特許第5871938号(P5871938)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871938
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】研磨物品
(51)【国際特許分類】
   B24D 3/00 20060101AFI20160216BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   B24D3/00 310Z
   B24D3/00 320A
   B24D3/00 320B
   C09K3/14 550D
   C09K3/14 550E
   C09K3/14 550F
   C09K3/14 550G
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-533879(P2013-533879)
(86)(22)【出願日】2011年10月4日
(65)【公表番号】特表2013-544658(P2013-544658A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】US2011054676
(87)【国際公開番号】WO2012051002
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2014年8月7日
(31)【優先権主張番号】61/393,598
(32)【優先日】2010年10月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】ボタゴウ, ジン−エディン
(72)【発明者】
【氏名】ラグ, ポール エス.
【審査官】 齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0022174(US,A1)
【文献】 特表2007−536100(JP,A)
【文献】 特表2010−520078(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0216413(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00
B24B 21/00
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)表裏となる第1の表面と第2の表面とを有する可撓性裏張りと、
(b)前記可撓性裏張りの前記第1の表面に配置される複数の研磨粒子を含む研磨層と、
(c)耐荷重性粒子と接着母材とを含み、前記可撓性裏張りの前記第2の表面に配置される接着層と、を含み、
前記耐荷重性粒子の少なくとも一部分は、前記接着母材に包まれ、可撓性裏張りの前記第2の表面と接触
前記耐荷重性粒子は、
(i)錫、銅、インジウム、亜鉛、ビスマス、鉛、アンチモン、銀、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属又はその合金、
(ii)ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマー、並びに
(iii)コアシェルタイプの粒子、
からなる群から選択される、研磨物品。
【請求項2】
前記耐荷重性粒子を含む前記接着層に取り付けられる剛性支持体を更に含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項3】
前記耐荷重性粒子の少なくとも一部分は、前記剛性支持体と接触する、請求項2に記載の研磨物品。
【請求項4】
前記耐荷重性粒子は、前記接着層の厚さと等しい平均直径を有する、請求項1に記載の研磨物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2010年10月15日に出願された、米国特許仮出願第61/393,598号の利益を請求し、その開示の全文を本明細書に参考として組み込む。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ(HDD)産業の読み書きヘッドのラッピング及び研磨では、非常に硬い複合材料と非常に柔らかい複合材料とが典型的には同時に仕上げられる。非常に柔らかい材料は、読み書きトランスデューサを構成し、非常に硬いアルミナチタンカーバイド(AlTiC)材の縁部に位置する。硬いAlTiC材料を除去するために高圧を必要とするので、1平方インチ当たり(psi)40ポンド(275.8kPa)までの高圧が加えられる。工作物上のそのような荷重は、研磨母材が十分に低モジュラスである場合、研磨表面の移動を生じさせる。研磨母材の圧縮は、移動を生じさせ、工作物の縁部で研磨材の波を生じさせる。工作物の縁部での高応力は、一般に「クラウン」又はエッジロールオフと呼ばれる縁部の除去を加速させる。このクラウニング効果は、工作物の縁部にあるトランスデューサを損傷させ得る。従順な感圧接着剤を有する多層の研磨物品は、読み書きヘッドのクラウンを悪化させ得る。
【0003】
図1は、研磨物品の第2の表面18bにコーティングされた接着層14を有する可撓性裏張り18の第1の表面18a上の結合剤13中に分散した研磨粒子12有する研磨物品10の典型的な先行技術システムを示す。例えば感圧接着剤層等の接着層は、研磨物品を剛性支持体22に固定させる。研磨物品10の様々な構成要素を比較すると、接着層は、可撓性裏張り及び研磨粒子と比較してより柔らかい(つまり、より低いヤング率を有する)。
【0004】
図2に示すように、使用中に、典型的には工作物20は荷重P下で研磨粒子12にさらされる。そのような状況下で、工作物及びその上に加えられる荷重は、比較的柔らかい接着層を変形させる。可撓性基板は接着層の変形に従う傾向があり、工作物の縁部で高応力を生じさせ、そのため、工作物の縁部で材料のより高い除去率を生じさせる。より高い除去率が次に、非常に望ましくない工作物のクラウニングを招く。下にある接着層の変形、並びに又は可撓性裏張り及び研磨粒子の変形によって生じる高応力のため、工作物の縁部は丸み付けされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、仕上り工作物に優れた平坦度を提供することで、クラウニングの問題に解決策を提供する。本明細書に提供される研磨物品は、長寿命、容易な応用、容易な取り外し、優れた仕上がり、及びクラウンを縮小させる技術に関する進歩と共に高い除去率の利点を保持する。
【0006】
第1の実施形態では、研磨物品は、(a)表裏となる第1の表面及び第2の表面を有する可撓性裏張り、(b)可撓性裏張りの第1の表面に配置される複数の研磨粒子を含む研磨層、及び(c)耐荷重性粒子と接着母材とを含む接着層であって、可撓性裏張りの第2の表面に配置される、接着層、を含み、耐荷重性粒子の少なくとも一部分は、接着母材に実質的に包まれ、高分子基板の第2の表面と接触する。
【0007】
第2の実施形態では、第1の実施形態の研磨物品は、耐荷重性粒子を含む接着層に取り付けられる剛性支持体を更に含む。
【0008】
第3の実施形態では、前述の実施形態のうちのいずれかの研磨物品は、耐荷重性粒子の少なくとも一部分が剛性支持体と接触している。
【0009】
第4の実施形態では、前述の実施形態のうちのいずれかの研磨物品は、高密度クラフト紙、ポリマーコーティングされた紙、及び高分子基板からなる群から選択される可撓性裏張りを有する。
【0010】
第5の実施形態では、前述の実施形態のうちのいずれかの研磨物品は、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース、ポリアミド、ポリイミド、ポリシリコーン、及びポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択される高分子基板を含む。
【0011】
第6の実施形態では、前述の実施形態のうちのいずれかの研磨物品は、錫、銅、インジウム、亜鉛、ビスマス、鉛、アンチモン、銀、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属、又はその合金である耐荷重性粒子を含む。
【0012】
第7の実施形態では、前述の実施形態のうちのいずれかの研磨物品は、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーである耐荷重性粒子を含む。
【0013】
第8の実施形態では、前述の実施形態のうちのいずれかの研磨物品は、金属酸化物及びランタニド酸化物からなる群から選択されるセラミック材である耐荷重性粒子を含む。
【0014】
第9の実施形態では、前述の実施形態のうちのいずれかの研磨物品は、コアシェル粒子である耐荷重性粒子を含む。
【0015】
第10の実施形態では、前述の実施形態のうちのいずれかの研磨物品は、形状が実質的に球形又は楕円形である耐荷重性粒子を含む。
【0016】
第11の実施形態では、前述の実施形態のうちのいずれかの研磨物品は、接着層の厚さと実質的に等しい平均直径を有する耐荷重性粒子を含む。
【0017】
第12の実施形態では、前述の実施形態のうちのいずれかの研磨物品は、溶融酸化アルミニウム、熱処理した酸化アルミニウム、白色溶融酸化アルミニウム、黒色炭化ケイ素、緑色炭化ケイ素、二ホウ化チタン、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化チタン、ダイヤモンド、シリカ、酸化鉄、クロミア、セリア、ジルコニア、チタニア、ケイ酸塩、酸化スズ、立方晶窒化ホウ素、ガーネット、溶融アルミナジルコニア、ゾルゲル研磨粒子、研磨凝塊、金属系微粒子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される研磨粒子を含む。
【0018】
第13の実施形態では、前述の実施形態のうちのいずれかの研磨物品は、研磨粒子を可撓性裏張りに結合させる結合剤を更に含む研磨層を含む。
【0019】
第14の実施形態では、前述の実施形態のうちのいずれかの研磨物品は、感圧接着剤、ホットメルト接着剤、及び硬化可能な液状接着剤からなる群から選択される接着母材を含む。
【0020】
第15の実施形態では、前述の実施形態のうちのいずれかの研磨物品は、接着層に配置されるライナーを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本開示は、図を参照して更に定義することができる。
図1】先行技術の研磨システムの概略断面表示。
図2】荷重が工作物に加えられた図1の先行技術の研磨システムの概略断面表示。
図3】本開示の研磨物品の一実施形態の概略断面図。
図4】本開示の研磨物品の別の実施形態の概略断面図。 図は例示的なもので、縮尺通りに描かれておらず、説明を目的としたものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書で使用する数字は全て、用語「約」で修飾されているとみなす。終点による数字範囲の詳細説明には、その範囲内に含まれる全ての数が包含される(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5が包含される)。本明細書に引用する部は全て、下記の実施例の段落のものを含め、特に指示がない限り重量部である。
【0023】
本明細書に開示する研磨物品は、荷重が加わった状態で非常に低い圧縮を提供するように設計される。荷重下で実質的に平面を維持することで、本研磨物品は、工作物の縁部で、感圧接着剤取り付けシステムで従来の研磨物品より少ないロールオフ又はクラウンを生成する。
【0024】
図3は、本開示の例示的な実施形態を示す。研磨物品40は、表裏となる第1の表面48a及び第2の表面48bを有する可撓性基板48を含む。研磨粒子42は、結合剤43を使用する可撓性基板の第1の表面48a上の結合剤43中に配置される。高分子基板の第2の表面48b上に、接着層44が配置される。耐荷重性粒子46は、接着母材45中に配置される。研磨物品40は、金属プラテンのような剛性支持体62に粘着的に取り付けられる。工作物60は、研磨する準備ができている研磨物品40に配置される。
【0025】
示すように、耐荷重性粒子46の一部分は、可撓性基板の第2の表面48bと直接接触する。更に、耐荷重性粒子46のうちのいくつかは、剛性支持体62の表面と直接接触する。耐荷重性粒子のうちのいくつかは、可撓性基板の第2の表面48b及び剛性支持体62の表面の両方と直接接触する。
【0026】
使用中に、荷重が工作物に加えられるとき、力は、研磨剤42、可撓性裏張り48、及び接着層44にも加えられる。しかしながら、接着母材が荷重を支える代わりに耐荷重性粒子が荷重の大部分を支える働きをし、それによって、接着層中の変形を排除することはないにしても、最低限に抑える。耐荷重性粒子が、研磨物品の変形を最低限に抑えることにおいて効果的であるために、耐荷重性粒子の少なくとも一部分は、可撓性基板の第2の表面48bと、また剛性支持体の表面と直接接触すべきであると考えられる。しかしながら、耐荷重性粒子の全てが可撓性裏張り44の第2の表面48b及び剛性支持体62の表面と直接接触しないことは本開示の範囲内である。実際に、本開示の一実施形態では、耐荷重性粒子の一部分が、可撓性基板の第2の表面48b及び剛性支持体の表面のうちの少なくとも1つと直接接触する。
【0027】
研磨粒子
本開示に使用できる好適な研磨粒子としては、溶融酸化アルミニウム、熱処理した酸化アルミニウム、白色溶融酸化アルミニウム、黒色炭化ケイ素、緑色炭化ケイ素、二ホウ化チタン、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化チタン、ダイヤモンド(天然及び合成の両方)、シリカ、酸化鉄、クロミア、セリア、ジルコニア、チタニア、ケイ酸塩、酸化スズ、立方晶窒化ホウ素、ガーネット、溶融アルミナジルコニア、ゾルゲル研磨粒子等が挙げられる。ゾルゲル研磨粒子の例は、米国特許第4,314,827号(Leitheiserら)、同第4,623,364号(Cottringerら)、同第4,744,802号(Schwabel)、同第4,770,671号(Monroeら)及び同第4,881,951号(Woodら)に見出すことができる。
【0028】
本明細書で使用するとき、研磨粒子という用語は、ポリマー、セラミック、金属又はガラスと一緒に結合され研磨粒塊を形成する単一研磨粒子も包含する。研磨粒塊という用語は、高温でのアニーリング工程により緻密化された酸化ケイ素を有してもよい又は有さなくてもよい、研磨/酸化ケイ素粒塊を含むが、これに限定されない。研磨粒塊は更に、米国特許第4,311,489号(Kressner)、同第4,652,275号(Bloecherら);同第4,799,939号(Bloecherら)、同第5,500,273号(Holmesら)、同第6,645,624号(Adefrisら);同第7,044,835号(Mujumdarら)に記載されている。あるいは、研磨粒子は、米国特許第5,201,916号(Bergら)に記載されているように、粒子間引力により一緒に結合されていてもよい。好ましい研磨粒塊としては、研磨粒子としてダイヤモンドを有し、結合構成成分として酸化ケイ素を有する粒塊が挙げられる。粒塊が使用される場合、粒塊に含まれる単一研磨粒子のサイズは、0.1〜50マイクロメートル(μm)(0.0039〜2.0ミル)、好ましくは0.2〜20μm(0.0079〜0.79ミル)、最も好ましくは0.5〜5μm(0.020〜0.20ミル)の範囲であり得る。
【0029】
研磨粒子の平均粒径は150μm(5.9ミル)未満、好ましくは100μm(3.9ミル)未満、最も好ましくは50μm(2.0ミル)未満である。研磨粒子のサイズは、典型的には、その最長寸法として特定される。典型的には、粒径には所定の範囲分布が存在するであろう。場合によっては、得られる研磨粒子が研磨される工作物上にばらつきのない表面仕上げをもたらすように、粒径分布が厳密に管理されるのが好ましい。
【0030】
研磨粒子は、粒径分布に関連する形状を有してもよい。こうした形状の例としては、棒形、三角形、角錐、円錐、中実球、中空球等が挙げられる。また、研磨粒子は不規則形状を有してもよい。
【0031】
有用な更なる別の種類の研磨粒子は、円周を有する実質的に球状の金属含有の母材と、金属含有の母材の円周に少なくとも部分的に埋め込まれる平均直径が50μm未満、好ましくは8μm未満の超研磨材料とを有する金属系研磨粒子である。そのような研磨粒子は、金属含有の母材(主として球状)、超研磨粒子及び粉砕媒体を容器に充填することにより作製できる。次いで、典型的には室温で、一定の期間容器を粉砕する。ミリングプロセスにより超砥粒材料が金属含有の母材に侵入し、付着し、金属含有の母材から突出すると考えられる。金属含有の母材の円周は、純金属又は金属合金から超砥粒と金属又は金属合金との複合材に変化する。円周近傍の金属含有の母材の表面も超砥粒材料を含み、これは金属含有の母材に埋め込まれているとみなされる。この金属系研磨粒子は、米国特許出願公開第2010−0000160号に開示される。
【0032】
研磨粒子は、粒子に所望の特性を与える材料で塗布されてもよい。例えば、研磨粒子の表面に塗布する材料は、研磨粒子とポリマーとの間の接着力を高めることが示されている。更に、研磨粒子の表面に塗布する材料によって、軟化した微粒子状の硬化性結合剤材料中の研磨粒子の接着力が高められてもよい。あるいは、表面被覆は、得られる研磨粒子の切削特性を変化及び向上させることも可能である。このような表面被覆は、例えば、米国特許第5,011,508号(Waldら)、同第3,041,156号(Rowseら)、同第5,009,675号(Kunzら)、同第4,997,461号(Markhoff−Mathenyら)、同第5,213,591号(Celikkayaら)、同第5,085,671号(Martinら)及び同第5,042,991号(Kunzら)に記載されている。
【0033】
可撓性基材
本開示で使用し得る好適な可撓性基板は、典型的には、研磨技術分野において周知であり、一般に裏張りと呼ばれるものである。好適な可撓性基板としては、高分子基板、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース、ポリアミド、ポリイミド、ポリシリコーン、及びポリテトラフルオロエチレン;アルミニウム、銅、錫、及び青銅を含む金属箔;並びに高密度クラフト紙及びポリマーコーティングされた紙を含む紙が挙げられる。
【0034】
剛性基材
用語「剛性」は、少なくとも(at lease)自己支持性である基材を記載し、すなわち、基材はそれ自体の重量下で実質的に変形しない。剛性によって、基材が全く可撓性を有さないことを意味するわけではない。剛性基材は、かかる荷重の下で変形又は屈曲され得るが、非常に低い圧縮性を提供する。一実施形態では、剛性基材は、1×10ポンド/平方インチ(psi)(7×10kg/cm(6.9GPa))以上の剛性率を有する材料を含む。別の実施形態では、剛性基材は、10×10psi(7×10kg/cm(68.9GPa))以上の剛性率を有する材料を含む。
【0035】
剛性基材として機能し得る好適な材料には、金属、金属合金、金属−母材複合材料、金属化プラスチック、無機ガラス及びガラス化可能な有機樹脂、成形セラミック、並びに高分子母材強化複合材料が挙げられる。
【0036】
一実施形態では、剛性基材は、表裏となる第1の表面と第2の表面との間の高さの差が、表面上の任意の2つの地点で10μm未満であるように実質的に平坦である。別の実施形態では、剛性基材は、レンズ研磨用に使用できるような精密で、非平坦幾何学的配列を有する。
【0037】
接着母材
接着母材は、可撓性裏張りと剛性基材との間の粘着を提供する。粘着を提供し得る任意の接着母材が本開示の使用に好適である。接着層形成中のある時点で、耐荷重性粒子の少なくとも一部分が接着母材に実質的に包まれるように、接着母材は十分な流量特性を示す必要がある。
【0038】
接着母材に適する接着剤としては、感圧接着剤(PSA)、ホットメルト接着剤、並びに、放射線硬化性、例えば、光硬化性、UV硬化性、電子ビーム硬化性、ガンマ硬化性;熱硬化性、湿気硬化性等を含む通常の手段で硬化可能及び/又はガラス化可能な液状接着剤が挙げられる。ホットメルト接着剤は、ガラスを超える温度及び/又は接着剤の融解転移温度で加熱することで流れ得る接着剤である。転移温度以下に冷却することで、ホットメルト接着剤は凝固する。ホットメルト接着剤の中には加熱によって流れ、接着剤の更なる硬化によって、次に凝固する場合がある。
【0039】
耐荷重性粒子
本開示に有用な耐荷重性粒子は、金属系、ポリマー系、又はガラスを含むセラミック系であり得る。それらは中空、固体、又は多孔質であってもよい。好ましくは、単一の種類の粒子が使用されるが、混合の種類の粒子も使用し得る。
【0040】
好適な金属系の耐荷重性粒子としては、錫、銅、インジウム、亜鉛、ビスマス、鉛、アンチモン及び銀、及びそれらの合金類、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。典型的には、金属粒子は延性を有する。例示的な金属粒子としては、商品名「58Bi42Sn Mesh100+200 IPN+79996Y」でIndium Corporation(Utica,NY)から市販されるスズビスマス共晶粉末としてのスズ/ビスマス金属ビーズ、及びカタログ番号20778でSigma−Aldrich(Milwaukee,WI)から市販される銅粒子(99% 200メッシュ)が挙げられる。
【0041】
好適なポリマー系の耐荷重性粒子としては、ポリウレタン粒子及びポリメチルメタクリレート粒子、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
好適なセラミック系の耐荷重性粒子としては、ジルコニア、シリカ、チタニア、クロム、ニッケル、コバルト、及びこれらの組み合わせ等を含むが、これらに限定されない、任意の既知の金属酸化物又はランタニド酸化物が挙げられる。
【0043】
粒子はコアシェルタイプの粒子を含んでもよく、それらの粒子は第1の材料が少なくとも第2の材料、例えば、金属被覆ガラス粒子及び金属被覆ポリマー粒子でコーティングされる。
【0044】
一実施形態では、耐荷重性粒子は、接着層内に均一に分散される。別の実施形態では、耐荷重性粒子は、変形可能な球体、又は楕円形に形作られた粒子であり、研磨物品が工作物に加えられた荷重下にあるとき、可撓性基板のプロフィールと更に順応することが可能である。一実施形態では、耐荷重性粒子は、工作物に加えられた荷重下で一旦変形すると、荷重が解除された後、変形した状態のままである。耐荷重性粒子の変形は、接着母材を剛性支持体と可撓性裏張りとの間の接触領域から移動させると考えられる。すなわち、かかる荷重と耐荷重性粒子が受ける変形量との間の平衡に到達する。
【0045】
いくらかの実施形態では、耐荷重性粒子のヤング率は、接着母材のヤング率の2倍を超える、接着母材のヤング率の10倍を超える、又は更には接着母材のヤング率の100倍を超えてもよい。いくらかの実施形態では、耐荷重性粒子のヤング率は、100MPaを越える、500MPaを越える、又は更には1GPaを超えてもよい。
【0046】
製造方法
本明細書に開示する研磨物品は、様々な異なるプロセスを使用して作製され得る。1つのプロセスでは、研磨シート(例えば、ラッピングフィルム)が感圧接着剤と共に供給される。次に、耐荷重性粒子が研磨シートの粘着側に塗布される。一実施形態では、耐荷重性粒子は重力供給方式を使用してPSAに塗布される。別の実施形態では、耐荷重性粒子は、静電気学的にライナーに引きつけられ、次に、米国特許出願公開第2010−0266812号に開示されるライナー移動方法を使用して研磨シートのPSAに移動される。
【0047】
別のプロセスでは、耐荷重性粒子は、接着母材を含まない研磨シートに塗布され得る。代わりに、耐荷重性粒子は、接着母材を使用して剛性支持体に直接塗布される。その後、研磨シートは剛性支持体に取り付けられる。
【0048】
更に別のプロセスでは、接着層は、接着母材に組み込まれた耐荷重性粒子と共に調製され、研磨シートに塗布され得る移動接着剤を作成し、次に、引き続き剛性支持体に接着される。あるいは、耐荷重性粒子を備える移動接着剤は剛性支持体に取り付けられ得、研磨シートはその後剛性基材に配置される。
【実施例】
【0049】
試験方法
ラッピング手順
研磨物品のライナーを取り外し、標準CNC切断技術を用いて作製された、外径16インチ(40.6cm)、内径8インチ(20.3cm)及び厚さ1.5インチ(3.8cm)の平らで環状形状のアルミニウムプラテンに研磨物品を取着した。研磨物品はナイフでトリミングして、プラテンの寸法に合わせた。3つのAlTiCクーポン(2.40cm×0.20cm×0.5cm)を、Lapmasterモデル15(Lapmaster International LLC(Mount Prospect,IL)から入手可能)のラッピング工具を使用して同時にラッピングした。研磨物品を備えたプラテンをラッピング工具の基部に取着した。直径15cm×1mmのAlTiCウェーハを、2部式エポキシ系接着剤、SCOTCHWELD DP100(3M Company(St.Paul,MN)から入手可能)接着剤を使用して、Lapmasterモデル15の直径5.5インチ(14.0cm)のリングの上面に取着した。同エポキシ系接着剤を使用して、3つのAlTiCクーポンをAlTiCウェーハ表面に取着した。クーポンを、ウェーハの半径4.5mmに沿って均等に間隔を置いて、すなわち、長さが半径に垂直である状態で互いに約120°離して取着した。2.40cm×0.20cmの表面がウェーハに取着されるようにクーポンを取着した。ラッピング条件は、ヘッドの回転20rpm、プラテンの回転40rpm、及び3時間のラッピング時間であった。1時間目の間、ヘッドに1kgの荷重を加え、2時間目の間4kgの荷重を加え、3時間目の間6kgの荷重を加えた。AlTiCクーポンを、研磨で覆われたプラテンの外径及び内径の範囲内である経路で回転させた。ラップ液を使用し、3時間のプロセス全体を通して0.36g/分の速度で無水エチレングリコールをプラテン上に滴下した。
【0050】
クラウン測定の手順
AlTiCクーポンの平坦度の測定を、表面形状測定装置、モデルP16(KLA−Tencor Corporation(Milpitas,CA)から入手可能)を使用してラッピング後に行った。それぞれのクーポンの0.2cm幅を横切って、表面形状測定装置を4回走査させた。4回の走査は、クーポンの長さに沿って約0.5cmのインクリメントで取られた。クラウンは、特定の表面形状測定装置の走査の最大高さと最小高さとの間の差として定義される。次に3つのクーポンから得た12の測定値を平均して、クラウンの平均値を得た。
【0051】
(実施例1)
感圧接着剤(PSA)付き、0.25micの676xyダイヤモンドラッピングフィルム(3M Companyから入手可能)の17インチ(43.2cm)×17インチ(43.2cm)のシートを、0.25インチ(6.35mm)×18インチ(45.7cm)×18インチ(45.7cm)のアルミニウムプレート上に研磨側を下にして置いた。シートの4角にマスキングテープを貼り、ラッピングフィルムをプレートに一時的に固定させた。ラッピングフィルムと共に供給された保護リリースライナーを取り外して、PSAを露出させた。
【0052】
約30gのIndalloy 281番、58Bi/42Sn、−500+635メッシュ(直径20〜25マイクロメートル)ビスマス−錫共晶合金耐荷重性粒子(Indium Corporation(Clinton,NY)から入手可能)を、ラッピングフィルムの一縁部に沿って一列に揃えてPSA上に置いた。耐荷重性粒子がPSAの上を流れるように、アルミニウムプレート及びラッピングフィルムを45°の角度に傾けて穏やかに軽くたたいた。PSAが耐荷重性粒子で完全に覆われるように、傾斜角度を増大させた。完全に覆われると、シートを90°の角度に保持し、軽くたたいて過剰の金属をPSAから取り除いた。リリースライナーを再び貼り、ライナーの裏面の表面にゴムローラーを手で転がして、金属粉をpsaに押し付けた。アルミニウムプレート及び研磨シートを炉を通る空気流に置き、70℃で17時間アニールした。プレート及び研磨シートを炉から取り出し、冷却させた。研磨シートがプレートから取り外され、研磨物品、実施例1が形成される。次に、実施例1を、前述のラッピング手順によって試験を行い、前述のクラウン測定手順によってクラウンを測定した(表1)。
【0053】
(実施例2)
Indalloy 281番、58Bi/42Sn粒子の代わりに、約10gの22マイクロメートルのウレタン耐荷重性粒子、Art Pearl C−300T(Negami Chemical Industrial Company(Nomi−city,Japan)から入手可能)を使用した以外は実施例1のように、実施例2を調製した。次に、実施例2を、前述のラッピング手順によって試験を行い、前述のクラウン測定手順によってクラウンを測定した(表1)。
【0054】
(実施例3)
Indalloy 281番、58Bi/42Sn粒子の代わりに、約10gのポリメチルメタクリレート(PMMA)耐荷重性粒子、MX 2000(Soken Chemical and Engineering Company,Ltd.(Tokyo,Japan)から入手可能)を使用した以外は実施例1と同様に、実施例3を調製した。次に、実施例3を、前述のラッピング手順によって試験を行い、前述のクラウン測定手順によってクラウンを測定した(表1)。
【0055】
(実施例4)
Indalloy 281番、58Bi/42Sn粒子の代わりに、約10gのPMMA耐荷重性粒子、MX 1000(Soken Chemical and Engineering Company,Ltd.(Tokyo,Japan)から入手可能)を使用した以外は実施例1と同様に、実施例4を調製した。次に、実施例4を、前述のラッピング手順によって試験を行い、前述のクラウン測定手順によってクラウンを測定した(表1)。
【0056】
比較例C1
PSA付き、0.25micの676xyダイヤモンドラッピングフィルム(3M Companyから入手可能)の17インチ(43.2cm)×17インチ(43.2cm)のシートをダイカットして、外径16インチ(40.6cm)×内径8インチ(20.3cm)の環状形状のシートを形成することで、比較例C1を調製した。更に、研磨シートのアニーリングは行わなかった。次に、比較例C1を、前述のラッピング手順(研磨シートのトリミングは必要としなかった)によって試験を行い、前述のクラウン測定手順によってクラウンを測定した(表1)。
【0057】
【表1】
図1
図2
図3
図4