特許第5871912号(P5871912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5871912-崩壊性被膜で被覆された被覆粒状肥料 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871912
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】崩壊性被膜で被覆された被覆粒状肥料
(51)【国際特許分類】
   C05G 3/00 20060101AFI20160216BHJP
   C05G 5/00 20060101ALI20160216BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   C05G3/00 103
   C05G5/00 Z
   B01J2/00 B
   B01J2/00 C
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-512338(P2013-512338)
(86)(22)【出願日】2012年4月23日
(86)【国際出願番号】JP2012060810
(87)【国際公開番号】WO2012147668
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2013年10月4日
(31)【優先権主張番号】特願2011-97198(P2011-97198)
(32)【優先日】2011年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390021544
【氏名又は名称】ジェイカムアグリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】金崎 忍
【審査官】 安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−335193(JP,A)
【文献】 特開平10−231190(JP,A)
【文献】 特開2002−234790(JP,A)
【文献】 特開2006−217915(JP,A)
【文献】 特開2006−089328(JP,A)
【文献】 特開昭62−197385(JP,A)
【文献】 特開2008−001550(JP,A)
【文献】 特開2006−111521(JP,A)
【文献】 特開2001−031489(JP,A)
【文献】 特開2002−145691(JP,A)
【文献】 特開2000−044377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05B1/00〜C05G5/00
B01J2/00〜B01J2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶化温度(Tcmax)が95℃≦Tcmax≦115℃の範囲内である1種以上のα-オレフィン(共)重合体(A)と、結晶化温度が65℃≦Tcmax≦75℃の範囲内である、硬化油または固形脂肪酸である1種以上のワックス(B)と、1種以上のフィラー(C)とを含有する被膜で被覆された粒状肥料であって、肥料被膜のミクロ構造において、α-オレフィン(共)重合体(A)とワックス(B)が相分離し、ワックス(B)が微分散した構造となっている事を特徴とする被覆粒状肥料。
【請求項2】
被膜中のワックス(B)が、α-オレフィン(共)重合体(A)とワックス(B)の合計質量に対し20〜60質量%含有されている、請求項1に記載の被覆粒状肥料。
【請求項3】
結晶化温度(Tcmax)が95℃≦Tcmax≦115℃の範囲内である1種以上のα-オレフィン(共)重合体(A)と、結晶化温度が65℃≦Tcmax≦75℃の範囲内である、硬化油または固形脂肪酸である1種以上のワックス(B)と、1種以上のフィラー(C)とを含有する分散液もしくは溶液または溶融液を、噴流塔方式または流動層方式の装置で、流動状態の粒状肥料に噴霧状で供給することにより粒状肥料の表面に被膜を形成させる工程を含む、請求項1または2に記載の被覆粒状肥料の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
施肥の省力化、ないしは植物の生育に応じた肥効を発現させる目的で、種々の緩効性肥料が開発されている。緩効性肥料の代表的なものとしては、肥料の表面を種々の樹脂や無機物などでコートした被覆肥料がある。本発明は、かかる被覆粒状肥料に関するものであり、本発明は、溶出終了後の被膜崩壊性が良好であり、且つ、溶出特性や力学的特性等の実用物性に優れ、水田に使用した場合には溶出終了後の被膜が代掻き時に浮上しにくい、いわゆる環境への負荷が少ない被覆粒状肥料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年になって、水田では、投入した被覆粒状肥料の被膜(溶出終了後の殻)が施肥した翌年の代掻き時等に水面に浮上して河川に流出するという問題が発生している。特に、水稲用肥料として、水田に使用する被覆粒状肥料には、溶出終了後の被膜を浮上させないことも重要な物性として求められてきている。
【0003】
従来、被覆粒状肥料の被膜材としては、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、硫黄などが使用されることが多かったが、近年では被膜の分解性を改良するため、光による分解や酸化分解について、特開平5−201786号公報(特公平7−91143号公報)、特開昭63−17286号公報(特公平2−23516号公報)、特開平8−59382号公報などに記載の技術が知られている。また、土壌中での生物的な分解などについて、特開昭63−40789号公報(特公平2−23517号公報)、特開平3−146492号公報、特開平8−59382号公報、特開平7−33576号などに記載技術が知られている。しかし、これら技術に於いても、溶出終了後の被膜の自然環境下に於ける崩壊性について必ずしも十分満足いくものではなく、水田における溶出終了後の被膜浮上に関して満足な防止性能を持ちえていなかった。
【0004】
また、水田における溶出終了後の被膜浮上率を低減させる技術として、特開2002−242392号公報には、通常の被膜で被覆粒状肥料を製造した後に、ポリビニルアルコール等の親水性物質で更に被覆する技術が開示されているが、溶出終了後の被膜浮上に関しては、代掻き時に浮上する被膜として圧倒的に多い形態である中空粒子状の被膜(被膜がほぼ完全な形態で残り、中身の肥料溶解液や水分が抜けた後に、被膜内部に空気が侵入したもの)の発生を完全に抑制できないためか、満足な被膜浮上性能を持ちえてるとはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−201786号公報(特公平7−91143号公報)
【特許文献2】特開昭63−17286号公報(特公平2−23516号公報)
【特許文献3】特開平8−59382号公報
【特許文献4】特開昭63−40789号公報(特公平2−23517号公報)
【特許文献5】特開平3−146492号公報
【特許文献6】特開平8−59382号公報
【特許文献7】特開平7−33576号
【特許文献8】特開2002−242392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上述したように、被覆肥料に必要な力学的強度、溶出コントロール性、生産性などを同時に満足でき且つ、被膜の速やかな崩壊性を有し、水田の水面に被膜が浮上しにくい被覆粒状肥料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記問題点について鋭意検討した結果、結晶化温度が特定の範囲にあるα-オレフィン(共)重合体と結晶化温度が特定の範囲にあるワックスとを併用して被膜中に配合すると、肥料被膜のミクロ構造においてそれらのα-オレフィン(共)重合体およびワックスが相分離し、ワックスが微分散した構造となり、そのような被膜で被覆された粒状肥料が上記問題点を解決することを見出し、本発明の完成に至った。即ち、本発明は下記の通りである。
【0008】
(1)結晶化温度(Tcmax)が95℃≦Tcmax≦115℃の範囲内である1種以上のα-オレフィン(共)重合体(A)と、結晶化温度が65℃≦Tcmax≦75℃の範囲内である1種以上のワックス(B)と、1種以上のフィラー(C)とを含有する被膜で被覆された粒状肥料であって、肥料被膜のミクロ構造において、α-オレフィン(共)重合体(A)とワックス(B)が相分離し、ワックス(B)が微分散した構造となっている事を特徴とする被覆粒状肥料。
【0009】
(2)結晶化温度が65℃≦Tcmax≦75℃の範囲内であるワックス(B)が硬化油または固形脂肪酸である、(1)記載の被覆粒状肥料。
【0010】
(3)被膜中のワックス(B)が、α-オレフィン(共)重合体(A)とワックス(B)の合計質量に対し20〜60質量%含有されている、(1)または(2)記載の被覆粒状肥料。
【0011】
(4)結晶化温度(Tcmax)が95℃≦Tcmax≦115℃の範囲内である1種以上のα-オレフィン(共)重合体(A)と、結晶化温度が65℃≦Tcmax≦75℃の範囲内である1種以上のワックス(B)と、1種以上のフィラー(C)とを含有する分散液もしくは溶液または溶融液を、噴流塔方式または流動層方式の装置で、流動状態の粒状肥料に噴霧状で供給することにより粒状肥料の表面に被膜を形成させる工程を含む製造方法によって得られた、(1)〜(3)のいずれかに記載の被覆粒状肥料。
【発明の効果】
【0012】
本発明による被覆粒状肥料は、肥料被膜のミクロ構造において、α-オレフィン(共)重合体(A)とワックス(B)が相分離し、ワックス(B)が微分散した構造となっているため、内部の粒状肥料が溶出した後に被膜は速やかに崩壊し、浮上が問題となる中空粒子状の被膜の形成を抑制することができる。しかも、このような被覆粒状肥料は、特定の結晶化温度を有するα-オレフィン(共)重合体(A)およびワックス(B)、さらにフィラー(C)を用いて、従来と同様の被覆粒状肥料の製造方法によって製造することができる上、溶出特性や被膜強度など、従来の被覆粒状肥料について求められてきた条件も満足する。このように、本発明の被覆粒状肥料は製造性が良好であり、且つ崩壊性に優れ、水田に使用した場合には代掻き後に被膜が浮上し難いという3つの効果を併せもつことは、後記実施例の結果からも明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】被覆粒状肥料の製造装置の一例のフローシート
図2図1の製造装置に用いられる絞り円盤(オリフィス)の一例
図3】実施例1(a)、比較例3(b)、比較例5(c)および比較例6(d)の被覆粒状肥料の被膜断面のTEM像
【発明を実施するための形態】
【0014】
α−オレフィン(共)重合体とは、α−オレフィンの単独重合体、ないしはα−オレフィンと他の1種以上のビニル単量体との共重合体をいう。具体例としては、高密度ないしは低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテンなどのα−オレフィンの単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、ブテン・エチレン共重合物、ブテン・プロピレン共重合物等のα−オレフィン類の共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・一酸化炭素共重合体などのα−オレフィンとビニルモノマーないしはその他の単量体との共重合体等が挙げられる。
【0015】
本発明では、α−オレフィン(共)重合体(A)として、結晶化温度が95℃≦Tcmax≦115℃の範囲であるα−オレフィン(共)重合体を用いる。ここで、本発明に於ける結晶化温度(Tcmax)は、示差走差熱量計(DSC)により測定された値を言う。結晶化温度が上記範囲内であると、特定の結晶化温度を有するワックス(B)と併用したときに、自然環境下に於ける崩壊性が良好で水面への浮上の問題を抑制しうる被膜を形成することができ、また、被膜製造時の配管詰り、ノズル詰り等のトラブルの発生が少ない。
【0016】
結晶化温度が上記範囲内にあるα−オレフィン(共)重合体(A)は特に限定されるものではなく、上で例示したα−オレフィン(共)重合体(製品のグレード)の中から適切なものを選択して用いることができるが、たとえば、高密度または低密度ポリエチレン(高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)、中低圧法高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン触媒直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)などを含む。)が好ましく、特に低密度ポリエチレンが好ましい。また、ポリブテンもα−オレフィン(共)重合体(A)として用いることができる。α−オレフィン(共)重合体(A)は、いずれか1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
なお、被膜に配合するα−オレフィン(共)重合体(A)は、結晶化温度に関する上記条件を満たすものだけで構成されることが望ましいが、肥料被膜のミクロ構造等に関する本発明の作用効果を阻害しない範囲において、任意成分として結晶化温度に関する上記条件を満たさないα−オレフィン(共)重合体を、結晶化温度に関する上記条件を満たすα−オレフィン(共)重合体(A)と併用することも許容される。
【0018】
また、α−オレフィン(共)重合体(A)は、被膜の製造上、JIS K7112等に従って測定した密度が0.920〜0.975g/cm3の範囲に入るものであることが好ましい。上記範囲内であると、被覆粒状肥料の被膜形成が容易で、有機溶媒への溶解性も良好で被覆用混合物の調整が容易である。
【0019】
さらに、α−オレフィン(共)重合体(A)は、被膜の強度上、GPCで測定される重量平均分子量が20,000以上、250,000以下である事が好ましく、30,000以上200,000以下である事がより好ましい。ここで、GPCで測定される重量平均分子量は、本発明(後記実施例)においては、ポリマーラボラトリー社製高温GPC装置(PL−GPC210型)に、同社製カラム(PLgel MIXED−B、2本)を装着し、検量線として同社標準ポリエチレンを用い、オーブン温度140℃、オルトジクロロベンゼンを溶離液として測定した値を言う。
【0020】
一方、ワックスには、
天然ワックス(たとえば、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油(水添)などの植物系ワックス;密ロウ、ラノリン(水添)、鯨ロウなどの動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシンなどの鉱物系ワックス;パラフィンワックス(C40, C42)、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム(軟質、硬質)などの石油ワックス)、
合成ワックス(たとえば、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックスなどの合成炭化水素;モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体などの変性ワックス;硬化ヒマシ油(カスターワックス)、硬化ヒマシ油誘導体などの水素化ワックス;12-ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸アミド系、12-ヒドロキシステアリン酸エステル系、塩素化炭化水素などの脂肪酸、脂肪酸アミドもしくはエステル、ケトン他)、
飽和脂肪酸(たとえば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸など)
が含まれる。
【0021】
なお、上記水素化ワックスは硬化油とも呼ばれ、常温で液体の油脂に水素付加(水添)を行い、より融点の高い飽和脂肪酸の割合を増加させ、常温で固形化することにより得られるものである。また、飽和脂肪酸のうち、常温で固形のものは「固形脂肪酸」とも呼ばれる。
【0022】
本発明では、ワックス(B)として、結晶化温度が65℃≦Tcmax≦75℃の範囲であるワックスを用いる。結晶化温度が上記範囲内であると、特定の結晶化温度を有するα−オレフィン(共)重合体(A)と併用したときに、肥料被膜のミクロ構造においてワックス(B)が微分散し、そのため自然環境下に於ける崩壊性が良好で水面への浮上の問題を抑制しうる被膜を形成することができる。また、被覆粒状肥料の被膜整膜性および溶出速度の制御性が良好であり且つ保存時の製品品質の変動が少ない。
【0023】
結晶化温度が上記範囲内にあるワックス(B)は特に限定されるものではなく、上で例示したワックス(製品のグレード)の中から適切なものを選択して用いることができるが、たとえば、カルナウバワックス、ライスワックスなどの植物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシンなどの鉱物系ワックス;パラフィンワックス(C40, C42)などの石油ワックス;フィッシャー・トロプシュワックスなどの合成炭化水素;モンタンワックス誘導体などの変性ワックス;硬化ヒマシ油(カスターワックス)などの水素化ワックス(硬化油);ベヘン酸、リグノセリン酸などの飽和脂肪酸(固形脂肪酸)が好ましい。なかでも、硬化ヒマシ油(カスターワックス)などの水素化ワックス(硬化油)およびベヘン酸、リグノセリン酸などの飽和脂肪酸(固形脂肪酸)がより好ましく、硬化ヒマシ油(カスターワックス)が特に好ましい。ワックス(B)は、いずれか1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
なお、被膜に配合するワックス(B)は、結晶化温度に関する上記条件を満たすものだけで構成されることが望ましいが、肥料被膜のミクロ構造等に関する本発明の作用効果を阻害しない範囲において、任意成分として結晶化温度に関する上記条件を満たさないワックスを、結晶化温度に関する上記条件を満たすワックス(B)と併用することも許容される。
【0025】
ワックス(B)は、α-オレフィン(共)重合体(A)とワックス(B)の合計質量に対し20〜60質量%である事が好ましく、30〜50質量%であることがより好ましい。上記範囲内であると、被覆粒状肥料の被膜整膜性および溶出速度の制御性が良好でありまた、自然環境下に於ける被膜の崩壊性が良好である。
【0026】
本発明に於けるフィラー(C)としては無機充填材と有機充填材を用いることができる。無機充填材としては、タルク、クレー、炭酸カルシウム、ベントナイト、シリカ、ケイソウ土、酸化チタンなどの金属酸化物、硫黄粉末などをいう。これらの中でも、タルク、クレーは好ましい例としてあげることができる。有機充填剤とは澱粉(コーンスターチ等)及び変性澱粉、寒天、キサントンなどの粉末等をいう。フィラー(C)の被膜全体の質量(溶剤を除く被膜材料の合計質量)に対する含有率は30〜65質量%が好ましい。上記範囲内であると、被膜の崩壊および溶出コントロール性が良好である。含有率が30質量%以下では崩壊性が不十分な場合があり、65質量%以上では、被覆肥料に必要な力学的強度が不足し製造時の被膜への衝撃により溶出コンロール性が不十分となる場合がある。
【0027】
本発明に於いて、光分解促進剤及び/又は酸化分解促進剤を被膜に含ませることは、微生物による分解と光分解、酸化分解との相乗効果が得られるため、より好ましい。光分解促進剤としては種々の有機金属化合物が挙げられる。有機金属化合物としては、例えば有機金属錯体や有機酸金属塩等が挙げられる。中でも光分解性の調節が容易なことから、有機金属錯体やカルボン酸金属化合物が好ましい。具体例としては、鉄、コバルト、ニッケル、銅、マンガン、銀、パラジウム、モリブデン、クロム、タングステン、セリウムの中から選ばれる金属を含む有機金属錯体を好適に使用できる。好ましい錯形成剤としては、アセチルアセトンをはじめとするβ−ジケトン類、β−ケトエステル類、並びにジアルキルジチオカーバメート、ジアルキルジチオホスフェート、アルキルキサンテート、メルカプトベンゾチアゾールが例示され、より具体的には、ニッケルジブチルジチオカーバメート、ニッケルジエチルジチオカーバメート、鉄のアセチルアセトアセトン錯体が好ましく用いられる。カルボン酸金属化合物としてはカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の鉄化合物等が挙げられる。これらは単独で添加してもよいし、2種以上を組み合わせて添加してもよい。酸化分解促進剤としては、特に限定されるもではないが、種々の有機金属化合物が挙げられる。有機金属化合物としては、例えば有機金属錯体や有機酸金属塩等が挙げられる。中でも、土壌中のように光の無い状態でも酸化分解の効果が得られるものとして、ステアリン酸マンガン、ステアリン酸コバルト、オレイン酸マンガン、オレイン酸コバルト、アセチルアセトンマンガン、アセチルアセトンコバルト等が挙げられる。
【0028】
被膜全体の質量に対する有機金属化合物の割合は、0.0001〜1質量%が好ましく、より好ましくは0.001〜0.5質量%である。また、有機金属化合物として有機金属錯体を用いる場合は、被膜全体の質量に対し、0.02〜20×10-6モル/g含有させることが好ましく、より好ましくは0.1〜10×10-6モル/gである。含有率が0.02×10-6モル/gより小さいと添加効果が不十分であり、20×10-6モル/gより大きいと経済性の点から好ましくない。上記の割合であれば、被覆粒状物の使用後における崩壊性または分解性が得られ、保管中には当初の品質が維持される。
【0029】
上記被膜には、本発明の効果を損なわない程度であれば、界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合によるポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール等の水溶性物質、ポリエチレングリコール−アルキルエーテル、ポリエチレングリコール−分岐アルキルエーテル等のエーテル型ノニオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール−アルキルエステル、ポリエチレングリコール−分岐アルキルエステル等のエステル型ノニオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤及びこれらの混合物等などが挙げられる。
【0030】
上記界面活性剤の含有割合は、特に限定されるものではないが、被膜全体の質量に対し、好ましくは0.01〜10質量%の範囲であり、より好ましくは、0.1〜5質量%の範囲である。界面活性剤は溶剤に被膜材料等を溶解または溶解分散させた溶解液またはエマルジョン中のフィラーの分散性を良くするのに役立ち、上記範囲内であると、効果が充分であり溶出速度コントロールに影響する事もない。
【0031】
また、有機顔料、カーボンブラック、チタンホワイト等の着色剤を被膜に添加することによって被覆粒状肥料の区別を容易にすることも可能である。
【0032】
被覆される粒状肥料に特に制限はなく、従来公知のものが使用できる。粒状肥料の肥料成分の好ましい例としては、尿素、アルデヒド縮合尿素、イソブチルアルデヒド縮合尿素、ホルムアルデヒド縮合尿素、硫酸グアニル尿素、オキサミド等の含チッソ有機化合物、硝酸アンモニウム、燐酸二水素アンモニウム、燐酸水素二アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム等のアンモニウム塩、及び硝酸ナトリウム等の硝酸化合物、硝酸カリウム、燐酸カリウム、硫酸カリウム、塩化カリウムなどのカリウム塩、燐酸カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウムなどのカルシウム塩、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、燐酸マグネシウム、硫酸マグネシウムなどのマグネシウム塩、硝酸第一鉄、硝酸第二鉄、燐酸第一鉄、燐酸第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄などの鉄塩、及びこれらの複塩、ないしはこれらを2つ以上複合したものを挙げることができる。
【0033】
これらの粒状肥料には、粒状としての形態と力学的強度を維持する目的で従来公知の結着剤が含まれている場合がある。結着剤の例としては、例えば廃糖蜜、リグニンスルホン酸塩、およびそれらの変性物が挙げられる。
【0034】
被膜の厚さは被膜材料の種類や組成、被覆用肥料粒子の大きさ、意図する肥料成分の溶出パターンによって適宜選択可能であるが、平均で10〜100μmが好ましく、20〜70μmがより好ましい。また被覆率(被覆粒状肥料全体に対する被膜の質量の割合)は、1〜20質量%が好ましく、2〜15質量%がより好ましい。この下限を逸脱すると、肥料としての溶出成分のコントロールが困難となる場合がある。また、この上限を逸脱すると、肥料としての品位の低下という問題が生じる場合がある。
【0035】
本発明の被覆用肥料粒子の粒子径に特に制限はないが、平均粒径として、通常0.5〜10mm、好ましくは1〜5mmである。また、形状は球状に近いものが好ましい。具体的には下記式で求められた円形度係数が、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.75以上、更に好ましくは0.8以上の球状である。円形度係数の最大値は1であり、1に近づくほど粒子は真円に近づき、粒子形状が真円から崩れるに従って円形度係数は小さくなる。
円形度係数={(4π×粒子の投影面積)/(粒子投影図の輪郭の長さ)2
【0036】
本発明の被覆粒状肥料は、被膜構成成分として特定のα−オレフィン(共)重合体(A)、ワックス(B)およびフィラー(C)を用いるが、それ以外は一般的な被覆粒状肥料と同様にして製造することができる。たとえば、被膜構成成分を含有してなる分散液もしくは溶液、または溶融液を流動状態の粒状肥料に噴霧状で供給することにより粒状肥料の表面に被膜を形成させる工程を含むことを特徴とする製造方法が好適に用いられる。初期溶出の抑制が良好であるという理由からは、分散液もしくは溶液を使用する製造方法が、溶融液を利用する製造方法より好ましい。
【0037】
粒状肥料を流動状態にするには、例えば噴流装置に粒状肥料を導入し、噴流を起こさせればよい。そのためには、噴流塔方式あるいは流動層方式の装置を用いればよく、好ましくは噴流塔方式である。本発明の製造方法に使用する噴流塔方式の概略図を図1図2に示す。
【0038】
本発明による特定の結晶化温度を有するα-オレフィン(共)重合体(A)およびワックス(B)、ならびにフィラー(C)を含有する分散液もしくは溶液または溶融液を用いて、噴流塔方式または流動層方式の装置により製造された被覆粒状肥料は、自ずと、肥料被膜のミクロ構造において、α-オレフィン(共)重合体AとワックスBが相分離し、ワックスBが微分散した構造となっている。なお、そのようなミクロの相分離構造は、TEM(透過型電子顕微鏡)等による観察により確認することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。
【0040】
実施例及び比較例のα-オレフィン(共)重合体とワックスの結晶化温度(Tcmax)は下記測定方法によって行った。
【0041】
試料5±0.5mgを示差走査熱量計(DSC、島津製作所製DSC−60)を用い、5℃/minで200℃迄昇温して溶融し、200℃で5分間保持した後、降温速度5℃/minで5℃迄降温した際の発熱曲線を求め、そのピーク温度を結晶化温度(Tcmax)とした。
【0042】
実施例、比較例で用いられたα-オレフィン(共)重合体とワックスの略号と結晶化温度(Tcmax)を表1に示した。
PO1:低密度ポリエチレン 商品名「サンテック-LD M2270」 (旭化成ケミカルズ社製)
PO2:低密度ポリエチレン 商品名「サンテック-LD M2203」 (旭化成ケミカルズ社製)
PO3:低密度ポリエチレン 商品名「サンテック-LD M2504」 (旭化成ケミカルズ社製)
PO4:直鎖状低密度ポリエチレン 商品名「ノバテック-LL UF331」 (日本ポリエチレン社製)
PO5:高密度ポリエチレン 商品名「サンテック-HD J300」 (旭化成ケミカルズ社製)
PO6:エチレン・1−オクテン共重合体 商品名「エンゲージ8150」 (ダウ・ケミカル日本社製)
PO7:エチレン-酢酸ビニル共重合体 商品名「エバフレックス360」 (三井デュポンケミカル社製)
WAX1:カスターワックス 商品名「カスターワックス #100」 (小倉合成工業社製)
WAX2:カスターワックス 商品名「カスターワックスAフレーク」 (日油社製)
WAX3:リグノセリン酸 商品名「試薬 テトラコサン酸」 (関東化学社製)
WAX4:ポリエチレンワックス 商品名 「CPアドワックス CPW90F」 (日祥社製)
WAX5:マイクロクリスタリンワックス「ポリレッツ MPS−75」 (中国精油社製)
【0043】
【表1】
【0044】
実施例、比較例で用いられたα-オレフィン(共)重合体およびワックス以外の被膜材料の略号と内容は下記の通りである。
タルク:平均粒径10μm
コーンスターチ:粒径12〜18μm
SA:ヘキサオキシエチレンノニルフェニルエーテル(界面活性剤)
Fe:ステアリン酸鉄(III)(キシダ化学社製、試薬グレード、純度99%以上)(光分解促進剤)
【0045】
<被覆粒状物の製造装置>
実施例及び比較例で用いた被覆粒状肥料の製造装置1の構成は、図1のフローシートと同様であり、噴流塔1は塔径(内径)1,300mm、高さ8,500mm、円錘角50度の形状を有し、粒状肥料投入口15及び被覆粒状肥料排出口13を有する。噴霧ノズル2はフルコン型一流体スプレーノズル、3は粒状肥料(芯材)である。6は固気分離器、7は凝縮器である。8はブロワー(ルーツ型)、12はヒーターである。9は攪拌機付の被覆用混合物調製槽(溶解槽)であり、10は送液ポンプ(ダイヤフラム型)である。14はガイド管(直径300mm、長さ1,760mm、フッ素樹脂被覆品)、11は整流缶である。21は絞り円盤である。
【0046】
絞り円盤2の詳細を図2に示す。図2において、直径154mm、噴出孔23の内径45mm、噴出孔数4個(開口率34%)、各噴出孔23の中央にそれぞれ噴霧ノズル2を設けたものであった。尚、噴霧ノズル2は、絞り円盤21の中心を中心とする直径95mmの円上に配置した。
【0047】
<被覆粒状肥料の製造方法>
上記の製造装置を用いて次の方法により、被覆粒状肥料を製造した。熱せられた気流が噴流塔1の下部から上部に向けて流れ、固気分離器6を通過し、凝縮器7で気流を冷却し、有機溶媒を凝縮回収する。凝縮器7を通過した気流はブロワー8からヒーター12を通過して加熱され高温気流として再度噴流塔1へ導かれるように循環している。まず、ブロワー8を用いて、噴出孔23での気流温度150℃に保持した空気を噴流塔1に送りながら、粒状肥料(芯材)3を粒状肥料投入口15から投入し、粒状肥料3を噴流状態にする。この際、粒状肥料温度が65±2℃になるように、熱せられた気流の流量及び温度を調節した。気流の流量はブロワー8と整流缶11の間に設置した流量計で測定しながら調節し、熱せられた気流の温度は、粒状肥料温度や噴流塔出口温度を測定しながら調節した。循環風量は3,000m3/hであり、粒状肥料投入量は1,000kgである。
【0048】
尚、粒状肥料として尿素(粒径3.0mm〜3.6mm、平均粒径3.4mm)を使用した。
【0049】
<実施例1〜16、比較例1〜6>
表2に示した被膜材料組成(単位は質量%)および被膜質量(被覆される粒状肥料に対する被膜の質量)に従って、上記製造装置を用いて被覆粒状肥料を製造した。その結果、実施例1〜16および比較例1,3,5,6については製造性に問題がなく被覆粒状肥料が得られたが、比較例2および4については製造性に問題があり被覆粒状肥料が得られなかった。したがって、以下の特性評価は、実施例1〜16および比較例1,3,5,6で得られた被覆粒状肥料のみを用いて行った。
【0050】
【表2-1】
【0051】
【表2-2】
【0052】
<被覆粒状肥料の特性評価>
(I)被膜の構造観察
前記実施例および比較例で得られた各被覆粒状肥料について、下記の装置にて被膜断面の構造を観察した。
装置:TEM HITACHI H−7100
条件:125kv
【0053】
被膜断面を観察した結果、実施例1および実施例7〜16の被覆粒状肥料の被膜断面にはPO1とWAX1が相分離し、WAX1が微分散した構造となっている事が確認された。実施例2および実施例3についてもPO1とWAX2(WAX3)が相分離し、WAX2(WAX3)が微分散した構造となっていた。実施例4〜6についても、PO2(PO3、PO4)とWAX1が相分離し、WAX1が微分散した構造となっていた。
【0054】
一方、比較例1の被覆粒状肥料の被膜断面はWAX1のみであった。比較例3はPO1とWAX4の相分離が見られず、WAX4が微分散した構造となっていなかった。比較例5はPO1、PO6、WAX4の相分離が見られずPO6、WAX4が微分散した構造となっていなかった。比較例6についてもPO1とPO7の相分離が見られず、PO7が微分散した構造となっていなかった。
【0055】
実施例1,比較例3,比較例5および比較例6の被覆粒状肥料の被膜断面のTEM像をそれぞれ図3の(a)〜(d)に示す。実施例1(a)において、WAX1は白い丸状のコントラストとして見られ、PO1のマトリックス(ラメラ構造)中に微分散している。一方、比較例3,比較例5および比較例6(b,c,d)においては相分離は見られず、画像中に見られるのはポリオレフィンのラメラのみである。
【0056】
(II)溶出特性の評価
前記実施例および比較例で得られた各被覆粒状肥料5gをポリエチレン製の溶出瓶に入れ、200mlの蒸留水を満たして密栓した。この溶出瓶を25℃のインキュベーターに保存し、7日間経過後に蒸留水に溶けだした全窒素を測定した。被覆粒状肥料の溶出率は、もとの被覆粒状肥料に含まれていた全窒素に対する溶出してきた全窒素の百分率で表示する。上記方法にて得られた溶出率が10%以下のものを溶出特性が良好であると判定した。
【0057】
(III)被膜強度の評価(動力散布機試験)
背負い型動力散布機(丸山製作所、MDJ60GTS−26)を使用し、エンジンスロットル4、シャッター開度7の条件で、前記実施例および比較例で得られた各被覆粒状肥料500gを噴管先端から吐出散布し、散布された被覆粒状肥料を回収した。試験前の被覆粒状肥料20gと散布機から回収した被覆粒状肥料20gを各々、蒸留水400mlと共にポリエチレン製の溶出瓶に仕込み、25℃のインキュベーターで保管した。10日後に、各々の溶出瓶をインキュベーターから抜き出し、試料液を採取した後、全窒素の測定を行って各々の被覆粒状肥料の溶出率を算出した。散布機試験後の被覆粒状肥料の溶出率から、試験前の被覆粒状肥料の溶出率を差し引いた値が10%以下のものを被膜強度が良好であると判定した。
【0058】
(IV)崩壊性の評価
前記実施例および比較例で得られた各被覆粒状肥料を水中に投入し、肥料成分を溶出させた後、45℃に設定した通風乾燥機内にて1ヶ月間乾燥した。得られた中空の被覆粒子を図3に示すように、300rpmで攪拌中の海砂(20〜35メッシュ)に各25粒投入し、5分後に該粒子を回収し、下記式から崩壊率を算出した。
崩壊率=(投入粒子数−回収粒子数)/投入粒子数×100
算出された崩壊率が70%以上を良好とし、70%未満を不良と判定した。
【0059】
(V)浮上性の評価
静岡県裾野市岩波区にある圃場にて、前記実施例および比較例で得られた各被覆粒状肥料を用いた水稲栽培を2年連続で実施した。施肥は初年度1回、翌年1回の合計2回実施した。
【0060】
1年経過後、圃場の代掻きを実施し、浮上した粒子を回収し、下記式から1年目浮上率を算出した。
1年後浮上率=1年目回収粒子数/1回分の施肥粒数×100
2年経過後、圃場の代掻きを実施し、浮上した粒子を回収し、下記式から2年目浮上率を算出した。
2年後浮上率=2年目回収粒子数/1回分の施肥粒数×100
【0061】
【表3】
【符号の説明】
【0062】
1.噴流塔
2.噴霧ノズル
3.粒状肥料(芯材)
4.循環気流配管
5.被覆用混合物供給配管
6.固気分離器
7.凝縮器
8.ブロワー
9.被覆用混合物調製槽(溶解槽)
10.送液ポンプ
11.整流缶
12.ヒーター
13.粒状肥料排出口
14.ガイド管
15.粒状肥料投入口
21.絞り円盤
22.円盤主体
23.噴出孔
図1
図2
図3