(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ナノ構造体のパターンを、フォトリソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、X線リソグラフィ、自己組織化技術、反応性イオンエッチング、湿式エッチング、膜堆積、スパッタリング、化学蒸着、エピタキシー、電気めっき、ナノインプリントリソグラフィ、及びそれらの組合せからなる群より選択される技術に従って作製することを特徴とする請求項18ないし請求項21のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の様々な実施形態について詳細に説明し、1以上の実施例を以下に示す。各実施例は、説明のために与えられるものであり、本発明を限定するためのものではない。事実、本発明の様々な変更及び変形が、本発明の範囲及び要旨から逸脱することなく行われ得ることは、当業者には明らかであろう。例えば、或る実施形態の一部として説明または図示された特徴を別の実施形態に適用することにより、さらなる別の実施形態を創出することができる。したがって、本発明は、このような変更形態及び変形形態を包含することを意図している。
【0017】
医療デバイスであって、その表面に形成された構造体のパターンを含み、該構造体の少なくとも一部は、ナノメータスケールで形成されているような医療デバイスが開示されている。本明細書で使用される「形成される(fabricated)」なる用語は概して、本発明の医療デバイスの表面に存在するように特別に設計、加工、及び/または構成された構造を指し、デバイスの製造時に偶発的に形成されたにすぎない表面特徴と同じではない。つまり、マイクロニードルの表面には、ナノ構造体の所定のパターンが存在し得る。
【0018】
本発明の医療デバイスは、金属、セラミック、半導体、有機体、ポリマー等、またはそれらの複合材料など、様々な材料から作製され得る。例として、医薬品グレードのステンレス鋼、チタン、ニッケル、鉄、金、スズ、クロム、銅、それらのまたは他の金属の合金、シリコン、二酸化ケイ素、またはポリマーが本発明のデバイスの作製に用いられ得る。一般的に、本発明のデバイスは、本明細書に記載のナノサイズの構造体のパターンを表面上に有することが可能な生体適合性材料から作製される。「生体適合性」なる用語は、一般的に、本発明のデバイスが適用される領域内の細胞または組織に対して実質的に悪影響を及ぼさない材料を指す。また、生体適合性材料は、本発明のデバイスが使用される生物の他の領域において、医療的に望ましくない影響を実質的に引き起こさないという意図もある。生体適合性材料は、合成材料または天然材料であり得る。生分解性材料でもある好適な生体適合性材料のいくつかの例には、乳酸やグリコール酸ポリラクチドなどのヒドロキシ酸のポリマー、ポリグリコリド、ポリラクチド−コ−グリコリド、ポリエチレングリコールを有するコポリマー、ポリ酸無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(バレリアン酸)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)が含まれる。他の適切な材料には、これらに限定しないが、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸、エチレン酢酸ビニール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステルが含まれ得る。本発明のデバイスは、同様に実質的に無孔性または有孔性であり得、デバイスの全体に渡って材料、形状、硬さなどが同一または互いに異なり得、かつ硬い固定または半固定形状を有し得る。
【0019】
使用される物質(材料)にかかわらず、本発明の医療デバイスは、組織との相互作用のために、例えば細胞への生理活性薬剤の送達などに用いられ得る。例えば、組織を構造的に支持するため、組織の一部分または成分を除去するため、その他のために、組織または組織の1若しくは複数の細胞型に薬剤を送達するために本発明の医療デバイスを使用することができる。一実施形態においては、1若しくは複数の皮膚層を透過して物質を輸送するために本発明の医療デバイスを使用することができる。使用中は、本発明のデバイスは、周囲の生物学的成分と相互作用し、細胞間相互作用、エンドサイトーシス、炎症反応などに関連する細胞内及び/または細胞間シグナル伝達を調整または調節(すなわち改変)し得る。例えば、医療デバイス表面のナノトポグラフィと、その周囲の生物学的物質または構造との間の相互作用により、本発明のデバイスは、膜電位、膜タンパク質、及び/または細胞間結合(例えば、タイトジャンクション(密着結合)、ギャップ結合、及び/またはデスモソーム(接着斑))を調整及び/または調節することができる。異物反応や免疫反応を引き起こすことなく、本発明のデバイスを薬剤の経皮送達や物質の取出しに利用することができる。
【0020】
一実施形態では、本発明のデバイスは、マイクロニードルまたはマイクロニードルアレイであるが、当然のことながら、本発明のデバイスはマイクロニードルに限定されるものではない。マイクロニードルは、皮膚、血液脳関門、粘膜組織、血管及びリンパ管、その他などの生物学的バリアを透過して物質を輸送するのに有用であり得る。
図1は、一般的なマイクロニードル経皮デバイス10を示す。図に示すように、デバイス10は、個々のマイクロニードル12のアレイを含む。各マイクロニードル12は、個々のマイクロニードルが破損することなく、生物学的バリアの全体または一部を貫通することができるようなサイズ及び形状に形成されている。マイクロニードルは、
図1のような中実であり得、多孔質であるかまたは中空部分を含み得る。マイクロニードルは、マイクロニードルの方向と平行に延在し、必要に応じて分岐するかまたはマイクロニードルの側部へ出る中空部分、例えばマイクロニードルの全体または一部に渡って延在する円形ボアを含み得る。例えば、
図2は、マイクロニードル14のアレイを示す。各マイクロニードル14は、その側部に、薬剤の皮下位置への送達のために用いられるチャンネル16を有している。例えば、チャンネル16は、チャンネル16を介した薬剤の通過を可能にする接続部を基材15の開口部とチャンネル16との間に形成するように、基材15の開口部と少なくとも部分的に整合されている。
【0021】
チャンネル16(存在する場合)の寸法は、薬剤化合物の毛細管流動を誘起するように特に選択されることができる。毛細管流動は一般的に、流体のチャンネル壁部に対する接着力が液体分子間の凝集力よりも大きい場合に生じる。具体的には、毛細管圧は、チャンネル16の断面寸法に反比例し、かつ、液体の表面張力に該液体のチャンネル形成材料との接触角度の余弦を乗じた値に正比例する。したがって、パッチにおける毛細管流動を促進するために、チャンネル16の断面寸法(例えば、幅や直径など)を選択的に調節することができる。チャンネルの断面寸法を小さくすると、毛細管圧力は大きくなる。例えば、いくつかの実施形態では、チャンネルの断面寸法は約1〜100μm、いくつかの実施形態では約5〜50μm、いくつかの実施形態では約10〜30μmである。チャンネルの断面寸法は、一定であってもよいし、またはチャンネル16の長さに応じて変化してもよい。また、チャンネルの長さも、薬剤化合物の体積、流速、ドウェル時間に応じて変更可能である。例えば、チャンネルの長さは、約10〜800μm、いくつかの実施形態では約50〜500μm、いくつかの実施形態では約100〜300μmであり得る。また、チャンネルの断面積も変更可能である。例えば、チャンネルの断面積は、約50〜1000μm
2、いくつかの実施形態では約100〜500μm
2、いくつかの実施形態では約150〜350μm
2であり得る。さらに、チャンネルのアスペクト比(長さ/断面寸法)は、約1〜50、いくつかの実施形態では約5〜40、いくつかの実施形態では約10〜20の範囲で有り得る。チャンネルの断面寸法(例えば、幅や直径など)及び/または長さがチャンネルの長さに応じて変化する場合、チャンネルのアスペクト比はチャンネルの断面寸法及び/または長さの平均から求めることができる。
【0022】
図示したマイクロニードルの数は、例示目的にすぎないことを理解されたい。マイクロニードルアセンブリに使用されるマイクロニードルの実際の数は、例えば、約500〜10000本、いくつかの実施形態では約2000〜8000本、いくつかの実施形態では約4000〜6000本の範囲であり得る。
【0023】
個々のマイクロニードルは、直線状またはテーパ状のシャフトを有し得る。一実施形態では、マイクロニードルの直径は、マイクロニードルの基部において最大であり、マイクロニードルの先端(遠位端)に向かって先細のテーパをなす。マイクロニードルは、直線状(非テーパ状)部分とテーパ状部分の両方を含むシャフトを有するように作製してもよい。
【0024】
マイクロニードルは、断面が円形または非円形のシャフトを有するように形成してもよい。例えば、マイクロニードルの断面は、多角形(例えば、星形、正方形、三角形)、楕円形、または任意の他の形状であり得る。シャフトは、1若しくは複数のボア及び/またはチャンネルを有し得る。
【0025】
個々のマイクロニードルのサイズは、所望する目標深さや、マイクロニードルが特定種類の組織において破損するのを避けるためのマイクロニードルの強度条件などに応じて最適化され得る。例えば、経皮マイクロニードルの断面寸法は、約10nm〜1mm、または約1〜200μm、または約10〜100μmであり得る。中空ニードルの外径は約10〜100μmで有り得、内径は約3〜80μmで有り得る。ニードルの先端は、一般的に、約1μm以下の半径を有し得る。
【0026】
マイクロニードルの長さは、一般的に、所望用途に依存する。例えば、マイクロニードルは、約1μm〜1mmであり得、例えば、約500μm以下、または約10〜500μm、または約30〜200μmであり得る。
【0027】
マイクロニードルアレイに含まれるマイクロニードルは互いに全て同一である必要はない。マイクロニードルアレイは、長さ、外径、内径、断面形状、ナノ構造化表面、及び/またはマイクロニードル間の間隔が互いに異なる様々なマイクロニードルの組み合わせを含み得る。例えば、マイクロニードルは、長方形または正方形グリッドまたは同心円などの一様な態様で、互いに離間配置され得る。マイクロニードル間の間隔は、マイクロニードルの高さまたは幅や、マイクロニードルを介して送達する薬剤の量または種類などの様々な因子に依存し得る。マイクロニードルの様々な配置を有用であるが、マイクロニードル間の「先端間」間隔が約50μm以上、いくつかの実施形態では約100〜800μm、いくつかの実施形態では約200〜600μmとなる配置が特に有用である。
【0028】
図1を再び参照すると、マイクロニードル12は、基板20上に、該基板に対して垂直にまたは所定の角度をなして保持される(すなわち、マイクロニードルは基板に取り付けられるか、または基板と一体的に形成される)ことができる。一実施形態では、マイクロニードルは、基板に対して垂直に配向されており、かつ基板の単位面積あたり高密度で設けられている。なお、マイクロニードルアレイは、配向方向、高さ、材料、または他のパラメータが互いに異なる様々なマイクロニードルの組み合わせを含み得る。基板20は、金属、セラミック、プラスチックまたは他の材料からなる硬いかまたは柔軟なシートから作製され得る。基板20の厚さは、デバイス10の要求を満たすために様々であり得、例えば、約1000μm以下、いくつかの実施形態では約1〜500μm、いくつかの実施形態では約10〜200μmであり得る。
【0029】
本発明によれば、マイクロニードル表面上に、ナノトポグラフィをランダムまたは規則的なパターンを画定し得る。
図3は、2つの代表的なマイクロニードル22の端部を概略的に示す。マイクロニードル22は、マイクロニードル22を介して薬剤を送達するために用いられる中央ボア24を画定する。マイクロニードル22は、その表面25にナノトポグラフィ26を画定し得る。この特定の実施形態では、ナノトポグラフィ26は、マイクロニードル22の表面25上にランダムなパターンを画定する。
【0030】
マイクロニードルの表面に形成された複数の構造体は、互いに同一であるか、またはサイズ、形状またはそれらの組み合わせが互いに異なり得る。構造体の所定のパターンは、長さ、直径、断面形状及び/または構造体間の間隔が互いに異なる様々な構造体の組み合わせを含み得る。例えば、構造体は、長方形または正方形グリッドまたは同心円などの一様な態様で、互いに離間配置され得る。一実施形態では、構造体はサイズ及び/または形状が互いに異なり、それにより複雑なナノトポグラフィが形成され得る。例えば、複雑なナノトポグラフィは、フラクタルまたはフラクタル様形状を画定し得る。
【0031】
本明細書で用いられる「フラクタル」なる用語は、一般的に、最大スケール(尺度)と最小スケールとの間の全ての測定スケールで或る断片形状を有する幾何学的または物理的構造体であって、該構造体の特定の数学的または物理的性質、すなわち該構造体の次元が、空間次元よりも大きくなるようなものを指す。前記数学的または物理的性質には、例えば、カーブの周長または多孔性媒体における流速が含まれ得る。フラクタルの幾何学的形状は、各々が自己相似性を画定する複数の部分に分割され得る。加えて、フラクタルは、再帰的定義(recursive definition)を有し、任意の小さいスケールにおいて微細構造を含む。
【0032】
本明細書で用いられる「フラクタル様」なる用語は、一般的に、フラクタルの種々の特徴のうちの1若しくは複数を有するが、全ては有していない幾何学的または物理的構造を指す。例えば、フラクタル様構造は、自己相似的である複数の部分を有する幾何学的形状を含み得るが、任意の小さいスケールにおいて微細構造は含まない。別の例では、フラクタル様の幾何学的形状または物理的構造体は、パターンの幾何学的形状を再帰的に繰り返す際にスケールを拡大または縮小するが、フラクタルのように該構造体のスケールを均等に縮小(または拡大)しない。フラクタル様パターンは、フラクタルよりもより単純であり得る。例えば、フラクタル様パターンは、規則的であり、従来のユークリッド幾何学言語で比較的容易に記述され得るが、フラクタルはそうではない。
【0033】
複雑なナノトポグラフィを画定するマイクロニードルの表面は、互いに同じ全体形状を有する構造体(例えば、ピラー)を含むことができ、該ピラーは互いに異なるスケール寸法で形成され得る(例えば、ナノスケールのピラーと、マイクロスケールのピラーが形成され得る)。別の実施形態では、マイクロニードルはその表面に、スケールサイズ及び形状がともに異なるか、または同一のナノサイズスケールに形成されるが形状だけが異なる構造体を含み得る。加えて、構造体は、規則的な配列またはランダムな分布で形成され得る。通常、構造体の少なくとも一部は、例えば約500nm以下、例えば、400nm以下、250nm以下、または100nm以下の断面寸法を画定するナノサイズスケールで形成されたナノ構造体であり得る。ナノ構造体の断面寸法は、通常、約5nm以上、例えば、約10nm以上、または約20nm以上であり得る。例えば、ナノ構造体は、約5〜500nm、約20〜400nm、または約100〜300nmの断面寸法を画定し得る。ナノ構造体の断面寸法が長さに応じて異なる場合、断面寸法は、ナノ構造体の基部から先端までの間の平均として、あるいは構造体の最大断面寸法(例えば、円錐状ナノ構造体の基部の断面寸法)として求めることができる。ナノ構造体の断面寸法がナノ構造体の高さに応じて異なる場合、該断面寸法は、ナノ構造体の基部から先端までの間の平均として、あるいは構造体の最大断面寸法(例えば、円錐状ナノ構造体の基部の断面寸法)として求めることができる。
【0034】
図4は、表面上に形成され得る複雑なナノトポグラフィの一実施形態である。この特定のパターンは、中央の大型ピラー100と、それを取り囲むピラー102、104とを含み、ピラー102、104は、中央大型ピラー100よりも小型であり、規則的なパターンで配置されている。図に示すように、このパターンは、各々互いに同じ全体形状を有するが、水平寸法が互いに異なる、複数のピラーの繰り返しを含む。この特定の複雑なパターンは、連続的に再帰的に繰り返す際にスケールの同一変更を含まないフラクタル様パターンの一例である。例えば、ピラー102は、マイクロ構造体(微細構造体)である大型ピラー100の約3分の1の水平寸法を画定する第1のナノ構造体であるが、ピラー104は、ピラー102の約半分の水平寸法を画定する第2のナノ構造体である。
【0035】
サイズが互いに異なる複数の構造体を含むパターンは、より大きい断面寸法を有するより大型の構造体(例えば、約500nm以上の断面寸法を有するマイクロ構造体)と、より小型の構造体とを含み得る。一実施形態では、複雑なナノトポグラフィのマイクロ構造体は、約500nm〜10μm、約600nm〜1.5μm、または約650nm〜1.2μmの断面寸法を有し得る。例えば、
図4の複雑なナノトポグラフィは、約1.2μmの断面寸法を有するマイクロサイズのピラー100を含む。
【0036】
或るパターンが、例えば約500nm以上の断面寸法(構造体の平均断面寸法または最大断面寸法として測定される)を有する1若しくは複数の大きなマイクロ構造体を含む場合、複雑なナノトポグラフィはまた、サイズや形状などが互いに異なる第1のナノ構造体及び第2のナノ構造体などのナノ構造体を含むことになる。例えば、
図4の複雑なナノトポグラフィのピラー102は約400nmの断面寸法を有し、ピラー104は約200nmの断面寸法を有する。
【0037】
ナノトポグラフィは、任意の数の様々な要素から形成され得る。例えば、要素のパターンは、2つの互いに異なる要素、3つの互いに異なる要素(
図4に示した例)、4つの互いに異なる要素、あるいはそれ以上の互いに異なる要素を含み得る。互いに異なる各要素の繰り返しの相対的比率もまた異なり得る。一実施形態では、或るパターンの最も小さい要素は、より大きい要素よりも多数存在することになる。例えば、
図4のパターンでは、1個のピラー102につき8個のピラー104が設けられており、中央大型ピラー100につき8個のピラー102が設けられている。要素のサイズが大きくなると、一般的に、ナノトポグラフィにおける該要素の繰り返しはより少なくなる。例として、第1の要素の断面寸法が、より大きな第2の要素の断面寸法の約0.5(例えば、0.3〜0.7)倍である場合、トポグラフィ内に、第1の要素は第2の要素の約5倍以上の数で存在し得る。第1の要素の断面寸法が、より大きな第2の要素の断面寸法の約0.25(または約0.15〜0.3)倍である場合、トポグラフィ内に、第1の要素は第2の要素の約10倍以上の数で存在し得る。
【0038】
個々の要素間の間隔も様々であり得る。例えば、個々の構造体間の中心間距離は、約50nm〜1μm、例えば約100nm〜500nmであり得る。例えば、構造体間の中心間距離は、ナノサイズスケールであり得る。例えば、ナノサイズ構造の間隔について考えると、構造体間の中心間距離は約500nm以下であり得る。しかし、このことはトポグラフィの必須要件ではなく、個々の構造体は互いにもっと離れていてもよい。構造体間の中心間距離は、構造体のサイズに応じて異なり得る。例えば、2つの互いに隣接する構造体の平均断面寸法の、該2つの構造体の中心間距離に対する比率は、約1:1(例えば接触状態)〜1:4、約1:1.5〜1:3.5、または約1:2〜1:3であり得る。例えば、中心間距離は、2つの互いに隣接する構造体の平均断面寸法の約2倍であり得る。一実施形態では、各々約200nmの断面寸法を有する2つの互いに隣接する構造体は、約400nmの中心間距離を有し得る。したがって、この場合、平均直径の中心間距離に対する比率は1:2である。
【0039】
構造体間の間隔は、同一、すなわち等距離にしてもよいし、または、パターン内で構造体によって異なるようにしてもよい。例えば、或るパターンにおいて最も小さい構造体を第1の距離だけ互いに離間させ、該パターンの最も小さい構造体とより大きい構造体との間の距離、または2つのより大きい構造体間の距離を第1の距離と同一にしてもよいし、第1の距離と異ならせてもよい。
【0040】
例えば、
図4のパターンでは、最も小さい構造体104同士の中心間距離は約200nmである。より大きいピラー102とそれを取り囲むピラー104との間の中心間距離は、約100nm以下である。最大ピラー100とそれを取り囲む各ピラー104との間の中心間距離は、最も小さいピラー104同士の中心間距離よりも小さく、約100nmである。当然ながら、これは必須ではなく、全ての構造体は互いに対して等距離で離間配置されていてもよいし、または任意の互いに異なる距離で離間配置されていてもよい。一実施形態では、別個の構造体が、例えば後述するように互いに積層するように、互いに対して接触して配置されるか、または、互いに隣接して接触するように配置され得る。
【0041】
或るトポグラフィの構造体は全て同じ高さ、概ね約10nm〜1μmで形成され得る。しかし、これは必須ではなく、或るパターンの個々の構造体は、一次元、二次元、三次元において様々なサイズであり得る。一実施形態では、或るトポグラフィの構造体の一部または全体は、約20μm以下、約10μm以下、または約1μm以下、例えば、750nm以下、680nm以下、または500nm以下の高さを有し得る。例えば、構造体は、約50nm〜20μm、または約100nm〜700nmの高さを有することができる。例えば、ナノ構造体またはマイクロ構造体は、約20〜500nm、約30〜300nm、または約100〜200nmの高さを有することができる。なお、これらの構造体は、断面寸法においてナノサイズであり得、マイクロサイズスケール(例えば500nm以上)の高さを有し得ることを理解されたい。マイクロサイズの構造体は、同一のパターンのナノサイズ構造体と互いに同一または異なる高さを有することができる。例えば、マイクロサイズ構造体は、別の実施形態では、約500nm〜20μm、または約1〜10μmの高さを有することができる。マイクロサイズ構造体は、約500nm以上のマイクロスケールの断面寸法を有することもでき、約500nm以下のナノサイズ寸法の高さを有し得る。
【0042】
構造体のアスペクト比(構造体の高さの断面寸法に対する比)は、約0.15〜30、約0.2〜5、約0.5〜3.5、または約1〜2.5であり得る。例えば、ナノ構造体は、これらの範囲内に入るアスペクト比を有し得る。
【0043】
本発明のデバイスの表面は、
図4に示すような1種類のパターン、または、互いに同一または異なるパターンの複数の繰り返しを含み得る。例えば、
図5は、表面全体に渡って
図4のパターンの複数の繰り返しを含む表面パターンを示す。
【0044】
マイクロニードルの表面にナノトポグラフィを形成すると、マイクロニードルの体積を増大させることなく、マイクロニードルの表面積を増大させることができる。体積に対する表面積の比率(表面積対体積比)を高めると、マイクロニードルの表面とその周囲の生体物質との間の相互作用を向上させることができると考えられる。例えば、表面積対体積比を高めると、ナノトポグラフィとその周囲のタンパク質(例えば、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質及び/または原形質膜タンパク質)との間の物理的相互作用を向上させると考えられる。
【0045】
一般的に、本発明のデバイスの表面積対体積比は、約10,000cm
−1以上、約150,000cm
−1以上、または約750,000cm
−1以上であり得る。表面積対体積比は、当該技術分野で公知の任意の標準的な手法に従って求めることができる。例えば、マイクロニードル表面の比表面積は、吸着ガスとして窒素を使用した物理的気体吸着法(BET法)によって求めることができる。このことは当該技術分野では公知であり、非特許文献6に記載されている。非特許文献6は、引用を以て本明細書の一部となす。BET面積は、約5m
2/g以下であり、一実施形態では、例えば、約0.1〜4.5m
2/g、または約0.5〜3.5m
2/gであり得る。また、表面積及び体積の値は、マイクロニードル表面を形成するのに使用したモールドの形状から、標準的な幾何学的計算法に従って推測することもできる。例えば、体積は、各パターン要素の体積の計算値と、所定領域(例えば、1本のマイクロニードルの表面)におけるパターン要素の総数とから推定することができる。例えば、体積は、各パターン要素の体積の計算値と、所定領域(例えば、1本のマイクロニードルの表面全体)におけるパターン要素の総数とから推定することができる。
【0046】
表面において複雑なパターンナノトポグラフィを画定するデバイスの場合は、ナノトポグラフィは、前記パターンのフラクタル次元の測定により特徴付けられ得る。フラクタル次元は、再帰的な繰り返しを続けてスケールがだんだん小さくなるに従ってフラクタルがどのくらい完全に空間を満たすかを示す指標となる統計的量である。2次元構造のフラクタル次元は、次式で表すことができる。
【0048】
ここで、N(e)は、物体を各空間方向に1/eだけ縮小したときに物体全体を覆うのに必要な自己相似的な構造体の数である。
【0049】
例えば、シェルピンスキーの三角形(正三角形の各辺の中点を互いに結んでできた三角形を切り取る)として知られている
図6に示す2次元フラクタルを考える場合、フラクタル次元は以下のように計算される。
【0051】
したがって、シェルピンスキーの三角形のフラクタルは、最初の2次元の正三角形よりも線長が増加する。加えて、このような線長の増加は、面積の増加を伴わない。
【0052】
図4に示したパターンのフラクタル次元は、約1.84である。一実施形態では、本発明のデバイスの表面のナノトポグラフィは、約1以上、例えば、約1.2〜5、約1.5〜3、または約1.5〜2.5のフラクタル次元を示し得る。
【0053】
図7の(A)及び(B)は、複雑なナノトポグラフィの別の例の拡大図である。
図7の(A)及び(B)のナノトポグラフィは、基板上に位置する繊維様ピラー70のアレイを含む。各ピラーの遠位端において、ピラーは複数のより小さい繊維60に分かれる。このようなより小さい繊維60の遠位端において、各繊維はまたも複数の細繊維に分かれる(
図7の(A)及び(B)では見えない)。表面上に形成された約1以上のアスペクト比を有する構造体は、
図7の(A)及び(B)に示した構造体のように柔軟であってもよいし、硬くてもよい。
【0054】
図7の(C)及び(D)は、複雑なナノトポグラフィの別の例を示す。この実施形態では、円形の中空貫通部71を各々有する複数のピラー72が基板上に形成されている。各中空ピラー72の遠位端には、複数のより小型のピラー62が形成されている。図に示すように、
図7の(C)及び(D)のピラーは、硬さ及び直立配向を維持している。加えて、また従来のパターンとは対照的に、この実施形態の小型ピラー62は、より大型のピラー72とは形状が異なる。具体的には、小型ピラー62は、中空ではなく中実である。このように、互いに異なるスケールに形成された構造体を含むナノトポグラフィは、全ての構造体が同じ形状に形成されている必要はなく、スケールが互いに異なる構造体は、サイズ及び形状の両方において互いに異なっていてもよい。
【0055】
図8は、本発明のデバイスの表面に形成され得るナノサイズ構造体を含む別のパターンを示す。図に示すように、この実施形態では、個々のパターン構造体は、同一の全体サイズで形成され得るが、配向及び形状は互いに異なり得る。
【0056】
上記した方法に加えて、またはその代わりに、或る表面を、表面粗さ、弾性率、表面エネルギーなどを含むがこれに限定されない他の方法によって特徴付けすることができる。
【0057】
表面粗さを求めるための方法は、当該技術分野では周知である。例えば、或る材料の表面粗さを求めるために、標準的技法に従って原子間力顕微鏡法を接触モードまたは非接触モードで用いることができる。マイクロニードルを特徴付けするために用いることができる表面粗さには、平均粗さ(RA)、二乗平均平方根粗さ、歪度及び/または尖度が含まれ得る。一般的に、表面上に作製されたナノトポグラフィを画定する該表面の平均表面粗さ(表面の算術平均高さは、ISO 25178シリーズで規定された粗さパラメータである)は、約200nm以下、約190nm以下、約100nm以下、または約50nm以下であり得る。例えば、平均表面粗さは、約10〜200nm、または約50〜190nmであり得る。
【0058】
本発明のデバイスは、ナノパターニングされた表面の弾性率によって、例えば、或る表面にナノトポグラフィに追加した場合の弾性率の変化によって、特徴付けることができる。一般的に、ナノトポグラフィを形成する複数の構造体をマイクロニードルの表面に追加すると、材料の弾性率を減少させることができるが、それは、ナノサイズ構造体を表面に追加すると、該表面の連続性の減少及びそれに関連する表面積の変化をもたらすことになるためである。表面にナノトポグラフィを有するマイクロニードルは、同じ材料から同じ方法によって形成された、表面にナノトポグラフィパターンを有していないこと以外は同様のマイクロニードルと比べると、約35〜99%、例えば約50〜99%、または約75〜80%の弾性率の低下を示し得る。例として、ナノパターニングされた表面の有効圧縮弾性率は、約50MPa以下、または約20MPa以下であり得る。一実施形態では、有効圧縮弾性率は、約0.2〜50MPa、約5〜35MPa、または約10〜20MPaであり得る。有効剪断率は、約320MPa以下、または約220MPa以下であり得る。例えば、有効剪断率は、一実施形態では、約4〜320MPa、または約50〜250MPa以下であり得る。
【0059】
また、表面にナノトポグラフィを有するマイクロニードルは、表面にナノトポグラフィのパターンが画定されていない同様のマイクロニードルと比べると、表面エネルギーの増加を示し得る。例えば、表面にナノトポグラフィを有するマイクロニードルは、同じ材料から同じ方法によって形成された、表面にナノトポグラフィパターンを有していないこと以外は同様のマイクロニードルと比べると、表面エネルギーの増加を示し得る。例えば、ナノトポグラフィを有する表面の水接触角は、約80°以上、約90°以上、約100°以上、または約110°以上であり得る。例えば、表面の水接触角は、一実施形態では、約80〜150°、約90〜130°、または約100〜120°であり得る。
【0060】
本発明のデバイスの表面にナノ構造体を形成する場合、構造体の充填密度は最大限にされ得る。例えば、基板上に要素をパターニングするのに、正方充填(
図9の(A))、六方充填(
図9の(B))、またはそれらの変形例が用いられ得る。断面積がA、BまたはCのサイズが互いに異なる複数の要素をマイクロニードル上に互いに隣接するように配置するパターンをデザインする場合は、
図9の(C)に示すような円充填が用いられ得る。当然ながら、様々な充填密度及びそれに関連する表面特徴の改変の決定は、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0061】
使用中、マイクロニードルデバイスは、皮膚結合組織の1若しくは複数の成分と相互作用し得る。結合組織は、他の種類の組織、すなわち、上皮、筋肉及び神経組織を支持するフレームワークである。結合組織は、一般的に、ECM内に保持された個々の細胞を含む。ECMは、基質(例えば、骨のミネラル、血漿など)と、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンなどを含む線維成分とを含む。結合組織は、線維成分がなく基質が流体である血液から、皮膚に見られるような、細胞外線維(例えば、コラーゲン)を比較的多く含み、他の結合組織成分をほとんど含まないであろう高密度結合組織まで、広く多岐にわたる構造を想定し得る。皮膚には多くの特殊化した種類の結合組織があり、その一例は弾性組織である。弾性組織の主成分は弾性線維であり、コラーゲンやプロテオグリカンなど他の種類の結合組織によく見られる要素の量はごく僅かであり得る。
【0062】
マイクロニードル表面のナノトポグラフィは、マイクロニードルと送達領域の皮膚結合組織の生物学的成分との相互作用を向上させることができる。例えば、経皮デバイスのマイクロニードルは、ECMタンパク質及び/または個々の細胞、例えば、ケラチノサイト、有棘層のランゲルハンス細胞または基底層の未分化基底細胞などと直接相互作用し得る。真皮の成分、例えば毛細血管床の血球にアクセスするために、経皮デバイス上のニードルを長くしたものを用いることができる。経皮デバイスと該デバイスが適用される場所またはその近隣(局所)の生物学的成分との相互作用を向上させることで、周囲組織は異物反応を示しにくくなり得るので、それにより、局所炎症を減少させ、活性薬剤の送達を向上させることができる。一実施形態では、本発明のデバイスは、薬剤送達において積極的な役割を果たすことができる。例えば、ナノトポグラフィと周囲の生物学的成分との相互作用は、例えば顆粒層におけるタイトジャンクションの開口を介しての、高分子量物質の送達を促進することができる。
【0063】
如何なる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、ナノトポグラフィは、2つの機序を通じて生物学的成分との相互作用の向上を促進すると考えられている。1つの機序によれば、ナノトポグラフィは、マイクロニードルが或る送達部位においてECMを模倣する能力を促進することができる。例えば、マイクロニードルのナノトポグラフィは、或る送達部位において基底膜の1若しくは複数の成分を模倣することができる。使用中に、細胞は、マイクロニードルのナノトポグラフィに接触し、ナノトポグラフィが模倣する天然の構造体(例えば、基底膜タンパク質)との通常の接触に同様に反応し得る。従って、本発明のデバイスは、細胞と直接相互作用することにより、細胞挙動、例えば、細胞シグナル伝達を調整または調節(すなわち改変)することができ、それによって、天然バリアを透過しての薬剤の送達を向上させるとともに、デバイスによって送達される薬剤のエンドサイトーシスを向上させる。
【0064】
第2の機序によれば、ナノトポグラフィは、局所の結合組織の非細胞生物学的成分(ECMタンパク質など)と相互作用し得る。例えば、ECMタンパク質は、マイクロニードルの表面に吸着または脱着され得る。ECMタンパク質の吸着/脱着は、局所環境の化学的性質を変えることができ、結果として細胞挙動の変化をもたらし得る。この第2の機序によれば、本発明のデバイスは、細胞の挙動に間接的に影響を及ぼすことができる。例えば、デバイスの表面における1若しくは複数のECMタンパク質の吸着は、細胞内及び/または細胞間シグナル伝達を間接的に調整または調節することができる。
【0065】
周囲の生物学的成分との相互作用を向上させることにより、本発明のデバイスは、送達薬の取り込みを向上させ得る。例えば、ナノトポグラフィのパターンを有するデバイスを使用することにより、タンパク質治療薬の薬物動態(PK)プロファイル(すなわち、上皮膜を介した吸収プロファイル)を向上させることができる。例として、100Daを超える分子量、例えば、約20〜200kDa、または約150kDaの分子量を有するタンパク質治療薬を、表面上にナノトポグラフィが画定されたパッチを介して、経皮的に送達することができる。一実施形態では、パッチを用いて、例えば、約200〜500μL、または約250μLの単一用量のタンパク質治療薬を送達することができる。皮膚への経皮パッチの貼付後、該パッチを貼り付けられた者(レシピエント)は、投与から約1〜4時間以内に、パッチ面積の1cm
2あたり、治療薬1mlあたり、最大で約500〜1000ng、例えば約750〜850ngの血清濃度の急激な上昇を反映したPKプロファイルを示し得る。この血清濃度の初期の急激な上昇は、皮膚バリアを透過して治療薬が急激に取り込まれたことを反映するものであり、その後、約20〜30時間(例えば約24時間)で、治療薬の血清濃度は無視できるほどの濃度までゆるやかに下降し得る。さらに、送達された治療薬の急速な取り込みは、炎症をほとんどまたは全く伴わずに行うことができる。特に、経皮バリアを透過しての薬剤の送達を向上させることに加えて、本発明のデバイスは、異物反応及び他の望ましくない反応(例えば炎症反応)を抑えることもできる。従来公知のデバイス、例えば、皮膚接触面にナノトポグラフィが画定されていない経皮パッチを使用すると、局所的な炎症または刺激が生じることが多い。
【0066】
ナノトポグラフィの構造体は、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチンなどの、1若しくは複数のECMタンパク質を模倣しかつ/またはECMタンパク質と相互作用することができる。これにより、細胞膜タンパク質を、立体構造、自由エネルギー、局所密度などの1若しくは複数の特性に関して、直接または間接的に改変することができる。例示的な細胞膜タンパク質には、これらに限定しないが、インテグリン、ビンキュリンまたは他の接着斑タンパク質、クラスリン、Gタンパク質共役受容体などの膜受容体などが含まれる。この改変は、細胞表面で、及び/または細胞骨格を通して下流効果によって細胞内で、及び細胞質内で、変化を誘発し得る。
【0067】
本発明のデバイスは、表面におけるタンパク質吸着のおかげで直接または間接的に局所環境をより良好に模倣することができるので、デバイスを囲繞する局所領域内の細胞は、抗炎症性微小環境を維持することができる。それゆえ、本発明のデバイスを用いて、異物反応または免疫反応を伴わずに、物質を送達することができる。
【0068】
マイクロニードルの存在によって直接または間接的に影響され得る具体的な細胞型には周囲皮膚結合組織の細胞が含まれる。例えば、ナノトポグラフィを画定するマイクロニードル表面を、異物反応または免疫反応誘発することなく、ランゲルハンス細胞、マクロファージ(大食細胞)及び/またはT細胞を含む或る領域に位置させることができる。ランゲルハンス細胞は、抗原を取り込んで処理することで、完全に機能的な抗原提示細胞になることができる。マクロファージ及びT細胞は、免疫反応の開始及び維持における中心的役割を果たす。例えばランゲルハンス細胞を介して病理学的または免疫原性の刺激によって活性化されると、T細胞は、IL−2、IL−4、INF−γ及び他の炎症性サイトカインを放出し得る。マクロファージは、TNF−α、IL−1、IL−8、IL−11、IL−12、一酸化窒素、IL−6、GM−CSF、G−CSF、M−CSF、IFN−α、IFN−βなどを含む多くの炎症メディエータを放出することによって、炎症反応を引き起こす。放出されたサイトカインは他の免疫細胞を活性化し、一部のサイトカインは独立した細胞毒性薬として作用することもできる。マクロファージ及びT細胞由来の炎症メディエータが過剰に放出されると、正常細胞及び周囲組織を傷害することがある。
【0069】
如何なる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、ナノパターニングされた基板との相互作用を介して、個々の細胞において特定のケモカインを含む特定のサイトカイン(例えば、特定のケモカイン)の生成が上方制御または下方制御され得ると考えられる。発現プロファイルをそのように改変することにより、薬剤送達デバイスに対する細胞応答を最小限に抑えることができる。例えば、1若しくは複数の抗炎症性サイトカインの上方制御及び/または1若しくは複数の炎症性サイトカインの下方制御によって、炎症反応及び/または異物反応を最小限に抑えることができる。多くのサイトカインが、炎症への影響に照らして特徴付けられている。発現細胞がナノトポグラフィを有するデバイスの存在の影響を受けたときに発現プロファイルを改変できることが明らかになっている炎症性サイトカインには、これらに限定しないが、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12、IL16、MIG、MIP−1α、MIP−1β、KC、MCP−1、TNF−α、GM−CSI、VEGFなどが含まれ得る。発現プロファイルを改変できることが明らかになっている抗炎症性サイトカインには、これらに限定しないが、IL−1ra、IL−4、IL−10、IL−13などが含まれ得る。発現プロファイルを改変できることが明らかになっている、異物反応に関連するサイトカインには、これらに限定しないが、IL−4、IL−10、IL−13などが含まれ得る。
【0070】
一酸化窒素は、炎症反応のメディエータ及びレギュレータとして認識されている。局所環境に影響を与えることによって、マイクロニードルは、周囲細胞からの一酸化窒素の放出を制限することができる。このことは有益であろう。というのも、一酸化窒素は、送達される活性薬剤に向けて毒質を持つことができ、患者(被験体)の自身の組織に悪影響を及ぼすこともあるからである(非特許文献7)。一酸化窒素は、分子酸素及びスーパーオキシドアニオンと相互作用することにより、様々な細胞機能を変更し得る活性酸素種(ROS)を産生することもできる。これらの一酸化窒素の間接的効果は、炎症において重要な役割を果たす;ここで、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)によって一酸化窒素を大量に産生することができ、活性化された炎症細胞によってROSを合成することができる。
【0071】
一酸化窒素は、ケラチノサイト、線維芽細胞、内皮細胞、及び場合によりその他のものによって産生されることができ、これらのどれもが、マイクロニードルのナノトポグラフィによって直接または間接的に影響され得る。マイクロニードル表面のナノトポグラフィによって提供され得る一酸化窒素合成の阻害は、創収縮に影響し、コラーゲン組織を変化させ、かつ新生表皮(neoepidermis)厚さを変えることができる。創傷治癒過程での血管形成及びマスト細胞の遊走もまた、一酸化窒素の阻害に影響され得る。調整経路を変えることができるので、そして如何なる特定の理論にも拘束されるものではないが、本発明のデバイスは、一酸化窒素の産生を増加させかつ/または一酸化窒素の分解を遅らせることができる一方で、別の実施形態では、本発明のデバイスは、一酸化窒素の産生を減少させかつ/または一酸化窒素の分解を促進することができる。
【0072】
本発明のデバイスと表皮の層または細胞ネットワークの構成要素との相互作用により、表皮内の細胞間結合の構造を調節(すなわち改変)することができる。細胞内結合は、タイトジャンクション(密着結合)、ギャップ結合、及びデスモソーム(接着斑)からなる群から選択される少なくとも1つの結合であり得る。例として、顆粒層のタイトジャンクションの開口を生じさせ、それによって活性薬剤(1つの特定の実施形態では、高分子量の活性薬剤)の表皮を透過しての送達を向上させるように、生物学的成分とナノトポグラフィの構造体との間の相互作用により、細胞ネットワークのタンパク質を調節することができる。
【0073】
本発明のデバイスのナノトポグラフィは、ECMの1若しくは複数の成分を模倣しかつ/または吸着させることができる。一般に、ECMは、間質マトリックス及び基底膜の両者を含む。間質マトリックスは、タンパク質の複合混合物、プロテオグリカン及び、骨の場合にはミネラル沈着物からなる。基底膜は、基底板及び網状板の両者を含み、上皮及び内皮を固着及び支持する。ECMの個別の組成は、個別の組織の種類によって異なり得るが、通常は、様々なコラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン及びエラスチンを含むことになる。それゆえ、本発明のデバイスのナノトポグラフィは、特定位置の成分と相互作用するように設計することができ、あるいはより一般的には、例えばほとんどの皮膚に共通している皮膚構造の成分と相互作用するように設計することができる。
【0074】
ナノトポグラフィの構造体はコラーゲンと相互作用することができ、コラーゲンは、皮膚のECMにおいて見られるよくある基底膜タンパク質である。コラーゲンは、全ての動物において見られる不溶性の細胞外糖タンパク質であり、人体で最も豊富なタンパク質である。コラーゲンは、軟骨、骨、腱、靱帯、筋膜及び皮膚を含む大部分の結合組織の必須構成成分である。これまでに、ヒトにおいて19種類のコラーゲンが見つかっている。主要な型には、腱、靱帯及び骨の主成分であるI型と、軟骨におけるタンパク質の50%以上に相当し、また、脊椎動物の胚の脊索を構築するために用いられるII型と、動脈、腸、子宮のような中空構造体の壁を強化するIII型と、上皮の基底板を形成するIV型とが含まれる。IV型コラーゲンのネットワークは、毛細血管及び腎臓糸球体のためのフィルタを提供する。その他の15種類のコラーゲンは、それほど豊富ではないが、それでもなおECMの機能に重要である。
【0075】
コラーゲンの基本単位は、大抵はパターンGly-Pro-YまたはGly-X-Hypに従うポリペプチドであり、ここで、X及びYは様々な他のアミノ酸残基の任意のものであってよい。得られたポリペプチドは、ねじれて長寸の左巻きへリックス(らせん)になる。合成されたとき、ポリペプチドのN末端及びC末端は、分子を可溶性状態に保つ球状ドメインを有する。
【0076】
本明細書において、「ポリペプチド」なる用語は、一般的に、アミノ酸の分子鎖を指し、産物の特定の長さを指すものではない。それゆえ、ペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質は、ポリペプチドの定義に含まれる。この用語はまた、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、その他などの発現後修飾を受けたポリペプチドを含むよう意図されている。本明細書において、「タンパク質」なる用語は、一般的に、構造的に、酵素的に、または別な方法で、他のタンパク質、ポリペプチドあるいは任意の他の有機または無機分子と相互作用することができるアミノ酸の分子鎖を指す。
【0077】
本明細書全体にわたって、下表1に記載の慣用的なアミノ酸略記号を用いる。
【0079】
トロポコラーゲンは、フィブリルなどのより大きなコラーゲン凝集体のサブユニットである。トロポコラーゲンは、長さ約300nn、直径1.5nnで、3つのポリペプチド鎖で構成されており、各ポリペプチド鎖は左巻きへリックス構造を有する。
【0080】
本発明のデバイス表面のナノトポグラフィは、コラーゲンのみならずトロポコラーゲンとも相互作用しかつ/または模倣することができる。一実施形態では、ナノトポグラフィは、より複雑であり得、ナノスケールのトロポコラーゲン及びマイクロスケールのコラーゲンの両者を模倣しかつ/または相互作用することができる。例えば、ナノトポグラフィのより大きな構成要素は、トロポコラーゲンの3つの左巻きヘリックスを模倣することができ、これらのヘリックスは、互いにねじれ合って、右巻きコイルドコイル、トリプルへリックス(三重らせん)または「スーパーへリックス(超らせん)」(多数の水素結合によって安定化された協同4次構造)になる。I型コラーゲン及び全てのコラーゲンではないにしても場合によっては全ての線維性コラーゲンとともに、各トリプルへリックスは互いに結合してコラーゲンミクロフィブリルと呼ばれる右巻きスーパースーパーコイルになる。各ミクロフィブリルは、隣接するミクロフィブリルと互いに指を組むように組み合わされている。いくつかのコラーゲン(例えばII型)では、ミクロフィブリルを構成する3つのポリペプチドは同一である。他のコラーゲン(例えばI型)では、1種類の2つのポリペプチド(遺伝子産物)が、第2の、類似しているが異なるポリペプチドと会合する。
【0081】
ラミニンは、別のよくある皮膚基底膜タンパク質であり、本発明のデバイスが適用される場所またはその近隣において見られ得る。ラミニンは、異なるα、β及びγサブユニット鎖の様々な組合せから形成されるヘテロ三量体タンパク質複合体のファミリーのうちの1つである。ラミニンは一般に、主としてECMの基底膜において見られ、他のマトリックス高分子と相互作用することにより、細胞の分化、運動及び維持に寄与し得る。異なるラミニン鎖α−1ないしα−5、β−1ないしβ−3、γ−1ないしγ−3は、理論的には多くの異なるアイソフォームを形成し得るが、可能なアイソフォームのうちのたった15個の存在しか確認されていない。
【0082】
ラミニンは、3つの短腕及び1つの長腕を含む十字架構造をなしている。3つの短腕は、他のラミニン分子への結合に特に長けており、基底膜においてシートを形成する。長腕は一般的に細胞結合場所であり、細胞膜及び他のECM分子に結合し、これは、構築された組織細胞を上記膜に固着させるのに役立つ。
【0083】
ラミニンは、固有の幾何学構造を有するサブドメインをさらに含む。例えば、ラミニン−332α3鎖の末端部分に存在するGドメインは、5つのサブドメインG1、G2、G3、G4、G5にさらに分けられる。ラミニン−332α3鎖のGサブドメインは、細胞表面上に特定の受容体インテグリンを有する細胞へのラミニン−332の接着に必要であることが証明されている。従って、ナノトポグラフィのナノサイズ構造体は、ラミニンの1若しくは複数のサブドメインを模倣し得る。より複雑なパターンにおいては、これらのナノサイズ構造体を、ラミニンタンパク質全体を模倣し得るより大きな構造体と結合させることができる。ナノトポグラフィは、同様に、または二者択一的に、ラミニンを吸着/脱着させ、それによって局所環境に影響を及ぼすことができる。
【0084】
ナノトポグラフィは、フィブロネクチンと相互作用することができ、フィブロネクチンは、組織修復、胚形成、血液凝固、細胞遊走及び細胞接着に関与する。ECMにおいて、フィブロネクチンは不溶性の糖タンパク質二量体として存在する。フィブロネクチンの構造は、棒状であり、3つの異なる種類の相同の繰り返しモジュールであるI型、II型及びIII型からなる。これらのモジュールは、全てが同じアミノ酸鎖の一部であるが、通常は、1つ1つが両隣と短いリンカーによって連結されている「糸につないだビーズ(beads on a string)」として想定される。
【0085】
12のI型モジュールが、タンパク質のアミノ末端及びカルボキシ末端領域を構成し、主としてフィブリン及びコラーゲン結合に関与する。フィブロネクチンには、2つのII型モジュールのみが含まれている。これらは、コラーゲンの結合に関与する。フィブロネクチンにおいて最も豊富なモジュールはIII型であり、III型は、他のインテグリン及びヘパリンのための結合部位とともにRGDフィブロネクチン受容体認識配列を含む。組織の種類(型)及び/または細胞条件にもよるが、フィブロネクチン分子は15〜17のIII型モジュールで構成されている。加えて、これらのどのカテゴリーにも分類されないIIICSと呼ばれるモジュールがある。このモジュールは、EDB及びEDA(共にIII型モジュール)とともに、FN(フィブロネクチン)プレmRNAの選択的スプライシングで制御される。フィブロネクチン分子は、カルボキシ末端において2つのジスルフィド架橋を形成し、共有結合された二量体を産生することができる。マイクロニードルデバイスのナノトポグラフィと接触している細胞は、細胞とフィブロネクチンとの通常の相互作用と同様に、本発明のデバイスと相互作用することができる。
【0086】
本発明のデバイスが相互作用することができるさらに別のよくあるECMタンパク質は、エラスチン及び/またはエラスチンのポリペプチド断片である。エラスチンは、組織の弾性及び再コイル状化(recoil)に関与する結合組織のタンパク質成分である。さらに、エラスチンは、結合組織にかなり豊富にある。複数のトロポエラスチン鎖が自然に架橋構造を形成することで、弾性線維を形成する。コラーゲンとは異なり、エラスチン分子は、弾性線維が伸ばされたときに、(コイル状であったものが)非コイル状になって、より広げられた立体構造をとることができ、伸縮力が緩和され次第、自発的に再びコイル状になる。エラスチンは、主としてGly、Val、Ala及びProからなる。エラスチンは、不規則またはランダムなコイル立体構造を画定する。
【0087】
よくある皮膚線維性タンパク質に加えて、本発明のデバイスのナノトポグラフィは、プロテオグリカンなどの他のECM成分を模倣しかつ/または吸着させることができる。プロテオグリカンは、糖タンパク質であるが、タンパク質よりもずっと多くの糖質からなる;すなわち、プロテオグリカンは、大抵はタンパク質骨格に付着した糖鎖の巨大な塊である。いくつかの糖がプロテオグリカンに取り入れられている。最も豊富なプロテオグリカンは、N−アセチルグルコサミン(NAG)である。糖残基の長鎖は、タンパク質骨格内のセリン残基に付着させられる;すなわち、「O結合型」である。硫酸基も、分泌前に糖に加えられる。よくあるECMプロテオグリカンの例には、これらに限定しないが、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸及びヒアルロン酸(タンパク質成分を含まない)が含まれる。
【0088】
表面上のナノトポグラフィは、本発明のデバイスが適用される場所またはその近隣において、細胞に直接及び/または間接的に影響を及ぼし得る。そのような細胞には、マイクロニードルデバイスによって送達される薬剤の送達部位と皮膚表面との間にあるバリア層の細胞と、薬剤が送達される細胞とが含まれ得る。本発明のデバイスの存在に起因する細胞への具体的な影響には、膜結合タンパク質の立体構造、リガンド結合活性、または触媒活性の変化が含まれ得る。
【0089】
本発明のデバイスの存在により、一態様においては全細胞コンダクタンスを含む細胞膜導電率を調節することができる。さらに、全細胞コンダクタンスの調節は、全細胞コンダクタンスの線形的または非線形的電位依存性寄与のうちの少なくとも一方を調節することを含み得る。本発明のデバイスは、細胞膜電位及び細胞膜導電率のうちの少なくとも一方を調節することができる。例えば、本発明のデバイスは、カルシウム依存性細胞メッセージング経路またはシステムに直接または間接的に影響を及ぼし得る。
【0090】
本発明のデバイスのナノトポグラフィは、細胞膜の成分に影響を及ぼし得る。細胞膜は、転写因子の下流エフェクタであるシグナル伝達経路に影響を及ぼし得る。例えば、ECMの成分を模倣するかまたはECMの成分と相互作用することにより、本発明のデバイスは、局所細胞内の遺伝子転写及び/または翻訳に影響を及ぼし得る。本発明のデバイスの存在は、膜タンパク質の場所及び/または立体構造に影響を及ぼし得る。これが、今度は、局所環境の自由エネルギーに影響を及ぼし、本発明のデバイスによって送達される活性薬剤のエンドサイトーシスの促進をもたらし得る。本発明のデバイスの存在は、細胞間結合、例えばタイトジャンクションの形成に影響を及ぼし、生物学的バリアを透過しての薬剤の送達を向上させ得る。
【0091】
本発明のデバイスは、膜結合タンパク質を介して細胞に直接または間接的に影響を及ぼし得ると考えられている。膜結合タンパク質は、これらに限定しないが、表面受容体、膜貫通受容体、イオンチャンネルタンパク質、細胞内付着タンパク質、細胞接着タンパク質、インテグリンなどのうちの少なくとも1つを含み得る。特定の態様によれば、膜貫通受容体は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)であり得る。例えば、本発明のデバイスは、GPCRと相互作用するECM成分を模倣することができ、GPCRは、Gタンパク質αサブユニットと相互作用する。Gタンパク質αサブユニットは、Gα
s、Gα
i、Gα
q及びGα
12のいずれかであってよい。ECMの成分と相互作用する際に、本発明のデバイスは、カドヘリン、接着斑(焦点接着斑)、デスモソーム、インテグリン、クラスリン、カベオリン、TSLP受容体、β−2アドレナリン受容体、ブラジキニン受容体、イオンチャンネルタンパク質などに影響を及ぼし得る。一実施形態では、マイクロニードルの存在により、これらに限定しないが、JAM2及び3、GJA1、3、4及び5(接合部接着)、オクルディン(OCLN)、クローディン(例えば、CLDN3、5、7、8、9、10)並びにタイトジャンクションタンパク質1(TJP1)を含む接合部接着分子を調節することができる。
【0092】
本発明のデバイスは、細胞表面においてのみならず内部的にも細胞活性に影響を与え得る。例えば、本発明のデバイスは、接着斑に影響を与え得る。接着斑は、どの時点においても100以上の異なるタンパク質を含み得る物質の大型会合体である。接着斑は、ほとんどの細胞型で動的であり、ECMから内部細胞への情報の伝達のための機械的及び化学的経路を提供する。接着斑の変形は、ECMに存在する分子構成、物理的構造及び物理的力が変化したときに起こる。
【0093】
接着斑は、細胞骨格−ECM間の連結を許容し、一般的には、機械力及び化学的シグナルの両者の伝達のためのシグナル伝達ハブであると考えられている。接着斑の大半は、細胞膜の真下にあり、通常はインテグリンを介してECMと連結しているが、情報伝達は、ヒアルロン酸結合タンパク質及びヘパリン−硫酸結合タンパク質を含む他の膜貫通物質を介してなされることもできる。
【0094】
インテグリンは、細胞を基底膜のECMタンパク質(例えば、ラミニン)または他の細胞上のリガンドに付着する偏性ヘテロ二量体膜貫通糖タンパク質の巨大ファミリーである。本発明のデバイスのナノトポグラフィは、細胞膜においてインテグリンに影響を及ぼし、それにより、例えば接着斑を介して細胞挙動に影響を及ぼすことができる。インテグリンは、サイズ120〜170kDaの大(α)サブユニット及び90〜100kDaの小(β)サブユニットを含む。哺乳類では、18のα及びβサブユニットの特性が明らかになっている。いくつかのインテグリンは、直接細胞間認識及び相互作用を媒介する。インテグリンは、接着機能に必要な二価カチオンMg
2+及びCa
2+のための結合部位を含む。哺乳類インテグリンは、異なるαサブユニットに結合する共通のβサブユニットを共有するいくつかのサブファミリーを形成する。αサブユニット及びβサブユニットはともに2つの別々の尾部を含み、両者は、細胞膜を貫通し、小さな細胞質ドメインを有する。例外は、任意の膜タンパク質の最大の既知の細胞質ドメインのうちの1つである1088アミノ酸の細胞質ドメインを有するβ−4サブユニットである。貫通部分は、接着斑内のタンパク質と相互作用して、ECMに関する情報を細胞骨格及び内部細胞に伝達することができる。細胞膜の外では、α鎖及びβ鎖は約23nmの長さに沿って互いに近接して位置し、最後の5nmは、ECMのためのリガンド結合部位を形成する各鎖のN末端である。
【0095】
細胞表面の領域内のナノトポグラフィの存在によって影響され得る接着斑内で知られている主要なタンパク質には、ビンキュリン、パキシリン、タリン、α−アクチン及びザイキシンが含まれる。接着斑タンパク質は、例えばアクチンとの相互作用により、細胞質を通じて細胞骨格へ情報を伝達する。接着斑は絶えず変化しているが、タンパク質は連続的に複合体と会合及び脱会合し、情報をECMから細胞の他の部分へ伝えている。葉状仮足の前端部における焦点複合体(focal complex)の形成から細胞の後端部における接着斑の崩壊までの接着斑の動的な集合及び脱集合は、細胞遊走における中心的役割である。接着斑を介して内部細胞に働く細胞外の機械的力によるSrcキナーゼの活性化は、接着斑がECMの機械的力の検知において果たす役割を示唆している。従って、本発明のデバイスは、接着斑に関連する原形質膜タンパク質を介して細胞遊走に関与する下流機能を含む細胞の内部の活性を調節することができる。
【0096】
本発明のデバイスのナノトポグラフィが影響を及ぼし得る他の細胞表面構造には、エンドサイトーシスに関与する膜タンパク質が含まれる。例えば、細胞膜と相互作用することによって、本発明のデバイスは、接触表面のナノトポグラフィのおかげで接着エネルギーの増加を示し得る。該接着エネルギーは、典型的な受容体−リガンド結合のエネルギーを模倣し得る。
【0097】
如何なる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明のデバイスの表面とエンドサイトーシス媒介受容体とが接着すると、細胞膜内の他のエンドサイトーシス媒介受容体が細胞膜上の接着前均一分布から接着部位へ拡散し得ると考えられている。これらの膜タンパク質はその後、デバイス表面に接着し、それによって細胞表面とデバイスとの相互作用の自由エネルギーを低下させ得る。自由エネルギーの低下は、細胞表面における薬剤(例えば、本発明のデバイスにより送達される活性薬剤)のエンドサイトーシスを促進することができる。具体的には、デバイス表面と受容体との間で接着が生じると、放出されたエネルギー、すなわち増加した自由エネルギーが、接着部位またはその近傍において粒子を膜で包むことを促進し得る。あるいは、本発明のデバイスの表面へのECMの非細胞成分の吸着が、局所の化学的性質を変化させ、当該領域内の細胞によるエンドサイトーシスの活性の増加をもたらし得る。本発明のデバイスの存在に起因して媒介され得るエンドサイトーシス経路は、クラスリン媒介エンドサイトーシス、カベオラ、マクロピノサイトーシス及びファゴサイトーシスを含む4つのカテゴリーにさらに分割することができる。
【0098】
クラスリン媒介エンドサイトーシスは、主として細胞質タンパク質クラスリンと関連があるタンパク質複合体の形態学的に特徴的な結晶性コートを有する直径約100nmの小さな小胞によって媒介される。これらのクラスリン被覆小胞(CCV)は、実質的に全ての細胞において見られ、細胞膜にクラスリン被覆ピットを形成する。クラスリン被覆ピットは、例えば、低密度リポタンパク質、トランスフェリン、成長因子、抗体及びその他多くのものなど、リガンドの受容体媒介エンドサイトーシスに関与する様々な受容体を有する巨大な細胞外分子の濃度の増加を含み得る。
【0099】
本発明のデバイスのナノトポグラフィは、カベオラに関連する膜タンパク質に影響を及ぼし得る。カベオラは、クラスリン被覆ピットより僅かに一般的ではないエンドサイトーシスに関与している膜構造であり、多くの、しかし全てではない細胞型の表面上に存在する。カベオラは、コレステロール及び糖脂質に富む二重層を有するコレステロール結合タンパク質カベオリン(Vip21)で構成されている。カベオラは、CCVよりも小さく、直径約50nmであり、膜内でフラスコ形状のピットを形成する。それらは、最大でいくつかの組織の細胞の細胞膜領域の3分の1を占めることができ、皮膚で見られるように線維芽細胞、脂肪細胞及び内皮細胞において特に豊富である。細胞外分子の取り込みは、マイクロニードルのナノトポグラフィに影響され得るカベオラにおいて受容体を介して特異的に媒介されると考えられている。
【0100】
マクロピノサイトーシス(飲作用)は、通常、細胞膜の大いに波打った領域から発生し、細胞膜が内側へ陥没して窪みを形成し、その後、細胞内への取り込み(pinch off)が行われ、大量の細胞外液及び分子(103〜106CCVに等しい)で満たされている大きな小胞(直径0.5〜5μm)を形成することである。窪みを満たすことは、非特異的な方法でなされる。小胞はその後、サイトゾル内に移行し、エンドソームやリソソームなど他の小胞と融合する。
【0101】
ファゴサイトーシス(食作用)は、特定細胞においてのみ生じるような、小さなサイズの塵粒子、細胞残屑、微生物、そしてアポトーシス細胞などの直径約0.75μm以上の微粒子状物質が結合及び内部移行することである。これらの過程には、クラスリン媒介エンドサイトーシス及びカベオラ経路より大きな膜領域の取り込みが含まれる。
【0102】
本発明のデバイスのナノトポグラフィは、細胞表面のカドヘリンにも影響を及ぼし得る。カドヘリンは、一般的にカルシウム依存性の同種親和性細胞間接着の媒介に関与する受容体のファミリーである。カドヘリンは、胚形成中に極めて重要であるが、成人(成体)においても適切な細胞間結合を形成しかつ正常な組織構造を維持する役割を果たす。カドヘリンは、細胞外ドメインにおける1若しくは複数のカドヘリンリピートの存在によって分類される膜貫通タンパク質のスーパーファミリーである。これら約110の残基ドメインのアレイは、カドヘリン媒介細胞間相互作用の成立に関与する分子間表面を形成する。幾つかのカドヘリンドメインの解析から得られる構造情報は、カルシウムイオンが互いに隣接するカドヘリンリピート(CRs)間の部位で結合し、剛体棒を形成することを示している。カドヘリンは通常、5つの縦列反復細胞外ドメインと、1つの膜貫通セグメントと、細胞質領域とを含む。
【0103】
一実施形態では、本発明のデバイスは、上皮組織に見られるE−カドヘリンに影響を及ぼし得る。E−カドヘリンは、細胞外ドメイン内の5つのカドヘリンリピート(EC1〜EC5)と、1つの膜貫通ドメインと、p120カテニン及びβカテニンを結合する細胞内ドメインとを含む。細胞内ドメインは、βカテニン結合とそれ故にE−カドヘリン機能とに不可欠であると考えられている高度にリン酸化された領域を含む。βカテニンはαカテニンに結合することもでき、αカテニンはアクチン含有細胞骨格線維の制御に関与する。上皮細胞において、細胞間結合を含むE−カドヘリンは、細胞骨格のアクチン含有線維に隣接していることが多い。
【0104】
或る局所領域に本発明のデバイスが存在することが原因で影響され得る他の活動には、傍細胞輸送及び経細胞輸送が含まれる。例えば、デバイスの表面におけるECMタンパク質の吸着を通して、或る領域の局所の化学的性質が変化し、局所領域への被送達薬剤の傍細胞輸送を向上させ得る。局所領域には、本発明のデバイスの隣接領域のみならず、真皮のより深い領域も含まれ得る。例えば、本発明のデバイスの存在は、血流に送達されて全身送達されるように、被送達薬剤の、真皮の毛細血管床への、かつ毛細血管壁を通過しての傍細胞輸送を促進することができる。
【0105】
使用中、本発明のデバイスは、それに接触した上皮組織の1若しくは複数の成分と相互作用して、傍細胞及び/または経細胞輸送機構によって上皮組織の多孔性を向上させることができる。上皮組織は、身体の主要な組織種類の1つである。本発明に従ってより多孔性の状態にされ得る上皮組織には、ケラチン性上皮及び移行上皮の両者を含む単層上皮及び重層上皮の両方が含まれ得る。加えて、本明細書に包含される上皮組織には、これらに限定しないが、ケラチノサイト、扁平細胞、円柱細胞、立方細胞及び偽重層(多列)細胞を含む上皮層のあらゆる細胞種類が含まれ得る。
【0106】
本発明のデバイスの存在は、傍細胞輸送を促進するためにタイトジャンクション(密着結合)及びデスモソームを含む細胞間結合の形成及び維持に影響を及ぼし得る。上述したように、タイトジャンクションは顆粒層において見られ、タイトジャンクションの開口は、薬剤、特に、従来は経皮送達が妨げられた親油性を示す高分子量活性剤の送達を向上させるための細胞間経路を提供することができる。タイトジャンクションの主要なタンパク質の種類は、クローディン、オクルディン及び接合部接着分子である。
【0107】
局所成分とナノトポグラフィの構造体との相互作用により、バリア層のデスモソームを開口させて傍細胞輸送を促進することができる。デスモソームは、主として、カドヘリンのメンバーであるデスモグレイン及びデスモコリンから形成され、細胞間接着に関与する。デスモソームは、細胞外コアドメイン(デスモグレア(desmoglea))を含み、ここで、互いに隣接する細胞のデスモグレイン及びデスモコリンタンパク質は、互いに結合する。互いに隣接する細胞は、幅約30nmのECM層によって分離されている。細胞膜の真下に、外部濃密斑(dense plaque)及び内部濃密斑として知られている重い板状構造体が形成されている。これらの濃密斑間には、デスモプラキンタンパク質が跨っている。外部濃密斑は、カドヘリンの細胞質ドメインがプラコグロビン及びプラコフィリンを介してデスモプラキンに付着する部位である。内部濃密斑は、デスモプラキンが細胞の中間線維に付着する部位である。
【0108】
個々の細胞とナノトポグラフィ構造体との間の相互作用により、バリア細胞を通過させての薬剤の送達を誘起し、経細胞輸送を促進することができる。例えば、角質層のケラチノサイトとの相互作用により、ケラチノサイトへの薬剤の分配(partitioning)と、その後の、バリア細胞中への拡散及び脂質二重層の通過を促進することができる。薬剤は傍細胞経路及び細胞間経路の両方によってバリア細胞を透過することができるが、高親水性分子に対しては細胞間経路が主に用いられ得る。しかし、当然ながら、主に用いられる輸送経路は薬剤の性質よって異なってよく、親水性はただ1つの定義される特徴である。
【0109】
一実施形態によれば、細胞層の経上皮電気抵抗(TEER,本明細書においては経上皮抵抗すなわちTERと呼ぶこともある)の測定により、細胞層の透過性の増加を判定することができる。周知のように、細胞層のTEERの増加は、例えば細胞層のタイトジャンクションの開口または形成の欠如に起因する細胞層の透過性の増加の良い目安である。内皮及び特定の上皮において、傍細胞流動を制限するタイトジャンクションの能力は不変でないことは明白である。むしろ、タイトジャンクションのこのゲート機能は、動的調節が可能である(非特許文献8、9)。特に、受容体リガンドまたは特定の膜浸透性モジュレータのいずれかによるシグナル伝達経路の活性化は、細胞間隙経路の透過性に顕著な効果を及ぼすことができる。例えば、タンパク質キナーゼCの活性化は、MDCK細胞(非特許文献10)、上皮細胞株におけるタイトジャンクションの透過性のかなりの増加をを引き起こす。サイクリックAMPの上昇は、血液脳関門の研究のためのモデル系である培養下の脳内皮細胞において、透過性を減少させる(非特許文献11)。サイクリックAMPはまた、末梢内皮細胞におけるタイトジャンクション透過性を減少させる(非特許文献12、13)。
【0110】
タイトジャンクションの透過性特性は、アドヘレンス・ジャンクション(接着結合)の完全性にも依存する。細胞外Ca
2+の除去によるアドヘレンス・ジャンクションの破壊が、MDCK細胞(非特許文献14、15を参照)及び内皮細胞(非特許文献16)におけるタイトジャンクションの開口をもたらす。タンパク質キナーゼは、MDCK細胞におけるタイトジャンクションの完全性のこの間接的調節に関与しているようである(非特許文献17)。アドヘレンス・ジャンクション複合体のCa
2+感受性成分は、カドヘリンである(非特許文献18に概説されている)。これらの膜貫通タンパク質は、該タンパク質の細胞外ドメインを介してCa
2+依存的に同種親和性で細胞間接着を媒介する。カドヘリンの細胞質ドメインは、α、β及びγカテニンと呼ばれる3つのさらなるタンパク質と関連があり(非特許文献19)、これらは、カドヘリンをアクチン細胞骨格に結合し、かつカドヘリン接着に必要とされる(非特許文献20〜23、非特許文献24を参照)。
【0111】
本発明によれば、上皮層と本発明のデバイス表面(該表面上に作製された構造体の所定のパターンを含み、構造体の少なくとも一部はナノメートルスケールで作製されている)との接触は、透過性を増加させ、上皮層のTEERを減少させることができる。例えば、上皮層とナノパターニングされた表面とを一定期間接触させた後に上皮層のTEERを初期値の約95%未満、約85%未満または約70%未満に下げることができる。例として、上皮層とナノ構造体のパターンを含む表面とを約30分間接触させた後、上皮層のTEERを初期値の約90%〜約95%にすることができる。約60分間の接触後には、上皮層のTEERを初期値の約80%〜約90%にすることができ、約120分間の接触後には、上皮層のTEERを初期値の約60%〜約75%にすることができる。
【0112】
図10は、上皮層のTEERを測定する1つの方法を示している。この実施形態では、細胞層、例えば上皮細胞単層を、アピカル(上部)チャンバの底部において成長させるかまたは別な方法で位置させることができる。2つのチャンバ間の流動を許容し、個々の細胞が基底(下部)チャンバに入ることを防止するために、図のように、アピカルチャンバの底部は微細孔ろ過膜であってよい。例として、微細孔ろ過膜は、約0.4μmの孔を約4×10
6孔/cmの密度で含むことができる。当然ながら、様々なシステム構成要素の特定パラメータは決定的なものではなく、当技術分野で知られているように変更することができる。アピカルチャンバは、より大きなウェルに収まるトランスウェルインサートによって画定され、それによって、システムの基底チャンバを画定することができる。使用中、上皮細胞単層のどちらかの側に第1の電極1及び第2の電極2を配置することができ、2つの電極間にオーム計4を接続することができる。オーム計4は、細胞単層のTEERを示すことができる。細胞層のTEERを測定するシステムは既知であり、例えば、ミリセル(Millicell)(登録商標)電気抵抗値測定システム(米国マサチューセッツ州ベッドフォードのミリポア社(Millipore)から入手可能)を利用することができる。
【0113】
上皮細胞層とナノ構造体が作製された表面とを接触させることにより、TEERを下げることができ、低いTEERは、層透過性の増加を示している。従って、上皮層とナノ構造化された表面との接触後、化合物を層を透過して輸送する能力を大いに高めることができる。これにより、以前はこの方法で効率的に送達することができなかった化合物の経皮送達を改善することができる。例えば、開示されている方法及びデバイスを利用して、高分子量化合物、親油性化合物及び/または荷電化合物の経皮送達を向上させることができる。
【0114】
当然ながら、本発明のデバイスのナノサイズ構造体は、周囲の微小環境の他の成分に直接または間接的に影響を及ぼすことができ、そのような構造体の代表的な実例のみが本明細書に記載されている。
【0115】
表面に形成されたナノトポグラフィを有するデバイスは、単一段階製造方法に従って形成することができる。あるいは、予め形成された表面上にナノ構造体のパターンを形成する多段階製造方法を用いてもよい。例えば、まず、マイクロニードルのアレイを作製し、その後、作製されたマイクロニードルの表面にナノ構造体のランダムまたは非ランダムなパターンを形成することができる。単一段階製造方法または2段階製造方法のいずれでも、任意の適切なナノトポグラフィ作製方法に従って、或る表面またはモールド表面に構造体が形成され得る。ナノトポグラフィ作製方法には、これらに限定しないが、ナノインプリンティング、射出成形、リソグラフィ、エンボス成形などが含まれる。
【0116】
通常、マイクロニードルのアレイは、任意の標準的な微細加工技術に従って作製することができ、そのような微細加工技術には、これらに限定しないが、リソグラフィ;エッチング技術、例えば、湿式化学エッチング、乾式エッチング、フォトレジスト除去;シリコンの熱酸化;電気めっき及び無電解めっき;拡散法、例えば、ホウ素、リン、ヒ素、またはアンチモン拡散;イオン注入;膜蒸着、例えば、蒸発(フィラメント、電子ビーム、フラッシュ、シャドーイング、ステップカバレッジ)、スパッタリング、化学蒸着(CVD)、エピタキシー(気相、液相、分子ビーム)、電気めっき、スクリーン印刷及びラミネート加工;ステレオリソグラフィ;レーザ加工;レーザ切断(投影アブレーションを含む)が含まれる。
【0117】
電気化学エッチング法を用いることもできる。電気化学エッチング法では、固体シリコンを電気エッチングして多孔質シリコンにすることにより、穿刺構造体として使用され得る極めて微細な(約0.01mmの)シリコンネットワークを形成する。この方法は、水性フッ化水素酸中におけるシリコンの電解陽極酸化によって、場合によっては光と組み合わせて、シリコンにチャンネルをエッチングすることができる。エッチングされるシリコンウエハのドープ濃度を変更することにより、最終的な多孔質構造体についての、エッチング中の電解電圧、入射光強度、または電解質濃度を制御することができる。エッチングされなかった材料(すなわち、残ったシリコン)が、マイクロニードルを形成する。
【0118】
プラズマエッチングを用いることもできる。プラズマエッチングでは、シリコンのディーププラズマエッチングを行うことにより、約0.1mmまたはそれ以上の直径を有するマイクロニードルを形成する。マイクロニードルは、(電気化学エッチングのように)電圧を制御することにより、間接的に作製することもできる。
【0119】
フォトリソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、X線リソグラフィなどを含むリソグラフィ技術を、主要パターンの画定やマスターダイの作製に用いることもできる。その後、複製を行うことにより、マイクロニードルのアレイを有するデバイスを形成することができる。一般的な複製方法には、これらに限定しないが、溶媒補助微細成形及び鋳造、エンボス成形、射出成形などが含まれる。相分離性ブロックコポリマー、ポリマー脱混合及びコロイドリソグラフィ技術を含む自己組織化技術を用いて、マイクロニードルの表面にナノトポグラフィを形成することもできる。
【0120】
周知のように、複数の方法の組み合わせを用いることもできる。例えば、形成されたナノ構造体の特徴、例えばナノピラーの直径、外形、高さ、ピッチなどを微細化するために、コロイドでパターニングされた基板を反応性イオンエッチング(RIE,乾式エッチングとも呼ばれる)に曝してもよい。最初に別の方法(例えばポリマー脱混合技術)により作製したナノ構造体の外形を、湿式エッチングを用いて別の外形に変更することもできる。
【0121】
構造体の直径、形状及びピッチは、適切な材料及び方法を選択することにより制御され得る。例えば、コロイドでパターニングされた基板上に最初に蒸着させた金属をエッチングした後にコロイドのリフトオフを行うことにより、角柱形状のピラーが一般的に得られる。その後、所望に応じて、エッチング方法を用いて構造体を完成させることができる。ポリマーナノ粒子を選択的に溶解させた後に、コロイドの隙間に規則的に配列された様々な三方晶系ナノメータフィーチャ(feature)を形成する温度制御焼結技術により、規則的に配列された非球形のポリマー性ナノ構造体を製造することもできる。これらの及び他の適切な製造技術は当該技術分野では公知である(例えば、非特許文献25を参照されたい。非特許文献25は、引用を以て本明細書の一部となす)。
【0122】
表面にナノトポグラフィが形成されたマイクロニードルの製造に用いることができる他の方法には、超高精度レーザ加工技術を用いたナノインプリントリソグラフィ方法が含まれる。ナノインプリント技術の例は、米国特許第6,995,336号明細書(特許文献7)及び米国特許第7,374,864号明細書(特許文献8)に記載されており、これらの特許文献は引用を以て本明細書の一部となす。ナノインプリントリソグラフィは、ナノインプリントリソグラフィモールド及びフォトリソグラフィマスクの両方の役割を果たすハイブリッド型モールドが用いられるナノスケールリソグラフィ技術である。ナノインプリントリソグラフィ技術の概要を
図11の(A)〜(C)に示す。作製中に、レジスト層上にフィーチャ(例えば、ナノトポグラフィを画定するマイクロニードル)を形成するために、圧力を加えることによりハイブリッド型モールド30を基板32上にインプリントする(
図11の(A))。通常、モールド30との係合の前に、基板32の表面をそのガラス転移温度Tgよりも高い温度まで加熱することができる。ハイブリッド型モールド30が基板32と係合されている間、フィーチャ34を形成するために粘性ポリマー流をモールドキャビティ内に充填することができる(
図11の(B))。その後、モールド及び基板を紫外線(UV)に露光することができる。ハイブリッド型モールドは一般的に、特定の遮光領域を除いて、UV放射を透過する。そのため、UV放射は透過部分を通過し、レジスト層に入射する。モールド及び基板の冷却中、圧力が維持される。その後、基板及びポリマーのTgよりも低い温度で、冷却された基板32からハイブリッド型モールド30を取り除く(
図11の(C))。
【0123】
図11の(C)に示すような、作製されたフィーチャ34を含むナノインプリント基板32のモールド30からの離型を容易にするためには、基板32との接着力を低下させるために低エネルギーコーティングでモールド30を処理することが有益である。というのも、モールド30の表面エネルギーを小さくすると、それにより、モールド30、基板32及びポリマー間の表面エネルギー差が大きくなり、前記材料間の離型が容易になるためである。例として、トリデカ−(1,1,2,2−テトラヒドロ)−オクチルトリクロロシラン(F
13−TCS)などのシリコンモールドコーティングが用いられ得る。
【0124】
ナノプリンティング法は、モールドにポリマーを充填した後に、形成されたポリマーをモールドから取り出すことを含む動的な方法である。モールド要素充填のために、ポリマー温度は、印加圧力で流動が開始されるのに十分なレベルまで高くするべきである。ポリマーの温度を高くすると、ポリマーの粘性が低下し、モールド充填がより迅速かつより容易になる。また、圧力を高くすると、充填速度及び全体充填を向上させることができ、モールド複製をより良好に行うことができる。ナノインプリントされた基板をモールドから離型するためには、基板温度を、降伏強度がモールドによる接着力を超える温度よりも低くすることができる。温度を変更することにより、例えば
図8に示した構造体などの別個の構造体を得るための離型中に、ポリマー要素を引き出すことが可能になる。
【0125】
構造体は、化学的方法によって形成することもできる。例えば、膜堆積、スパッタリング、化学蒸着(CVD)、エピタキシー(気相、液相、分子ビーム)、電気めっきなどを用いて、表面に構造体を形成することができる。
【0126】
当該技術分野で公知の自己組織化単分子層方法を用いて、表面上に構造体のパターンを形成してもよい。例えば、ブロックコポリマーの自己組織化能力を用いて、表面に単分子層パターンを形成することができる。単分子層パターンは、その後、該パターンに従って、所望の構造体(例えば、コロイド)を成長させるためのテンプレートとして使用することができる。
【0127】
例として、2またはそれ以上の反応部位を有するモノマーから、2次元の架橋ポリマーネットワークが形成され得る。そのような架橋単分子層は、当該技術分野で既知の自己組織化単分子層(SAM)技術(例えば、金/アルキルチオールシステム)またはラングミュアーブロジェット(LB)単分子層技術(非特許文献26)を用いて作製されてきた。単分子層は架橋結合され、それにより、構造的によりロバストな単分子層が形成され得る。
【0128】
パターニングされた単分子層の形成に使用されるモノマーは、所望の重合技術及び/または単分子層形成技術に影響を及ぼすか、あるいは、全体溶解度などの性質、解離方法またはリソグラフィ方法に影響を与えるために必要な全ての構造的部分を含み得る。モノマーは、少なくとも1つの、大抵は少なくとも2つの反応性官能基を含み得る。
【0129】
有機単分子層の形成に用いられる分子には、メチレン基鎖が散在している様々な有機官能基が含まれ得る。例えば、分子は、パッキング(充填)を促進するためのメチレン鎖を含む長鎖炭素構造体であり得る。メチレン基間のパッキングは、弱いファンデルワールス結合を生じさせ、それにより、作製された単分子層の安定性を高め、秩序相の形成に関連するエントロピーペナルティに対抗することができる。加えて、形成された単分子層上での構造体の成長を可能にするために、別の末端部分(例えば水素結合部分)が分子の一方の末端に存在し得るが、その場合には、重合可能な化学的部分が鎖の中間または他方の末端に位置し得る。前記アセンブリを形成するのに、任意の適切な分子認識化学が用いられ得る。例えば、構造体は、静電相互作用、ファンデルワールス相互作用、金属キレート化、結合配位(すなわち、ルイス酸塩基相互作用)、イオン結合、共有結合、または水素結合に基づいて、単分子層上に構築され得る。
【0130】
SABをベースにしたシステムを用いる場合、テンプレートを作製するためにさらなる分子が用いられ得る。このさらなる分子は、SAMを形成するために、その末端の1つにおいて適切な官能性を有し得る。例えば、金の表面に、チオール端末が含まれ得る。複製に影響を与えるために用いられ得る様々な有機分子がある。ジエンやジアセチレンなどのトポケミカル重合可能部分が、重合可能成分として特に望ましい。これらには、様々な長さのメチレンリンカーが散在し得る。
【0131】
分子認識部分はLB形成目的のための極性官能基としての役割も果たすこともできるので、LB単分子層には、1つのモノマー分子だけが必要とされる。基板に転写されたLB単分子層上に、または前記トラフ(trough)に直接的に、リソグラフィが行われ得る。例えば、ジアセチレンモノマーのLB単分子層は、マスクを介したUV露光または電子ビームパターニングによりパターニングされ得る。
【0132】
単分子層段階でトポケミカル重合される分子を用いて、単分子層形成を促進することができる。形成されたフィルムを重合触媒に曝すことにより、該フィルムはその場で成長し、動的分子アセンブリからよりロバストな重合アセンブリへ変化することができる。
【0133】
単分子層のパターニングのための当該技術分野で既知の任意の技術を用いることができる。単分子層のパターニングに有用な技術には、これらに限定しないが、フォトリソグラフィ、電子ビーム技術、集束イオンビーム技術、またはソフトリソグラフィが含まれる。フォトレジストなどの様々な保護スキームを、SAMをベースにしたシステムに用いることができる。同様に、金の上にブロックコポリマーのパターンを形成し、選択的にエッチングすることにより、パターンが形成され得る。二成分系の場合、パターニングは、容易に利用可能な技術を用いて達成することもできる。
【0134】
紫外線及びマスクを使用してパターニングを行うことができるソフトリソグラフィ技術が、単分子層のパターニングに用いられ得る。例えば、パターニングされていないベース単分子層が、UV/粒子ビーム反応性モノマー単分子層を形成するためのプラットホームとして使用され得る。ベースSAMがパターニングされていなくても、前記モノマー単分子層は、その後、UVフォトリソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、またはイオンビームリソグラフィによってパターニングされ得る。
【0135】
パターニングされた単分子層上の構造体の成長は、様々な成長機構によって実現することができ、例えば、金属塩の適切な還元化学を介して、または、シード若しくはテンプレート媒介核形成を用いて実現することができる。単分子層上の認識要素を用いることにより、この界面で、様々な方法によって、無機成長を触媒することができる。例えば、パターニングされた有機単分子層の形状を支持するコロイド形態の無機化合物が形成され得る。例えば、炭酸カルシウムまたはシリカ構造体が、カルボン酸やアミドなどの様々な官能基によりテンプレート化され得る。結晶成長条件を制御することにより、無機物成長の厚さや結晶形態を制御することが可能である。また、二酸化チタンをテンプレート化してもよい。
【0136】
テンプレート化された無電解めっき技術を用いて、既存の有機官能基を使用して金属を合成することができる。具体的には、金属原子を有機パターンのカルボニル部分にキレートすることによって、無電解金属堆積を前記パターン上で触媒し、パターニングされた金属コロイドを形成することができる。例えば、Cu、Au、Ni、Ag、Pd、Pt、または無電解めっき条件でめっき可能な他の様々な金属を用いて、前記有機単分子層の形状の金属構造体を形成することができる。無電解めっき条件を制御することにより、めっきされる金属構造体の厚さを調節することが可能である。
【0137】
当技術分野で既知の他の「ボトムアップ(bottom-up)」型の成長方法、例えば、米国特許第7,189,435号明細書(特許文献9)に記載された方法などを用いることができ、特許文献9は、引用を以て本明細書の一部となす。この方法によれば、導体または半導体基板(例えば、金などの金属)をブロックコポリマー膜(例えば、メタクルル酸メチルとスチレンのブロックコポリマー)で被覆することができ、このとき、コポリマーの一方の成分が、コポリマーの他方の成分のマトリックス内にナノスケールの円柱を形成する。その後、コポリマー上に導体層を配置することにより、複合構造体を形成することができる。前記複合構造体を垂直に配向にした際、例えば、UV放射線、電子ビームまたはオゾンへの曝露や、分解などにより、第1の成分のいくつかを除去し、第2の成分の領域にナノスケールの孔を形成することができる。
【0138】
米国特許第6,926,953号明細書(特許文献10)(この参照により本明細書に組み込まれるものとする)に記載された別の実施形態では、表面にイメージ層(例えば、アルキルシロキサンまたはオクタデトリクロロシラン自己組織化単分子層)を有する基板を、選択された波長の2つまたはそれ以上の光線に露光することによって、前記イメージ層において干渉パターンを形成し、該干渉パターンに従って前記イメージ層の湿潤性を変更することによって、コポリマー構造体を形成することができる。選択されたブロックコポリマー(例えば、ポリスチレンとポリ(メタクリル酸メチル)とのコポリマー)の層を、その後、露光されたイメージ層上に堆積させて焼きなますことにより、前記湿潤性パターンに従ってコポリマーの成分を分離し、イメージ層のパターンをコポリマー層において複製することができる。これにより、別々の成分のストライプまたは分離領域が、100nmまたはそれ以下の範囲の周期的寸法で形成され得る。
【0139】
本発明のデバイスの表面は、作製されたナノ構造体のランダムな分布を含み得る。任意選択で、デバイスの表面は、作製されたナノ構造体と共に別の材料を含み得る。例えば、マイクロニードルは、その表面に作製された電子スパン繊維層を有し得、この電子スパン繊維層上に、ナノ構造体のランダムまたは非ランダムなパターンが作製され得る。
【0140】
エレクトロスピニングは、毛細管内に保持されたポリマー融液または溶液に対して電界を印加し、個々のポリマー分子への帯電を引き起こすための高電圧供給器の使用を含む。電界を加えると、空気と表面との界面で帯電及び/または双極性配向が誘起されることになる。この誘起により、表面張力に対抗する力が生じる。臨界磁場強度では、静電気力は表面張力に打ち勝ち、ポリマー材料の噴流が毛細管から導電性のグランド面に向けて放出されることになる。前記噴流は、毛細管から出るとき、外部電界によって引き伸ばされ、かつ加速させられる。前記噴流が空気中を通過するとき、前記溶媒の一部が、帯電したポリマー繊維を残して蒸発し得る。帯電したポリマー繊維は、前記表面に集めることができる。前記繊維が集められると、まだ濡れている個々の繊維は互いに接着し、表面上に不織ウェブを形成することができる。その後、例えば、所望のナノ構造体を画定するモールドを用いたエンボス技術によって、エレクトロスピニングされた表面上にナノ構造体のパターンが作製され得る。前記モールドをマイクロニードル表面に適切な温度及び圧力で適用することにより、マイクロニードルの表面にパターンを転写することができる。ランダムなエレクトロスピニングされたナノサイズ繊維の表面は、マイクロニードル表面の望ましい特徴、例えば、表面積対体積比、表面粗さ、表面エネルギーなどのうちの1つまたは複数をさらに向上させることができ、それに伴う利益を提供することができる。
【0141】
使用中に組織または個々の細胞に対する相互作用を向上させるために、マイクロニードル表面をさらに官能化してもよい。例えば、1若しくは複数の生体分子(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質全体、多糖類など)を、使用前に構造化表面に結合させることができる。
【0142】
いくつかの実施形態では、構造体が形成された表面は、該表面の事前処理を必要とすることなく、該表面に追加的な望ましい官能基を自然発生的に結合させるような、適切な反応性を既に有し得る。なお、他の実施形態では、所望する化合物を結合させる前に、構造化表面の事前処理が行われ得る。例えば、構造体表面の反応性は、該表面上にアミン、カルボン酸、ヒドロキシル基、アルデヒド、チオールまたはエステル基を追加または生成することにより、高めることができる。1つの代表的な実施形態では、ナノ構造体のパターンを含むマイクロニードル表面は、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミン含有化合物と接触させてアミノ化することにより、該表面のアミノ官能性を高めることができ、追加されたアミノ官能性によって、1若しくは複数の生体分子がマイクロニードル表面に結合され得る。
【0143】
パターニングされたデバイスの表面に結合させるのに望ましい物質には、ラミニン、トロポエラスチン、またはエラスチンなどのECMタンパク質、トロポコラーゲンまたはコラーゲン、フィブロネクチンなどが含まれ得る。多くのECMタンパク質に対するインテグリン結合の認識配列の一部であるRGD配列などの短タンペプチド断片が、パターニングされたデバイス表面に結合され得る。したがって、RGDによるマイクロニードル表面の官能化は、本発明のデバイスのECMタンパク質との相互作用を高めることができ、さらには、本発明のデバイスの使用時の該デバイスに対する異物反応を制限することができる。
【0144】
本発明のデバイスを、該デバイスを介して送達される薬剤に関連させることができる。例えば、薬剤を角質層の真下、有棘層または基底層、あるいはさらに深く真皮内へ送達するために、経皮マイクロニードルパッチが使用され得る。通常、薬剤は、マイクロニードルによって(例えば、マイクロニードル内で、またはマイクロニードルの表面上で)角質層を透過して輸送されることができる。
【0145】
本発明のデバイスは、薬剤を収容し、かつ送達のために薬剤を提供する貯蔵部(リザーバ)(例えば導管や多孔質マトリックスなど)を含み得る。本発明のデバイスは、該デバイス自体内に貯蔵部を含み得る。例えば、本発明のデバイスは、送達するための1若しくは複数の薬剤を保持することができる中空部または複数の孔を含み得る。薬剤は、本発明のデバイスの一部または全体が分解することにより、あるいは、本発明のデバイスから薬剤を拡散させることにより、該デバイスから放出され得る。
【0146】
図12の(A)及び(B)は、貯蔵部を含む本発明のデバイスの斜視図である。デバイス110は、不透過性バッキング層114及びマイクロニードルアレイ116により画定された貯蔵部112を含む。バッキング層114及びマイクロニードルアレイ116は、デバイス110の外周部118付近で互いに結合されている。不透過性バッキング層114は、接着剤または熱融着などによって結合され得る。デバイス110はまた、複数のマイクロニードル120を含み得る。デバイス110の使用に先立って、マイクロニードル120を露出させるために、リリースライナ(release liner)122を取り外すことができる。
【0147】
1若しくは複数の薬剤を含む製剤を、貯蔵部112内に保持することができる。不透過性バッキング層114として使用するのに適した材料には、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、または他の合成ポリマーなどが含まれ得る。前記材料は、一般的に、貯蔵部内容物の横方向の流れに対するバリアを提供するために、不透過性バッキング層に熱または他の方法でシール可能である。
【0148】
不透過性バッキング層114とマイクロニードルアレイ116との間の空間または隙間により画定される貯蔵部112は、投与されることになる薬剤の懸濁液を保持する貯蔵構造を提供する。貯蔵部112は、該貯蔵部に収容される薬剤に適合する様々な材料から作製され得る。例として、天然若しくは合成ポリマー、金属、セラミック、半導体材料、またはそれらの複合材料によって貯蔵部が形成され得る。
【0149】
一実施形態では、貯蔵部は、マイクロニードルが配置される基板に取り付けられ得る。別の実施形態によれば、貯蔵部は別個に設けられ、マイクロニードルアレイに取り外し可能に結合されるか、または、例えば適切なチューブやルアーロックなどを介して、マイクロニードルアレイに流体連通され得る。
【0150】
本発明のデバイスは、送達される薬剤を収容するための1若しくは複数の貯蔵部を含み得る。例えば、本発明のデバイスは、1若しくは複数の薬剤含有製剤を収容する1つの貯蔵部を含み得るか、または、マイクロニードルアレイの全部または一部に送達するための1若しくは複数の薬剤を各々収容する複数の貯蔵部を含み得る。複数の貯蔵部は、各々、送達のために組み合わせられ得る互いに異なる薬剤を収容し得る。例えば、第1の貯蔵部は薬剤(例えば薬物)を収容することができ、第2の貯蔵部は媒体(例えば生理食塩水)を収容することができる。上記の互いに異なる薬剤は、送達前に互いに混合され得る。前記混合は、任意の手段、例えば、物理的崩壊(すなわち、穿通、分解または破壊)、孔隙率の変化、またはチャンバ同士を隔てている壁や膜の電気化学分解などによってトリガーされ得る。複数の貯蔵部は、互いに異なる、かつ同時または順次に送達される活性薬剤を収容し得る。
【0151】
一実施形態では、貯蔵部は、経皮デバイスの1若しくは複数のマイクロニードルに流体連通されることができ、マイクロニードルは、貯蔵部から送達された薬剤をバリア層の真下へ輸送するための構造(例えば、中央ボアまたは側部ボア)を画定することができる。
【0152】
別の実施形態では、本発明のデバイスは、マイクロニードルアセンブリと、貯蔵部アセンブリとを含むことができ、使用前に両アセンブリは流体連通されていない。例えば、本発明のデバイスは、貯蔵部またはマイクロニードルアレイの両方に隣接して配置されたリリース部材を含むことができる。使用中に貯蔵部及びマイクロニードルアレイが互いに流体連通されるように、リリース部材を使用前に本発明のデバイスから分離することができる。前記分離は、リリース部材を部分的または完全に取り外すことにより実現され得る。例えば、
図13〜
図18を参照すると、薬剤化合物の流動を開始するために、経皮パッチから取り外されるように構成されたリリース部材の一実施形態が示されている。より具体的には、
図13〜
図14は、薬剤送達アセンブリ370とマイクロニードルアセンブリ380とを含む経皮パッチ300を示す。薬剤送達アセンブリ370は、流速制御膜308に隣接して配置された貯蔵部306を含む。
【0153】
流量制御膜は、薬剤化合物の放出時に、該薬剤化合物の流速を遅くするのに役立ち得る。具体的には、薬剤貯蔵部からマイクロ流体チャンネルを介してマイクロニードルアセンブリへ送達される流体薬剤化合物は、圧力降下を受け、その結果、流速が低下する。この圧力差が大きすぎると、薬剤化合物の流れを妨げかつマイクロ流体チャンネルを流れる流体の毛細管圧に打ち勝つ可能性がある背圧が生じ得る。したがって、流速制御膜308を使用することにより、この圧力差を改善することができ、薬剤化合物をより良く制御された流速でマイクロニードルへ導入することを可能にする。流速制御膜の材料や厚さなどは、薬剤化合物の粘性や所望される送達時間などの様々な因子に基づいて変更され得る。
【0154】
流速制御膜は、薬剤化合物の流速を制御し、薬剤貯蔵部の透過率よりも低い透過エンハンサー透過率を有するように、当技術分野で既知の、透過性、半透過性、または多孔性材料から製造され得る。例えば、流速制御膜の作製に使用される材料は、約50nm〜5μm、いくつかの実施形態では約100nm〜2μm、いくつかの実施形態では約300nm〜1μm(例えば約600nm)の平均孔径を有し得る。適切な膜材料には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアセテート、エチレンnブチルアセテート、またはエチレンビニルアセテートコポリマーなどのポリマーから作製した、繊維ウェブ(例えば織布ウェブまたは不織布ウェブ)、開口部を有するフィルム、発泡体、スポンジなどが含まれる。このような膜材料はまた、米国特許第3,797,494号明細書(特許文献11)、米国特許第4,031,894号明細書(特許文献12)、米国特許第4,201,211号明細書(特許文献13)、米国特許第4,379,454号明細書(特許文献14)、米国特許第4,436,741号明細書(特許文献15)、米国特許第4,588,580号明細書(特許文献16)、米国特許第4,615,699号明細書(特許文献17)、米国特許第4,661,105号明細書(特許文献18)、米国特許第4,681,584号明細書(特許文献19)、米国特許第4,698,062号明細書(特許文献20)、米国特許第4,725,272号明細書(特許文献21)、米国特許第4,832,953号明細書(特許文献22)、米国特許第4,908,027号明細書(特許文献23)、米国特許第5,004,610号明細書(特許文献24)、米国特許第5,310,559号明細書(特許文献25)、米国特許第5,342,623号明細書(特許文献26)、米国特許第5,344,656号明細書(特許文献27)、米国特許第5,364,630号明細書(特許文献28)及び米国特許第6,375,978号明細書(特許文献29)に、より詳細に記載されており、これらの特許文献は、引用を以て本明細書の一部となす。特に適切な膜材料は、ローマン・テラピーシステーメ社(Lohmann Therapie-Systeme)から入手可能である。
【0155】
図13〜
図14を参照して、任意選択ではあるが、薬剤送達アセンブリ370は、貯蔵部306に隣接して設けられた接着層304を含み得る。また、マイクロニードルアセンブリ380は、同様に、上述したようなチャンネル331を有する複数のマイクロニードル330が延設される支持体312を含む。薬剤送達アセンブリ370及び/またはマイクロニードルアセンブリ380の両層は、所望に応じて、接着結合、熱結合、超音波結合などの任意の既知の結合技術を用いて互いに結合され得る。
【0156】
用いられる特定の構造に関わらず、パッチ300はまた、薬剤送達アセンブリ370とマイクロニードルアセンブリ380との間に配置されるリリース部材310を含む。リリース部材310は、任意選択で、該リリース部材に隣接する支持体312及び/または速度制御膜308に結合され得るが、その場合でも、一般的に、パッチ300から容易に引き出されることができるように、軽く結合することが望ましい。所望に応じて、リリース部材310はまた、ユーザがリリース部材を掴んで所望する方向に引き出すのを容易にするために、パッチ300の外周部を少なくとも部分的に超えて延在するタブ部分371(
図13〜
図14)を含み得る。
図13〜
図14に示すような「インアクティブ(inactive)」形態では、パッチ300の薬剤送達アセンブリ370は、薬剤化合物307がマイクロニードル330に大量に流入しないように、薬剤化合物307をしっかりと保持する。リリース部材に対してパッチから取り外せるように単純に力を加えることにより、パッチは「アクティブ(active)」になり得る。
【0157】
図15〜
図16を参照すると、パッチ300をアクティブ形態にするための一実施形態を示しており、ここで、リリース部材310は長手方向に引っ張られている。リリース部材310は、
図17〜
図18に示すように完全に除去されてもよいし、
図15〜
図16に示すように単に部分的に除去されてもよい。どちらの場合でも、リリース部材310と支持体312の開口部(図示せず)との間に形成されているシールは破壊される。このようにして、薬剤化合物307が薬剤送達アセンブリ370からの流出し、支持体312を介してマイクロニードル330のチャンネル331へ流入することが開始され得る。薬剤化合物307が貯蔵部306からチャンネル331へどのように流れるかについての例示的な説明が、
図17〜
図18に示されている。とりわけ、薬剤化合物307の流れは、受動的に開始され、能動的な送達機構(例えばポンプ)は必要としない。
【0158】
図13〜
図18に示した実施形態では、リリース部材を除去すると、薬剤送達アセンブリがマイクロニードルアセンブリに流体連通されるので、薬剤化合物のマイクロニードルへの流動が即座に開始される。なお、いくつかの実施形態では、薬剤化合物の放出タイミングについてのより多様な制御をユーザに提供することが望ましいであろう。このことは、マイクロニードルアセンブリが最初は薬剤送達アセンブリに流体連通されていないパッチ構造を用いることにより実現され得る。このようなパッチを使用することを望む場合、ユーザは、前記両アセンブリを物理的に操作して互いに流体連通させることができる。リリース部材は、そのような物理的操作を行う前または後に除去され得る。
【0159】
例えば、
図19〜
図24を参照すると、パッチ200の特定の一実施形態が示されている。
図19〜
図20は、パッチ200の使用前の状態を示し、マイクロニードルアセンブリ280から作製された第1の部分250と、薬剤送達アセンブリ370から作製された第2の部分260とを示す。薬剤送達アセンブリ270は、上述したように、流速制御膜208に隣接して配置された貯蔵部206を含む。任意選択ではあるが、薬剤送達アセンブリ270は、貯蔵部206に隣接して配置された接着層204を含むこともできる。マイクロニードルアセンブリ280は、同様に、上述したように、チャンネル231を有する複数のマイクロニードル230が延設される支持体212を含む。
【0160】
この実施形態では、支持体212及び流速制御膜208は、最初は、互いに水平方向に隣接して配置されており、リリース部材210は、支持体212及び流速制御膜208の上側に延在している。この特別な実施形態では一般的に、リリース部材210は、接着剤(例えば感圧接着剤)によって、支持体212及び流速制御膜208に取り外し可能に結合されていることが望ましい。
図19〜
図20に示すような「インアクティブ」形態では、パッチ200の薬剤送達アセンブリ270は、パッチを「アクティブ」にすることが所望されたときは、
図21〜
図22に示すように、リリース部材210を引き剥がして除去することによって、リリース部材210と支持体212の開口部(図示せず)と間に形成されているシールを破壊することができる。その後、流速制御膜208が支持体212に垂直方向に積層配置されかつ支持体212に流体連通されるように、
図23の矢印方向で示すように、第2の部分260を折り畳み線「F」に沿って折り畳むことができる。あるいは、第1の部分250を折り畳んでもよい。いずれの場合でも、第1の部分250及び/または第2の部分260を折り畳むことによって、薬剤送達アセンブリ270から支持体212を介してマイクロニードル230のチャンネル231への薬剤化合物207の流動が開始される(
図24)。
【0161】
本発明のデバイスは、治療上有用であるように或る速度で薬剤を送達することができる。この目的のために、本発明の経皮デバイスは、予めプログラムされたスケジュールに従って、または患者、医療専門家、または生体センサとのアクティブインターフェースを通じて送達速度を制御するために、マイクロエレクトロニクスまたは他のマイクロ加工構造体を有するハウジングを含み得る。本発明のデバイスは、該デバイス内に含有される薬剤の放出を制御するために、表面において所定の分解速度を有する材料を含み得る。送達速度は、送達される製剤の特徴(例えば、粘性、電荷及び/または化学組成)、各デバイスの寸法(例えば、開口部の外径及び容積)、経皮パッチに設けられるマイクロニードルの数、担体マトリックスにおける個々のデバイスの数、適用する駆動力(例えば、濃度勾配、電圧勾配、圧力勾配)、バルブの使用などの様々な因子を操作することにより制御することができる。
【0162】
本発明のデバイスを介した薬剤の輸送は、例えば、バルブ、ポンプ、センサ、アクチュエータ、またはマイクロプロセッサの様々な組み合わせを使用して、制御または監視することができる。これらの部品は、一般的な製造技術または微細加工技術を用いて作製され得る。本発明のデバイスに有用であり得るアクチュエータには、マイクロポンプ、マイクロバルブ、またはポジショナーが含まれ得る。例えば、ポンプまたはバルブを制御し、それによって送達速度を制御するように、マイクロプロセッサをプログラムすることができる。
【0163】
本発明のデバイスを通じた薬剤の流れは、拡散または毛細管現象に基づいて生じ得るか、あるいは、従来の機械的ポンプ若しくは非機械的駆動力(例えば、電気浸透や電位泳動)または対流を用いて引き起こされ得る。例えば、電気浸透の場合、逆帯電したイオン種及び/または中性分子を送達部位へ向けてまたは送達部位内に運ぶ対流を発生させるために、生体表面(例えば皮膚表面)、マイクロニードル、及び/またはマイクロニードルに隣接する基板に、電極が配置される。
【0164】
薬剤の流れは、マイクロニードル表面を形成する材料を選択することにより操作され得る。例えば、特に液体状態の薬剤の通路を方向付けるのに、本発明のデバイスのマイクロニードルの表面に隣接する1若しくは複数の大きな溝が使用され得る。あるいは、本発明のデバイスの物理的表面特性は、例えば親水性または疎水性を制御することにより、表面に沿った薬剤の輸送を促進または抑制するように処理され得る。
【0165】
薬剤の流れは、当技術分野で公知のバルブまたはゲートを使用して調節され得る。バルブは、繰り返し開閉することができるバルブ、または単回使用バルブであり得る。例えば、破壊可能なバリアまたは一方向ゲートが、本発明のデバイスの貯蔵部とパターニングされた表面との間に設けられ得る。すぐに使用できる状態のとき、バリアを破壊するかまたはゲートを開くことにより、薬剤のマイクロニードル表面への流動を可能にし得る。本発明のデバイスに使用される他のバルブまたはゲートは、該デバイスによる分子の流動を選択的に開始、調節または停止するように、熱的、電気化学的、機械的、または電磁的に駆動され得る。一実施形態では、前記流動は、流速制御膜を「バルブ」として使用することにより制御される。
【0166】
一般的に、貯蔵部、流れ制御システム、センサシステムなどを含む当技術分野で既知の任意の送達制御システムを、本発明のデバイスに組み込むことができる。例として、米国特許第7,250,037号明細書(特許文献30)、米国特許第7,315,758号明細書(特許文献31)、米国特許第7,429,258号明細書(特許文献32)、米国特許第7,582,069号明細書(特許文献33)、米国特許第7,611,481号明細書(特許文献34)に、本発明のデバイスに組み込むことができる貯蔵部及び制御システムが記載されている。
【0167】
本発明のデバイスによって送達され得る薬剤は、該デバイスの近くの局所領域を対象としたものであってもよいし、より広範な分布を対象としたものであってもよい。例えば、一実施形態では、本発明のデバイスは、例えば変形性関節症または関節リウマチの治療において、疼痛管理または炎症管理のために関節付近の局所領域に薬剤を送達することができる。
【0168】
本発明のデバイスのナノトポグラフィは、異物反応及び免疫反応を最小化しつつ、薬剤の送達を向上させることができる。このことは、核膜へのオリゴヌクレオチド及び他の治療薬の送達を考慮する場合に特に有益であることが分かるであろう。従来から、核膜への物質(例えば、プラスミド、siRNA、RNAiなど)の送達に問題のあることが知られている。というのも、エンドサイトーシスが達成されたときでさえ、恐らくは異物反応及び免疫反応のせいで、核膜への適切なエンドソーム送達が難しいことが分かっているからである。細胞質内に取り込まれると、被送達物質は、多くの場合、後期エンドソームを経て再利用されるか、リソソーム内で分解される。開示されている方法によれば、マイクロニードルとECMとの相互作用により、エンドサイトーシスの後に細胞内での異物反応を防止し、核への物質の送達を促進することができる。
【0169】
タンパク質治療薬の送達は、同様に問題のあることが証明されている。例えば、タンパク質治療薬などの高分子量薬剤の送達は、皮膚の天然バリアが原因で、経皮送達経路には困難であることが分かっている。マイクロニードル上のナノトポグラフィの存在は、ECMの熱力学に有利に影響を及ぼしかつタンパク質治療薬の送達効率及び取り込みを向上させることができる。本明細書において、「タンパク質治療薬」なる用語は、一般的に、任意の生物学的に活性なタンパク質性化合物を指し、これらに限定しないが、天然化合物、合成化合物、組み換え化合物、融合タンパク質、キメラなど、あるいは、20個の標準的アミノ酸及び/または合成アミノ酸を含む化合物が含まれる。例えば、本発明のデバイスを顆粒層内またはその近傍に位置させることによってタイトジャンクション(密着結合)を開くことができ、それにより、高分子量薬剤の傍細胞輸送が可能になる。一実施形態では、本発明のデバイスは、高分子量薬剤(例えば、約400Da以上、約10Da以上、約20Da以上、または約100Da以上、例えば約150Da以上の分子量を有する薬剤)の経皮送達に用いることができる。加えて、本発明のデバイスの表面積対体積比の変化を利用してデバイスの表面でのタンパク質吸着を変化させることができ、それにより今度は、物質の送達及び細胞取り込みを変化させることができる。このようにして、デバイスの表面積/体積比の最適化を通じて特定の物質の送達を最適化することができる。
【0170】
低分子量薬剤の送達を考慮する場合でも、本発明のデバイスと皮膚結合組織の成分との相互作用、並びにそれに伴う異物反応の減少及び該領域の局所的な化学ポテンシャルの向上に起因して、本発明のデバイスは送達効率の向上及び取り込みの改善を提供し得る。
【0171】
当然ながら、本発明のデバイスは、標的指向性を有する薬剤送達に限定されるものではない。薬剤の全身送達も、本発明のデバイスを介して患者(被験体)から薬剤を取り除く場合と同様に、本発明に含まれる。
【0172】
本発明のデバイスを用いて送達され得る薬剤には、特に制限はない。薬剤は、インスリン、免疫グロブリン(例えば、IgG、IgM、IgA、IgE)、TNF−α、抗ウイルス薬などのタンパク性医薬品;プラスミド、siRNA、RNAi、ヌクレオシド抗癌薬、ワクチンなどを含むポリヌクレオチド薬;アルカロイド、グリコシド、フェノールなどの小分子薬剤を含み得る。薬剤は、抗感染薬、ホルモン、強心作用または血流を調整する薬剤、疼痛管理薬などを含み得る。本発明に従って送達され得るさらに他の物質は、疾患の予防、診断、緩和、治療または治癒に有用な薬剤である。薬剤の非限定的な例として、抗血管新生薬、抗鬱薬、抗糖尿病薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症性薬、ブトルファノール、カルシトニン及び類似体、COX−II阻害薬、皮膚病薬、ドーパミンアゴニスト及びアンタゴニスト、エンケファリン及び他のオピオイドペプチド、上皮成長因子、エリトロポエチン及び類似体、卵胞刺激ホルモン、グルカゴン、成長ホルモン及び類似体(成長ホルモン放出ホルモンを含む)、成長ホルモンアンタゴニスト、ヘパリン、ヒルジン及びヒルジン類似体(ヒルログなど)、IgE抑制因子及び他のタンパク質阻害薬、免疫抑制薬、インスリン、インシュリノトロピン(insulinotropin)及び類似体、インターフェロン、インターロイキン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン及び類似体、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、動揺病(乗り物酔い)止め製剤、筋肉弛緩薬、麻薬性鎮痛薬、ニコチン、非ステロイド系抗炎症薬、オリゴ糖、副甲状腺ホルモン及び類似体、副甲状腺ホルモンアンタゴニスト、プロスタグランジンアンタゴニスト、プロスタグランジン、スコポラミン、鎮静薬、セロトニンアゴニスト及びアンタゴニスト、性機能低下、組織プラスミノーゲン活性化因子、精神安定薬、担体/アジュバント含有または不含ワクチン、血管拡張薬、主要診断薬(ツベルクリン及び米国特許第6,569,143号明細書(特許文献35)に記載されているような他の過敏症薬など)が挙げられる。特許文献35の全内容は、引用を以て本明細書の一部となす。ワクチン製剤は、ヒト病原体に対する、または他のウイルス病原体からの、免疫反応を誘発することができる抗原または抗原組成を含み得る。
【0173】
1つの好適な実施形態では、関節リウマチなどの慢性疾患の治療において、薬剤の定常流を、それを必要とする患者に送達するために、本発明のデバイスを用いることができる。開示されているデバイスにより送達可能なRA薬は、症状抑制化合物、例えば鎮痛薬及び抗炎症薬(ステロイド系抗炎症薬及び非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)の両者)並びに疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)を含み得る。
【0174】
本発明のデバイスは、鎮痛薬や抗炎症薬などの症状抑制化合物や、生物学的DMARDを含むDMARDsを保持しかつ送達することができる。如何なる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明のデバイスの表面に形成されたナノメートルスケールの構造体は、皮膚バリアを透過しての症状抑制化合物の送達を向上させると考えられる。本発明のデバイスを使用することにより、RA薬を一定濃度で或る徐放期間にわたって送達することができる。本発明のデバイスは、経口送達や注射を含む以前から知られているRA薬送達方法を用いる場合によく見られる濃度の初期バーストを防止することができる。
【0175】
本発明のデバイスに組み込まれ得るRA薬には、これらに限定しないが、1若しくは複数の鎮痛薬、抗炎症薬、DMARDs、ハーブをベースにした薬剤、またはそれらの組み合わせが含まれ得る。当然ながら、特定の化合物は、大まかに、本明細書で説明する1以上の一般的なカテゴリに分類することができる。例えば、多くの化合物は、鎮痛薬と抗炎症薬の両方の機能を果たす;同様に、ハーブをベースにした薬剤は、DMARD及び抗炎症薬の機能を果たし得る。さらに、単一カテゴリに分類され得る複数の化合物を、本発明のデバイスに組み込んでもよい。例えば、本発明のデバイスは、アセトアミノフェン及びコデイン、またはアセトアミノフェン及びヒドロコドン(バイコディン)などの複数の鎮痛薬を含み得る。
【0176】
本発明のデバイスに組み込まれ得る鎮痛薬及び/またはNSAIDsの例には、薬局で入手可能な(OTC)比較的低用量の鎮痛薬が含まれ、そのようなものとしては、アセトアミド(アセトアミノフェンまたはパラセタモール)、アセチルサリチル酸(アスピリン)、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウムなどが挙げられる。本発明のデバイスに組み込まれ得る処方鎮痛薬及び/または抗炎症薬には、これらに限定しないが、処方を要する濃度のOTC鎮痛薬、セレコキシブ、スリンダク、オキサプロジン、サルサラート、ピロキシカム、インドメタシン、エトドラク、メロキシカム、ナブメトン、ケトロラック、ケトロラックトロメタミン、トルメチン、ジクロフェナク、ジプロクァロン、ジフルニサルが含まれ得る。麻薬性鎮痛薬には、コデイン、ヒドロコドン、オキシコドン、フェンタニル、プロポキシフェンが含まれ得る。
【0177】
本発明のデバイスは、グルココルチコイドを主成分とする1若しくは複数のステロイド系抗炎症性化合物を含み得、そのようなものとしては、これらに限定しないが、コルチゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、アルドステロンが挙げられる。
【0178】
本発明のデバイスに含まれ得るDMARDsは、低分子薬剤及び生物学的薬剤の両方を包含し得る。DMARDsは、化学的に合成してもよいし、または、遺伝子工学プロセス(例えば組み換え技術)によって作製してもよい。
【0179】
本明細書に包含される化学的に合成されるDMARDsには、これらに限定しないが、アザチオプリン、シクロスポリン(シクロスポリン、シクロスポリンA)、D−ペニシラミン、金塩(例えば、オーラノフィン、アウロチオマレイン酸ナトリウム(Myocrism))、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、メトトレキサート、ミノサイクリン、スルファサラジン、シクロホスファミドが含まれる。生物学的DMARDsには、これらに限定しないが、TNFα阻害薬、例えば、エタネルセプト(エンブレル(登録商標))、インフリキシマブ(レミケード(登録商標))、アダリムマブ(ヒュミラ(登録商標))、セルトリズマブペゴール(シムジア(登録商標))、ゴリムマブ(シンポニー(商標商標));IL−1阻害薬、例えばアナキンラ(キネレット(登録商標));B細胞に対するモノクローナル抗体、例えば、リツキシマブ(リツキサン(登録商標));T細胞副刺激阻害薬、例えばアバタセプト(オレンシア(登録商標));IL−6阻害薬、例えばトシリズマブ(ロアクテムラ(RoActemra)(登録商標)、アクテムラ(登録商標));カルシニューリン阻害薬、例えばタクロリムス(プログラフ(登録商標))が含まれる。
【0180】
本発明のデバイスには、1若しくは複数の、ハーブをベースにした薬剤や他の天然由来の薬剤が組み込まれ得る。例えば、アユルベーダ化合物、例えばボスウェル酸(ボスウェリア・セラータの抽出物)またはクルクミン(ウコン由来のクルクミノイド)や、他の天然由来化合物、例えばグルコサミン・サルフェイト(甲殻類の外骨格の加水分解または穀物の発酵により生成される)が、本発明のデバイスに組み込まれ得る。
【0181】
本発明のデバイスには、複数のRA薬が組み込まれ得る。例えば、本発明のデバイスは、鎮痛薬及び/または抗炎症薬に加えて、DMARDsの組み合わせを含み得る。DMARDsの一般的な組み合わせには、例えば、メトトレキサートとヒドロキシクロロキンとの組み合わせ、メトトレキサートとスルファサラジンとの組み合わせ、スルファサラジンとヒドロキシクロロキンとの組み合わせ、または、これらの3つのDMARDsの全てすなわちメトトレキサートとスルファサラジンとヒドロキシクロロキンとの組み合わせが含まれる。
【0182】
本発明のデバイスには、有益なことに、高分子量化合物及び/または低分子量化合物が組み込まれ得る。例えば、従来から、皮膚の天然バリアが原因でタンパク質治療薬の経皮送達に問題のあることが知られている。如何なる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明のデバイスのマイクロニードルのナノトポグラフィの存在は、有益なことに、皮膚バリアの細胞及びECMと相互作用して、タンパク質治療薬の送達効率及び取り込みを向上させ得る。例えば、本発明のデバイスを顆粒層内またはその近傍に位置させることによってタイトジャンクション(密着結合)を開くことができ、それにより、高分子量薬剤の傍細胞輸送を可能にする。本明細書で使用される高分子量薬剤なる用語は、一般的に、約400Da以上、約10Da以上、約20Da以上、または約100Da以上の高分子量を有する薬剤を指す。
【0183】
より分子量の薬剤の送達を考慮する場合でも、本発明のデバイスと皮膚結合組織の成分との相互作用、並びにそれに伴う異物反応の減少及び該領域の局所的な化学ポテンシャルの向上に起因して、本発明のデバイスは送達効率の向上及び取り込みの改善を提供し得る。加えて、本発明のデバイスは、薬剤を一定濃度で所定の徐放時間に渡って送達することができ、このことは有益で有り得る。
【0184】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、より良く理解できるであろう。
【実施例】
【0185】
実施例1
【0186】
電気回路の設計及び製造に用いられるものと同様のフォトリソグラフィ技術を用いて、幾つかの異なるモールドを準備した。個々のプロセスステップは、当分野で一般的に知られており、既に説明されている。
【0187】
初めに、シリコン基板を、アセトン、メタノール及びイソプロピルアルコールにより洗浄することによって準備し、次に、化学蒸着プロセスに従って258ナノメートル(nm)の二酸化ケイ素層でコーティングした。
【0188】
次に、日本電子(JEOL)製のJBX−9300FS電子線描画(EBL)装置を用いて、当分野で既知であるような電子ビームリソグラフィパターニングステップによって各基板上にパターンを形成した。処理条件は、以下の通りであった。
ビーム電流=11nA
加速電圧=100kV
ショットピッチ=14nm
ドーズ量=260mC/cm
2
レジスト=ZEP520A,厚さ〜330nm
現像液=酢酸n−アミル
現像=2分間浸漬した後、30秒間イソプロピルアルコールでリンス。
【0189】
その後、STS社の改良型酸化物エッチング(Advanced Oxide Etch:AOE)装置を用いて二酸化ケイ素エッチングを行った。エッチング時間は50秒間で、He流量55標準立方センチメートル毎分(sccm)、CF
4流量22sccm、C
4F
8流量20sccmを用い、混合ガスの圧力4mTorr、コイル400W、RIE装置の電力200W、DCバイアス404〜411Vあった。
【0190】
続いて、STS社の酸化ケイ素エッチング(silicon oxide etch:SOE)装置を用いてシリコンエッチングを行った。エッチング時間は2分間で、20sccmのCl
2及び5sccmのArを用い、混合ガスの圧力5mTorr、コイル600W、RIE装置の電力50W、DCバイアス96〜102Vであった。シリコンエッチング深さは500nmであった。
【0191】
残りの酸化物を除去するために、緩衝酸化物エッチング液(buffered oxide etchant:BOE)を用いた。この除去は、3分間のBOE浸漬と、それに続く純水洗浄とを含むものであった。
【0192】
オブデュキャット社(Obducat)製のナノインプリンタNIL-Eitre(登録商標)6を用いて、様々なポリマー基板上にナノパターンを形成した。冷却剤として外部水を用いた。利用したUVモジュールは、1.8W/cm
2で波長200〜1000nmの単一パルスランプであった。250〜400nmのUVフィルタを用いた。最大温度200℃及び圧力80Barで露光面積は6インチであった。ナノインプリンタは、半自動分離装置及び自動制御デモールディングを含んでいた。
【0193】
ナノインプリントされたフィルムをモールドから離型しやすくするために、モールドをトリデカ−(1,1,2,2−テトラヒドロ)−オクチルトリクロロシラン(F
13−TCS)で処理した。モールドを処理するために、先ずアセトン、メタノール及びイソプロピルアルコールの洗浄液によりシリコンモールドをきれいにし、窒素ガスにより乾燥させた。ペトリ皿を窒素雰囲気中で熱板上に置き、ペトリ皿に1〜5mlのF
13−TCSを加えた。シリコンモールドをペトリ皿に置き、10〜15分間蓋をしてF
13−TCS蒸気でシリコンモールドを湿潤させてから、モールドを除去した。
【0194】
下表2に記載されている5つの異なるポリマーを用いて、様々なナノトポグラフィ形状を形成した。
【0195】
【表2】
【0196】
幾つかの異なるナノトポグラフィパターンを形成した。それらの略図を
図25A〜
図25Dに示す。
図25Eに示すナノトポグラフィパターンは、日本国東京都のNTTアドバンステクノロジ株式会社から購入した平坦基板の表面である。これらのパターンを、DN1(
図25A)、DN2(
図25B)、DN3(
図25C)、DN4(
図25D)及びNTTAT2(
図25E)と名付けた。モールドのSEM像を
図25A、
図25B及び
図25Cに示し、フィルムのSEM像を
図25D及び
図25Eに示している。
図8は、
図25A(DN1)のモールドを用いて形成したナノパターニングされたフィルムを示している。この特定のフィルムにおいては、先述のように温度変化によってポリマーのフィーチャが描かれた。
図24Eのパターンの表面粗さは、34nmであることが分かった。
【0197】
このナノインプリンティングプロセスに従って、
図7の(C)及び(D)に示されているパターンも形成した。このパターンには、図のように複数のピラー72及びピラー62が含まれていた。より大きなピラー72は、直径3.5マイクロメートル(μm)、高さ30μm、中心間距離6.8μmに形成された。ピラー62は、高さ500nm、直径200nm、中心間距離250nmであった。
【0198】
ポリプロピレンフィルムとともに用いたナノインプリンティングプロセス条件を下表3に示す。
【0199】
【表3】
【0200】
実施例2
【0201】
様々な異なるパターンを含みかつポリスチレン(PS)またはポリプロピレン(PP)のいずれかから形成されている実施例1に上記したようなフィルムを形成した。下層基板は、厚さが異なる。用いたパターンは、実施例1に記載した形成プロセスを利用するDN2、DN3またはDN4のいずれかであった。このように名付けられたパターンを有する様々な異なるサイズのフィーチャを形成するために、孔の深さ及びフィーチャが異なるパターンモールドを用いた。モールドとして0.6μmのミリポアポリカーボネートフィルタを用い、サンプル8番(BB1と名付けた)を形成した。このフィルタの上に25μmのポリプロピレンフィルムを載せ、その後、ポリプロピレンがフィルタの孔に流れ込むことができるようにポリプロピレンを加熱して融解させた。それから、モールドを冷却し、塩化メチレン溶媒を用いてポリカーボネートモールドを溶解した。
【0202】
形成されたフィルムのSEMを
図26〜
図34に示し、形成されたフィルムの特徴を下表4に要約する。
【0203】
【表4】
【0204】
各サンプルに対して、AFMを用いてフィルムの特徴付けを行った。特徴付けに含まれていたのは、走査型電子顕微鏡写真(SEM)の形成、表面粗さの決定、最大測定フィーチャ高さの決定及びフラクタル次元の決定であった。
【0205】
用いた原子間力顕微鏡(AFM)プローブは、マイクロマッシュ社(μMasch)製のシリーズ16シリコンプローブ及びカンチレバーであった。カンチレバーは、共振周波数170kHz、バネ定数40N/m、長さ230±5μm、幅40±3μm、厚さ7.0±0.5μmであった。プローブチップはリンをドープしたn型シリコンプローブであり、その標準的なプローブチップ半径は10nm、チップ全体の円錐角は40°、チップ高は20〜25μm、バルク抵抗率は0.01〜0.05Ω−cmであった。
【0206】
表4に記載されている表面粗さ値は、ISO25178シリーズにおいて定義される表面面積粗さパラメータの算術平均高さである。
【0207】
フーリエ振幅スペクトルを解析することによって、異なる角度に対するフラクタル次元を計算した;異なる角度及び振幅に対して、フーリエプロファイルを抽出し、周波数及び振幅座標の対数を計算した。その後、各方向に対するフラクタル次元Dを次式の如く計算する。
【0208】
D=(6+s)/2
【0209】
ここで、sは両対数曲線の(負の)傾きである。これにより得られるフラクタル次元は、全方向の平均である。
【0210】
フラクタル次元は、両対数関数の適用によって2Dフーリエスペクトルから評価することもできる。表面がフラクタルである場合、両対数グラフは、負の傾きを持ち高度に線形であるはずである(例えば、非特許文献27を参照)。
【0211】
実施例3
【0212】
6ウェルプレート内で、濃度25,000細胞/cm
2、37℃、5%CO
2で24時間、10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン含有DMEMでヒト皮膚HaCaT上皮細胞を成長させた。プレートは、上記実施例1に記載したように形成され、DN1、DN2(表3のサンプル4)、DN3と名付けられた、ナノパターニングされたポリプロピレンフィルム、または未処理の表面のいずれかをウェルの底部に有していた。ナノパターニングされたフィルムをシアノアクリレートにより適所に接着した。
【0213】
1ウェル当たり1mLのトリプシンを用いて10分間細胞を表面から引き離し、1mLの成長培地(同上)によりクエンチし、その後、マイクロ遠心チューブに移して1200rpmで7分間遠心してペレット状にした。
【0214】
キアゲン(Qiagen)社製のRneasyミニプレップ・キットを用いて、製造業者のプロトコールに従って、ペレット状にした細胞からRNAを単離した。手短に言えば、細胞を溶解させ、エタノールと混合し、カラム内で遠沈した。その後、溶解物を3回洗浄し、DNaseで処理して40ml容量で溶出した。
【0215】
SAバイオサイエンス社(SA Biosciences)製のRT用ファーストストランド・キットを用いて単離したRNAからcDNAを作製した。手短に言えば、RNAを42℃で5分間DNaseで再度処理した。次に、ランダムプライマー及び逆転写酵素を加え、42℃で15分間インキュベートし、その後95℃で5分間インキュベートして反応を停止させた。
【0216】
その後、IL1−β、IL6、IL8、IL10、IL1R1、TNFα、TGFβ−1、PDGFA、GAPDH、HDGC、RTC及びPPCのためのプライマーを使い、SAバイオサイエンス社製のRTプロファイラ(RT profiler)カスタムPCRアレイを用いて、cDNAサンプルに対してqPCRを行った。手短に言えば、cDNAをサイバーグリーン(SYBR green)及び水と混合し、次に、対象の遺伝子に対する適切なセンス及びアンチセンス・プライマー対を予め固定したPCRプレートに、加えた。その後、95℃に加熱したABI社製StepOnePlus(登録商標)PCRシステム上でプレートのラン(測定)を10分間行い、その後、95℃で15秒間及び60℃で1分間を45サイクル行った。
【0217】
内部対照(internal control)としてGAPDHを用いてΔΔCt解析を行った。活性及びゲノムDNA混入のための追加内部対照として、HDGC、RTC及びPPCレベルを用いた。
【0218】
その後、一元配置分散分析法(One-way ANOVA)及びテューキー2点法(Tukey's 2-point test)を用いて、表面間の差の統計的有意性を判定した。
【0219】
下表5は、ポリプロピレンフィルム上に作製されたナノインプリントされた構造における発現の倍率変化(fold change)として得られたタンパク質発現と、構造化されていないフィルムにおける発現とを比較して表している。
【0220】
【表5】
【0221】
実施例4
【0222】
実施例3に記載の方法を用いて、ヒト皮膚HaCaT上皮細胞を様々な異なるポリプロピレン(PP)またはポリスチレン(PS)フィルム上で成長させ、上記のように形成しかつパターニングしたときの、ヒト皮膚HaCaT上皮細胞由来の幾つかの異なるサイトカインに対する発現レベルを調べた。各サイトカインに対する発現レベルと、標準組織培養ポリスチレン(TCPS)上で培養されかつリポ多糖(LPS)により誘発された同じ細胞型由来のサイトカインの発現レベルとを比較した。結果を下表6に示す。
【0223】
上記したようなDN2パターンを有するナノパターニングされたポリプロピレンフィルム上で成長させた細胞(表4のサンプル4)は、TCPSと比べて、IL−1β、IL−1ra、IL−10及びMIP−1βの発現を上方制御し、IL−4、IL−13、MIG、KC、IL−2、MIP−1、TNF−α、IL−12、IL−16及びIL−1αの発現を下方制御することが判明した。
【0224】
幾つかの他のフィルムの、様々なサイトカインの細胞発現に対する効果を調べた。各フィルムを以下のように名付けた。
1−DN2パターンを有する75μmポリスチレンフィルム(表4のサンプル3)
2−DN3パターンを有する75μmポリスチレンフィルム(表4のサンプル1)
3−DN4パターンを有する75μmポリスチレンフィルム(表4のサンプル6)
4−インプリントされていない75μmポリスチレンフィルム
5−DN2パターンを有する25.4μmポリプロピレンフィルム(表4のサンプル4)
6−DN4パターンを有する25.4μmポリプロピレンフィルム(表4のサンプル7)
7−DN2パターンを有する5μmポリプロピレンフィルム(表4のサンプル2)
8−BB1ポリプロピレンフィルム(表4のサンプル8)
9−インプリントされていない25.4μmポリプロピレンフィルム
10−インプリントされていない5μmポリプロピレンフィルム
【0225】
結果を下表6に示す。結果は、以下のように与えられる。
−− 発現レベルは検査閾値を下回った
―― 発現レベルはTCPSの発現レベルを下回った
= 発現レベルはTCPSの発現レベルと同様であった
+ 発現レベルはTCPSの発現レベルを上回ったが、LPSに誘発されたときの発現レベルを下回った
++ 発現レベルはLPS誘発の発現レベルと同様であった
+++ 発現レベルはLPS誘発の発現レベルを上回った
【0226】
【表6】
【0227】
実施例5
【0228】
6ウェルプレート内で、濃度25,000細胞/cm
2、37℃、5%CO
2で24時間、10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン含有DMEMでヒト皮膚HaCaT上皮細胞を成長させた。プレートは、上記実施例1に記載したように形成され、DN1、DN2(表3のサンプル4)、DN3と名付けられたポリプロピレンフィルム、または未処理の表面のいずれかをウェルの底部に有していた。フィルムをシアノアクリレートにより適所に接着した。
【0229】
各ウェルから培地を採取し、ミリポア社(Millipore)製のミリプレックス・マップ・キットによりサイトカイン産生を解析した。IL1−β、IL1RA、IL6、IL8、IL10、PDGF−AA、PGGF−AB/BB及びTNF−αを検出するためにビーズを用いた。バイオ・ラッド社(BioRad)製バイオプレックス(BioPlex machine)にて測定を行った。手短に言えば、培地を、フィルタを備えたマイクロプレートウェル内に入れた。主要ビーズを加え、振盪させながら室温で1時間インキュベートした。次に、プレートを洗浄し、検出抗体を加えて振盪させながら室温で30分間インキュベートした。その後、ストレプトアビジン−フィコエリスリンを加え、室温でさらに30分間インキュベートした。それから、プレートを洗浄し、ビーズをアッセイ緩衝液中で再懸濁し、バイオプレックスを使って蛍光強度の中央値を解析した。
【0230】
実施例6
【0231】
上記したようにパターニングされたフィルムがCaco−2細胞単層(ヒト上皮結腸直腸腺癌細胞)に与える透過効果を判定した。
【0232】
上記実施例1に記載したように形成したフィルム(DN2、DN3及びDN4と名付けられたパターンを有して形成されたフィルムを含む)を用いた。第4のフィルムすなわちBB1(上記実施例2で説明済み)と名付けられたフィルムも用いた。フィルムタイプ別に複数の例でプロトコールを実行した。
【0233】
各フィルムに関して準拠した一般プロトコールは以下の通りであった。
【0234】
材料
セルカルチャーインサート0.4um孔径HDPETメンブレン(BD Falcon)
24ウェルプレート(BD Falcon)
Caco−2培地
上記したようなナノ構造メンブレン
IgG−FITC(Sigma Aldrich)
BSA−FITC(Sigma Aldrich)
フェノールレッド不含MEM(Minimum Essential Medium)培地(Invitrogen)
TEER電圧計
加温したPBS
黒色96ウェルプレート
アルミ箔
【0235】
プロトコール
1.透過性アッセイが行われる2週間前に、コラーゲンコーティングしたウェルインサート上にCaco−2細胞を播く。100%エタノールとコラーゲンの体積比を1:1にすることによって、コラーゲンコーティングプレートを作製する。無菌フード内で表面を乾燥するまで一晩乾燥させる。
2.フェノールレッド不含α−MEM培地において対象のFITC共役分子(BSA、IgGなど)の溶液を0.1mg/mL作る。アルミ箔にくるんで光から保護する。
3.抵抗を測定することによって、Caco−2細胞の密集度をチェックする。密集度に対して抵抗は約〜600Ωであるべきである。
4.頂端(アピカル)側及び基底外側においてセルカルチャーインサートから古い培地を吸引する。PBSでリンスして、残りのフェノールレッド色素を除去する。
5.各インサートの頂端側において0.5mLのFITC共役溶液を加える。
6.セルカルチャーインサートを備えた別の24ウェルプレートにおいて、0.5mLの加温したPBSを加える。
7.インサートをPBSの付着したプレートに移す。キムワイプでインサートの底部を拭き取ることにより、残りのフェノールレッドを除去する。
8.t=0の時点:インサートの基底外側から75mLを採取し、底部が黒色の96ウェルプレートに移す。上記体積を75mLの加温したPBSに置き換える。「チョップスティック型」電極を用いて各ウェルの抵抗を記録する。
9.メンブレンを適切にラベルを付けたウェルに注意深く加える。対照は、インプリントされていないメンブレン及び細胞単独である。顕微鏡下で、メンブレンが細胞と直接接触することをチェックする。細胞との接触を示すはっきりした円を見ることができるはずである。
10.t=0の時点:ステップ7を繰り返し、その後インキュベータ内に1時間載置する。
11.t=1の時点:ステップ7を繰り返し、その後インキュベータ内に1時間載置する。
12.t=2の時点:ステップ7を繰り返す。
13.分光蛍光光度計プレートリーダーを用いて蛍光シグナルを測定する。FITC(励起=490nm、発光=520nm)
【0236】
結果
使用したフィルム及び得られた結果を要約したものを下表7に示す。
【0237】
【表7】
【0238】
弾性率の決定は、非特許文献28に記載されているような当分野で既知の標準方法に従って行った。
【0239】
標準的技法(例えば、非特許文献29を参照)に従って、表面上に水滴を垂らすことによって接触角を測定した。
【0240】
図35は、本明細書に記載のナノパターンがパターニングされたポリスチレンフィルム上の細胞単層におけるウシ血清アルブミン(BSA)の透過率に対する効果をグラフで示している。フィルムパターンには、図のように、DN2パターン(サンプル3番)、DN3パターン(サンプル5番)及びDN4パターン(サンプル6番)が含まれていた。さらに、パターニングされていないフィルムの結果(
図35にPSUIと示されている)及び隣接フィルムのない細胞層の結果(
図35に「細胞」と示されている)も示す。これらの結果は、透過率の倍率増加として、時間[hours]単位で測定した時間の関数として示されている。
【0241】
図36A及び
図36Bは、本明細書に記載のナノパターンがパターニングされたポリスチレンフィルム上の細胞単層における免疫グロブリンG(IgG)の透過率に対する効果をグラフで示している。フィルムパターンには、図のように、DN2パターン(サンプル3番)、DN3パターン(サンプル5番)及びDN4パターン(サンプル6番)が含まれていた。さらに、パターニングされていないフィルムの結果(
図36A及び
図36BにPSUIと示されている)及び隣接フィルムのない細胞層の結果(
図36A及び
図36Bに「細胞」と示されている)も示す。これら2つの図は、2つの異なる時間スケールでデータを示している。
【0242】
蛍光光度計上でBSAシグナルを読み取り、分光光度計上でIgGシグナルを読み取った。
【0243】
図37A及び
図37Bは、DN4がパターニングされたポリスチレン表面(サンプル6番)上の細胞単層内外のIgGの傍細胞及び経細胞輸送をそれぞれ示す3次元生死判別(3D live/dead)蛍光染色像である。
【0244】
図38は、本明細書に記載のナノパターンがパターニングされたポリプロピレンフィルム上の細胞単層におけるBSAの透過率に対する効果をグラフで示している。パターンには、図のように、BB1(サンプル8番)、DN2(サンプル4番)及びDN4(サンプル7番)が含まれていた。さらに、パターニングされていないフィルムの結果(
図38にPSUIと示されている)及び隣接フィルムのない細胞層の結果(
図38に「細胞」と示されている)も示す。
【0245】
図39は、本明細書に記載のナノパターンがパターニングされたポリプロピレンフィルム上の細胞単層におけるIgGの透過率に対する効果をグラフで示している。パターンには、図のように、BB1(サンプル8番)、DN2(サンプル4番)及びDN4(サンプル7番)が含まれていた。さらに、パターニングされていないフィルムの結果(
図39にPSUIと示されている)及び隣接フィルムのない細胞層の結果(
図39に「細胞」と示されている)も示す。
【0246】
図40A及び
図40Bは、ポリプロピレンDN2がパターニングされた表面(サンプル4番)上の細胞単層内外のIgGの傍細胞輸送を示す3次元生死判別蛍光染色像である。
【0247】
図41の(A)〜(F)は、ナノパターニングされた表面上で培養されたCaco−2細胞の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。具体的には、
図41の(A)及び(B)は、平坦ポリスチレン対照フィルム上のCaco−2細胞を示している。
図41の(C)及び(D)は、上記したようなDN2パターン(サンプル3番)がパターニングされたポリスチレンフィルム上のCaco−2細胞を示しており、
図41の(E)及び(F)は、上記したようなDN3(サンプル5番)パターンがパターニングされたポリスチレンフィルム上のCaco−2細胞を示している。
【0248】
実施例7
【0249】
実施例6に記載の方法を用いて、融合タンパク質治療薬エタネルセプト(エンブレル(登録商標)という商品名で販売されている)のCaco−2細胞単層透過性を調べた。
図42は、ポリプロピレン(DN2 PP−表4のサンプル4)及びポリスチレン(DN2 PS−表4のサンプル3及び、DN3 PS−表4のサンプル1)の両者を含む幾つかの異なるパターニングされた基板上で成長させた細胞層の結果、並びにインプリントされていないポリスチレンメンブレン(PSUI)の結果及びメンブレン(細胞)のない細胞層の結果をグラフで示している。これらの結果は、初期透過率からの経時的倍率変化として示されている。
図43は、
図42の基板及び細胞層に対して、ウェルにメンブレンを追加した後の、2時間(t=2)の時点での、初期時点t=0からの透過率の倍率増加を示している。
【0250】
実施例8
【0251】
ナノパターニングされた表面を含むマイクロニードルのアレイを形成した。初めに、フォトリソグラフィプロセスによって、
図2に示したマイクロニードルのアレイをシリコンウェーハ上に形成した。各ニードルは、ニードルのベースに設けられた1つのダイ貫通孔(
図2には見えない)に整合されかつ互いに相反する側に配置された2つの側面チャンネルを含んでいた。
【0252】
シリコンベースのウェーハ上に、標準的なマイクロマシニングプロセスに従ってマイクロニードルを形成した。ウェーハにレジスト及び/または酸化物層を重ねて層状にし、続いて、標準方法に従って、選択エッチング(酸化物エッチング、DRIEエッチング、(iso)エッチング)、レジスト除去、酸化物除去及び、リソグラフィ技術(例えば、イソ(iso)リソグラフィ、ホール(孔)リソグラフィ、スリットリソグラフィ)を行うことにより、マイクロニードルのアレイを形成した。
【0253】
マイクロニードルアレイの形成に続き、マイクロニードルアレイ上に、例1で述べたようなDN2パターンが形成された5μmのポリプロピレンフィルムを載せた。その特徴は、表4中のサンプル2に説明されている。加熱された真空箱(3インチH
2O真空)上にウェーハ/フィルム構造を高温(130℃)で1時間保持し、フィルムのナノパターニングされた表面を維持しながらマイクロニードルの表面を覆うフィルムをゆっくりと引っ張った。
【0254】
図44は、マイクロニードルのアレイの上面を覆うフィルムを示しており、
図45は、ニードルの上面を覆うナノパターニングされたフィルムを含むアレイのうちの1本のニードルの拡大図である。
【0255】
実施例9
【0256】
実施例8に記載したように形成されたマイクロニードルアレイを含む経皮パッチを形成した。パッチの形成は、マイクロニードルアレイ上にDN2パターンまたはDN3パターンのいずれかを用いて行った。マイクロニードルに適用されたパターンを画定するフィルムを下表8において説明する。フィルム1は表4のサンプル2番に等しく、フィルム2は表4のサンプル9番に等しい。
【0257】
【表8】
【0258】
対照パッチも形成した。対照パッチには、マイクロニードルのアレイに適用した後のフィルム上にパターンを形成しなかった。薬剤供給業者からの指示に従って、エタネルセプト(エンブレル(登録商標))の経皮製剤及び皮下製剤を調製した。4mg/kgの皮下薬剤投与を促進するために、皮下投与製剤(陽性対照用)を調製した。所望の投与量200mg/kgを24時間で達成するように、経皮投与のためのエンブレル(登録商標)の濃度を調整した。
【0259】
この研究では、全部で10匹のBALB/Cマウス(番号#1〜#10を割り当てた)を用い、下表9に示すように、そのうち8匹にエンブレル(登録商標)を経皮投与し(群1)、2匹にエンブレル(登録商標)を皮下投与した(群2)。剪毛皮膚領域に経皮パッチを貼り付け、皮膚にパッチを貼り付けた直後にマイクロニードル先端付近に孔を形成した。
【0260】
【表9】
【0261】
使用した経皮パッチには、表面上にナノトポグラフィ(上記したようなDN2及びDN3パターン)を画定するパッチ及びナノトポグラフィのパターンなしのパッチの両者が含まれていた。
【0262】
表9に示した時点で全血のサンプルを採取した。下顎出血によって約100〜200mlの血液を採取し、次に冷凍遠心器(4℃に設定)内で約1300rpmで10分間遠心分離した。結果的に得られた血清を吸引し、血液採取/遠心分離から30分間以内に、適切にラベルを付けたチューブに移した。チューブを凍結させ、ヒトsTNFレセプタELISAキット(R&D Systems cat# DRT200)を用いてエンブレル(登録商標)のレベルの解析を行うまで、−70℃以下で暗所に保存した。被験体に不要なストレスがかからないようにするために、同一被験体に対する2回の血液採取間の時間間隔を24時間とした。
【0263】
図46は、表面上にナノトポグラフィを画定した経皮パッチの平均PKプロファイルをグラフで示している。ナノトポグラフィをマイクロニードル経皮パッチと組み合わせることの全体的効果を表すために、ナノトポグラフィを含むパッチ全てに対する結果の平均を用いた。図から分かるように、貼付から最初の2時間以内に血清レベルがパッチ面積800ng/mL/cm
2超まで急上昇した。続いて、血清レベルは、貼付から24時間以内に無視できる程度にまで徐々に低下した。
図46を作成するために用いたデータを下表10に示す。
【0264】
【表10】
【0265】
図47A及び
図47Bは、パッチと接触して保持されている皮膚の電子顕微鏡像の断面図を示している。これらの像は、パッチを除去した後(貼付後72時間)に撮影した。
図47Aのサンプルは、表面上にナノトポグラフィを含むパッチと接触させたものである。具体的には、上記したようなDN2パターンをパッチの表面上に形成した。
図46Bのサンプルは、表面上にナノトポグラフィのパターンを画定しなかった経皮パッチと接触させたものである。図から分かるように、
図47Bのサンプルは、炎症の兆候及び高い密度のマクロファージの存在を示している。
【0266】
実施例10
【0267】
実施例8に記載したように形成されたマイクロニードルアレイを含む経皮パッチを形成した。経皮パッチの形成は、実施例9の表8に記載したようなマイクロニードルアレイ上のDN2パターンまたはDN3パターンのいずれかを用いて行った。マイクロニードルのアレイを適用した後にフィルム上にパターンを形成しない対照パッチも形成した。薬剤供給業者からの指示に従って、エタネルセプト(エンブレル(登録商標))の経皮製剤及び皮下製剤を調製した。
【0268】
被験体(ウサギ)に、エンブレル(登録商標)を経皮投与したか、あるいはエンブレル(登録商標)を皮下(SubQ)投与した。結果を
図48にグラフで示す。この図には、血清濃度がpg/ml単位で時間の関数として与えられている。
図48を作成するために用いたデータを下表11に示す。
【0269】
【表11】
【0270】
本明細書において、本発明の主題をその具体的な実施形態に関して詳細に説明してきたが、当然のことながら、当業者は、上記記載を理解して、これらの実施形態の代替形態、変形形態及び等価形態を容易に考え出すことができる。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれと等価なものとして判断されるものとする。