(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871985
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】音響用導体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 13/00 20060101AFI20160216BHJP
B21C 1/00 20060101ALI20160216BHJP
C22F 1/08 20060101ALI20160216BHJP
C22C 9/00 20060101ALI20160216BHJP
H01B 5/02 20060101ALI20160216BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20160216BHJP
【FI】
H01B13/00 501C
B21C1/00 B
C22F1/08 C
C22C9/00
H01B5/02 Z
!C22F1/00 604
!C22F1/00 625
!C22F1/00 630A
!C22F1/00 630K
!C22F1/00 661A
!C22F1/00 682
!C22F1/00 683
!C22F1/00 685Z
!C22F1/00 686A
!C22F1/00 691B
!C22F1/00 691C
!C22F1/00 694A
!C22F1/00 694Z
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-81811(P2014-81811)
(22)【出願日】2014年4月11日
(65)【公開番号】特開2015-203126(P2015-203126A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2014年12月24日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 電気通信回線を通じた公開/ウェブサイトの掲載日:平成26年01月23日 ウェブサイトのアドレス:http://www.phileweb.com/interview/article/201401/23/217.html
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 電気通信回線を通じた公開/ウェブサイトの掲載日:平成26年01月22日 ウェブサイトのアドレス:http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20140122_629593.html
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 電気通信回線を通じた公開/ウェブサイトの掲載日:平成26年01月23日 ウェブサイトのアドレス:http://av.watch.impress.co.jp/docs/topic/20140123_629675.html
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 電気通信回線を通じた公開/ウェブサイトの掲載日:平成26年01月22日 ウェブサイトのアドレス:http://navigator.eir−parts.net/EIRNavi/DocumentNavigator/ENavigatorBody.aspx?cat=announcement&sid=15103&code=5758&ln=ja&tlang=ja&tcat=announcement&disp=simple/
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 電気通信回線を通じた公開/ウェブサイトの掲載日:平成26年01月22日 ウェブサイトのアドレス:http://promotion−works.com/pc−triplec.html 刊行物による公開/刊行物名:季刊・オーディオアクセサリー152号、発行年月日:26年2月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500356038
【氏名又は名称】FCM株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513323025
【氏名又は名称】株式会社プロモーション・ワークス
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】芥田 泰夫
(72)【発明者】
【氏名】白崎 賢治
(72)【発明者】
【氏名】矢口 正幸
【審査官】
高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−253514(JP,A)
【文献】
特開昭63−190203(JP,A)
【文献】
特許第2507723(JP,B2)
【文献】
特開平05−120927(JP,A)
【文献】
実開昭62−050813(JP,U)
【文献】
PCOCCを超える? 注目の新銅素材「PC-Triple C」開発者インタビュー,Phile-web,日本,ファイル・ウェブ編集部,2014年 1月23日,URL,http://www.phileweb.com/interview/article/201401/23/217.html
【文献】
PCOCCに代わるケーブル用素材「PC-Triple C」 ,AV Watch,日本,2014年 1月22日,URL,http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20140122_629593.html,http://www.phileweb.com/interview/article/201401/23/217_2.html,http://www.phileweb.com/interview/article/201401/23/217_3.html
【文献】
オーディオ界注目の新素材「PC-Triple C」とは何か? ,AV Watch,日本,2014年 1月23日,URL,http://av.watch.impress.co.jp/docs/topic/20140123_629675.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 11/00
H01B 1/02
B21C 1/00
C22C 9/00
C22F 1/08
H01B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無酸素銅からなり、結晶粒および結晶粒界が長手方向に指向する形状の音響用導体の製造方法であって、
無酸素銅線に対して、前記無酸素銅線の径方向に指向する形状の結晶粒および結晶粒界を前記無酸素銅線の長手方向に指向するとともに、軸心側部の前記結晶粒および結晶粒界の長手方向の指向性が外周側の外周側部の前記結晶粒および結晶粒界の長手方向の指向性より高くなる形状に、線材を縮径変形する鍛造工程を有し、
前記鍛造工程の後、
鍛造後の前記無酸素銅線を伸延してさらに縮径し、多数本の前記結晶粒および結晶粒界が前記長手方向に細く直線状に延びる伸延工程を有する
音響用導体の製造方法。
【請求項2】
前記鍛造工程を、前記無酸素銅線の送り方向に対して斜めに対向する打圧面を有したハンマを用いる回転鍛造により行う
請求項1に記載の音響用導体の製造方法。
【請求項3】
前記伸延工程の後、
伸延後の前記無酸素銅線を焼きなましする焼きなまし工程を有する
請求項1または2に記載の音響用導体の製造方法。
【請求項4】
前記無酸素銅線として高純度無酸素銅からなる銅線を用いた
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の音響用導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音響(オーディオ)機器に好適に用いられるような音響用導体に関し、より詳しくは、良好な導通特性を有し音響用として供するのに好適な音響用導体に関する。
【背景技術】
【0002】
音響機器には、アンプやスピーカなど家電や電子楽器、制作・設備用機材のほか、補聴器や超音波画像診断装置などの医療関連機材、騒音計などの測定機材等さまざまなものがある。これらの音響機器に用いられる音響用導体には、導通特性が要求されている。
【0003】
導通特性を有する導体として、下記特許文献1の信号伝送用銅線が提案されていた。
【0004】
特許文献1の信号伝送用銅線(銅導体)は、無酸素銅の単結晶組織又は長手方向の一方向凝固組織を有し、かつ導電率が100%IACS以上又は引張強さが20kg/mm
2以下という構成である。この銅導体は、無酸素銅を溶解し、加熱鋳型連続鋳造法により極力ゆっくりと鋳造して銅鋳塊を得て製造される。
【0005】
特許文献1の銅導体は、電気の流れを妨げる結晶粒界がないので優れた信号伝送特性を有し、音響機器の性能を向上できるが、製造に時間がかかる。
【0006】
なお、これまでの銅導体は、特許文献1の銅導体を含めて、銅鋳塊を圧延加工して荒引線に加工されたものを、伸延加工(伸線加工)し、続いて焼きなましすることによって製造されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2507723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、良好な導通特性を有する音響用導体を得ることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのための手段は、無酸素銅からなり、結晶粒および結晶粒界が長手方向に指向する形状
の音響用導体であって、前記結晶粒および結晶粒界が、径方向に指向する形状から長手方向に指向するとともに、軸心側部の前記結晶粒および結晶粒界の長手方向の指向性が外周側の外周側部の前記結晶粒および結晶粒界の長手方向の指向性より高くなる形状に、線材を縮径変形する鍛造によって変形され、前記鍛造後に伸延加工でさらに縮径され、多数本の前記結晶粒および結晶粒界が前記長手方向に細く直線状に延びた音響用導体である。
【0010】
音響用導体は、信号を伝送する信号導線のみならず音響機器に電力を供給する電源線にも用いられるものである。また「径方向に指向する形状」とは、結晶粒や結晶粒界の多くの形状・配列が径方向に長い状態であり、結晶構造が全体として径方向に延びている態様になっていることをいい、「長手方向に指向する形状」とは、結晶粒や結晶粒界の多くの形状・配列が長手方向に長い状態であり、結晶構造が全体として長手方向に延びている態様になっていることをいう。
【0011】
この構成の音響用導体では、導体の長手方向に指向する形状の結晶粒および結晶粒界が電気の流れを円滑にするため、良好な導通特性を有し、この音響用導体を用いた機器の音響特性を向上することができる。
【0012】
また、
前記結晶粒および結晶粒界が、径方向に指向する形状から長手方向に指向するとともに、軸心側部の前記結晶粒および結晶粒界の長手方向の指向性が外周側の外周側部の前記結晶粒および結晶粒界の長手方向の指向性より高くなる形状に、線材を縮径変形する鍛造によって変形されたものとすることができる
ため、鍛造を、小圧力で多数回、相対回転しながらハンマで打圧する回転鍛造で行うことによって、無酸素銅線の径方向に指向する形状の結晶粒および結晶粒界は、縮径変形にともなって長手方向に指向する形状に徐々に変形する。そして変形によって、音響用導体の結晶粒および結晶粒界は、特に軸心側部(軸心とその周辺の長手方向に連続する部分)において長手方向に指向する形状となり、軸心側部よりも外周側の外周側部でも長手方向に指向する形状となる。
【0013】
また、前記鍛造後に伸延加工でさらに縮径され、多数本の前記結晶粒および結晶粒界が前記長手方向に細く直線状に延びたものとすることにより、長手方向に指向する形状の結晶粒および結晶粒界は、さらに長手方向に長い形状・配置となる。詳しくは、軸心側部のみならず外周側部においても、鍛造後の伸延加工によって軸心側部と同様に長手方向に指向する形状となる。
【0014】
この発明の態様として、前述の無酸素銅は高純度無酸素銅とすることもできる。高純度無酸素銅とは、[JIS H 3100,C1020]で規定される無酸素銅のうち、Cu:99.99%以上、O
2:5ppm以下のものである。高純度無酸素銅における不純物が非常に少ない結晶粒界によって、電気の流れを阻害しにくくなる。
【0015】
課題を解決するための別の手段は、
無酸素銅からなり、結晶粒および結晶粒界が長手方向に指向する形状の音響用導体の製造方法であって、無酸素銅線に対して、前記無酸素銅線の径方向に指向する形状の結晶粒および結晶粒界を前記無酸素銅線の長手方向に指向する
とともに、軸心側部の前記結晶粒および結晶粒界の長手方向の指向性が外周側の外周側部の前記結晶粒および結晶粒界の長手方向の指向性より高くなる形状に、線材を縮径変形する鍛造工程を有し、
前記鍛造工程の後、鍛造後の前記無酸素銅線を伸延してさらに縮径し、多数本の前記結晶粒および結晶粒界が前記長手方向に細く直線状に延びる伸延工程を有する音響用導体の製造方法である。
【0016】
前述の鍛造工程により長手方向に指向する形状に変形された結晶粒および結晶粒界が、電気の流れを円滑にするため、良好な導通特性を有し、この音響用導体を用いた機器の音響特性を向上することができる。
【0017】
また
前記鍛造工程の後、鍛造後の前記無酸素銅線を伸延してさらに縮径し、多数本の前記結晶粒および結晶粒界が前記長手方向に細く直線状に延びる伸延工程を有するため、伸延工程による伸線によって所望の径の音響銅導体を得ることができるとともに、長手方向に指向する形状の結晶粒および結晶粒界をさらに長手方向に長い形状・配置にすることができる。
【0018】
この発明の態様として、前述の音響用導体の製造方法における前記鍛造工程は、前記無酸素銅線の送り方向に対して斜めに対向する打圧面を有したハンマを用いる回転鍛造により行うことができる。
【0019】
前述の打圧面は、無酸素銅線の送り方向で切断した断面視が直線となる面であるほか、曲線からなる面や、直線と曲線を組み合わせた面のいずれでもよい。ハンマが小圧力で多数回、相対回転しながら打圧することによって、無酸素銅線の径方向に指向する形状の結晶粒および結晶粒界は、長手方向に指向する形状に徐々に変形する。
【0020】
またこの発明の態様として、前記
伸延工程の後、伸延後の前記無酸素銅線を焼きなましする焼きなまし工程を有する
ため、さらに焼きなまし工程でひずみを取るとともに結晶粒を整えることができる。
【0021】
この発明の態様として、前述の無酸素銅線としては高純度無酸素銅からなる銅線を用いることもできる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、結晶粒および結晶粒界が導体の長手方向に指向する形状であることによって、電気の流れを阻害する径方向に延びる結晶粒界をなくす、又は大幅に低減できるので、電気の流れが円滑で良好な導通特性を有する音響用導体を提供することができる。このため、音響機器の音響特性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】鍛造工程から伸延工程までの結晶構造変化の模式図。
【
図3】高純度無酸素銅線の鍛造前後と鍛造中の結晶構造の変化を示す写真。
【
図6】観察対象たる製造過程の高純度無酸素銅線とその切断箇所を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明は、良好な導通特性を有する導体を得るという目的を、無酸素銅からなり、結晶粒および結晶粒界を長手方向に指向する形状とする構成で実現した。
【0025】
固体金属は結晶粒の集合体であり、結晶粒同士の境である結晶粒界には電流を阻害する不純物が集まりやすい。無酸素銅からなる導体であっても、導体の結晶粒および結晶粒界は、鍛造、圧延、伸線と順に加工した場合、導体の径方向に指向する形状となる。このため、前述のように結晶粒および結晶粒界を導体の長手方向に指向する形状とする変形と、導体を所望の太さに縮径するための加工を行う。この加工は、たとえば鍛造によって行える。
【0026】
この鍛造は、無酸素銅線の送り方向に対して斜めに対向する打圧面を有したハンマを用いる回転鍛造により行うとよい。ハンマは前述の変形とともに縮径を行うものであるため、打圧面は送り方向前方の方が後方よりも無酸素銅線に近くなる形状である。このハンマが小圧力で多数回連続して打圧することによって、結晶粒および結晶粒界の変形が良好に行えるとともに、縮径が行える。鍛造によって結晶粒および結晶粒界の変形を行うと、無酸素銅線内の空隙などを消滅させる利点もある。
【0027】
縮径を伴う鍛造を行うことによって、無酸素銅線の結晶粒および結晶粒界を長手方向に指向する形状に積極的に変形することができる。前述のような打圧面を有するハンマで鍛造を行うので、無酸素銅線の特に軸心側部においては長手方向への指向性がより高い形状に変形することが可能で、軸心側部よりも外周側の外周側部においても長手方向に指向性を有する形状となる。
【0028】
鍛造を行った後に、伸延(伸線)加工を行うと、鍛造により変形させた結晶粒及び結晶粒界をさらに長手方向に長い形状・配置に変形できるとともに、所望の太さに変形できるのでよい。特に、鍛造のみでは軸心側部に比べると長手方向への指向性が低かった外周側部においても、結晶粒および結晶粒界をより一層、長手方向に指向する形状とすることができる。伸延を行ったあとは、さらに焼きなましを行うと、ひずみを取り除けるとともに結晶粒が整えられるので、電気の流れをさらに円滑にすることができる。
【0029】
また、不純物が少ない材料を用いる方が電気の流れを阻害しにくくなるので、無酸素銅としては、銅が99.99%以上、酸素が5ppm以下の高純度無酸素銅を用いるのが好ましい。
【0030】
以下、この発明を実施するための一形態としての音響用導体とその製造方法を、図面を用いて説明する。
【0031】
図面において、
図1は音響用導体の製造工程を示すフロー図であり、
図2は鍛造工程から伸延工程までの結晶構造変化の模式図、
図3は高純度無酸素銅線の鍛造前後と鍛造中の結晶構造の変化を示す写真である。
図4は鍛造工程のハンマを示す断面図である。
図5は製造した音響用導体の断面写真である。
図6は製造過程の高純度無酸素銅線とその切断箇所を示す写真であり、
図7〜
図13は、
図6における各切断箇所の写真である。
【0032】
図1のフロー図に示すように、音響用導体は、無酸素銅を溶解して鋳造する鍛造工程n11と、銅鋳塊を圧延して荒引線に加工する圧延工程n12と、荒引線(無酸素銅線)に対して前述の鍛造を行って縮径する鍛造工程n13と、鍛造された無酸素銅線を伸線加工(伸延)する伸延工程n14と、伸延後の無酸素銅線を焼きなましする焼きなまし工程n15を経て製造される。常法により製造された荒引線に対して鍛造工程n13、伸延工程n14、焼きなまし工程n15を行って製造してもよい。
【0033】
このような工程のうち、鍛造工程から伸延工程までの結晶構造の変化を模式的に示したものが、
図2である。無酸素銅線21は送り方向に向かって手前側から順に、鍛造部22、伸延部24を通る。鍛造部22は複数のハンマ23を有する回転鍛造装置で構成し、伸延部24はダイス25で構成する。これら鍛造部22と伸延部24は別ラインで構成することも同一ラインで構成することもできる。
【0034】
鍛造工程n13に入る前において、多様な形の結晶粒は、無酸素銅線の長手方向よりも径方向に長くなっており、結晶粒と結晶粒界は全体として径方向に指向する形状、つまり全体して径方向に延びた状態であるが、鍛造工程n13(鍛造部22)で、結晶粒と結晶粒界は変形され、無酸素銅線21の長手方向に指向する形状となり、さらに伸延工程n14(伸延部24)において、延ばされた結晶粒と結晶粒界がさらに長手方向に延びる。
図3の写真は、高純度無酸素銅からなる銅線に対して鍛造をする前と鍛造中と、鍛造後の結晶構造を示す。
図3中、左から順に、鍛造前、鍛造中、鍛造後の写真である。
【0035】
鍛造は回転鍛造により行う。回転鍛造は、ハンマ23が無酸素銅線21を小圧力で多数回、無酸素銅線21の周方向に回転しつつ無酸素銅線21を送りながら連続して打圧する鍛造である。具体的には、
図2に示すように、複数のハンマ23を用いて無酸素銅線21を一直線上に前方に送りながら鍛造する。ハンマ23は、無酸素銅線21の送り方向(前方)に対して斜めに対向する打圧面26を有している。
【0036】
ハンマ23は、
図4に示したように、無酸素銅線21の全周を取り巻くように複数個、具体的には4個配設されており、無酸素銅線21を挟んで対向するハンマ23同士が無酸素銅線21を同時に打圧し、それぞれ交互に繰り返しながら回転する。回転は打圧と同期して行う。また、打圧面26による打圧が無酸素銅線21の全周面を均等に打圧できるように、打圧回数、回転数、送り量を設定している。具体的には、たとえば200〜300rpmで回転しながら200〜300回/分の打圧を行い、無酸素銅線21を10cm/分程度で送るとよい。
【0037】
このハンマ23の打圧面26は、4個のハンマ23が合わさって筒状になった場合に、円錐台状の周側面を形成する溝状の傾斜湾曲面26aと、この傾斜湾曲面の最も小径となる先端から前方に延びて、円筒状の周面を形成する溝状の延長円弧面26bを有する。
【0038】
傾斜湾曲面26aの後端は無酸素銅線21の入口となる部分で、傾斜湾曲面26aの後端、つまり無酸素銅線21の入口側の端は無酸素銅線21の直径よりも大径となる大きさである。この入口側の端には角アール部26cが形成されている。このような構成によって間口が広い状態となるので、無酸素銅線21を挿入しやすく、回転鍛造も円滑に行える。また無酸素銅線21が振動によりハンマ23の入り口側に当たって傷や凹みなどの損傷が発生するのを防止できる。
【0039】
延長円弧面26bは、無酸素銅線21の出口となる部分で、傾斜湾曲面26aの先端から一連に水平に延びている。つまり延長円弧面26bの大きさは全体をとおして傾斜湾曲面26aの最小径の部分と同一である。延長円弧面26bの先端、すなわち出口側の端には角アール部26dが形成されている。このような構成であるので、延長円弧面26bが鍛造部22から搬出される無酸素銅線21を規制し、支持する。このため、これから後方でなされる鍛造を安定して行わせることができるうえに、次工程での位置決めが容易になる。
【0040】
このような形状のハンマ23の打圧面26が全体で無酸素銅線21に対して打圧を行うので、長尺物を長手方向で安定して打圧でき、長手方向及び周方向でムラのない鍛造が行える。
【0041】
鍛造工程n13において縮径させる率(縮径率)は、所望する音響用導体の太さなどの様々な条件に応じて、たとえば70%などと、適宜設定される。ここでいう「縮径率」とは、断面積比の値であり、断面積aの無酸素銅線21を断面積bに縮径する場合の、(a−b)/aの演算式で得られる。
打圧面2
6の形状は縮径率を考慮して設定するとよい。
【0042】
前述の伸延工程n14は所望の太さになるように複数個のダイス25に通して行う。前述の焼きなまし工程n15は、材料や所望する導通特性等の条件に応じて所定時間、所定温度で行う。
【0043】
図5は、通常どおり鋳造工程n11、圧延工程n12を経て製造された高純度無酸素銅からなる荒引線を用いて、前述のような鍛造工程n13を介して音響用導体を製造したときの、音響用導体の長手方向に沿って切断した断面を示す写真である。
図5の2枚の拡大写真にみられるように、音響用導体の長手方向に指向する結晶粒および結晶粒界がみられる。
【0044】
音響用導体となる前の、鍛造工程前、鍛造工程中、鍛造工程後における荒引線(高純度無酸素銅線)の断面結晶構造を観察したところ、次のとおりであった。なお、この例における荒引線は断面円形で、鍛造工程前の直径が14.4mmであり、鍛造工程によって直径が10mmにまで縮小した。
【0045】
図6は、観察対象たる製造過程の無酸素銅線と、その切断箇所を示す写真、
図7〜
図13は、それぞれ
図6のA〜G部分の断面の写真である。A〜Gの符号を付した矢印の先に描かれた直線が切断箇所である。
【0046】
観察に際して、切断をするためのファインカッターとして、平和テクニカ製 HS−100Gを使用し、切断面の研磨のためのポリッシャーとして、リファインテック製 APU−138Bを使用し、撮像のためのCCDカメラとして、KEYENCE製 VHX−2000を使用した。
【0047】
図7は切断箇所A、
図8は切断箇所Bを示す。切断箇所AとBは鍛造前の部分であり、鍛鋳造と圧延で形成された高純度無酸素銅線の断面を示す。切断箇所Aは長手方向に沿って切断したもので、切断箇所Bは長手方向と直交する方向で切断したものである。いずれの写真においても、中心から外周方向に向けて結晶粒と結晶粒界が伸びている状態になっていることがわかる。
【0048】
図9は切断箇所C、
図10は切断箇所Dを示す。切断箇所Cは鍛造初期の部分、切断箇所Dは鍛造後期の部分を長手方向に沿って切断したものである。
図9の全体写真を見るとわかるように、鍛造中の部分(写真右側部分)の結晶粒および結晶粒界の方が、鍛造される前の部分(写真左側部分)の結晶粒および結晶粒界よりも、縦横の大きさの違いが小さい形状になっていることがわかる。そして、鍛造が進むと、
図10に示したように、結晶粒および結晶粒界が長手方向に指向する形状になっていることがわかる。
【0049】
図11は切断箇所E、
図12は切断箇所F、
図13は切断箇所Gを示す。いずれの箇所も鍛造後の部分で、切断箇所Gは切断箇所Fよりも、切断箇所Fは切断箇所Eよりも鍛造後時間が経過した部分である。
図11、
図12の全体写真を見るとわかるように、結晶粒および結晶粒界は長手方向に指向する形状になっている。特に軸心側部においては長手方向に指向する形状に変形できた。軸心側部のみならず、それより外周側の外周側部においても、明らかに長手方向に指向する形状となっている。
【0050】
また鍛造前の部分を示している
図7と比較して、結晶粒は小さく細くなって
いることもわかる。このことは、
図12と
図8を対比してもわかる。鍛造前の結晶粒は
図8に示したように大きく、結晶粒界は径方向に長く存在するが、鍛造後は
図12に示したように、結晶粒は小さく細くなっており、
図11、
図13と総合的に観察すると、結晶粒界は径方向よりも長手方向に長い形状である。
【0051】
鍛造工程n13によって前述のように結晶粒および結晶粒界は長手方向に指向する形状となるうえ、次の伸延工程n14による伸線でさらに、結晶粒および結晶粒界は長手方向に指向する形状となり、
図5に示したように結晶粒および結晶粒界が長手方向に多数本の細い直線状に延びた状態になる。鍛造工程n13によって長手方向に指向する形状となった外周側部の結晶粒および結晶粒界も軸心側部と同様に長手方向に指向する形状となっている。
【0052】
高純度無酸素銅からなる直径14.4mmの荒引線を鍛造工程で直径10mmまで縮径したのち、伸延工程で直径1.3mmに伸線して、加熱温度を360℃、加熱保持時間を1時間から2時間とする焼きなまし工程を経て音響用導体を得たところ、純度99.996%以上、導電率は101.5IACS%、抗張力は250MPa、伸びは35%となった。導通特性と音響特性に優れていることがわかる。
【0053】
このような音響用導体は、音響機器の信号ケーブルや機器用内部配線材、スピーカのボイスコイルなどに使用可能であり、これらに用いた場合には音質の劣化や歪の少ない伝送が可能である。つまり、音質は、ナチュラルで透明感もあり、非常に低重心で高密度、厚みのある純度の高いものとなる。
【0054】
また、電源ケーブルとして使用した場合には、劣化が少なく高い安定性が得られる。
【0055】
つまり、通常の方法で製造された荒引線に対して前述のような鍛造を行うことによって、優れた特性を有する音響用導体を得ることができる。
【0056】
以上の構成はこの発明を実施するための一形態の構成であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することができる。
【0057】
たとえば、鍛造を行うハンマは、前述の例では無酸素銅線の長手方向において1個備え、その打圧面の形状をすべてのハンマを合わせたときに円錐台状の周側面を形成する溝状としたが、無酸素銅線の長手方向に複数個配設して、これらの無酸素銅線に対する配設高さやストロークを違えて、前述のように結晶粒および結晶粒界の形状を変形する鍛造を行えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
21…無酸素銅線
22…鍛造部
23…ハンマ
24…伸延部
25…ダイス
26…打圧面