特許第5871931号(P5871931)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871931
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】熱を伝達する方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20160216BHJP
   C09K 5/04 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   F25B1/00 399Y
   C09K5/04
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-527596(P2013-527596)
(86)(22)【出願日】2011年9月8日
(65)【公表番号】特表2013-537965(P2013-537965A)
(43)【公表日】2013年10月7日
(86)【国際出願番号】EP2011065517
(87)【国際公開番号】WO2012032106
(87)【国際公開日】20120315
【審査請求日】2014年8月6日
(31)【優先権主張番号】10176092.4
(32)【優先日】2010年9月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508305960
【氏名又は名称】ソルヴェイ・スペシャルティ・ポリマーズ・イタリー・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ピア・アントニオ・グアルダ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンフランコ・スパタロ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・ピエール・ムニエ
【審査官】 安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−075281(JP,A)
【文献】 特開2001−304703(JP,A)
【文献】 特開2004−027178(JP,A)
【文献】 特表平11−513738(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/019267(WO,A2)
【文献】 国際公開第2010/034698(WO,A1)
【文献】 GALDEN HT Heat Transfer Fluids,[online],Solvay Solexis SpA,2007年 2月,[検索日:平成27年12月3日],URL,http://www.idealvac.com/files/brochures/Galden-HT-fluids-data.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
C09K 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(1)熱伝達流体を含む二次ループ通路によって、本体から第1熱伝達システムに熱を伝達する工
含む、熱を伝達する方法であって、
前記二次ループ通路が、ゴムシールおよびプラスチックパイプから選択される少なくとも1種類のポリマーシーラントを含み、
前記熱伝達流体が、以下の式(I):
−(OCF(OCFCF(OCF(CFCF−OR(I)
(式中、各場合に等しいまたは異なるRが、C〜Cパーフルオロアルキル基であり、互いに等しいまたは異なるm、nおよびpが、0〜100に含まれる整数であり、m+nの合計が0を超え、zは1または2に等しい)
を有する1種または複数種の直鎖状パーフルオロポリエーテルを含み、
前記熱伝達流体が、工程(1)で前記第1熱伝達システムに前記本体から前記熱を伝達するために、前記二次ループ通路を通じて循環される、方法。
【請求項2】
前記本体の温度が、一般に−15℃未満の温度に設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(2)前記第1熱伝達システムと同じまたは異なる第2熱伝達システムから、前記熱伝達流体を含む前記二次ループ通路によって前記本体に熱を伝達する工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記熱伝達流体が、工程(2)で前記本体に前記第2熱伝達システムから前記熱を伝達するために循環される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項に規定する第2熱伝達システムが、請求項1に規定する第1熱伝達システムと同じである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
請求項に規定する第2熱伝達システムが、請求項1に規定する第1熱伝達システムと異なる、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記熱伝達流体が、
請求項1に規定する式(I)を有する1種または複数種の直鎖状パーフルオロポリエーテルを少なくとも50モル%と
ドロフルオロエーテル(HFE)、ヒドロフルオロポリエーテル(HFPE)およびパーフルオロポリエーテル(PFPE)から選択される1種または複数種の流体と、
種または複数種の添加剤と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記熱伝達流体が、
請求項1に規定する式(I)を有する1種または複数種の直鎖状パーフルオロポリエーテルを少なくとも50モル%と
下の式(III):
O−R−Rb’(III)
を有する1種または複数種のヒドロフルオロポリエーテル流体(HFPE)を最大で40モル%とを
[上記式中、互いに等しいまたは異なるRおよびRb’が独立して、−C2m+1および−C2n+1−h基から選択され、m、nは1〜3の整数であり、hは、h≦2n+1となる1以上の整数であり、但し、RおよびRb’の1つが、上記で定義される−C2n+1−h基であり、残りの基が上記で定義される−C2m+1基であることを条件とし、
は、以下の構造:
(1)−(CFO)a1−(CFCFO)b1−(CF−(CFz’−CFO)c1(a1、b1およびc1は、100までの整数であり、z’は1または2に等しい整数であり、a1≧0、b1≧0、c1≧0およびa1+b1>0であ)、
を有するパーフルオロポリオキシアルキレン鎖である]、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記熱伝達流体が、請求項1に規定する式(I)を有する1種または複数種の直鎖状パーフルオロポリエーテルからなる、請求項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に規定する式(I)を有する直鎖状パーフルオロポリエーテルが、以下の式(I−ビス):
R’−(OCFn’(OCFCFm’−OR’(I−ビス)
(式中、各場合に等しいまたは異なるR’が、C〜Cパーフルオロアルキル基であり、m’およびn’が、0を超え50までの整数であり、m’/n’が0.1〜10に含まれる)
に従う、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記二次ループ通路が、少なくとも1つのゴムシールを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年9月10日出願の欧州特許出願第10176092.4号明細書への優先権を主張し、本出願の全内容は、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、二次ループ熱伝達システムにおける熱伝達媒体としてのパーフルオロポリエーテル流体の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
フッ素化エーテル流体が、化学安定性および熱安定性が高く、非毒性および非可燃性であることから、熱伝達媒体として使用するのに適しており、厳しい安全基準を遵守するのにかかる特性、特に非可燃性が非常に重要である熱伝達用途に特に適していることは当技術分野で公知である。かかる用途の代表的な例としては、航空機に搭載されている冷却回路、スーパーマーケット用の冷凍システムまたは工業プラントにおける熱伝達回路が挙げられる。
【0004】
特に、ヒドロフルオロ(ポリ)エーテルは、低温でのその低い粘度を考慮して、低温用途における熱伝達媒体として、特に、熱源からヒートシンクへと熱を伝達するために、有利には、使用されることは当技術分野で公知である。しかしながら、主な欠点は、ヒドロフルオロ(ポリ)エーテル流体は一般に、必要とされる操作温度にわたって液相で維持されるために加圧熱伝達システムが必要となることである。
【0005】
熱伝達システムにおける熱伝達媒体としてのフッ素化エーテル流体の使用に影響する主な問題の中でも、特に加圧システムにおいて一般に漏れ易い熱伝達媒体を一方のある本体から別の本体へと輸送し、循環させるのに適している、特にポリマーシーラントを通常備える二次ループ熱伝達システムに関して、大気中に流体が放出されることによって生じる地球温暖化が挙げられる。
【0006】
さらに、当技術分野でよく知られているように、二次ループ装置は一般に、水分の影響を受ける。この水分は熱伝達流体によって運ばれ、通常二次ループ装置上で凝縮し、凍結して霜を形成する。この霜は、熱伝達システムの冷却効率を大幅に下げ、蓄積したままにしておくと、装置を通って循環する熱伝達流体の流れをブロックし、システムの総熱伝達容量を減少させる。
【0007】
したがって、(特許文献1)(MINNESOTA MINING AND MANUFACTURING COMPANY)(1998年8月5日)には、通常−15℃未満の温度で動作する二次ループ冷凍システム用の熱伝達流体としてのヒドロフルオロエーテルの使用が開示されている。
【0008】
また、(特許文献2)(3M INNOVATIVE PROPERTIES COMPANY)(2000年11月21日)には、特にKRYTOX(登録商標)KオイルおよびGALDEN(登録商標)HT流体として市販されているパーフルオロポリエーテルなどの二次冷媒の多段冷凍システムにおける使用が開示されている。
【0009】
さらに、(特許文献3)(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)(2010年4月1日)には、熱源からヒートシンクに熱を伝達するための熱伝達媒体として官能基を含まないフッ素化流体と、特定の官能性(パー)フルオロポリエーテル流体とを含む粗製物の使用が開示されている。しかしながら、二次ループ熱伝達システムに一般的に存在するポリマーシーラントに対する前記熱伝達媒体の適合性について言及されていない。
【0010】
さらに、(特許文献4)(MONTEDISON S.P.A.)(1990年9月11日)には、試験用途に応じて−65℃と低い、かつ/または200℃と高い温度での、電子産業における特に熱衝撃試験用、グロスリーク試験用および試験用途における燃焼用の熱伝達試験用流体としてのパーフルオロポリエーテルの使用が開示されている。しかしながら、これらの用途では、電子部品を流体に浸漬することによって、電子部品を熱伝達流体と直接接触させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0856038A号明細書
【特許文献2】米国特許第6148634号明細書
【特許文献3】国際公開第2010/034698号パンフレット
【特許文献4】米国特許第4955726号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、二次ループ熱伝達システムで使用するのに適したフッ素化エーテル熱伝達流体が当技術分野で依然として必要とされており、前記流体は有利には、
−−120℃から180℃までの広い動作温度においてヒドロフルオロ(ポリ)エーテル流体の粘度と同程度に低い粘度、
−大気圧での最大250℃の沸点、
−特に高温での、低い透過性および高い化学的適合性およびポリマーシーラントに対する耐性、
−固有の化学的不活性および安定性、および
−流体中での水の低い溶解性、を有し、
前記二次ループ熱伝達システムにおいてうまく使用され、その結果、システムの効率を高め、その保守を最小限にしながら、ポリマーシーラントを通じて漏れるリスクひいてはこれに対応する前記流体の雰囲気中への放出の低減さらには解消に成功することによって、厳しい安全基準が遵守される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明の目的は、以下の工程:
(1)熱伝達流体を含む二次ループ通路によって、本体から第1熱伝達システムに熱を伝達する工程と、任意選択で、
(2)前記熱伝達流体を含む前記二次ループ通路によって、前記第1熱伝達システムと同じ、または異なる第2熱伝達システムから、前記本体に熱を伝達する工程と、
を含む、熱を伝達する方法であって、
−前記二次ループ通路は、ゴムシールおよびプラスチックパイプから選択される少なくとも1種類のポリマーシーラントを含み、
−前記熱伝達流体は、以下の式(I):
−(OCF(OCFCF(OCF(CFCF−OR(I)
(式中、各場合に等しいまたは異なるRは、C〜Cパーフルオロアルキル基であり、互いに等しいまたは異なるm、nおよびpは、0〜100、好ましくは0〜50に含まれる整数であり、m+nの合計は0を超え、zは1または2に等しい)
を有する1種または複数種の直鎖状パーフルオロポリエーテルを含み、
そして前記熱伝達流体が、工程(1)で前記本体から前記第1熱伝達システムに前記熱を伝達するために、そして任意選択で、工程(2)で前記第2熱伝達システムから前記本体に前記熱を伝達するために、前記二次ループ通路を通じて循環される、方法である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
驚くべきことに、本発明の方法によって、ポリマーシーラントに対する熱伝達流体の低い透過性および高い化学的適合性および耐性のために、ゴムシールおよびプラスチックパイプを通じた漏れの低減に成功し、したがって、厳しい安全基準を遵守し、かつ定期的な霜落し作業およびポリマーシーラントの定期的な交換を、有利には、減らすことによって、その保守も最小限に抑えながら、二次ループ熱伝達システムの効率が、有利には、高められることが判明した。
【0015】
「本体」という用語は、本明細書において、特に密閉空間または物体を意味することが意図される。
【0016】
本発明の方法に、概してかかわる本体の非制限的な例は、特に、コンパートメント、装置、反応器、チャンバ、バイアルが挙げられる。
【0017】
本発明の方法の工程(1)の熱伝達システムは本明細書において、本体の温度よりも低い温度で維持されるシステムを意味することが意図される。本発明の方法の工程(2)の熱伝達システムは本明細書において、本体の温度よりも高い温度で維持されるシステムを意味することが意図される。
【0018】
本発明の方法の工程(1)で使用するのに適した熱伝達システムの非制限的な例としては、流体、例えば空気および液体窒素、および冷凍システム、例えば深冷器が挙げられる。
【0019】
本発明の方法の工程(1)および工程(2)の両方で使用するのに適した熱伝達システムの非制限的な例としては、特にサーモクライオスタットが挙げられる。
【0020】
本発明の方法によって、本体の温度は、有利には、概して250℃まで、好ましくは150℃までの温度に設定される。
【0021】
本発明の方法の本体の温度は、概して−15℃未満、好ましくは−25℃未満、さらに好ましくは−50℃未満の温度にうまく設定することができる。
【0022】
本発明の方法の第1実施形態において、本発明の方法は特に、上記で定義される工程(2)が存在しない二次ループ熱伝達システムを操作するのに適合されている。
【0023】
本発明のこの第1実施形態の方法は有利には、コンパートメント、例えばスーパーマーケットまたは航空機乗り物もしくはボートに搭載された輸送トロリーの食品コンパートメント、特に凍結手術または原子核およびエネルギー産業における装置または反応器、例えばリチウムイオン電池および燃料電池を冷却するのに、または燃料、特に液体窒素を保管するのに適している。
【0024】
本発明の方法の第2実施形態において、本発明の方法は、上記で定義される工程(2)が存在しない二次ループ熱伝達システムを操作するのに特に適合されている。
【0025】
本発明の方法の第2実施形態の第1変形形態において、上記で定義される工程(2)で使用するのに適した第2熱伝達システムは、上記で定義される工程(1)で使用するのに適した第1熱伝達システムと同じである。
【0026】
本発明の方法の第2実施形態の第2変形形態において、上記で定義される工程(2)で使用するのに適した第2熱伝達システムは、上記で定義される工程(1)で使用するのに適した第1熱伝達システムと異なる。
【0027】
本発明のこの第2実施形態の方法は有利には、装置および反応器を操作するのに、特に、
−真空チャンバに含まれる製品を凍結する工程であって、前記真空チャンバが、真空チャンバから熱伝達システムに熱を伝達するために使用される本発明の熱伝達流体を含む1つまたは複数の通路を含み、前記真空チャンバが−50℃未満、好ましくは−80℃未満の温度で維持される工程と、
−チャンバを室温まで加熱しながら、製品を真空下にて脱水する工程と、
−凍結乾燥された製品を取り出した後、温度範囲120℃〜135℃にて高圧飽和蒸気により真空チャンバを滅菌する工程と
によって、凍結乾燥装置を操作するのに適している。
【0028】
本発明の方法の熱伝達流体により、有利には、低温での低粘度および高沸点を示すと同時に、一般に−120℃〜180℃、好ましくは−100℃〜150℃、さらに好ましくは−70℃〜125℃の広い温度範囲で本発明の二次ループ熱伝達方法を操作することが可能となり、したがって熱伝達システム、特に密閉システムにおける圧力の過剰な上昇が回避され、ポリマーシーラントを通じた漏れが劇的に低減されることが判明した。
【0029】
本発明の方法の熱伝達流体は、上述の式(I)を有する1種または複数種の直鎖状パーフルオロポリエーテルに加えて、パーフルオロカーボン(PFC)、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、ヒドロフルオロエーテル(HFE)、ヒドロフルオロポリエーテル(HFPE)およびパーフルオロポリエーテル(PFPE)からなる群から選択される1種または複数種の他の流体も含み得る。
【0030】
好適なパーフルオロカーボン(PFC)の非制限的な例としては、特にパーフルオロ(シクロ)アルカン、パーフルオロアルキルアミンおよび3MからFLUORINERT(登録商標)流体として市販されているパーフルオロアルキルエーテル、特にFLUORINERT(登録商標)FC−40、FC−43、FC−70、FC−71、FC−72、FC−75、FC−77、FC−80、FC−84、FC−104、FC−3283、FC−5311およびF2 Chemicals Ltd.からFLUTEC(登録商標)流体として市販されている流体、特にFLUTEC(登録商標)PP−1、PP−2、PP−3、PP−5、PP−9が挙げられる。
【0031】
好適なヒドロフルオロカーボン(HFC)の非制限的な例としては、特にNippon Zeon Co.,Ltd.からZEORORA(登録商標)流体として、E.I.Du Pont de Nemours and Co.からVERTREL(登録商標)流体として、Solvay Fluor GmbHからSOLKANE(登録商標)365MFC流体として市販されているヒドロフルオロカーボンが挙げられる。
【0032】
好適なヒドロフルオロエーテル(HFE)の非制限的な例としては、特に以下の式(II−A)または(II−B):
O−R’(II−A)または
O−J−(O)−R’(II−B)
(式中、互いに等しいまたは異なるRおよびR’が独立して、−C2m+1、−C2n+1−h、−C2zOC2y+1、−C2u−u’u’OC2w+1−w’w’および−C2u−u’u’OC2y+1基から選択され、m、u、w、y、zは1〜8、好ましくは1〜7の整数であり、h、u’およびw’は、h≦2n+1、u’≦2u、w’≦2w+1となる1以上の整数であり、但し、式(IIA)におけるRおよびR’の少なくとも1つが、−C2n+1−h基または上記で定義される−C2u−u’u’OC2w+1−w’w’基であることを条件とし、
Jは、炭素原子1〜12個を有する二価炭化水素基、直鎖状または分岐状、脂肪族または芳香族、好ましくは炭素原子1〜6個を有する脂肪族二価炭化水素基、例えば−CH−、−CHCH−または−CH(CH)−であり、
jは0または1に等しい)
のいずれかに従うヒドロフルオロエーテルが挙げられる。
【0033】
本発明の方法において有用な、上述の式(II−A)を有する代表的な流体HFEとしては、限定されないが、以下の化合物およびその混合物:COCH、COCH、COC、C15OCが挙げられる。
【0034】
本発明の方法において有用な、上述の式(II−B)を有する代表的な流体HFEとしては、限定されないが、米国特許出願公開第2007051916号明細書(3M INNOVATIVE PROPERTIES COMPANY)(2007年3月8日)または米国特許出願公開第2005126756号明細書(3M INNOVATIVE PROPERTIES COMPANY)(2005年6月16日)に開示されるHFEが挙げられる。
【0035】
上述の式(II−B)を有する好適な流体HFEの非制限的な例としては、特に以下の化合物およびその混合物:
CFCFHCFCH(CH)OCFCFHCF、CFCFHCFCHOCFCFHCF、CFCF(CHOCFCFHCF)CFHCF(CF、CFCFHCF(CHOCFCFHCF)CF(CF、CFCF[CH(CH)OCFCFHCF]CFHCF(CF、CFCF[CH(CH)OCFCFHCF]CFHCFCF、CFCFCF[CH(CH)OCFCFHCF]CFHCF、CFCFHCFC(CHOCFCFHCF、CFCFHCFCHOCFCFHOC、CFCFHCFCH(OCFCFHCF)CHOCFCFHCF、CFCFHCFCHOCFCFHOC、CFCFHCFCHOCFCFHOCF、CFCFCFOCHCHCHOCFCFCF、CFCFCFCFOCHCHCHOCFCFCFCF、CFCFCFOCHCHOCFCFCF、CFCFCFCFCFOCHCHCHOCFCFCFCFCF、CFCFCF[CF(CF]OCHCHCHOCF[CF(CF]CFCFが挙げられる。
【0036】
好適なヒドロフルオロポリエーテル(HFPE)の非制限的な例としては、以下の式(III):
O−R−R’(III)
に従うヒドロフルオロポリエーテルが挙げられ、
式中、互いに等しいまたは異なるRおよびR’が独立して、−C2m+1および−C2n+1−h基から選択され、m、nは1〜3の整数であり、hは、h≦2n+1となる1以上の整数であり、但し、RおよびR’の少なくとも1つが、上記で定義される−C2n+1−h基であることを条件とし、
は、以下:
(1)−(CFO)a1−(CFCFO)b1−(CF−(CFz’−CFO)c1(a1、b1およびc1は、100までの、好ましくは50までの整数であり、z’は1または2に等しい整数であり、a1≧0、b1≧0、c1≧0およびa1+b1>0であり、好ましくは、a1およびb1のそれぞれが0を超え、b1/a1が0.1〜10に含まれる)、
(2)−(CO)a2−(CO)b2−(CFXO)c2−(Xは各場合に独立して、−Fおよび−CFから選択され、a2、b2およびc2は、100までの、好ましくは50までの整数であり、a2>0、b2≧0、c2≧0であり、好ましくは、b2およびc2>0であり、a2/b2は0.2〜5.0に含まれ、かつ(a2+b2)/c2は5〜50に含まれる)、
(3)−(CO)a3−(CFXO)b3−(Xは各場合に独立して、−Fおよび−CFから選択され、a3およびb3は、100までの、好ましくは50までの整数であり、a3>0、b3≧0、好ましくはb3>0であり、a3/b3は5〜50に含まれる)、から選択されるパーフルオロポリオキシアルキレン鎖である。
【0037】
上述の式(III)を有する流体HFPEの非制限的な例としては特に、以下の式:HCFO(CFCFO)CFH、HCFO(CFCFO)CFH、HCFO(CFCFO)(CFO)CFH、HCFO(CFCFO)CFH、HCFO(CFCFO)(CFO)CFH、HCFO(CFCFO)CFH、HCFO(CFCFO)CFOCFH、HCFO(CFCFO)CFOCFH、CFO(CFCFO)CFH、CFO(CFCFO)(CFO)CFH、CFO(CFCFO)(CFO)CFH、CFO(CFCFO)(CFO)CFH、CFO(CFCF(CF)O)CFH、CFO(CFCF(CF)O)CFH、CFO(CO)(CF(CF)O)CFH、HCFCFO(CFCFO)CFCFH、HCFCFOCFC(CFCFOCFCFH、CHOCFCFOCH、CHO(CFCFO)CH、CHO(CFCFO)(CFO)(CFCFO)CH、CHO(CFCFO)CH、CHO(CFCFO)(CFO)(CFCFO)CH、COCFCFOC、CO(CFCFO)、CHOCFH、CHOCFCFOCFH、CHOCFCFOCFOCFH、COCFH、COCFCFOCFH、CO(CFCFO)CFHに従う流体が挙げられる。
【0038】
本発明の方法で使用するのに適した上述の式(III)を有する好ましい流体HFPEは、式中、Rが、上述の構造(1)または(2)を有するパーフルオロポリオキシアルキレン鎖である、流体である。
【0039】
本発明の方法で使用するのに適した上述の式(III)を有する最も好ましい流体HFPEは、式中、Rが、上述の構造(1)を有するパーフルオロポリオキシアルキレン鎖であり、RおよびR’のうちの1つが、上記で定義される−C2n+1−h基であり、残りの基が、上記で定義される−C2m+1基である、流体である。
【0040】
好適なパーフルオロポリエーテル(PFPE)の非制限的な例としては、特に以下の式(IV):
O−R’−R’(IV)
を有するパーフルオロポリエーテルが挙げられ、
式中、互いに等しいまたは異なるRおよびR’が独立して、−C2m+1基から選択され、mは1〜3の整数であり、
’は、以下:
(1’)−(CO)a1’−(CO)b1’−(CFXO)c1’−(Xは各場合に独立して、−FおよびCFから選択され、a1’、b1’およびc1’は、100までの、好ましくは50までの整数であり、a1’>0、b1’≧0、c1’≧0であり、好ましくは、b1’およびc1’>0であり、a1’/b1’は0.2〜5.0に含まれ、かつ(a1’+b1’)/c1’は5〜50に含まれる)、
(2’)−(CO)a2’−(CFXO)b2’−(Xは各場合に独立して、−FおよびCFから選択され、a2’およびb2’は、100までの、好ましくは50までの整数であり、a2’>0、b2’≧0、a2’/b2’は5〜50に含まれる)、から選択されるパーフルオロポリオキシアルキレン鎖である。
【0041】
本発明の方法で使用するのに適した上述の式(IV)を有するましい流体PFPEは、式中、R’が、上述の構造(2’)を有するパーフルオロポリオキシアルキレン鎖である、PFPEである。
【0042】
上述の式(IV)を有する流体PFPEの非制限的な例としては、特にSolvay Solexis S.p.A.から商標名GALDEN(登録商標)の商標で市販されているPFPEが挙げられる。
【0043】
本発明の方法の熱伝達流体はさらに、1種または複数種の添加剤も含み得る。
【0044】
好適な添加剤の非制限的な例としては、特に抗摩耗添加剤、酸化抑制剤および防錆添加剤が挙げられる。
【0045】
本発明の方法の熱伝達流体に有利には添加することができる添加剤の代表的な例としては、特にSolvay Solexis S.p.A.から商標名FOMBLIN(登録商標)DA305、FOMBLIN(登録商標)DA306、FOMBLIN(登録商標)DA308の商標で市販されている官能性PFPEおよび国際公開第2007/099055号パンフレット(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)(2007年9月7日)に記載の、ピリジン、アミン、アリールのクラスから選択される末端基を有する官能性PFPEが挙げられる。
【0046】
本発明の方法の熱伝達流体は好ましくは、
−上述の式(I)を有する1種または複数種の直鎖状パーフルオロポリエーテルを少なくとも50モル%、さらに好ましくは少なくとも60モル%、またさらに好ましくは少なくとも70モル%と、
−任意選択で、上記で定義されるヒドロフルオロエーテル(HFE)、ヒドロフルオロポリエーテル(HFPE)およびパーフルオロポリエーテル(PFPE)から選択される1種または複数種の流体と、
−任意選択で、上記で定義される1種または複数種の添加剤と、を含む。
【0047】
本発明の方法の熱伝達流体はさらに好ましくは、
−上述の式(I)を有する1種または複数種の直鎖状パーフルオロポリエーテルを少なくとも50モル%、さらに好ましくは少なくとも60モル%、またさらに好ましくは少なくとも70モル%と、
−任意選択で、上述の式(III)(式中、Rは、上述の構造(1)を有するパーフルオロポリオキシアルキレン鎖であり、RおよびRb’のうちの1つが上記で定義される−C2n+1−h基であり、残りの基が上記で定義される−C2m+1基である)を有する1種または複数種のヒドロフルオロポリエーテル流体(HFPE)を最大で40モル%、さらに好ましくは最大で30モル%、またさらに好ましくは最大で20モル%、含む。
【0048】
本発明の方法の熱伝達流体はまたさらに好ましくは、上述の式(I)を有する1種または複数種の直鎖状パーフルオロポリエーテルからなる。
【0049】
本発明の方法で上述の式(I)を有する1種または複数種の直鎖状パーフルオロポリエーテルからなる熱伝達流体を使用することによって、非常に良い結果が得られた。
【0050】
上述の式(I)を有する直鎖状パーフルオロポリエーテルは、以下の式(I−ビス):
R’−(OCFn’(OCFCFm’−OR’(I−ビス)
に従い、
式中、各場合に等しいまたは異なるR’は、C〜Cパーフルオロアルキル基であり、m’およびn’は0を超え50までの整数、好ましくは20までの整数であり、m’/n’は0.1〜10に含まれる。
【0051】
上述の式(I)を有する直鎖状パーフルオロポリエーテルは有利には、20℃でASTM D445に従って測定された、最大で20cSt、好ましくは最大で10cSt、さらに好ましくは最大で5cStの粘度を有する。
【0052】
上述の式(I)または(I−ビス)のいずれかを有する直鎖状パーフルオロポリエーテルは、国際公開第2008/122639号パンフレット(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)(2008年10月16日)に記載の手順に従って、続いて欧州特許出願公開第0193028A号明細書(MONTEDISON S.P.A.)(1986年9月3日)に記載の手順に従って光化学フッ素化することによって、製造することができる。
【0053】
回収された蒸留留分に応じて、明確な温度範囲で動作する特定の二次ループ熱伝達システムで使用するのに適した沸点を有する、上述の式(I)または(I−ビス)のいずれかを有する直鎖状パーフルオロポリエーテルが得られるだろう。
【0054】
本発明の方法で使用するのに適した熱伝達流体の非制限的な例としては特に、一般に範囲80℃〜250℃、好ましくは100℃〜200℃、さらに好ましくは110℃〜180℃の沸点を有する、上述の式(I)を有する1種または複数種の直鎖状パーフルオロポリエーテルを含む熱伝達流体が挙げられる。
【0055】
好適なゴムシールの非制限的な例としては、Oリング、ホース、ダイアフラム、ガスケット、ブランケットが挙げられる。
【0056】
本発明の方法で使用される二次ループ通路で使用するのに適した、好ましいゴムシールは特に、エチレンプロピレン(いわゆるEPDM)、シリコーン、フルオロシリコーン、ニトリル、ブチル、フルオロカーボン、シス−ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、クロロプレン、ポリスルフィド、スチレンブタジエンゴムで構成されるゴムシールが挙げられる。
【0057】
本発明の方法で使用される二次ループ通路で使用するのに適した、最も好ましいゴムシールは、EPDM、シリコーンおよびフルオロシリコーンゴムで構成されるゴムシールである。
【0058】
本発明の方法で使用される二次ループ通路で使用するのに適した、好ましいプラスチックパイプは特に、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、アクリル、エポキシ、ポリスルホン、フェノール樹脂、ポリアミド、アクリロニトリルブタジエンスチレンで構成されるパイプが挙げられる。
【0059】
本発明の方法で使用するのに適した二次ループ通路の非制限的な例は好ましくは、上記で定義される少なくとも1種類のゴムシールを含む。
【0060】
本明細書に参照により組み込まれる特許、特許出願および出版物の開示内容のいずれかが、用語を不明確にし得る程度まで本出願の記述と矛盾する場合は、本発明の記述が優先される。
【0061】
本発明は、例示のみを目的としかつ本発明の範囲を制限するものではない以下の実施例を参照して、より詳細に説明される。
【0062】
原料
式CFO(CFO)(CFCFO)−CF(I−A)(平均m/n比が1.7である)を有し、数平均分子量560を有する、直鎖状パーフルオロポリエーテル。その物理的性質を以下の表1に示す。
【0063】
3Mから市販されているNOVEC(登録商標)7500ヒドロフルオロエーテル。その物理的性質を以下の表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
透過性試験
ASTM D814−95標準手順に従って、厚さ1.5mmを有するEPDM、シリコーンおよびフルオロシリコーンゴムシートと流体を100℃で接触させることによって、透過特性を測定した。その結果を以下の表2に示す。
【0066】
流体抵抗試験
ASTM D471−06標準手順に従って、100℃にて168時間、流体に対するゴムの耐薬品性を測定した。DIN53504標準手順を用いて修正されたASTM D471−06標準手順に従って、流体で処理した後のゴムの機械的性質も測定した。その結果を以下の表4に示す。
【0067】
機械的性質試験
DIN53504標準手順に従ってS2ダンベル形試験片を使用して、かつASTM D2240−02b標準手順に従って、厚さ3.11mmを有するEPDMゴムの試験片および厚さ2.65mmを有するシリコーンとフルオロシリコーンゴムの試験片を使用して、ゴムの機械的性質を測定した。その結果を以下の表3に示す。
【実施例】
【0068】
実施例1
式(I−A)を有する直鎖状パーフルオロポリエーテルの製造
国際公開第2008/122639号パンフレット(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)(2008年10月16日)に記載の手順に従って、テトラフルオロエチレンの光化学酸化から誘導される過酸化パーフルオロポリエーテルの接触水素化によって、PFPEジアシルフルオライドを得た。110℃〜150℃の範囲に沸点を有するPFPEジアシルフルオライドの留分を得るために、得られた混合物を蒸留した。フッ化アシル鎖が完全に転化し、上述の式(I−A)を有する直鎖状パーフルオロポリエーテルが得られるまで、式TO(CFO)(CFCFO)−T’(TおよびT’は−CF(2%)および−CFCOF(98%)基であり、平均m/n比が1.7である)を有し、かつ数平均分子量620を有する、回収されたPFPEジアシルフルオライドを、欧州特許出願公開第0193028A号明細書(MONTEDISON S.P.A.)(1986年9月3日)に記載の手順に従って0℃で光化学フッ素化にかけた。
【0069】
実施例2
上記に定義される試験手順に従って、上述の式(I−A)を有する直鎖状パーフルオロポリエーテルをEPDM、シリコーンおよびフルオロシリコーンゴムと接触させた。その結果を以下の表2および4に示す。
【0070】
比較例2
上述の式(I−A)を有する直鎖状パーフルオロポリエーテルの代わりにNOVEC(登録商標)7500ヒドロフルオロエーテルを使用した以外、本発明の実施例2に従う同じ手順を行った。その結果を表2および4に示す。
【0071】
上記で詳述される手順に従って測定された透過試験(以下の表2を参照)から、上述の式(I−A)を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル流体とEPDM、シリコーンおよびフルオロシリコーンゴムのいずれか1つを接触させると、NOVEC(登録商標)7500ヒドロフルオロエーテル流体と接触させて得られた値と比較して、前記ゴムに対して低い透過度数値を得ることに成功したことがわかる。
【0072】
【表2】
【0073】
上記で詳述される手順に従った流体抵抗試験もまた、NOVEC(登録商標)7500ヒドロフルオロエーテル流体と前記ゴムを接触させた場合に得られる変化と比較して、上述の式(I−A)を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル流体と前記ゴムを接触させた場合に、EPDM、シリコーンおよびフルオロシリコーンのいずれか1つの質量と容積の両方のより少ない変化が得られること、つまり、NOVEC(登録商標)7500ヒドロフルオロエーテル流体と接触させた場合よりも上述の式(I−A)を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル流体と接触させた場合に、前記ゴムの膨潤が少ないことを示している(以下の表4を参照)。
【0074】
上記で詳述される手順に従って測定された、未処理EPDM、シリコーンおよびフルオロシリコーンゴムの機械的性質を以下の表3に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
以下の表4に示されるように、上記で詳述される手順に従って、上述の式(I−A)を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル流体でEPDM、シリコーンおよびフルオロシリコーンゴムを処理した後も、前記処理されたゴムの機械的性質は、二次ループ通路のポリマーシーラントが本発明の方法において十分に機能することを可能にするのに依然として適していることがさらに判明した。
【0077】
【表4】
【0078】
したがって、有利には熱伝達流体に対する水の低い溶解性を有する、上述の式(I)を有する1種または複数種の直鎖状パーフルオロポリエーテルを含む熱伝達流体の存在下にて、本発明の方法を行うことは、二次ループ熱伝達システムの管理およびそれに伴う費用を最小限に抑えると同時に、前記ポリマーシーラントに対する前記流体の透過性が低く、化学的適合性が高く、かつ耐性があるため、二次ループ通路に
おけるポリマーシーラントの気密を有利には高めることによって、成功することが判明した。