特許第5871995号(P5871995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5871995燃焼発電プラントのための空気予熱の方法および燃焼発電プラントを含むシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5871995
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】燃焼発電プラントのための空気予熱の方法および燃焼発電プラントを含むシステム
(51)【国際特許分類】
   F23L 15/00 20060101AFI20160216BHJP
   F28D 11/02 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   F23L15/00 A
   F28D11/02
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-127801(P2014-127801)
(22)【出願日】2014年6月23日
(65)【公開番号】特開2015-4507(P2015-4507A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2014年6月23日
(31)【優先権主張番号】13/923,936
(32)【優先日】2013年6月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503416353
【氏名又は名称】アルストム テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ ジャン
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−355979(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0237404(US,A1)
【文献】 特開昭64−088024(JP,A)
【文献】 特開2010−223580(JP,A)
【文献】 特開2011−220667(JP,A)
【文献】 特表2006−527350(JP,A)
【文献】 特表2013−506112(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02583938(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L15/00−15/04
F28D11/00−11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼発電プラントにおいて、燃焼用空気流還元塔ガス流および酸化塔ガス流との間で熱を伝達するための熱交換器であって、該熱交換器は、
燃焼用空気流を受け取るための第1の入口と、前記燃焼用空気流を排出するための第1の出口と、前記還元塔ガス流および酸化塔ガス流を受け取るための第2の入口と、前記還元塔ガス流および酸化塔ガス流を排出するための第2の出口とを有する、ハウジングと、
該ハウジング内に配置されたロータと、
該ロータに配置された熱交換エレメントであって、前記熱交換器は、少なくとも2つのセクタ、すなわち前記燃焼用空気流を受け取るために機能する第1のセクタと、該第1のセクタと向き合って配置されておりかつ前記還元塔ガス流、前記酸化塔ガス流、または、前記酸化塔ガス流および前記還元塔ガス流の両方を受け取るために機能する第2のセクタとを含む、熱交換エレメントと、
前記第1のセクタと前記第2のセクタとの間に配置された加圧された層であって、該加圧された層は、前記燃焼用空気流、前記還元塔ガス流および前記酸化塔ガス流よりも高い圧力である、加圧された層と、
を備え
前記第2のセクタは、3つのセクタに分割されており、そのうち2つのセクタは、酸化塔ガス流を受け取るように機能し、そのうち1つのセクタは、還元塔ガス流を受け取るように機能し、前記還元塔ガス流を受け取るように機能する1つのセクタは、前記酸化塔ガス流を受け取るように機能する2つのセクタによって包囲されており、前記酸化塔ガス流の圧力は、前記還元塔ガス流の圧力よりも高いことを特徴とする、熱交換器。
【請求項2】
前記加圧された層は、ガス処理ユニットからのベントガス、酸化塔ユニットからの酸化塔ガス流、または、ベントガスおよび酸化塔ガス流の両方を受け取るように機能する、請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記ロータは、ロータポストを中心にして回転する、請求項1又は2記載の熱交換器。
【請求項4】
前記熱交換器は、再生式空気予熱器である、請求項1から3のいずれか1項記載の熱交換器。
【請求項5】
前記加圧された層は、前記第2のセクタにおいて受け取られた酸化塔ガス流よりも高い圧力にある加圧された酸化塔ガス流を含む、請求項1から4のいずれか1項記載の熱交換器。
【請求項6】
熱交換器を通過する燃焼用空気流還元塔ガス流および/または酸化塔ガス流との間のガス漏れを低減する方法であって、該方法は、
請求項1から5のいずれか1項記載の熱交換器を提供し
前記還元塔ガス流および/または前記酸化塔ガス流から取り出された熱によって前記熱交換器の一部を加熱し、
前記還元塔ガス流および/または前記酸化塔ガス流からその熱を取り出す前記熱交換器の部分によって前記燃焼用空気流を加熱することを特徴とする、方法。
【請求項7】
燃焼発電プラントにおいて、燃焼用空気流還元塔ガス流および酸化塔ガス流との間で熱を伝達するための熱交換器であって、該熱交換器は、
前記燃焼用空気流を受け取るための第1の入口と、前記燃焼用空気流を排出するための第1の出口と前記還元塔ガス流および酸化塔ガス流を受け取るための第2の入口と、前記還元塔ガス流および酸化塔ガス流を排出するための第2の出口とを有する、ハウジングと、
該ハウジング内に配置されたロータと、
該ロータに配置された熱交換エレメントと、を備え、
前記熱交換器は、少なくとも2つのセクタ、すなわち、前記燃焼用空気流を受け取るために機能する第1のセクタと、前記第1のセクタと向き合って配置されておりかつ前記還元塔ガス流、前記酸化塔ガス流、または、前記還元塔ガス流および前記酸化塔ガス流の両方を受け取るために機能する第2のセクタと、を含み、前記燃焼用空気流の圧力は前記酸化塔ガス流の圧力よりも高く、
前記第2のセクタは、3つのセクタに分割されており、そのうち2つのセクタは、酸化塔ガス流を受け取るように機能し、そのうち1つのセクタは、還元塔ガス流を受け取るように機能し、前記還元塔ガス流を受け取るように機能する1つのセクタは、前記酸化塔ガス流を受け取るように機能する2つのセクタによって包囲されており、前記酸化塔ガス流の圧力は、前記還元塔ガス流の圧力よりも高いことを特徴とする、熱交換器。
【請求項8】
前記ロータは、ロータポストを中心にして回転する、請求項記載の熱交換器。
【請求項9】
熱交換器を通過する燃焼用空気流還元塔ガス流および/または酸化塔ガス流との間のガス漏れを低減する方法であって、該方法は、
請求項7又は8記載の熱交換器を提供し
前記還元塔ガス流および/または前記酸化塔ガス流から取り出された熱によって前記熱交換器の一部を加熱し、
前記還元塔ガス流および/または前記酸化塔ガス流からその熱を取り出す前記熱交換器の部分によって前記燃焼用空気流を加熱することを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか1項記載の熱交換器を含むケミカルルーピングシステム。
【請求項11】
複数の2セクタ空気予熱器、複数の4セクタ予熱器、または、2セクタ空気予熱器と4セクタ予熱器との組合せを含む、請求項10記載のケミカルルーピングシステム。
【請求項12】
請求項7又は8記載の熱交換器を含むケミカルルーピングシステム。
【請求項13】
複数の2セクタ空気予熱器、複数の4セクタ予熱器、または、2セクタ空気予熱器と4セクタ予熱器との組合せを含む、請求項12記載のケミカルルーピングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼発電プラントのための空気予熱の方法、および燃焼発電プラントにおける空気予熱を可能にするシステムに関する。本開示は、燃焼発電プラントにおける空気予熱を可能にするシステムを有するケミカルルーピング設備にも関する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明の主体は、米国エネルギー省(DOE)との研究契約である契約番号DE−FE0009484に基づいて開発された。米国政府は、本発明において何らかの権利を有する。
【背景技術】
【0003】
ケミカルルーピングは、石炭、バイオマスおよびその他の燃料などの燃料を燃焼する発電プラントにおいて利用することができる近年開発されたプロセスである。ケミカルルーピングプロセスは、既存の発電プラントまたは新規の発電プラントにおいて実施することができ、他の利点の中でも特に、プラント寸法の縮小、エミッションの減少、およびプラント運転効率の増大の観点から、将来性のある改善を提供する。
【0004】
図1は、酸化塔4および還元塔6を有するケミカルルーピングシステム2を示している。酸化塔4において、硫化カルシウム(CaS)または金属(“Me”と示されている)などの固体酸素キャリヤが、空気から取り出された酸素によって酸化させられる。例えば、硫化カルシウムは酸化塔4において硫酸カルシウムに酸化させられる。主に窒素、少量の酸素およびその他のガス種を含む、酸素除去された空気は、酸化塔から排気として放出される。次いで、硫酸カルシウムは還元塔6へ搬送され、還元塔6において、硫酸カルシウムは、酸素の放出とともに硫化カルシウムに還元される。放出された酸素は、還元塔6に供給される燃料を燃焼させるために使用される。還元塔6における燃料の燃焼は、主に二酸化炭素と、少量の水およびその他のガス種(排ガス)とを生成する。還元塔6からの還元された硫化カルシウムは、酸化塔4へ排出される。
【0005】
要するに、ケミカルルーピングシステムは、高温プロセスを利用し、この場合、カルシウムベースまたは金属ベースの化合物などの固体が、酸化塔(または空気反応塔)と称される第1の反応塔と、還元塔(または燃料反応塔)と称される第2の反応塔との間を“ループ”させられる。酸化塔では、酸化塔内へ噴射された空気からの酸素が、酸化反応において固体によって捕捉される。次いで、捕捉された酸素は、酸化された固体によって還元塔へ搬送され、例えば石炭などの燃料の燃焼および/またはガス化のために利用される。還元塔における還元反応の後、もはや捕捉された酸素を有さない固体は、酸化塔へ戻され、再び酸化させられる。このサイクルが繰り返される。
【0006】
ケミカルルーピングシステムでは、酸化塔から出たガスは、少量の酸素およびその他のガス種とともに主に窒素を含んでおり、還元塔から出たガスは、少量の水およびその他のガス種とともに主に二酸化炭素を含んでいる。酸化塔からの排ガスは、その熱エネルギが利用された後、空気中へベントされる。還元塔からの排ガスは、さらなる浄化のためにガス処理ユニットへ搬送され、最後に、高純度二酸化炭素となる。
【0007】
酸化塔は空気によって流動化されており、還元塔は、循環させられた高濃度二酸化炭素によって流動化されているので、両排ガス流からの回収熱によって空気を予熱することが望ましい。排ガス流から得られた熱によって、酸化塔へ供給される空気を予熱するために、空気予熱器が使用される。
【0008】
様々なタイプの空気予熱器が存在する。プレートおよび管タイプの空気予熱器は、空気側とガス側との間の漏れを生じないが、通常、その低い熱回収効率により、より小さな用途において使用される。高い熱回収効率を有する回転再生タイプ空気予熱器は、主に、発電所規模の発電プラントにおいて利用される。しかしながら、このような回転再生式空気予熱器における漏れは不可避である。漏れを最小限に減じるために特別の設計手段が要求される。
【0009】
図2Aおよび図2Bは、概して、慣用の空気予熱器10、特に、回転再生式空気予熱器10を示している。空気予熱器10は、ハウジング14に回転可能に取り付けられたロータ12を有する。ロータ12は、ロータポスト18からロータ12の外周に向かって半径方向外方へ延びた隔壁16を有する。隔壁16は、熱交換エレメントバスケットアセンブリ22を収容するために、それらの間に室20を形成している。各熱交換バスケットアセンブリ22は、一般的に熱交換エレメント42と称される、熱伝達面の特別に形成されたシートの所定の有効熱伝達面積(通常は数千平方フィートのオーダである)を有する。
【0010】
慣用の回転再生式空気予熱器10では、煙道ガス流28と、燃焼用空気流34とは、ロータ12のそれぞれの反対の側からロータ12に進入し、熱交換エレメントバスケットアセンブリ22に収容された熱交換エレメント42上を実質的に反対方向に通過する。特に、低温空気入口30および冷却された煙道ガス出口26は熱交換器の第1の側(概して低温端部44と称される)に配置されているのに対し、高温煙道ガス入口24および加熱された空気出口32は、空気予熱器10の第1の側とは反対側の第2の側(概して高温端部46と称される)に配置されている。セクタプレート36は、ロータ12の上面および下面に隣接してハウジング14を横切って延びている。第2のプレート36は、空気予熱器10を空気セクタ38と煙道ガスセクタ40とに分割している。
【0011】
図2Aおよび図2Bに示された矢印は、ロータ12を通る煙道ガス流28および燃焼用空気流34の移動方向、ならびにロータ12の回転方向を示している。図2Aおよび図2Bに示したように、煙道ガス流28は高温煙道ガス入口24を通って進入し、煙道ガスセクタ40に配置された室20に取り付けられた熱交換エレメントバスケットアセンブリ22における熱交換エレメント42に熱を伝達する。次いで、煙道ガス流28から伝達された熱によって加熱された熱交換エレメントバスケットアセンブリ22は、空気予熱器10の空気セクタ38へ回転させられる。次いで、熱交換エレメントバスケットアセンブリ22からの熱は、低温空気入口30を通って進入する燃焼用空気流34に伝達される。今や冷却された煙道ガス流28は、冷却された煙道ガス出口26を通って予熱器10から出るのに対して、今や加熱された燃焼用空気流34は、空気出口32を通って予熱器10から出る。
【0012】
図2Cを参照すると、ロータ12が、ハウジング14の内部にはまり込むように寸法決めされていることが見て取れる。しかしながら、ロータ12とハウジング14との間の空間によって内部空隙95が形成されている。高温煙道ガス入口24と加熱された空気出口32との間の差圧により、空気セクタ38(図2B)における燃焼用空気流34の一部は、内部空隙95を介して空気予熱器10の煙道ガスセクタ40内へ進入し、これにより、煙道ガス流28を空気で汚染する。特に、図2Dに示したように、燃焼用空気流34の一部は、空気セクタ38から煙道ガスセクタ40へ第1の経路LG1に沿って流れる。加えて、煙道ガス流28の複数の部分は、第2の経路LG2に沿って高温煙道ガス入口24から直接に、冷却された煙道ガス出口26へ内部空隙95を通って流れることにより、ロータ12をバイパスし、これにより、空気予熱器10の効率を低下させる。同様に、燃焼用空気流34の他の複数の部分は、第3の経路LG3に沿って低温空気入口30から直接に、加熱された空気出口32へ内部空隙95を通って流れることにより、ロータ12をバイパスし、空気予熱器10の効率をさらに低下させる。
【0013】
第1の経路LG1に沿った空気セクタ38から煙道ガスセクタ40への燃焼用空気流34の漏れ(概して空気漏れと称される)は、発電プラント排気流における煙道ガス体積を増大させる。その結果、空気予熱器10の下流における機器において圧力降下が増大し、これにより、誘引通風(ID)ファン(図示せず)などの構成部材における補助電力消費を増大させる。同様に、空気漏れによる煙道ガス体積の増大は、例えば湿式煙道ガス脱硫(WFGD)ユニット(図示せず)またはその他の煙道ガス浄化機器などのその他の発電プラント構成部材のための寸法および/または能力要求を高める。その結果、発電プラントの建設、運転およびメンテナンスに関連するコストが空気漏れにより実質的に増大される。
【0014】
さらに、二酸化炭素(CO2)捕捉のためのガス処理ユニット(図示せず)が装備された発電プラントでは、漏れ減少はさらに一層有益である。例えば、ガス処理ユニットを設計するとき、空気漏れが考慮される必要がある。空気漏れを補償するためにガス処理ユニットを大型化することは高価である。加えて、ガス処理ユニットにおけるガス圧縮機は、空気漏れにより、より多くのガス流を圧縮する必要があり、このことは、さらに、補助電力需要を増大させる。
【0015】
慣用の空気予熱器10に関連した前記問題を考慮し、空気セクタ38から煙道ガスセクタ40への燃焼用空気流34の漏れを最小限に減じるために空気予熱器10において一連のシールを使用することなどによって、空気漏れを減じるための試みにおいて幾つかのステップが取られてきた。図3Aを参照すると、例えば、慣用の空気予熱器110は、ハウジング114に取り付けられたロータ112を有する。ロータ112は、ロータポスト118を有し、ハウジング114の内部にはまり込むように寸法決めされている。空気漏れを最小限に減じるために、シール220,222,224,226,228および230が設けられている。シール220,222,224,226,228および230は、ハウジング114の内面から内方へロータ112に向かって延びており、煙道ガスセクタ40(図2B)における煙道ガス流28内へ進入する、空気セクタ38(図2B)における燃焼用空気流34の量を減じるために、内部空隙195内の空間に配置されている。特に、図3Aおよび図3Bに示したように、シール222および224は、高温煙道ガス入口124を通じて煙道ガス流28を受け取るプレナム“A”を画成している。同様に、シール220および230は、プレナム“B”を画成しており、このプレナム“B”から、ロータ112を通過した煙道ガス流28が、冷却された煙道ガス出口126を通じて排出される。さらに、シール220および228は、低温空気入口130を通じて燃焼用空気流34を受け取るプレナム“C”を画成しており、シール222および226は、プレナム“D”を画成しており、このプレナム“D”から、ロータ112を通過した空気流34は、加熱された空気出口132を通じて排出される。シール220および222は、プレナム“E”も画成しているのに対し、シール224および226はプレナム“F”を画成している。シール228および230の間にはロータポスト118が配置されており、シール228および230は、図3Aおよび図3Bに示したように、プレナム“G”をも形成している。
【0016】
つまり、空気漏れを減じるための努力において、慣用の空気予熱器110は、シール220,222,224,226,228および230を有している。空気加熱器漏れは、大部分が、低温状態から高温状態に加熱された後のロータのたわみによるものである。ロータの高温端部は、ロータの低温端部よりも軸方向にたわみ、したがって、シールの間のそれぞれの間隙は異なり、これは、例えば、それぞれプレナム“F”および/または“G”を通じた、プレナム“D”および/または“C”からそれぞれプレナム“A”および/または“B”への漏れに寄与する。ここで、例えば第1の経路LG1(図3C)に沿った空気漏れを図3Dおよび図3Eを参照しながらさらに詳細に説明する。
【0017】
図3Dは、慣用の3セクタ再生式空気予熱器310の平面図である。3セクタ再生式空気予熱器310では、シール332,334および336が設けられており、空気予熱器310の内部を3つのプレナム360,362および364に分割している。特に、プレナム360は、一次空気(PA)プレナム360であり、概して、3つのプレナム360,362および364の最も高い圧力レベルを有する。プレナム362は、二次空気(SA)プレナム362であり、概して、3つのプレナム360,362および364の二番目に高い圧力レベルを有しており、プレナム364は、煙道ガス(FG)プレナム364であり、3つのプレナム360,362および364の最も低い圧力レベルを有している。つまり、PAプレナム360における圧力はSAプレナム362およびFGプレナム364における圧力よりも高く、SAプレナム362における圧力は、FGプレナム364における圧力よりも高いが、PAプレナム360における圧力よりも低く、FGプレナム364における圧力はPAプレナム360およびSAプレナム362の圧力よりも低い。
【0018】
図3Eは、慣用の4セクタ再生式空気予熱器410の平面図である。4セクタ再生式空気予熱器410では、シール432,433,434および435が設けられており、空気予熱器410の内部を4つのプレナム460,462,463および464に分割している。プレナム460は、PAプレナム460であり、概して、4つのプレナム460,462,463および464の最も高い圧力レベルを有する。プレナム462および463は、等しい圧力(および概して4つのプレナム460,462,463および464の二番目に高い圧力レベル)を有するSAプレナム462,463であるのに対し、プレナム464はFGプレナム464であり、4つのプレナム460,462,463および464の最も低い圧力レベルを有している。
【0019】
図3Dおよび図3Eでは、点線の矢印(“Flow”で示されている)は、より高圧のプレナムから比較的低圧のプレナムへのガス流を示している。特に、慣用の3セクタ再生式空気予熱器310では、図3Dに示したように、空気漏れは、PAプレナム360およびプレナム362の両方からFGプレナム364内へ生じる。同様に、慣用の4セクタ再生式空気予熱器410では、図3Eに示したように、空気漏れは、両SAプレナム462および463からFGプレナム464内へ生じる。概して、前記予熱器は、4つのセクタ(プレナム)を有しており、煙道ガスは最も大きなセクタを流過するのに対し、一次空気および二次空気は3つの他のより小さなセクタを通過する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
シールを使用しているにもかかわらず、空気漏れを防止するように設計されたシールの追加にもかかわらず、慣用の空気予熱器においては依然として空気漏れが生じる。したがって、空気漏れが実質的に低減されたおよび/または有効に最小限に減じられた空気予熱器を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0021】
第1のガス流と第2のガス流との間で熱を伝達するための熱交換器であって、該熱交換器は、
ハウジングであって、第1のガス流を受け取るための第1の入口プレナムと、第1のガス流を排出するための第1の出口プレナムと、第2のガス流を受け取るための第2の入口プレナムと、第2のガス流を排出するための第2の出口プレナムとを有しており、第1のガス流は燃焼用空気流を含み、第2のガス流は還元塔ガス流および酸化塔ガス流を含む、ハウジングと、
該ハウジング内に配置されたロータと、
該ロータに配置された熱交換エレメントであって、前記熱交換器は、少なくとも2つのセクタ、すなわち燃焼用空気流を受け取るために機能する第1のセクタと、第1のセクタと向き合って配置されておりかつ還元塔ガス流、酸化塔ガス流または酸化塔ガス流および還元塔ガス流の両方を受け取るために機能する第2のセクタとを含む、熱交換エレメントと、
第1のセクタと第2のセクタとの間に配置された加圧された層であって、該加圧された層は、前記燃焼用空気流、前記還元塔ガス流および前記酸化塔ガス流よりも高い圧力である、加圧された層と、
を備える熱交換器が、ここに開示される。
【0022】
熱交換器を通過する第1のガス流と第2のガス流との間のガス漏れを低減する方法であって、該方法は、
熱交換器を提供し、該熱交換器は、
ハウジングであって、該ハウジングは、第1のガス流を受け取るための第1の入口プレナムと、第1のガス流を排出するための第1の出口プレナムと、第2のガス流を受け取るための第2の入口プレナムと、第2のガス流を排出するための第2の出口プレナムとを有し、第1のガス流は燃焼用空気流を含み、第2のガス流は還元塔ガス流および酸化塔ガス流を含む、ハウジングと、
該ハウジング内に配置されたロータと、
該ロータに配置された熱交換エレメントであって、前記熱交換器は、少なくとも2つのセクタ、すなわち燃焼用空気流を受け取るために機能する第1のセクタと、第1のセクタと向き合って配置されておりかつ還元塔ガス流、酸化塔ガス流または還元塔ガス流および酸化塔ガス流の両方を受け取るために機能する第2のセクタとを含む、熱交換エレメントと、
第1のセクタと第2のセクタとの間に配置された加圧された層であって、該加圧された層は、燃焼用空気流、還元塔ガス流および酸化塔ガス流よりも高い圧力である、加圧された層と、を備え、
還元塔ガス流および/または酸化塔ガス流から取り出された熱によって熱交換器の一部を加熱し、
還元塔ガス流および/または酸化塔ガス流からその熱を取り出す熱交換器の部分によって燃焼用空気流を加熱する方法も、ここには開示される。
【0023】
第1のガス流と第2のガス流との間で熱を伝達するための熱交換器であって、該熱交換器は、
ハウジングであって、第1のガス流を受け取るための第1の入口プレナムと、第1のガス流を排出するための第1の出口プレナムと、第2のガス流を受け取るための第2の入口プレナムと、第2のガス流を排出するための第2の出口プレナムとを有し、前記第1のガス流は、燃焼用空気流を含み、前記第2のガス流は、還元塔ガス流または酸化塔ガス流を含む、ハウジングと、
該ハウジング内に配置されたロータと、
該ロータに配置された熱交換エレメントと、を備え、
前記熱交換器は、少なくとも2つのセクタ、すなわち、燃焼用空気流を受け取るために機能する第1のセクタと、第1のセクタと向き合って配置されておりかつ還元塔ガス流、酸化塔ガス流または酸化塔ガス流および還元塔ガス流の両方を受け取るために機能する第2のセクタと、を含み、前記燃焼用空気流の圧力は前記酸化塔ガス流の圧力よりも高い、第1のガス流と第2のガス流との間で熱を伝達するための熱交換器もここに開示される。
【0024】
熱交換器を通過する第1のガス流と第2のガス流との間のガス漏れを低減する方法であって、該方法は、
熱交換器を提供し、該熱交換器は、
ハウジングであって、第1のガス流を受け取るための第1の入口プレナムと、第1のガス流を排出するための第1の出口プレナムと、第2のガス流を受け取るための第2の入口プレナムと、第2のガス流を排出するための第2の出口プレナムとを有し、第1のガス流は燃焼用空気流を含み、第2のガス流は、還元塔ガス流、酸化塔ガス流、または還元塔ガス流および酸化塔ガス流の両方を含む、ハウジングと、
該ハウジング内に配置されたロータと、
該ロータに配置された熱交換エレメントと、を備え、
前記熱交換器は、少なくとも2つのセクタ、すなわち燃焼用空気流を受け取るために機能する第1のセクタと、第1のセクタと向き合って配置されておりかつ還元塔ガス流、酸化塔ガス流または還元塔ガス流および酸化塔ガス流の両方を受け取るために機能する第2のセクタと、を含み、燃焼用空気流の圧力は酸化塔ガス流の圧力よりも高く、
還元塔ガス流および/または酸化塔ガス流から取り出された熱によって熱交換器の一部を加熱し、
還元塔ガス流および/または酸化塔ガス流からその熱を取り出す熱交換器の部分によって燃焼用空気流を加熱する、熱交換器を通過する第1のガス流と第2のガス流との間のガス漏れを低減する方法もここに開示される。
【0025】
ここに開示された熱交換器を含むケミカルルーピングシステムもここに開示される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】酸化塔および還元塔を有するケミカルルーピングシステムを示している。
図2A】慣用の再生式空気予熱器を示している。
図2B】慣用の再生式空気予熱器の別の図を示している。
図2C】ハウジング内にはめ込むように寸法決めされたロータを示している。
図2D】予熱器における漏れ経路を示している。
図3A】漏れを最小限に減じるためにシールを使用することによって形成された空気予熱器におけるプレナムを示している。
図3B】漏れを最小限に減じるためにシールを使用することによって形成された空気予熱器におけるプレナムの別の図である。
図3C】空気予熱器における漏れを減じる1つの形式を示している。
図3D図3Cの空気予熱器における漏れを減じるためのプレナムを示している。
図3E図3Cの空気予熱器における漏れを減じるためのプレナムを示している。
図4A】開示された再生式空気予熱器を示している。
図4B】慣用の再生式空気予熱器の別の図を示している。
図5】空気予熱器のガス側から空気側へ熱を伝達するための4つのセクタを有する空気予熱器の1つの実施の形態を示している。
図6】空気予熱器の空気側からガス側への漏れを減じる空気予熱器における加圧された層の1つの実施の形態を示している。
図7】空気予熱器の空気側からガス側への漏れを減じる空気予熱器における加圧された層の別の実施の形態を示している。
図8】空気予熱器の空気側からガス側への漏れを減じる空気予熱器における加圧された層の1つの実施の形態を示している。
図9】ここで詳述された空気予熱器を有するケミカルルーピング発電プラントを示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
ここでは予熱器が開示され、予熱器は、2つ以上のセクタを有し、これらのセクタにおいて、酸化塔排ガスおよび還元塔排ガスがガスセクタを通過する間に、予熱される必要がある酸化塔への空気(金属または硫化カルシウムを酸化させるためにこの空気から酸素が得られる)が空気セクタを通過する。1つの実施の形態では、予熱器は、3つ以上のセクタ、特に少なくとも4つのセクタを有し(すなわち4セクタ予熱器である)、これらのセクタにおいて、予熱される空気は、最も大きなセクタを通じて搬送されるのに対し、3つのより小さなセクタは、これらを通って高温の排ガスを搬送するために使用される。3つのセクタのうちの2つは、酸化塔からの高温の排ガスを搬送するために使用されるのに対し、残りのセクタは、還元塔からの高温の排ガスを搬送するために使用される。高温の排ガス(煙道ガスとも称される)を搬送するセクタを含む予熱器の側は、“ガス側”と称されるのに対し、酸化塔へ空気を搬送するセクタを含む予熱器の側は、予熱器の“空気側”と称される。燃焼後に酸化塔から出てくる煙道ガス流は、酸化塔ガス流と称され、燃焼後に還元塔から出てくる煙道ガス流は、還元塔ガス流と称される。
【0028】
1つの実施の形態では、酸化塔排ガスを搬送する2つのセクタは、還元塔排ガスを搬送するセクタの両側に配置されている。これらのセクタにおけるガス圧力が注意深く設計されている、すなわち、還元塔ガスセクタにおける圧力が酸化塔ガスセクタにおける圧力以下であるならば、この配列は、還元塔排ガスを搬送するセクタから、酸化塔排ガスを搬送するセクタへの二酸化炭素漏れの可能性を最小限に減じ得る。これは、二酸化炭素が大気中へ排出される可能性を最小限に減じる。なぜならば、酸化塔排ガスは、主に窒素および酸素を含んでいるからである(図1)。酸化塔排ガス流への空気汚染は、この配列の結果として生じ得るが、これは、問題を惹起しない。
【0029】
図4Aおよび図4Bは、概して回転再生式空気予熱器100を示している。空気予熱器1000は、ハウジング1004に回転可能に取り付けられたロータ1002を有する。ロータ1002は、ロータポスト1008からロータ1002の外周に向かって半径方向外方へ延びた隔壁1006を有する。隔壁1006は、熱交換エレメントバスケットアセンブリ1022を収容するために、それらの間に室1020を形成している。各熱交換バスケットアセンブリ1022は、一般的に熱交換エレメント1042と称される、熱伝達面の特別に形成されたシートの所定の有効熱伝達面積(通常は数千平方フィートのオーダである)を有する。
【0030】
回転再生式空気予熱器1000では、煙道ガス流1028(図4Aにそれぞれ流れ1028Aおよび1028Bとしてここでは示されている、酸化塔および還元塔からの排気を含む)と、燃焼用空気流1034とは、ロータ1002のそれぞれ反対の側からロータ1002に進入し、熱交換エレメントバスケットアセンブリ1022に収容された熱交換エレメント1042上を実質的に反対方向に通過する。特に、低温空気入口1030および冷却された煙道ガス出口1026は熱交換器の第1の側(概して低温端部1044と称される)に配置されているのに対し、高温煙道ガス入口1024および加熱された空気出口1032は、空気予熱器1000の第1の側とは反対側の第2の側(概して高温端部1046と称される)に配置されている。セクタプレート1036は、ロータ1002の上面および下面に隣接してハウジング1004を横切って延びている。セクタプレート1036は、空気予熱器1000を空気セクタ1038と煙道ガスセクタ1040とに分割している。
【0031】
図4Aおよび図4Bに示された矢印は、ロータ1002を通る煙道ガス流1028および燃焼用空気流1034の移動方向、ならびにロータ1002の回転方向を示している。図4Aおよび図4Bに示したように、(ここでは酸化塔ガス流としても知られる、酸化塔からの)煙道ガス流1028Aと、(ここでは還元塔ガス流としても知られる、還元塔からの)煙道ガス流1028Bとは、高温煙道ガス入口1024を通って進入し、煙道ガスセクタ1040に配置された室1020に取り付けられた熱交換エレメントバスケットアセンブリ1022における熱交換エレメント1042に熱を伝達する。次いで、煙道ガス流1028から伝達された熱によって加熱された熱交換エレメントバスケットアセンブリ1022は、空気予熱器1000の空気セクタ1038へ回転させられる。次いで、熱交換エレメントバスケットアセンブリ1022からの熱は、低温空気入口1030を通って進入する燃焼用空気流1034に伝達される。今や冷却された煙道ガス流1028は、冷却された煙道ガス出口1026を通って予熱器1000から出るのに対して、今や加熱された燃焼用空気流1034は、空気出口1032を通って予熱器1000から出る。
【0032】
前に詳述したように、(酸化塔および還元塔から出てくる)排ガスと、酸化塔における(金属および/または硫化カルシウムを酸化させるために使用される)空気との混合が、予熱器において生じる恐れがある。混合を最小限に減じるために、それぞれのセクタの間に配置されたシールを用いることができる。
【0033】
図5は、4つのセクタに分割された予熱器1000の平面図を示している。(図4Aおよび図4Bに関連した)図5は、4つのセクタ、すなわち、予熱器1000を通じて空気(すなわち燃焼用空気流1034)を酸化塔へ搬送するための第1のセクタ2002と、酸化塔からの排ガス(以下酸化塔ガス流という)を搬送するための第2のセクタ2004および第4のセクタ2008と、還元塔からの排ガス(以下還元塔ガス流)を搬送するための第3のセクタ2006とに分割されている。還元塔ガス流1028Bを搬送する第4のセクタ2006は、酸化塔ガス流1028Aを搬送する2つのセクタ2004および2008の間に位置している。(太線によって示された)図5における矢印は、差圧によって生ぜしめられかつセクタ2002,2004,2006および2008の間で生じる漏れの方向を示している。それぞれのセクタにおける圧力は、第1のセクタ2002から第2および第4のセクタ2004および2008それぞれに向かって全ての漏れが生じるように選択されている。第2および第4のセクタ2004および2008からの漏れは、セクタ2006に向かって生じる。
【0034】
燃焼用空気流1034(図4A参照)は、予熱器1000の第1のセクタ2002に進入する。セクタ2002における燃焼用空気流1034の圧力P1は、セクタ2004および2008における酸化塔ガス流1028Aの圧力P2よりも高い。圧力P1は、また、セクタ2006における還元塔ガス流1028の圧力P3よりも高い。セクタ2006における還元塔ガス流1028Bの圧力P3は、セクタ2004および2008における酸化塔ガス流1028Aの圧力P2以下である。言い換えれば、圧力P1は圧力P2よりも高く、圧力P2自体は圧力P3以上である。1つの実施の形態では、P2は、P3よりも高いかまたはほぼ等しいことができる。
【0035】
煙道ガス流の圧力(すなわち酸化塔ガス流または還元塔ガス流の圧力)よりも高い燃焼用空気流圧力の使用は、還元塔流に存在する二酸化炭素が燃焼用空気流を汚染することを防止する。燃焼用空気流から酸化塔ガス流および還元塔ガス流への漏れは最小限に減じられる。燃焼用空気流1034からの空気による酸化塔ガス流1028Aおよび還元塔ガス流1028Bの汚染は、ケミカルルーピングシステム、および予熱器から出てくる排気流に対する損傷を生じない。P3と等しいかまたはそれよりも高くなるようにP2を選択することによって、セクタ間で生じる、差圧によって引き起こされる全ての漏れは、酸化塔ガス流1028Aから還元塔ガス流1028Bへ向かう方向で生じる。
【0036】
既に前に詳述したように、酸化塔ガス流1028Aおよび還元塔ガス流1028Bによるそれぞれのバスケットアセンブリ1022の加熱時に、バスケットは次いで空気予熱器1000の空気セクタ1038へ回転させられる。次いで、熱交換エレメントバスケットアセンブリ1022からの熱は、低温空気入口1030を通じて進入する燃焼用空気流1034へ伝達され、これにより、燃焼用空気流1034は、酸化塔(図示せず)に進入する前に予熱される。
【0037】
1つの実施の形態(図示せず)では、還元塔ガス流1028Bは流れ抵抗装置(または絞り装置)を通じて搬送されてもよく、この装置は、運転中に酸化塔ガス流の圧力よりも常に低くなるように還元塔ガス流の圧力を調節する。酸化塔ガス流と還元塔ガス流との間の差圧信号によって制御されるダンパは、このような流れ絞り装置の一例である。
【0038】
図6に示された1つの実施の形態では、予熱器1000は、セクタ2002と、セクタ2004,2006および2008との間に配置された加圧された層2012を有してもよい。1つの実施の形態では、空気予熱器の入口側(1028A)または出口側(図示せず)からの酸化塔ガス流1028Aは、加圧され、第1のセクタ2002において使用される圧力P1よりも高い圧力P4で、加圧された層2012内へ排出されてもよい。セクタの間で差圧により引き起こされる漏れは、図6に実線の矢印で示されている。圧力P1よりも高い圧力P4を利用することにより、酸化塔ガス流は、加圧された層2012からセクタ2002(このセクタを通って燃焼用空気流が搬送される)内へ漏れる。酸化塔ガス流は、加圧された層2012から、酸化塔ガス流が通過搬送されるセクタ2004および2008へも漏れる。漏れは、セクタ2004および2008から、還元塔ガス流が通過搬送されるセクタ2006へも生じる。燃焼用空気流を搬送するセクタと、酸化塔ガス流および還元塔ガス流を搬送するセクタとの間に配置された加圧された層の使用は、燃焼用空気流が酸化塔ガス流または還元塔ガス流内へ漏れることを防止する。
【0039】
1つの実施の形態では、ガス処理ユニット(GPU)からのベントガスが、加圧された層に供給するために利用されてもよい。ガス処理ユニットは、還元塔ガスを浄化し、浄化された二酸化炭素を、製品品質要求に従う圧力に圧縮する。空気排出基準によって許容される二酸化炭素およびその他のエミッションを含む少量の浄化されていないガスは、大気中へベントされる。このガスはベントガスと称される。図7および図8は、ガス処理ユニット(図示せず)からのベントガスの全てまたは一部が、空気予熱器の空気側から予熱器のガス側への漏れを防止するために、加圧された層2012へ搬送される実施の形態を示している。図7は、ガス処理ユニットからのベントガスが、ベントガスを空気予熱器の加圧された層2012へ搬送する前にベントガスを加熱するために選択的なブースタファン2014および選択的なヒータ2016へ方向付けられることを除き、図6における空気予熱器と同様の空気予熱器1000を示している。図7の空気予熱器は、4つのセクタを有し、その機能は図6に関連して前に説明されており、再び繰り返し説明しない。
【0040】
ベントガスは、発電プラントからの許容されたエミッションである。加圧された層2012を加圧するために利用されるベントガスは最終的に燃焼用空気流および還元塔ガス流を通じて大気中へ排出されるが、このことは、発電プラントからのエミッション全体を増大しない。
【0041】
図8は、(還元塔ガス流を搬送する)セクタ2006と向き合って配置された(燃焼用空気流を搬送する)セクタ2002を含む2セクタ空気予熱器1000を示している。GPUからのベントガスによって加圧された、加圧された層2012は、セクタ2002と、セクタ2006との間に配置されている。加圧された層2012におけるベントガスは、燃焼用空気流の圧力または還元塔ガス流の圧力よりも高い圧力であり、ひいては、空気セクタ2002から還元塔ガス流セクタ2006への漏れを防止する。差圧によって引き起こされる漏れは、図8に太字の矢印で示したように、加圧された層2012から、セクタ2002およびセクタ2006内へ生じる。図8において、ガス処理ユニットからのベントガスが、ベントガスを空気予熱器の加圧された層2012へ搬送する前にベントガスを加熱するために選択的なブースタファン2014および選択的なヒータ2016へ方向付けられる。
【0042】
1つの実施の形態では、上に詳述された空気予熱器1000を使用する1つの形式において、システムは、上に詳述した空気予熱器の1つ以上を含むことができる。1つの実施の形態では、システムは、1つ以上の予熱器、特に2つ以上の予熱器を用いることができる。図9は、燃焼を補助するために酸化塔に供給される空気を予熱するための2つの予熱器を含むシステムを示している。図9において、システム3000は、酸化塔3004と流体接続した還元塔3002を含む。硫化カルシウムは酸化塔3004において酸化させられて硫酸カルシウムを形成し、この硫酸カルシウムは、次いで、還元塔3002へ搬送され、還元塔3002において硫化カルシウムへ再び還元される。還元塔3002からの硫化カルシウムは、還元塔底部出口3014を通じて酸化塔3004へ充填される。還元塔3002と酸化塔3004との間で硫化カルシウムおよび硫酸カルシウムを往復搬送するための搬送設備が存在しているが、図9には詳細に示されていない。石炭は還元塔3002へ充填され、還元塔3002において、硫酸カルシウムから放出された酸素を用いて燃焼させられる。
【0043】
還元塔3002および酸化塔3004からの煙道ガスはそれぞれ別々に粒子分離器3006および3008へ排出され、粒子分離器から、分離された粒子は再びそれぞれの反応塔(すなわち還元塔または酸化塔)へ再充填される。セパレータ3006からのガス(主に二酸化炭素)および分離器3008からのガス(主に窒素)は、それぞれのバックパス熱交換器3022および3020へそれぞれ排出される。熱交換器3020および3022において、蒸気が発生され、この蒸気は蒸気サイクル3038において利用される。次いで、それぞれの煙道ガスは、空気予熱器3024および3026へ排出され、空気予熱器において、空気を加熱するために利用され、この空気は次いで酸化塔3004へ充填される。硫黄およびその他の粒子が硫黄および粒子除去システム3028および3030においてそれぞれの煙道ガスからそれぞれ除去された後、硫黄および粒子は、大気への排出のための煙突3036へ排出される。酸化塔からの二酸化炭素煙道ガスは、煙突3036へ排出される前に2つの付加的なステップを受ける。空気予熱器3028からの二酸化炭素は、煙道ガス凝縮器3032へ排出され、次いで、煙突3036から排出される前にガス処理ユニット3034へ排出される。ここには示されていないが、酸化塔および/または還元塔からの煙道ガスは両方とも2つの流れに分割されてもよく、これらの流れはそれぞれ、空気予熱器3024および3026へ供給することができる。
【0044】
1つの実施の形態では、空気予熱器3024および3026は、2セクタ空気予熱器であることができる(図8参照)か、または両方とも4セクタ予熱器であることができる(図7参照)。1つの実施の形態では、空気予熱器のうちの一方が2セクタ空気予熱器であることができるのに対し、空気予熱器のうちの一方は4セクタ空気予熱器であることができる。典型的な実施の形態では、空気予熱器の両方が2セクタ空気予熱器である。
【0045】
ここで再び図9を参照すると、両予熱器3024および3026が2セクタ予熱器(図8参照)である場合、空気は空気入口を通じて両セクタへ排出される。予熱器3024においては、還元塔ガス流は空気予熱器のガス側へ充填されるのに対し、GPUからのベントガスはライン4002を通じて、加圧された層へ充填される。予熱器3026においては、酸化塔ガス流は空気予熱器のガス側へ充填される。ベントガスは、予熱器の空気側から予熱器のガス側への漏れを防止する。この形式において、還元塔または酸化塔からの煙道ガスを利用して空気を予熱するために、2つの2セクタ空気予熱器をケミカルルーピングシステムにおいて使用することができる。
【0046】
再び図9を参照すると、一方の予熱器が2つのセクタを有するのに対して、他方の予熱器が3つのセクタを有する形式で2つの予熱器3024および3026を使用することが可能である。この実施の形態では、熱交換器3022から出てくる還元塔ガス流は2つの流れ4004および4006に分割される。一方の流れ4006は、2セクタ空気予熱器である空気予熱器3024へ充填される。他方の流れ4004は、他方の予熱器3026へ充填される。予熱器3026は4セクタ予熱器(図7参照)であり、この場合、酸化塔ガス流は2つのセクタ2004および2008へ充填されるのに対し、還元塔ガス流4004はセクタ2006へ充填される。加熱される空気は、図9に示したように、両空気予熱器3024および3026へ充填される。燃焼用空気流は、それぞれの空気予熱器の空気側へ充填されるのに対し、還元塔ガス流および酸化塔ガス流は、ガス予熱器の空気側におけるセクタと向き合ったセクタへ充填される(すなわち、ガス側へ充填される)。GPUからのベントガスは、ライン4002を通じて、加圧された層へ充填される。ベントガスは、予熱器の空気側から予熱器のガス側への漏れを防止する。すなわち、図示したように、2セクタ予熱器は、酸化塔用の空気を加熱するために4セクタ予熱器に関連して使用されてもよい。
【0047】
ここで詳述したような空気予熱器の使用は多くの利点を有する。予熱器のガス側から空気側への漏れが最小限に減じられる。還元塔ガス流から酸化塔ガス流および燃焼用空気流への二酸化炭素漏れも、最小限に減じられる。同様に、予熱器の空気側からガス側への同様の漏れも最小限に減じられる。
【0048】
様々な要素、構成要素、領域、層および/又はセクションを説明するために本明細書において“第1”、“第2”、“第3”などの用語が使用されるが、これらの要素、構成要素、領域、層および/又はセクションはこれらの用語によって限定されるべきでないことが理解される。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層又はセクションを別の要素、構成要素、領域、層又はセクションから区別するためだけに使用される。つまり、以下で説明される“第1の要素”、“構成要素”、“領域”、“層”又は“セクション”は、ここでの開示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層又はセクションと称することができる。
【0049】
本明細書において使用される用語は、特定の実施の形態を説明するためだけのものであり、限定することを意図したものではない。ここで使用される場合、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、単数の記載は複数も含むことが意図されている。“含む”および/又は“含んでいる”、又は“有する”および/又は“有している”は、本明細書で使用される場合、言及された特徴、領域、整数、ステップ、作動、要素および/又は構成要素の存在を特定するが、1つ以上のその他の特徴、領域、整数、ステップ、作動、要素、構成要素および/又はそれらのグループの存在又は付加を排除しないことがさらに理解される。
【0050】
さらに、“下側の”又は“下部”および“上側の”又は“上部”などの相対的な用語は、ここでは、図面に例示されたような、1つの要素の、別の要素に対する関係を説明するためにここでは使用されることがある。相対的な用語は、図示された向きに無和江、装置の様々な向きを含むことが意図されている。例えば、図面のうちの1つにおける装置が反転されると、他の要素の“下側”にあると説明されていた要素は、今度は他の要素の“上側”に向きづけられることになる。従って、“下側”という典型的な用語は、図面の特定の向きに応じて、“下側”および“上側”の向きの両方を含むことができる。同様に、図面のうちの1つにおける装置が反転されると、他の要素の“下”又は“下方”にあると説明されていた要素は、今度は他の要素の“上”に向きづけられることになる。“下”又は“下方”という典型的な用語は、上下の両方の向きを含むことができる。
【0051】
そうでないことが定義されない限り、本明細書において使用される全ての用語(技術用語および科学用語)は、本開示が属する技術の分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義されたような用語は、関連技術およびこの開示の文脈における意味と一貫する意味を有するものと解されるべきであり、ここにそのように明示的に定義されない限り、理想化された又は過剰に形式的な意味に解されることはない。
【0052】
理想化された実施の形態の概略的な例示である横断面図を参照して、典型的な実施の形態がここで説明される。これにより、例えば、製造技術および/又は公差の結果としての例示の形状からのずれが予測される。つまり、ここに説明された実施の形態は、ここに例示されたような領域の特定の形状に限定されると解されるべきではなく、例えば製造から生じる形状のずれを含む。例えば、平坦として例示又は説明された領域は、通常、粗いおよび/又は非線形の特徴を有してよい。さらに、例示された鋭角は、丸みづけられていてよい。つまり、図示された領域は、本質的に概略的であり、それらの形状は、ある領域の正確な形状を例示しようとするものではなく、本願の請求項の範囲を限定しようとするものではない。
【0053】
および/またはという用語は、ここでは“および”と“または”の両方を意味するために使用されている。例えば、“Aおよび/またはB”は、A、BまたはAおよびBを意味すると解釈される。“含む”というつなぎ言葉は、“から実質的に成る”および“から成る”というつなぎ言葉を包含しており、“含む”と置き換えることができる。
【0054】
様々な典型的な実施の形態を参照して発明を説明したが、発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が加えられてよく、前記実施の形態の要素の代わりに均等物が代用されてよいことが理解されるであろう。加えて、発明の基本的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を発明の開示に適応させるために、多くの変更がなされてよい。従って、本発明を実施するために考えられた最良の形態として開示された特定の実施の形態に発明は限定されないが、発明は、添付の請求項範囲に該当する全ての実施の形態を含むことが意図されている。
【符号の説明】
【0055】
4 酸化塔、 6 還元塔、 10 空気予熱器、 12 ロータ、 14 ハウジング、 16 隔壁、 18 ロータポスト、 20 室、 22 熱交換エレメントバスケットアセンブリ、 26 煙道ガス出口、 28 煙道ガス流、 30 低温空気入口、 34 燃焼用空気流、 36 第2のプレート、 38 空気セクタ、 40 煙道ガスセクタ、 42 熱交換エレメント、 46 高温端部、 95 内部空隙、 LG1 第1の経路、 LG2 第2の経路、 LG3 第3の経路、 112 ロータ、 114 ハウジング、 118 ロータポスト、 220,222,224,226,228,230 シール、 310 3セクタ再生式空気予熱器、 332,334,336 シール、 360,362,364 プレナム、 410 4セクタ再生式空気予熱器、 432,433,434,435 シール、 460,462,463,464 プレナム、 1000 空気予熱器、 1002 ロータ、 1004 ハウジング、 1006 隔壁、 1008 ロータポスト、 1020 室、 1022 熱交換バスケットアセンブリ、 1028,1028A,1028B 煙道ガス流、 1032 腔出口、 1034 燃焼用空気流、 1036 セクタプレート、 1038 空気セクタ、 1040 煙道ガスセクタ、 1042 熱交換エレメント、 1044 低温端部、 1046 高温端部、 2002 第1のセクタ、 2004 第2のセクタ、 2006 第3のセクタ、 2008 第4のセクタ、 2012 加圧された層、 2014 ブースタファン、 2016 ヒータ、 300 システム、 3002 還元塔、 3004 酸化塔、 3006,3008 粒子分離器、 3014 還元塔底部出口、 3020,3022 バックパス熱交換器、 3024,3026 空気予熱器、 3028,3030 硫黄および粒子除去システム、3032 煙道ガス凝縮器、 3034 ガス処理ユニット、 3036 煙突、 3038 蒸気サイクル、 4002 ライン、 4004,4006 流れ
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
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図4A
図4B
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図6
図7
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図9