクティング・ロッドは、スターリング機関やスターリング機関を駆動する原動機によって駆動されて、軸方向に往復運動する負荷に結合される。機関の容積は最小にすることが望まれるため、パワー・ピストンのコネクティング・ロッドには、一見するとコネクティング・ロッドが別部品ではないと見えるように、負荷要素や駆動要素が一体的に搭載される。図1は、このような場合を示しており、リニアー発電機または電動機の往復運動する磁石54と56とは、コネクティング・ロッド搭載されるが、このコネクティング・ロッドは、ピストン2と同じ直径を有しており、ピストンとは別の機能を発揮するが、視覚的には区別できない。さらに図1の「コネクティング・ロッド」は、ピストンを2つのたわみ軸受支持4と6とに結合し、両端の間にリニアー発電機乃至電動機の部品を、挿入している。これらの全ての特徴は、コネクティング・ロッドの特性に基づく。
【0015】
図2に示すように、シリンダ42内でピストン40の軸心を適性に合わせるためには、点46と48との2点における正確な位置決めが要求される。2点の内の1つ目は、ピストンの一端部(あるいは、より簡明には、狭い嵌め合い間隙の一端部)であって、ピストンの軸と、この軸と直交する面との交点である。2つ目は、ピストンの反対側の端部(あるいは、より簡明には、狭い嵌め合い間隙の反対側の端部)であって、ピストンの軸と、この軸と直交する面との交点である。図1における最も右よりの2つの黒点は、図2に示す形態において対応する2点を示している。これらの2の交点は、ピストンの外周とシリンダの内周との接触を回避するために、シリンダ42の軸心上、または軸心の極めて近くに位置しなければならない。しかるに図2に示すように、同心軸から外れるような、ピストン40及びコネクティング・ロッド44のいかなる回転も、コネクティング・ロッド44の軸51を、シリンダ42の軸から半径方向に移動させる。軸心がある角度傾くと、ピストン40の両端の外周面の一方または双方が、破線で示したように、シリンダ42に接触するようになる。
【0016】
再び図1を参照すると、ピストン2の延伸部分は、シリンダ12からリニアー電動機や発電機の往復運動する部品内に突出している。この突出部分は、コネクティング・ロッドとして機能し、スターリング機関のピストン2の動きを、リニアー電動機乃至発電機に組み合わせる。ピストンの軸心のどのようなずれによっても、コネクティング・ロッドは、中心から外れるため、図1に示す形態においては、同時に2つの追加点50及び52の軸心位置についても、シリンダ12の軸心に合わせる必要がある。これらの2つの追加点50及び52は、たわみ軸受支持4をピストン2に取り付けた点における、ピストン2の軸とこの軸に直交する面との交点50、およびたわみ軸受支持6をピストン2に取り付けた点における、ピストン2の軸とこの軸に直交する面との交点52である。本発明によって解決すべき課題は、図1の4つの黒点で示される4点について、正確に軸心を合わせることが困難であるということにある。この課題は、いずれかの1つの点を半径方向に調整すると、残りの3点のうち少なくとも2点が、半径方向に移動することにある。勿論、2つのたわみ軸受支持4と6との位置について、軸心合わせの手順によって軸心を合わせることは可能である。しかし一点を動かすと、常に他方の点に要求される軸心位置に影響を与える。したがって、軸心合わせの手順は、常に、2つのたわみ軸受支持に対して、それぞれ軸心合わせを繰り返すことが要求されるが、双方について軸心を合わせることは容易でなく、満足できる軸心あわせを達成するためには時間が掛かる。
【0017】
図3は、ベータ型スターリング機関を示しており、半径内側方向に向う矢印で示す気体軸受と、平面ばね60を軸受として備えている。ディスプレーサ・ピストン62は、シリンダ64内で往復運動し、気体軸受に必要な、狭い嵌め合い間隙66を備えている。パワー・ピストン68は、シリンダ64内で往復運動し、狭い嵌め合い間隙70において形成される気体軸受によって、シリンダ64と切り離されている。コネクティング・ロッド72は、その一端がディスプレーサ・ピストン62の一端に固定され、逆の端が平面ばねの軸受60に固定されている。コネクティング・ロッド72は、円筒形の外形を有し、ピストン68を軸方向に貫通する円筒形の内孔を通って延伸している。気体軸受が、コネクティング・ロッド72とピストン68との間の、狭い嵌め合い間隙74に形成されている。
【0018】
ディスプレーサ・ピストン62とコネクティング・ロッド72とに対して、大きな黒点で示される点75を除く5点において、軸心合わせをしなければならない。狭い嵌め合い間隙66の2個所に気体軸受があり、上述した理由によって、狭い嵌め合い間隙74の2個所に気体軸受があり、1個所に平面ばねの軸受60がある。ピストン68のために、点75を除いて軸心を一致させなければならない5点があり、そのうち2点が、狭い嵌め合い間隙74の気体軸受であり、他の2点が、狭い嵌め合い間隙70の気体軸受であって、残りの1点が、平面ばねの軸受60である。
【0019】
5点の軸心を合わせるという課題を軽減するために、従来技術では、図4に示すように、ベータ型のフリーピストン・スターリング機関用に、コネクティング・ロッドに可撓性をもって組み付けた、気体軸受を開示している。ピストン80は、ピストン80とシリンダ84の間の狭い嵌め合い間隙82における気体軸受によって支持されている。ディスプレーサ・ピストン86も、同様に、狭い嵌め合い間隙88における気体軸受によって、シリンダ84内に支持されている。コネクティング・ロッド90は、ディスプレーサ・ピストン86の一端に結合され、狭い嵌め合い間隙92における気体軸受によって、コネクティング・ロッド90の外周とピストン80を軸方向に貫通する内孔の内周とが、互いに重なる長さにわたって支持されている。過度の横方向荷重、及び組み立て誤差を解消するために、平面ばね94が、可撓性要素である可撓ロッド96を経由して、コネクティング・ロッド90に結合してある。図1及び図3の装置では、機関がエンジンかヒートポンプかによって、リニアー発電機乃至電動機が、電力乃至機械的な入力を供給する。
【0020】
図4に示すように、パワー・ピストン80は、それ自体の円筒状の外周面における気体軸受によって支持され、ディスプレーサ・ピストン86は、それ自体の外周面における気体軸受と、ピストン80内に位置するコネクティング・ロッド90とによって支持される。可撓性要素96は、コネクティング・ロッド90と平面ばね94の軸受との結合に使われる。平面ばね94は、さらなる半径方向の可撓性を与えることができ、ディスプレーサに加わる、構造的不正確さによる横方向荷重を減少させる。可撓性を生む可撓ロッド96を使用して、コネクティング・ロッド90の一端を、平面ばねの軸受に結合するという基本的な発想は、可撓性を生む可撓ロッド96を平面ばねの軸受に取り付ける個所における軸心位置の精度は、それほど重要ではないということにある。なぜなら可撓性を生む可撓ロッド96を備える機関は、過度な横方向荷重を生み出すことなく、可撓性を生む可撓ロッド96が多少曲がった状態で運転可能だからである。したがって、平面ばねの軸受に取り付ける個所においては、軸心位置をそれほど精密に調整しなくても許容される。それにもかかわらず、図4の黒点で示すように、更に4個所において軸心位置を合わせなければならない。
【0021】
上記構成における主な課題は、コネクティング・ロッドを支持する気体軸受に、十分な剛性を確保するためには、ピストンの内孔に対して、直径間隙が25μmより小さい、狭い嵌め合い間隙が要求されることにある。ある場合、特にコネクティング・ロッドの直径が、3から5mm程度の小型機関では、狭い嵌め合い間隙が、8から15μmと、さらに小さくなる。したがって正確さが要求され、構造を配置する場合を通じて、より正確な同心度、直線度および直角度が要求される。
【0022】
図1に示す機関を可撓性の構成とすることは極めて制限され、実現するためには、かなりのスペースが必要となり、したがって構成が大きくなる。平面ばね4、6、18及び20からなる軸受は、機関を重力場において横置(つまり作動軸が垂直ではない)で運転した場合のピストンの重量を、あるいは他の横荷重を支持するためには、十分な剛性を持たなければならない。さらに平面ばねは、可動部品とシリンダとの間の間隙を維持する役割を有しており、構成部品と組立構造とに、並外れたレベルの精度が要求される。図4に示す従来の気体軸受は、精度が緩和されるが、フリーピストン・スターリング機関における小さな直径のディスプレーサ・ロッドによって、緩やかに支持されることの影響をこうむる。このように、かかる技術に要求されることは、可動部品に取り付けられる他の部品(例えば機械的ばね)が、気体軸受の負荷能力を超えないような可撓性要素を採用することにある(米国特許5,525,845 発明者ビール等参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
以上の説明は、従来技術による軸受機構においては、部品の製造において高い精度が要求され、部品の軸心合わせに高い精度が要求されるか、あるいは気体軸受を、細い直径の上に緩やかに支持することに制限されることを示している。本発明の目的は、非接触型の軸受の他の好ましい特性を保持しながら、軸心合わせに要求される精度を緩和することにある。
【0024】
ピストンとシリンダとの組立構造おいて理想的な軸受機構は、特にフリーピストン機関に使用する場合は、非接触型の軸受に加えて、次の特性を有することが望まれる。
a.機関から満足すべき性能を引き出す以上の精度が要求されないこと。すなわち軸受機構は、高精度部品を追加する要求を最小限にするものであること。
b.製造過程において、何度も軸受機構の調整を繰り返す必要がないこと。
c.軸受機構は、堅固であって、軸受が調整位置から外れる可能性がないこと。
d.軸受機構は、偏心することなく、外部からの妥当なレベルの衝撃や、部品の過剰な動きに耐え得ること。
【0025】
ここで提案する発明は、従来の機構より優れた上記特性を有している。
【課題を解決するための手段】
【0026】
最も簡潔に説明すると、本発明は、ピストンとコネクティング・ロッドとの軸受支持機構であって、この軸受支持機構は、ピストンとコネクティング・ロッドとの組合せを、単に2つの軸受によって支持するものであり、ピストン(あるいはディスプレーサ)を1つの気体軸受によって、コネクティング・ロッドを1つの半径方向に可動なばね軸受によって、両者の間隔が所定の範囲内であって、かつ選ばれた技術的パラメターに基づく計算値を超える間隔で支持するものである。
【0027】
さらに詳細に説明すると、可撓性のない(non-compliant)コネクティング・ロッドが、ピストンの直径の0.3倍から1.5倍の長さの間隙密封手段を有するピストンの一端に
結合される。ピストンとコネクティング・ロッドとは共に、2つの軸受によってケーシング内で支持される。2つの軸受のうち1つ目は、気体軸受であって、選ばれたピストンとこのピストンに関連するシリンダとの間の境界面に形成される。2つ目の軸受は、ケーシングに固定され、かつコネクティング・ロッドとの固定個所まで延伸する、半径方向に可動なばね軸受である。気体軸受から、半径方向に可動なばね軸受とコネクティング・ロッドとの固定個所までの距離は、ピストンの間隙密封手段の長さより長い。ピストンとコネクティング・ロッドとの集合体は、他の軸受を追加して支持しない。他の軸受を追加すると、軸心合わせの問題がさらに加わる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】従来技術によるスターリング機関の軸心を含む断面図である。このスターリング機関は、2つの可撓軸受で支持されたピストンとコネクティング・ロッドとを有し、このピストンは狭い嵌め合い間隙を有する。
【0029】
図2】ピストンとコネクティング・ロッドとの軸心のズレを示す概略図である。なお発明の原理を示すために、直径間隙を誇張して描いている。
【0030】
図3】従来技術によるスターリング機関の軸心を含む断面図である。このスターリング機関は、2つの気体軸受と1つの平面ばねによって支持されたピストンとコネクティング・ロッドとを有する。
【0031】
図4】従来技術によるスターリング機関の軸心を含む断面図である。このスターリング機関は、2つの気体軸受と1つの平面ばねによって支持されたピストンとコネクティング・ロッドとを有し、コネクティング・ロッドを平面ばねに結合する可撓ロッドを有する。
【0032】
図5】本発明によるスターリング機関の軸心を含む断面図である。
【0033】
図6図5に示すスターリング機関のピストン、コネクティング・ロッド及び平面ばねの斜視図である。
【0034】
図7】本発明による他のスターリング機関の軸心を含む断面図である。
【0035】
図8】本発明の1つの実施の形態の設計に際して、計算に使用するパラメターを示す概略図である。例えば気体軸受から半径方向に可動なばね軸受までの距離(L)が該当するが、本発明の原理を示すために、直径間隙を誇張して示す。
【0036】
図面に示す発明の好ましい実施の形態の説明にあたって、説明を明確にするために、特定の用語を使用する。しかし選択した特定の用語に本発明を限定することを意図するものではなく、この特定の用語には、同等の目的を達成するために同等に作動する全ての技術的に等価なものも含くまれると理解すべきである。例えば、結合、固定、あるいは他の用語は、同等のものとして使用する。これらの用語は、直接結合する場合に限らず、他の要素を介して結合するものであって、当業者が同等と認識するものも含む。
【発明の詳細な説明】
【0037】
図5は、本発明による改良された軸受支持機構を有する、フリーピストン・スターリング・サイクル機関を示している。この機関は、円筒形であって、フリーのパワー・ピストン102、ディスプレーサ・ピストン104、及び他の可動部品を収納し、かつ作動ガスを保持するために気密状態に密封したケーシング100を含んでいる。各々のピストンは、ケーシング100に保持されたシリンダ106内で往復運動し、所定のシール長さと中心軸とを有する間隙密封手段を有している。ピストン102は、狭い嵌め合い間隙Gにおける気体軸受によって支持され、シリンダ106と、非接触、かつ狭い嵌め合いを保持すると共に、間隙密封手段を形成している。気体軸受は、ディスプレーサ・ピストン104の周囲の狭い嵌め合い間隙H(典型的には、直径で25μmの間隙)に形成され、シリンダ106と、非接触、かつ狭い嵌め合いを保持すると共に、間隙密封手段を形成している。かかる場合、コネクティング・ロッド108とピストン102との間の直径間隙Eは、もっと緩め、例えば50〜100μmとすることができる。この直径間隙Eは、間隙であって、気体軸受を意図するものではないからである。
【0038】
パワー・ピストン102は、このピストンの直径の0.3倍から1.5倍の長さのシールを有している。中空の、可撓性のないコネクティング・ロッド110が、パワー・ピストン102の一端に固定されている。「可撓性のないコネクティング・ロッド」という用語の意味は、次のように説明できる。すなわち「可撓性」という用語は、コネクティング・ロッドのような物体の特性を示しており、横方向荷重をうけた場合に、その弾性限度を超えないで、過度の横方向荷重を生じないで、かつ期待寿命の間で疲労破損しないで撓んだり、曲がったりすることを意味する。上述したように、図4に示す機関は可撓性を有するコネクティング・ロッド96を有しており、この可撓性を有するコネクティング・ロッドは、変形または曲がった形状においても運転可能である。したがってこの可撓性によって、ピストンにコネクティング・ロッドによって連結される他の部品の往復運動軸と共に、シンリンダ内で往復運動するピストンの往復運動軸に対する不完全な軸心合わせを相殺することが可能となる。しかしながら、この可撓性は、同時に上述したような問題を生み出す。勿論、現実世界では、全ての材料が、特に、一般的に機関を構成するために使用する金属は、なんらかの可撓性を有している。したがって、「可撓性のない」とは、コネクティング・ロッドの可撓性が小さくて僅かである(すなわちコネクティング・ロッドの剛性が十分である)ため、コネクティング・ロッドのあまり重要でない可撓性特性を使用または採用することに、機関の運転が依存しないことを意味する。
【0039】
リニアー発電機乃至電動機112が、ケーシング100に支持されている。リニアー発電機乃至電動機112の往復運動する磁石114が、半径方向に延伸する磁石支持部材116によって、コネクティング・ロッド110に取り付けてある。リニアー発電機乃至電動機112は、スターリングエンジンとして作動するスターリング機関によって駆動されるときは、電気を生み出し、スターリング機関が冷却機またはヒートポンプとして作動するときには、機械的に往復運動を生じさせる原動機として作動する。
【0040】
ピストン102及びコネクティング・ロッド110は、共に堅固に結合された1つの集合単位として、ケーシング100内に、2つの、すなわちたった2つの軸受のみによって支持されている。ピストン102は、円筒形の狭い嵌め合い間隙Gにおける1番目の気体軸受によって支持され、シリンダ106と非接触で、狭い嵌め合いを保持すると共に、間隙密封手段を形成している。2番目の軸受は、半径方向に可動なばね軸受118であって、ケーシング100に固定されると共に、延伸してコネクティング・ロッド110と結合している。半径方向に可動なばね軸受118は、機関の軸122を、第2の支持個所120において拘束する。気体軸受Gから、半径方向に可動なばね軸受118がコネクティング・ロッドに連結する個所までの軸の長さLは、ピストン102のシール長さSより長くしてある。半径方向に可動なばね軸受118は、同時に、長さ方向、すなわち軸方向に作用するばね力を発揮し、往復運動に必要な共振と、長さ方向の中心位置に復帰させる力とを生み出す。
【0041】
距離Lを、ピストン102における気体軸受支持個所(矢視124)と、半径方向に可動なばね軸受118の支持個所(矢視126)との間に設定して、ピストンのシール長さSより長くすれば、ピストン102が、コネクティング・ロッドと共に回転する(図示する軸を含む面における)角度を、半径方向に可動なばね軸受118の支持によって、小さくすることが可能となる。同様に、ディスプレーサ・ピストン104は、気体軸受によって最初の指示個所(矢視128)に支持される。ディスプレーサ・コネクティング・ロッド108は、半径方向に可動なばね軸受130によって第2の支持個所(矢視132)に支持され、機関の軸122の第2の支持個所を拘束する。ディスプレーサの気体軸受支持個所(気体軸受の中心)と、半径方向に可動なばね軸受130との間に距離を設けることによって、2つの軸受による2つの支持個所の間の軸方向長さは、ディスプレーサのシール長さより長くなって、ディスプレーサが回転する(図示する軸を含む面において)角度を小さくすることができ、したがって、半径方向に可動なばね軸受130に要求される取り付け精度を緩和することができる。ディスプレーサ・ロッドの間隙Eは、作動ガスの漏れが過大にならない範囲で、十分大きくすることが可能であり、ディスプレーサ・ロッド108とピストン102との接触は生じない。ディスプレーサ・ロッドの間隙Eの代替手段は、部品の表面をあえて磨耗させ、磨耗が停止した時点で非接触となる、磨耗性の表面を採用することである。
【0042】
図6は、ピストン102、中空のコネクティング・ロッド110、および平面ばねからなる半径方向に可動なばね軸受118を示しており、全て図5に示す本発明による実施の形態に使用されているものである。
通気孔134が、ピストン102の円筒形の外周壁を貫通して形成してあり、ピストン102を取り巻く気体軸受に作動ガスを導入して、ピストンをシリンダ内(図6では図示せず。)に、非接触にて支持する。半径方向に可動なばね軸受118との結合個所と、ピストン102の周囲の気体軸受との間の距離Lは、ピストン102の長さ、すなわちピストン102のシール長さよりはるかに長い。距離Lを長くするほど、コネクティング・ロッド110の軸が、半径方向に可動なばね軸受118の取り付け位置における、シリンダの軸位置から半径方向への偏心距離によって、ピストンの軸位置が変動する影響は少なくなる。
【0043】
図7は、ガンマ型の対向ピストン形式のフリーピストン・スターリング機関であって、本発明による軸受機構の他の形態を示している。パワー・ピストン140と142とは、それぞれの間隙144と146とにおける気体軸受によって支持され、シリンダ148と15とに、非接触にて、狭い嵌め合い間隙を保持している。コネクティング・ロッド152と154とは、半径方向に可動なばね軸受156と158とによって、第2の支持個所に拘束されている。ディスプレーサ・ピストン160は、コネクティング・ロッド162を有し、このコネクティング・ロッドは、パワー・ピストン140と142とのいずれも貫通していないため、本発明の成果として、精度を緩和できることが、さらに一層明確になる。図7に示す実施の形態では、双方のパワー・ピストン140と142、及びディスプレーサ・ピストン160は、本発明による手段によって支持されている。
【0044】
ピストンとコネクティング・ロッドとの組合せを支持する、2つの支持個所の間の距離を、ピストンのシール長さより長くすることによって、ピストンが回転する角度を抑制できるため、各々の半径方向に可動なばね軸受に要求される半径方向の取り付け位置の精度を、大幅に緩和することができる。同様に、ディスプレーサ160は、個所164において気体軸受によって支持されて、シリンダ組立て166に非接触にて、狭い嵌め合い間隙を保持すると共に、ディスプレーサ・コネクティング・ロッド162に結合された半径方向に可動なばね軸受168によって、ディスプレーサ・シリンダ166の軸に対する第2の支持個所を拘束する。ディスプレーサ・コネクティング・ロッド162の直径が大きい部分と、これを取り巻くシリンダ172との間の間隙Kを、両者が接触しないように、漏れ損失が過度にならない範囲で十分大きくする。ディスプレーサ・ロッドの間隙密封手段Kの代替手段は、部品の表面をあえて磨耗させ、磨耗が停止した時点で非接触となる、磨耗性の表面を採用することである。リニアー発電機乃至電動機174と、これに対向する部品176とは、スターリング機関がエンジンかヒートポンプかによって、電気的出力または機械的入力を生み出す。
【0045】
本発明のこれら全ての実施の形態において、気体軸受は、ピストンとそのシリンダとの間の嵌め合い間隙に設けられて、1つ目の支持個所となり、半径方向に可動なばね軸受は、気体軸受から、ピストンのコネクティング・ロッドに沿って、距離Lだけ離れた位置に設けられる。本発明は、2つの軸受、すなわち1つ目は気体軸受であって、2つ目は半径方向に可動なばね軸受を目指しているが、軸受を複数の部品からなる複合体として構成し、単一の軸受として効果的に機能させることもできる。例えば、半径方向に可動なばね軸受を、複数の、平行な、別個のばね軸受を、互いに軸方向に近接して配置して、単一の複合軸受として機能する複合体として構成することも可能であり、しばしば行われている。例えば図7は、3枚の、近接した、平行な平面ばねから形成された、半径方向に可動なばね軸受168を示している。このような複合軸受は、半径方向に調整が必要とされる一個の中心、あるいは効果的な接合点があれば、一個の軸受と考えることができる。しかしながら、2個かそれ以上の半径方向に可動なばね軸受が、複合体であるか否かにかかわらず、十分離れて配置されて、別個に取り付けられると共に、別個の軸心合わせが必要なときには、これらは、2つの独立した軸受、あるいは別個の半径方向に可動なばね軸受となる。半径方向に可動なばね軸受は、往復運動軸に沿う1点で軸心合わせを行う場合には、別個のばね要素の数に関係なく、1個の軸受である。同様に、ピストンとシリンダとの間の境界は、2個かそれ以上が軸方向に配列され、この配列がピストンの円筒面に所定の円周方向間隔をもって複数配置された気体軸受用の通気孔によって、非接触に保持される。しかるに、1個のピストンとシリンダとの間に狭い嵌め合い間隙があるときには、気体軸受に気体を充填する気体軸受用の通気孔の数や配置に関わらず、1個の気体軸受である。
【0046】
図8は、本発明の幾何学的な変数を示す目的で、パワー・ピストン(またはディスプレーサ・ピストン)180と、付随するコネクティング・ロッド182とを概念的に示す。パワー・ピストン180と、コネクティング・ロッド182との軸がシリンダの軸に一致する場合を、実線で示し、図面の面上で回転した場合を、破線で示す。軸受間の距離に比べて短いシールは、非接触の状態を維持できる回転角が大きくなる。よって、間隙密封手段の精密な支持に対する要求が大きく緩和されるので、より緩やかな精度の半径方向に可動なばね軸受を使用できる。
【0047】
本発明の幾何学的変数は、本発明による好適な実施の形態における、望ましい変数関係を表す、次の数学的説明に使用される。
【0048】
直径D及びシール長さLに比べて小さい半径間隙gにおいて、シリンダ180に接触するまでの最大回転角α(アルファ)は、次の高精度の近似式「数1」で表せる。
【数1】
【0049】
図1において、軸中心からの許容できる半径方向のずれ長さは、Aである。点181は、回転したピストン180の軸上にあって、半径方向に可動なばね軸受がコネクティング・ロッド182に取り付けられる点において、シリンダ184の軸185に直交する面との交点である。この半径方向に可動なばね軸受への取り付け点181が、シリンダの軸心185から半径方向に偏心すれば、ピストンが、気体軸受の相対する両端において、シリンダと接触することになる。このときのずれ長さAは、次の近似式「数2」で表される。
【数2】
ここで、Lは、軸受支持間の距離である。
【0050】
例えば、ピストンの直径間隙(g)が35μm、シール長さ(S)が20mm、ピストンの直径(D)が50mm、及び軸受支持間の距離(L)が150mmであれば、近似式「数2」より、A=0.263mmとなり、間隙gの7倍にもなる。したがって、半径方向に可動なばね軸受の支持位置は、間隙gより7倍の余裕をもって調整できる。
【0051】
漏れ損失が小さいため、気体軸受と間隙密封手段の双方について許容できる性能を発揮するシールにおいては、4Dg/Sの値は小さいので、変移Aについては、次の近似式「数3」が適用できる。
【数3】
【0052】
したがって、軸受支持の間の望ましい距離は、次の式「数3A」となる。
【数3A】
【0053】
上述した事例と近似式「数3」とから得たA=0.2625mmは、更に的確な値に、かなり近づいている。仮Aを、一般的な直径間隙よりはかなり大きい、ある合理的な最小値、例えば0.1mmに設定すれば、近似式「数3」は、本発明による実施の形態における軸受支持の間の距離に対する要求値を計算することができる。この要求値は、次の計算式「数4」で表される。
【数4】
【0054】
Lがmmの単位のときは、シール長Sと、ピストンの直径Dとは、同等なサイズとなる。本発明において、同等なサイズとは、シール長さが、直径の1.5倍を超えず、かつ0.3倍より小さくないことを意味する。本発明の実施の態様では、通常、直径間隙gは、12〜50μmの範囲となる。
【0055】
パワー・ピストン乃至ディスプレーサ・ピストンの軸受支持を、本発明によって配置することにより、半径方向に可動なばね軸受への取り付けに要求される精度は、大きく緩和される。さらにディスプレーサ・ピストン乃至パワー・ピストンとシリンダとの境界に、単一の気体軸受を配置することにより、この気体軸受への高精度な間隙要求と、機関の性能との双方を満足させ得る。本発明は、ディスプレーサ・ピストン乃至パワー・ピストンを、より短くすることができる。なぜなら、作動流体の漏れは、間隙(の厚さ)の影響を受け(間隙の3乗に比例)、長さの影響は、あまり受けない(長さに反比例)からである。軸受支持間の距離に対して、ディスプレーサ・ピストン乃至パワー・ピストンのシール長さを短縮することにより、更に角度のずれに対する要求が緩和される。したがって半径方向に可動なばね軸受による、2つ目の支持精度を、更に大きく緩和することができる。
【0056】
本発明において、ピストンとシリンダとの組合せは、狭い嵌め合いにおける気体軸受と、この狭い嵌め合いからある程度距離を置いた他端に位置する半径方向に可動なばね軸受とによって支持され、これにより大きな利点が得られる。すなわち、気体軸受は、本質的要件である非接触な間隙を与え、半径方向に可動なばね軸受は、非接触を保ちつつ、支持位置の精度をさらに緩和する。さらに半径方向に可動なばね軸受が、狭い嵌め合い個所から離れるほど、支持位置の精度は、より緩和される。半径方向に可動なばね軸受の製作精度を十分緩和できれば、例えば打抜き作業のような、安価な製造技術を採用することが可能となる。このような技術を、図5に示すようなベータ型のフリーピストン・スターリング機関に使用することにより、ピストンに対するディスプレーサ・ロッドの嵌め合い間隙を、この部分では気体軸受は不要であるため、さらに緩めにすることができる。
【0057】
本発明は、4ヶ所に対する精密な軸心合わせの必要性を、3個所に対する軸心合わせに減ずることによって、なくすることができると共に、要求される精度を緩和することができる。上述したように、シリンダに対するピストンの軸心合わせは、2つの点における軸心合わせが必要となる。1つ目の点は、ピストンの中心軸と、ピストンの1端面との交点であり、2つ目の点は、ピストンの中心軸と、ピストンの反対側の端面との交点である。ピストンがシリンダ内において軸心調整され、往復運動中に両点共にシリンダの軸に平行な直線上に位置すれば、ピストンは、シリンダと適正に軸心が合っている。
【0058】
ピストンに加えて、ピストンに堅固に結合されて、シリンダの内面内で往復運動するコネクティング・ロッドのような、シリンダ状の部品が存在する場合は、最初の2点に加えて、さらに軸心合わせが必要となる2点が生じる。もし、気体軸受と間隙密封手段を、これらの2点に使用すれば、これらの追加された2点についても、最初の2点と同様に、精密な軸心合わせが必要となる。同様に、ピストンに加えて、さらに2つの半径方向に可動なばね軸受が存在する場合は、これらの追加した2つの半径方向に可動なばね軸受の双方の点において、半径方向の調整が必要になる。言い換えれば、1つのピストンに2つの軸受が追加されると、軸心合わせが必要な個所が4点になる。
【0059】
軸心合わせを行う2つの追加軸受個所があるときには、追加軸受の一個所における軸心合わせは、もう一つの追加個所において軸心を合わせた位置を変化させる。4点の全てについて、同時に軸心合わせを行うことは、困難あるいは不可能である。さらに加えて、軸心合わせを行う際(すなわち計画した軸心位置乃至方向から出発するとき)に生じる組立て誤差は、4点の全てについて適正に軸心合わせを行うことを不可能にしている。なぜなら、1つの追加点における軸心位置のずれを調整すれば、他の追加点における軸心位置を変化さてしまうからである。従来技術の多くが、この問題を抱えていた。
【0060】
しかるに、本発明によれば、全部で3点のうち、追加する1点においてのみ、軸心合わせを行えばよい。すなわち軸心位置の調整が要求されるのは、一個所のみである。第3の軸心合わせの個所は、1つの半径方向に可動なばね軸受のコネクティング・ロッドへの結合個所である。この軸心位置の調整は、ばねの半径方向の力がピストンの軸に作用する点の、シリンダの軸が直交する面内における位置決めである。
【0061】
本発明によれば、気体軸受から半径方向に可動なばね軸受までの距離を十分長くすることによって、従来技術に比べて大幅な軸心位置からのずれを、許容することができる。換言すれば、軸心位置のずれに対する許容度が大きくなって、適正な軸心合わせを、より容易で、かつより低精度にて行うことができる。したがって、より低精度で製造された部品によって、適正な軸心合わせが可能になるため、より安価な部品を使用できる。半径方向に可動なばね軸受、及びこのばね軸受に結合される部品に対して、精度に対する許容度を増す(精度を低下)ことができる。重要なことは、ピストン乃至ディスプレーサを、シリンダ内において非接触の軸受によって往復運動させるために、軸心調整が必要となる唯1個の部品、すなわち半径方向に可動なばね軸受だけが、存在するということである。
【0062】
本発明を実施するために、設計者は、通常、気体軸受のシール間隙に要求される間隙g及びシール長さSの決定から始めることができる。これらは、出力や熱効率のような通常の設計変数に基づいて決める。そして設計者は、ピストンまたはディスプレーサのサイズと間隙とを決定した上で、半径方向に可動なばね軸受の半径方向の調整位置について、望ましい許容値(Aまたはそれより小さい)を決定する。最後に、設計者は、気体軸受から半径方向に可動なばね軸受までの距離を、近似式「数3A」を用いて決定する。勿論、設計者は、設計数式において異なる変数の組合せを選択して、他の計算値を求めてもよい。
【0063】
組立ての完了後に、まず部品の位置調整を行なって、次に運転中に非接触となる位置に部品を固定する。本発明によれば、軸受に対する唯一つの調整は、それぞれのピストンとコネクティング・ロッドとに対して、1つの半径方向に可動なばね軸受の半径方向位置を調整することである。このように調整して、軸心からのずれ量を、許容される軸心からのずれ量Aより小さく、または同等にする。これによって、シリンダの軸と、ピストン−コネクティング・ロッドの組合せ軸とがなす角度を、ピストンがシリンダの壁に接触しない最大角度αより小さくすることが保証される。
【0064】
図面と関連する詳細な説明は、主に本発明の現時点における望ましい実施形態についての説明として意図されており、本発明を構成したり、あるいは利用したりすることができる唯一の構成を表すことを意図するものではない。この説明は、図示の実施形態と関連して、本発明を実施する構成、機能、手段および方法を記述している。しかしながら、本発明の思想および範囲内に包含するように意図された異なる実施形態によって、同一または同等な機能および特徴を達成でき、また本発明あるいは次の請求の範囲から逸脱することなく、様々な変更を採用することができると理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8