(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記無機充填材(B)が、前記無機充填材(B−1)とはアスペクト比と平均長さが異なる無機充填材(B−2)をさらに含む、請求項1に記載の反射用熱可塑性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.熱可塑性樹脂組成物
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、後述する熱可塑性樹脂(A)と、無機充填材(B)と、白色顔料(C)とを含む。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、反射材に好ましく用いられる。
【0016】
[熱可塑性樹脂A]
本発明の熱可塑性樹脂(A)は、カルボニル基を含む構造単位を有し、融点もしくはガラス転移温度が250℃以上であることを特徴とする。耐熱性、強度の観点からは、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックが好ましい。熱可塑性樹脂(A)の例には、ポリアミド、ポリエステル、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン類が挙げられる。特に、射出成形、押出成形の適合性から芳香族の多官能カルボン酸構造単位を含むポリアミド樹脂やポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂などを挙げることができる。
【0017】
熱可塑性樹脂(A)の、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)は250℃以上であり、好ましくは270〜350℃であり、より好ましくは290〜335℃である。融点が250℃以上であると、リフローはんだ時の反射板の変形が抑制される。上限温度は原則的としては制限がないが、融点が350℃以下であると、溶融成形に際して樹脂の分解を抑制できるので好ましい。
【0018】
熱可塑性樹脂(A)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)、無機充填材(B)および白色顔料(C)の合計量に対して、30〜80質量%であることが好ましく、40〜75質量%であることがより好ましく、45〜70質量%であることがさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂(A)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)、無機充填材(B−1)および白色顔料(C)の合計量に対して、30〜80質量%であることも好ましい態様の一つであり、40〜75質量%であることがより好ましく、45〜70質量%であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂(A)の含有量が上記範囲であると、熱可塑性樹脂組成物の成形性を損なうことなく、はんだリフロー工程に耐え得る耐熱性に優れた成形物を得ることができる。
【0019】
本発明の熱可塑性樹脂(A)は、ポリアミド樹脂(A−1)またはポリエステル樹脂(A−2)を含むことが好ましい。
【0020】
[ポリアミド樹脂(A−1)]
本発明で使用するポリアミド樹脂(A−1)は、ジカルボン酸成分単位(a−1)とジアミン成分単位(a−2)とを含むことを特徴とする。
【0021】
[ジカルボン酸成分単位(a−1)]
本発明で使用するポリアミド樹脂(A−1)を構成するジカルボン酸成分単位(a−1)は、テレフタル酸成分単位を30〜100モル%と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位および炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位の少なくとも一方を0〜70モル%とからなることが好ましい。これらのジカルボン酸成分単位(a−1)の合計量は100モル%である。
【0022】
このうちテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位は、例えばイソフタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびこれらの組み合せから誘導されることが好ましい。また、脂肪族ジカルボン酸成分単位は、その炭素原子数を特に制限するものではないが、炭素原子数は4〜20、好ましくは6〜12の脂肪族ジカルボン酸から誘導されることが好ましい。脂肪族ジカルボン酸成分単位を構成する脂肪族ジカルボン酸の例には、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、特にアジピン酸が好ましい。
【0023】
また、ジカルボン酸成分単位における、テレフタル酸成分単位の含有割合は30〜100モル%、好ましくは40〜100モル%、さらに好ましくは40〜80モル%である。テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位の含有割合は0〜70モル%、好ましくは0〜60モル%、さらに好ましくは20〜60モル%である。炭素原子数4〜20、好ましくは6〜12の脂肪族ジカルボン酸成分単位の含有割合は、0〜70モル%、好ましくは0〜60モル%、さらに好ましくは20〜60モル%である。
【0024】
また、本発明においては、ジカルボン酸成分単位(a−1)として、上記のような構成単位とともに、少量、例えば10モル%以下程度の量の多価カルボン酸成分単位が含まれても良い。このような多価カルボン酸成分単位を構成する多価カルボン酸の具体例には、トリメリット酸およびピロメリット酸等のような三塩基酸および多塩基酸が含まれる。
【0025】
[ジアミン成分単位(a−2)]
本発明で使用するポリアミド樹脂(A−1)を構成するジアミン成分単位(a−2)は、直鎖および/または側鎖を有する炭素原子数4〜20、好ましくは6〜12の脂肪族ジアミンが好ましく、これらのジアミン成分単位(a−2)の合計量は100モル%である。
【0026】
直鎖脂肪族ジアミン成分単位は、例えば1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカンから誘導されうる。これらの中でも、1,6−ジアミノヘキサン、1,9−ジアミノノナン、1,12−ジアミノドデカンから誘導される成分単位が好ましく、特に好ましくは1,12−ジアミノドデカンから誘導される成分単位である。
【0027】
また、側鎖を有する直鎖脂肪族ジアミン成分単位は、例えば2−メチル−1,5−ジアミノペタン、2−メチル−1,6−ジアミノヘキサン、2−メチル−1,7−ジアミノヘプタン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタン、2−メチル−1,9−ジアミノノナン、2−メチル−1,10−ジアミノデカン、2−メチル−1,11−ジアミノウンデカン等から誘導されうる。この中では、2−メチル−1,7−ジアミノヘプタン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタン、2−メチル−1,9−ジアミノノナン、2−メチル−1,11−ジアミノウンデカンから誘導される成分単位が好ましい。
【0028】
本発明で用いるポリアミド樹脂(A−1)は、公知の方法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸成分単位(a−1)とジアミン成分単位(a−2)とを均一溶液中で重縮合させて製造することができる。より具体的には、上記のジカルボン酸成分とジアミン成分とを、国際公開第03/085029号に記載されているように触媒の存在下で加熱することにより低次縮合物を得て、次いでこの低次縮合物の溶融物に剪断応力を付与することにより重縮合させて製造することができる。
【0029】
本発明で用いられるポリアミド樹脂(A−1)は、末端アミノ基濃度の好ましい下限値は40mmol/kgであり、好ましい上限値は300mmol/kgである。より好ましい下限、上限の範囲は70〜230mmol/kgであり、更に好ましくは80〜210mmol/kg、特に好ましくは80〜190mmol/kgである。末端アミノ基濃度が上記の範囲内にあれば、例えばLEDの製造工程およびリフローハンダ工程等での加熱による反射率低下を効果的に抑制出来る傾向があり、ポリアミド樹脂の機械的強度とのバランスの面でも好ましい。
【0030】
ここで末端アミノ基濃度は、トールビーカーに試料としてポリアミド樹脂0.5〜0.7gを精秤して、m−クレゾールを30ml加えて窒素シール後に密閉し、110℃で30分間攪拌してポリアミド樹脂を溶解する。次いで室温まで冷却し、指示薬である0.1%チモルブルー/m−クレゾール溶液を2〜3滴加える。次いで、0.02Mのp−トルエンスルホン酸/m−クレゾールで黄色から青紫色になるまで滴定を行って以下の数式(1)に基づいて算出される。尚、空試験は試料を加えずに上記操作を行う。
末端アミノ基濃度(mmol/kg)=(A−B)×F×M×10
3/S…(1)
A:試料に要したp−トルエンスルホン酸溶液の滴定量(ml)
B:空試験に要したp−トルエンスルホン酸溶液の滴定量(ml)
F:p−トルエンスルホン酸溶液のファクター
M:p−トルエンスルホン酸溶液のモル濃度(M)
S:試料質量である。
【0031】
ポリアミド樹脂(A−1)の末端アミノ基濃度は、重縮合の際のモノマー比や分子量調整剤によって調整することができる。ポリアミド樹脂(A−1)の末端アミノ基濃度を上記範囲にするためには、例えば重縮合の際に、ジアミン成分単位(a−2)の仕込みモル数の合計が、ジカルボン酸成分単位(a−1)の仕込みモル数の合計よりも多くなるようにする方法が好ましい例である。特に、本発明では、ジカルボン酸成分単位(a−1)とジアミン成分単位(a−2)とを重縮合させるに際して、[ジアミン成分単位(a−2)の仕込みモル数の合計/ジカルボン酸成分単位(a−1)の仕込みモル数の合計]の値が、1.01〜1.2、好ましくは1.02〜1.15、さらに好ましくは1.02〜1.1になるように仕込み量を調整することにより得ることができる。
【0032】
また、ポリアミド樹脂(A−1)の末端アミノ基濃度が多すぎる場合等には、例えば一部のポリアミド樹脂の末端アミノ基を、モノカルボン酸などの分子量調整剤などで封止したりしてもよい。
【0033】
また、本発明で用いられるポリアミド樹脂(A−1)は、温度25℃、96.5%硫酸中で測定した極限粘度[η]が、0.5〜1.2dl/g、好ましくは0.6〜1.0dl/g、さらに0.7〜0.9dl/gであることが好ましい。極限粘度[η]がこのような範囲にある場合、樹脂組成物の成形時の流動性が良好であり、かつ得られる成形物の機械的特性も良好である。極限粘度が0.5dl/g以上であると、十分な機械的強度を有する成形物を得ることができる。また、1.2dl/g以下であると、成形時の流動性の良好な樹脂組成物を得ることができる。ポリアミド樹脂(A−1)の極限粘度[η]を上記範囲のように調整するためには、例えば反応系内に分子量調整剤等を配合してジカルボン酸成分単位(a−1)とジアミン成分単位(a−2)とを反応させることが好ましい。分子量調整剤としては、モノカルボン酸およびモノアミンを使用することができる。
【0034】
ここで使用されるモノカルボン酸の例としては、炭素原子数2〜30の脂肪族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸を挙げることができる。なお、芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸は、環状構造部分に置換基を有していてもよい。例えば、脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノ−ル酸を挙げることができる。また、芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸およびフェニル酢酸を挙げることができ、脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロヘキサンカルボン酸を挙げることができる。
【0035】
このような分子量調整剤は、上述のジカルボン酸成分単位(a−1)とジアミン成分単位(a−2)との反応の際に使用され、反応系におけるジカルボン酸成分単位(a−1)の合計量1モルに対して、通常は、0〜0.07モル、好ましくは0〜0.05モルの量で使用されることが好ましい。このような量で分子量調整剤を使用することにより、少なくともその一部がポリアミド樹脂中に取り込まれ、これによりポリアミド樹脂(A−1)の分子量、即ち極限粘度[η]が本発明の好ましい範囲内に調整される。
【0036】
本発明で用いられるポリアミド樹脂(A−1)の、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)は250℃以上である。好ましくは下限、上限がそれぞれ270℃、350℃とする範囲にあり、特に290〜335℃であることが好ましい。融点が250℃以上であると、リフローはんだ時の反射板の変形が抑制される。上限温度は原則的としては制限がないが、融点が350℃以下であると、溶融成形に際して樹脂の分解を抑制できるので好ましい。
【0037】
[ポリエステル樹脂(A−2)]
本発明に使用されるポリエステル樹脂(A−2)は、ジカルボン酸成分単位(a−1)と、ジアルコール成分単位(a−3)とを有する。
【0038】
ジカルボン酸成分単位(a−1)は、前記のジカルボン酸成分単位(a−1)と同様のものを挙げることができる。ジカルボン酸成分単位(a−1)は、テレフタル酸成分単位またはテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位を含むことが好ましい。
【0039】
ジカルボン酸成分単位(a−1)は、テレフタル酸成分単位や芳香族ジカルボン酸成分単位に加えて、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸成分単位や、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸成分単位などをさらに含んでいてもよい。
【0040】
ジアルコール成分単位(a−3)は、環状骨格を有するジアルコール成分単位を含むことが好ましい。環状骨格を有するジアルコール成分単位は、脂環族骨格を有する脂環族ジアルコール成分単位または芳香族ジアルコール成分単位でありうる。
【0041】
脂環族ジアルコール成分単位は、炭素数4〜20の脂環族ジアルコール成分単位であることが好ましく、例えば1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどのシクロヘキサン骨格を有する脂環族ジアルコールから誘導されることがより好ましい。
【0042】
脂環族ジアルコールには、シス、トランス構造などの異性体が存在するが、成形物の耐熱性の観点では、トランス構造のほうが好ましい。したがって、シス/トランス比は、好ましくは30/70〜0/100、さらに好ましくは50/50〜0/100である。
【0043】
芳香族ジアルコール成分単位は、例えばビスフェノール、ハイドロキノン、2,2-ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン類などの芳香族ジオールから誘導されることが好ましい。成形性や、成形物の耐熱性の観点から、環状骨格を有するジアルコール成分単位は、脂環族ジアルコール成分単位を含むことが好ましい。
【0044】
ジアルコール成分単位は、前記の環状骨格を有するジアルコール成分単位のほかに、樹脂としての溶融流動性を高める目的などで、脂肪族ジアルコール成分単位をさらに含んでもよい。脂肪族ジアルコール成分単位は、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコールから誘導されうる。
【0045】
本発明で用いられるポリエステル樹脂(A−2)の、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)、もしくはガラス転移温度(Tg)は、250℃以上である。好ましくは、下限値、上限値をそれぞれ270℃、350℃とする範囲にあることが好ましい。特には290〜335℃の範囲が好ましい。これらの温度が250℃以上であると、リフローはんだ時の反射板の変形が抑制される。上限温度は原則的としては制限がないが、融点もしくはガラス転移温度が350℃以下であると、溶融成形に際してポリエステル樹脂の分解を抑制できるので好ましい。
【0046】
本発明においては、必要に応じて、これらカルボニル基を有する複数の熱可塑性樹脂を併用しても良い。
【0047】
[無機充填材(B)]
本発明で使用する無機充填材(B)は、カルボニル基を有し、特定のアスペクト比を有する無機充填材(B−1)を少なくとも含むことを特徴とする。
無機充填材(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)、無機充填材(B)、白色顔料(C)の合計量100質量%に対して、10〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることがさらに好ましい。無機充填材(B)の全てが無機充填材(B−1)である態様も好ましい例の一つである。即ち、無機充填材(B−1)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)、無機充填材(B−1)、白色顔料(C)の合計量100質量%に対して、10〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることがさらに好ましい。
無機充填材(B)の含有量が10質量%以上であると、射出成形時やはんだリフロー工程で成形物が変形することがなく、また、反射率の経時安定性に優れる傾向がある。また50質量%以下であると、成形性および外観が良好な成形品を得ることができる。
【0048】
このような無機充填材(B−1)をポリアミド樹脂(A−1)やポリエステル樹脂(A−2)などの熱可塑性樹脂(A)と併用することで、該樹脂の強度を向上できる。
【0049】
本発明では、カルボニル基を有する熱可塑性樹脂(A)とカルボニル基を有する無機充填材(B−1)との組み合わせが特徴の一つである。この組み合わせにより、ベースポリマーである熱可塑性樹脂(A)と無機充填材(B−1)との親和性が向上し、ベースポリマーへの無機充填材(B−1)の分散性が向上しているのではないかと考えられる。それにより、得られる成形物の耐熱性や機械的強度などが向上すると推測される。また、ベースポリマーである熱可塑性樹脂(A)と無機充填材(B−1)との親和性が向上することによって、後述する白色顔料(C)の分散性も向上し、得られる成形物の反射率も向上すると推測される。
【0050】
無機充填材(B−1)は、カルボニル基を有する無機充填材であることが要件の一つである。また、無機充填材(B−1)は、弱塩基性を示すことが好ましい。弱塩基性を示す無機充填材(B−1)は、ポリアミド樹脂(A−1)の分子末端のカルボキシル基と相互作用を持ち、カルボキシル基の反応による樹脂の変色を抑制することから、硬化物の反射率の経時変化を抑制できると発明者らは考えている。特に、後述のようなアスペクト比を有する無機充填材(B−1)は、表面積が比較的高いため、成形物の機械的強度を高める効果だけでなく、前記の化学的な変色を抑制する効果も高いと推測される。無機充填材(B−1)の具体例には、炭酸カルシウムなどの炭酸塩のウィスカー、ハイドロタルサイトなどが挙げられる。
【0051】
無機充填材(B−1)は、具体的には、繊維状、粉状、粒状、板状、針状、クロス状、マット状等でありうる。無機充填材(B−1)のアスペクト比(L(繊維の平均長さ)/D(繊維の平均外径))は、10〜100とすることができ、好ましくは10〜70としうる。無機充填材(B−1)の平均長さは、10〜100μmとすることができ、好ましくは10〜50μmとしうる。アスペクト比と平均長さがこのような範囲内にある無機充填材(B−1)を使用することが好ましい。
【0052】
前述の通り、無機充填材(B)の全てが無機充填材(B−1)である場合には、無機充填材(B−1)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)、無機充填材(B−1)、白色顔料(C)の合計量100質量%に対して、10〜50質量%であることが好ましい。一方、無機充填材(B)が無機充填材(B−1)以外の無機充填材をさらに含む場合には、無機充填材(B−1)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)、無機充填材(B−1)、白色顔料(C)の合計量100質量%に対して、1.5〜35質量%であることが好ましく、5〜35質量%であることがより好ましく、5〜30質量%であることがさらに好ましい。無機充填材(B−1)の含有量が10質量%以上であると、射出成形時やはんだリフロー工程で成形物が変形することがなく、また、反射率の経時安定性に優れる傾向がある。また50質量%以下であると、成形性および外観が良好な成形品を得ることができる。
【0053】
また、無機充填材(B−1)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)に対してその好ましい下限値が3質量%、より好ましくは5質量%である。一方、その好ましい上限値は130質量%、より好ましくは50質量%、更に好ましくは45質量%、特に好ましくは40質量%、殊に好ましくは35質量%である。
【0054】
無機充填材(B−1)は、一種類の無機充填材であっても、アスペクト比や平均長さ(好ましくはアスペクト比と平均長さ)が異なる二種以上の無機充填材の組み合わせであってもよい。
【0055】
前述の通り、無機充填材(B−1)は、カルボニル基を有する熱可塑性樹脂(A)への分散性が高いため、成形物の耐熱性や機械的強度などを高めうる。また、無機充填材(B−1)の熱可塑性樹脂(A)への分散性が高まるため、白色顔料(C)の分散性も向上し、成形物の反射率も高めているのであろう。
【0056】
また、カルボニル基を有する無機充填材(B−1)は、熱可塑性樹脂(A)に対して分散しやすいため、ガラス繊維等で知られている前処理を必ずしも必要としない。この場合、成形物を加熱処理しても、無機充填材と反応しなかった前処理剤や脱離した前処理剤が熱可塑性樹脂(A)などを分解させて反射率が低下するのを抑制しうる。
【0057】
無機充填材(B)は、前述の無機充填材(B−1)の他にも、必要に応じて他の無機充填材(B−2)をさらに含んでもよい。例えば、無機充填材(B−1)と、それとはアスペクト比や平均長さが異なる他の無機充填材(B−2)とを組み合わせてもよい。
【0058】
このように、アスペクト比や平均長さが異なる二以上の無機充填材を含む樹脂組成物を射出成形した際に、驚くべきことに、得られる成形物のMD方向の収縮率だけでなく、TD方向の収縮率等の諸物性を大きく改善できることがある。このような効果を発現する理由は定かではないが、以下のような現象に由来するものと考えられる。
【0059】
無機充填材を含む樹脂組成物を熱成形する場合、無機充填材はその流れ方向(MD方向)に配向する傾向があることは周知である。特に、アスペクト比の大きな無機充填材は配向し易い。そのため、アスペクト比の大きな無機充填材を用いると、成形物のMD方向の収縮率などを効果的に低減させることができる。
【0060】
アスペクト比や平均長さが大きい無機充填材(無機充填材α)に、アスペクト比や平均長さが小さい無機充填材(無機充填材β)が共存すると、無機充填材αはMD方向に配向し易いが、無機充填材βの少なくとも一部は、無機充填材αによる流れの乱れの影響を受けて、MD方向への配向が乱れてTD方向に配向する割合が比較的高くなるのではないかと考えられる。その結果、得られる成形物は、MD方向の収縮率だけでなく、TD方向の収縮率も低下する傾向があると考えられる。この際、無機充填材αが共存することにより、無機充填材βは更に解砕または切断され易くなり、TD方向へ配向し易くなるとも考えられる。
【0061】
アスペクト比や平均長さが小さい無機充填材βと、アスペクト比や平均長さが大きい無機充填材αとの比は、重量比で、無機充填材β/無機充填材α=15/85〜70/30であることが好ましく、25/75〜70/30であることがより好ましく、25/75〜65/35であることがさらに好ましく、25/75〜60/40であることが特に好ましい。アスペクト比や平均長さが大きい無機充填材αの割合が多すぎると、MD方向の収縮率は十分に低下するが、無機充填材βの割合が少なすぎるため、TD方向の収縮率が低下しにくい。その結果、成形物のMD方向の収縮率と、TD方向の収縮率との差が生じると考えられる。一方、無機充填材αの割合が少なすぎると、無機充填材αがMD方向に十分には配向しにくく、MD方向の収縮率が十分には低下しにくいと考えられる。
【0062】
本発明では、無機充填材αと無機充填材βとを併用する場合、無機充填材αと無機充填材βの少なくとも一方が前述の無機充填材(B−1)であればよく;好ましくは無機充填材αが他の無機充填材(B−2)であり、かつ無機充填材βが無機充填剤(B−1)である。無機充填材(B−2)は、無機充填材(B−1)よりも少なくともアスペクト比が大きいことが好ましく、アスペクト比と平均長さのいずれもが大きいことがより好ましい。
【0063】
他の無機充填材(B−2)の具体例としては、ガラス繊維、ワラストナイト(珪酸カルシウム)等の珪酸塩、チタン酸カリウムウィスカーなどのチタン酸塩等を挙げることができる。これらの中でもガラス繊維が好ましい。
【0064】
他の無機充填材(B−2)のアスペクト比の好ましい下限値は20、より好ましくは50、さらに好ましくは90である。一方、無機充填材(B−2)のアスペクト比の好ましい上限値は500、より好ましくは400、さらに好ましくは350である。他の無機充填材(B−2)のアスペクト比の無機充填材(B−1)との比は、成形物の収縮率を効果的に下げるためには、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。前記の比の上限は任意であるが、好ましくは20程度としうる。
【0065】
他の無機充填材(B−2)の平均長さの好ましい下限値は15μm、好ましくは30μm、より好ましくは50μmである。一方、無機充填材(B−2)の平均長さの好ましい上限値は8mm、好ましくは6mm、より好ましくは5mmである。他の無機充填材(B−2)の平均長さの無機充填材(B−1)との比は成形物の収縮率を効果的に下げるためには、10以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましい。前記の比の上限は、300程度としうる。
【0066】
このように、無機充填材(B−1)単独では、成形物の収縮率が比較的高いことがある。これに対して、無機充填材(B−1)と、それよりもアスペクト比と平均長さが大きい他の無機充填材(B−2)とを組み合わせることで、得られる成形物の収縮率を下げることができる。さらに、無機充填材(B−1)と他の無機充填材(B−2)の含有比率を上記範囲とすることで、成形物の収縮率をMD方向だけでなくTD方向にもバランス良く下げることができる。
【0067】
他の無機充填材(B−2)を用いる場合、無機充填材(B−1)と他の無機充填材(B−2)の合計含有量は、熱可塑性樹脂(A)に対してその好ましい下限値が15質量%、より好ましくは25質量%である。一方、その好ましい上限値は130%、より好ましくは70質量%、更に好ましくは60質量%、特に好ましくは55質量%、殊に好ましくは50質量%である。無機充填材の合計含有量が少なすぎると、成形物が熱で膨張などの変形が起き易くなる傾向がある。一方、多過ぎると、樹脂組成物の充填材の分散性低下等による外観不良、成形性の低下等の弊害が起きる場合がある。
【0068】
[白色顔料(C)]
本発明で使用する白色顔料(C)としては、ポリアミド樹脂(A−1)やポリエステル樹脂(A−2)などの熱可塑性樹脂(A)と併用して該樹脂を白色化することで、光反射機能を向上できるものであればよい。白色顔料(C)の具体例には、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミナなどが含まれる。これらの白色顔料は、単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0069】
また、これらの白色顔料(C)はシランカップリング剤あるいはチタンカップリング剤などで処理して使用することもできる。たとえば、白色顔料(C)は、ビニルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのシラン系化合物で表面処理されていてもよい。白色顔料(C)としては特に酸化チタンが好ましい。酸化チタンを使用することにより反射率、隠蔽性といった光学特性が向上する。
【0070】
酸化チタンはルチル型が好ましい。酸化チタンの粒子径は、0.1〜0.5μm、好ましくは0.15〜0.3μmである。
【0071】
これらの白色顔料(C)は、反射率を均一化させるためなどの理由で、アスペクト比の小さい、すなわち球状に近いものが好ましい。
【0072】
白色顔料(C)は、熱可塑性樹脂(A)、無機充填材(B)および白色顔料(C)の合計量100質量%中に、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、さらに10〜30質量%の割合となるようにすることが好ましい。
また、白色顔料(C)は、熱可塑性樹脂(A)、無機充填材(B−1)および白色顔料(C)の合計量100質量%中に、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、さらに10〜30質量%の割合となるように添加することも好ましい態様の一つである。白色顔料(C)の含有量が5質量%以上であると、反射率等の十分な光の反射特性を得ることができる。また50質量%以下であれば、成形性を損なうことがなく好ましい。
【0073】
また、白色顔料(C)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)に対してその好ましい下限値が20質量%、より好ましくは30質量%である。一方、その好ましい上限値は130質量%、より好ましくは75質量%、更に好ましくは65質量%である。
【0074】
[その他の添加剤]
本発明では、発明の効果を損なわない範囲で、用途に応じて、以下の添加剤、すなわち、酸化防止剤(フェノール類、アミン類、イオウ類、リン類等)、耐熱安定剤(ラクトン化合物、ビタミンE類、ハイドロキノン類、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、光安定剤(ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾフェノン類、ベンゾエート類、ヒンダードアミン類、オギザニリド類等)、他の重合体(オレフィン類、変性ポリオレフィン類、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体等のオレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体等のオレフィン共重合体、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキシド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、LCP等)、難燃剤(臭素系、塩素系、リン系、アンチモン系、無機系等)蛍光増白剤、可塑剤、増粘剤、帯電防止剤、離型剤、顔料、結晶核剤、種々公知の配合剤を添加することができる。
【0075】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記の各成分を、公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダ−などで混合する方法、あるいは混合後さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法により製造することができる。
【0076】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、機械的強度、耐熱性および反射率が高く、反射材(好ましくは反射板)の用途に好適に使用することができる。
【0077】
[反射板、発光ダイオード素子用反射板]
反射板は、少なくとも光を放射する方向の面が開放された、または開放されていないケーシングやハウジングなどでありうる。反射板の形状は、具体的には、箱状、函状、漏斗状、お椀状、パラボラ状、円柱状、円錐状、ハニカム状、板状(平面状、球面状または曲面状の光反射面を有する板状)でありうる。反射板は、特に発光ダイオード(LED)素子用の反射板であることが好ましい。
【0078】
反射板は、通常、本発明の熱可塑性樹脂組成物を、射出成形、特にフープ成形等の金属のインサート成形、溶融成形、押出し成形、インフレーション成形、ブロー成形等の加熱成形により、所望の形状に賦形することで得られる。得られた反射板に、例えばLED素子とその他の部品を組み込み、封止用樹脂により封止、接合、接着等して、反射板を有する発光ダイオード素子を得ることができる。
【0079】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物および反射板は、LED用途のみならず、その他の光線を反射する用途にも適用することができる。具体的な例としては、各種電気電子部品、室内照明、天井照明、屋外照明、自動車照明、表示機器、ヘッドライト等の発光装置用の反射板として使用できる。
【実施例】
【0080】
[曲げ試験(靭性)]
樹脂組成物を、下記の射出成形機を用いて、下記の成形条件で成形し、長さ64mm、幅6mm、厚さ0.8mmの試験片を得た。
成形機:(株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A
成形機シリンダー温度:融点(Tm)+10℃、金型温度:120℃
【0081】
得られた試験片を、温度23℃、窒素雰囲気下で24時間放置した。次いで、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、曲げ試験機:NTESCO社製 AB5を用いて、スパン26mm、曲げ速度5mm/分の条件で曲げ試験を行い、曲げ強度、歪量、弾性率、およびその試験片を破壊するのに要するエネルギー(靭性)を測定した。
【0082】
[リフロー耐熱性]
樹脂組成物を、下記の射出成形機を用いて、下記の成形条件で成形し、長さ64mm、幅6mm、厚さ0.8mmの試験片を得た。
成形機:(株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A
成形機シリンダー温度:融点(Tm)+10℃、金型温度:120℃
【0083】
得られた試験片を、温度40℃、相対湿度95%で96時間調湿した。次いで、エアーリフローはんだ装置(エイテックテクトロン(株)製AIS−20−82−C)により、
図1に示す温度プロファイルのリフロー工程を行った。
【0084】
具体的には、上記調湿した試験片を、厚み1mmのガラスエポキシ基板上に載置し、さらに当該基板上に温度センサーを設置して、温度プロファイルを測定した。
図1において、試験片を、所定の速度で温度230℃まで昇温した。次いで、20秒間で所定の温度(aは270℃、bは265℃、cは260℃、dは255℃、eは250℃)まで加熱して昇温させた後、230℃まで降温させた。そのときに、試験片が溶融せず、かつ表面にブリスターが発生しない設定温度の最大値を求め、この設定温度の最大値をリフロー耐熱温度とした。
【0085】
一般的に、吸湿した試験片のリフロー耐熱温度は、絶乾状態のそれと比較して低い傾向がある。
【0086】
[極限粘度[η]]
ポリアミド樹脂0.5gを96.5%硫酸溶液50mlに溶解させた。得られた溶液の、25℃±0.05℃の条件下での流下秒数を、ウベローデ粘度計を使用して測定し、以下の数式(2)に基づき算出した。
[η]=ηSP/[C(1+0.205ηSP)]…(2)
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:ブランク硫酸の流下秒数(秒)
ηSP=(t−t0)/t0
【0087】
[融点(Tm)]
得られた樹脂組成物を、PerkinElemer社製DSC7を用いて、一旦330℃で5分間保持し、次いで10℃/分の速度で23℃まで降温させた後、10℃/分で昇温した。このときの融解に基づく吸熱ピ−クが確認される温度を融点とした。
【0088】
[初期反射率]
下記の成形機を用い、下記の成形条件で射出成形して長さ30mm、幅30mm、厚さ0.5mmの試験片を得た。
成形機:(株)ソディック プラステック社製、ツパールTR40S3A
シリンダー温度:融点(Tm)+10℃、金型温度:120℃
【0089】
得られた試験片を、ミノルタ(株)CM3500dを用いて、波長領域360nm〜740nmの範囲の反射率を求めた。470nmと550nmの反射率を代表値として、初期反射率を評価した。
【0090】
[加熱後反射率]
初期反射率の測定に用いた試験片を、170℃のオーブンに2時間放置した。続いてエアーリフローはんだ装置(エイテックテクトロン(株)製AIS−20−82−C)を用いて、設定温度を20秒間保持する温度プロファイルとし、ピーク温度は設定温度より10℃高く設定したリフロー工程と同様の温度とした。この際、ピーク温度は試料片の表面で260℃となるよう設定した。この試料片を徐冷後、初期反射率と同様の方法で反射率を測定し、加熱後反射率とした。
【0091】
(実施例1)
ポリアミド樹脂(A1)、無機強化材(B1)および白色顔料(C)を表1に示す割合でタンブラーブレンダーを用いて混合した。得られた混合物を、二軸押出機(株)日本製鋼所製 TEX30αにてシリンダー温度340℃で原料を溶融混錬後、ストランド状に押出し、水槽で冷却後、ペレタイザーでストランドを引き取り、カットすることでペレット状の樹脂組成物を得た。次いで、得られた樹脂組成物について、各物性を評価した結果を表1に示す。
【0092】
ポリアミド樹脂(A1)
組成:ジカルボン酸成分単位(テレフタル酸/62.5モル%、アジピン酸/37.5モル% : 但し、ジカルボン酸成分単位の合計を100モル%とする)、ジアミン成分単位(1,6−ジアミノヘキサン/100モル% : 但し、ジアミン成分単位の合計を100モル%とする)
極限粘度[η]:0.8dl/g
融点:320℃
無機強化材(B1):炭酸カルシウムウィスカー(長さ25μm、アスペクト比33)
白色顔料(C):酸化チタン(粉末状、平均粒径0.21μm)
【0093】
(実施例2)
下記の組成、極限粘度、融点を有するポリアミド樹脂(A1−2)を用い、二軸押出機のシリンダー温度を320℃とした以外は、実質的に実施例1と同様の方法で、樹脂組成物を得て、各物性の評価を行った。
ポリアミド樹脂(A1−2)
組成:ジカルボン酸成分単位(テレフタル酸100モル% : ジカルボン酸成分単位の合計を100モル%とする)、
ジアミン成分単位(1,12−ジアミノドデカン100モル% : ジアミン成分単位の合計を100モル%とする)、
極限粘度[η]:0.8dl/g
融点:302℃
【0094】
(実施例3)
ベースポリマーに融点290℃のポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂(A2)を用い、二軸押出機のシリンダー温度を310℃とした以外は実施例1と同様に樹脂組成物を得て、各物性の評価を行った。
【0095】
(比較例1〜3)
ベースポリマーにポリアミド樹脂(A1)を、無機強化材(B)として下記を用いた以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を得て、各物性の評価を行った。
(B2)ガラス繊維:長さ3mm、アスペクト比300(セントラルガラス(株)製ECS03−615、シラン化合物処理品)
(B3)ワラストナイト(珪酸カルシウム):長さ50μm、アスペクト比11
(B4)チタン酸カリウムウィスカー:長さ15μm、アスペクト比33
【0096】
【表1】
【0097】
上記のように本発明の樹脂組成物は、従来に比して曲げ試験で代表される機械的強度、耐熱性、反射率および反射率の経時保持性のバランスが、従来の樹脂組成物に比べて高いことがわかる。それにより、本発明の樹脂組成物は、例えば反射板用の材料;特に好ましくは、高い耐熱性と反射保持率とが要求されるLED反射板用の材料として適していることが示唆される。
【0098】
このような高い性能バランスを示すのは、前述した通り本発明に用いられる特定の無機充填材(B)と熱可塑性樹脂(A)、白色顔料(C)との分散性、親和性が良好であるためと推測される。
【0099】
(実施例4〜6および比較例4)
下記のポリエステル樹脂(A2)63質量%、前記の白色顔料20質量%、無機充填材の合計が17質量%の割合でタンブラーブレンダーを用いて混合した。得られた混合物を、二軸押出機(株)日本製鋼所製 TEX30αにてシリンダー温度300℃で原料を溶融混錬後、ストランド状に押出し、水槽で冷却後、ペレタイザーでストランドを引き取り、カットすることでペレット状の樹脂組成物を得た。用いた無機充填材は、前記の炭酸カルシウムウィスカーとガラス繊維と同様である。
ポリエステル樹脂(A2)
組成:ジカルボン酸成分単位(テレフタル酸100モル%)、ジオール成分単位(シクロヘキサンジメタノール100モル%)
極限粘度[η]:0.6dl/g
融点:290℃
【0100】
次いで、得られた樹脂組成物を、住友重機械工業製SE50型成形機を用いて、295℃の温度で射出成形し、MD方向長さ50mm、TD方向長さ30mm、厚さが0.6mmの試験片を得た。金型の温度は150℃とした。
【0101】
用いた金型は、MD方向の間隔が40mmとなる一対の平行線、TD方向の間隔が20mmとなる一対の平行線形状の凹部が形成されている物を用いた。
【0102】
成形直後に得られた上記試験片に形成された線状部の、MD方向間距離、TD方向間距離を測定し、金型で設定された線間隔を基準とした収縮の割合を求めた。
【0103】
更に得られた試験片を170℃に保温したオーブン中で2時間保持し、室温まで徐冷した後、前記と同様の方法で収縮率を求めた。これらの結果を表2に示した。
【表2】
【0104】
上記の結果を、
図2、
図3のグラフにまとめた。
図2は、無機充填材全量に対するガラス繊維の含有割合と試験片の成形直後の収縮率との関係を示す。
図3は、無機充填材全量に対するガラス繊維の含有割合と試験片の加熱処理後の収縮率との関係を示す。
図2および
図3に示されるように、炭酸カルシウムウィスカー(無機充填材(B−1))と、それよりもアスペクト比と平均長さが大きいガラス繊維(無機充填材(B−2))とを併用した実施例5および6の試験片は、加成性から予測されるTD方向の収縮率(
図2および
図3の点線で示される収縮率)より、実際のTD方向の収縮率が低いという、予想外の傾向を示していることがわかる。尚、MD方向の収縮率は予想通り、ほぼ加成性に従う結果が得られている。
【0105】
本出願は、2011年6月8日出願の特願2011−128576および2011年12月14日出願の特願2011−273927に基づく優先権を主張する。