(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インクが収容される圧力室に対応して設けられるアクチュエータに、駆動パルスとして、前記圧力室の容積を拡張させた後に元に戻す第1のパルスを印加し、続いて、前記圧力室の容積を収縮させた後に元に戻す第2のパルスを印加して、前記アクチュエータで対応する前記圧力室に圧力振動を与え、前記圧力室に連通するノズルからインク液滴を吐出させるインクジェットヘッドの駆動方法において、
前記第2のパルスは、当該第2のパルスがオンしたことによって、前記第1のパルスがオンしたときに前記圧力室に生じる前記圧力振動の振幅と同じ振幅が第2の時点で引き起こされる第1の時点でオンし、
前記第2の時点は、前記第1の時点の後で前記圧力室内のノズル近傍のインクの流速がゼロとなる時点であり、前記第2のパルスは、前記第2の時点でオフすることを特徴とするインクジェットヘッドの駆動方法。
前記駆動パルスとして、前記第1のパルスと前記第2のパルスとの間に、前記圧力室の容積を収縮させた後に元に戻す第3のパルスを印加することを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの駆動方法。
前記第3のパルスを、前記圧力室の圧力がゼロとなるタイミンクでオンし、その後の再びゼロとなるタイミングでオフすることを特徴とする請求項2記載のインクジェットヘッドの駆動方法。
前記第3のパルスを、インクの液柱がノズルから分離する直前のタイミングでオンし、その後インクの液柱がノズルから分離し終えたタイミングでオフすることを特徴とする請求項2記載のインクジェットヘッドの駆動方法。
前記インクジェットヘッドが、複数の圧力室にそれぞれ対応して複数のアクチュエータを設けたマルチノズルインクジェットヘッドである場合、少なくとも前記最終のインク液滴を吐出させるための駆動パルスのオン,オフのタイミングを前記アクチュエータ間で一致させることを特徴とする請求項5記載のインクジェットヘッドの駆動方法。
前記インクジェットヘッドが、複数の圧力室にそれぞれ対応して複数のアクチュエータを設けたマルチノズルインクジェットヘッドである場合、前記各アクチュエータにそれぞれ印加される前記駆動パルスのオン,オフのタイミングを前記アクチュエータ間で一致させることを特徴とする請求項5記載のインクジェットヘッドの駆動方法。
インクが収容される圧力室に対応して設けられるアクチュエータに、駆動パルスとして、前記圧力室の容積を拡張させた後に元に戻す第1のパルスを印加し、続いて、前記圧力室の容積を収縮させた後に元に戻す第2のパルスを印加して、前記アクチュエータで対応する前記圧力室に圧力振動を与える駆動信号発生部を備え、前記圧力室に連通するノズルからインク液滴を吐出させるインクジェットヘッドの駆動装置において、
前記駆動信号発生部は、前記第2のパルスを、当該第2のパルスがオンしたことによって、前記第1のパルスがオンしたときに前記圧力室に生じる前記圧力振動の振幅と同じ振幅が第2の時点で引き起こされる第1の時点でオンし、前記第2の時点は、前記第1の時点の後で前記圧力室内のノズル近傍のインクの流速がゼロとなる時点であり、前記駆動信号発生部は、前記第2のパルスを、前記第2の時点でオフすることを特徴とするインクジェットヘッドの駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、インクジェットヘッドの駆動方法及び駆動装置の実施形態について、図面を用いて説明する。はじめに、本実施形態で使用するインクジェットヘッド1について、
図1〜
図3を用いて説明する。
【0010】
図1はインクジェットヘッド1の斜視図、
図2はインクジェットヘッド1の要部を断面で示す構成図、
図3は
図2の矢印A−Aの方向から見たインクジェットヘッド1の断面図である。
【0011】
インクジェットヘッド1は、駆動装置2と、ヘッド基板3と、マニホールド4とを備える。マニホールド4は、インクの供給管5と排出管6とを備える。インクジェットヘッド1は、インク供給手段(不図示)から供給管5を経て供給されるインクを、駆動装置2からの駆動信号に応じて、各ノズル13aから吐出する。供給管5からマニホールド4内に供給されたインクのうち、各ノズル13aから吐出されなかったインクは、排出管6からインク供給手段へ排出される。
【0012】
ヘッド基板3には、各ノズル13aにそれぞれ対応して複数の圧力室11が並設される。各圧力室11の底面(
図2では底面、
図1では上面)側には、複数のノズル13aが穿設されたノズルプレート13が接着される。各圧力室11は、隔壁12によって仕切られており、それぞれインクを収容する。各ノズル13aは、ノズルプレート13の長手方向に複数列(
図1では2列)で整列するようにノズルプレート13に穿設される。各ノズル13aは、圧力室11側である裏面側からインク吐出側である表面(
図2では表面=底面、
図1では表面=上面)側に向けて先細りの形状になっている。
【0013】
インクジェットヘッド1には、各圧力室11の天面側に振動板14が接着される。インクジェットヘッド1には、振動板14の上面側に、各圧力室11にそれぞれ対応して設けられる複数の圧電部材15の一端が固着される。インクジェットヘッド1は、各圧電部材15の他端を保持部材16で保持する。各圧電部材15は、それぞれ圧電層15aと電極層15bとを交互に複数積層したものである。インクジェットヘッド1には、各電極層15bを挟むように一対の電極17が配置される。両電極17には駆動装置2が電気的に接続される。
【0014】
インクジェットヘッド1は、ヘッド基板3に共通液室18を形成する。共通液室18には、供給管5を経由してインクが注入される。共通液室18は、各圧力室11に連通しており、注入されたインクは、各圧力室11と、この圧力室11に対応したノズル13aとに充填される。圧力室11とノズル13aとにインクが充填されることで、ノズル13a内にインクのメニスカスが形成される。
【0015】
かかる構成のインクジェットヘッド1において、駆動装置2から電極17を介して圧電部材15に駆動信号が印加されると、圧電部材15が膨張または収縮する。この圧電部材15の膨張または収縮に伴い振動板14が変形して、圧力室11に振動を与える。この振動により圧力室11の容積が変化して圧力室11内に圧力波が発生し、ノズル13aからインク液滴が吐出される。ここに、振動板14と圧電部材15とは、圧力室11に振動を与えるためのアクチュエータとして機能する。すなわちインクジェットヘッド1は、ノズル13aの数だけ、アクチュエータを備えている。
【0016】
次に、駆動装置2について説明する。駆動装置2は、通信部21と、演算部22と、駆動信号発生部23とを備える。通信部21は、例えばインクジェットプリンタを制御するためのホストコンピュータから印刷画像の階調データを受信する。演算部22は、上記階調データに基づいてノズル13a毎に駆動パルス列の数を算出する。駆動信号発生部23は、演算部22にてノズル13a毎に算出された数の駆動パルス列を有する駆動パルス信号を、各ノズル13aに対応した圧電部材15に供給する。
【0017】
駆動パルス信号のパルス電圧が圧電部材15に印加されることにより、この圧電部材15に対応した圧力室11のノズル13aから、パルス列の数に相当するドロップ数のインク液滴が吐出される。インクジェットヘッド1と駆動装置2とからなるインクジェット記録装置は、インク液滴のドロップ数を画素単位に変化させて画素の濃度を調整することで階調印字を行う方式、いわゆるマルチドロップ方式で画像を印刷する。
【0018】
図4は、駆動信号発生部23の構成を示すブロック図である。駆動信号発生部23は、基準駆動波形生成部231と、ノズル13a別の通過区間選択回路232-1〜232-nとを含む。基準駆動波形生成部231は、最大階調値Gの画素を形成するのに必要なドロップ数のインク液滴をノズル13aから連続して吐出させるための駆動パルス信号を生成する。この駆動パルス信号を、本実施形態では、基準パルス信号と称する。各通過区間選択回路232-1〜232-nは、上記基準パルス信号を、選択信号により選択されるドロップ数0〜kの駆動パルス信号に代えて出力する。
【0019】
図5は、最大階調値Gが“4”のときに、通過区間選択回路232-1〜232-nから出力される駆動パルス信号PA4,PA3,PA2,PA1の波形例である。駆動パルス信号PA4は、区間t0〜t1のDRP波形と、区間t1〜t2のDRP波形と、区間t2〜t3のDRP波形と、区間t3〜t4のDRCRP波形とから構成される。DRP波形とDRCRP波形は、それぞれ駆動パルス列である。4個の駆動パルス列からなる駆動パルス信号PA4は、基準駆動波形生成部231で生成される基準パルス信号と一致する。
【0020】
4ドロップを選択する選択信号が通過区間選択回路232-1〜232-nに入力されたとき、当該選択回路232-1〜232-nは、基準パルス信号の区間t0〜t4を全て通過区間として選択する。その結果、駆動パルス信号PA4が出力される。上記駆動パルス信号PA4が圧電部材15に印加された場合、この圧電部材15に対応するノズル13aからは4ドロップのインク液滴が吐出される。
【0021】
駆動パルス信号PA3は、駆動パルス信号(基準パルス信号)PA4から区間t0〜t1のDRP波形を除いた信号である。3ドロップを選択する選択信号が通過区間選択回路232-1〜232-nに入力されたとき、当該選択回路232-1〜232-nは、基準パルス信号の区間t1〜t4を通過区間として選択する。その結果、駆動パルス信号PA3が出力される。上記駆動パルス信号PA3が圧電部材15に印加された場合、この圧電部材15に対応するノズル13aからは3ドロップのインク液滴が吐出される。
【0022】
駆動パルス信号PA2は、駆動パルス信号(基準パルス信号)PA4から区間t0〜t2の2つのDRP波形を除いた信号である。2ドロップを選択する選択信号が通過区間選択回路232-1〜232-nに入力されたとき、当該選択回路232-1〜232-nは、基準パルス信号の区間t2〜t4を通過区間として選択する。その結果、駆動パルス信号PA2が出力される。上記駆動パルス信号PA2が圧電部材15に印加された場合、この圧電部材15に対応するノズル13aからは2ドロップのインク液滴が吐出される。
【0023】
駆動パルス信号PA1は、駆動パルス信号(基準パルス信号)PA4から区間t0〜t3の3つのDRP波形を除いた信号である。1ドロップを選択する選択信号が通過区間選択回路232-1〜232-nに入力されたとき、当該選択回路232-1〜232-nは、基準パルス信号の区間t3〜t4を通過区間として選択する。その結果、駆動パルス信号PA1が出力される。上記駆動パルス信号PA1が圧電部材15に印加された場合、この圧電部材15に対応するノズル13aからは1ドロップのインク液滴が吐出される。
【0024】
図6は、DRP波形の説明図である。
図6に示すように、DRP波形は、第1のパルスである吐出パルスSPと、第2のパルスであるダンピングパルスDPとを含む。吐出パルスSPは、基準電圧Vmよりも低い電圧−V1に変化するパルスであり、パルス幅がTsに設定されている。ダンピングパルスDPは、基準電圧Vmよりも高い電圧V1に変化するパルスであり、パルス幅がTdに設定されている。ダンピングパルスDPは、吐出パルスSPの立ち上がりから時間Tw1だけ遅れて発生する。なお、基準電圧Vmは、インク液滴を吐出しない通常状態のノズル13aに対応した圧電部材15に印加される電圧である。
【0025】
吐出パルスSPの立ち下がり(負電圧パルスオン)は、圧電部材15に印加される電圧をVmから−V1に変化させる。吐出パルスSPが立ち下がる時点t11では、圧電部材15が通常状態よりも収縮する。この収縮に伴い、圧電部材15に固着した振動板14が、圧力室11の容積を拡張させるように変形する。圧力室11の容積が拡張したことに応じて、圧力室11内に負の圧力が瞬間的に発生する。
【0026】
圧力室11の拡張状態は、吐出パルスSPのパルス幅Tsに相当する時間だけ継続する。吐出パルスSPのパルス幅Tsは、圧力室11の固有振動周期の1/2に設定される。本実施例では、固有振動周期が4.6us、パルス幅Tsは2.3umである。Tsの間に、共通液室18から圧力室11内にインクが流入する。また、ノズル13aの先端のメニスカスが圧力室11側に後退する。圧力室11内の圧力は、負圧から正圧に反転する。
【0027】
吐出パルスSPの立ち上がり(負電圧パルスオフ)は、圧電部材15に印加される電圧を−V1からVmに戻す。吐出パルスSPが立ち上がる時点t12では、圧電部材15が通常状態に復帰する。この復帰に伴い、圧力室11内の容積が通常の状態に戻る。このとき、圧力室11内に正の圧力が瞬間的に発生する。この圧力により、ノズル13a内のメニスカスが前進を始める。
【0028】
メニスカスの前進は、吐出パルスSPが立ち上がってから固有振動周期の1/2の時間(例えば2.3μs)が経過するまで継続する。その間に、圧力室11内の圧力は、再度、正圧から負圧に変化する。その後、インク液滴がノズル内のインクと分離して、インク液滴が吐出される。そして、ダンピングパルスDPの立ち上がり(正電圧パルスオン)により圧電部材15に印加される電圧がVmからV1に変化した時点t13では、圧電部材15の容積が膨張する。この膨張に伴い、圧電部材15に固着した振動板14が、圧力室11の容積を収縮させるように変形する。圧力室11の容積が収縮したことに応じて、圧力室11内に正の圧力が瞬間的に発生する。
【0029】
圧力室11の収縮状態は、ダンピングパルスDPのパルス幅Td(例えば0.9μs)に相当する時間だけ継続する。そして、ダンピングパルスDPの立ち下がり(正電圧パルスオフ)により圧電部材15に印加される電圧がV1からVmに戻った時点t14では、圧電部材15が通常状態に復帰する。正電圧パルスオフは、V1に充電されていた圧電部材の充電状態をVmに戻す。この復帰に伴い、圧力室11内の正の圧力がゼロに戻る。その結果、圧力室11の残留振動がキャンセルされる。
【0030】
次に、ダンピングパルスDPの出力タイミングについて説明する。この説明にあたっては、
図7の等価回路30を使用する。
【0031】
等価回路30は、電圧源31に、抵抗RとキャパシタCとインダクタLとの直列回路(以下、LCR回路32と称する)を接続したものである。抵抗Rは0.18Ωであり、キャパシタCは、0.69μFであり、インダクタLは0.736μHである。等価回路30は、インクジェットヘッド1の圧力室11を示す。電圧源31の両端電圧は、アクチュエータの変位量に相当する。この電圧は、アクチュエータに印加される駆動電圧とみなしてもよい。インダクタLの両端電圧は、圧力室11内のノズル13a周辺の圧力に相当する。回路電流は、圧力室11内のノズル13aの周辺で、ノズルへ向かうインクの流速に相当する。等価回路30は、電圧源31に対して並列に電圧計Vを接続し、電圧源31と抵抗Rとの間に電流計(流速計)Sを接続し、インダクタLに対して並列に電圧計(圧力計)Pを接続する。共通液室18から圧力室11へ向う圧力室11の入口の流速は、ノズル13aの周辺と逆向きである。例えば
図6のt11のタイミングで圧力室11を広げたとき、ノズル13aの周辺のインクは、圧力室11側に後退し、同時に、共通液室18から圧力室11へ向うインクの流れが生じる。この方向のインクの流れは電流計Sが負の値になることに相当する。
【0032】
電圧源31からLCR回路32に、
図8に示すDRP波形のパルス信号41を印加する。パルス信号41は、吐出パルスSPのパルス幅Tsが2.3μsであり、ダンピングパルスDPのパルス幅が0.9μsであり、吐出パルスSPとダンピングパルスDPとの間隔Tw1が3.0μsである。LCR回路32にパルス信号41を印加したときのインダクタLの両端電圧の変化、すなわち圧力変化を
図8の波形42で示し、回路電流の変化、すなわち流速の変化を
図8の波形43で示す。
【0033】
吐出パルスSPの立下り時点から6.2μs経過後のダンピングパルスDPが立ち下がる時点では、インダクタLの両端電圧(圧力)がV1となる。回路電流(流速)はゼロとなる。電圧(圧力)V1は、吐出パルスSPが立ち下がった時点でインダクタLの両端に生じる電圧(圧力)と逆極で振幅が等しい。このとき、ダンピングパルスDPが立ち下がると、以後、インダクタLの両端電圧(圧力)はゼロとなる。また、回路電流(流速)もゼロとなる。すなわち、圧力室11の残留振動がキャンセルされる。
【0034】
要するに、インダクタLの両端電圧(圧力)がV1となり、かつ、回路電流(流速)がゼロとなるタイミングでダンピングパルスDPを立ち下げることにより、圧力室11の残留振動を確実にキャンセルできる。換言すれば、インダクタLの両端電圧(圧力)がV1となり、かつ、回路電流(流速)がゼロとなるタイミングが生じないと、圧力室11の残留振動をキャンセルすることはできない。
【0035】
インダクタLの両端電圧(圧力)の振幅は、ダンピングパルスDPの立ち上がりのタイミングを調整することで変化する。等価回路30の場合、
図9に示すように、吐出パルスSPの立下り時点から5.3μs経過後にダンピングパルスDPを立ち上げると、その後の6.2μs経過後にインダクタLの両端電圧(圧力)がV1となり、かつ、回路電流(流速)がゼロとなる。このとき、ダンピングパルスDPを立ち下げると(
図8を参照)、圧力室11の残留振動が
図8に示されるようにキャンセルされる。
【0036】
図10は、吐出パルスSPの立下り時点から5.3μs経過後よりも遅れてダンピングパルスDPを立ち上げた場合である。この場合、回路電流(流速)がゼロとなる6.24μs経過後の時点では、インダクタLの両端電圧(圧力)がV1より大きい。したがって、
図11に示すように、回路電流(流速)がゼロとなる時点でダンピングパルスDPを立ち下げても、圧力室11の残留振動は残る。
【0037】
図12は、吐出パルスSPの立下り時点から5.3μs経過後よりも早くダンピングパルスDPを立ち上げた場合である。この場合、回路電流(流速)がゼロとなる6.17μs経過後の時点では、インダクタLの両端電圧(圧力)がV1より小さい。したがって、
図13に示すように、回路電流(流速)がゼロとなる時点でダンピングパルスDPを立ち下げても、圧力室11の残留振動は残る。
【0038】
ダンピングパルスDPは、圧力室11の残留振動をキャンセルすることを目的として、駆動パルス信号に含まれる。
図10〜
図13を用いて説明したように、ダンピングパルスDPの出力タイミングがずれている場合には、残留振動をキャンセルすることができない。
【0039】
このため、DRP波形におけるダンピングパルスDPは、
図9に示したように、当該ダンピングパルスDPの立ち上げ後にインダクタLの両端電圧(圧力)がV1となり、かつ、回路電流(流速)がゼロとなる時点が発生するタイミングで立ち上げる(正電圧パルスオン)。そして
図8に示したように、インダクタLの両端電圧(圧力)がV1となり、かつ、回路電流(流速)がゼロとなる時点で、ダンピングパルスDPは立ち下げる(正電圧パルスオフ)。基準駆動波形生成部231は、このようなDRP波形を有する基準パルス信号を生成する。
【0040】
図14は、DRCRP波形の説明図である。
図14に示すように、DRCRP波形は、DRP波形の吐出パルスSPとダンピングパルスDPとの間に、第3のパルスであるサテライト除去パルスCPがある。サテライト除去パルスCPは、基準電圧Vmよりも高い電圧V1に変化するパルスであり、パルス幅がTcに設定されている。サテライト除去パルスCPは、吐出パルスSPの立ち上がりから時間Tw2だけ遅れて発生する。ダンピングパルスDPは、サテライト除去パルスCPの立ち下がりから時間Tw3だけ遅れて発生する。
【0041】
サテライト除去パルスCPの「サテライト」とは、サテライトドロップを指す。インク液滴がノズル13aから吐出される際、通常、インク液滴は尾を引いた状態でノズル13aから吐出される。そして、インク液滴がノズル13a内のインクと分離する際に、この尾を引いた部分、いわゆる液柱が、球形状のサテライトドロップとなって、メインのインク液滴に続いて飛翔する。サテライトドロップは、飛翔速度が遅いため、メインの液滴から離れて記録媒体上に着弾する。その結果、サテライトドロップは、濃度ムラやゴーストといった印字品質の低下を招く。サテライト除去パルスCPは、サテライトドロップの発生を防止する。
【0042】
時点t21から時点t22までの吐出パルスSPの立ち下がりから立ち上がりまでは、DRP波形と同様に作用する。すなわち、吐出パルスSPの立ち上がりにより圧電部材15に印加される電圧が−V1からVmに戻った時点t22で、ノズル13a内のメニスカスが前進を始める。
【0043】
メニスカスの前進は、吐出パルスSPが立ち上がってから固有振動周期の1/2の時間(例えば2.3μs)が経過するまで継続する。そして、時間Tw2(例えば3.25μs)が経過したとき、インクの液柱がノズル13aから分離される直前となる。このとき、サテライト除去パルスCPを立ち上げる(正電圧パルスオン)。サテライト除去パルスCPの立ち上がりにより圧電部材15に印加される電圧がVmからV1に変化した時点t23では、圧電部材15の容積が膨張する。この膨張に伴い、圧電部材15に固着した振動板14が、圧力室11の容積を収縮させるように変形する。圧力室11の容積が収縮したことに応じて、圧力室11内に正の圧力が瞬間的に発生する。この圧力により、圧力室11では、インクの液柱を押し出す作用が働く。その結果、液柱がインク液滴とともにノズル内のインクと分離して、ノズル13aから吐出される。したがって、サテライトドロップは形成されない。
【0044】
圧力室11の収縮状態は、サテライト除去パルスCPのパルス幅Tc(例えば1.85μs)に相当する時間だけ継続する。Tcは、液柱がノズル内のインクと分離してノズル13aから吐出し終えるのに要する時間である。そして、サテライト除去パルスCPの立ち下がり(正電圧パルスオフ)により圧電部材15に印加される電圧がV1からVmに戻る時点t24では、圧電部材15が通常状態に復帰する。この復帰に伴い、圧力室11内の容積が通常の状態に戻る。この状態は、時間Tw3(例えば1.3μs)が経過するまで継続する。そして、ダンピングパルスDPの立ち上がりにより圧電部材15に印加される電圧がVmからV1に変化した時点t25では、圧電部材15の容積が再び膨張する。この膨張に伴い、圧電部材15に固着した振動板14が、圧力室11の容積を収縮させるように変形する。圧力室が収縮したことに応じて圧力室11内に正の圧力が瞬間的に発生する。
【0045】
圧力室11の収縮状態は、ダンピングパルスDPのパルス幅Td(例えば0.95μs)に相当する時間だけ継続する。そして、ダンピングパルスDPの立ち下がりにより圧電部材15に印加される電圧がV1からVmに戻った時点t26では、圧電部材15が再び通常状態に復帰する。この復帰に伴い、圧力室11内の正の圧力がゼロに戻る。その結果、圧力室11の残留振動がキャンセルされる。
【0046】
次に、サテライト除去パルスCPの出力タイミングについて説明する。この説明にあたっては、
図7の等価回路30を使用する。
電圧源31からLCR回路30に、
図15に示すDRC波形のパルス信号51を印加する。因みに、DRC波形は、DRCRP波形から第2のパルスであるダンピングパルスDPを省略した波形である。パルス信号51は、吐出パルスSPのパルス幅Tsが2.3μsであり、サテライト除去パルスCPのパルス幅が1.85μsであり、吐出パルスSPとサテライト除去パルスCPとの間隔Tw1が3.25μsである。LCR回路32にパルス信号51を印加したときのインダクタLの両端電圧の変化、すなわち圧力変化を
図15の波形52で示し、回路電流の変化、すなわち流速変化を
図15の波形53で示す。
【0047】
吐出パルスSPの立下り時点から5.55μs経過後の時点は、インクの液滴がノズル13aから分離する直前である。このときインダクタLの両端電圧(圧力)はほぼ“0”となっている。ここでサテライト除去パルスCPを立ち上げる。すると、圧力室11の容積が収縮し、インクの液柱を押し出す。その後、吐出パルスSPの立下り時点から7.4μs経過した時点で液柱がノズル13aから吐出し終える。このときインダクタLの両端電圧(圧力)は再びほぼ“0”となっている。ここでサテライト除去パルスを立ち下げると圧力室11内の容積が通常の状態に戻り、圧力室11内の圧力は急速に低下してノズル付近に残っている吐出しなかったインクを圧力室へ引き戻す。こうして液柱がノズル内のインクと分離し、サテライトドロップの発生を抑えることができる。
【0048】
しかし、
図15に示すように、DRC波形では圧力室の振動をキャンセルすることはできない。そのため、DRC波形を連続して与えてインクを吐出させると、吐出が不安定になる。そこで
図16に示すように、サテライト除去パルスCPを立ち下げた後、ダンピングパルスDPを与えて圧力振動をキャンセルする。ダンピングパルスDPは、立ち上げ後にインダクタLの両端電圧(圧力)がV1となり、かつ、回路電流(流速)がゼロとなる時点が発生するタイミングで立ち上げる。そして
図17に示すように、インダクタLの両端電圧(圧力)がV1となり、かつ、回路電流(流速)がゼロとなる時点で立ち下げる。このようなDRCRP波形の駆動パルス信号をインクジェットヘッド1に印加することによって、サテライトドロップの発生防止と圧力室11の残留振動キャンセルとの両立をさせることができる。
【0049】
さて、マルチドロップ方式の場合、最後のインク液滴の吐出時以外は、サテライトが生じても問題はない。その理由は後続する液滴がサテライトと合体するからである。そこで本実施形態では、
図5に示すように、最後のインク液滴の吐出時だけはDRCRP波形を使用し、それ以前はDRP波形を使用する。DRCRP波形はDRP波形と比較すると一つの駆動パルス列により多くの時間を要する。このため、全てのインク液滴の吐出に関してDRCRP波形を用いた場合には、印刷速度が低下する。本実施形態では、最後のインク液滴の吐出時だけはDRCRP波形を使用し、それ以前はDRP波形を使用するので、高速印刷が可能となる。
【0050】
また、本実施形態では、
図5で示すように、駆動パルス信号の区間t4のDRCRP波形のタイミングは、各アクチュータ間で共通にしている。そして、この後ろ詰めされるDRCRP波形を基準としてDRP波形は設定される。すなわち、階調値(ドロップ数)にかかわらず、駆動パルス信号の
図5の区間t3、t2、t1のDRP波形のタイミングが共通である。これによって、
図4に示すように駆動信号発生部23の基準駆動波形生成部231を各アクチュータに対して共通にすることができ、駆動信号発生部23の構成が容易になる。
【0051】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。
例えば前記実施形態は、
図1〜
図3に示す構造のインクジェットヘッド1に対する駆動装置及び駆動方法として説明したが、他の構造のインクジェットヘッドに対する駆動装置及び駆動方法としても同様に適用できるものである。例えば、本実施形態は、各ノズルを時分割で駆動するインクジェットヘッドに対しても適用可能である。
【0052】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。