(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロック手段は、前記挿通部材と係合することで前記挿通部材の付勢方向への移動をロックし、前記挿通部材の先端部が前記ルーメンに後退する動作に基づいて前記挿通部材から離間することで、前記ロックを解除するフック部を有する
請求項1に記載のベレスニードル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、穿刺箇所からの針先の抜け防止が困難である問題を有している。例えば、深く穿刺することで針先が抜けないようにする場合、針先がガードされていても臓器損傷の虞があり、術者は、このような状況が起きないように穿刺に非常に気を使うため、作業性が極めて悪い。
【0005】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、穿刺箇所からの針先の抜けを容易に防止し得るベレスニードルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は、針先を備えた先端部およびルーメンを有する中空状の穿刺針と、前記ルーメンに摺動自在に挿入される挿通部材と、付勢手段と、抜け防止手段と、
手元操作部と、を有するベレスニードルである。そして、前記付勢手段は、前記針先による穿刺の前および穿刺完了後において前記挿通部材の先端部が前記針先から突出し、かつ、前記針先が穿刺する際において当該穿刺による負荷によって前記挿通部材の先端部が前記ルーメンに後退するように、前記挿通部材を付勢するように構成されており、前記抜け防止手段は、前記穿刺による負荷がなくなった後において、前記挿通部材の先端部が前記ルーメンから突出する動作に連動し、前記針先が穿刺箇所から抜けることを防止し、
前記手元操作部は、前記穿刺針の基端部側に位置し、前記付勢手段が配置され、前記挿通部材の移動をロックするロック手段を有する。
また、前記ロック手段は、前記挿通部材の付勢方向への移動をロックすることで、前記針先による穿刺の前における前記挿通部材の先端部の初期位置を規定し、かつ、前記挿通部材の先端部が前記ルーメンに後退することにより、前記ロックが解除され、前記付勢手段の付勢力が解放されるように構成されており、前記抜け防止手段は、前記穿刺による負荷がなくなった後において、解放された前記付勢力によって前記挿通部材の先端部が前記初期位置を越えて突出する動作に基づいて、前記針先が穿刺箇所から抜けることを防止する。
【発明の効果】
【0007】
穿刺による負荷がなくなった穿刺完了後において、針先(穿刺針)が穿刺箇所から抜けることを防止する抜け防止手段を有するため、例えば、深く穿刺することで、針先が抜けないようにすることが不要である。また、針先の抜け防止は、挿通部材の先端部が穿刺針のルーメンから突出する動作に連動しているため、作業性が良好である。
また、挿通部材の付勢方向への移動をロックすることで、針先による穿刺の前における挿通部材の先端部の初期位置を規定し、かつ、挿通部材の先端部が穿刺針のルーメンに後退することにより、ロックが解除され、付勢手段の付勢力が解放されるように構成されているロック手段を、穿刺針の基端部側に位置しかつ付勢手段が配置される手元操作部に設けているため、抜け防止手段は、穿刺による負荷がなくなった後において、解放された付勢力によって挿通部材の先端部が初期位置を越えて突出する動作に基づいて、針先が穿刺箇所から抜けることを防止することが可能である。つまり、挿通部材の先端部が穿刺針のルーメンから突出する動作と、針先が穿刺箇所から抜けることを防止する動作とを連動させる機構を、簡単な構造を有するロック手段によって構成することができる。したがって、穿刺箇所からの針先の抜けを容易に防止し得るベレスニードルを提供することが可能である。
【0009】
ロック手段は、挿通部材と係合することで挿通部材の付勢方向への移動をロックし、挿通部材の先端部がルーメンに後退する動作に基づいて挿通部材から離間することで、ロックを解除するフック部を有することも可能である。この場合、挿通部材の移動をロック自在とする機構を、簡単な構成で達成することができる。
【0010】
ロック手段は、前記フック部に加えて、挿通部材の基端部におけるフック部より基端部側に配置されかつ挿通部材の軸方向と交差する方向に突出した拡張部より、基端部側に配置され、挿通部材の先端部がルーメンに後退する動作に基づいて移動する拡張部の基端部側の面が当接することにより駆動され、挿通部材の基端部に沿って移動するスライド部と、手元操作部の外周を延長し、手元操作部に形成される開口部を介してスライド部とフック部とを連結するアーム部とを、さらに有することも可能である。この場合、フック部は、前記拡張部の先端部側の面と当接することによって前記挿通部材と係合し、スライド部の前記移動に同伴されて移動することにより、挿通部材から離間して係合を解除することになる。したがって、挿通部材の先端部がルーメンに後退する動作に基づいてロックを解除する機構を、簡単な構成で達成することができる。
【0011】
屈曲形状を有し、弾性変形した状態で前記ルーメンに挿入され、穿刺完了後において前記ルーメンから突出することにより、弾性変形前の屈曲形状に復元し、穿刺箇所の内面に引っかかるように設定される挿通部材の先端部によって、抜け防止手段を構成する場合、抜け防止手段を簡単な構造とすることが可能である。
【0012】
前記挿通部材が、中空状であり、第2の挿通部材が挿通されるルーメンを有し、挿通部材の先端部が、ルーメンに連通する側方開口部を有しており、前記第2の挿通部材の先端部を、屈曲形状を有しており、弾性変形した状態で前記挿通部材のルーメンに挿入されており、穿刺による負荷がなくなった後において、前記穿刺針のルーメンから突出した前記挿通部材の側方開口部から、拡張することにより、弾性変形前の屈曲形状に復元し、穿刺箇所の内面に引っかかるように設定し、これにより、抜け防止手段を構成する場合も、抜け防止手段を簡単な構造とすることが可能である。
【0013】
挿通部材を手元操作部に着脱自在に取り付ける場合、使用時の自由度が向上させることが可能である。
【0014】
穿刺針が摺動自在に挿入される中空状の外套筒を、手元操作部に着脱自在に取り付ける場合、穿刺完了後において、手元操作部から取外す(手元操作部との連結を解除する)ことにより、外套筒を穿刺箇所に留置することが可能である。つまり、外套筒によって留置針の外針を構成し、穿刺針によって留置針の内針を構成することができる。
【0015】
手元操作部に、穿刺の完了を視覚的に確認するための確認手段を配置することも可能である。この場合、作業性を向上させることが可能である。
【0016】
確認手段を、初期位置において手元操作部の基端部から外部に突出し、穿刺の完了時において手元操作部の内部に収容されるように設定されている挿通部材の基端部の端面部位によって、構成することが可能である。この場合、確認手段を、簡単な構造とすることが可能である。
【0017】
挿通部材を、穿刺針および手元操作部から分離自在に設定されたガイドワイヤによって構成することが可能である。この場合、ガイドワイヤを穿刺箇所に確実に留置することが可能である。
【0018】
挿通部材の基端部における拡張部を、着脱自在の別体から構成することが可能である。この場合、挿通部材の基端部から拡張部を取外すことにより、拡張部による干渉がなくなるため、挿通部材を穿刺針および手元操作部から容易に分離することが可能である。
【0019】
本発明のさらに他の目的、特徴および特質は、以後の説明および添付図面に例示される好ましい実施の形態を参照することによって、明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は、実施の形態1に係るベレスニードルを説明するための側面図、
図2は、
図1に示される外套筒を説明するための側面図、
図3は、
図1に示される穿刺針を説明するための側面図、
図4および
図5は、
図1に示される先端部を説明するための平面図および断面図、
図6および
図7は、
図1に示される手元操作部を説明するための平面図および断面図、
図8は、
図6に示されるロック手段を説明するための斜視図である。
【0023】
実施の形態1に係るベレスニードル100は、
図1に示されるように、穿刺針110、外套筒120、挿通部材130、抜け防止手段105および手元操作部140を有し、生体内の壁部190を穿刺するために使用される。壁部190は、経膣的アプローチによる腹腔鏡(THL:Transvaginal hydrolaparoscopy)に適用される場合、膣壁である。壁部190は、膣壁に限定されず、腹壁に適用することも可能である。
【0024】
穿刺針110は、中空状のチューブからなり、鋭利な針先112が形成された先端部114と、針ハブ170が連結される基端部116と、を有する(
図3参照)。針ハブ170は、中空状であり、穿刺針110の基端部116を、手元操作部140に連結するために使用される。
【0025】
外套筒120(
図2参照)は、穿刺針110が挿通されるルーメン128(
図5および
図7参照)と、手元操作部140に連結するための外套ハブ122が配置された基端部と、を有する。外套ハブ122は、針ハブ170の外側に位置し、手元操作部140に着脱自在に取り付けられている(連結されている)。外套筒120は、穿刺完了において、手元操作部140に対する連結が解除され、穿刺箇所に留置される。つまり、外套筒120は、留置針の外針を構成し、穿刺針110は、留置針の内針を構成する。
【0026】
挿通部材130は、穿刺針110のルーメン118に摺動自在(軸方向Sに移動可能)に挿入され、穿刺針110の先端部114から突出する先端部134と、手元操作部140の内部を延長する基端部136と、を有する。先端部134は、壁部190の穿刺箇所の内側に位置する臓器の損傷を避けるため、針先112をガードするように構成されている(
図4および
図5参照)。基端部136は、挿通部材130の軸方向Sと交差する方向に突出した拡張部172を有し、拡張部172は、基端部136と一体化されている(
図7参照)。
【0027】
抜け防止手段105は、穿刺による負荷がなくなった後において、挿通部材130の先端部134が穿刺針110のルーメン118から突出する動作に連動し、針先112が穿刺箇所から抜けることを防止するために使用される。
【0028】
手元操作部140は、穿刺針110の基端部側に位置しかつ針ハブ170と一体化された先端部144と、基端部に位置するキャップ部146と、開口部149が配置された外周部と、を有し、付勢手段150およびロック手段160が配置されている(
図6および
図7参照)。
【0029】
キャップ部146は、挿通部材130の基端部136が貫通しており、外部に突出している基端部136の端面部位137は、穿刺の完了時において、手元操作部140の内部に収容されるように、設定されており、端面部位137の位置の変化に基づいて、穿刺の完了を確認することが可能である。つまり、挿通部材130の基端部136の長さは、穿刺の完了を視覚的に確認することが可能となるように設定されており、キャップ部146から外部に突出している端面部位137は、穿刺の完了を視覚的に確認するための確認手段を構成している。したがって、作業性を向上させることができ、かつ、確認手段を簡単な構造とすることが可能である。
【0030】
付勢手段150は、挿通部材130における基端部136の拡張部172を先端側に付勢する弾性体(バネ)からなり、拡張部172とキャップ部146との間に配置される。付勢手段150は、針先112による穿刺の前(穿刺による負荷がない状態)および穿刺による負荷がなくなった後において、挿通部材130の先端部134が針先112から突出し、かつ、針先112が穿刺する際において、当該穿刺による負荷によって挿通部材130の先端部134が穿刺針110のルーメン118に後退するように、挿通部材130を付勢するように構成されている。
【0031】
ロック手段160は、穿刺針110のルーメン118における挿通部材130の付勢方向への移動をロックすることで、針先112による穿刺の前における挿通部材130の先端部134の初期位置を規定し、かつ、挿通部材130の先端部134が穿刺針110のルーメン118に後退することにより、前記ロックが解除されるように構成されている。付勢方向は、先端部に向う軸方向Sと一致している。なお、初期位置においては、挿通部材130の先端部134は、穿刺針110における針先112のベベル(刃面)の先端より若干突出し、針先112をガードするように設定されている(
図4および
図5参照)。
【0032】
詳述すると、ロック手段160は、
図8に示されるように、スライド部162、フック部164およびアーム部166を有する。
【0033】
スライド部162は、円筒状であり、挿通部材130における基端部136の拡張部172より基端部側に配置され、拡張部172の基端部側の面が当接することにより駆動され、挿通部材130の基端部136に沿って移動するように構成されている。拡張部172の基端部側の面は、挿通部材130の先端部134が穿刺針110のルーメン118に後退する動作に基づいて移動する。
【0034】
フック部164は、挿通部材130と係合することで挿通部材130の付勢方向Sへの移動をロックし、挿通部材130の先端部134が穿刺針110のルーメン118に後退する動作に基づいて挿通部材130から離間することで、ロックを解除するように構成されている。本実施の形態においては、フック部164は、ツメ状であり、拡張部172より先端部側に配置され、拡張部172の先端部側の面と当接することで係合し、挿通部材130の付勢方向(先端部に向う軸方向S)への移動をロックする。
【0035】
アーム部166は、手元操作部140の先端(針ハブ170)の外周を延長し、手元操作部140の開口部149を介してスライド部162とフック部164とを連結している。
【0036】
フック部164は、スライド部162の移動の際、スライド部162に同伴されて移動することにより、開口部149から引抜かれて(挿通部材130から離間して)、係合が解除され、弾性変形することにより、手元操作部140の外周に当接(乗り上げる)するように構成されている。
【0037】
したがって、穿刺による負荷がなくなった後において、挿通部材130の先端部134が、穿刺針110のルーメン118から突出する際、フック部164は、挿通部材130における基端部136の拡張部172の先端部側の面と当接しないため、基端側に縮められていた付勢手段150の力が解放され、挿通部材130の先端部134が初期位置を越えて突出することとなる。
【0038】
なお、挿通部材130の突出は、拡張部172が手元操作部140の先端部144の内面に当接することにより制止される(停止する)。したがって、挿通部材130の突出量は、初期位置における、拡張部172の先端側面と手元操作部140の先端部144の内面との間に距離によって、定義される。
【0039】
本実施の形態に係る抜け防止手段105は、挿通部材130の先端部134によって構成され、先端部134は、屈曲形状を有し(自然状態においてJ型構造を有し)、弾性変形した状態で穿刺針110のルーメン118に挿入されており、穿刺による負荷がなくなった後において、穿刺針110のルーメン118から突出することにより、弾性変形前の屈曲形状に復元し、穿刺箇所の内面に引っかかるように構成されている。つまり、穿刺による負荷がなくなった穿刺完了後において、ロックが解除された挿通部材130の先端部134が初期位置を越えて突出する動作に基づいて、針先112が穿刺箇所から抜けることを防止する。したがって、抜け防止手段105を、簡単な構造で構成することが可能である。
【0040】
なお、針先112のガードを確実とするためには、挿通部材130の先端部134は、針先112のベベル先端側113に屈曲するように構成することが好ましい。これは、挿通部材130の先端部134の断面形状と穿刺針110における先端部114のルーメン118の断面形状とに、方向性を持たせ、ベベル先端側113に屈曲する配向位置から移動(挿通部材130の先端部134が回転)しないように、設定することにより達成することが可能である。例えば、挿通部材130の延長方向に沿って、挿通部材130の外周に凹凸を形成し、穿刺針110のルーメン118の内面に前記凹凸と嵌合する凹凸を形成することにより、方向性を得ることができる。また、断面形状自体を、方向性を有する形状(例えば、矩形形状や三角形状)とすることによっても方向性を得ることが可能である。
【0041】
ベレスニードル100は、上記のように、穿刺による負荷がなくなった穿刺完了後において、針先(穿刺針)が穿刺箇所から抜けることを防止する抜け防止手段を有するため、例えば、深く穿刺することで、針先が抜けないようにすることが不要である。また、針先の抜け防止は、挿通部材の先端部が穿刺針のルーメンから突出する動作に連動しているため、作業性が良好である。
【0042】
また、挿通部材の先端部が穿刺針のルーメンから突出する動作と、針先が穿刺箇所から抜けることを防止する動作とを連動させる機構を、簡単な構成で達成することが可能である。
【0043】
さらに、挿通部材の移動をロック自在とする機構および挿通部材の先端部がルーメンに後退する動作に基づいてロックを解除する機構を、簡単な構造で構成することが可能である。
【0044】
穿刺針110、外套筒120および挿通部材130の構成材料としては、可撓性を有する金属や比較的高剛性の高分子材料、あるいはこれらを適宜組み合わせたものが挙げられる。例えば、金属は、ステンレス綱、Ni−Ti合金、Cu−Zn合金、コバルト合金、タンタルであり、高分子材料は、ポリアミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂である。
【0045】
外套ハブ122および針ハブ170の構成材料としては、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0046】
次に、実施の形態1に係るベレスニードルの使用方法を説明する。
【0047】
図9及び
図10は、穿刺開始時における先端部および手元操作部を説明するための断面図、
図11および
図12は、穿刺完了時における先端部および手元操作部を説明するための断面図、
図13は、外套筒の留置を説明するための断面図である。
【0048】
経膣的アプローチによる腹腔鏡に適用される場合、まず、準備として、外陰部および膣内の消毒、超音波プローブの挿入、クスコによる膣円蓋部の拡張等を実施する。
【0049】
その後、ベレスニードル100の先端部を膣内に挿入する。この際、挿通部材130の先端部134は、付勢手段150の付勢力に基づき、穿刺針110の先端部114から突出しており、針先112をガードしている(
図5参照)。一方、手元操作部140に配置されるロック手段160のフック部164は、挿通部材130における基端部136の拡張部172の先端部側の面と当接して、挿通部材130の付勢方向(先端部に向う軸方向S)への移動をロックしている(
図7参照)。つまり、挿通部材130の先端部134は、初期位置にあるため、穿刺針110における針先112のベベル先端側113より若干突出しているが、弾性変形した状態(直線状)で保持される。
【0050】
そして、挿通部材130の先端部134は、壁部190と当接すると、当該当接による抵抗に基づき、付勢手段150の付勢力に逆らって、穿刺針110のルーメン118に後退する。これにより、穿刺針110の先端部114が露出し、
図9に示されるように、針先112によって、膣壁からなる壁部190が穿刺される。
【0051】
この際、挿通部材130における基端部136の拡張部172の基端部側の面が、ロック手段160のスライド部162と当接し、スライド部162を、挿通部材130の基端部136に沿って移動させる(駆動する)。これにより、ロック手段160のフック部164は、スライド部162に同伴されて移動し、開口部149から引抜かれ(挿通部材130から離間し)、弾性変形することにより、手元操作部140の外周に当接(乗り上げる)するため、
図10に示されるように、挿通部材130における基端部136の拡張部172のロックが解除される。
【0052】
その後、針先112が壁部190を貫通すると、壁部190との当接による抵抗が消失するため、挿通部材130の先端部134は、付勢手段150の付勢力に基づき、穿刺針110の先端部114から突出し、針先112をガードする。したがって、壁部190の穿刺箇所192の内側に位置する臓器の損傷を避けることが可能である。
【0053】
この際、ロック手段160のフック部164による挿通部材130における基端部136の拡張部172のロックが解除されているため(フック部164は拡張部172の先端部側の面と当接しないため)、基端側に縮められていた付勢手段150の力が解放され、拡張部172は、
図12に示されるように、手元操作部140の先端部144の内面に当接するまで移動する。
【0054】
これにより、挿通部材130の先端部134は、初期位置を越えて突出し、
図11に示されるように、弾性変形前の屈曲形状に復元し、穿刺箇所192の内面に引っかかるため、針先112が穿刺箇所192から抜けることが防止される。
【0055】
また、挿通部材130の基端部136の端面部位137は、穿刺途中においては手元操作部140のキャップ部146から外部に突出しているが(
図10参照)、穿刺の完了時において、手元操作部140の内部に収容される(
図12参照)。したがって、端面部位137の位置の変化に基づいて、穿刺の完了を視覚的に確認することが可能である。
【0056】
次に、外套ハブ122と手元操作部140との連結を解除し、外套筒120の位置を固定した状態で、手元操作部140を後退させる。これにより、挿通部材130の先端部134は、壁部190との当接による抵抗によって弾性変形し、直線状となって、穿刺箇所192を通過する。一方、外套筒120は、
図13に示されるように、穿刺箇所192に留置され、外套筒120は、留置針の外針を構成することになる。なお、穿刺針110は、留置針の内針を構成する。
【0057】
穿刺箇所192に留置された(留置針として機能する)外套筒120は、生理食塩水の注入、内視鏡の挿入、治療等のために利用される。
【0058】
生理食塩水は、例えば、卵管や卵巣を浮かせるため、外套筒120のルーメン128に挿入されるカニューレを経由して、子宮と直腸の間に注入される。内視鏡は、例えば、生理食塩水の注入完了後、カニューレを取外し、浮いた状態の卵管や卵巣の表面を検査(観察)するために挿入される。検査項目は、卵管の通過性、卵管の周りの癒着、子宮内膜症の有無などである。
【0059】
治療対象は、例えば、外性子宮内膜症(異所性子宮内膜症)であり、チョコレート嚢胞を穿刺吸引するための針が挿入される。
【0060】
そして使用後、後処理として、穿刺箇所192からの出血が止血される。なお、外套筒120のルーメン128に挿入される処置具は、カニューレ、内視鏡、穿刺吸引用針に限定されない。
【0061】
図14は、実施の形態1に係る変形例を説明するための断面図である。
【0062】
挿通部材130の基端部136に関し、拡張部172から端面部位137までの長さを延長させ、穿刺完了時点においても、端面部位137が、手元操作部140のキャップ部146から突出した状態を保つように構成することも可能である。この場合、例えば、手元操作部140の位置を固定した状態で、端面部位137近傍を把持し、付勢力に逆らって挿通部材130を移動させることにより、挿通部材130の先端部134を穿刺針110のルーメン118に後退させ、フック部164と、拡張部172の先端部側の面とを再度当接させ、初期位置に戻すことが可能である、
以上のように、実施の形態1においては、穿刺による負荷がなくなった穿刺完了後において、針先(穿刺針)が穿刺箇所から抜けることを防止する抜け防止手段を有するため、例えば、深く穿刺することで、針先が抜けないようにすることが不要である。また、針先の抜け防止は、挿通部材の先端部が穿刺針のルーメンから突出する動作に連動しているため、作業性が良好である。つまり、穿刺箇所からの針先の抜けを容易に防止し得るベレスニードルを提供することが可能である。
【0063】
次に、実施の形態2を説明する。なお、以下において、実施の形態1と同様の機能を有する部材については類似する符号を使用し、重複を避けるため、その説明を適宜省略する。
【0064】
図15は、実施の形態2に係るベレスニードルの先端部を説明するための断面図、
図16は、実施の形態2に係るベレスニードルの手元操作部を説明するための断面図である。
【0065】
実施の形態2は、抜け防止手段の構成に関し、ワイヤの拡張を利用している点で、実施の形態1と概して異なる。
【0066】
詳述すると、挿通部材130Aは、中空状であり、ワイヤ(第2の挿通部材)180が配置されるルーメン138を有する。挿通部材130Aの先端部134は、閉鎖されており、ルーメン138に連通する側方開口部139が形成されている。ワイヤ180は、先端部134の閉鎖部に連結された先端部184と、ルーメン138を通過し、手元操作部140の外部まで延長している基端部186とを有する。
【0067】
ワイヤ180の先端部184は、屈曲形状を有しており、弾性変形した状態で、挿通部材130Aのルーメン138に挿入されており、穿刺による負荷がなくなった後において、穿刺針110のルーメン118から突出した挿通部材130Aの側方開口部139から、拡張する(はみ出る)ことにより、弾性変形前の屈曲形状に復元し、穿刺箇所の内面に引っかかるように構成されている。
【0068】
以上のように、実施の形態2においては、抜け防止手段がワイヤの先端部によって構成されており、実施の形態1と同様に、抜け防止手段を簡単な構造で構成することが可能である。
【0070】
図17は、実施の形態3に係るベレスニードルの先端部を説明するための断面図、
図18は、実施の形態3に係るベレスニードルの手元操作部を説明するための断面図である。
【0071】
実施の形態3は、外套筒を有しておらず、かつ、挿通部材がガイドワイヤからなり、ガイドワイヤを穿刺箇所に確実に留置することが可能である点で、実施の形態1と概して異なる。
【0072】
詳述すると、実施の形態3に係るベレスニードルは、穿刺針110B、挿通部材130B、抜け防止手段105Bおよび手元操作部140Bを有する。
【0073】
穿刺針110Bは、針ハブ170Bが連結される基端部116を有する。針ハブ170Bは、手元操作部140Bに分離可能に取り付けられている。
【0074】
挿通部材130Bは、手元操作部140の内部を延長する基端部136Bを有する。基端部136Bは、挿通部材130Bの軸方向Sと交差する方向に突出した拡張部を構成する固定コネクタ172Bが着脱自在に固定されている。
【0075】
固定コネクタ172Bは、着脱自在の別体から構成される挿通部材における基端部の拡張部であり、コネクタ本体部174およびコネクタキャップ176を有する。コネクタ本体部174およびコネクタキャップ176は、手元操作部140の内部を摺動自在に配置され、挿通部材130Bの基端部136Bが挿入される(貫通する)。なお、コネクタ本体部174は、基端部136Bに対して摺動自在に取り付けられ、コネクタキャップ176は、例えば、回転して、コネクタ本体部174と嵌合することにより、挿通部材130Bに対して締結力を付与することが可能に構成されている。
【0076】
これにより、例えば、固定コネクタ172Bに挿通部材130Bを挿入したり、固定コネクタ172Bから挿通部材130Bを取外す場合は、締結力を弱める(あるいは締結力をなくす)ことで、挿通部材130Bを摺動自在とし、使用の際は、締結力を強めて挿通部材130Bが移動する際の抵抗を増加させることで、挿通部材130Bの摺動を阻止(挿通部材130Bに対して固定コネクタ172Bを固定)することが可能である。
【0077】
なお、ガイドワイヤによって構成される挿通部材130Bは、多層構造からなり、1本の線形の素線(基材)と、素線の表面に被覆される樹脂層とを有する。素線は、ニッケルチタンから構成され、樹脂層は、素線と密着する下地層と、外殻を構成するフッ素樹脂層とを有する。挿通部材130Bは、特に上記構成に限定されず、ニッケルチタンやステンレス鋼からなるコイル部材によって構成したり、樹脂層の外殻として、ウレタン樹脂層を適用することも可能である。
【0078】
手元操作部140Bは、針ハブ170Bが着脱自在の先端部144Bを有し、付勢手段150Bおよびロック手段160Bが配置されている。
【0079】
付勢手段150Bは、固定コネクタ172Bを先端側に付勢する弾性体(バネ)からなり、コネクタキャップ176と手元操作部140Bのキャップ部146との間に配置される。ロック手段160Bのフック部164Bは、コネクタ本体部174より先端部側に配置され、コネクタ本体部174の先端部側の面と当接して、固定コネクタ172Bが固定されている挿通部材130の付勢方向(先端部に向う軸方向S)への移動をロックすることで、初期位置を規定するために使用される。なお、固定コネクタ172Bは、コネクタ本体部174が針ハブ170Bの内面に当接することにより停止するように構成されている。したがって、挿通部材130Bの突出量は、初期位置における、コネクタ本体部174の先端側面と針ハブ170Bの内面との間に距離によって定義される。
【0080】
次に、実施の形態3に係るベレスニードルの使用方法を説明する。
【0081】
図19および
図20は、穿刺開始時における先端部および手元操作部を説明するための断面図、
図21および
図22は、穿刺完了時における先端部および手元操作部を説明するための断面図、
図23は、手元操作部の分離を説明するための断面図、
図24は、固定コネクタの分離を説明するための断面図、
図25は、ガイドワイヤの留置を説明するための断面図である。
【0082】
経膣的アプローチによる腹腔鏡に適用される場合、実施の形態1の場合と同様に、準備およびベレスニードルの先端部の膣内挿入を実施する。
【0083】
そして、挿通部材130Bの先端部134は、壁部190と当接すると、当該当接による抵抗に基づき、付勢手段150の付勢力に逆らって、穿刺針110Bのルーメン118に後退する。これにより、穿刺針110Bの先端部114が露出し、
図19に示されるように、先端部114の針先112によって、膣壁からなる壁部190が穿刺される。
【0084】
この際、固定コネクタ172Bのコネクタキャップ176の基端部側の面が、ロック手段160Bのスライド部162と当接し、スライド部162を、挿通部材130Bの基端部136Bに沿って移動させる(駆動する)。これにより、ロック手段160Bのフック部164Bは、スライド部162に同伴されて移動し、開口部149から引抜かれ(挿通部材130Bから離間し)、弾性変形することにより、手元操作部140Bの外周に当接(乗り上げる)するため、
図20に示されるように、固定コネクタ172B(コネクタ本体部174)のロックが解除される。
【0085】
その後、針先112が壁部190を貫通すると、壁部190との当接による抵抗が消失するため、挿通部材130Bの先端部134は、付勢手段150の付勢力に基づき、穿刺針110Bの先端部114から突出し、針先112をガードする。したがって、壁部190の穿刺箇所192の内側に位置する臓器の損傷を避けることが可能である。
【0086】
この際、固定コネクタ172Bのロックが解除されているため(フック部164Bはコネクタ本体部174の先端部側の面と当接しないため)、基端側に縮められていた付勢手段150の力が解放され、固定コネクタ172Bは、
図22に示されるように、針ハブ170Bの内面に当接するまで移動する。
【0087】
これにより、挿通部材130Bの先端部134は、初期位置を越えて突出し、
図21に示されるように、弾性変形前の屈曲形状に復元し、穿刺箇所192の内面に引っかかるため、針先112が穿刺箇所192から抜けることが防止される。
【0088】
次に、針ハブ170Bと手元操作部140Bとの連結を解除し、針ハブ170Bの位置を固定した状態で、手元操作部140Bを後退させる。これにより、
図23に示されるように、手元操作部140Bが分離される。
【0089】
その後、コネクタキャップ176を回転して挿通部材130Bに対する締結力を弱め(あるいは締結力をなくし)、固定コネクタ172Bを、挿通部材130Bの基端部136Bに沿って摺動(移動)させ、基端部136Bの端面部位137から取外す。これにより、
図24に示されるように、固定コネクタ172Bが分離される。
【0090】
そして、挿通部材130Bの位置を固定した状態で、針ハブ170Bを後退させる。これにより、
図25に示されるように、挿通部材130Bのみが、壁部190の穿刺箇所192に留置されることになる。
【0091】
留置されたガイドワイヤからなる挿通部材130Bは、例えば、生理食塩水の注入、内視鏡の挿入、治療のため等に利用されるルーメンを有するカテーテルの挿入に利用される。そして使用後、後処理として、穿刺箇所192からの出血が止血される。
【0092】
以上のように、実施の形態3においては、挿通部材がガイドワイヤからなるため、ガイドワイヤを穿刺箇所に確実に留置することが可能である。なお、実施の形態1および実施の形態2に係る外套筒を、実施の形態3に適宜組み込むことも可能である。
【0093】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で種々改変することができる。例えば、腹腔内に二酸化炭素を導入する気腹針として適用することも可能である。抜け防止手段は、挿通部材の先端部によって構成する形態や、先端部に配置される形態に限定されない。穿刺の完了を視覚的に確認するための確認手段は、手元操作部の外周に配置される開口部によって構成し、当該開口部を介して拡張部(コネクタ)の移動を目視可能とすることも可能である。穿刺針を中空状として、カテーテルや内視鏡等を挿入自在に構成することも可能である。
【0094】
本出願は、2011年2月18日に出願された日本特許出願番号2011−033414号に基づいており、それらの開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。