(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871919
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】アルファ−ヒドロキシ酸の環状ジエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 319/12 20060101AFI20160216BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20160216BHJP
【FI】
C07D319/12
!C07B61/00 300
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-519046(P2013-519046)
(86)(22)【出願日】2011年7月8日
(65)【公表番号】特表2013-535433(P2013-535433A)
(43)【公表日】2013年9月12日
(86)【国際出願番号】EP2011061603
(87)【国際公開番号】WO2012007379
(87)【国際公開日】20120119
【審査請求日】2014年6月5日
(31)【優先権主張番号】10169481.8
(32)【優先日】2010年7月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】アンリ・ジョルジュ・ギスラン・ウォティエ
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・フランソワ・アキレ・マルシャン
【審査官】
高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−309862(JP,A)
【文献】
特表平05−506242(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/129736(WO,A1)
【文献】
米国特許第03322791(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 319/12
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルファ−ヒドロキシ酸を、少なくとも1種のポリオールならびにSnのカルボン酸塩、Tiのアルコキシド、及びZrのアルコキシドからなる群から選択される少なくとも1種の触媒の存在下100〜250℃の温度で加熱する工程を含み、
前記アルファ−ヒドロキシ酸が、乳酸及びグリコール酸からなる群から選択され、
前記ポリオールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びジエチレングリコールからなる群から選択される、アルファ−ヒドロキシ酸の環状ジエステルの製造方法。
【請求項2】
前記アルファ−ヒドロキシ酸が、グリコール酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱が、150〜240℃の温度で行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱が、500ミリバール以下の圧力下で行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記加熱が、大気圧で開始され、次いで、10〜200ミリバールの圧力が達せられるまで漸進的真空下で継続する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリオールが、エチレングリコールである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリオールが、前記アルファ−ヒドロキシ酸の2〜50モル%の量で添加される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒が、Ti(OEt)4である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が、前記アルファ−ヒドロキシ酸の5〜5000mppm(mol/mol)の量で添加される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記加熱が、溶媒の非存在下で行われる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記加熱が、少なくとも1種の有機溶媒の存在下で行われる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒が、前記反応媒体の10〜50重量%の量で存在する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アルファ−ヒドロキシ酸が、前記ポリールおよび前記触媒の添加前に、80〜150℃の温度で1〜48時間の間加熱される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記加熱が、大気圧で行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アルファ−ヒドロキシ酸の環状ジエステルが、抽出によってまたは蒸留によって収集される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2010年7月14日に出願された欧州特許出願第10169481.8号に対する優先権を主張し、この出願の全内容は、あらゆる目的について参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、アルファ−ヒドロキシ酸の環状ジエステルの製造方法に関する。特に、それは、それぞれ乳酸およびグリコール酸の環状ジエステルである、ラクチドまたはグリコリドの製造に関する。
【背景技術】
【0003】
ラクチドおよびグリコリドは、ポリ乳酸(またはポリラクチド)(PLA)およびポリグリコール酸(またはポリグリコリド)(PGA)の製造のための鍵となる中間体であり、これらは、再生可能な資源に由来する生分解性熱可塑性ポリマーである。ラクチドおよびグリコリドの合成は、従来のPLAおよびPGA製造プロセスにおける最も重要な工程である。最終ポリマーの価格を支配するのはこの工程である。ラクチドおよびグリコシドはまた、開環重合を行って、対応する高分子量のPLAおよびPGAをもたらすことができるために、可能な限り純粋でなければならない。
【0004】
アルファ−ヒドロキシ酸の環状ジエステルの調製は通常、最初にアルファ−ヒドロキシ酸のオリゴマー、すなわち、典型的には数千g/モルの分子量を有するその比較的短い鎖の縮合ポリマーを調製し、次いで、そのオリゴマーを減圧下で加熱して、所望の環状ジエステルを生成させることを含む2つの異なった工程で行われる。このような方法は、例えば、ラクチド合成についての(特許文献1)、グリコリド合成についての(特許文献2)、またはラクチドとグリコリドの両合成についての(特許文献3)に開示されている。
【0005】
この方法は、大量のエネルギーを必要とし、さらなる精製工程および副生物の処理を必要とする不純な製品をもたらすという欠点を有する。さらなる欠点は、高温でのオリゴマーの分解による、通常約50%であるこの古典的方法の収率に関連している。
【0006】
ラクチドまたはグリコリドの直接合成も、開示されている。例えば、(特許文献4)には、乳酸を、乳酸の重量に基づいて、アルコキシド基中に最大12個の炭素原子を含む0.01〜5重量%のチタンアルコキシドの存在下100〜250℃の温度で加熱することによるラクチドの調製が開示されている。この方法は、古典的重合/解重合プロセスを考慮すると有利であるように見えるが、その収率は、依然として極めて限られており、わずか60%のものである。(特許文献5)または(特許文献6)に開示されたとおりに、気相中でアルファ−ヒドロキシ酸の環状ジエステルを合成する試みもなされている。このような気相プロセスは、特殊な装置および大量のエネルギーを必要とする。アルファ−ヒドロキシ酸の重合だけでなく分解も、その気化の間に回避されなければならない。別の例は、4以下の重合度が達せられるまでヒドロキシ酸を含む原料ストリームから水を除去することによる、ヒドロキシ酸の環状ジエステル、特にラクチドの直接合成を開示する(特許文献6)により示されている。この方法は、多くの副生成物の生成をもたらし、重要な追加の分離および精製工程を必要とし、50%をはるかに下回って、非常に低い収率をもたらす。(特許文献6)にも、有機溶媒中アルファ−ヒドロキシ酸の希釈溶液の共沸蒸留によってヒドロキシ酸の環状ジエステルを生成させる可能性が開示されている。このような方法は、大量の有機溶媒、特にベンゼンもしくはトルエンなどの芳香族溶媒、または環境に優しい方法と相容れない、アセトニトリルなどの溶媒の使用を必要とする主たる欠点を有する。これは、特に、生物源ラクチドまたはグリコリドから製造される、PLAおよびPGAなどの「グリーン」ポリマーの合成と相容れない。近年、(特許文献7)には、乳酸のカルシウムまたはマグネシウム塩(金属を含むこの塩は吸湿性である)を強酸と反応させ、吸湿性塩に分散させた環状ジエステルを得ることによるラクチドの合成方法が開示されている。この方法は、最初に乳酸金属塩の調製を必要とする。次いで、前記乳酸金属塩を強酸と反応させることによって、処理または破壊されることを必要とする硫酸カルシウムなどの大量の塩をもたらし、これは、環境気的に優しくない。この方法の別の欠点は、50%未満である、その低い収率である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第1095205号明細書
【特許文献2】米国特許第2668162号明細書
【特許文献3】米国特許第5374743号明細書
【特許文献4】米国特許第3322791号明細書
【特許文献5】国際公開第92/00292号パンフレット
【特許文献6】国際公開第93/19058号パンフレット
【特許文献7】米国特許出願公開第2009/0318713号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、アルファ−ヒドロキシ酸の環状ジエステルの合成、特に上記欠点を示さない、ラクチドおよびグリコリドの合成のための方法を提供することである。特に、本発明の目的は、多くのその後の分離および精製工程なしに、高収率の環状エステルの製造を可能にする、環境に優しく、簡単でかつ経済的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、アルファ−ヒドロキシ酸を、少なくとも1種のポリオールならびにTi、Zr、AlおよびSnのカルボン酸塩およびアルコキシドからなる群から選択される少なくとも1種の触媒の存在下100〜250℃の温度で加熱する工程を含む、アルファ−ヒドロキシ酸の環状ジエステルの製造方法に関する。
【0010】
実際、驚くべきことに、本発明によるポリオールおよび触媒の存在下で加熱されるときに、アルファーヒドロキシ酸は、例えば、蒸留によって、反応媒体から容易に分離させることができる対応する環状ジエステルを容易に形成することが分かった。
【0011】
本発明の方法において、アルファ−ヒドロキシ酸は、任意の種類のアルファ−ヒドロキシ酸、特に乳酸、グリコール酸、グルカル酸、マンデリン酸、リンゴ酸、クエン酸および酒石酸;好ましくは乳酸およびグリコール酸;特にグリコール酸であってもよい。これらのアルファ−ヒドロキシ酸のすべては、環状ジエステルを形成し得ることが留意されなければならない。それにもかかわらず、一部の相違が、これらの様々な酸の反応性の間に存在する。例えば、グリコール酸と乳酸とを比較する場合、グリコール酸は第一級アルコールを含むが、乳酸は第二級アルコールを含むことがわかる。この相違は、グリコール酸のより高い反応性を示し、これは、ラクチドに比較して、その酸の過度のオリゴマー化またはグリコリドの過度の加水分解性をもたらし得る。
【0012】
本発明の本質的な特徴の一つは、ポリオールの使用にある。実際、ポリオールの非存在下で、より低い収率が得られるか、またはさらには環状ジエステルは、全く生成されないことが分かっている。ポリオールは、エチレングリコール(またはモノエチレングリコールもしくはグリコール)、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、エリトリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、およびボレミトールからなる群から、好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、およびグリセロールから、特にエチレングリコールから選択され得る。ポリオールは、典型的にはアルファ−ヒドロキシ酸の2〜50モル%、特に5〜20モル%、例えば、約10モル%の量で添加される。その分子量に依存して、ポリオールの量は、通常アルファ−ヒドロキシ酸の1〜40重量%、特に2〜20重量%、より具体的には3〜15重量%、例えば、約5〜10重量%である。
【0013】
本発明の別の本質的な特徴は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)およびスズ(Sn)のカルボン酸塩(RCOO
−)およびアルコキシド(RO
−)からなる群から、特にカルボン酸チタン、チタンアルコキシド、カルボン酸スズ、およびスズアルコキシドから、とりわけチタンアルコキシドから選択される触媒の選択である。カルボン酸塩は、例えば、酢酸塩(OAc)、オクタン酸塩またはエチル−2−ヘキサン酸塩である。アルコキシドは、例えば、メトキシド(OMe)、エトキシド(OEt)、プロポキシド(OPr)、イソプロポキシド(OiPr)、n−ブトキシド(OBu)、またはイソブトキシド(OiBu)である。例えば、触媒は、テトラ酢酸チタン(Ti(OAc)
4)、チタンテトラメトキシド(Ti(OMe)
4)、チタンテトラエトキシド(Ti(OEt)
4)、チタンテトライソプロポキシド(Ti(OiPr)
4)またはスズテトラブトキシド(Sn(OBu)
4)、Ti(OEt)
4から選択され得る。本発明の方法において、触媒は、通常アルファ−ヒドロキシ酸の5〜5000mppm(mol/mol)、より多くの場合10〜500mppm、ほとんどの場合50〜300mppmの量で添加されうる。触媒量は、しばしばアルファ−ヒドロキシ酸の15〜15000wppm(wt/wt)、より多くの場合30〜1500wppm、ほとんどの場合100〜1000wppmである。触媒は、有利にはポリオール中の溶液として、または以下に定義されるとおりの任意選択的な溶媒中の溶液として添加される。いずれの理論にも拘束されないが、触媒を、純製品としてよりもむしろ溶液として添加することが、Ti−OR結合の加水分解に加えて触媒の沈殿を回避すると考えられる。
【0014】
本方法において、アルファ−ヒドロキシ酸は、典型的にはポリオールおよび触媒の存在下100〜250℃、好ましくは150〜240℃、より好ましくは180〜230℃の温度で加熱される。前記加熱は、大気圧および減圧下で、有利には減圧下で、特に500ミリバール以下、より具体的には200ミリバール以下、とりわけ100ミリバール以下の圧力下で行われ得る。圧力は、一般に1ミリバール以上、特に5ミリバール以上、より具体的には10ミリバール以上である。好ましい実施形態において、加熱は、大気圧で開始され、次いで、必要とされる圧力が達せられるまで、特に10〜100ミリバール、例えば、約10、20、30、40または50ミリバールの圧力まで漸進的真空下で継続する。加熱時間は、反応温度に依存し、このパラメータは、広い範囲内にあり得る。ほとんどの場合、加熱は、1〜24時間、好ましくは2〜12時間、より好ましくは4〜8時間、例えば、約6時間行われる。反応は、好ましくは液相で行われる。有利には、形成される水は、例えば、蒸留によって、反応混合物から除去される。
【0015】
ポリオールおよび触媒の存在下でのアルファ−ヒドロキシ酸の加熱は、溶媒の存在下または非存在下で行われてもよい。溶媒が存在する場合、それは、反応媒体の5〜100重量%、特に10〜50重量%の量で添加される。少なくとも1種の溶媒が、アルファ−ヒドロキシ酸、ポリオールおよび触媒を含む媒体に添加される場合、それは、任意の種類の適切な有機溶媒、特に極性有機溶媒、より具体的にはプロトン性極性有機溶媒、とりわけアルコール類から選択され得る。好ましい実施形態において、溶媒は、十分に高い沸点、特に少なくとも80℃の沸点を有し、少なくとも100℃の沸点が特に好ましく、少なくとも120℃の沸点がより好ましい。特に好ましい実施形態において、溶媒は、水よりも酸性であり、すなわち、溶媒は、水のpKa(15,7)よりも低い酸解離定数(pKa)を有する。特に適切な溶媒は、グリコールエーテル類からなる群から選択される。グリコールエーテル類の例は、エチレングリコール(R−O−(CH
2−CH
2)
n−O−R’)またはプロピレングリコール(R−O−[CH
2−CH(CH
2)]
n−O−R’)の誘導体、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル(または2−メトキシエタノールもしくはメチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(または2−エトキシエタノール)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(または2−プロポキシエタノール)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(または2−イソプロポキシエタノール)、エチレングリコールモノブチルエーテル(または2−ブトキシエタノール)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(または2−フェノキシエタノール)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(または2−ベンジルオキシエタノール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(または2−(2−メトキシエトキシ)エタノールもしくはメチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(または2−(2−エトキシエトキシ)エタノールもしくはカルビトールセロソルブ)、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(または2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール)、エチレングリコールジメチルエーテル(またはジメトキシエタン)、エチレングリコールジエチルエーテル(またはジエトキシエタン)、エチレングリコールジブチルエーテル(またはジブトキシエタン)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(または1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(または1−エトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(または1−プロポキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルである。
【0016】
反応は、任意の種類の反応器、例えば、撹拌反応器で行われ得る。有利な実施形態において、反応は、反応混合物から水の除去を可能にし、その後の反応媒体からアルファ−ヒドロキシ酸の環状エステルの分離を可能にする蒸留器または蒸留装置で行われ得る。この目的に適した蒸留システムは、周知の事実であり、分離によく使用される。
【0017】
好ましい実施形態において、アルファ−ヒドロキシ酸は、ポリオールおよび触媒の添加前に典型的には80〜150℃、好ましくは90〜120℃の温度で最初に加熱され得る。前記最初の加熱は、例えば、1〜48時間、特に12〜36時間の間行われ得る。前記最初の加熱は、有利には大気圧で行われる。有利には、前記加熱工程の間に恐らくは形成される水は、その加熱工程の間または後に蒸留によって媒体から除去される。アルファ−ヒドロキシ酸を可溶化させるために、前記最初の加熱前にアルファ−ヒドロキシ酸に水を添加することも可能である。前記水は、アルファ−ヒドロキシ酸の10〜100重量%、特に30〜60重量%、例えば、約40または50重量%の量で添加され得る。好ましくは、アルファ−ヒドロキシ酸が可溶化されると、加熱工程の間に恐らくは形成される水のみならず添加された水を含む水は、加熱工程の間または後に蒸留によって媒体から除去される。
【0018】
ポリオールおよび触媒の存在下でのアルファ−ヒドロキシ酸の加熱後、アルファ−ヒドロキシ酸の環状ジエステルは、例えば、蒸留によって、特に減圧下の蒸留によって、例えば、反応媒体を、減圧下、例えば、10ミリバール未満、特に5ミリバール以下、とりわけ3ミリバール以下、より好ましくは1ミリバール以下の圧力で、160〜260℃、例えば、215〜240℃の温度で加熱することによって、収集され得る。アルファ−ヒドロキシ酸の環状ジエステルはまた、抽出によって反応混合物から、例えば、抽出溶媒としてトルエン、アセトン、テトラヒドロフランまたは二塩化メチレンを用いて除去され得る。この後に、抽出溶媒の蒸発、または溶液からの結晶化および分離が続く。
【0019】
したがって、本発明はまた、
(a)アルファ−ヒドロキシ酸を、80〜150℃の温度で、大気圧において1〜48時間加熱する工程と、
(b)少なくとも1種のポリオールならびにTi、Zr、AlおよびSnのカルボン酸塩およびアルコキシドからなる群から選択される少なくとも1種の触媒を添加する工程と、
(c)混合物を100〜250℃の温度で加熱する工程であって、加熱が、好ましくは減圧下で行われ、有利には加熱が、大気圧で開始され、次いで最大200ミリバールの圧力が達せられるまで漸進的真空下で継続した工程と、
(d)アルファ−ヒドロキシ酸の環状ジエステルを蒸留によって回収する工程と
を含む、アルファ−ヒドロキシ酸の環状ジエステルの製造方法に関する。
【0020】
回収されるアルファ−ヒドロキシ酸の環状ジエステルは、さらなる精製工程なしに、一部の用途に直ちに使用され得る。アルファ−ヒドロキシ酸の環状ジエステルはまた、例えば、蒸留またはクロマトグラフィー法によって精製され得る。
【0021】
本発明は、以下にさらに例証されるが、それに範囲を限定されることはない。
【0022】
参照により本明細書に組み込まれる、いずれかの特許、特許出願、および刊行物の開示が、それが用語を不明瞭にし得る程度に本出願の説明と矛盾する場合は、本説明が優先されるものとする。
【実施例】
【0023】
以下の実施例で、煮沸器(80mlの丸底フラスコ、B1と呼ぶ)およびこの煮沸器と一直線の分離容器(B2と呼ぶ)を備えた、ビュッヒガラスオーブンB−585を用いた。実施例1〜実施例6では、容器B1はオーブン中に完全に位置し、容器B2は、1/3はオーブン中にあり、2/3はオーブンの外にあるように位置した。実施例7〜実施例11では、容器B1はオーブン中に完全に位置し、容器は、オーブンの外に位置した。
【0024】
実施例1
17.0gの純(99%)固体グリコール酸および7.6gの水(グリコール酸を可溶化するためのに)を、80mlのビュッヒ丸底フラスコ(B1)中に導入し、前記フラスコを通風オーブン中110℃で約80時間の間置いた。80時間後、白色の固体がB1中に存在し、11.1gの水がB2に収集された。
【0025】
1.41gの蒸留エチレングリコール(22.6mmolまたは45mmolのOH官能基)および13mgの、メトキシエタノール中Ti(OEt)
4の34重量%溶液(すなわち、4.4mgのTi(OEt)
4を8.6mgのメトキシエタノール中に溶解させた)を、白色固体に添加した。次いで、この混合物を、以下の温度および圧力プロファイル下に置いた、すなわち、
混合物の溶融まで大気圧で195℃
大気圧で185℃(2時間)
200ミリバールで185℃(1時間)
80ミリバールで215℃(30分)
60ミリバールで215℃(1時間)
3ミリバールで215℃(1時間30分)
3ミリバールで205℃(17時間)。
【0026】
白色固体として固化する11.6gの透明な油を容器B2に回収した(反応媒体の84重量%)。B2の内容物の
1H−NMR分析は、以下の組成を示した、すなわち、57%のグルコリド、2.3%のグリコール酸、残りはグリコール酸オリゴマー。グリコリドの全体的収率は51%であった。
【0027】
実施例2
グリコール酸/水の混合物を、80時間ではなくて60時間の間110℃で保持した(しかし、同量の水をB2に回収した)ことおよび13mgの34重量%溶液ではなくて、32mgの、メトキシエタノール中Ti(OEt)
4の35重量%溶液(すなわち、11.4mgのTi(OEt)
4を20.6mgのメトキシエタノール中に溶解させた)を添加したことを除いて、実施例1を再現した。
【0028】
白色固体として固化する11.7gの透明な油を容器B2に回収した(反応媒体の85重量%)。B2の内容物の
1H−NMR分析は、以下の組成を示した、すなわち、58重量%のグリコリド、2.6%のグリコール酸、残りはグリコール酸オリゴマー。グリコリドの全体的収率は52%であった。
【0029】
実施例3
グリコール酸/水の混合物を、60時間ではなく80時間の間110℃で保持した(しかし、同量の水をB2に回収した)ことならびに温度および圧力プロファイルを以下、すなわち、
混合物の溶融まで大気圧で195℃
大気圧で185℃(2時間)
200ミリバールで185℃(1時間)
60ミリバールで185℃(1時間)
3ミリバールで185℃(17時間)
のとおりに変更したこと以外は、実施例2を再現した。
【0030】
白色固体として固化する7.75gの透明な油を容器B2に回収した(反応媒体の57重量%)。B2の内容物の1H−NMR分析は、以下の組成を示した、すなわち、61.1%のグルコリドおよび2.4%のグリコール酸、残りはグリコール酸オリゴマー。グリコリドの全体的収率は37%であった。
【0031】
実施例4(比較−ポリオールなし)
17.0gの純(99%)固体グリコール酸および7.5gの水(グリコール酸を可溶化するために)を、80mlのビュッヒ丸底フラスコ(B1)中に導入し、前記フラスコを通風オーブン中110℃で約17時間の間置いた。80時間後、白色固体がB1中に存在し、10.9gの水がB2に収集された。
【0032】
26mgの、メトキシエタノール中Ti(OEt)
4の34重量%溶液(すなわち、8.7mgのTi(OEt)
4を17.3mgのメトキシエタノール中に溶解させた)を、白色固体に添加した。
【0033】
次いで、混合物を以下の温度および圧力プロファイル下に置いた、すなわち、
大気圧で215℃(2時間)
200ミリバールで215℃(1時間)
80ミリバールで215℃(30分)
60ミリバールで215℃(1時間)
3ミリバールで215℃(1時間30分)
3ミリバールで180℃(17時間)。
【0034】
主にグリコール酸に相当する、わずかに2.3gの生成物を容器B2に回収した(反応媒体の18重量%)。
【0035】
実施例5(比較−触媒なし)
17.0gの純(99%)固体グリコール酸、7.5gの水(グリコール酸を可溶化するために)および1.4gのエチレングリコール(22.6mmolまたは45mmolのOH官能基)を、80mlのビュッヒ丸底フラスコ(B1)中に導入し、前記フラスコを通風オーブン中110℃で約60時間の間置いた。60時間後、白色固体がB1に存在し、11.9gの水がB2に収集された。
【0036】
次いで、混合物を以下の温度および圧力プロファイル下に置いた、すなわち、
大気圧で185℃(2時間)
200ミリバールで215℃(1時間)
80ミリバールで215℃(30分)
60ミリバールで215℃(1時間)
3ミリバールで215℃(3時間)
3ミリバールで180℃(17時間)。
【0037】
主にグリコール酸に相当する、わずかに4.5gの生成物を容器B2に回収した(反応媒体の32重量%)。
【0038】
実施例6(比較−触媒なし)
17.0gの純(99%)固体グリコール酸および7.5gの水(グリコール酸を可溶化するために)を、80mlのビュッヒ丸底フラスコ(B1)中に導入し、前記フラスコを通風オーブン中110℃で約60時間の間置いた。60時間後、白色固体がB1に存在し、11.0gの水がB2に収集された。
【0039】
1.41gの蒸留エチレングリコール(22.6mmolまたは45mmolのOH官能基)を白色固体に添加し、この混合物を通風オーブン中110℃で15時間置いた。1.3gの水をB2に収集した。
【0040】
次いで、混合物を以下の温度および圧力プロファイル下に置いた、すなわち、
大気圧で195℃(2時間)
200ミリバールで215℃(1時間)
80ミリバールで215℃(30分)
60ミリバールで215℃(1時間)
3ミリバールで215℃(3時間)
3ミリバールで180℃(17時間)。
【0041】
主にグリコール酸に相当する、わずか1.8gの生成物を容器B2に回収した(反応媒体の14重量%)。
【0042】
実施例7〜8
17.0gの純(99%)固体グリコール酸および7.6gの水(グリコール酸を可溶化するために)を、80mlのビュッヒ丸底フラスコ(B1)中に導入し、前記フラスコを通風オーブン中110℃で約60時間の間置いた。60時間後、白色固体がB1に存在し、約11gの水がB2に収集された。
【0043】
1.40gの蒸留エチレングリコール(22.5mmolまたは45mmolのOH官能基)およびTi(OEt)
4(以下の表中の量、メトキシエタノール中34重量%溶液として添加)を、白色固体に添加した。
【0044】
次いで、この混合物を以下の温度および圧力プロファイル下に置いた、すなわち、
混合物の溶解まで大気圧で195℃(約30分)
大気圧で190℃(1.5時間)
200ミリバールで190℃(1時間)
80ミリバールで215℃(1時間)
50ミリバールで225℃(1時間30分)
1ミリバール未満の圧力で240℃(17〜22時間)。
【0045】
蒸留の継続時間、触媒の量、およびグリコリドの全体的収率は、以下の表にまとめる。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例9〜11
以下、すなわち、
大気圧で195℃(2時間)
200ミリバールで215℃(1時間)
50ミリバールで225℃(2時間)
10ミリバールで225℃(2時間)
1ミリバール未満の圧力で240℃(17−22時間)
のとおりであった温度および圧力プロファイルを除いて、実施例7−実施例8を再現した。
【0048】
蒸留の継続時間、触媒の量、およびグリコリドの全体的収率は、以下の表にまとめる。
【0049】
【表2】