特許第5871863号(P5871863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5871863マイクロ流路チップおよび医療用測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871863
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】マイクロ流路チップおよび医療用測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20160216BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20160216BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20160216BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   G01N35/08 A
   G01N37/00 101
   B81B1/00
   B01J19/00 321
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-141000(P2013-141000)
(22)【出願日】2013年7月4日
(65)【公開番号】特開2015-14512(P2015-14512A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2014年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(72)【発明者】
【氏名】藤本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】石丸 毅
【審査官】 渡邉 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−003011(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/015856(WO,A1)
【文献】 特開2010−185469(JP,A)
【文献】 特開2006−153609(JP,A)
【文献】 特開平04−266672(JP,A)
【文献】 特開2006−283965(JP,A)
【文献】 特開2010−216445(JP,A)
【文献】 特開2007−255717(JP,A)
【文献】 特開2003−227780(JP,A)
【文献】 特開2010−085129(JP,A)
【文献】 特開2013−101144(JP,A)
【文献】 特開2007−108075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 − 37/00
B81B 1/00 − 7/04
B81C 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に、互いに接続されていない少なくとも2筋の溝を有する第1基板と、
前記第1基板の表面に積層状態に重ね合わされた第2基板とを備え、
前記第1基板の表面の溝は前記第2基板によって蓋がされ、蓋がされた溝によってマイクロ流路が構成されているマイクロ流路チップであって、
前記第1基板は弾性材料で構成され、
前記第1基板の裏面側から、前記各溝に貫通する少なくとも2つの貫通孔が形成されており、当該貫通孔は、各貫通孔は後記ニップルの外径よりも小さい内径を有しており、
前記2つの貫通孔に挿入されて貫通孔と結合し、前記マイクロ流路の開閉を制御するためのバルブが、前記第1基板の裏面側に備えられており、
前記バルブは、少なくとも2つのニップルを備えた電磁バルブを含み、当該電磁バルブのニップルは、突出方向の中間部または先端に径方向に拡径した抜け止めを備え、該ニップルが前記貫通孔に挿入されて弾力的に締め付けられた状態で貫通孔と結合していることを特徴とする、マイクロ流路チップ。
【請求項2】
表面に、互いに接続されていない少なくとも2筋の溝を有する第1基板と、
前記第1基板の表面に積層状態に重ね合わされた第2基板とを備え、
前記第1基板の表面の溝は前記第2基板によって蓋がされ、蓋がされた溝によってマイクロ流路が構成されているマイクロ流路チップであって、
前記第2基板は弾性材料で構成され、
前記第1基板の表面に重ね合わされた面と反対側の前記第2基板の表面側には、当該表面側から前記各溝に貫通する少なくとも2つの貫通孔が形成されており、当該貫通孔は、各貫通孔は後記ニップルの外径よりも小さい内径を有しており、
前記2つの貫通孔に挿入されて貫通孔と結合し、前記マイクロ流路の開閉を制御するためのバルブが、前記第2基板の表面側に備えられており、
前記バルブは、少なくとも2つのニップルを備えた電磁バルブを含み、当該電磁バルブのニップルは、突出方向の中間部または先端に径方向に拡径した抜け止めを備え、該ニップルが前記貫通孔に挿入されて弾力的に締め付けられた状態で貫通孔と結合していることを特徴とする、マイクロ流路チップ。
【請求項3】
前記貫通孔の内形状は、前記ニップルの外形状に対応した形状であることを特徴とする、請求項1または2に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項4】
前記弾性材料は、ゴムを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項5】
前記ゴムは、シリコンゴム、EPDM、FKM、FFKM、IIR、H−NBRのいずれか、またはそれらのうちの任意のものの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項4に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項6】
前記溝は3筋形成されており、
前記貫通孔は、各溝に対応して3本形成されており、
前記バルブは、3つのニップルを備えた3方電磁バルブであり、当該電磁バルブの3つのニップルが前記3つの貫通孔に挿入されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロ流路チップを介して流体の流れを制御することを特徴とする、医療用測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マイクロ流路チップと、これを用いた医療用測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流路チップは、ガラス基板、樹脂基板などに数百マイクロメートルから数ミリメートルの微細な流路を形成し、液体や気体を流せるようにしたものであり、マイクロタス、あるいはマイクロフルイディクスチップとも呼ばれており、例えば、医療用測定装置に用いられている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
医療用測定装置は、マイクロ流路チップなどにより構成された流路と、これらの流路に設けられた分岐点や反応部とを有し、例えば、液体内に含まれる物質の分離や、複数種類の液体や気体を混合することで化学反応を行うことが可能である。
【0003】
多くの場合、マイクロ流路チップには複数の流路が施されている。これらの流路は、分岐点を介して互いに接続されている。また、個々の流路の流れ(ON,OFF)を制御するために、それぞれの流路には、バルブが設置されている。バルブは、マイクロ流路チップ外に設置され、各流路のチップ出入り口に、直接に、あるいはゴムチューブなどを介して間接的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4464317号公報
【特許文献2】特開2010−151717号公報
【特許文献3】特開平11−183437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マイクロ流路チップを利用するに際しては、このマイクロ流路チップの流路ごとにバルブを接続する必要があり、作業が煩雑であった。
特に、マイクロ流路チップが使い捨て(1回限り使用)の場合、バルブあるいはバルブと接続されたゴムチューブの着脱がチップの使用ごとに必要であるので、簡便なバルブの設置方法が求められている。
【0006】
また、マイクロ流路チップを用いたシステムにおける構造の簡素化や、コスト低減も要請されている。
この発明は、このような従来技術に鑑みてなされたもので、主たる目的は、利用に際しての作業が簡便で、さらに当該マイクロ流路チップを用いたシステム全体の構造を簡素化できるマイクロ流路チップおよび医療用測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、表面に、互いに接続されていない少なくとも2筋の溝を有する第1基板と、前記第1基板の表面に積層状態に重ね合わされた第2基板とを備え、前記第1基板の表面の溝は前記第2基板によって蓋がされ、蓋がされた溝によってマイクロ流路が構成されているマイクロ流路チップであって、前記第1基板は弾性材料で構成され、前記第1基板の裏面側から、前記各溝に貫通する少なくとも2つの貫通孔が形成されており、当該貫通孔は、各貫通孔は後記ニップルの外径よりも小さい内径を有しており、前記2つの貫通孔に挿入されて貫通孔と結合し、前記マイクロ流路の開閉を制御するためのバルブが、前記第1基板の裏面側に備えられており、前記バルブは、少なくとも2つのニップルを備えた電磁バルブを含み、当該電磁バルブのニップルは、突出方向の中間部または先端に径方向に拡径した抜け止めを備え、該ニップルが前記貫通孔に挿入されて弾力的に締め付けられた状態で貫通孔と結合していることを特徴とする、マイクロ流路チップである。
【0008】
請求項2記載の発明は、表面に、互いに接続されていない少なくとも2筋の溝を有する第1基板と、前記第1基板の表面に積層状態に重ね合わされた第2基板とを備え、前記第1基板の表面の溝は前記第2基板によって蓋がされ、蓋がされた溝によってマイクロ流路が構成されているマイクロ流路チップであって、前記第2基板は弾性材料で構成され、前記第1基板の表面に重ね合わされた面と反対側の前記第2基板の表面側には、当該表面側から前記各溝に貫通する少なくとも2つの貫通孔が形成されており、当該貫通孔は、各貫通孔は後記ニップルの外径よりも小さい内径を有しており、前記2つの貫通孔に挿入されて貫通孔と結合し、前記マイクロ流路の開閉を制御するためのバルブが、前記第2基板の表面側に備えられており、前記バルブは、少なくとも2つのニップルを備えた電磁バルブを含み、当該電磁バルブのニップルは、突出方向の中間部または先端に径方向に拡径した抜け止めを備え、該ニップルが前記貫通孔に挿入されて弾力的に締め付けられた状態で貫通孔と結合していることを特徴とする、マイクロ流路チップである。
請求項3記載の発明は、前記貫通孔の内形状は、前記ニップルの外形状に対応した形状であることを特徴とする、請求項1または2に記載のマイクロ流路チップである。
【0009】
請求項記載の発明は、前記弾性材料は、ゴムを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマイクロ流路チップである。
請求項記載の発明は、前記ゴムは、シリコンゴム、EPDM、FKM、FFKM、IIR、H−NBRのいずれか、またはそれらのうちの任意のものの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項4に記載のマイクロ流路チップである。
【0011】
請求項記載の発明は、前記溝は3筋形成されており、前記貫通孔は、各溝に対応して3本形成されており、前記バルブは、3つのニップルを備えた3方電磁バルブであり、当該電磁バルブの3つのニップルが前記3つの貫通孔に挿入されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマイクロ流路チップである。
請求項記載の発明は、請求項1〜のいずれかに記載のマイクロ流路チップを介して流体の流れを制御することを特徴とする、医療用測定装置である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、少なくとも2筋の溝とバルブとにより、開閉可能な流路を構成できる。従って、マイクロ流路チップにバルブ機能を付与することができるので、当該マイクロ流路チップを利用するに際して、バルブを設ける手間を軽減することができ、また、当該マイクロ流路チップを用いたシステムの構造を簡素化できる。また、マイクロ流路にバルブを簡単に接続できるので、バルブとして多方弁を利用することが可能となる。
【0013】
また、3つ以上の溝を設けると、3つ以上の溝のうちの予め定める溝と残りのうちのいずれか一つの溝とを連通させた状態、および前述した予め定める溝と残りのうちのいずれか一つの溝とは異なる溝とを連通させた状態を、電磁バルブにより切り換えることができる。この機能を実現するためのバルブは1つで済み、構造を簡素化できる。
さらに、この発明によれば、マイクロ流路チップにより簡素な構造の医療用測定装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、この発明の第1実施形態のマイクロ流路チップ1の斜視図である。
図2図2は、マイクロ流路チップ1の分解斜視図である。
図3図3は、バルブ6のニップル24と、チップ本体5の貫通孔7の周辺部分の拡大図であり、一部を断面で示している。
図4図4は、医療用測定装置30における流路の概略構成図である。
図5図5は、この発明の第2実施形態のマイクロ流路チップ1Aの斜視図である。
図6図6は、マイクロ流路チップ1Aの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の第1実施形態のマイクロ流路チップ1の斜視図である。
マイクロ流路チップ1は、流体を流通可能な複数、例えば、3つのマイクロ流路2,3,4を内部に形成された板状のチップ本体5と、マイクロ流路2,3,4の開閉を制御するためのバルブ6とを有している。このバルブ6は、具体的には、多方弁としての3方電磁バルブであり、チップ本体5に取り付けられている。チップ本体5とバルブ6とは、一体的なユニットを構成している。
【0016】
3つのマイクロ流路2,3,4は、チップ本体5に互いに独立して形成されている。チップ本体5には、マイクロ流路2と連通する貫通孔7と、マイクロ流路3と連通する貫通孔8と、マイクロ流路4と連通する貫通孔9とが形成されている。3つのマイクロ流路2,3,4は、対応する貫通孔7,8,9により、バルブ6と接続されている。
また、マイクロ流路2,3,4のそれぞれは、チップ本体5の周縁の端面で外部に開放されており、例えば、図示しない管継手を介して外部の配管に接続される。
【0017】
なお、バルブ6としては、3方弁以外の多方弁、例えば、4方弁、5方弁などを利用してもよいし、逆に、2つの流路間を開閉する開閉弁(2方弁)を利用してもよい。また、バルブ6としては、電磁弁の他に、例えば、手動操作式の弁を利用してもよい。マイクロ流路および貫通孔は、バルブ6のタイプに応じて、それぞれ少なくとも2つあればよい。マイクロ流路チップとしては、その少なくとも一部の構成として、少なくとも2つのマイクロ流路と、これらのマイクロ流路と貫通孔を通じて接続されるバルブとを含んでおればよい。また、流通可能な流体としては、液体でも気体でもよい。以下では、マイクロ流路チップ1が、3つのマイクロ流路2,3,4を有し、これに対応する3方電磁バルブ6を1つ有しており、液体を流通可能な場合に則して説明する。
【0018】
マイクロ流路チップ1では、3つのマイクロ流路2,3,4をバルブ6で接続することで、開閉可能な流路を構成できる。例えば、バルブ6を動作させることで、マイクロ流路2,3を互いに連通可能な状態と、マイクロ流路3,4を互いに連通可能な状態とを切り換えることができる。このように、マイクロ流路チップ1にバルブ機能を付与することができるので、例えば、当該マイクロ流路チップ1を医療用測定装置で利用するに際して、バルブ6を設ける手間を軽減することができる。また、当該マイクロ流路チップ1を用いたシステム、例えば、医療用測定装置の構造を簡素化できる。
【0019】
また、チップ本体5の貫通孔7,8,9により、複数のマイクロ流路2,3,4とバルブ6との両者を互いに直結でき、これら両者を簡単に接続することができる。その結果、従来接続が面倒で利用が困難であった多方弁(ここでは3方電磁バルブ)を、簡単に利用することができる。さらに、多方弁を利用することにより、マイクロ流路チップ1を適用したシステム全体でのバルブの数を減らすことができ、システム全体の構造の簡素化により一層寄与する。
【0020】
図2は、マイクロ流路チップ1の分解斜視図である。
図1図2を参照して、チップ本体5は、積層状態に重ね合わされた第1基板11および第2基板12を有している。第1基板11は、表面13と、裏面14とを有している。第2基板12は、表面15と、裏面16とを有している。第1基板11の表面13と第2基板12の裏面16とが沿わされている。
【0021】
チップ本体5の形状は、限定されないが、例えば、チップ本体5が、矩形の平面形状で厚さ一定の板形状である場合について、図示されている。また、第1基板11および第2基板12の形状も同様に特に限定されないが、第1基板11および第2基板12の平面形状がともにチップ本体5とほぼ同じとされた場合について図示されている。
第1基板11は、弾性材料としてのゴムにより形成されている。このゴムとしては、種々のゴムを利用することができるが、耐薬品性に優れたゴムを利用している。ここで、耐薬品性に優れたゴムとしては、シリコンゴム、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)、FKM(フッ化ビニリデン系フッ素ゴム)、FFKM(テトラフルオロエチレン・パープルオロビニルエーテル系フッ素ゴム)、IIR(ブチルゴム)、H−NBR(水素化ニトリルゴム、水素添加ニトリルゴム)のいずれか、またはそれらのうちの任意のものの組み合わせを利用できる。
【0022】
第1基板11は、表面13に形成された3筋(本)の溝17,18,19と、前述した3つの貫通孔7,8,9とを有している。
溝17,18,19の形状は、特に限定されないが、例えば、各溝17,18,19は、互いに同じ形状に形成されており、断面矩形であり、溝幅および溝深さは、100マイクロメートルから5ミリメートルの範囲内の所定の値である。各溝17,18,19は、第1基板11の周縁の端面から直角に所定長さで真直に延びており、第1基板11の中央部にまで達しており、互いに接続されていない。
【0023】
第1基板11と第2基板12とは、接着剤(図示せず)で互いに張り合わされており、その間は封止されている。これにより、第1基板11の表面13の溝17,18,19が第2基板12によって蓋がされる。蓋がされた溝17,18,19によって、それぞれ対応するマイクロ流路2,3,4が、簡易に構成されている。
各貫通孔7,8,9は、第1基板11の裏面14側からそれぞれ対応する溝17,18,19の奥側の端部に貫通している。3つの貫通孔7,8,9は、互いに同じ形状に形成されており、裏面14の中央部において、所定間隔で一直線上に並んでいる。貫通孔7,8,9は、バルブ6と接続するための管継手として機能する。
【0024】
第2基板12は、第1基板11と同じ材質のゴムで形成されている。なお、第2基板12には、第1基板11と異なる材質のゴムを用いてもよいし、ゴムに代えて、樹脂材料やガラスを用いてもよく、これらの材質が耐薬品性のものであればより好ましい。
バルブ6は、内部流路21,22を有している。また、バルブ6は、バルブ本体23と、このバルブ本体23から突出する複数、例えば、3つのニップル24,25,26とを有している。
【0025】
内部流路21,22は、バルブ本体23の内部と、3つのニップル24,25,26の内部とに形成されており、各ニップル24,25,26がポートとして機能する。内部流路21は、ニップル24とニップル25とを互いにつないでいる。内部流路22は、ニップル25とニップル26とを互いにつないでいる。
バルブ本体23は、箱形状をなしている。図示しないが、バルブ本体23の内部には、内部流路21,22を切り換えることで開閉するための弁機構や、この弁機構を駆動する駆動機構としてのソレノイドおよびバネが設けられている。
【0026】
バルブ6は、第1基板11の裏面14側に配置されており、3つの貫通孔7,8,9に挿入されて貫通孔7,8,9に結合している。
具体的には、貫通孔7,8,9は、裏面14において所定間隔で一直線上に並んで配置されており、ニップル24,25,26も、貫通孔7,8,9と同じ所定間隔で一直線上に並んでいる。バルブ本体23が第1基板11の裏面14に密着した状態で、各ニップル24,25,26が対応する貫通孔7,8,9に嵌合し、これにより、バルブ6がチップ本体5に着脱可能に連結されている。なお、バルブ本体23とチップ本体5とを、図示しない固定部材としてのねじ部材や接着剤を用いて固定してもよい。
【0027】
バルブ6では、ソレノイドの通電状態を切り換えることで、内部流路21,22の開閉が切り換えられる。例えば、ソレノイドが通電状態のときには、内部流路21が流通可能(開状態)とされ、内部流路22が流通不能とされる。このとき、内部流路21を介してマイクロ流路2,3が互いに連通し、内部流路22のニップル26につながるマイクロ流路4が閉状態とされる。ソレノイドが非通電状態のときには、内部流路22が流通可能(開状態)とされ、内部流路21が流通不能とされる。このとき、内部流路22を介してマイクロ流路3,4が互いに連通し、内部流路21のニップル24につながるマイクロ流路2が閉状態とされる。
【0028】
なお、バルブ6の動作としては、ソレノイドの通電状態が逆のときに、内部流路21,22の前述の開閉状態が達成されるようにしてもよい。
各ニップル24,25,26と対応する貫通孔7,8,9との嵌合状態は、それぞれ同様である。以下では、ニップル24と貫通孔7とを例に説明する。
図3は、バルブ6のニップル24と、チップ本体5の貫通孔7の周辺部分の拡大図であり、一部を断面で示している。
【0029】
ニップル24は、バルブ本体23から所定長さで突出した略円筒形の筒状部材であり、管継手として機能する。また、ニップル24は、突出方向の中間部に、径方向に拡径した拡径部27を抜け止めとして有している。なお、拡径部27は、突出方向の中間部に設けられる場合を図示しているが、突出方向の先端に設けられてもよい。
貫通孔7は、ニップル24が嵌合されていない状態のときに、深さ方向についてニップル24の対応する部分の外径よりも小さい内径で形成されている。これにより、ニップル24は、貫通孔7に嵌合された状態で弾力的に締め付け状態とされる。
【0030】
このように、ニップル24が拡径部27を有することにより、ニップル24が貫通孔7から不用意に脱落することが防止される。
さらには、このニップル24が貫通孔7に締め付け状態で嵌合することにより、ニップル24が貫通孔7から不用意に脱落することがより一層確実に防止される。
また、貫通孔7の内形状は、ニップル24の外形状に応じた形状をなしており、具体的には、深さ方向の中間部に、内径が拡径された拡径部28を有している。このように、貫通孔7の内形状が、ニップル24の拡径部27に応じた形状を有することにより、ニップル24が貫通孔7から不用意に脱落することがより一層確実に防止される。
【0031】
なお、貫通孔7としては、拡径部28を有する形状には限定されない。例えば、深さ方向に一定内径で真直に延びるストレート孔であってもよい。この場合は、貫通孔7の内周面が弾性変形することで、拡径部27付きのニップル24と嵌合できる。
貫通孔7,8,9が形成される部材である第1基板11の弾性材料がゴムを含むことにより、ゴムの弾性を利用して、貫通孔7,8,9とバルブ6との間を確実に封止することができる。
【0032】
また、第1基板11のゴムが、前述した耐薬品性に優れたゴムを含む場合には、マイクロ流路チップ1の耐薬品性を向上するのに好ましく、さらに、耐薬品性に優れたゴムからなるものを利用するのが、より一層好ましい。
また、第2基板12が、耐薬品性に優れた材質で形成されるのが、マイクロ流路チップ1の耐薬品性を向上するのに好ましい。
【0033】
また、バルブ6は、電磁バルブであるので、実用性を高めることができる。また、ニップル24と貫通孔7とにより、電磁バルブ6を容易に着脱できる。
また、バルブ6は、3つのマイクロ流路2,3,4および貫通孔7,8,9に対応した3方電磁バルブである。これにより、3つのマイクロ流路2,3,4のうちで、マイクロ流路2,3が連通した状態と、マイクロ流路3,4が連通した状態とを切り換えることができる。また、これらの流路の開閉機能を実現するためのバルブ6が1つで済む。従って、マイクロ流路チップ1を用いるシステム全体の構造を簡素化できる。
【0034】
このマイクロ流路チップ1は、液体、気体等の流体の流路での流れを制御する各種機器に適用可能であり、例えば、医療用測定装置30に適用できる。
図4は、マイクロ流路チップ1を含む医療用測定装置30における流路の概略構成図である。
図4を参照して、医療用測定装置30は、マイクロ流路チップ1と、このマイクロ流路チップ1に配管31を介して液体(例えば、薬液。以下の各薬液ボトル内の液体も同様である。)を流出可能な薬液ボトル32と、マイクロ流路チップ1に配管33を介して液体を流出可能な薬液ボトル34と、マイクロ流路チップ1から配管35を介して液体を流入可能な測定用セル36とを有している。マイクロ流路チップ1のバルブ6の動作により、薬液ボトル32から液体が測定用セル36に流出する状態と、薬液ボトル34から液体が測定用セル36に流出する状態とを切り換えることができる。
【0035】
また、医療用測定装置30は、マイクロ流路チップ38と、マイクロ流路チップ38に配管39を介して液体を流出可能な薬液ボトル40と、マイクロ流路チップ38に配管41を介して液体を流出可能な薬液ボトル42と、マイクロ流路チップ38から配管43を介して液体を流入可能な測定用セル44とを有している。マイクロ流路チップ38のバルブ6の動作により、薬液ボトル40から液体が測定用セル44に流出する状態と、薬液ボトル42から液体が測定用セル44に流出する状態とを切り換えることができる。
【0036】
また、医療用測定装置30は、マイクロ流路チップ46を有している。マイクロ流路チップ46には、測定用セル36および測定用セル44から液体が配管47,48を介して流入可能とされている。また、マイクロ流路チップ46からは、配管49を介して液体が廃液ボトル50に流出可能とされている。マイクロ流路チップ46のバルブ6の動作により、測定用セル36から液体が廃液ボトル50に流れる状態と、測定用セル44から液体が廃液ボルト50に流れる状態とを切り換えることができる。
【0037】
ここで、マイクロ流路チップ38およびマイクロ流路チップ46は、マイクロ流路チップ1と同様に構成されており、その構成要素にはマイクロ流路チップ1の構成要素と同じ符号を付してある。
このように、医療用測定装置30では、マイクロ流路チップ1,38,46を介して流体としての液体の流れを制御することにより、流れの制御のための構造を簡素化することができる。
【0038】
また、この実施形態について、以下のような変形例を考えることができる。以下の説明では、前述の実施形態と異なる点を中心に説明する。なお、他の構成については、前述した実施形態と同様であり、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
図5は、この発明の第2実施形態のマイクロ流路チップ1Aの斜視図である。図6は、マイクロ流路チップ1Aの分解斜視図である。
【0039】
図5および図6を参照して、マイクロ流路チップ1Aは、3つのマイクロ流路2,3,4が形成されたチップ本体5Aと、バルブ6とを有している。マイクロ流路チップ1Aは、マイクロ流路チップ1と同様に機能する。
チップ本体5Aは、前述したチップ本体5と同様の形状および機能を有し、前述した貫通孔7,8,9を有している。チップ本体5Aは、第1基板11Aおよび第2基板12Aを有し、第1基板11Aの表面13と第2基板12Aの裏面16とを沿わせて互いに密着させて構成されている。また、貫通孔7,8,9は第2基板12Aに貫通して形成されており、バルブ6は第2基板12Aの表面15側に配置されている。
【0040】
第1基板11Aは、第1実施形態の第2基板12と同様の材質で形成できる。第1基板11Aの表面13には、マイクロ流路2,3,4を構成するための3筋(本)の溝17,18,19が形成されているが、貫通孔は形成されていない。また、第1基板11Aには、バルブ6が取り付けられていない。これらの点を除いて、第1基板11Aは、前述の第1基板11と同様に構成されている。
【0041】
第2基板12Aは、第1実施形態の第1基板11と同様の材質で形成でき、弾性材料としてのゴムにより形成されている。貫通孔7,8,9は、第2基板12Aの表面15側から裏面16へ貫通しており、第1基板11Aのそれぞれ対応する溝17,18,19の奥側の端部に連通するようにこれに対向して開口している。この他、第2基板12Aは、前述の第2基板12と同様に構成されている。
【0042】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1,1A,38,46 マイクロ流路チップ
2,3,4 マイクロ流路
6 バルブ(電磁バルブ、3方電磁バルブ)
7,8,9 貫通孔
11,11A 第1基板
12,12A 第2基板
13 表面
14 裏面
15 表面
17,18,19 溝
24,25,26 ニップル
30 医療用測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6