特許第5871832号(P5871832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871832
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】アクティブフィルタ
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/01 20060101AFI20160216BHJP
   H02M 1/12 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   H02J3/01
   H02M1/12
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-14765(P2013-14765)
(22)【出願日】2013年1月29日
(65)【公開番号】特開2014-147234(P2014-147234A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】390022460
【氏名又は名称】株式会社指月電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100084629
【弁理士】
【氏名又は名称】西森 正博
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 康夫
(72)【発明者】
【氏名】大谷 晋平
【審査官】 田中 寛人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−143094(JP,A)
【文献】 特開平03−203404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00−5/00
H02M1/00−1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源(2)に接続され、負荷(3)から出力される負荷電流(i)を検出し、負荷電流(i)に含まれる高調波電流を打ち消す補償電流(iAF)を電源(2)側に注入するアクティブフィルタであって、上記負荷電流(i)を検出する負荷電流検出部(11)と、上記補償電流(iAF)を出力する電流出力部(13)と、上記電流出力部(13)の出力電流を検出する出力電流検出部(15)と、上記電流出力部(13)を制御する制御部(12)とを具備し、上記制御部(12)は、負荷電流(i)に含まれる高調波電流と、電流出力部(13)の出力電流のいずれか一方又は双方の各相の電流値が第1の電流値より小である場合には、上記電流出力部(13)の出力ゲインを増加させ、負荷電流(i)に含まれる高調波電流と、電流出力部(13)の出力電流のいずれか一方又は双方の各相の電流値のうち少なくとも1相の電流値が、上記第1の電流値を超えるが、第1の電流値より大とされた第2の電流値以下である場合には、上記電流出力部(13)の出力ゲインを低下させ、負荷電流(i)に含まれる高調波電流と、電流出力部(13)の出力電流のいずれか一方又は双方の各相の電流値のうち少なくとも1相の電流値が上記第2の電流値を超える場合には、上記電流出力部(13)の出力を停止させることを特徴とするアクティブフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、負荷電流に含まれる高調波成分を低減するアクティブフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、アクティブフィルタ1の基本的な導入例を示している。アクティブフィルタ1は、電源2と、高調波を発生する高調波発生負荷3との間に接続され、高調波発生負荷3から出力された負荷電流iを負荷電流検出部11で検出、高調波成分を抽出するとともに、その高調波成分の逆位相の補償電流iAFを電源2側に注入することで総合電流iにおける高調波電流を低減するものである(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−113460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アクティブフィルタは、通常、補償電流が瞬間的に過大となる場合に、瞬時に出力を停止させる過電流保護機能を備えている。これは、過大な電流による装置の故障を防止して安全性の確保を図るためのものであり、いずれかの相の電流値が予め設定してある値を超えた場合に出力を停止するようになっている。
【0005】
また、その他に、アクティブフィルタの出力電流が定格以上である場合に補償電流の実効値を自動的に定格以下に抑える出力抑制機能を備えている。この機能は、アクティブフィルタの内部発熱を抑制することを主目的としたものであるため、内部発熱に最も関係する各相の電流実効値をもとに補償電流の実効値を制御するようになっているが、結果として、過電流保護機能が動作する前に出力を抑制することに繋がるため、装置の安定的な動作にも寄与するものである。
【0006】
そして、従来のアクティブフィルタにおいては、上記2つの機能により、装置の安定的な動作と安全性の確保を図っていたが、電源電圧の不平衡等によって負荷電流が歪み、高調波が歪むことにより、各相の電流実効値は低いものの特定相の電流波高値のみが突出しているような場合(図3(a)参照)には、出力抑制機能が動作せず、過電流保護機能の動作による装置の停止が多くなる可能性があり、装置を安定して動作させるといった点では改善の余地があった。
【0007】
そこで、この発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、電源電圧が不平衡等であっても安定した動作を可能とするアクティブフィルタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のアクティブフィルタ1は、電源2に接続され、負荷3から出力される負荷電流iを検出し、負荷電流iに含まれる高調波電流を打ち消す補償電流iAFを電源2側に注入するアクティブフィルタであって、上記負荷電流iを検出する負荷電流検出部11と、上記補償電流iAFを出力する電流出力部13と、上記電流出力部13の出力電流を検出する出力電流検出部15と、上記電流出力部13を制御する制御部12とを具備し、上記制御部12は、負荷電流iに含まれる高調波電流と、電流出力部13の出力電流のいずれか一方又は双方の各相の電流値が第1の電流値より小である場合には、上記電流出力部13の出力ゲインを増加させ、負荷電流iに含まれる高調波電流と、電流出力部13の出力電流のいずれか一方又は双方の各相の電流値のうち少なくとも1相の電流値が、上記第1の電流値を超えるが、第1の電流値より大とされた第2の電流値以下である場合には、上記電流出力部13の出力ゲインを低下させ、負荷電流iに含まれる高調波電流と、電流出力部13の出力電流のいずれか一方又は双方の各相の電流値のうち少なくとも1相の電流値が上記第2の電流値を超える場合には、上記電流出力部13の出力を停止させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
この発明のアクティブフィルタでは、制御部において、負荷電流に含まれる高調波電流と、電流出力部の出力電流のいずれか一方又は双方の各相の電流値のうち少なくとも1相の電流値が、第1の電流値を超えるが、第1の電流値より大とされた第2の電流値以下である場合には、電流出力部の出力ゲインを低下させるといった制御を行うことから、電源電圧の不平衡等によって、各相の電流実効値は低いものの特定相の電流波高値のみが突出しているような場合であっても、補償電流の電流値を低下させることができ、結果、過電流保護機能の動作による装置の停止を極力抑え、安定した動作を実現することができる。また、負荷電流に含まれる高調波電流と、電流出力部の出力電流のいずれか一方又は双方の各相の電流値のうち少なくとも1相の電流値が第2の電流値を超える場合には、電流出力部の出力を停止させるため、過電流による装置の故障を防止して安全性の確保を図ることができる。さらに、負荷電流に含まれる高調波電流と、電流出力部の出力電流のいずれか一方又は双方の各相の電流値が第1の電流値より小さい場合には、電流出力部の出力ゲインを増加させるため、高調波抑制機能を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るアクティブフィルタの構成を示す回路図である。
図2】同じくそのアクティブフィルタの制御部の動作を示すフローチャート図である。
図3】補償電流の各相の電流値を示すグラフであって、(a)は出力ゲインを一定にした状態を示し、(b)は設定値に応じて出力ゲインを下げた状態を示す。
図4】アクティブフィルタの基本的な使用状態を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、この発明のアクティブフィルタ1の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明のアクティブフィルタ1は、従来のアクティブフィルタ同様、電源2と、高調波を発生する高調波発生負荷3との間に接続され、高調波発生負荷3から出力された負荷電流iを検出、高調波電流を抽出するとともに、その高調波電流の逆位相の補償電流iAFを電源2側に注入することで総合電流iに含まれる高調波電流を低減するものである。
【0012】
上記アクティブフィルタ1は、図1に示すように、負荷電流検出部11と、制御部12と、電流出力部13とを備えている。負荷電流検出部11は、電源2と高調波発生負荷3との間に接続されたACCTであって、高調波発生負荷3から出力された負荷電流iを検出するものであり、制御部12は、負荷電流検出部11によって検出された負荷電流iから高調波電流を抽出し、この高調波電流に基づいて電流出力部13に対してPWMパルス信号を発するものであり、電流出力部13は、この信号に基づいて出力電流を出力し、リアクトル14を介して高調波電流の逆位相となる補償電流iAFを電源2側に出力するものである。
【0013】
ところで、本発明のアクティブフィルタ1は、負荷電流検出部11や制御部12、電流出力部13の他に出力電流検出部15を備えている。出力電流検出部15は、図1に示すように、電流出力部13とリアクトル14との間に設けられたDCCTであり、リアクトル14を通過前の電流値、すなわち、電流出力部13の出力電流の電流値を検出し、制御部12へと提供するものである。
【0014】
そして、制御部12は、出力電流検出部15からの電流値(電流波高値)をもとに電流出力部13を制御していく。電流出力部13の制御にあたっては、図2に示すように、まず、電流出力部13の出力電流の各相の電流値を出力電流検出部15にて検出する(S1)。次に、これら電流値と予め設定された設定値とを比較する。設定値としては、高調波電流の打ち消しや装置の維持に好ましい電流値である第1の電流値と、この第1の電流値より大とされ、安全性を確保するための上限値である第2の電流値とが予め設定されており、まず、電流出力部13の出力電流の各相の電流値の全てが第1の電流値より小さいかどうかを判断する(S2)。そして、各相の電流値が全て第1の電流値より小さい場合には、各相の出力ゲインを増加させ(S3)、この出力ゲインをもとに電流出力部13に対してPWMパルス信号を発し(S4)、S1に戻る。
【0015】
各相の電流値のうち少なくとも1相の電流値が第1の電流値を超えている場合には、次に、当該相の電流値が第2の電流値以下であるかどうかを判断する(S5)。そして、電流出力部13の出力電流の各相の電流値のうち少なくとも1相の電流値が第1の電流値を超えるが第2の電流値以下である場合には、各相の出力ゲインを低下させ(S6)、この出力ゲインに基づいてPWMパルス信号を発し(S4)、S1に戻る。
【0016】
S5の条件に該当しなかったものについては、過電流保護機能の動作条件に該当するかどうか判断する(S7)。具体的には、電流出力部13の出力電流の各相の電流値のうち少なくとも1相の電流値が第2の電流値を超えるかどうかを判断する。そして、ある1相の電流値が第2の電流値を超える場合には、過電流保護機能によって電流出力部13の各相の出力(全出力)を停止させる(S8)。条件を満たさない場合、すなわち、各相の電流値が第1の電流値と同値である場合には、そのままの出力ゲインでPWMパルス信号を出力し(S4)、S1に戻るといった制御を繰り返し行う。
【0017】
従って、上記制御部12を用いた場合、電流出力部13の出力電流のいずれかの相の電流波高値が第1の電流値を超えると、制御部12により瞬時に全部の相の出力ゲインを一定割合(例えば1%程度)下げることができ、電流波高値が過電流保護機能の動作条件に該当し難くなる(過電流保護機能の閾値を超え難くなる)。特に、フィードバック制御であるため、出力ゲインを下げても電流波高値が設定値を超えている場合には、さらに出力ゲインを下げることができ、これを繰り返すことにより、図3(b)に示すように、補償電流の電流値を適正な値(図3(b)においてはi2)内に維持し続けることができる。従って、装置の停止を極力抑えることができ、装置の安定した動作を実現することができる。なお、出力ゲインを下げることで高調波抑制機能は低下するが、一定の電源電圧不平衡環境下でも過電流保護機能を動作させることなく運転を良好に維持することができることから、停止による無補償期間を生じさせる場合に比べて有益である。
【0018】
また、負荷の急変等により急峻に電流値が上昇し、出力ゲインの低減動作が追随できず、電流出力部13の出力電流の電流波高値が第2の電流値を超えた場合には、過電流保護機能が有効に動作し電流出力部13の出力を停止させることができるため、装置の故障を防止して安全性を確保することができる。
【0019】
さらに、電流波高値が第1の電流値以下の場合である場合には、全部の相の出力ゲインを一定割合(例えば1%程度)上げることにより(出力ゲインの上限は1)、高調波抑制機能を良好に発揮させることができる。
【0020】
上記制御は、負荷電流検出部11によって検出された負荷電流iに含まれる高調波電流をもとに行っても良い。具体的には、上記制御においては、電流出力部13の出力電流を用いていたが、これに代えて負荷電流iに含まれる高調波電流を用いても良い。この場合、図2のS1において、負荷電流検出部11にて負荷電流iを検出するとともに、制御部12において負荷電流iに含まれる高調波電流の各相の電流値を抽出しておき、S2以降は、図2に示す過程に則って判断を行っていく。また、電流出力部13の出力電流の各相の電流値と、負荷電流iに含まれる高調波電流の各相の電流値の双方をもとに制御を行うようにしても良い。さらに、例えばS2では、出力電流の電流値を用い、S5では、高調波電流の電流値を用い、S7では双方の電流値を用いるといった制御を行っても良い。これら場合においても、上記制御と同様の作用効果を得られる。
【0021】
以上に、この発明の具体的な実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、上記アクティブフィルタ1に、従来から用いられている出力抑制機能を付加しても良い。この場合、過電流保護機能が動作する前に出力を低下させる機能が追加されることとなるため、装置のより安定した動作を実現することができる。また、第1、第2の電流値は、ジャンパーピン等により自由に設定できるようにすることも可能であり、使用状態に合わせて適宜変更可能である。また、図1において、電流出力部13として、IPM等の電力用半導体素子を用いていたが、これに限らず公知の種々のものを用いることができる。その他、負荷電流検出部11としてACCT、出力電流検出部15としてDCCTが用いられていたが、あくまで例示であってこれに限らず種々の公知のものを使用可能である。また、制御部12に対して、電流出力部13側からのDC電圧や、電流出力部13からの出力であってリアクトル14を通過したもののAC電圧が入力されていたが、その他、制御に必要なものがあれば適宜入力可能である。
【0022】
また、上記実施例の制御部12は、はじめに電流値が第1の電流値より小さいか否かを判断していたが、あくまで例示であって、例えば、はじめに電流値が第2の電流値を超えているか否かを判断するようにしても良い。また、上記実施例では、一連の流れの中で3つの条件のあてはめを行っていたが、これら条件を独立して同時並行的に判断するようにしても良い。すなわち、負荷電流iに含まれる高調波電流と、電流出力部13の出力電流のいずれか一方又は双方の各相の電流値が第1の電流値より小さい場合には、電流出力部13の出力ゲインを増加させ、負荷電流iに含まれる高調波電流と、電流出力部13の出力電流のいずれか一方又は双方の各相の電流値のうち少なくとも1相の電流値が第1の電流値を超えるが第2の電流値以下である場合には、電流出力部13の出力ゲインを低下させ、負荷電流iに含まれる高調波電流と、電流出力部13の出力電流のいずれか一方又は双方の各相の電流値のうち少なくとも1相の電流値が第2の電流値を超える場合には、電流出力部13の出力を停止させるといった判断を個々に行うようにしても良い。この場合、瞬時の対応が可能となるため、急峻な電流値変化にも追随しやすくなる。
【符号の説明】
【0023】
1・・アクティブフィルタ、2・・電源、3・・高調波発生負荷、11・・負荷電流検出部、12・・制御部、13・・電流出力部、15・・出力電流検出部
図1
図2
図3
図4