特許第5871911号(P5871911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5871911治療用ペプチドの送達のための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871911
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】治療用ペプチドの送達のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20160216BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20160216BHJP
   C12R 1/46 20060101ALN20160216BHJP
【FI】
   C12N1/21
   C12N15/00 AZNA
   C12N1/21
   C12R1:46
【請求項の数】9
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2013-511358(P2013-511358)
(86)(22)【出願日】2011年5月19日
(65)【公表番号】特表2013-529087(P2013-529087A)
(43)【公表日】2013年7月18日
(86)【国際出願番号】US2011037149
(87)【国際公開番号】WO2011146715
(87)【国際公開日】20111124
【審査請求日】2014年5月16日
(31)【優先権主張番号】61/436,452
(32)【優先日】2011年1月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/346,107
(32)【優先日】2010年5月19日
(33)【優先権主張国】US
【微生物の受託番号】ATCC  PTA-11888
【微生物の受託番号】ATCC  PTA-11889
【微生物の受託番号】ATCC  PTA-11890
【微生物の受託番号】ATCC  PTA-11891
(73)【特許権者】
【識別番号】500078222
【氏名又は名称】ノース カロライナ ステート ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】501149684
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ バージニア パテント ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】クレーンハンマー, トッド アール.
(72)【発明者】
【氏名】ギャラント, リチャード エル.
(72)【発明者】
【氏名】コリング, グライニス エル.
(72)【発明者】
【氏名】ドゥルマズ, イーブリン
(72)【発明者】
【氏名】ティムコ, マイケル ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレン, サール アルカンタラ
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−531508(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01177794(EP,A1)
【文献】 国際公開第00/068251(WO,A1)
【文献】 Enzyme Microbial Technology, 1994, vol. 16, no. 7, p.573-576
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/0−90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種のアラニン−グルタミンリッチなポリペプチドを発現するように改変されているストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus細菌であって、該アラニン−グルタミンリッチなペプチドが、以下:
a)配列番号2または8に示された全長アミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;
b)配列番号4または10に示された全長アミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;あるいは
c)配列番号6または12に示された全長アミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド
からなる群より選択され、ここで、該異種のアラニン−グルタミンリッチなポリペプチドは、胆汁への曝露後、該ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)細菌から放出される、細菌。
【請求項2】
前記異種ポリペプチドが治療用ポリペプチドである、請求項1に記載の細菌。
【請求項3】
前記アラニン−グルタミンリッチなペプチドが、配列番号2、4、6、8、10、または12からなる群より選択される、請求項1または2に記載の細菌。
【請求項4】
前記胆汁への曝露後に生き残らない、請求項1〜のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項5】
前記ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus
)ATCCアクセッション番号PTA−11889として寄託されている、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilusNCK2071;
)ATCCアクセッション番号PTA−11890として寄託されている、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilusNCK2072;および
)ATCCアクセッション番号PTA−11891として寄託されている、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilusNCK207
からなる群より選択される、請求項1〜のいずれか一項に記載の細菌。
【請求項6】
異種のアラニン−グルタミンリッチなポリペプチドを発現するように改変されているストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus細菌を作製する方法であって、該方法は、異種のアラニン−グルタミンリッチなポリペプチドを発現するように細菌を遺伝的に改変する工程を含み、該アラニン−グルタミンリッチなペプチドが、以下:
a)配列番号2または8に示された全長アミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;
b)配列番号4または10に示された全長アミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;あるいは
c)配列番号6または12に示された全長アミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド
からなる群より選択され、ここで、アラニン−グルタミンリッチなポリペプチドは、胆汁への曝露後、該ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus細菌から放出される、方法。
【請求項7】
前記アラニン−グルタミンリッチなペプチドが、配列番号2、4、6、8、10、または12からなる群より選択される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記細菌が前記胆汁への曝露後に生き残らない、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus
)ATCCアクセッション番号PTA−11889として寄託されている、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilusNCK2071;
)ATCCアクセッション番号PTA−11890として寄託されている、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilusNCK2072;および
)ATCCアクセッション番号PTA−11891として寄託されている、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilusNCK207
らなる群より選択される、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生物学的治療剤の標的送達のための方法および組成物に関する。
【0002】
連邦政府によって支援された研究または開発
本発明は、NIH−MARCEによって与えられたU54 AI57168、およびNIHによって与えられたU01 AI075526のもとで、米国政府の支援によってなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
電子的に提出された配列表への言及
配列表の写しは、EFS−Webを介してASCIIフォーマットの配列表(上記配列表は、ファイル名が405777SEQLIST.txtであり、2011年5月19日に作成され、15KBのサイズを有する)として、電子的に提出されており、本明細書と同時に提出されている。このASCIIフォーマットのドキュメントに含まれる配列表は、本明細書の一部であり、その全容が参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0004】
乳酸菌(LAB)は、様々な発酵食品および乳製品においてヒトにより安全に消費されている。これらのLABの大部分は、「安全食品認定」(GRAS)資格をもち、1グラムの食品あたり1兆個の細胞に達するレベルで、有害影響なしに消費され得る。LABの選ばれたメンバーは、酸耐性であるが、胆汁感受性であり、胃腸管の通過を生き残らない。したがって、選ばれたLABの胆汁への曝露は、細胞完全性の破壊、透過処理、および細胞内タンパク質の放出を生じ得る。そのような微生物は、胆汁による微生物の透過処理によって、生物学的治療用ペプチドの標的送達として、胃を通って小腸へと経口で送達することができる。加えて、微生物は、胆汁透過処理で死に、それゆえに、経口送達後の胃腸管内に含有されたままであろう。
【0005】
Streptococcus thermophilusは、viridans群のグラム陽性乳酸菌である。St.thermophilusは、一般的に、ヨーグルト、発酵乳、およびチーズを含む発酵乳製品に見出される。St.thermophilusを含む市販乳製品は、抗生物質関連下痢の処置として用いることができる(Hickson、2007、335(7610):80)。
【0006】
Clostridium difficile(C.difficile)は、院内細菌性下痢の最も多い原因であり、抗生物質関連下痢の原因の10〜20%を占める。C.difficile感染は、無症候性保因、軽度の下痢、または劇症偽膜性大腸炎を生じ得る。この嫌気性菌は、主に2つの大きな外毒素、毒素Aおよび毒素Bの作用によって、腸損傷を引き起こす。精製された毒素A(TxA)は、インビボで腸管腔へ導入された場合、腸分泌、腸上皮の破壊、および出血性大腸炎を引き起こす。TxA誘発性腸炎の機構は、毒素の腸細胞受容体への結合を伴い、腸分泌および腸運動の増強、マスト細胞の脱顆粒、および好中球による粘膜の浸潤を結果として生じる、感覚神経および腸管神経の活性化をもたらす。その炎症促進性(proinflammatory)および分泌促進性活性に加えて、TxAは、アポトーシスおよび非アポトーシス性細胞死を誘導し、それが腸粘膜破壊に寄与し得る。具体的には、TxAは、上皮細胞遊走、アポトーシス、および経上皮抵抗の発生などの腸粘膜修復過程の重要な側面に影響することが示されている(非特許文献1)。
【0007】
グルタミン(Gln)は、腸細胞と結腸細胞の両方についての一次燃料であり、正常状態とストレス状態の両方において腸構造の維持に必要である(非特許文献2)。グルタミン補給が、標準的な非経口栄養に関連した状態である、絨毛萎縮および細菌移行を防ぐことが研究によって示されている(非特許文献3)。グルタミンは、いくつかの代謝経路において中心的役割を果たす。組織培養におけるその重要性は長い間、認識されてきており、それは、哺乳動物細胞におけるヌクレオチド、アミノ糖、およびアミノ酸の生合成のための鍵となる窒素供与体である。グルタミンの有効性が、粘膜バリア機能が破壊されている場合が多い持続性下痢および栄養失調中に、特に重要であろう。メトトレキサート誘導腸炎の致死性モデルにおいて、グルタミン強化栄養が、細菌移行を減らし、栄養状態を向上させ、腸傷害を減少させ、結果として生存向上を生じ得ることが、動物試験によって示されている。
【0008】
アラニル−グルタミン(Ala−Gln)は、(それらが患者の胃または腸において直面すると予想されるような)酸性水溶液中、よりずっと安定であり、かつグルコースより、良くないにしても、それに匹敵する、塩分および水分の吸収を促すことが示されている、安定なグルタミン誘導体である(開示が本明細書に明確に組み入れられている、特許文献1参照)。安定なグルタミン誘導体は、下痢の栄養不良の子どもにおいてだけでなく、あまりにも長い間、非経口的(IV)液体もしくは経管栄養を摂取し続けている患者、または感染もしくは化学療法から腸粘膜が損傷した患者においても有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,561,111号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Britoら、Dig Dis and Sci (2005)50(7):1271−1278
【非特許文献2】Carioら、Eur J Clin Invest.2000年5月 30(5):419429
【非特許文献3】Van Der Hulstら、Lancet 1993 341:1363
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
生物学的治療用物質の標的送達のための方法および組成物が提供される。組成物は、胆汁への曝露後、生物学的治療剤を放出するように改変された、胆汁感受性St.thermophilus細菌を含む。本明細書に開示されたSt.thermophilus細菌により放出される生物学的治療剤には、AQリッチなペプチドおよびAQRリッチなペプチドが挙げられる。本発明の方法は、胆汁への曝露後、生物学的治療剤を放出するように改変された、St.thermophilus細菌を被験体に投与することを含む。St.thermophilus細菌の投与は、所望の治療的応答を促進する。細菌は、AQまたはAQRリッチなペプチドを発現し、放出するように改変されてもよく、そのペプチドは、その後、細胞アポトーシスを阻害し、または粘膜損傷を低減する。したがって、本発明の方法は、C.difficile感染および抗生物質関連下痢を含む様々な胃腸障害を処置または防止するのに用いられる。
特定の実施形態では、例えば以下が提供される:
(項目1)
異種ポリペプチドを発現するように改変されているStreptococcus thermophilus細菌であって、該異種ポリペプチドは、胆汁への曝露後、該細菌から放出される、細菌。
(項目2)
前記異種ポリペプチドが治療用ポリペプチドである、項目1に記載の細菌。
(項目3)
前記異種ポリペプチドがアラニン−グルタミンリッチなペプチドである、項目1または2に記載の細菌。
(項目4)
項目3に記載の細菌であって、前記アラニン−グルタミンリッチなペプチドが、
a)配列番号2または8に示されたアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;
b)配列番号4または10に示されたアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;
c)配列番号6または12に示されたアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;
d)配列番号1、3、5、7、9、または11のいずれかに示されたヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるペプチド;および
e)配列番号1、3、5、7、9、または11の少なくとも1つと少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるペプチド
からなる群より選択される、細菌。
(項目5)
前記アラニン−グルタミンリッチなペプチドが、配列番号2、4、6、8、10、または12からなる群より選択される、項目3に記載の細菌。
(項目6)
前記胆汁への曝露後に生き残らない、項目1〜5のいずれか一項に記載の細菌。
(項目7)
前記Streptococcus thermophilusが、
a)ATCCアクセッション番号PTA−11888として寄託されている、Streptococcus thermophilus LMD−9;
b)ATCCアクセッション番号PTA−11889として寄託されている、Streptococcus thermophilus NCK2071;
c)ATCCアクセッション番号PTA−11890として寄託されている、Streptococcus thermophilus NCK2072;
d)ATCCアクセッション番号PTA−11891として寄託されている、Streptococcus thermophilus NCK2073;および
e)プロバイオティクスStreptococcus thermophilus細菌からなる群より選択される、項目1〜6のいずれか一項に記載の細菌。
(項目8)
Streptococcus thermophilus細菌を作製する方法であって、該方法は、異種ポリペプチドを発現するように細菌を遺伝的に改変する工程を含み、該ポリペプチドは、胆汁への曝露後、該細菌から放出される、方法。
(項目9)
前記異種ポリペプチドがアラニン−グルタミンリッチなペプチドである、項目8に記載の方法。
(項目10)
項目8または9に記載の方法であって、前記アラニン−グルタミンリッチなペプチドが、
a)配列番号2または8に示されたアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;
b)配列番号4または10に示されたアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;
c)配列番号6または12に示されたアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;
d)配列番号1、3、5、7、9、または11のいずれかに示されたヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるペプチド;および
e)配列番号1、3、5、7、9、または11の少なくとも1つと少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるペプチド
からなる群より選択される、方法。
(項目11)
前記アラニン−グルタミンリッチなペプチドが、配列番号2、4、6、8、10、または12からなる群より選択される、項目8または9に記載の方法。
(項目12)
前記細菌が前記胆汁への曝露後に生き残らない、項目8〜11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記Streptococcus thermophilusが、
a)ATCCアクセッション番号PTA−11888として寄託されている、Streptococcus thermophilus LMD−9;
b)ATCCアクセッション番号PTA−11889として寄託されている、Streptococcus thermophilus NCK2071;
c)ATCCアクセッション番号PTA−11890として寄託されている、Streptococcus thermophilus NCK2072;
d)ATCCアクセッション番号PTA−11891として寄託されている、Streptococcus thermophilus NCK2073;および
e)プロバイオティクスStreptococcus thermophilus細菌からなる群より選択される、項目8〜12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
異種ポリペプチドを被験体に送達する方法であって、項目1〜7のいずれか一項に記載の細菌を、被験体に経口投与する工程を含む、方法。
(項目15)
被験体において障害を処置または防止する方法であって、項目1〜7のいずれか一項に記載の細菌の治療的有効量を、被験体に経口投与する工程を含む、方法。
(項目16)
前記被験体が動物である、項目14または15に記載の方法。
(項目17)
前記被験体が哺乳動物である、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記被験体がヒトである、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記被験体が家畜である、項目16に記載の方法。
(項目20)
前記被験体が農業用動物である、項目16に記載の方法。
(項目21)
前記障害が胃腸障害である、項目15〜20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記障害が細菌感染である、項目15〜20のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記細菌感染がClostridium difficile感染である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記細菌の前記治療的有効量が約10〜1012CFU/日である、項目14〜23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
項目1〜7のいずれか一項に記載の細菌を含む薬学的組成物。
(項目26)
項目1〜7のいずれか一項に記載の細菌を含む食品生産物または飼料生産物。
(項目27)
乳製品である、項目24に記載の食品生産物。
(項目28)
薬剤として使用するためのものである、項目1〜7のいずれか一項に記載の細菌。
(項目29)
被験体における障害の処置または防止において使用するためのものである、項目1〜7のいずれか一項に記載の細菌。
(項目30)
前記障害が細菌感染である、項目28または29に記載の使用のための細菌。
(項目31)
前記細菌感染が被験体におけるClostridium difficile感染である、項目30に記載の使用のための細菌。
(項目32)
項目28〜31のいずれか一項に記載の使用のための細菌であって、ここで、該細菌は、治療的有効量で被験体に投与されるように処方され、ここで、該細菌の該治療的有効量は約10〜1012CFU/日である、細菌。
(項目33)
項目1〜7のいずれか一項に記載の細菌の、薬剤としての使用。
(項目34)
前記薬剤が、被験体において障害を処置または防止するためのものである、項目33に記載の細菌の使用。
(項目35)
前記障害が細菌感染である、項目34に記載の細菌の使用。
(項目36)
前記細菌感染がClostridium difficile感染である、項目35に記載の細菌の使用。
(項目37)
被験体の胃腸管の炎症性障害を処置する方法であって、治療的有効量の単離された胆汁感受性Streptococcus thermophilus細菌を被験体に投与する工程を含む、方法。
(項目38)
被験体において炎症を減少させる方法であって、治療的有効量の単離された胆汁感受性Streptoccus thermophilus細菌を被験体に投与する工程を含む、方法。
(項目39)
前記被験体が炎症性胃腸障害を有する、項目37または38に記載の方法。
(項目40)
前記炎症性胃腸障害がClostridium difficile感染である、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記胆汁感受性St.thermophilus細菌が、前記被験体において1つまたは複数の炎症促進性サイトカインの産生を減少させる、項目37〜40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記炎症促進性サイトカインが、MIP1a、MIP3a、IL−16、IL−22、VEGF、エオタキシン、IL−1b、KC、およびLIF、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記細菌の前記治療的有効量が約10〜1012CFU/日である、項目37〜42のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
このように本発明を一般的用語で記載してきたが、今、添付の図面について言及しようとしており、その図面は必ずしも一定の縮尺で描かれているとは限らない。
図1図1は、細胞外β−ガラクトシダーゼ活性の定量による、胆汁への曝露後の選ばれたSt.thermophilus株の透過処理を示す。
図2図2は、St.thermophilusにおいてAQ/AQRリッチなペプチドを発現させるために用いられる基本ベクター(pTRK989)を示す。
図3図3は、St.thermophilusにおいてAQ/AQRリッチなペプチドを発現させるために用いられるベクターを示す。pTRK996はAGRP−FH0をコードし、pTRK997はAGRP−FH1をコードし、pTRK998はAGRP−FH2をコードする。
図4図4は、AQリッチなペプチドAGRP−FH0、AGRP−FH1、およびAGRP−FH2についてのFLAG−BAPウェスタンブロットを示す。各ペプチドの発現は、白色四角内に含まれる領域に見ることができる。
図5図5は、インビトロで24時間目における、化学合成されたアラニル−グルタミン(Ala−gln)および生合成されたアラニル−グルタミン(rAla−gln)によるIEC−6細胞単層中の遊走の増強を実証する。
図6図6は、マウスにおけるUVA24を用いたClostridium difficile感染が、Streptococcus thermophilusでの処置により低減することを示す。(A)体重変化を、各マウスについて0日目の体重に対して計算した(n≧17/群)。St.thermophilus処置マウス(丸)は、未処置の対照マウス(三角形)より有意に体重減少が少なかった(ウイルクスのラムダ多変量検定を用いて、P=0.004)。計算されたデータは、感染に屈した、または試料収集のために安楽死させられたマウスからの最終体重を含む。(B)St.thermophilus処置マウス(St+UVA24)は、ELISAを用いて検出された場合、対照(UVA24)と比較して、3日目および5日目での盲腸内容物においてより低いレベルのTcdA/Bを示した。(C)感染から3日後、対照と比較して、St.thermophilusで処置されたマウスの結腸は病態が有意により低く(マンホイットニーのt検定を用いて、P=0.006)、一方、St.thermophilus処置マウス由来の盲腸組織はより低かった(P=0.279)。(D)3日目および4日目における下痢の発生率を、方法で概要を示したようにスコア化し、独立t検定を用いて解析した。
図7図7は、Clostridium difficile成長がStreptococcus thermophilusからの分泌成分、すなわち、乳酸によって低減することを実証している。(A)St.thermophilus由来の濾過された上清を、HEPES緩衝液の非存在下または存在下で、BHIに加え(50%v/v)、接種し(105個のUVA24)、24時間インキュベートし、プレートカウントを用いて数え上げた。(B)純粋なL−乳酸をBHIに異なる濃度で加え、C.difficileを接種し、24時間成長させ、細菌を数え上げた。(C)C.difficile±L−乳酸±HEPES緩衝液の24時間成長からの上清(斜線の引かれた棒)を、ELISAを用いてTcdA/Bの存在について試験した。
図8図8は、感染後3日目におけるC.difficile(UVA24)+/−St.thermophilus(St+UVA24)に感染したマウスの結腸可溶化液、感染前における、抗生物質(Abx0)+/−St.thermophilus(St/Abx0)に曝されたマウスの結腸可溶化液、および正常マウス(正常)+/−St.thermophilus(St/正常0)からのサイトカイン応答を報告する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を今、添付の図面を参照して、以下、より完全に記載するつもりであり、その中で、本発明の、全部ではないが、一部の実施形態が示されている。実際、これらの発明は、多くの異なる形で具体化されてもよく、本明細書に示された実施形態に限定されると解釈されるべきではない;むしろ、これらの実施形態は、この開示が、適用される法的必要条件を満たすように、提供される。全体を通して、同じ数は同じ要素を指す。
【0014】
前述の説明および関連した図面に提示された教示の恩恵を受ける、これらの発明が属する技術分野の業者にとって、本明細書に示された本発明の多くの改変および他の実施形態が思い浮かぶであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるべきではなく、かつ改変および他の実施形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることを意図されることは理解されるべきである。本明細書で特定の用語が用いられているが、それらは、一般的かつ説明的意味で用いられるだけであって、限定を目的とするものではない。
【0015】
概要
生物学的治療剤の標的送達のための方法および組成物が提供され、それらには、胆汁感受性St.thermophilus細菌を用いる、AQ/AQRリッチなペプチドの腸上皮への送達のための方法および組成物が挙げられる。そのような方法および組成物は、C.difficile感染に起因する腸損傷の処置または防止に用いることができる。胆汁感受性LABは、抗生物質処置前、処置中、および/または処置後に供給されて、日和見感染の懸念を避けると同時に、治療用ペプチドを腸管へ送達することができる。胃の酸性環境の通過を生き残ることにより、本明細書に開示された細菌は、治療用ペプチドを小腸へ直接、送達することができる。したがって、治療剤または治療用ペプチドを、それらを必要とする被験体に送達することにより腸修復を促進する、St.thermophilusなどの様々な細菌およびそれらの使用方法が提供される。
【0016】
胆汁感受性乳酸菌
治療剤の被験体の胃腸管への標的送達を生じる、方法および組成物が提供される。本明細書で用いられる場合、「放出される」とは、細胞の外膜内に含有される成分の環境への流出を指す。用語「放出される」は、天然または異種成分(例えば、ペプチド)が細胞膜を横切って、放出された成分がもはや細胞の内側に存在しないように、流出または部分的流出することを包含すると理解される。用語「放出される」とはさらに、細胞成分の部分的流出を包含すると理解され、例えば、放出は、細胞膜の透過処理または部分的透過処理から生じることができる。例えば、特定の実施形態において、本発明の微生物は、被験体に経口で投与され、胃の通過を生き残り、その後、微生物は胆汁に曝されて、関心対象となる生物学的治療剤を含む細胞内材料を放出する。いくつかの実施形態において、生物学的治療剤の放出は、胃腸障害を処置または防止するのに十分である。
【0017】
本明細書で用いられる場合、「胆汁感受性」とは、微生物が、胆汁への曝露後、透過性になり、いくつかの細胞内成分を放出する能力を指す。用語「胆汁」とは、たいていの脊椎動物(vertabrates)の肝臓によって分泌される暗緑色から黄色みがかった褐色の液体を指す。本明細書で用いられる場合、「胆汁」とは、胆汁塩および胆汁酸を包含するものとし、それらには、コール酸、デヒドロコール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、グリコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、リトコール酸、タウロデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、タウロ−24,25−ジヒドロ−フシジン酸ナトリウム、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。本明細書で用いられる場合、「胆汁への曝露」とは、本明細書に記載された細菌が胆汁と接触している状態、または胆汁が存在する環境に存在する状態を指す。胆汁への曝露は、少なくとも約1秒間、約5秒間、約15秒間、約30秒間、約1分間、約3分間、約5分間、約15分間、約30分間、約45分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、または胆汁感受性細菌の膜を透過処理するのに十分な任意の時間であり得る。
【0018】
いくつかの実施形態において、胆汁感受性微生物は、胆汁への曝露後に生き残らない。本明細書で用いられる場合、「生き残らない」とは、もはや再生することができず、または代謝機能を実行することができない、微生物または微生物の部分の状態を指す。特定の実施形態において、生物学的治療剤の送達のために望まれる胃腸の場所の環境は、微生物の膜透過処理を引き起こし、その透過処理後、その生物は生き残らない。
【0019】
関心対象となる任意の微生物が、本明細書に記載された方法および組成物に用いることができる。いくつかの実施形態において、微生物は細菌を含む。特定の実施形態において、微生物はプロバイオティクス細菌(probiotic bacterium)を含む。本明細書で用いられる場合、用語「プロバイオティクス」は、適度な量で投与された場合、宿主に健康上の利益を与える「生きている微生物」を指し(FAO 2001:isapp.net/docs/ProbioticDefinition.pdfにおけるウェブサイトを参照)、例えば、被験体の腸管の健康およびバランスに寄与する少なくとも1つの生物体である。特定の実施形態において、それはまた、「友好的」細菌、「有益」細菌、または「善玉」細菌とも呼ばれ、被験体に経口摂取された場合、健康な腸管の維持を助け、病気および/または疾患の1つまたは複数の症状を部分的または完全に軽減するのを助ける。
【0020】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載された微生物は、乳酸菌である。本明細書で用いられる場合、「乳酸菌」とは、以下から選択される属に由来する意図された細菌である:Aerococcus、Carnobacterium、Enterococcus、Lactococcus、Lactobacillus、Leuconostoc、Oenococcus、Pediococcus、Streptococcus、Melissococcus、Alloiococcus、Dolosigranulum、Lactosphaera、Tetragenococcus、Vagococcus、およびWeissella(Holzapfelら(2001)Am.J.Clin.Nutr.73:365S−373S;Sneath編(1986)Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology 2巻、Lippincott,Williams and Wilkins、Hagerstown、MD)。特定の実施形態において、用いられる微生物は、Streptococciである。特定の実施形態において、用いられる微生物は、Streptococcus thermophilus、例えば、St.thermophilus LMD−9である。
【0021】
本明細書に開示された細菌は、食品医薬局(Food and Drug Administration)によって安全食品認定(Generally Recognized as Safe)(GRAS)に指定され得る。GRASとして指定されたそれらの微生物は、FDAにより安全とみなされ、それゆえ、連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)の食品添加物許容要件を免除されている。GRAS細菌は、胆汁感受性であり得、生物学的治療剤の標的送達に用いることができる。
【0022】
本発明の細菌は、関心対象となるペプチドを発現するように改変、例えば、遺伝的に改変されている。本明細書で用いられる場合、用語「組換え細菌」または「組換え細菌細胞」は、少なくとも1つの遺伝子変化を含み、または関心対象となる少なくとも1つの遺伝子で形質転換されている細菌または複数の細菌細胞、ならびにそのように変化した細胞の子孫であり、かつその遺伝子変化または関心対象となる遺伝子を含む細胞の子孫である、1つまたは複数の細胞を指す。したがって、本明細書で用いられる場合、用語「改変の」または「遺伝的に改変の」または「遺伝的に改変」は、核酸の欠失、付加、または置換などの遺伝子変化を指す。特定の実施形態において、改変は、野生型または天然の細菌と遺伝的に異なる細菌を生じる。いくつかの実施形態において、遺伝子変化は、関心対象となるコード配列の細菌への挿入である。
【0023】
そのコード配列は、その細菌にとって同種性でも異種でもよい。「異種」とは、外来種に由来する配列、または同じ種由来の場合には、計画的なヒト介入により組成および/もしくはゲノム遺伝子座においてその天然型から実質的に改変されている配列を意味する。例えば、異種ポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターは、そのポリヌクレオチドが由来した種と異なる種由来であり、または同じ/類似した種由来の場合には、一方もしくは両方がそれらの最初の形から実質的改変されており、もしくはプロモーターが、作動可能に連結されたポリヌクレオチドについての天然のプロモーターではない。いくつかの実施形態において、異種ポリヌクレオチド配列は、アラニル−グルタミン(AQ)またはアラニル−グルタミン/アルギニン(AQR)リッチなペプチドをコードする。
【0024】
治療剤
「治療剤」または「生物学的治療剤」とは、ヒトまたは動物身体の任意の障害または機能不全の症状を治癒させ、軽減し、除去し、もしくは和らげ、またはそれに罹る可能性を阻止し、もしくは低減する物質を意味する。生物学的治療剤は、被験体に供給された場合、治療剤として作用する任意のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ワクチン、サイトカイン、バクテリオシン、糖質、脂質、または任意の他の物質であり得る。本明細書に開示された細菌は、胃腸管内の特定の場所への送達のための治療用ペプチドを発現するように改変されている。治療用ペプチドとは、被験体に供給された場合、治療剤として作用する、AQ/AQRリッチなペプチドなどの任意のペプチドを意味する。
【0025】
i.アラニル−グルタミンリッチなペプチド
本明細書に開示された様々なアラニル−グルタミンリッチなペプチドを用いる組成物および方法が提供される。本明細書で用いられる場合、「アラニル−グルタミンリッチなペプチド」または「AQリッチなペプチド」または「ALA−GLNリッチなペプチド」は、それらのアラニル−グルタミンおよびグルタミン含有量を増強するように改変されている、生合成されたペプチド、オリゴペプチド、およびタンパク質を包含する。本明細書で用いられる場合、「アラニル−グルタミン/アルギニンリッチなペプチド」または「AQRリッチなペプチド」または「ALA−GLN−ARGリッチなペプチド」は、それらのアラニル−グルタミン/アルギニンまたはグルタミン/アルギニン含有量を増強するように改変されている、生合成されたペプチド、オリゴペプチド、およびタンパク質を包含する。いくつかの実施形態において、AQリッチなペプチドは、(GLN)、ALA(GLN)、または(ALA_GLN)、およびそれらの誘導体を含む。これらのペプチドは個々のペプチドとして用いられてもよいし、または連結されて、それによりそのペプチドの反復単位を有するオリゴペプチドもしくはタンパク質が形成されてもよい。あるいは、ペプチドは、異なるペプチドに連結されて、交互のペプチド、オリゴペプチド、またはタンパク質が形成されてもよい。場合によっては、ペプチドは、同じペプチドと異なるペプチドの両方を含有するオリゴペプチドまたはタンパク質であってもよいし、またはそれらに連結されてもよい。ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、または反復単位は、プロテアーゼ切断部位または標的シグナルを含有してもよい。プロテアーゼ切断部位には、例えば、トリプシンまたはキモトリプシンによって認識される部位を挙げることができる。本明細書で用いられる場合、「AQ/AQRリッチな関連配列」または「AQ/AQRリッチなポリヌクレオチド配列」とは、AQまたはAQR(AQ/AQR)リッチなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を指す。AQ/AQR含有量は、例えば、当技術分野において一般的に知られた、シークエンシングまたは質量分析法により測定することができる。AQ/AQRリッチなポリヌクレオチド配列の例には、配列番号1、3、5、7、9、または11が挙げられる。
【0026】
記号ALAは、アラニンの略語を表すように本明細書で用いられ、記号GLNはグルタミンの略語であり、記号ALA−GLNはジペプチドのアラニル−グルタミンである。追加として、本明細書で用いられる場合、ALA(GLN)は、末端位置にアラニン、および付着したいくつか(n個)のグルタミン単位を有するペプチドを表し、一方、(ALA−GLN)は、n個のアラニル−グルタミンのサブユニットで構成されるペプチドを示し、(GLN)は、n個のグルタミンのサブユニットで構成されるペプチドを示す。さらに、「n」は、ペプチド内のサブユニットまたは単位の数を表す。典型的には、本発明のペプチドは、約1個〜20個の間のサブユニットまたは単位を含有する(例えば、nは約1〜約20である)。本明細書で開示されているように、ペプチドは、独立した種であってもよいし、またはオリゴヌクレオチドもしくはタンパク質のサブユニットであってもよい。本発明のAQ/AQRリッチなペプチドには、配列番号2、4、6、8、10、または12に示されたポリペプチド配列、配列番号1、3、5、7、9、または11に示された核酸配列、ならびにそれらの変種および断片が挙げられる。本発明の目的上、用語「タンパク質」、「ペプチド単位」、および「ポリペプチド」は交換可能に用いられる。
【0027】
本明細書で用いられる場合、AQリッチの活性またはAQRリッチの活性とは、AQ/AQRリッチなペプチドが細胞アポトーシスを阻害し、粘膜破壊を低減する能力を指す。細胞アポトーシスまたは粘膜破壊を「阻害する」、「阻害すること」、「低減する」、または「低減すること」とは、細胞または粘膜の損傷が、適切な対照における細胞または粘膜の損傷より統計的に低いことを意味する。特定の実施形態において、開示された本内容に従って細胞アポトーシスを阻害すること、または粘膜損傷を低減することは、適切な対照と比較して、細胞アポトーシスまたは粘膜損傷の少なくとも約95%の減少、少なくとも約90%の減少、少なくとも約80%の減少、少なくとも約70%の減少、少なくとも約60%の減少、少なくとも約50%の減少、少なくとも約40%の減少、少なくとも約30%の減少、少なくとも約20%の減少、少なくとも約10%の減少、または少なくとも約5%の減少を生じる。他の実施形態において、細胞アポトーシスを阻害すること、または粘膜損傷を低減することは、適切な対照と比較して、約3%〜約15%、約10%〜約25%、約20%〜約35%、約30%〜約45%、約40%〜約55%、約50%〜約65%、約60%〜約75%、約70%〜約90%、約70%〜約80%、約70%〜約85%、約80%〜約95%、約90%〜約100%の減少を生じる。細胞アポトーシスおよび粘膜損傷のレベルをアッセイするための方法は、本明細書の他の箇所で論じられている。
【0028】
ii.断片および変種
文脈に応じて、「断片」とは、ポリペプチドもしくはタンパク質のアミノ酸配列の一部、またはポリペプチドもしくはタンパク質のアミノ酸配列の一部をコードするポリヌクレオチドを指す。断片は、本来のタンパク質の活性を保持する場合があり、このゆえに、そのような「活性」断片として、例えば、AQ/AQRリッチなタンパク質の断片が挙げられる。AQ/AQRリッチなペプチドをコードする配列番号1、3、5、7、9、または11の断片などのAQ/AQRリッチなポリヌクレオチド配列の断片は、生物活性のあるタンパク質断片をコードする場合がある。AQ/AQRリッチなタンパク質の断片には、配列番号2、4、6、8、10、および12の断片が挙げられる。生物活性のあるヌクレオチド断片は、AQ/AQRリッチなポリヌクレオチドまたはポリペプチドの部分を単離し、コードされたAQ/AQRリッチなペプチドの部分を発現し、コードされたAQ/AQRリッチなペプチドの部分のAQ/AQRレベルを評価することにより、調製することができる。AQ/AQRリッチな関連ポリヌクレオチドの断片には、配列番号1、3、5、7、9、および11の断片が挙げられる。AQ/AQRリッチな関連ポリヌクレオチドの断片は、少なくとも約15個、約20個、約50個、約75個、約100個、約200個、約250個、約300個、約350個、約400個、約450個、約500個、約550個、約600個、約650個、約700個、約750個、約800個、約850個、約900個、約950個、約1000個のヌクレオチド、または本明細書に開示されているような完全長AQ/AQRリッチな関連ヌクレオチド配列に存在する総数のヌクレオチドまでを含む。
【0029】
アミノ酸配列の断片には、AQ/AQRリッチなタンパク質または部分長のタンパク質のアミノ酸配列と十分同一の、またはそれに由来したアミノ酸配列を含み、かつAQ/AQRリッチなタンパク質の少なくとも1つの活性(すなわち、本明細書の他の箇所で記載されたAQ/AQR含有量の増加に関連した活性)を示すペプチドであるが、本明細書に開示された完全長のAQ/AQRリッチなタンパク質より少ないアミノ酸を含む、ペプチドが挙げられる。AQ/AQRリッチなタンパク質の生物活性部分は、例えば、長さが約10個、約25個、約50個、約100個、約150個、約200個の連続したアミノ酸、または本明細書に開示された(すなわち、配列番号2、4、6、8、10、または12の)完全長のAQ/AQRリッチに存在する総数のアミノ酸までであるポリペプチドであり得る。そのような生物活性部分は、組換え技術により調製して、細胞アポトーシスを阻害すること、および粘膜破壊を低減することなどの、完全長AQ/AQRリッチなタンパク質の機能活性の1つまたは複数について評価することができる。本明細書で用いられる場合、断片は、配列番号2、4、6、8、10、または12の少なくとも5個の連続したアミノ酸を含む。しかしながら、本発明は、アミノ酸が約6個より多い、約7個より多い、約8個より多い、約9個より多い、約10個より多い、約20個より多い、約50個より多い、約100個より多い、約200個より多い、約300個より多い、約400個より多い、または約500個より多い、AQ/AQRリッチなタンパク質の任意の断片などの他の断片を包含する。
【0030】
いくつかの実施形態において、本明細書の他の箇所で提供されたAQ/AQRリッチなヌクレオチド配列およびアミノ酸配列の変種を発現するように改変されている細菌が提供される。「変種」とは、十分に同一の配列を意味する。したがって、本発明は、配列番号2、4、6、8、10、もしくは12におけるAQ/AQRリッチなタンパク質をコードするヌクレオチド配列と十分同一であるAQ/AQRリッチな核酸配列を発現するように改変された細菌、または配列番号1、3、5、7、9、もしくは11のヌクレオチド配列もしくはその相補体を発現するように改変された細菌を包含する。変種にはまた、本明細書に開示されたAQ/AQRリッチなポリヌクレオチド配列によってコードされる変種ポリペプチドが挙げられる。加えて、本発明のポリペプチドは、配列番号2、4、6、8、10、もしくは12に提示されたアミノ酸配列と十分同一であるアミノ酸配列を有する。「十分同一の」とは、1つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列が、第2のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列と比較して、十分の、または最小限の数の等価または同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドを含有し、それゆえに、共通の構造ドメイン、ならびに/または細胞アポトーシスを阻害することおよび粘膜破壊を低減することなどの共通の機能活性を提供することを意味する。保存的変種には、遺伝暗号の縮重によって異なるヌクレオチド配列が挙げられる。
【0031】
一般的に、配列番号2、4、6、8、10、もしくは12のアミノ酸配列のいずれか、または配列番号1、3、5、7、9、もしくは11のヌクレオチド配列のいずれか、それぞれと、少なくとも約45%、55%、または65%同一性、好ましくは少なくとも約70%または約75%同一性、より好ましくは少なくとも約80%、約85%、または約90%、最も好ましくは少なくとも約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99.5%配列同一性を有するアミノ酸配列またはヌクレオチド配列が、十分同一であると本明細書で定義される。本発明により包含される変種タンパク質は、生物活性があり、すなわち、それらは、細胞アポトーシスを阻害することおよび粘膜破壊を低減することなどの本来のAQ/AQRリッチな配列の所望の機能活性を保持する。例えば、Varcamontiら(2003)Appl.Environ.Microbiol.69:1287−1289を参照されたい。タンパク質の生物活性のある変種は、わずか1〜15個のアミノ酸残基、6〜10個などのわずか1〜10個、わずか5個、わずか4個、3個、2個、またはさらに1個のアミノ酸残基だけ、そのタンパク質と異なり得る。
【0032】
AQ/AQRリッチなポリペプチドは、アミノ酸置換、欠失、切り詰め、および挿入を含む様々な様式で変化してもよい。突然変異誘発およびポリヌクレオチド変化のための方法は、当技術分野においてよく知られている。例えば、Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488−492;Kunkelら(1987)Methods in Enzymol.154:367−382;米国特許第4,873,192号;WalkerおよびGaastra編(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company、New York)およびそこに引用された参考文献を参照されたい。関心対象となるタンパク質の生物活性に影響しないアミノ酸置換に関するガイダンスは、参照により本明細書に組み入れられた、Dayhoffら(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.、Washington、D.C.)のモデルに見出すことができる。1個のアミノ酸を、類似した性質を有する別のアミノ酸と交換することなどの保存的置換がなされてもよい。本明細書に開示されたAQ/AQRリッチなポリペプチドの活性が、本明細書の他の箇所で記載されたものなどの日常的なスクリーニングアッセイにより評価することができることを、当業者は認識しているであろう。
【0033】
例えば、本明細書に開示されたAQ/AQRリッチなポリペプチドは、DYKDDDDK(配列番号13)などのFLAGタグエピトープを含むように変化してもよい(Hopp、1988、Bio/Technology、6:1204−1210)。FLAGタグエピトープの付加は、本明細書に開示されたAQ/AQRリッチなペプチドの検出および精製に役立つことができる。FLAGおよび3×FLAGは、ウェスタンブロッティング、免疫細胞化学、免疫沈降、フローサイトメトリー、タンパク質精製に、ならびにタンパク質−タンパク質相互作用、細胞超微細構造、およびタンパク質局在化の研究に有用である。これらの小さい親水性タグは、特異的かつ高感受性の抗FLAG抗体と共に用いられた場合、組換え融合タンパク質の検出および精製を向上させることができる。FLAG系は、少量のタンパク質の研究、および異なるタンパク質発現プロジェクトの最適化を促進することができる。FLAGペプチドは、それぞれが異なる認識特性および結合特性を有する、いくつかの特異的モノクローナルおよびポリクローナル抗体ならびにコンジュゲートについての結合部位を含む。FLAGペプチドは、抗体を利用しやすく、かつエンテロキナーゼ(Ek)による切断を利用しやすい可能性が高い。FLAGタグエピトープの小さいサイズを考えると、そのエピトープの付加が、本明細書に開示されたペプチドの活性、分泌、または輸送に影響するだろうことは予想されない。
【0034】
本明細書で用いられる場合、2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列との関連における「配列同一性」または「同一性」は、特定された比較ウィンドウに関して最大の一致が得られるようにアラインメントされた場合、同じである、その2つの配列における残基について言及する。配列同一性のパーセンテージがタンパク質に関して用いられる場合、同一ではない残基位置が、保存的アミノ酸置換(アミノ酸残基が、類似した化学的性質(例えば、電荷または疎水性)をもつ他のアミノ酸残基の代わりに用いられ、それゆえに、その分子の機能的性質を変化させない)によって異なる場合が多いことは認識されている。配列が保存的置換において異なる場合、パーセント配列同一性は、置換の保存的性質を補正するようにもっと高く調整されてもよい。そのような保存的置換によって異なる配列は、「配列類似性」または「類似性」を有すると言われる。この調整を行うための手段は当業者によく知られている。典型的には、これは、完全ミスマッチよりむしろ部分的ミスマッチとして保存的置換をスコアリングし、それによりパーセンテージ配列同一性を増加させることを伴う。したがって、例えば、同一のアミノ酸が1のスコアを与えられ、非保存的置換がゼロのスコアを与えられる場合、保存的置換はゼロと1の間のスコアを与えられる。保存的置換のスコアリングは、例えば、プログラムPC/GENE(Intelligenetics、Mountain View、California)において実行されているように、計算される。
【0035】
本明細書で用いられる場合、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウに関して2つの最適にアラインメントされた配列を比較することにより、決定される値を意味し、比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の部分は、その2つの配列の最適なアラインメントのために、(付加または欠失を含まない)参照配列と比較して付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。パーセンテージは、両方の配列において同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が存在する位置の数を決定して、一致した位置の数を得て、その一致した位置の数を、比較ウィンドウにおける位置の総数で割り、その結果に100を掛けて、配列同一性のパーセンテージを得ることにより計算される。
【0036】
他に指定がない限り、本明細書で提供される配列同一性/類似性の値は、以下のパラメータを用いるGAPバージョン10、またはその任意の等価のプログラムを用いて得られる値を指す:50のGAP重みおよび3の長さの重み、ならびにnwsgapdna.cmpスコアリングマトリックスを用いるヌクレオチド配列についての%同一性および%類似性;8のGAP重みおよび2の長さの重み、ならびにBLOSUM62スコアリングマトリックスを用いるアミノ酸配列についての%同一性および%類似性。「等価のプログラム」とは、質問中の任意の2つの配列について、GAPバージョン10によって作成された対応するアラインメントと比較して、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基一致および同一のパーセント配列同一性を有するアラインメントを生じる、任意の配列比較プログラムを意味する。
【0037】
iii.組換え発現ベクター
本発明の治療剤をコードする核酸分子は、ベクター、好ましくは発現ベクターに含まれてもよい。「ベクター」とは、連結されている別の核酸を輸送する能力がある核酸分子を指す。発現ベクターは、1つまたは複数の制御配列を含み、その制御配列が作動可能に連結されている遺伝子の発現を命令する。「作動可能に連結された」とは、関心対象となるヌクレオチド配列が、(例えば、インビトロの転写/翻訳系において、またはベクターが宿主細胞へ導入されている場合の宿主細胞において)そのヌクレオチド配列の発現が可能になるように制御配列(複数可)に連結していることを意味する。用語「制御配列」は、調節可能な転写プロモーター、オペレーター、エンハンサー、転写ターミネーター、および翻訳調節配列(例えば、シャイン・ダルガノコンセンサス配列、開始コドンおよび終止コドン)などの他の発現調節エレメントを含むことを意図される。これらの制御配列は、例えば、用いられることになっている宿主細胞に依存して、異なる。
【0038】
ベクターは、宿主細胞において自律的に複製することができ(エピソームベクター)、または宿主細胞のゲノムへ組み込まれて、宿主ゲノムと共に複製され得る(非エピソームの哺乳動物ベクター)。組み込まれるベクターは、典型的には、組換えが、ベクター内の相同性DNAと細菌染色体との間に起こることを可能にする、細菌染色体に相同的な少なくとも1つの配列を含有する。組み込まれるベクターはまた、バクテリオファージまたはトランスポゾン配列を含んでもよい。エピソームベクターまたはプラスミドは、追加のDNAセグメントがライゲーションすることができる、環状二本鎖DNAループである。宿主において安定な維持の能力があるプラスミドは、一般的に、組換えDNA技術を用いる場合、好ましい型の発現ベクターである。
【0039】
本発明に包含される発現構築物またはベクターは、宿主細胞における核酸の発現に適した形をとる本発明の核酸構築物を含む。原核生物の宿主細胞における発現は、本発明に包含される。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、望まれるタンパク質の発現レベルなどのような因子に依存し得ることは当業者により認識されている。本発明の発現ベクターは、宿主細胞へ導入されて、それにより、本明細書に記載されているような核酸によってコードされる、融合タンパク質またはペプチドを含む、タンパク質またはペプチド(例えば、AQ/AQRリッチなペプチド、AQ/AQRリッチなペプチドの突然変異型、AQ/AQRリッチな融合ペプチドなど)を産生することができる。
【0040】
制御配列には、ヌクレオチド配列の構成的発現を命令するもの、および特定の環境条件下でのみのヌクレオチド配列の誘導性発現を命令するものが挙げられる。細菌プロモーターは、細菌RNAポリメラーゼを結合し、mRNAへのコード配列(例えば、構造遺伝子)の下流(3’)転写を開始する能力がある任意のDNA配列である。プロモーターは、転写開始領域を有し、その転写開始領域は、通常、コード配列の5’末端の近位に配置される。この転写開始領域は、典型的には、RNAポリメラーゼ結合部位および転写開始部位を含む。細菌プロモーターはまた、オペレーターと呼ばれる第二のドメインを有する場合があり、そのオペレーターは、RNA合成が始まる、隣接のRNAポリメラーゼ結合部位と重複し得る。遺伝子リプレッサータンパク質がオペレーターに結合し、それにより特定の遺伝子の転写を阻害することができるため、オペレーターは、負に制御された(誘導性)転写を可能にする。構成的発現は、オペレーターなどの負の制御エレメントの非存在下で起こり得る。加えて、正の制御は、遺伝子アクチベータータンパク質結合配列によって達成することができ、その配列は、存在する場合には、通常、RNAポリメラーゼ結合配列の近位(5’側)にある。
【0041】
遺伝子アクチベータータンパク質の例は、カタボライト活性化タンパク質(CAP)であり、それは、大腸菌(Escherichia coli)においてlacオペロンの転写の開始を助ける(Raibaudら(1984)Annu.Rev.Genet.18:173)。したがって、制御される発現は、正か負かのいずれかであり得、それにより、転写を増強するかまたは低減するかである。正および負の制御エレメントの他の例は、当技術分野においてよく知られている。タンパク質発現系に含むことができる様々なプロモーターには、T7/LacOハイブリッドプロモーター、trpプロモーター、T7プロモーター、lacプロモーター、p6プロモーター、およびバクテリオファージλプロモーターが挙げられるが、それらに限定されない。天然のプロモーターまたは異種プロモーターを含む任意の適切なプロモーターが、本発明を行うのに用いることができる。異種プロモーターは、構成的活性型であってもよいし、誘導性であってもよい。異種プロモーターの非限定的例は、KullenおよびKlaenhammerの米国特許第6,242,194号に示されている。
【0042】
代謝経路酵素をコードする配列は、特に有用なプロモーター配列を提供する。例として、ガラクトース、ラクトース(lac)(Changら(1987)Nature 198:1056)、およびマルトースなどの糖代謝酵素に由来するプロモーター配列が挙げられる。追加の例には、トリプトファン(trp)などの生合成酵素に由来するプロモーター配列が挙げられる(Goeddelら(1980)Nucleic Acids Res.8:4057;Yelvertonら(1981)Nucleic Acids Res.9:731;米国特許第4,738,921号;欧州特許出願公開第36,776号および第121,775号)。β−ラクタマーゼ(bla)プロモーター系(Weissmann、(1981)「The Cloning of Interferon and Other Mistakes」、Interferon 3(I.Gresser編);バクテリオファージλPL(Shimatakeら(1981)Nature 292:128);アラビノース誘導性araBプロモーター(米国特許第5,028,530号);およびT5プロモーター系(米国特許第4,689,406号)もまた有用なプロモーター配列を提供する。大腸菌発現系が論じられているBalbas(2001)Mol.Biotech.19:251−267もまた参照されたい。
【0043】
加えて、天然には存在しない合成プロモーターもまた、細菌プロモーターとして機能する。例えば、一つの細菌またはバクテリオファージのプロモーターの転写活性化配列が、別の細菌またはバクテリオファージのプロモーターのオペロン配列と結合して、合成ハイブリッドプロモーターが生成されてもよい(米国特許第4,551,433号)。例えば、tacプロモーター(Amannら(1983)Gene 25:167;de Boerら(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.80:21)およびtrcプロモーター(Brosiusら(1985)J.Biol.Chem.260:3539−3541)は、trpプロモーターと、lacリプレッサーによって制御されるlacオペロン配列との両方で構成されるハイブリッドtrp−lacプロモーターである。tacプロモーターは、誘導性制御配列であるという追加の特徴を有する。したがって、例えば、tacプロモーターに作動可能に連結されたコード配列の発現は、細胞培養においてイソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)を添加することによって誘導することができる。さらに、細菌プロモーターには、細菌RNAポリメラーゼを結合し、かつ転写を開始する能力を有する非細菌起源の天然のプロモーターを挙げることができる。非細菌起源の天然のプロモーターはまた、互換性RNAポリメラーゼと結合して、原核生物においていくつかの遺伝子の高レベルの発現を生じることができる。バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼ/プロモーター系は、結合したプロモーター系の例である(Studierら(1986)J.Mol.Biol.189:113;Taborら(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.82:1074)。加えて、ハイブリッドプロモーターはまた、バクテリオファージのプロモーターおよび大腸菌のオペレーター領域で構成することができる(欧州特許出願公開第267,851号)。
【0044】
ベクターは追加として、そのプロモーターについてのリプレッサー(またはインデューサー)をコードする遺伝子を含有してもよい。例えば、本発明の誘導性ベクターは、LacIリプレッサータンパク質をコードする遺伝子を発現することによってLacオペレーター(LacO)からの転写を制御してもよい。他の例には、pRecAの発現を制御するlexA遺伝子の使用、およびptrpを制御するtrpOの使用が挙げられる。抑制の程度を増加させる(例えば、lacIq)、または誘導の様式を改変する(例えば、λpLに熱誘導性を与えるλCI857、またはλpLに化学誘導性を与えるλCI+)、そのような遺伝子の対立遺伝子を用いてもよい。
【0045】
機能するプロモーター配列に加えて、効率的なリボソーム結合部位もまた、融合構築物の発現に有用である。原核生物において、リボソーム結合部位は、シャイン・ダルガノ配列(SD)配列と呼ばれ、開始コドン(ATG)、および開始コドンの3〜11ヌクレオチド上流に位置する3〜9ヌクレオチド長の配列を含む(Shineら(1975)Nature 254:34)。SD配列は、SD配列と細菌16S rRNAの3’末端との間での塩基の対形成によりmRNAのリボソームへの結合を促進すると考えられている(Steitzら(1979)「Genetic Signals and Nucleotide Sequences in Messenger RNA」、Biological Regulation and Development:Gene Expression(R.F.Goldberger編、Plenum Press、NY)。
【0046】
治療剤はまた、細菌においてAQ/AQRリッチなペプチドの分泌を提供するシグナルペプチド配列断片を含むタンパク質をコードするキメラDNA分子を作製することによって細胞から分泌することができる(米国特許第4,336,336号)。シグナル配列断片は、典型的には、タンパク質の細胞からの分泌を命令する、疎水性アミノ酸を含むシグナルペプチドをコードする。タンパク質は、成長培地へか(グラム陽性細菌)、または、細胞の内膜と外膜の間に位置する細胞膜周辺腔へか(グラム陰性細菌)のいずれかに分泌される。好ましくは、シグナルペプチド断片とAQ/AQRリッチなペプチドとの間にコードされるプロセシング部位があり、それは、インビボかインビトロかのいずれかで切断することができる。
【0047】
適切なシグナル配列をコードするDNAは、大腸菌外膜タンパク質遺伝子(ompA)(Masuiら(1983)FEBS Lett.151(1):159−164;Ghrayebら(1984)EMBO J.3:2437−2442)および大腸菌アルカリフォスファターゼシグナル配列(phoA)(Okaら(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.82:7212)などの分泌性細菌タンパク質の遺伝子に由来することができる。他の原核生物のシグナルには、例えば、ペニシリナーゼ、Ipp、または熱安定性エンテロトキシンIIリーダーに由来のシグナル配列が挙げられる。
【0048】
St.thermophilusなどの細菌は、一般的に、アミノ酸メチオニン(原核生物においてN−ホルミルメチオニンに修飾される)を特定する開始コドンATGを利用する。細菌はまた、バリンおよびロイシンをそれぞれコードする、コドンGTGおよびTTGなどの代替の開始コドンも認識する。しかしながら、それらが開始コドンとして用いられる場合、これらのコドンは、それらが通常、コードするアミノ酸の取り込みよりむしろメチオニンの取り込みを命令する。St.thermophilusは、これらの代替開始部位を認識し、最初のアミノ酸としてメチオニンを取り込む。
【0049】
典型的には、細菌によって認識される転写終結配列は、翻訳停止コドンの3’側に位置する制御領域であり、したがって、プロモーターと共に、コード配列に隣接する。これらの配列は、DNAによりコードされるポリペプチドへ翻訳することができるmRNAの転写を命令する。転写終結配列は、転写の終結を助けるステムループ構造を形成する能力がある(約50ヌクレオチドの)DNA配列を含むことが多い。例として、大腸菌におけるtrp遺伝子などの強いプロモーターを有する遺伝子、および他の生合成遺伝子に由来する転写終結配列が挙げられる。
【0050】
発現ベクターは、治療剤のコード配列を制御領域の転写制御下にあるように挿入するために複数の制限部位を有する。細胞におけるベクターの維持を保証する選択マーカー遺伝子もまた、発現ベクターに含むことができる。好ましい選択マーカーには、アンピシリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、カナマイシン(ネオマイシン)、およびテトラサイクリンなどの薬物耐性を与えるものが挙げられる(Daviesら(1978)Annu.Rev.Microbiol.32:469)。選択マーカーはまた、細胞が最少培地で、または毒性代謝産物の存在下で成長するのを可能にする場合があり、それには、ヒスチジン、トリプトファン、およびロイシンの生合成経路におけるものなどの生合成遺伝子を挙げることができる。
【0051】
制御領域は、宿主細胞および/または本発明のヌクレオチド配列に対して本来のもの(同種性)であってもよいし、外来(異種)であってもよい。制御領域はまた、天然でも合成でもよい。制御領域が宿主細胞に対して「外来」または「異種」である場合、制御領域は、その制御領域が導入される本来の細胞には見出されないことを意味する。制御領域が、本発明の治療剤をコードするヌクレオチド配列に対して「外来」または「異種」である場合、制御領域は、作動可能に連結された、本発明の治療剤をコードするヌクレオチド配列についての本来または天然の制御領域ではないことを意味する。例えば、制御領域は、ファージ由来であってもよい。異種制御領域を用いて配列を発現することが好ましい場合があるが、天然または同種性領域を用いてもよい。そのような構築物は、場合によっては、宿主細胞における治療剤の発現レベルを変化させることが予想される。したがって、宿主細胞の表現型は、本来のペプチドが発現されることになっているにしても、変化するであろう。
【0052】
発現カセットの調製において、様々なDNA断片は、DNA配列を正しい配向で、および必要に応じて、正しいリーディングフレームで提供するために、操作されてもよい。このような目的で、アダプターもしくはリンカーがDNA断片を結合するために用いられてもよいし、または便利な制限部位、過剰なDNAの除去、制限部位の除去などを提供する他の操作を伴ってもよい。この目的のために、インビトロ突然変異誘発、プライマー修復、制限、アニーリング、再置換、例えば、トランジションおよびトランスバージョンを伴ってもよい。
【0053】
あるいは、上記の構成要素は、形質転換ベクター内に一緒に配置することができる。形質転換ベクターは、典型的には、上記のように、レプリコンに維持されるか、または組込みベクターに発展するかのいずれかである、選択マーカーを含む。
【0054】
本発明の発現ベクターまたはアミノ酸配列は、当技術分野において知られた方法によって宿主細胞へ導入されてもよい。「導入する」とは、通常の形質転換もしくはトランスフェクション技術による、またはファージ媒介型感染による原核細胞への導入を意味する。本明細書で用いられる場合、用語「形質転換」、「形質導入」、「接合」、および「プロトプラスト融合」とは、外来核酸(例えば、DNA)を宿主細胞へ導入するための、技術分野で認められた様々な技術を指すように意図され、それには、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介型トランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションが挙げられる。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクションするための適切な方法は、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)および他の実験マニュアルに見出すことができる。
【0055】
本発明の治療剤または治療用ポリペプチドを産生するために用いられる細菌細胞は、Sambrookら(1989)Molecular Cloning,A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York)に一般的に記載されているように、適切な培地中で培養される。
【0056】
本発明により包含される細菌株には、本発明の少なくとも1つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列を含む細菌の生物学的に純粋な培養物であるものが挙げられる。これらの菌株として、Lactobacillus、Bifidobacterium、Streptococcus thermophilusを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0057】
上記で言及されているように、一実施形態において、治療剤は、AQ/AQRリッチなペプチドである。そのようなポリペプチドは、異種または同種性制御領域を用いるDNA構築物に配置することができる。特に、AQ/AQRリッチなポリペプチドは、P6プロモーターを用いて発現することができる。それは任意の胆汁感受性微生物において発現することができるが、一実施形態において、遺伝的に改変されたSt.thermophilus細菌が、本明細書の他の箇所で開示されたAQ/AQRリッチなポリペプチドを発現するために用いられる。
【0058】
処置方法および防止方法
本明細書の他の箇所に記載された細菌の投与を含む、被験体において胃腸障害を処置および防止するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、細菌、例えば、St.thermophilus細菌の投与は、被験体において、C.difficileにより放出される毒素Aに関連した、細胞アポトーシスを阻害し、かつ粘膜破壊を低減することができる。他の実施形態において、少なくとも1つの治療剤を発現する胆汁感受性細菌の投与は、被験体において、C.difficileにより放出される毒素Aに関連した、細胞アポトーシスを阻害し、かつ粘膜破壊を低減することができる。いくつかの実施形態において、被験体において、胃腸障害を処置および/または防止し、C.difficile感染に関連した症状を処置および/または防止し、加えて腸において痛みを局所的に処置するための方法が提供される。
【0059】
「処置」とは、胃腸障害に関する被験体の状態または症状を治癒し、癒し、軽減し、緩和し、変化させ、治し、寛解させ、改善し、または影響を及ぼすと本明細書で定義される。処置される被験体は、例えば、C.difficile感染症を患っている最中であり得、またはC.difficile感染症を発症するリスクがあり得ることを含め、胃腸障害を患っている最中であり得、またはそれを発症するリスクがあり得る。一実施形態において、組換え胆汁感受性細菌は、患者への抗生物質の投与前に、投与と同時に、または投与後に投与することができる。
【0060】
細菌の投与は、予防または治療のどちらも目的とすることができる。「防止すること」とは、細菌が予防的に供給されること、すなわち、細菌が、任意の症状の前に供給されることを意味する。組換え細菌の予防的投与は、任意のその後の症状を防止または減弱する働きをする。治療的に供給される場合、細菌は症状の発生時点または発生後に供給される。その物質の治療的投与は、任意の現実の症状を減弱する働きをする。
【0061】
「被験体」とは、動物を意味する。特定の実施形態において、被験体は哺乳動物、例えば、霊長類またはヒトである。他の実施形態において、被験体には、ネコもしくはイヌなどの家畜、または反芻動物、ウマ、ブタ、家禽、もしくはヒツジなどの農業用動物が挙げられる。特定の実施形態において、本発明の薬学的製剤での処置を受ける被験体はヒトである。いくつかの実施形態において、処置を受けるヒトは、新生児、乳児、幼児、思春期直前の子ども、思春期の若者、または成人であり得る。本発明の被験体は、胃腸障害の症状を患っている最中であってもよいし、胃腸障害のリスクがある者(例えば、抗生物質処置を受けた被験体)でもよい。
【0062】
胃腸障害
本発明の方法は、胃腸障害の処置および/または防止に関する。本明細書で用いられる場合、用語「胃腸障害」または「胃腸管の障害」とは、胃腸管または腸の疾患を指す。胃腸障害には、例えば、ロタウイルス(rotavirus)、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus)、腸内アデノウイルス(enteric adenovirus)、ノーウォークウイルス(Norwalk virus)、ピコルナウイルス(picornavirus)、アデノウイルス(adenoviru)、コロナウイルス(coronavirus)、カリシウイルス(Calicivirus)(Caliciviridae科)、およびウシウイルス性下痢症ウイルス(bovine viral diarrhea virus)などのウイルス;腸内毒素原性大腸菌、侵入性大腸菌、Shigella、Salmonella、Vibrio細菌(例えば、Vibrio cholerae)、Clostridium difficile、Clostridium perfringens、Enterococcus faecium、Enterococcus faecalis、Staphylococcus aureus、およびCampylobacter jejuniなどの細菌;Microsporridia spp.、Cryptospordia spp.(例えば、Cryptosporidium parvum)、Isospora belli、Blastocystis hominis、Dientamoeba fragilis、Balantinium coli、Isopora belli、Cylclospora cayetanensis、Enterocytozoon bieneusi、Entamoeba histolytica、Giardia lamblia(Lamblia intestinalisとも呼ばれる)、およびEncephalitozoon intestitnalisなどの原生動物;ならびにStrongyloides stercoralisなどの蠕虫類を含む様々な微生物によって引き起こされる、例えば、細菌感染が挙げられる。正常な胃腸細菌叢の抗生物質媒介性破壊は、侵襲性カンジダ症などの真菌感染症、またはC.difficileによって引き起こされる抗生物質関連大腸炎を含む胃腸障害をもたらし得る。
【0063】
本発明の方法および組成物は、炎症性胃腸障害の処置に関する。本明細書で用いられる場合、用語「炎症性胃腸障害」または「胃腸管の炎症性障害」とは、免疫系または免疫系の細胞によって媒介される胃腸管または腸の疾患を指す。炎症性胃腸障害には、例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(IBD)、リンパ球性大腸炎、顕微鏡的大腸炎、コラーゲン形成大腸炎、自己免疫性腸疾患、アレルギー性胃腸疾患、および好酸球性胃腸疾患、加えて、下痢、腹部膨満、鼓腸、腹部痙攣、腹痛、または便秘が挙げられる。特定の実施形態において、本発明の方法は、肥満、またはIBD、下痢、腹部膨満、鼓腸、腹部痙攣、腹痛、もしくは便秘を含む肥満の症状の処置または防止に関する。例えば、参照により本明細書に組み入れられた、Kadooka Yら(2010)Eur J Clin Nutr.64(6):636−43を参照されたい。
【0064】
いくつかの実施形態において、炎症の減少として、腸全体性の刺激;腸透過性の低減;ムチン合成、分泌、および/または品質の向上;腸上皮の成熟および分化の向上;栄養吸収の向上;抗菌活性を伝達する可溶性因子の産生の増加;感染に対する抵抗性の刺激、向上、または支援;ウイルス感染または細菌感染に対する細胞性応答または体液性応答の支援;細胞毒性の増加(抗ウイルスと抗腫瘍の両方);全身性および/または粘膜性ワクチン接種応答の支援;細胞性および/または体液性免疫の増加または支援;(好中球、食細胞、マクロファージ、およびナチュラルキラー細胞の活性を含む)自然免疫の増加または支援;適応T細胞およびB細胞免疫の増加または支援;ヘルパーT細胞1(Th1)サイトカインパターンの刺激(IL−1、IL−2、IFN−γ、IL−12、TNF−αの増加;ヒト白血球抗原―Dr(HLA−Dr)発現);(サイトカインおよび/またはケモカインを含む)全身性および粘膜性炎症メディエーターの炎症または産生の抑制;総IgEおよび/またはアレルゲン特異的IgEを低減することによる感作の低減;アレルギー性サイトカインの産生の低減;Th2支援免疫グロブリンプロファイルの低減;ならびにそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0065】
本明細書で用いられる場合、用語「炎症促進性サイトカイン」とは、炎症を促す免疫調節性サイトカインを指す。本発明の炎症促進性サイトカインには、IL1−α、IL1−β、TNF−α、IL−2、IL−3、IL−6、IL−7、IL−9、IL−12、IL−16、IL−17、IL−18、IL−22、VEGF、エオタキシン、KC、TNF−α、MIP1a、MIP3a、LT、LIF、オンコスタチン、またはIFN−α、IFN−β、IFN−γが挙げられる。
【0066】
本発明の方法および組成物は、炎症促進性サイトカイン産生を減少させるものを含み、それが、炎症性応答を減少もしくは防止し、または胃腸管の炎症性障害を防止もしくは処置する可能性がある。本明細書で用いられる場合、炎症促進性サイトカイン産生のレベルの減少は、適切な対照と比較して、被験体における炎症促進性サイトカイン産生のレベルにおける任意の統計的に有意な減少を含む。そのような減少には、例えば、炎症促進性サイトカインのレベルにおける少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の減少を挙げることができる。サイトカインレベルについてアッセイするための方法は知られており、それには、例えば、Leng、2008、J Gerontol A Biol Sci Med Sci 63(8):879−884が挙げられる。炎症促進性サイトカインの産生についてアッセイするための方法には、多重ビーズアッセイ、ELISPOT、およびフローサイトメトリーが挙げられる。例えば、Maecker、2005、BMC Immunology 6:13を参照されたい。
【0067】
本明細書で用いられる場合、「細胞アポトーシス」または「アポトーシス」とは、細胞増殖と細胞消失の間のバランスを維持するのに必要不可欠なプログラム細胞死を指す。化学療法薬などの毒剤、電離放射線、微生物、および免疫媒介性反応は、腸上皮細胞におけるアポトーシス率を増加させ、その結果、上皮損傷を生じることが知られている。アポトーシスは、カスパーゼ(capsases)と呼ばれる細胞内システインプロテアーゼのファミリーにより実行される。C.difficile関連下痢において、C.difficileによって放出される毒素Aは、腸上皮細胞、マスト細胞、および内皮細胞において作用してアポトーシスを誘導するように作用することができ、そのアポトーシスが腸粘膜破壊の一因となり得る。本明細書で用いられる場合、「粘膜破壊」とは、粘膜細胞の刺激、炎症、糜爛、潰瘍、上皮損傷、浮腫、または好中球浸潤を指す。細胞アポトーシスおよび粘膜破壊についてアッセイするための方法は、本明細書の他の箇所で記載されている。その細菌の投与が腸創傷治癒を促進し得ることは理解されている。創傷治癒は、本明細書の他の箇所で開示されているように、細胞アポトーシスおよび粘膜破壊を測定することにより、例えば、細胞遊走を測定することによって、決定することができる。
【0068】
いくつかの実施形態において、本発明の細菌の投与は、カスパーゼ6または9の活性化に干渉することなく、TxAによって誘導されるカスパーゼ8の活性化の阻害を生じる。他の実施形態において、本発明の細菌の投与は、HSP72などの熱ショックタンパク質(HSP)の誘導を生じる。
【0069】
薬学的組成物
いくつかの実施形態において、本発明の治療剤を発現する胆汁感受性細菌株は、栄養補給剤および/または食品添加物などの栄養補助組成物の形で被験体に投与される。特定の実施形態において、薬学的組成物は、AQ/AQRリッチなペプチド(配列番号1および2に示されたポリヌクレオチドおよびポリペプチドなど)を発現するように改変されている細菌を含む。他の実施形態において、抽出物が、薬学的組成物の形で被験体に投与される。投与は、本明細書の他の箇所で記載されているように、単一用量または複数回用量の投与を含み得る。
【0070】
薬学的組成物は、液剤でも固形剤でもよい。薬学的組成物が固形剤である場合、それは錠剤、しゃぶり型錠剤、咀嚼錠剤、チューインガム、カプセル、サッシェ、粉末、顆粒、被覆粒子、被覆錠剤、腸溶性錠剤、腸溶性カプセル、溶解性ストリップ、またはフィルムとして処方されてもよい。薬学的組成物が液剤である場合、それは、経口溶液、懸濁液、乳剤、またはシロップとして処方されてもよい。前記組成物は、乳酸発酵食品、発酵乳製品、難消化性デンプン、食物繊維、糖質、タンパク質、およびグリコシル化タンパク質からなる群より非依存的に選択される担体材料をさらに含んでもよいが、担体材料はその群に限定されない。薬学的組成物は、ヒト消費のための食品、または農業用動物もしくは家畜による消費のための飼料生産物として供給されてもよい。
【0071】
本明細書で用いられる場合、用語「薬学的組成物」は、必要とされる効果、すなわち、胃腸障害の処置または防止が達成される限り、食品組成物、食事補給剤、機能性食品、医療食、または栄養生産物として処方することができる。前記食品組成物は、飲料、ヨーグルト、ジュース、アイスクリーム、パン、ビスケット、クラッカー、シリアル、ヘルスバー、スプレッド、および栄養生産物からなる群より選択されてもよい。食品組成物は、担体材料をさらに含んでもよく、前記担体材料は、乳酸発酵食品、発酵乳製品、難消化性デンプン、食物繊維、糖質、タンパク質、およびグリコシル化タンパク質からなる群より選択される。
【0072】
本発明により用いられ、または本発明により製造される、本発明による薬学的組成物はまた、不活性賦形剤、または薬学的に許容され得るアジュバント、担体、保存剤などの他の物質を含んでもよく、それらの物質はよく知られている。
【0073】
本開示はまた、本明細書に開示された細菌の、お互いとの組み合わせ、および/または胃腸管の障害の処置に有用な1つもしくは複数の他の作用物質との組み合わせを含む。例えば、本発明の細菌は、有効用量の従来の抗生物質と併用して投与されてもよく、その抗生物質には、メトロニダゾール、セファレキシン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ゲミフロキサシン、バロフロキサシン、ガチフロキサシン、グレパフロキサシン、パズフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、ロメフロキサシン、ナジフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、ペフロキサシン、ルフロキサシン、トロボフロキサシン、トスフロキサシン、クリンダマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、セフォキシチン、セフメタゾール、セフォテタン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、イミペネム、メロペネム、チカルシリン、ピペラシリン(pipercillin)、メゾシリン、タゾバクタム、アンピシリン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。用語「併用投与」とは、活性作用物質の同時投与と逐次投与の両方を指す。併用治療は、本明細書に提供された作用物質に限定されず、障害の処置のための任意の組成物を含む。
【0074】
治療的有効量
「治療的有効用量」、「治療的有効量」、または「有効量」とは、被験体に投与された場合、胃腸障害を処置または防止する、本発明の細菌の量を意味する。例えば、治療的有効量の本発明の細菌の投与は、C.difficile感染を有する被験体において細胞アポトーシスを阻害し、かつ粘膜破壊を低減することができる。「正の治療応答」とは、例えば、胃腸障害の症状の少なくとも1つの状態を改善することを指す。
【0075】
治療剤の有効量は、意図される目標に基づいて決定される。用語「単位用量」とは、各単位が、投与、すなわち、適切な経路および処置計画に関連して、所望の応答を生じるように計算された所定量の治療組成物を含有する、被験体に用いるのに適した物理的に別々の単位を指す。処置回数および単位用量の両方に従って、投与される量は、処置される被験体、被験体の状態、および望まれる保護に依存する。治療組成物の正確な量はまた、開業医の判断に依存し、各個体に特有なものである。一般的に、組換え細菌の投薬量は、患者の年齢、体重、身長、性別、一般的な病状、および既往歴のような因子によって異なる。特定の実施形態において、約10〜約1012CFU、約10〜約1011CFU、約10〜約1010CFU、約10〜約1010CFU、または約10〜約1012CFUの範囲で細菌を投与することが望ましい場合がある。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態において、方法は、複数回用量の細菌の投与を含む。方法は、約1回、約2回、約3回、約4回、約5回、約6回、約7回、約8回、約9回、約10回、約15回、約20回、約25回、約30回、約35回、約40回、またはそれ以上の治療的有効用量の、本明細書に記載されているような細菌を含む組成物の投与を含んでもよい。いくつかの実施形態において、用量は、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約10日間、約14日間、約21日間、約30日間の、または約30日間より長いコースにわたって投与される。複数回用量の組成物の投与の頻度および期間は、炎症性応答を低減または防止し、それにより、胃腸障害を処置または防止する程度のものである。さらに、治療的有効量の本発明の組換え細菌での被験体の処置は、単回処置を含むことができ、または一連の処置を含むことができる。処置に用いられる細菌の有効量は、特定の処置のコースにわたって増加または減少してもよいことが認識される。投薬量の変更という結果になる場合があり、それは、当技術分野において知られた、および本明細書に記載された、炎症を検出するための診断アッセイの結果から明らかになり得る。
【0077】
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、1つまたは1つより多い(すなわち、少なくとも1つの)その冠詞の文法的目的語を指すように本明細書で用いられる。例として、「1つの要素」とは、1つまたは複数の要素を意味する。
【0078】
本明細書に挙げられた全ての刊行物および特許出願は、本発明が属する技術分野の業者のレベルを示す。全ての刊行物および特許出願は、各個々の刊行物または特許出願が具体的かつ個々に示されて、参照により組み入れられているかのように同じ程度で、参照により本明細書に組み入れられている。
【0079】
前述の本発明は、理解を明快にするために実例および例としてかなり詳細に記載されているが、特定の変化および改変が添付の特許請求の範囲の範囲内で実施され得ることは明らかであろう。
【0080】
寄託
本出願人は、Streptoccus thermophilus LMD−9の寄託をAmerican Type Culture Collection(ATCC)、Manassas、VA 20110 USAにATCC寄託番号PTA−11888として行った。本出願人はさらに、ATCC寄託番号PTA−11889としてStreptoccus thermophilus NCK2071、ATCC寄託番号PTA−11890としてStreptoccus thermophilus NCK2072、およびATCC寄託番号PTA−11891としてStreptoccus thermophilus NCK2073の寄託を行った。
【0081】
ATCCに寄託された細菌培養物は、本出願の出願日前以来、North Carolina State University、100 Schaub Hall、Campus Box 7624、Raleigh、North Carolina、27695によって維持された寄託物から採取された。この寄託物の入手は、本出願の係属中、特許商標庁長官、および要請によりその資格があると長官により決定された人に対して可能である。本出願における任意の特許請求の範囲の許可により、本出願人は、37C.F.R.§1.808によって寄託物を一般に公開する。この寄託は、公共の寄託機関であるATCC寄託機関において、どちらがより長いにしても、30年間、もしくは最新の要請後5年間の期間、または本特許の権利行使可能期間の間、維持され、その期間中、生存不能になった場合には取り替えられる。追加として、出願人は、寄託の際、試料の生存能力の表示を提供することを含む、37C.F.R.§§1.801〜1.809の要件の全部を有し、または満たすつもりである。出願人は、商業目的のための生物材料の譲渡またはその輸送への法律により課せられるいかなる制限も放棄する権利をもたない。
【0082】
上記で提供された説明に照らして、以下の実施形態が提供される:
第1の実施態様によれば、異種ポリペプチドを発現するように改変されているStreptococcus thermophilus細菌であって、前記異種ポリペプチドが胆汁への曝露後に前記細菌から放出される、細菌が提供される。
【0083】
一実施形態において、異種ポリペプチドは、治療用ポリペプチドである。特定の実施形態において、異種ポリペプチドは、アラニン−グルタミンリッチなペプチド(Alanine−Glutamine rich peptide)である。
【0084】
さらなる実施形態において、アラニン−グルタミンリッチなペプチドは、以下からなる群より選択される:
a)配列番号2または8に示されたアミノ酸配列と少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;
b)配列番号4または10に示されたアミノ酸配列と少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;
c)配列番号6または12に示されたアミノ酸配列と少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;
d)配列番号1、3、5、7、9、または11、または配列番号1、3、5、7、9、もしくは11の少なくとも1つと少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の配列同一性を有するヌクレオチドの少なくとも1つの配列を含む核酸によってコードされるペプチド;および
e)配列番号2、4、6、8、10、または12のいずれか1つと、1個または数個のアミノ酸だけ、異なるペプチド。
【0085】
さらなる実施形態において、アラニン−グルタミンリッチなペプチドは、配列番号2、4、6、8、10、または12からなる群より選択される。
【0086】
さらなる実施形態において、前の実施形態のいずれか1つの細菌は、前記胆汁への曝露後に生き残らない。
【0087】
さらなる実施形態において、前の実施形態のいずれか1つの細菌は、Streptococcus thermophilus LMD−9、Streptococcus thermophilus NCK2071、Streptococcus thermophilus NCK2072、またはStreptococcus thermophilus NCK2073である。
【0088】
第2の実施態様において、Streptococcus thermophilus細菌を作製する方法であって、前記方法が、異種ポリペプチドを発現するように前記細菌を遺伝的に改変することを含み、前記ポリペプチドが、胆汁への曝露後、前記細菌から放出される、方法が提供される。
【0089】
さらなる実施形態において、前記異種ポリペプチドがアラニン−グルタミンリッチなペプチドである。
【0090】
さらなる実施形態において、アラニン−グルタミンリッチなペプチドが、以下からなる群より選択される:
a)配列番号2または8に示されたアミノ酸配列と少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;
b)配列番号4または10に示されたアミノ酸配列と少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;
c)配列番号6または12に示されたアミノ酸配列と少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;
d)配列番号1、3、5、7、9、または11、または配列番号1、3、5、7、9、もしくは11の少なくとも1つと少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の配列同一性を有するヌクレオチドの少なくとも1つの配列を含む核酸によってコードされるペプチド;および
e)配列番号2、4、6、8、10、または12のいずれか1つと、1個または数個のアミノ酸だけ、異なるペプチド。
【0091】
さらなる実施形態において、前記アラニン−グルタミンリッチなペプチドは、配列番号2、4、6、8、10、または12からなる群より選択される。
【0092】
さらなる実施形態において、前記細菌は、前記胆汁への曝露後に生き残らない。
【0093】
さらなる実施形態において、前の実施形態のいずれか1つの細菌は、Streptococcus thermophilus LMD−9、Streptococcus thermophilus NCK2071、Streptococcus thermophilus NCK2072、またはStreptococcus thermophilus NCK2073である。
【0094】
第3の実施態様によれば、異種ポリペプチドを被験体に送達する方法であって、前の実施形態のいずれか1つによる細菌を被験体に経口投与することを含む、方法が提供される。
【0095】
第4の実施態様によれば、被験体において障害を処置または防止する方法であって、前の実施形態のいずれか1つによる細菌の治療的有効量を被験体に経口投与することを含む、方法が提供される。
【0096】
さらなる実施形態において、被験体は動物、より具体的には、哺乳動物である。
【0097】
別の実施形態において、被験体はヒトである。
【0098】
さらなる実施形態において、被験体は家畜である。
【0099】
なおさらなる実施形態において、被験体は農業用動物である。
【0100】
さらなる実施形態において、被験体は胃腸障害を有する。
【0101】
さらなる実施形態において、障害は細菌感染、より具体的には、Clostridium difficile感染である。
【0102】
さらなる実施形態において、細菌は、治療的有効量で投与され、細菌の治療的有効量は約10〜1012CFU/日である。
【0103】
第5の実施態様によれば、本明細書に記載された細菌を含む薬学的組成物が提供される。
【0104】
第6の実施態様によれば、本明細書に記載された組換え細菌を含む食品または飼料生産物が提供される。
【0105】
さらなる実施形態において、食品は乳製品である。
【0106】
第7の実施態様によれば、薬剤として用いられる、本明細書に記載された細菌が提供される。
【0107】
第8の実施態様によれば、被験体において障害を処置または防止するのに用いられる、本明細書に記載された細菌が提供される。
【0108】
さらなる実施形態において、障害は胃腸障害である。
【0109】
さらなる実施形態において、細菌は、細菌感染、より具体的には、Clostridium difficile感染を処置するのに用いられる。
【0110】
代替の実施形態において、障害は炎症性障害である。
【0111】
細菌は、炎症を減少させるのに用いられる。一実施形態において、細菌は、前記被験体において1つまたは複数の炎症促進性サイトカインの産生を減少させ、より具体的には、胆汁感受性St.thermophilus細菌が、MIP1a、MIP3a、IL−16、IL−22、VEGF、エオタキシン、IL−1b、KC、またはLIFの産生を減少させる。
【0112】
細菌が治療的有効量で供給され、細菌の治療的有効量は約10〜1012CFU/日であることは理解されているであろう。
【0113】
第9の実施態様によれば、本明細書に記載された細菌の薬剤としての使用が提供される。
【0114】
一実施形態において、薬剤は、被験体において障害を処置または防止するために用いられる。
【0115】
一実施形態において、薬剤は、胃腸障害を処置するために用いられる。
【0116】
さらなる実施形態において、障害は細菌感染、より具体的には、Clostridium difficile感染である。
【0117】
代替の好ましい実施形態において、障害は炎症性障害である。
【0118】
薬剤は炎症を減少させるために用いられる。一実施形態において、薬剤は、前記被験体において1つまたは複数の炎症促進性サイトカインの産生を減少させ、より具体的には、胆汁感受性St.thermophilus細菌が、MIP1a、MIP3a、IL−16、IL−22、VEGF、エオタキシン、IL−1b、KC、またはLIFの産生を減少させる。
【0119】
第10の実施態様によれば、治療的有効量の単離された胆汁感受性Streptococcus thermophilus細菌を被験体に投与することを含む、被験体の胃腸管の炎症性障害を処置する方法が提供される。
【0120】
第11の実施態様によれば、治療的有効量の単離された胆汁感受性Streptoccus thermophilus細菌を被験体に投与することを含む、被験体において炎症を減少させる方法が提供される。
【0121】
さらなる実施形態において、被験体は、炎症性胃腸障害、より具体的には、Clostridium difficile感染を有する。
【0122】
別の実施形態において、胆汁感受性St.thermophilus細菌は、前記被験体において1つまたは複数の炎症促進性サイトカインの産生を減少させ、より具体的には、胆汁感受性St.thermophilus細菌が、MIP1a、MIP3a、IL−16、IL−22、VEGF、エオタキシン、IL−1b、KC、またはLIFの産生を減少させる。
【0123】
細菌が治療的有効量で供給され、細菌の治療的有効量は約10〜1012CFU/日であることは理解されているであろう。
【0124】
上記で提供された説明に照らして、以下の実施形態がさらに提供される:
1.異種ポリペプチドを発現するように改変されているStreptococcus thermophilus細菌であって、前記異種ポリペプチドが、胆汁への曝露後、前記細菌から放出される、細菌。
2.前記異種ポリペプチドが治療用ポリペプチドである、実施形態1に記載の細菌。
3.前記異種ポリペプチドがアラニン−グルタミンリッチなペプチドである、実施形態1または2に記載の細菌。
4.前記アラニン−グルタミンリッチなペプチドが、以下からなる群より選択される、実施形態3に記載の細菌:
a)配列番号2または8に示されたアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;
b)配列番号4または10に示されたアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;
c)配列番号6または12に示されたアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;
d)配列番号1、3、5、7、9、または11のいずれかに示されたヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるペプチド;および
e)配列番号1、3、5、7、9、または11の少なくとも1つと少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるペプチド。
5.前記アラニン−グルタミンリッチなペプチドが、配列番号2、4、6、8、10、または12からなる群より選択される、実施形態3に記載の細菌。
6.前記細菌が前記胆汁への曝露後に生き残らない、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の細菌。
7.前記Streptococcus thermophilusが、以下からなる群より選択される、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の細菌:
a)ATCCアクセッション番号PTA−11888として寄託されている、Streptococcus thermophilus LMD−9;
b)ATCCアクセッション番号PTA−11889として寄託されている、Streptococcus thermophilus NCK2071;
c)ATCCアクセッション番号PTA−11890として寄託されている、Streptococcus thermophilus NCK2072;
d)ATCCアクセッション番号PTA−11891として寄託されている、Streptococcus thermophilus NCK2073;および
e)プロバイオティクスStreptococcus thermophilus細菌。8.Streptococcus thermophilus細菌を作製する方法であって、前記方法が異種ポリペプチドを発現するように前記細菌を遺伝的に改変することを含み、前記ポリペプチドが、胆汁への曝露後、前記細菌から放出される、方法。
9.前記異種ポリペプチドがアラニン−グルタミンリッチなペプチドである、実施形態8に記載の方法。
10.前記アラニン−グルタミンリッチなペプチドが、以下からなる群より選択される、実施形態8または9に記載の方法:
a)配列番号2または8に示されたアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;
b)配列番号4または10に示されたアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;
c)配列番号6または12に示されたアミノ酸配列と少なくとも70%、80%、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチド;
d)配列番号1、3、5、7、9、または11のいずれかに示されたヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるペプチド;および
e)配列番号1、3、5、7、9、または11の少なくとも1つと少なくとも約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるペプチド。
11.前記アラニン−グルタミンリッチなペプチドが、配列番号2、4、6、8、10、または12からなる群より選択される、実施形態8または9に記載の方法。
12.前記細菌が前記胆汁への曝露後に生き残らない、実施形態8〜11のいずれか1つに記載の方法。
13.前記Streptococcus thermophilusが、以下からなる群より選択される、実施形態8〜12のいずれか1つに記載の方法:
a)ATCCアクセッション番号PTA−11888として寄託されている、Streptococcus thermophilus LMD−9;
b)ATCCアクセッション番号PTA−11889として寄託されている、Streptococcus thermophilus NCK2071;
c)ATCCアクセッション番号PTA−11890として寄託されている、Streptococcus thermophilus NCK2072;
d)ATCCアクセッション番号PTA−11891として寄託されている、Streptococcus thermophilus NCK2073;および
e)プロバイオティクスStreptococcus thermophilus細菌。14.異種ポリペプチドを被験体に送達する方法であって、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の細菌を被験体に経口投与することを含む、方法。
15.被験体において障害を処置または防止する方法であって、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の細菌の治療的有効量を被験体に経口投与することを含む、方法。
16.前記被験体が動物である、実施形態14または15に記載の方法。
17.前記被験体が哺乳動物である、実施形態16に記載の方法。
18.前記被験体がヒトである、実施形態17に記載の方法。
19.前記被験体が家畜である、実施形態16に記載の方法。
20.前記被験体が農業用動物である、実施形態16に記載の方法。
21.前記障害が胃腸障害である、実施形態15〜20のいずれか1つに記載の方法。
22.前記障害が細菌感染である、実施形態15〜20のいずれか1つに記載の方法。
23.前記細菌感染がClostridium difficile感染である、実施形
態22に記載の方法。
24.細菌の前記治療的有効量が約10〜1012CFU/日である、実施形態14〜23のいずれか1つに記載の方法。
25.実施形態1〜7のいずれか1つに記載の細菌を含む薬学的組成物。
26.実施形態1〜7のいずれか1つに記載の細菌を含む食品または飼料生産物。
27.前記食品が乳製品である、実施形態24に記載の食品。
28.薬剤として用いられる、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の細菌。
29.被験体において障害を処置または防止するのに用いられる、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の細菌。
30.前記障害が細菌感染である、実施形態28または29記載の用いられる細菌。
31.前記細菌感染が被験体におけるClostridium difficile感染である、実施形態30記載の用いられる細菌。
32.前記細菌が処方されて、治療的有効量で被験体に投与され、細菌の治療的有効量が約10〜1012CFU/日である、実施形態28〜31のいずれか1つの用いられる細菌。
33.実施形態1〜7のいずれか1つに記載の細菌の薬剤としての使用。
34.該薬剤が、被験体において障害を処置または防止するのに用いられる、実施形態33に記載の細菌の使用。
35.前記障害が細菌感染である、実施形態34に記載の細菌の使用。
36.前記細菌感染がClostridium difficile感染である、実施形態35に記載の細菌の使用。
37.治療的有効量の単離された胆汁感受性Streptococcus thermophilus細菌を被験体に投与することを含む、被験体の胃腸管の炎症性障害を処置する方法。
38.治療的有効量の単離された胆汁感受性Streptoccus thermophilus細菌を被験体に投与することを含む、被験体において炎症を減少させる方法。
39.前記被験体が炎症性胃腸障害を有する、実施形態37または38に記載の方法。
40.前記炎症性胃腸障害がClostridium difficile感染である、実施形態39に記載の方法。
41.前記胆汁感受性St.thermophilus細菌が、前記被験体において1つまたは複数の炎症促進性サイトカインの産生を減少させる、実施形態37〜40のいずれか1つに記載の方法。
42.前記炎症促進性サイトカインが、MIP1a、MIP3a、IL−16、IL−22、VEGF、エオタキシン、IL−1b、KC、およびLIF、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、実施形態41に記載の方法。
43.細菌の前記治療的有効量が約10〜1012CFU/日である、実施形態37〜42のいずれか1つに記載の方法。
【0125】
以下の実施例は、実例として提供され、限定としてではない。
【実施例】
【0126】
実施例1
GlnリッチなオリゴペプチドAGRP−FH0、AGRP−FH1、およびAGRP−FH2を含有するプラスミドpUC57−AGRP−FH0、pUC57−AGRP−FH1、およびpUC57−AGRP−FH2は、下記(表1)に示されたGlnリッチなパッセンジャードメインのアミノ酸配列に基づいて、GenScript Corporation(Piscataway、NJ)によって構築された。その3つのオリゴペプチドのそれぞれは、FLAGタグエピトープ(DYKDDDDK、配列番号13)を含有する。表はまた、コードされたGlnリッチなオリゴペプチドの分子量および等電点の情報も含む。パッセンジャーのコード領域を、下記のSt.thermophilus発現ベクターの構築に用いた。
【0127】
プラスミドpUC57−AGRP−FH0、pUC57−AGRP−FH1、およびpUC57−AGRP−FH2に含有されるGlnリッチなオリゴペプチドは、長さ、Gln含有量、および放出時にそれらの分解を促進する可能性があるプロテアーゼ切断部位の存在を考慮することによって、安定性を向上させるように設計することができる。経口補液治療においてGlnとの相乗効果を示しているアルギニンなどの他のアミノ酸を、Glnリッチなペプチドに含めることができた。
【0128】
【表1】
実施例2
St.thermophilus株LMD−9(NCK1125とも呼ばれる)は、完全なゲノム配列を有し(Makarova、2006、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、103:15611−15616)、エレクトロポレーションによって遺伝的に評価できる。この株は、バクテリオファージ感染を遅延させる能力があるアンチセンスRNAの高発現のための高コピーベクター(pTRK686)へのクローニングに用いるのに成功している。加えて、その同じ基本ベクターを用いて、定方向突然変異によって無効になっているファージプライマーゼを細胞内にトランスに発現させた。Glnリッチなオリゴペプチド構築物を発現するために用いられるベクターは、pTRK686に由来し、複数のクローニング部位、およびGlnリッチなオリゴペプチドの発現を作動させるために用いることができる強い構成的プロモーターを含有する(図2および3参照)。
【0129】
大腸菌グラム陽性シャトルベクターpTRK989を、AQQパッセンジャー配列の発現のために選択した。プラスミドpTRK989は、強いP6プロモーターを有し、以前に用いられたpTRK696のXbaI欠失型誘導体である(Sturino、2004、Appl Env Microbiol 70:1735−1743)。AQリッチなペプチドをコードするヌクレオチド配列を、pTRK989にクローニングし、生じたプラスミドを、Z−コンピテント大腸菌形質転換緩衝液セット(Z−Competent E coli Transformation Buffer Set)(Zymo Research)を用いて大腸菌MC1061へ形質転換した。形質転換体を、20ug/mlのクロラムフェニコールを含むLB培地において回収した。正しい挿入断片サイズをもつプラスミドを有する単離物を、ベクター特異的プライマー(SauIフォワード:5’ TGCTGAAGAGCATCTGATTG 3’(配列番号14))および各挿入断片に特異的な内部プライマー(FH0 int:5’ GGCCATGGATTATAAAGACGAC 3’(配列番号15);FH1 int:5’ GGGTCAACGTCAGGCACAACAG 3’(配列番号16);FH2 int:5’ GATAAAGCCCAGGCCCAGCAAC 3’(配列番号17))と共にChoice−Taq Blue DNA Polymerase(Denville Scientific Inc.、Metuchen、NJ)を用いて、挿入断片配向について分析した。
【0130】
適切な配向をもつ各構築物の1つのプラスミド単離物を、フランキングベクタープライマー(上記に示されたSauIフォワードおよびSauIリバース(5’ CCCGTTAGTTGAAGAAGGTT 3’(配列番号18))からの挿入断片の両方の鎖のシーケンシングのためにDavis Sequencing(Davis、CA)へ送った。プラスミドのマップは図3に示されている。配列の確認後、プラスミドを、St.thermophilus LMD−9へエレクトロポレーションによって形質転換した(Sturino、2004、Appl Env Microbiol 70:1735−1743)。5ug/mlのクロラムフェニコールを含むElliker−Bプレートを、嫌気的にインキュベートした。単離物からのプラスミドDNAを、(上記に示された)SauIフォワードおよびリバースプライマーで増幅し、PCR産物をシーケンシングして、各構築物においてP6プロモーター、およびAQリッチなペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を確認した。
【0131】
その後、ペプチド発現を、標準プロトコールを用いて、ウェスタンブロットにより調べた。細胞画分および胆汁処理された細胞上清の両方を、AGRP−FH0、AGRP−FH1、およびAGRP−FH2のオリゴペプチドの存在について調べた。
【0132】
簡単に述べれば、pTRK989(対照)、pTRK996、pTRK997、およびpTRK998を含有するSt.thermophilus株を、適切な抗生物質を含むBellikerブロスにおいて対数期(OD600約0.6)まで成長させた。その後、10mLの対数期培養物を遠心分離し、細胞ペレットを収集した。ペレットを500μLのPBS中に再懸濁し、BeadBeatingに2分間、供し、さらに遠心分離した。上清を収集し、タンパク質定量およびウェスタンブロッティングに用いた。図4参照。
【0133】
【表2】
実施例3
Streptococcus thermophilus(LMD−9)を、1%の牛肉エキスを追加したEllikerのブロス中、42℃で18時間、成長させ、10CFU/mLを生じた。インビボ処置として用いられる培養物をペレット化し、洗浄し、ブロス中に10/mLの最終濃度まで再懸濁した。Clostridium difficileの臨床BI株(UVA24;TcdA、TcdB、CdtA/B)または歴史的な株、VPI10463を、下記に概略を示した研究に用いた。C.difficileを、インビボで用いるために、前還元した細断肉ブロス中に37Cで18時間、またはインビトロ研究のためにBHIブロス中に一晩、成長させた。C.difficileを、0.5%ニュートラルレッド(エタノール中1%w/v)を含有するBHI寒天上で、ブロス微量希釈および滴下プレート法を用いて、数え上げた(Chen、2003、J.Microbiol.Methods、55(2):475−479)。
【0134】
実施例4
以下の改変:抗生物質カクテルからのカナマイシンの除外およびクリンダマイシンの増加(32mg/kg)を行った、C.difficile関連疾患のマウスモデル(Chen、2008、Gastroenterology、135(6):1984−1992)をインビボ研究に用いた。全ての実験を、University of Virginia ACUCに承認されたプロトコールに従って、行った。雄マウス(8週齡、Jackson Laboratories)を全ての研究に用いた。St.thermophilus処置(10CFU/100μL)を、抗生物質カクテルの72時間以内に、その後、経口胃管栄養により24時間ごとに、投与した。動物に、臨床分離株のUVA24(10CFU/100uL)を感染させた。下痢が明らかな場合には、St.thermophilus処置を中止した。毎日、動物を観察し、同時に体重を測定した。下痢の重症度を以下の尺度を用いてスコア化した:0−症状なし、1−塊状のコブ、2−軽微なウェットテイル、および3−ウェットテイル。3日目および5日目に、類似した臨床的徴候を示すマウスを、試料採取(盲腸内容物および組織)のために安楽死させた。試料を、−80℃で凍結保存したか、またはブアン溶液中に固定化し、パラフィンに包埋し、ヘマトキシリン/エオシンを用いて染色したかのいずれかであった(University of Virginia Research Histology Coreにより提供されたサービス)。スライドを、盲検とし、公開されたパラメータを用いる独立したリーダーによりスコア化した(Pawlowski、2010、J Infect Dis 202(11):1708−1712)。
【0135】
実施例5
全てのアッセイを、Bactron I嫌気性チャンバー内で行った(Shel Labs、Cornelius、OR)。C.difficile(10CFU)を、上清、L−乳酸、またはHEPES緩衝液(50mM)を含有するブロスへ接種した。St.thermophilusからの上清を濾過し(0.2μm)、C.difficileの成長を支援するためにBHIで50%(v/v)に希釈した。同様に、L−乳酸のストックをBHI中に10〜100mMの最終濃度まで希釈した。接種および成長(24時間、37℃)後、細菌を上記のようにBHI寒天上で数え上げた。
【0136】
実施例6
マウスの盲腸内容物中、またはインビトロ上清からの毒素(複数可)の検出に、市販のキット(C.difficile毒素A/B II、Techlab、Blacksburg、VA)を用いた。盲腸内容物を重量測定し、最低限、キットに提供された試料希釈液を用いた試料重量測定に対して標準化した。標準化された試料を、1:1000に希釈し、製造会社の指示に従って150uLを試験した。インビトロ上清を、キットを用いて、1:10希釈で試験した。
【0137】
実施例7
St.thermophilusの抗生物質関連C.difficile感染への影響を理解するために、生存St.thermophilusを、抗生物質カクテルを開始した最初の72時間以内に、ヒトに用いられる用量と同様の用量(例えば、70kgのヒトあたり5×1010CFU(McFarland、2009、Anaerobe、15(6):274−280))で毎日、マウスに投与し、感染のコースを通じて毎日、継続した。最初の研究にVPI10463を10CFU(LD50)で用い、St.thermophilus処置については、たった30%だけが死亡したが(対照の50%に対して;データ未呈示)、この傾向は有意ではなく、本発明者らの次の焦点は、臨床分離株であった。
【0138】
C.difficile大腸炎をもつ患者由来の毒素産生性臨床REA型BI分離株(すなわち、UVA24)を用いて、マウスに感染させ、ほとんど死亡率なしに、十分な罹患率を提供した。この株を用いて、St.thermophilusを受けたマウスは、対照より有意に、C.difficile感染による体重減少が少なかった(46%)(図1A)。感染中、マウスを、毎日、下痢の徴候についてスコア化し、感染後3日目および4日目からのデータにより、St.thermophilus処置マウスにおける下痢発生率の低減が示されている(図1D)。別途の実験において、UV照射され生育不能なSt.thermophilusをマウスに与え、感染した対照と比較して、体重または下痢における違いは示されなかった。感染後3日目において、盲腸内容物および組織試料を、処置されたマウスおよび未処置のマウスから採取し、TcdA/Bのレベルおよび病理組織診断について、それぞれ分析した(図4B、C)。盲腸内容物における毒素レベルは、C.difficileによるTcdA/Bの放出の測定を提供するだけでなく、マウスにおける疾患進行の指標としての役割を果たすこともでき、その場合、感染において、より遅れて(すなわち、5日目対3日目)、より低いレベルが見られる。TcdA/Bレベルは有意に異なることはなかったが、St.thermophilusで処置されたマウスは、より低い検出可能なレベルの毒素を有する傾向にあった。同様に、St.thermophilus処置マウスは、より低い重症度の下痢を有した(図4D)。病理組織診断スコアリングにより、St.thermophilusで処置されたマウスは、結腸においてC.difficile関連病態が有意により低く、かつ盲腸病態がより低いことが示された(図4C)。興味深いことに、tcdBを標的にしたリアルタイムPCRを用いて、盲腸内容物において、匹敵するレベルのC.difficileが検出された(3日目における平均C値は、未処置および処置について、それぞれ、34.67および34.49であった;n=8ウェル/群)。まとめると、インビボ結果より、St.thermophilusの、C.difficileによる毒素産生への影響が示唆された;したがって、作用様式を解明するために追加のインビトロ実験を行った。
【0139】
実施例8
St.thermophilus由来の濾過された上清(50%v/v)を、C.difficileへの活性について試験し、24時間後、5log低減が示された(図5A)。より低い上清(33%v/v)が24時間後、C.difficile成長の許容状態であったため(データ未呈示)、活性は用量依存性であった。いくつかの乳酸菌により分泌される主要な成分には、乳酸、過酸化水素、およびバクテリオシンが挙げられる。本明細書に提示された実験は、これらの成分の1つ、乳酸のC.difficileへの効果を特徴づけるために設計された。St.thermophilusにより産生される乳酸の関与を試験するために、濾過された上清(50%v/v)を緩衝化し、C.difficileを接種し、成長を24時間後、定量した。この実験において、緩衝液は、培地のpHを5から5.8へ変化させ、C.difficileの、接種された最初のレベルでの生存を可能にし、静菌効果を示唆した(図5A)。L−乳酸を用いるさらなる実験は、高用量(100mM)が、緩衝にも関わらず、C.difficileに対して殺菌性であるが、10分の1のレベルは成長を可能にすることを示し、培地を緩衝することは、追加の成長を可能にするように思われる(図5B)。VPI10463に関して、L−乳酸(1mMおよび10mM)の同様の結果が観察され、一方、100mMは、24時間後、成長を完全に排除した(データ未呈示)。
【0140】
本研究における、乳酸のC.difficileへの効果を定義する最終実施態様は、St.thermophilusで処置された動物におけるより低い毒素レベルのインビボの所見を確証するために、成長中にTcdAの相対量を調べることに関係した。C.difficile上清(すなわち、乳酸±緩衝液の存在下での24時間の成長)を、TcdA/B ELISAを用いて毒素について試験し、10mM乳酸は細菌成長を可能にするが(図5B)、毒素産生は、緩衝液の非存在下において用量依存性に減少する(図5C)ことが示されている。
【0141】
実施例9
C.difficileは、ヒトおよび動物に関連した、主として毒素産生性株および非毒素産生性株で構成される広範に分布する細菌種である。本明細書で提示した研究は、BI株に関して、St.thermophilusの実験的C.difficile感染への影響を調べようとした。以前の研究(Chen、2008、Gastroenterology、135(6):1984−1992)と同様に、BI株の感染は、VPI10463と比較してより低いインビボでの死亡率を生じた。生存St.thermophilusで処置された動物は、未処置の対照と比較して、より低い下痢重症度を表す有意により少ない体重減少を示し、より低い病態、およびより低い盲腸の毒素レベルを示した;しかしながら、PCRによる盲腸内容物におけるC.difficileの負荷量は、処置に依存しなかった。PCRでの一つの限界は、生物体の生存率を考慮しないことである。
【0142】
とは言っても、本発明者らの所見は、C.difficile曝露前にヒト分離株を有する純粋隔離群マウスにおけるコロニー形成および細胞毒性の影響を調べた研究を反映している(Corthier、1985、Appl Environ microbial 49(1):250−252)。その著者らは、Bifidobacterium bifidumまたは大腸菌が唯一定住したC.difficile感染マウスが、高レベルの病原体にも関わらず、低い盲腸内レベルの細胞毒(すなわち、TcdB)を有することを見出した。本研究で提示されたデータは特異的にTcdBを調べたわけではなかったが、両方の研究により、C.difficile毒素産生を抑制する特定の細菌および/または細菌代謝産物についての役割を示唆している。
【0143】
本明細書に提示された結果は、C.difficileを有する患者の間にプロバイオティクスの利用を導くために用いられ得る臨床関連処置を試験するためのC.difficile感染のワーキングモデルに基づいている。より基本的なレベルにおいては、モデルは、抗生物質曝露および/またはプロバイオティクス生物使用の後の腸内ミクロビオームの疾患感受性に関する調査を可能にする。細菌間と細菌内の両方の代謝過程は、C.difficile毒素代謝、およびそれにしたがって、疾患発生を抑制することにとって重大である。
【0144】
実施例10
粘膜損傷のレベルを測定するために細胞遊走アッセイを用いた。以前に記載されているようにこのアッセイを実施した(McCormack、1992、Am J Physiol 263:G426−G435)。このアッセイについて、35mmのディッシュを、製造会社の使用説明書に従ってマトリゲルでコーティングした(40μg/ml)。遊走を開始させるために、IEC−6細胞を、6.25×104細胞/cm2で蒔き、コンフルエンスまで成長させた。6日後、本発明者らは、細胞層をかみそりの刃で掻爬し、ディッシュの直径から始めて、30mm幅の領域まで拡げた。掻爬後、培地を通常培地に変え、1ng/ml、10ng/ml、または100ng/mlの毒素Aを加えた。以下の実験において、培地の交換は、Glnを含まない培地、またはGlnもしくはAla−Gln(10mM)を含む培地で行われ、その後、毒素A(10ng/ml)を加えた。GlnおよびAla−Glnの機械的損傷後の遊走への効果を検証するために、掻爬後の培地の交換を、毒素Aの非存在下において、Gln無しの培地またはGlnもしくはAla−Gln(1mM、3mM、10mM、または30mM)を含む培地で行った。その後、ディッシュをインキュベータへ戻し、6時間後および24時間後、最高遊走率を示す領域の写真を撮った。接眼レンズ格子を用いて細胞を数えた。
【0145】
実施例11
アネキシンVアッセイによる毒素A誘導性アポトーシスの用量反応および時間経過。IEC−6細胞を、6ウェルのプレートに播種し(106細胞/ウェル)、プレーティングから24時間後、培地を通常培地またはGlnもしくはAla−Gln(10mM)を含有する培地に変え、細胞を毒素A(1〜1000ng/ml)と共に、または毒素Aなしで、インキュベートした。毒素Aとの、用量反応について24時間のインキュベーション後、ならびに時間経過について2時間、6時間、18時間、および24時間のインキュベーション後、培地を取り出し、付着した細胞をPBSで洗浄し、トリプシン処理し、遠心分離により収集し、フルオレセインイソチオシアナート結合型アネキシンVおよびヨウ化プロピジウムで二重染色した(ApoAlert Annexin V Apoptosis Kit;Clonetech、Palo Alto、CA)。アポトーシス細胞および壊死細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーによって測定した。
図1
図2
図3
図5
図6
図7
図8
図4
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]