(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871838
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】金属選別装置および同選別装置を用いた異形金属の選別方法
(51)【国際特許分類】
B07B 13/04 20060101AFI20160216BHJP
C22B 34/12 20060101ALN20160216BHJP
C22B 1/00 20060101ALN20160216BHJP
【FI】
B07B13/04 D
!C22B34/12 103
!C22B1/00 101
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-38772(P2013-38772)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-166602(P2014-166602A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2014年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591173855
【氏名又は名称】杉山重工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】山田 治
(72)【発明者】
【氏名】野中 泰之
(72)【発明者】
【氏名】成田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】杉山 大介
【審査官】
鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−075883(JP,U)
【文献】
特開2005−179757(JP,A)
【文献】
実開昭48−026570(JP,U)
【文献】
実開昭60−001478(JP,U)
【文献】
特表2011−510812(JP,A)
【文献】
米国特許第04519507(US,A)
【文献】
英国特許出願公開第00233156(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07B 1/00−15/00
C22B 1/00
C22B 34/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顆粒状金属から異形金属を分離する金属選別装置であって、
前記選別装置は、前記金属の送出部と、この送出部の途上に設けられた開口部を備え、
前記送出部は、互いに離間する上流側フィーダおよび下流側フィーダに分割されており、前記金属の送出方向に直交する前記送出部の断面形状は、前記上流側フィーダおよび前記下流側フィーダのいずれにおいても波型あるいはW型であって、
上記分割により前記波型あるいはW型における谷部の延在方向と直交する方向に前記開口部を形成していることを特徴とする金属選別装置。
【請求項2】
前記谷部の延在方向の前記開口部の長さが、前記顆粒状金属に混入している異形金属の長径の最小値よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の金属選別装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の金属選別装置を使用することを特徴とする顆粒状金属からの異形金属の選別方法。
【請求項4】
前記異形金属を前記開口部から落下させずに前記選別装置の前記送出部に残し、それ以外の顆粒状金属を前記開口部から落下させて前記異形金属から分離して回収することを特徴とする請求項3に記載の顆粒状金属からの異形金属の選別方法。
【請求項5】
前記下流側フィーダは、前記上流側フィーダの延長線に対して、鉛直方向で下方に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の金属選別装置。
【請求項6】
前記下流側フィーダは、前記上流側フィーダの延長線上に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の金属選別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顆粒状金属に混入している異形金属の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属チタンあるいはチタン合金は、航空機材料のみならず、近年では民生用熱交換器や建築物の構造材あるいは屋根材等に幅広く利用されている。
【0003】
前記した金属チタンあるいはチタン合金は、チタン鉱石を塩素化して四塩化チタンとし、これを還元性金属で還元するクロール法でスポンジチタンを得、このスポンジチタンを電子ビーム溶解炉や真空アーク溶解炉にて溶解して金属チタンインゴットあるいはチタン合金インゴットとしてから、鍛造あるいは圧延工程を経て、板材等の形に加工してユーザーに出荷される。
【0004】
前記した電子ビーム溶解炉においては、溶解原料であるスポンジチタンを振動フィーダを介してそのまま電子ビーム溶解炉に供給することができる。このため、電子ビーム溶解炉に供給するスポンジチタンは、できる限り粒度が均一で、また、形状も好ましいとされている。
【0005】
クロール法で製造されるスポンジチタンは、四塩化チタンの還元工程で製造されたスポンジチタンの大塊をプレス切断して小塊とし、更にこれをジョークラッシャー等で所定の大きさまで粉砕整粒されてから製品として出荷される。しかしながら、この破砕整粒方法で製造されるスポンジチタンの大半は顆粒状のスポンジチタンであるが、中には、細長い異形のスポンジチタンも生成されて製品の中に混入される場合がある。
【0006】
このような異形のスポンジチタンが製品中に混入すると、スポンジチタンを電子ビーム溶解炉に供給する場合、フィーダ途中でブリッジを形成する原因となる場合があり、好ましくないとされる。
【0007】
また、真空アーク溶解炉では、スポンジチタンをプレス成形して電極をなし、これを溶解してインゴットが形成されているが、前記したような細長い形状のスポンジチタンが電極用のスポンジチタンに混入していると、溶接接合で構成される電極の強度を低下させる場合がある。このため、真空アーク溶解用の電極を製造する場合の原料スポンジチタンの形状もできる限り揃っている方が好ましいとされる。
【0008】
このため、クロール法で製造されたスポンジチタンを破砕整粒して製造された顆粒状スポンジチタンに含まれる異形のスポンジチタンは、目視選別により事前に分離除去されている。
【0009】
このような目視選別は、人手が掛かるのみならず、見落としが発生することにより、前記したような異形のスポンジチタンを完全に分離除去することができず改善が求められている。
【0010】
上記したスポンジチタン粒の異物除去については、スポンジチタン粒に対してハロゲン光を照射し、その反射光をRGBに分解して、それぞれのRGB強度および自乗平均よりスポンジチタン中の含まれている異物を検出する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
上記方法では、着色したスポンジチタンやスポンジチタン以外の異物を分離除去する手段としては有効であるが、形状に起因するスポンジチタンの異物に対して、検出することは難しく、解決手段が望まれている。
【0012】
このように、クロール法で製造された顆粒状スポンジチタン中に含まれる異形のスポンジチタンを効率良く、分離除去できる方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特公平08−003470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、スポンジチタン粒に混入する異形スポンジチタンを効率よく分離することができる装置およびこれを用いたスポンジチタンに含まれる異形スポンジチタンの分離方法の提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる実情に鑑みて前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねてきたところ、スポンジチタン大塊を粉砕整粒して製造されたスポンジチタン粒を、底面の一部に開口部を設けた選別装置を通過させることにより、異形のスポンジチタンチタンと正常な形状のスポンジチタンを効率よく分離することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明に係る顆粒状金属から異形金属を分離する金属選別装置は、金属の送出部と、この送出部の途上に設けられた開口部を備え
、送出部は、互いに離間する上流側フィーダおよび下流側フィーダに分割されており、
金属の送出方向に直交する送出部の断面形状は、上流側フィーダおよび下流側フィーダのいずれにおいても波型あるいはW型であって、上記分割により波型あるいはW型における谷部の延在方向と直交する方向に開口部を形成していることを特徴としている。
【0017】
また、本発明においては、谷部の延在方向の開口部の長さが、顆粒状金属に混入している異形金属の長径の最小値よりも短いことを好ましい態様としている。
【0018】
本発明に係る顆粒状金属からの異形金属の選別方法は、前記した金属選別装置を用いることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明においては、異形金属を開口部から落下させずに選別装置の送出部に残し、それ以外の顆粒状金属を開口部から落下させて異形金属から分離して回収することを好ましい態様としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る金属選別装置および同選別装置を用いた異形金属の選別方法を用いることにより、顆粒状金属中の異形金属を効率よく分離除去することができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の金属選別装置の基本原理を示す模式図である。
【
図2】本発明の金属選別装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図3】本発明の金属選別装置の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の最良の実施形態について図面を用いて以下に説明する。
図1は、本発明に係る異形金属選別装置Mの基本原理を表している。金属選別装置Mにおいては、振動フィーダ1が水平面より所定の角度傾斜されて設置され、矢印で示すように上流側から選別対象の金属3が送出される。選別対象金属3は、正規品である顆粒状金属3aと、非正規品である異形金属3bからなる。
【0023】
ここで、正規品の顆粒状金属とは、アスペクト比が比較的1に近いか所定の値より小さいものを意味し、非正規品の異形金属とは、顆粒状金属と比較してアスペクト比が所定の値よりも大きく比較的長径のものを意味する。しかしながら、スポンジチタン製品のロットごとに許容される形状が定められ、正規・非正規の区分は、それにより変化するものであり、本発明においては、厳密にアスペクト比が特定の数値に限定されるものではない。
【0024】
本発明においては、
図1に示すように、振動フィーダ1の途中に開口部2が形成されており、振動フィーダ1を金属3が通過する間に、開口部2より正規形状の顆粒状金属3aが落下して開口部2の下方に設けられた容器4aに回収され、異形金属3bは、前記開口部2よりも大きい(あるいは長い)ので、開口部2から落下しないで、振動フィーダ1の下流に設けた容器4bに回収される。
【0025】
前記装置構成を用いることにより、金属3中に含まれる顆粒状金属3aと異形金属3bを効率よく分離除去することができるという効果を奏するものである。
【0026】
1.第1実施形態
図2は、本発明に係る異形金属選別装置にかかるより具体的な装置構成を表している。
本実施態様においては、振動フィーダ1として波板状のフィーダ1aが用いられる。本実施態様に係る開口部2aは、波板状フィーダ1aの谷部に設けることを好ましい態様とするものである。
【0027】
図2における開口部2の長さlは、分離したい異形金属3bの最小長さLよりも長くなるように形成することが好ましい。前記したような開口部2aを形成することにより、金属3中に含まれる異形金属3b(長径金属)は、開口部2aより落下することなく、振動フィーダ1aの下流に設けた容器に効率よく分離除去することができるという効果を奏するものである。
【0028】
これに対して長径品でないいわゆる正規の顆粒状金属3aは、前記開口部2aより下方に落下する。このようにして、顆粒状金属3aのみを回収して、製品として出荷することができるという効果を奏するものである。
【0029】
また、波板状フィーダ1aを用いることにより、全ての異形金属3bは、波板の谷部に嵌まり、その長径方向の向きが送出方向に揃えられる。これにより、異形金属3bが斜めに開口部2aに進入するなどして誤選別されることを抑制することができる。
【0030】
以上のように、前記異形金属3bが長径金属粒である場合に、選別を効果的に実施することができるという効果を奏するものである。
【0031】
2.第2実施形態
図3は、本発明に係る別の好ましい態様を表している。本実施態様においては、波板状フィーダの途中に、波板状フィーダの全体を横切るような開口部2bを形成したことを好ましい態様とするものである。
【0032】
前記したような開口部2bを設けることで、選別対象金属3中に含まれている正規品の顆粒状金属3bを前記開口部2bより落下させる一方、異形金属3bは、開口部2bから落下することなく、開口部2bをまたぐようにして上流側波板状フィーダ1bから下流側波板フィーダ1cに達して、その後、異形金属容器4bに回収させることができる、という効果を奏するものである。
【0033】
なお、開口部長さcgは、顆粒状金属3aに含まれる異形金属3bの最小長さLに応じて、適宜設定できるような構造とすることが好ましい。
【0034】
このように、第2実施形態では、開口部2aが固定的に形成された第1実施形態とは異なり、上流側波板状フィーダ1bと下流側波板状フィーダ1cとの間隔を各ロット毎に調整することにより、顆粒状金属3aの外形の許容範囲に応じた適切な装置構成とすることができるという効果を奏するものである。
【0035】
本発明においては、前記波板状フィーダの断面は、いわゆる波板であっても良いが、W状の形態であっても本発明の効果を効率よく発揮させることができるという効果を奏するものである。
【0036】
また、
図2および
図3に示したような波板状のフィーダを採用することにより、顆粒状金属3a中に含まれる異形金属3bを、顆粒状金属3aの流れに沿って整列させることができ、その結果、波板状フィーダの途中に設けた開口部を効率よく跨がせることができ、その結果、顆粒状金属に含まれる正規品から効率よく分離除去することができるという効果を奏するものである。
【0037】
上記
図3に示した実施態様にける波板状のフィーダに設けたスリットを挟んだ上流側フィーダに対して、下流側のフィーダの鉛直位置は、上流側のフィーダの延長線に対して、僅かに下方にずらした位置に配置させることが好ましい。
【0038】
前記したような装置構成とすることにより、上流側のフィーダで選別された長径品のスポンジチタンを効率よく下流側のフィーダに供給させることができる、という効果を奏するものである。
【0039】
本発明においては、顆粒状金属3aとして、クロール法で製造されたスポンジチタン大塊を破砕・整粒して製造されたスポンジチタンの正規品を想定しており、これに含まれる長径の異形スポンジチタンを効率よく分離除去することができるという効果を奏するものである。
【0040】
以上、本発明に係る異形金属の選別装置を用いることにより、顆粒状金属に含まれる長径品を効率よく分離除去することができる、という効果を奏するものである。
【実施例】
【0041】
1.原料
1)顆粒状金属:スポンジチタン(1mm〜3/4”)
2)分離したい異形金属:全長が50mm以上の細長スポンジ
2.異形金属選別装置
1)振動フィーダ:
図2に示す波板状フィーダ
2)開口部長さ:17mm
【0042】
[実施例1]
(参考例)
上記したスポンジチタン100Kgを
図2に示す装置を使用して、同スポンジチタンに含まれる長径品の選別処理を行なった。処理に要した時間は、2分であり、分離された長径品の回収率は、92%であった。
【0043】
[実施例2]
(本発明例)
上記したスポンジチタン100Kgを
図3に示す装置を使用して、同スポンジチタンに含まれる長径品の選別処理を行なった。処理に要した時間は、2分であり、分離された長径品の回収率は、98%であった。
【0044】
[比較例]
上記したスポンジチタン100Kgを
図2または3に示す装置を使用しないで、全量目視検査により、スポンジチタン中に含まれる長径品を分離した。この際の処理に要した時間は、10.9分であり、分離された長径品の回収率は、90%回収であった。
【0045】
【表1】
【0046】
以上の実施例および比較例により、スポンジチタン中に含まれる長径品の回収率の改善効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、顆粒状金属中に含まれる異形金属の効率的な選別装置およびこれを使用した選別方法を提供するものである。
【符号の説明】
【0048】
1、1a…振動フィーダ、
1b…上流側フィーダ、
1c…下流側フィーダ、
2、2a、2b…開口部、
3…選別対象金属、
3a…顆粒状金属(正規品)、
3b…異形金属(非正規品、長径品)、
4a、4b…回収容器。