(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多量体型タンパク質構造体は2つのα−ガラクトシダーゼモノマーを含み、タンパク質構造体はダイマー型タンパク質構造体であり、α−ガラクトシダーゼは、配列番号1、配列番号2および配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、官能基のそれぞれがα−ガラクトシダーゼモノマーとのアミド結合を形成し、nは40〜70の整数である、請求項8に記載の医薬組成物。
【図面の簡単な説明】
【0045】
特許出願のファイルはカラーで描かれた少なくとも一枚の図面を含む。このカラー図面を有する特許出願公開物は要求および必要な費用の支払いにより特許庁により提供されるだろう。
【0046】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0047】
【
図1】
図1は、Fabrazyme(登録商標)α−GAL、Replagal(登録商標)α−GALおよび植物組換えヒトα−GAL−Iの活性を模擬リソソーム条件(クエン酸塩リン酸塩緩衝液、pH4.6、37℃)下でのインキュベーション時間の関数として示すグラフである。
【0048】
【
図2】
図2は、Fabrazyme(登録商標)α−GAL、Replagal(登録商標)α−GAL、植物組換えヒトα−GAL−I、および、ガラクトース(100mg/ml)を伴う植物組換えα−GAL−Iの活性を模擬生理学的条件(pH7.4、37℃)下でのインキュベーション時間の関数として示すグラフである。
【0049】
【
図3】
図3は、Fabrazyme(登録商標)α−GAL、Replagal(登録商標)α−GALおよび植物組換えヒトα−GAL−Iの活性をヒト血漿の37℃でのインキュベーション時間の関数として示すグラフである。
【0050】
【
図4】
図4は、Fabrazyme(登録商標)α−GAL、Replagal(登録商標)α−GAL、植物組換えヒトα−GAL−I、および、ガラクトース(100mg/ml)を伴う植物組換えα−GAL−Iの活性を模擬リソソーム条件(クエン酸塩リン酸塩緩衝液、pH4.6、37℃)下でのインキュベーション時間の関数として示すグラフである。
【0051】
【
図5】
図5は、例示的なビス−N−ヒドロキシスクシンイミド−ポリ(エチレングリコール)(ビス−NHS−PEG)架橋剤の分子構造を示す図である。
【0052】
【
図6】
図6は、ビス−NHS−PEG架橋剤と反応したダイマー型タンパク質を示す図である。
【0053】
【
図7】
図7は、植物組換えα−GAL−I(ビス−NHS−PEG
5(レーン1〜3)、ビス−NHS−PEG
8(レーン7〜9)およびビス−NHS−PEG
45(レーン4〜6)と、ビス−NHS−PEG:α−GALのモル比が50:1(レーン1、4および7)、100:1(レーン2、5および8)および200:1(レーン3、6および9)で反応させたもの)、ならびに、分子量マーカー(Mw)および非反応の植物組換えα−GAL−I標準物(Std)を示すSDS−PAGEゲルを走査したものを示す(矢印は、α−GALダイマーを含むバンドを示す)。
【0054】
【
図8】
図8は、植物組換えα−GAL−I(ビス−NHS−PEG
5(レーン1〜3)、ビス−NHS−PEG
8(レーン7〜9)およびビス−NHS−PEG
45(レーン4〜6)と、ビス−NHS−PEG:α−GALのモル比が50:1(レーン1、4および7)、100:1(レーン2、5および8)および200:1(レーン3、6および9)で反応させたもの)、ならびに、pHマーカー(M)および非反応の植物組換えα−GAL−I標準物(Std)を示す等電点フォーカシングゲルを走査したものを示す(矢印は様々なバンドについてpH値を示す)。
【0055】
【
図9】
図9は、ビス−NHS−PEG
45によって架橋される植物組換えα−GAL−IのMALDI−TOF質量分光法スペクトルである(x軸はm/z値を示し、ピークのm/z値が示される)。
【0056】
【
図10】
図10は、ビス−NHS−PEG
8によって架橋される植物組換えα−GAL−IのMALDI−TOF質量分光法スペクトルである(x軸はm/z値を示し、ピークのm/z値が示される)。
【0057】
【
図11】
図11は、α−GAL基質のN−ドデカノイル−ニトロベンゾオキサジアゾール−セラミドトリヘキソシド(Gb
3−NBD)およびα−GAL反応生成物のラクトシルセラミド−ニトロベンゾオキサジアゾール(ラクトシルセラミド−NBD)を示す写真で、基質Gb
3−NBDを、ビス−NHS−PEG
45により架橋される植物組換えヒトα−GAL−I(左レーン)、Replagal(登録商標)α−GAL(中央レーン)、および、α−GAL非存在(右レーン)とインキュベーションした後、高性能薄層クロマトグラフィー後のUV光(365nm)下での照射によって可視化されるときの写真を示す。
【0058】
【
図12A-12B】
図12A−12Bは、Fabrazyme(登録商標)α−GAL、Replagal(登録商標)α−GAL、植物組換えヒトα−GAL−I、および、植物組換えヒトα−GAL−I(ビス−NHS−PEG
5(
図12A)、ビス−NHS−PEG
8(
図12B)およびビス−NHS−PEG
45(
図12C)により、ビス−NHS−PEG:α−GALのモル比が50:1(
図12Aにおける「1」、
図12Bにおける「7」および
図12Cにおける「4」)、100:1(
図12Aにおける「2」、
図12Bにおける「8」および
図12における「5」)および200:1(
図12Aにおける「3」、
図12Bにおける「9」および
図12Cにおける「6」)で架橋されるもの)の活性を模擬リソソーム条件(クエン酸塩リン酸塩緩衝液、pH4.6、37℃)下でのインキュベーション時間の関数として示すグラフである。
【
図12C】
図12Cは、Fabrazyme(登録商標)α−GAL、Replagal(登録商標)α−GAL、植物組換えヒトα−GAL−I、および、植物組換えヒトα−GAL−I(ビス−NHS−PEG
5(
図12A)、ビス−NHS−PEG
8(
図12B)およびビス−NHS−PEG
45(
図12C)により、ビス−NHS−PEG:α−GALのモル比が50:1(
図12Aにおける「1」、
図12Bにおける「7」および
図12Cにおける「4」)、100:1(
図12Aにおける「2」、
図12Bにおける「8」および
図12における「5」)および200:1(
図12Aにおける「3」、
図12Bにおける「9」および
図12Cにおける「6」)で架橋されるもの)の活性を模擬リソソーム条件(クエン酸塩リン酸塩緩衝液、pH4.6、37℃)下でのインキュベーション時間の関数として示すグラフである。
【0059】
【
図13】
図13は、Replagal(登録商標)α−GAL、植物組換えヒトα−GAL−I、および、ビス−NHS−PEG
45により架橋される植物組換えヒトα−GAL−IのFabryマウスの血漿における薬物動態学プロフィルを示すグラフである;それぞれのα−GALの残存活性が、α−GAL注入後の時間の関数として、それぞれのα−GALの最大残存活性の百分率として示される。
【0060】
【
図14A-14B】
図14A−14Bは、α−GAL注入後2時間でのFabryマウスの脾臓におけるReplagal(登録商標)α−GAL、植物組換えヒトα−GAL−I(prh−alpha−GAL−I)、および、植物組換えヒトα−GAL−I(ビス−NHS−PEG
8架橋(prh−alpha−GAL−I−CL8)またはビス−NHS−PEG
45架橋(prh−alpha−GAL−I−CL45))の活性を示すグラフ(
図14A)、ならびに、α−GAL注入後のFabryマウスの脾臓におけるα−GAL(レーン1〜12)、または、50ngのα−GALからなる標準物(レーン13〜15)としての、Replagal(登録商標)α−GAL(レーン10〜12および15)、植物組換えヒトα−GAL−I(レーン7〜9および13)、および、植物組換えヒトα−GAL−I(ビス−NHS−PEG
8架橋(レーン4〜6)またはビス−NHS−PEG
45架橋(レーン1〜3および14))を示すウエスタンブロットの写真(
図14B)を示す。
【0061】
【
図15A-15B】
図15A−15Bは、α−GAL注入後2時間でのFabryマウスの肝臓におけるReplagal(登録商標)α−GAL、植物組換えヒトα−GAL−I(prh−alpha−GAL−I)、および、植物組換えヒトα−GAL−I(ビス−NHS−PEG
8架橋(prh−alpha−GAL−I−CL8)またはビス−NHS−PEG
45架橋(prh−alpha−GAL−I−CL45))の活性を示すグラフ(
図15A)、ならびに、α−GAL注入後のFabryマウスの肝臓におけるα−GAL(レーン1〜12)、または、50ngのα−GALからなる標準物(レーン13〜15)としての、Replagal(登録商標)α−GAL(レーン10〜12および15)、植物組換えヒトα−GAL−I(レーン7〜9および13)、および、植物組換えヒトα−GAL−I(ビス−NHS−PEG
8架橋(レーン4〜6)またはビス−NHS−PEG
45架橋(レーン1〜3および14))を示すウエスタンブロットの写真(
図15B)を示す。
【0062】
【
図16】
図16は、Replagal(登録商標)α−GAL、植物組換えヒトα−GAL−I(prh−alpha−GAL−I)、および、植物組換えヒトα−GAL−I(ビス−NHS−PEG
8架橋(prh−alpha−GAL−I−CL8)またはビス−NHS−PEG
45架橋(prh−alpha−GAL−I−CL45))の活性をα−GAL注入後2時間でのFabryマウスの心臓において示すグラフである。
【0063】
【
図17】
図17は、Replagal(登録商標)α−GAL、植物組換えヒトα−GAL−I(prh−alpha−GAL−I)、および、植物組換えヒトα−GAL−I(ビス−NHS−PEG
8架橋(prh−alpha−GAL−I−CL8)またはビス−NHS−PEG
45架橋(prh−alpha−GAL−I−CL45))の活性をα−GAL注入後2時間でのFabryマウスの腎臓において示すグラフである。
【0064】
【
図18】
図18は、Replagal(登録商標)α−GAL、植物組換えヒトα−GAL−I(prh−alpha−GAL−I)、および、ビス−NHS−PEG
45により架橋される植物組換えヒトα−GAL−I(prh−alpha−GAL−I−CL45)の活性を、α−GAL注入後2時間、24時間、3日および7日でのFabryマウスの脾臓において示すグラフである(内因性の野生型α−GAL(WT)が標準物として示される)。
【0065】
【
図19】
図19は、Replagal(登録商標)α−GAL、植物組換えヒトα−GAL−I(prh−alpha−GAL−I)、および、ビス−NHS−PEG
45により架橋される植物組換えヒトα−GAL−I(prh−alpha−GAL−I−CL45)の活性を、α−GAL注入後2時間、24時間、3日および7日でのFabryマウスの肝臓において示すグラフである(内因性の野生型α−GAL(WT)が標準物として示される)。
【0066】
【
図20】
図20は、Replagal(登録商標)α−GAL、植物組換えヒトα−GAL−I(prh−alpha−GAL−I)、および、ビス−NHS−PEG
45により架橋される植物組換えヒトα−GAL−I(prh−alpha−GAL−I−CL45)の活性を、α−GAL注入後2時間、24時間、3日および7日でのFabryマウスの心臓において示すグラフである(内因性の野生型α−GAL(WT)が標準物として示される)。
【0067】
【
図21】
図21は、Replagal(登録商標)α−GAL、植物組換えヒトα−GAL−I(prh−alpha−GAL−I)、および、ビス−NHS−PEG
45により架橋される植物組換えヒトα−GAL−I(prh−alpha−GAL−I−CL45)の活性を、α−GAL注入後2時間、24時間、3日および7日でのFabryマウスの腎臓において示すグラフである(内因性の野生型α−GAL(WT)が標準物として示される)。
【0068】
【
図22】
図22は、Replagal(登録商標)哺乳動物組換えヒトα−GAL(左レーン)、および、ビス−NHS−PEG
45と反応させたReplagal(登録商標)哺乳動物組換えヒトα−GAL(中央レーン)、ならびに、分子量マーカー(右レーン)を示すSDS−PAGEゲル画像の写真を示す(マーカーの分子量がKDa単位で示される)。
【0069】
【
図23】
図23は、Replagal(登録商標)哺乳動物組換えヒトα−GAL(左レーン)、および、ビス−NHS−PEG
45と反応させたReplagal(登録商標)哺乳動物組換えヒトα−GAL(中央レーン)、ならびに、pHマーカー(右レーン)を示す等電点フォーカシングゲルの写真を示す。
【0070】
【
図24A-24B】
図24A−24Bは、Replagal(登録商標)哺乳動物組換えヒトα−GAL(
図24A)、および、ビス−NHS−PEG
45によって架橋されるReplagal(登録商標)哺乳動物組換えヒトα−GALのMALDI−TOF質量分析法スペクトルである(x軸はm/z値を示し、ピークのm/z値(Da単位)が示される)。
【0071】
【
図25】
図25は、Replagal(登録商標)哺乳動物組換えヒトα−GAL(Replagal)、および、ビス−NHS−PEG
45によって架橋されるReplagal(登録商標)哺乳動物組換えヒトα−GAL(Replagal CL45)によるp−ニトロフェニル−α−D−ガラクトピラノシド(pNP−G)の加水分解の速度(V)をpNP−G濃度の関数として示すミカエリス−メンテン・プロットである。
【0072】
【
図26A-26B】
図26A−26Bは、Replagal(登録商標)哺乳動物組換えヒトα−GAL(Replagal)、および、ビス−NHS−PEG
45によって架橋されるReplagal(登録商標)哺乳動物組換えヒトα−GAL(Replagal−CL45)の活性を、模擬リソソーム条件(クエン酸塩リン酸塩緩衝液、pH4.6、37℃)のもと(
図26A)または37℃でのヒト血漿(
図26B)におけるインキュベーション時間の関数として示すグラフである。
【0073】
【
図27A-27B】
図27A−27Bは、Replagal(登録商標)α−GAL(R)、および、ビス−NHS−PEG
45により架橋されるReplagal(登録商標)α−GAL(R−CL45)の活性を、α−GAL注入後2時間でのFabryマウスの脾臓(
図27A)、肝臓(
図27B)、心臓(
図27C)および腎臓(
図27D)において示すグラフである。
【
図27C-27D】
図27C−27Dは、Replagal(登録商標)α−GAL(R)、および、ビス−NHS−PEG
45により架橋されるReplagal(登録商標)α−GAL(R−CL45)の活性を、α−GAL注入後2時間でのFabryマウスの脾臓(
図27A)、肝臓(
図27B)、心臓(
図27C)および腎臓(
図27D)において示すグラフである。
【0074】
【
図28A-28B】
図28A−28Bは、Fabryマウスの心臓(
図28A)、腎臓(
図28B)、肝臓(
図28C)および脾臓(
図28D)におけるGb
3レベルを、Replagal(登録商標)α−GAL(R)、または、ビス−NHS−PEG
45により架橋されるReplagal(登録商標)α−GAL(R−CL45)の注入後の時間の関数として示すグラフである。
【
図28C-28D】
図28C−28Dは、Fabryマウスの心臓(
図28A)、腎臓(
図28B)、肝臓(
図28C)および脾臓(
図28D)におけるGb
3レベルを、Replagal(登録商標)α−GAL(R)、または、ビス−NHS−PEG
45により架橋されるReplagal(登録商標)α−GAL(R−CL45)の注入後の時間の関数として示すグラフである。
【0075】
【
図29A-29B】
図29A−29Bは、植物組換えヒトα−GAL−II(
図29Aおよび29B、レーン2)、および、ビス−NHS−PEG
21と反応させた植物組換えヒトα−GAL−II(
図29A、レーン3)、ビス−NHS−PEG
45と反応させた植物組換えヒトα−GAL−II(
図29A、レーン4)またはビス−NHS−PEG
68と反応させた植物組換えヒトα−GAL−II(
図29B、レーン3)、ならびに、分子量マーカー(
図29Aおよび29B、レーン1)を示すSDS−PAGEゲル画像のスキャンを示す(マーカーの分子量がKDa単位で示される)。
【0076】
【
図30A-30C】
図30A−30Cは、植物組換えヒトα−GAL−II(
図30A)、および、ビス−NHS−PEG
21によって架橋される植物組換えヒトα−GAL−II(
図30B)またはビス−NHS−PEG
45によって架橋される植物組換えヒトα−GAL−II(
図30C)のMALDI−TOF質量分析法スペクトルである(x軸はm/z値を示し、ピークのm/z値(Da単位)が示される)。
【0077】
【
図31A-31B】
図31A−31Bは、Replagal(登録商標)哺乳動物組換えヒトα−GAL(Replagal)、植物組換えヒトα−GAL−II(prh−alpha−GAL−II)、および、植物組換えヒトα−GAL−II(ビス−NHS−PEG
21架橋(prh−alpha−GAL−II−CL21;
図31Aおよび
図31C)、ビス−NHS−PEG
45架橋(prh−alpha−GAL−II−CL45;
図31A〜
図31D)またはビス−NHS−PEG
68架橋(prh−alpha−GAL−II−CL68;
図31Bおよび
図31D))の活性を、模擬リソソーム条件(クエン酸塩リン酸塩緩衝液、pH4.6、37℃)のもと(
図31Aおよび
図31B)または37℃でのヒト血漿(
図31Cおよび
図31D)におけるインキュベーション時間の関数として示すグラフである(
図31Cおよび
図31Dに示されるデータは異なる実験からのものである)。
【
図31C-31D】
図31C−31Dは、Replagal(登録商標)哺乳動物組換えヒトα−GAL(Replagal)、植物組換えヒトα−GAL−II(prh−alpha−GAL−II)、および、植物組換えヒトα−GAL−II(ビス−NHS−PEG
21架橋(prh−alpha−GAL−II−CL21;
図31Aおよび
図31C)、ビス−NHS−PEG
45架橋(prh−alpha−GAL−II−CL45;
図31A〜
図31D)またはビス−NHS−PEG
68架橋(prh−alpha−GAL−II−CL68;
図31Bおよび
図31D))の活性を、模擬リソソーム条件(クエン酸塩リン酸塩緩衝液、pH4.6、37℃)のもと(
図31Aおよび
図31B)または37℃でのヒト血漿(
図31Cおよび
図31D)におけるインキュベーション時間の関数として示すグラフである(
図31Cおよび
図31Dに示されるデータは異なる実験からのものである)。
【0078】
【
図32A-32B】
図32A−32Bは、Replagal(登録商標)α−GAL(Replagal)、植物組換えヒトα−GAL−II(prh−alpha−GAL−II)、および、ビス−NHS−PEG
45により架橋される植物組換えヒトα−GAL−II(prh−alpha−GAL−II−CL45))のFabryマウスの血漿における薬物動態学プロフィルを示すグラフである;それぞれのα−GALの濃度がα−GAL注入後の時間の関数として示される(
図32Aおよび
図32Bは、同じデータを異なる時間枠で示す)。
【0079】
【0080】
【
図34A-34B】
図34A−34Bは、動力学的パラメーターのV
max(
図34A)、K
M(
図34B)およびk
cat(
図34C)を、pHの関数として、植物組換えヒトα−GAL−II(prh−alpha−GAL−II)、および、ビス−NHS−PEG
45により架橋される植物組換えヒトα−GAL−II(prh−alpha−GAL−II−CL45)について示すグラフである。
【
図34C】
図34Cは、動力学的パラメーターのV
max(
図34A)、K
M(
図34B)およびk
cat(
図34C)を、pHの関数として、植物組換えヒトα−GAL−II(prh−alpha−GAL−II)、および、ビス−NHS−PEG
45により架橋される植物組換えヒトα−GAL−II(prh−alpha−GAL−II−CL45)について示すグラフである。
【0081】
【
図35】
図35は、植物組換えヒトα−GAL−I(prh−α−Gal−I)、および、メトキシキャップ化NHS−PEGと反応させた植物組換えヒトα−GAL−I(分子量が2KDaであるメトキシキャップ化NHS−PEG(prh−α−Gal−I−PEG2000)、分子量が5KDaであるメトキシキャップ化NHS−PEG(prh−α−Gal−I−PEG5000)、または、分子量が10KDaであるメトキシキャップ化NHS−PEG(prh−α−Gal−I−PEG10000))、ならびに、分子量マーカー(左レーン)を示すSDS−PAGEゲルを走査したものを示す(マーカーの分子量がKDa単位で示される)。
【0082】
【
図36A-36B】
図36A−36Bは、Fabrazyme(登録商標)哺乳動物組換えヒトα−GAL(Fabrazyme)、Replagal(登録商標)哺乳動物組換えヒトα−GAL(Replagal)、植物組換えヒトα−GAL−I、および、メトキシキャップ化NHS−PEGと反応させた植物組換えヒトα−GAL−I(分子量が2KDaであるメトキシキャップ化NHS−PEG(α−Gal−I−PEG2000)、分子量が5KDaであるメトキシキャップ化NHS−PEG(α−Gal−I−PEG5000)、または、分子量が10KDaであるメトキシキャップ化NHS−PEG(α−Gal−I−PEG10000))の活性を、模擬リソソーム条件(クエン酸塩リン酸塩緩衝液、pH4.6、37℃)のもと(
図36A)または37℃でのヒト血漿(
図36B)におけるインキュベーション時間の関数として示すグラフである。
【0083】
【
図37】
図37は、植物組換えα−GAL−I(ビス−NHS−PEG
2(レーン1〜3)、ビス−NHS−PEG
4(レーン4〜6)、ビス−NHS−PEG
68(レーン7〜9)、ビス−NHS−PEG
150(レーン10〜12)およびビス−NHS−PEG
45(CL45)と、ビス−NHS−PEG:α−GALのモル比が50:1(レーン1、4、7および10)、100:1(レーン2、5、8および11)および200:1(レーン3、6、9および12)で反応させたもの)、ならびに、分子量マーカー(MW)を示すSDS−PAGEゲルを走査したものを示す。
【0084】
【
図38】
図38は、植物組換えα−GAL−I(ビス−COOH−PEG
12(レーン1〜3)、ビス−COOH−PEG
28(レーン4〜6)、ビス−COOH−PEG
45(レーン7〜9)、および、ビス−NHS−PEG
45(CL45)と、ビス−NHS−PEG:α−GALのモル比が50:1(レーン1、4および7)、100:1(レーン2、5および8)および200:1(レーン3、6および9)で反応させたもの)、ならびに、分子量マーカー(MW)、および、コントロールとしての非架橋の植物組換えα−GAL−I(con)を示すSDS−PAGEゲルを走査したものを示す。
【0085】
【
図39】
図39は、Replagal(登録商標)α−GAL、植物組換えヒトα−GAL−I(prh−α−GAL−I)、および、植物組換えヒトα−GAL−I(ビス−NHS−PEG
45架橋(prh−α−GAL−I−CL45)、ビス−NHS−PEG
4架橋(prh−α−GAL−I−CL4)、ビス−NHS−PEG
2架橋(prh−α−GAL−I−CL2)、ビス−COOH−PEG
45架橋(prh−α−GAL−I−CLA45)、ビス−COOH−PEG
28架橋(prh−α−GAL−I−CLA28)またはビス−COOH−PEG
12架橋(prh−α−GAL−I−CLA12))の活性を模擬リソソーム条件(クエン酸塩リン酸塩緩衝液、pH4.6、37℃)下でのインキュベーション時間の関数として示すグラフである。
【0086】
【
図40A-40B】
図40A−40Bは、ビス−NHS−PEG
45によって架橋される植物組換えヒトα−GAL−IIの活性を、模擬リソソーム条件(クエン酸塩リン酸塩緩衝液、pH4.6、37℃)のもと(
図40A)または37℃でのヒト血漿(
図40B)におけるインキュベーション時間の関数として示すグラフである(
図40BはReplagal(登録商標)哺乳動物組換えヒトα−GALおよび非架橋の植物組換えヒトα−GAL−IIを比較のために示す)。
【0087】
【
図41】
図41は、3回の異なる回分処理から得られる植物組換えα−GAL−II(レーン1〜3)、および、5回の異なる回分処理から得られる、ビス−NHS−PEG
45と反応させた植物組換えα−GAL−II(レーン4〜8)、ならびに、分子量マーカー(MW)を示すSDS−PAGEゲルを走査したものである。
【0088】
【
図42】
図42は、3回の異なる回分処理から得られる植物組換えα−GAL−II(レーン1〜3)、および、5回の異なる回分処理から得られる、ビス−NHS−PEG
45と反応させた植物組換えα−GAL−II(レーン4〜8)、ならびに、pHマーカー(M)を示す等電点フォーカシングゲルを走査したものである。
【0089】
【
図43A-43C】
図43A−43Cは、植物組換えヒトα−GAL−II(
図43A)、および、5回の異なる回分処理から得られる、ビス−NHS−PEG
45によって架橋される植物ヒトα−GAL−II(それぞれ、
図43B〜
図43F)のMALDI−TOF質量分析法スペクトルである(x軸はm/z値を示し、ピークのm/z値(Da単位)が示される)。
【
図43D-43F】
図43D−43Fは、植物組換えヒトα−GAL−II(
図43A)、および、5回の異なる回分処理から得られる、ビス−NHS−PEG
45によって架橋される植物ヒトα−GAL−II(それぞれ、
図43B〜
図43F)のMALDI−TOF質量分析法スペクトルである(x軸はm/z値を示し、ピークのm/z値(Da単位)が示される)。
【0090】
【
図44】
図44は、5回の異なる回分処理から得られる、ビス−NHS−PEG
45によって架橋される植物ヒトα−GAL−IIにより示されるα−GAL活性の触媒作用速度(V)を基質(p−ニトロフェニル−α−D−ガラクトピラノシド)濃度の関数として示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0091】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、新規な多量体型タンパク質構造体に関連し、より具体的には、しかし、限定ではなく、α−ガラクトシダーゼの多量体型タンパク質構造体およびファブリー病の処置におけるその使用に関連する。
【0092】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される細部、または、実施例によって例示される細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、あるいは、様々な方法で実施、または、実行される。
【0093】
リソソームタンパク質の欠乏(例えば、リソソームタンパク質における欠陥またはリソソームタンパク質の非存在)は、対象の健康に対する相当の害(リソソーム蓄積症)を生じさせ得る。欠乏しているタンパク質が患者に投与される酵素補充療法(ERT)がこれまで、リソソーム蓄積症を処置する試みにおいて使用されている。しかしながら、欠乏タンパク質の投与は、当該タンパク質の活性における相当かつ/または持続的な増大をインビボにおいて必ずしももたらしていない。
【0094】
ファブリー病は、広範囲の様々な全身性症状を引き起こし得るX連鎖の劣性(遺伝性)リソソーム蓄積症の一例である。変異に起因するリソソーム酵素α−ガラクトシダーゼAの欠乏により、グロボトリアオシルセラミド(これはまた、Gb
3またはセラミドトリヘキソシドとして知られている)として知られている糖脂質が血管、他の組織および器官の内部に蓄積することが生じる。この蓄積はそれらの適正な機能の障害を引き起こす。2つの酵素補充療法(ERT)が、α−ガラクトシダーゼ欠乏症を機能的に補償するために利用可能である。アガルシダーゼアルファ(Replagal(登録商標)、Shire)およびアガルシダーゼベータ(Fabrazyme(登録商標)、Genzyme)はともに、ヒトα−ガラクトシダーゼA酵素の組換え形態である。これらの酵素は製造が困難であり、そのようなものとして高価である。近年、GenzymeのAllston(MA)工場での汚染はアガルシダーゼベータの世界的不足を生じさせ、供給量が推奨用量の1/3で患者に対して制限された。
【0095】
本明細書中で示されるように、様々なα−ガラクトシダーゼがそれらの最大活性をリソソームに特徴的な低いpHレベルにおいて発揮し、一方で、より高いpHレベルにおけるそれらの活性が損なわれている。したがって、例えば、ERTで使用されるα−ガラクトシダーゼは、末端ガラクトシル化糖脂質をファブリー病患者の血清において加水分解することがほとんどできないであろう。
【0096】
そのうえ、本明細書中においてさらに示されるように、リソソーム条件下でさえ、α−ガラクトシダーゼの活性が、より高いpHレベルでの場合よりも遅い速度ではあるが、徐々に損なわれる。
【0097】
α−ガラクトシダーゼの損なわれた活性を解決する必要性によって動機づけられて、本発明者らは、α−ガラクトシダーゼ(α−GAL)の安定化形態について探索を行ってきた。より具体的には、本発明者らは、α−ガラクトシダーゼの安定化形態は、血清中でのより長く持続する活性を含めて、より長く持続する活性を一般に示すであろうと想定している。したがって、本発明者らは天然型α−ガラクトシダーゼの安定化形態を設計し、その調製および実施に成功し、そして、そのような安定化形態が、リソソーム条件下および血清環境中の両方における高まった活性および/またはより長く持続する活性の点で、改善された成績を示し、これにより、インビボにおけるこのタンパク質の高まった活性が可能となることを実際に示している。
【0098】
本発明者らは、α−ガラクトシダーゼモノマー間の新しい共有結合性連結の形成を介して天然型α−ガラクトシダーゼを架橋することによる、改善された成績を示すα−ガラクトシダーゼの安定化形態の形成を明らかにしている。
【0099】
次に図面を参照して、
図1および
図4は、リソソーム条件下における酵素活性の低下を植物組換えヒトα−GAL I(prh−α−GAL I)ならびにFabrazyme(登録商標)α−GALおよびReplagal(登録商標)α−GALについて示す。
図2および
図3は、模擬生理学的条件下またはヒト血漿中における酵素活性の低下を同じα−GAL変化体について示す。
図2および
図4は、ガラクトースがα−GAL活性における低下の割合を減少させることを示す。
【0100】
図5は、本発明の選択可能な実施形態によるものであるが、例示的なPEG(ポリエチレングリコール)架橋剤を示す。
図6は、本発明の選択可能な実施形態による架橋されたα−GALダイマーを示す。
【0101】
図7〜
図10および
図37は、prh−α−GAL−Iが、N−ヒドロキシスクシンイミド成分を含む例示的な架橋剤と反応したことを示す。
図38は、prh−α−GAL−Iが、N−ヒドロキシスクシンイミドによるインサイチュー活性化の後、カルボキシル基を含む例示的な架橋剤と反応したことを示す。
図7、
図37および
図38は、架橋剤との反応により、変性条件下において、モノマー型形態ではなく、むしろ、ダイマー型形態で主として現るα−GALが生じたことを示す。このことは、α−GALの四次構造が共有結合による架橋によって維持されたことを示している。
図11は、架橋されたα−GALがその酵素活性を保持したことを示す。
【0102】
図12A〜
図12Cおよび
図39は、架橋されたprh α−GAL−Iが、模擬リソソーム条件下において非架橋のα−GALよりも長く持続する活性を示すことを示す。安定性における増大が、PEG
28リンカーおよびPEG
45リンカーについては、より短いPEGリンカーの場合よりも強い。
図13は、架橋されたprh−α−GAL−Iが、インビボにおける血漿中において非架橋のα−GALよりも長く持続する活性を示すことを示す。
図14A〜
図21は、架橋されたprh−α−GAL−Iが、高まった活性を、脾臓、肝臓、心臓および腎臓でのインビボにおいて示すことを示す。α−GAL活性の高まりが、PEG
45リンカーについては、より短いPEGリンカーの場合よりも強い。
図15A、
図15Bおよび
図19は、架橋されたprh−α−GAL−Iが、高まった活性をインビボにおいて示すが、高まった活性が、Replagal(登録商標)α−GAL活性が集中するほど、肝臓に集中していないことを示す。
【0103】
上記の結果は、植物組換えヒトα−GAL−Iを架橋することにより、インビボ投与されたとき、α−GAL活性のより効果的な増大を可能にする改善された安定性を有するダイマーがもたらされることを示している。
【0104】
同様に、
図22〜
図28Dは、哺乳動物組換えヒトα−GALを架橋することにより、共有結合で連結されたダイマーがもたらされ(
図22〜
図24B)、この共有結合連結ダイマーは、正常な酵素活性(
図25)、同様にまた、リソソーム条件下および血漿中の両方でのより長く持続する活性(
図26A〜
図26B)、そして、脾臓、肝臓、心臓および腎臓でのインビボにおける高まった活性(
図27A〜
図28D)を示すことを示す。
【0105】
同様に、
図29A〜
図33Lは、植物組換えヒトα−GAL IIを架橋することにより、共有結合で連結されたダイマーがもたらされ(
図29〜
図30)、この共有結合連結ダイマーは、リソソーム条件下および血漿中の両方でのより長く持続する活性(
図31A〜
図31B)、ならびに、血漿中、そして、脾臓、肝臓、心臓および腎臓でのインビボにおける高まった活性(
図32A〜
図33L)を示すことを示す。
図33A〜
図33Lに示されるように、PEG
45リンカーにより架橋することが、インビボ活性を高めることにおいて特に効果的であった。
【0106】
これらの結果は、架橋することの好都合な効果が様々なα−GALタンパク質に対して適用可能であることを示している。
【0107】
図34A〜
図34Cは、α−GALを架橋することにより、α−GALの酵素触媒作用のパラメーターが強化され、α−GAL活性のためのpH範囲が広がり、かつ、α−GAL活性が約7以上のpHで可能となることを示す。
【0108】
図35〜
図36Bは、架橋を伴わないPEG化はα−GAL活性に対する著しい影響を何ら有していないことを示す。このことは、架橋することの好都合な効果が具体的には、PEG化の効果に起因するのではなく、むしろ、架橋に起因することを示している。
【0110】
本明細書中に示される結果は、共有結合で連結されたα−ガラクトシダーゼの多量体型タンパク質構造体が、α−ガラクトシダーゼの天然型形態と比較した場合、生理学的に妥当な条件のもとでのより大きい安定性および高まった活性によって特徴づけられることを示す。
【0111】
したがって、共有結合で連結された多量体型タンパク質構造体は、天然型形態の活性が、共有結合による架橋によって安定化される架橋された多量体型タンパク質構造体の活性よりも速く時間とともに低下することの結果として、α−ガラクトシダーゼの天然型形態の活性よりも大きい活性を示すかもしれない。
【0112】
共有結合で連結された多量体型タンパク質構造体は、同様にまた、より大きい初期活性のために(例えば、活性の異なるパラメーターのために)、すなわち、時間の経過に伴う活性の何らかの低下とは無関係に、α−ガラクトシダーゼの天然型形態の活性よりも大きい活性を示すかもしれない。
【0113】
したがって、本発明のいくつかの実施形態の1つの局面によれば、連結成分を介して互いに共有結合で連結された少なくとも2つのα−ガラクトシダーゼモノマーを含む多量体型タンパク質構造体が提供される。いくつかの実施形態によれば、多量体型タンパク質構造体は、下記で詳しく記載されるように、天然型α−ガラクトシダーゼの安定性よりも大きい安定性、および/または、天然型α−ガラクトシダーゼの初期活性よりも大きい初期活性を特徴とする。
【0114】
本明細書中において、α−ガラクトシダーゼに関する用語「モノマー」は、α−ガラクトシダーゼの個々のポリペプチドを示す。前記ポリペプチドは非ペプチド置換基(例えば、1つまたは複数の糖類成分)を含むことができる。
【0115】
本明細書中において、α−ガラクトシダーゼに関する用語「天然型」は、天然に存在するα−ガラクトシダーゼタンパク質のアミノ酸配列に対して実質的に同一である(すなわち、少なくとも95%相同性、場合により少なくとも99%相同性、また、場合により100%である)アミノ酸配列を含むタンパク質を包含する。天然型α−ガラクトシダーゼは、天然の供給源から単離されるタンパク質、または、組換え産生されたタンパク質(例えば、哺乳動物細胞、植物細胞、酵母細胞、細菌細胞、昆虫細胞に由来するもの)であってもよい。
【0116】
用語「天然型」は、α−ガラクトシダーゼ(例えば、α−ガラクトシダーゼダイマー)の四次構造に関して使用されるときには、天然に存在するタンパク質の四次構造と実質的に同一である四次構造をさらに含む。
【0117】
本明細書中において、表現「天然に存在するタンパク質」は、タンパク質が多量体型形態であるならば、タンパク質のアミノ酸配列、同様にまた、タンパク質の四次構造に関して、自然界に(例えば、生物において)存在する形態でのタンパク質を示す。
【0118】
天然に存在するα−ガラクトシダーゼタンパク質の、(例えば、天然に存在するα−ガラクトシダーゼタンパク質を発現する生物における)翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)が、本明細書中で参照されるα−ガラクトシダーゼの天然型形態において存在してもよく、存在しなくてもよく、または、改変されてもよい。α−ガラクトシダーゼの天然型形態(例えば、組換え産生されたα−ガラクトシダーゼ)は、α−ガラクトシダーゼの天然型形態が、本明細書中上記で記載されるように、天然に存在するα−ガラクトシダーゼと実質的に類似するアミノ酸配列および構造を保持するならば、天然に存在するα−ガラクトシダーゼの翻訳後修飾とは異なる翻訳後修飾を場合により含むことができる。
【0119】
本明細書中において、タンパク質の天然型形態はモノマー型構造体(例えば、α−ガラクトシダーゼモノマー)および/または多量体型構造体(例えば、α−ガラクトシダーゼダイマー)を示すことがある。例えば、ダイマー型タンパク質をα−ガラクトシダーゼの天然型形態として記載することができ、また、ダイマー型タンパク質におけるモノマーポリペプチドをα−ガラクトシダーゼモノマーの天然型形態として記載することができる。
【0120】
場合により、本明細書中に記載される多量体型タンパク質構造体は、α−ガラクトシダーゼの天然型形態がダイマー型構造体であるように、ダイマー型構造体である。
【0121】
代替において、多量体型タンパク質構造体は3つ以上のα−ガラクトシダーゼモノマーを含む。例えば、多量体型タンパク質構造体は、α−ガラクトシダーゼモノマーから構成されるテトラマー、ヘキサマーまたはオクタマーであってもよい。
【0122】
本明細書中に記載される多量体型タンパク質構造体は、その中のα−ガラクトシダーゼモノマーを連結し、かつ、α−ガラクトシダーゼの天然型形態には存在しない共有結合性の結合を含む。
【0123】
場合により、α−ガラクトシダーゼモノマーを連結する連結成分は、α−ガラクトシダーゼの天然型形態には存在しない成分(例えば、合成された連結成分)である。
【0124】
したがって、例えば、連結成分は場合により、α−ガラクトシダーゼモノマーの翻訳後修飾に関連づけられる側鎖、N末端またはC末端、あるいは、成分(例えば、糖類成分)、同様にまた、別のα−ガラクトシダーゼモノマーの翻訳後修飾に関連づけられる側鎖、N末端またはC末端、あるいは、成分(例えば、糖類成分)に共有結合で結合する成分である。例示的なそのような連結成分が本明細書中下記で詳しく記載される。
【0125】
代替において、連結成分は、連結されているα−ガラクトシダーゼモノマーの一部を形成する(例えば、α−ガラクトシダーゼモノマーの翻訳後修飾に関連づけられる側鎖、N末端またはC末端、あるいは、成分(例えば、糖類成分)の一部、同様にまた、別のα−ガラクトシダーゼモノマーの翻訳後修飾に関連づけられる側鎖、N末端またはC末端、あるいは、成分(例えば、糖類成分)の一部)。
【0126】
したがって、例えば、連結成分は、モノマーの翻訳後修飾に関連づけられる側鎖、N末端、C末端または成分の官能基(例えば、アミン)と、別のモノマーの翻訳後修飾に関連づけられる側鎖、N末端、C末端または成分の相補的な官能基(例えば、カルボキシル)との間における共有結合性の結合(例えば、アミド結合)が可能である(そのような共有結合性の結合はα−ガラクトシダーゼの天然型形態には存在しない)。他の共有結合性の結合、例えば、エステル結合(ヒドロキシ基と、カルボキシルとの間)、チオエステル結合、エーテル結合(2つのヒドロキシ基の間)、チオエーテル結合、無水物結合(2つのカルボキシルの間)、チオアミド結合、カルバマート結合またはチオカルバマート結合などもまた意図される。
【0127】
場合により、連結成分はジスルフィド結合を有しない。しかしながら、ジスルフィド結合を、モノマー間の連結を形成しない位置に含む連結成分(例えば、このようなジスルフィド結合の切断はモノマー間の連結を切断しない)は、本発明のこの実施形態の範囲内である。ジスルフィド結合を有しない連結成分の潜在的利点が、ジスルフィド結合を有しない連結成分は、ジスルフィド結合が感受性であるような穏和な還元条件による切断に対して感受性がないことである。
【0128】
場合により、連結成分は非ペプチド成分である(例えば、連結成分は、アミド結合、アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチドまたはポリペプチドからならない)。
【0129】
代替において、連結成分は、ペプチド成分(例えば、アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチドまたはポリペプチド)であってもよく、または、ペプチド成分(例えば、アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチドまたはポリペプチド)を含んでもよい。
【0130】
場合により、連結成分は単に、それに結合するα−ガラクトシダーゼモノマーのいずれかの線状伸長物ではない(すなわち、ペプチド成分のN末端またはC末端がα−ガラクトシダーゼモノマーのいずれかのC末端またはN末端に直接に結合しない)。
【0131】
代替において、連結成分が、融合ポリペプチドを生じさせるように、α−ガラクトシダーゼモノマーのN末端が別のα−ガラクトシダーゼモノマーのC末端と直接に共有結合で結合することによって形成される。そのようなポリペプチドはα−ガラクトシダーゼの天然型形態ではないであろう。だが、そのようなポリペプチドは2つのα−ガラクトシダーゼモノマーを本質的にはそれらの天然型形態で含むことができる。
【0132】
しかしながら、本明細書中に記載されるα−ガラクトシダーゼモノマーの共有結合性連結は好ましくは、C末端へのN末端の直接的連結とは異なる形態である。
【0133】
連結成分はまた、本明細書中では架橋成分として示される。α−ガラクトシダーゼモノマーを連結成分によって連結することは、本明細書中では「架橋する」として示される。
【0134】
架橋成分は、共有結合性の結合、化学的な原子または基(例えば、−C(=O)−O−基、−O−、−S−、NR−、−N=N−、−NH−C(=O)−NH−など)、または、橋かけ成分(化学的な基の鎖から構成される)が可能である。
【0135】
橋かけ成分は、例えば、ポリマー基又はオリゴマー基が可能である。
【0136】
橋かけ成分は、翻訳後修飾に関連づけられる側鎖、成分(例えば、糖類成分)、および/または、モノマーの2つ以上の末端(すなわち、N末端、C末端)に結合する多官能性成分(例えば、二価基、三価基など)である。
【0137】
本明細書中、実施例の節において例示されるように、比較的短い連結成分(例えば、PEG
2、PEG
4、PEG
5)は、種々のα−ガラクトシダーゼモノマーの間を架橋することにおいて、より長い連結成分(例えば、PEG
28、PEG
45)よりも効果的でないかもしれない。
【0138】
したがって、いくつかの実施形態によれば、連結成分は、共有結合性の結合、化学的な原子または基ではなく、むしろ、橋かけ成分である。
【0139】
したがって、いくつかの実施形態によれば、連結成分は、少なくとも10原子の長さであり、場合により少なくとも20原子の長さであり、場合により少なくとも30原子の長さであり、場合により少なくとも50原子の長さであり、場合により少なくとも100原子の長さであり、場合により少なくとも200原子の長さである。
【0140】
本明細書中において、連結成分の長さは(原子の数として表されるとき)、連結成分の骨格の長さ、すなわち、連結成分を介して連結される2つのモノマーのそれぞれの残基の間の線状鎖を形成する原子の数を示す。
【0141】
場合により、連結成分は、形成された架橋タンパク質における連結成分の不必要に過度な部分(この部分は当該タンパク質の機能を妨害するかもしれない)を避けるように、特定のサイズよりも小さくされる。
【0142】
したがって、いくつかの実施形態によれば、それぞれの連結成分は、20KDa未満の分子量、場合により10KDa未満の分子量、場合により5KDa未満の分子量、場合により3KDa未満の分子量によって特徴づけられる。
【0143】
架橋を容易にするために、連結成分は場合により実質的に柔軟であり、この場合、連結成分の骨格における結合は、ほとんどが回転において自由であり、例えば、(例えば、アミド結合とは異なり)二重結合に結合せず、かつ、回転が立体的に妨げられない単結合である。場合により、連結成分の骨格における結合の少なくとも70%、場合により少なくとも80%、場合により少なくとも90%(例えば、100%)が回転において自由である。
【0144】
いくつかの実施形態において、連結成分はポリ(アルキレングリコール)鎖を含む。
【0145】
表現「ポリ(アルキレングリコール)」は、本明細書中で使用される場合、下記の一般式をともに有するポリエーテルポリマーの一群を包含する:−O−[(CH
2)
m−O−]
n−、式中、mは、それぞれのアルキレングリコールユニットに存在するメチレン基の数を表し、nは反復ユニットの数を表し、したがって、ポリマーのサイズまたは長さを表す。例えば、m=2であるとき、ポリマーはポリエチレングリコールとして示され、m=3であるとき、ポリマーはプロピレングリコールとして示される。
【0146】
いくつかの実施形態において、mは、1よりも大きい整数である(例えば、m=2、3、4など)。
【0147】
場合により、mはポリ(アルキレングリコール)鎖のユニットの中で変化する。例えば、ポリ(アルキレングリコール)鎖は、一緒に連結されるエチレングリコールユニット(m=2)およびプロピレングリコールユニット(m=3)の両方を含むことができる。
【0148】
ポリ(アルキレングリコール)は場合により、少なくとも2つの官能基(例えば、本明細書中に記載されるような官能基)を含み、この場合、それぞれの官能基がα−ガラクトシダーゼモノマーの1つとの共有結合性の結合を形成する。そのような官能基は場合により、ポリ(アルキレングリコール)の末端基であり、その結果、ポリ(アルキレングリコール)の全長がこれら2つの官能基の間にある。
【0149】
表現「ポリ(アルキレングリコール)」はまた、酸素原子が別のヘテロ原子(例えば、Sおよび−NH−など)によって置換されるそのアナログを包含する。この用語はさらに、ポリマーを構成するメチレン基の1つまたは複数が置換される上記の誘導体を包含する。メチレン基における例示的な置換基には、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ヒドロキシ、オキソ、チオールおよびチオアルコキシなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0150】
表現「アルキレングリコールユニット」は、本明細書中で使用される場合、ポリ(アルキレングリコール)の骨格鎖を形成する本明細書中上記で記載されるような−(CH
2)
m−O−基またはそのアナログを包含し、この場合、(CH
2)
m(またはそのアナログ)が、別のアルキレングリコールユニットに属するヘテロ原子に結合するか、または、(末端ユニットの場合には)α−ガラクトシダーゼモノマー成分に結合し、かつ、O(またはそのヘテロ原子アナログ)が別のアルキレングリコールユニットの(CH
2)
m(またはそのアナログ)に結合するか、または、α−ガラクトシダーゼモノマーとの結合を形成する官能基に結合する。
【0151】
アルキレングリコールユニットは、アルキレングリコールユニットが3つ以上の隣接アルキレングリコールユニットに連結されるように分岐していてもよく、この場合、これら3つ以上の隣接するアルキレングリコールユニットのそれぞれがポリ(アルキレングリコール)鎖の一部分である。そのような分岐したアルキレングリコールユニットは、1つの隣接するアルキレングリコールユニットにそのヘテロ原子を介して連結され、残る隣接するアルキレングリコールユニットのヘテロ原子がそれぞれ、分岐したアルキレングリコールユニットの炭素原子に連結される。加えて、ヘテロ原子(例えば、窒素)は、ヘテロ原子がその一部分であるアルキレングリコールユニットの2つ以上の炭素原子と結合することができ、それにより、分岐したアルキレングリコールユニット(例えば、[(−CH
2)
m]
2N−など)を形成する。
【0152】
例示的な実施形態において、アルキレングリコールユニットの少なくとも50%が同一であり、例えば、それらは、互いに同じヘテロ原子および同じm値を含む。場合により、アルキレングリコールユニットの少なくとも70%、場合により少なくとも90%、場合により100%が同一である。例示的な実施形態において、同一のアルキレングリコールユニットに結合するヘテロ原子は酸素原子である。さらなる例示的な実施形態において、mは、同一ユニットについては2である。
【0153】
1つの実施形態において、リンカーは単一の直鎖リンカーであり、これは好ましくはポリエチレングリコール(PEG)である。
【0154】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリ(エチレングリコール)」は、アルキレングリコールユニットの少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、好ましくは100%が−CH
2CH
2−O−である本明細書中上記で定義されるようなポリ(アルキレングリコール)を表す。同様に、表現「エチレングリコールユニット」は、−CH
2CH
2O−のユニットとして本明細書中では定義される。
【0155】
選択可能な実施形態によれば、連結成分は、下記の一般式を有するポリ(エチレングリコール)またはそのアナログを含む:
−X
1−(CR
1R
2−CR
3R
4−Y)
n−X
2−
式中、X
1およびX
2のそれぞれが、少なくとも1つのα−ガラクトシダーゼモノマーとの共有結合性の結合を形成する官能基(例えば、本明細書中に記載されるような官能基)である;
Yは、O、SまたはNR
5(場合によりO)である;
nは整数であり、場合により1〜200(場合により5〜150、場合により40〜70)であり、だが、nのより大きい値もまた意図される;
R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5のそれぞれが独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ヒドロキシ、オキソ、チオールおよびチオアルコキシからなる群から選択される。
【0156】
いくつかの実施形態において、nは少なくとも5であり、場合により少なくとも8であり、場合により少なくとも15であり、場合により少なくとも25であり、場合により少なくとも40である。
【0157】
いくつかの実施形態において、nは最大でも200であり、場合により最大でも150であり、場合により最大でも70である。
【0158】
ポリ(エチレングリコール)またはそのアナログは場合により、例えば、上記式におけるCR
1R
2−CR
3R
4−Yユニットが互いに同一ではないコポリマーを含むことができる。
【0159】
いくつかの実施形態において、CR
1R
2−CR
3R
4−Yユニットの少なくとも50%が同一である。場合により、CR
1R
2−CR
3R
4−Yユニットの少なくとも70%、少なくとも90%、場合により100%が同一である。
【0160】
場合により、連結成分は、例えば、上記式における1つまたは複数のCR
1R
2−CR
3R
4−Yユニットについて、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5の少なくとも1つが−(CR
1R
2−CR
3R
4−Y)
p−X
3−(式中、R
1〜R
4およびYは本明細書中上記で定義される通りであり、pは、nについて本明細書中で定義されるような整数(例えば、1〜200)であり、X
3は、X
1およびX
2について本明細書中で定義される通りである)であるように分岐している。
【0161】
官能基は場合により、結合、例えば、アミド結合、エステル結合および/またはエーテル結合(これらに限定されない)を形成することができる。
【0162】
例えば、官能基は場合により、ポリペプチドにおける窒素原子(例えば、リシン残基またはN末端における窒素原子)とのアミド結合、または、ポリペプチドにおける酸素原子(例えば、セリン残基、トレオニン残基またはチロシン残基における酸素原子)とのエステル結合を形成するカルボニル基を含むことができる。
【0163】
代替において、または、加えて、官能基は場合により、ポリペプチドにおけるカルボニル基(例えば、グルタマート残基もしくはアスパルタート残基またはC末端におけるカルボニル基)とのアミド結合、エステル結合またはチオエステル結合を形成するヘテロ原子(例えば、N、S、O)を含むことができる。
【0164】
代替において、または、加えて、官能基は、ポリペプチドに結合する(例えば、ポリペプチドにおけるヘテロ原子に結合する)アルキル基またはアリール基を含むことができる。
【0165】
代替において、または、加えて、官能基は場合により、α−ガラクトシダーゼモノマーにおけるアルキル基とのアミン結合を形成する窒素原子を含むことができ、または、α−ガラクトシダーゼモノマーは場合により、官能基におけるアルキル基とのアミン結合を形成する窒素原子を含むことができる。そのようなアミン結合は、(例えば、本明細書中下記で記載されるような)還元的アミン化によって形成させることができる。
【0166】
いくつかの実施形態において、官能基の少なくとも1つがポリペプチドとのアミド結合(例えば、ポリペプチドにおけるリシン残基とのアミド結合)を形成する。
【0167】
官能基は互いに同一であってもよく、または、異なっていてもよい。
【0168】
いくつかの実施形態において、官能基の少なくとも1つがポリペプチドの1つの官能性(例えば、リシン残基またはN末端のアミン基)に結合し、官能基の少なくとも1つがポリペプチドの異なる官能性(例えば、システイン残基のチオール基)に結合する。
【0169】
選択可能な実施形態によれば、本明細書中に記載される多量体型タンパク質構造体は、大きい安定性をヒト血漿条件および/またはリソソーム条件において示す。
【0170】
本明細書中で使用される場合、表現「ヒト血漿条件」は、37℃の温度における、媒体としてのヒト血漿を示す。
【0171】
本明細書中で使用される場合、表現「リソソーム条件」は、37℃の温度における、媒体としての4.6のpHを有する水溶液(例えば、本明細書中に記載されるクエン酸塩リン酸塩緩衝液)を示す。
【0172】
リソソーム条件下での高まった安定性は好都合である。これは、リソソームが身体におけるα−ガラクトシダーゼ活性のための正常な場所であるように、リソソームがα−ガラクトシダーゼに対する補充療法のための標的であり、また、リソソーム条件(例えば、酸性pH)がα−ガラクトシダーゼの活性のための最適な条件を表すからである。
【0173】
何らかの特定の理論によってとらわれることはないが、血清様条件(例えば、本明細書中に記載されるヒト血漿条件)における高まった安定性もまた好都合であると考えられる。これは、血中における安定なα−ガラクトシダーゼが、細胞からの流出のために血液中に存在する代謝産物(例えば、Gb
3)に作用することができるからである。血清活性な多量体型タンパク質構造体は場合により、炎症を促進させる血管壁内に沈着するスフィンゴ糖脂質の除去および防止において効率的であり得ると考えられる[Bodary他、TCM、17(4):129〜133]。例えば、ファブリー病では、主要な病理発生が、Gb
3が血管内皮に蓄積することから生じ、その結果、小血管の血管閉塞、これらの血管の虚血および梗塞、ならびに、腎臓、心臓および脳における虚血および梗塞がもたらされる[Desnick他、2003、Annals of Internal Medicine、138(4):338〜346]。加えて、血清における高まった安定性は、リソソーム輸送が必要であることをなくすことができる。したがって、ERTをはるかにより利用しやくすることができる。これは、影響を受けにくい費用効果的な宿主システム、例えば、植物を用いることができるからである。
【0174】
選択可能な実施形態によれば、ヒト血漿条件における多量体型タンパク質構造体の大きい安定性は、多量体型タンパク質構造体が、ヒト血漿条件に1時間さらされたとき、天然型α−ガラクトシダーゼをそのヒト血漿条件に1時間さらしたときの天然型α−ガラクトシダーゼのα−ガラクトシダーゼ活性よりも少なくとも10%大きい、場合により20%大きい、場合により50%大きい、場合により100%大きいα−ガラクトシダーゼ活性を示すような安定性である。
【0175】
代替において、または、加えて、ヒト血漿条件における多量体型タンパク質構造体の大きい安定性は、多量体型タンパク質構造体のα−ガラクトシダーゼ活性が、ヒト血漿条件において、天然型α−ガラクトシダーゼの対応する活性よりも遅く低下するような安定性である。場合により、多量体型タンパク質構造体は、タンパク質構造体をヒト血漿条件に1時間さらしたとき、天然型α−ガラクトシダーゼの対応する活性が、天然型α−ガラクトシダーゼをヒト血漿条件に1時間さらしたときに低下する割合よりも少なくとも10%小さい、場合により20%小さい、場合により50%小さい、場合により80%小さい割合で低下する活性を示す。
【0176】
本明細書中では、50%の低下よりも「10%小さい」低下は、45%(45は50よりも10%小さい)の低下を示し、40%(50%〜10%)の低下を示さないことを理解しなければならない。
【0177】
代替において、または、加えて、ヒト血漿条件における多量体型タンパク質構造体の大きい安定性は、多量体型タンパク質構造体のα−ガラクトシダーゼ活性が、多量体型タンパク質構造体をヒト血漿条件に1時間(場合により、2時間、4時間、または、それどころか6時間)さらしたとき、実質的に変化しないままであるような安定性である。
【0178】
本明細書中で使用される場合、表現「実質的に変化しない」は、初期レベルの50%〜150%の範囲に留まるレベル(例えば、活性のレベル)を示し、また、場合により、初期レベルの少なくとも60%、場合により少なくとも70%、場合により少なくとも80%、場合により少なくとも90%のままであるレベルを示す。
【0179】
場合により、リソソーム条件における多量体型タンパク質構造体の大きい安定性は、多量体型タンパク質構造体が、リソソーム条件に所定の期間(例えば、1日間、2日間、3日間、1週間)さらされたとき、天然型α−ガラクトシダーゼをそのリソソーム条件に同じ所定の期間さらしたときの天然型α−ガラクトシダーゼの活性よりも少なくとも10%大きい、場合により20%大きい、場合により50%大きい、場合により100%大きいα−ガラクトシダーゼ活性を示すような安定性である。
【0180】
代替において、または、加えて、リソソーム条件における多量体型タンパク質構造体の大きい安定性は、多量体型タンパク質構造体のα−ガラクトシダーゼ活性が、リソソーム条件において、天然型α−ガラクトシダーゼの対応する活性よりも遅く低下するような安定性である。場合により、多量体型タンパク質構造体は、タンパク質構造体をリソソーム条件に所定の期間(例えば、1日間、2日間、3日間、1週間)さらしたとき、天然型α−ガラクトシダーゼの対応する活性が、天然型α−ガラクトシダーゼをリソソーム条件に同じ期間さらしたときに低下する割合よりも少なくとも10%小さい、場合により20%小さい、場合により50%小さい、場合により80%小さい割合で低下する活性を示す。
【0181】
代替において、または、加えて、リソソーム条件における多量体型タンパク質構造体の大きい安定性は、多量体型タンパク質構造体のα−ガラクトシダーゼ活性が、多量体型タンパク質構造体をリソソーム条件に1日間、2日間、3日間、1週間、2週間および/または1ヶ月間さらしたとき、実質的に変化しないままであるような安定性である。
【0182】
本明細書中の実施例の節において例示されるように、より大きい安定性を長期間にわたって示すことに加えて、多量体型タンパク質構造体は、天然型α−ガラクトシダーゼのパラメーターとは異なるα−ガラクトシダーゼ活性のパラメーターを示すことができる。
【0183】
したがって、選択可能な実施形態によれば、多量体型タンパク質構造体は、時間の経過に伴う活性の何らかの低下とは無関係に、本タンパク質の天然型形態のα−ガラクトシダーゼ活性よりも大きいα−ガラクトシダーゼ活性を示すとして特徴づけられる。場合により、活性は天然型形態の対応する活性よりも10%大きく、場合により20%大きい。
【0184】
そのような活性を特徴づけるために、活性は好ましくは、天然型α−ガラクトシダーゼまたは多量体型タンパク質構造体を、活性が実質的に低下する条件(例えば、本明細書中に記載されるような条件)にさらした直後(例えば、1時間以内、15分以内)に求められ、その結果、測定された活性は、安定性の程度ではなく、活性自体を反映するであろう。
【0185】
場合により、多量体型タンパク質構造体は、リソソーム条件において、天然型α−ガラクトシダーゼの対応する活性よりも大きいα−ガラクトシダーゼ活性を示すとして特徴づけられる。
【0186】
代替において、または、加えて、多量体型タンパク質構造体は、中性pHでの模擬生理学的条件において、天然型α−ガラクトシダーゼの対応する活性よりも大きいα−ガラクトシダーゼ活性を示すとして特徴づけられる。模擬生理学的条件は、37℃の温度での水溶液(例えば、リン酸塩緩衝化生理的食塩水)を含む。pHは場合により7である。代替において、pHは7.4である。
【0187】
本明細書中に記載されるα−ガラクトシダーゼ活性は、α−ガラクトシダーゼに特徴的である生物学的活性(例えば、α−ガラクトシダーゼに特徴的な触媒活性、例えば、基質の末端α−ガラクトシル成分の加水分解など)である。
【0188】
いくつかの実施形態において、α−ガラクトシダーゼの触媒活性が、飽和における触媒作用の速度(すなわち、V
max値)によって特徴づけられる。
【0189】
代替において、α−ガラクトシダーゼ活性は、治療活性(例えば、治療効果を有する酵素活性)、例えば、ファブリー病の関連での治療活性などである。場合により、治療活性は実験動物(例えば、Fabryマウス)において求められ、また、場合によりヒトのファブリー病患者において求められる。
【0190】
α−ガラクトシダーゼの活性を求めるための技術が当業者には知られているであろう。典型的には、α−ガラクトシダーゼ(すなわち、天然型形態または本明細書中に記載される多量体型タンパク質構造体)が、α−ガラクトシダーゼの基質としてこの技術分野において認識される化合物と接触させられ、その後、活性の程度が定量的に求められる。α−ガラクトシダーゼ活性の特に便利な検出を可能にする化合物がこの技術分野では知られており、また、市販されている。
【0191】
いくつかの実施形態において、α−ガラクトシダーゼ活性が、(例えば、本明細書中の実施例の節において記載されるように)4−メチルウンベリフェリル−α−D−ガラクトピラノシドの加水分解をアッセイすることによって求められる。
【0192】
いくつかの実施形態において、α−ガラクトシダーゼ活性が、(例えば、本明細書中の実施例の節において記載されるように)p−ニトロフェニル−α−D−ガラクトピラノシドの加水分解をアッセイすることによって求められる。
【0193】
本明細書中に記載される多量体型タンパク質構造体の活性を天然型α−ガラクトシダーゼの活性と比較するとき、天然型α−ガラクトシダーゼは好ましくは、多量体構造体のα−ガラクトシダーゼモノマーと(例えば、アミノ酸配列およびグリコシル化パターンに関して)実質的に同一であるα−ガラクトシダーゼモノマーを含む。
【0194】
いくつかの実施形態によれば、多量体型タンパク質構造体は、生理学的システム(例えば、ヒトまたは実験動物の血液、血清および/または血漿)において、天然型α−ガラクトシダーゼの循環半減期よりも大きい(例えば、少なくとも20%、少なくとも50%大きい、少なくとも100%大きい、少なくとも400%大きい、少なくとも900%大きい)循環半減期によって特徴づけられる。
【0195】
増大した循環半減期には場合により、より大きいインビトロ安定性(例えば、本明細書中に記載されるようなインビトロ安定性)、より大きいインビボ安定性(例えば、代謝に対する抵抗性)、および/または、他の要因(例えば、低下した腎クリアランス)が伴い得る。
【0196】
循環半減期は、サンプル(例えば、血液サンプル、組織サンプル)を生理学的システム(例えば、ヒト、実験動物)から様々な間隔で採取し、サンプル中のα−ガラクトシダーゼのレベルを、この技術分野で知られている技術を使用して求めることによって求めることができる。
【0197】
一般に、半減期は、(例えば、実施例の節において記載されるように)消失期半減期として計算され、この場合、半減期は、濃度(例えば、血中濃度)が、分布の偽平衡に達した後で50%低下するために必要とされる時間である。消失期半減期は、時間対log濃度の線形回帰によって、時間対log濃度の消失期の直線部分から計算することができる(例えば、Toutain&Bousquet−Melou[J Vet Pharmacol Ther、2004、27:427〜39]を参照のこと)。したがって、消失期半減期は、薬物排出に起因する薬物の血漿濃度における低下の尺度であり、他の理由に起因する低下の尺度ではなく、投与薬物の量が1/2に低下するために必要な時間であるとは限らない。
【0198】
α−ガラクトシダーゼ(例えば、多量体型タンパク質構造体または天然型α−ガラクトシダーゼ)のレベルを求めることは、(例えば、α−ガラクトシダーゼに対する抗体を介して)α−ガラクトシダーゼの物理的存在を検出すること、および/または、(例えば、本明細書中に記載されるように)α−ガラクトシダーゼ活性のレベルを検出することを含むことができる。
【0199】
いくつかの実施形態によれば、多量体型タンパク質構造体は、タンパク質構造体を脊椎動物(例えば、ヒト、マウス)に、例えば、α−ガラクトシダーゼ欠乏症の脊椎動物(例えば、ヒトのファブリー病患者、Fabryマウス)に投与したときの器官(例えば、脾臓、心臓、腎臓、脳、肝臓)におけるα−ガラクトシダーゼ活性によって特徴づけられる。場合により、そのような器官におけるα−ガラクトシダーゼ活性は、脊椎動物への同等な投与を行ったとき、そのような器官における天然型α−ガラクトシダーゼのα−ガラクトシダーゼ活性よりも大きい。
【0200】
器官における活性は、α−ガラクトシダーゼの取り込みおよび/または取り込み後のα−ガラクトシダーゼ活性の保持の関数であるかもしれない。
【0201】
場合により、器官におけるα−ガラクトシダーゼ活性は、投与後2時間、ならびに、投与後の場合により24時間、場合により3日、場合により7日、および、場合により14日において求められる。
【0202】
肝臓におけるα−ガラクトシダーゼの増大した活性には、一部の場合には、身体の他の部分におけるより低い活性が伴うことがあり、したがって、α−ガラクトシダーゼの低下した生物学的効果が伴うことがある。
【0203】
したがって、いくつかの実施形態において、多量体型タンパク質構造体は、肝臓以外の器官における高まったα−ガラクトシダーゼ活性によって特徴づけられる。例示的な器官には、脾臓、心臓および腎臓が含まれる。
【0204】
いくつかの実施形態において、多量体型タンパク質構造体は、同等な投与の後における天然型α−ガラクトシダーゼの活性よりも少なくとも20%大きい、場合により少なくとも50%大きい、場合により少なくとも100%大きい、場合により少なくとも300%大きい(本明細書中に記載されるような)投与後の器官における高まったα−ガラクトシダーゼ活性によって特徴づけられる。本明細書中上記で記されるように、本発明者らは、架橋されたα−ガラクトシダーゼモノマーの多量体型構造体によるα−ガラクトシダーゼの安定化形態を考案し、その調製および実施に成功している。
【0205】
場合により、α−ガラクトシダーゼは、例えば、ヒト対象への投与のための最適な生体適合性を容易にするために、ヒトα−ガラクトシダーゼ(例えば、組換えヒトα−ガラクトシダーゼ)である。ヒトα−ガラクトシダーゼが、例えば、Replagal(登録商標)(アガルシダーゼアルファ、Shire)およびFabrazyme(登録商標)(アガルシダーゼベータ、Genzyme)として市販されている。
【0206】
本明細書中において、「ヒトα−ガラクトシダーゼ」は、ヒトにおいて生まれながらに存在するα−ガラクトシダーゼタンパク質のアミノ酸配列と実質的に同一な(例えば、本明細書中上記で記載されるような)アミノ酸配列を含むα−ガラクトシダーゼを示す。
【0207】
いくつかの実施形態において、α−ガラクトシダーゼは植物組換えα−ガラクトシダーゼである。例示的なα−ガラクトシダーゼには、植物組換えヒトα−ガラクトシダーゼが含まれる。
【0208】
α−GALの例には、限定されないが、配列番号1、配列番号2および配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するα−GALが含まれる。場合により、α−GALは、配列番号2および配列番号3からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0209】
本明細書中で使用される場合、「α−ガラクトシダーゼ」は、Gb
3におけるガラクトース成分に対する酵素活性(例えば、加水分解)を示すどのようなタンパク質をも示す(例えば、α−ガラクトシダーゼA)。場合により、「α−ガラクトシダーゼ」はE.C.3.2.1.22を示す。
【0210】
本発明の実施形態のα−ガラクトシダーゼは、(例えば、植物組織または動物組織から)精製することができ、または、組換えDNA技術によって作製することができる。
【0211】
本明細書中に記載されるように、血清中におけるα−ガラクトシダーゼの活性は、例えば、血清中のGb
3レベルを低下させるために非常に好都合であるかもしれない。
【0212】
したがって、いくつかの実施形態において、α−ガラクトシダーゼはアルカリ性α−ガラクトシダーゼである。
【0213】
本明細書中で使用される場合、表現「アルカリ性α−ガラクトシダーゼ」は、末端連結のα−ガラクトース成分を中性〜塩基性のpH条件(例えば、約pH7〜7.5)のもとで、特に、正常な血清pH(例えば、約7.35〜7.45)のもとでガラクトース含有オリゴ糖から加水分解できることによって特徴づけられるα−GALを示す。
【0214】
本発明のいくつかの実施形態のアルカリ性α−GALは中性〜塩基性のpH条件のもとで活性であり得るが、酸性のpH条件(すなわち、約4.6)のもとで活性を依然として示し得ることが理解されるであろう。
【0215】
具体的な実施形態において、上記酵素は酸性〜塩基性のpH条件(すなわち、約pH4.2〜7.5)のもとで活性である。
【0216】
さらに別の具体的な実施形態において、上記酵素は約6.5〜7.5のpHのもとで活性である。
【0217】
本教示に従って使用することができるアルカリ性α−ガラクトシダーゼの具体的な例が、米国特許出願公開第20070036883号、国際公開WO03/097791および国際出願PCT/IL2010/000956において提供される(これらのそれぞれが本明細書によりその全体において参照によって組み込まれる)。
【0218】
したがって、アルカリ性α−ガラクトシダーゼは、ウリ科、シソ科、コショウ科、ナス科、マメ科、アブラナ科およびイネ科からなる群から選択される植物科の1つに含まれ得る。
【0219】
具体的な実施形態によれば、上記アルカリ性α−ガラクトシダーゼがメロンから得られる。
【0220】
P.−R.GaudreaultおよびJ.A.Webbは、いくつかの刊行物(例えば、「Alkaline alpha−galactosidase in leaves of Cucurbita pepo」、Plant Sci.Lett.、24、281〜288、1982;「Partial purification and properties of an alkaline alpha−galactosidase from mature leaves of Cucurbita pepo」、Plant Physiol.、71、662〜668、1983;および、「Alkaline alpha−galactosidase activity and galactose metabolism in the family Cucurbitaceae」、Plant Science、45、71〜75、1986)において、至適活性をアルカリ性条件(pH7.5)において有する、ペポカボチャの若い葉から精製される新規なα−ガラクトシダーゼを記載している。このアルカリ性α−ガラクトシダーゼに加えて、彼らはまた、この酵素の3つの酸性形態を報告し、異なった基質選択性がこれらの酸性形態およびアルカリ性形態について見出された。
【0221】
アルカリ性pHにおけるα−ガラクトシダーゼ活性が、他のウリ科植物組織において、例えば、キュウリ果実の小花柄、若いカボチャ果実および若いメロン果実などにおいて認められている(「Melons: Biochemical and Physiological Control of Sugar Accumulation」、Encyclopedia of Agricultural Science、第3巻、25頁〜37頁、Arntzen,C.J.他編、Academic Press、New York、1994)。
【0222】
Bachmann他(「Metabolism of the raffinose family oligosaccharides in leaves of Ajuga reptens L.」、Plant Physiology、105:1335〜1345、1994)は、アジュガ・レプテンス植物(コモンビューグル)、無関係なシソ科から得られるスタキオース輸送体もまたアルカリ性α−ガラクトシダーゼを含有することを開示する。この酵素は、部分的な特徴づけが行われ、スタキオースに対する大きい親和性を有することが見出された。また、コショウ科由来のペペロミア・カンプトトリカ・エル(Peperomia camptotricha L.)植物の葉がα−ガラクトシダーゼ活性をアルカリ性pHにおいて示す。このことは、その葉がアルカリ性α−ガラクトシダーゼ酵素をも含有することを示唆する(Madore,M.、「Catabolism of raffinose family oligosaccharides by vegetative sink tissues」、Carbon Partitioning and Source−Sink Interactions in Plants、Madore,M.およびLucas,W.J.(編)、204頁〜214頁、1995、American Society of Plant Physiologists、Maryland)。同様に、GaoおよびSchaffer(Plant Physiol.、1999、119:979〜88、これは参照によって全体が組み込まれる)は、アルカリ性のpH至適を有するα−ガラクトシダーゼ活性を、ウリ科およびコレウス属(シソ科)のメンバーを含む様々な植物種から得られる組織の粗抽出物において報告している。
【0223】
植物のアルカリ性α−ガラクトシダーゼ配列の具体的な例が、配列番号4、配列番号5および配列番号13(メロン(Cucumis melon))、配列番号6(ツルナ(T.tetragonioides))、配列番号7および配列番号12(キュウリ(Cucumis sativus))、配列番号8および配列番号9(トウモロコシ(Zea mays))、配列番号10(イネ(Oruza sativa))、配列番号11(エンドウ(Pisum sativum))、ならびに、配列番号14(アラビアコーヒーノキ(Coffea arabica))において提供される。
【0224】
いくつかの実施形態において、α−ガラクトシダーゼは酸性α−ガラクトシダーゼである。
【0225】
本明細書中で使用される場合、「酸性α−ガラクトシダーゼ」は、末端連結のα−ガラクトース成分を酸性pH条件(例えば、約pH4.2〜5)のもとで、例えば、リソソームに存在する条件などのもとでガラクトース含有オリゴ糖から加水分解できることによって特徴づけられるα−ガラクトシダーゼを示す。
【0226】
本発明の実施形態のα−ガラクトシダーゼは、過度な有害な免疫学的反応(例えば、植物対ヒト)がインビボ投与のときに誘導されないならば、ヒト、動物または植物のどのような供給源のものでも可能である。
【0227】
免疫学的反応を軽減するために、非ヒトα−ガラクトシダーゼの調製物(例えば、植物α−ガラクトシダーゼの調製物)をヒトα−ガラクトシダーゼ(すなわち、酸性ヒトα−ガラクトシダーゼ)と同時投与することができる。
【0228】
場合により、多量体型タンパク質構造体はさらに、少なくとも1つのマンノース−6−リン酸(M6P)成分を含む。そのようなM6P成分(1つまたは複数)は(例えば、リンカーを介して)多量体型タンパク質構造体のα−ガラクトシダーゼモノマーの1つまたは複数に連結することができる。
【0229】
M6P含有成分を生体分子(例えば、ポリペプチド)に導入するための技術および試薬が国際公開WO2009/024977に記載される。
【0230】
本明細書中の実施例の節において例示されるように、本明細書中に記載される多量体型タンパク質構造体は、α−ガラクトシダーゼを架橋剤と反応させることによって都合よく調製することができる。
【0231】
したがって、本発明の実施形態の別の局面によれば、本明細書中に記載される多量体型タンパク質構造体を調製するプロセスが提供される。このプロセスは、少なくとも2つのα−ガラクトシダーゼモノマーを共有結合で連結する少なくとも1つの連結成分を導入するように、α−ガラクトシダーゼを反応させることを含む。
【0232】
場合により、連結成分は、1つのα−ガラクトシダーゼモノマーを別のα−ガラクトシダーゼモノマーに連結する結合(例えば、アミド結合、ジスルフィド結合)である。場合により、そのような結合は、好適な条件および/または試薬を使用することによって導入される。例えば、アミド結合をカルボン酸基およびアミン基から形成するために好適である試薬がこの技術分野では知られている。
【0233】
場合により、連結成分は、α−ガラクトシダーゼの一部分に由来しない成分である。例えば、連結成分は、小分子(例えば、アミノ酸)のオリゴマー、ポリマー、残基であってもよい。
【0234】
いくつかの実施形態において、連結成分は、α−ガラクトシダーゼを、連結成分(例えば、本明細書中に記載されるような連結成分)および少なくとも2つの反応基を含む架橋剤と反応させることによって導入される。
【0235】
場合により、α−ガラクトシダーゼは、天然型α−ガラクトシダーゼがダイマー型形態である条件のもとで反応させられる。
【0236】
いくつかの実施形態において、架橋剤は、5:1〜500:1(架橋剤:α−ガラクトシダーゼモノマー)の範囲でのモル比で、場合により50:1〜400:1の範囲でのモル比で、場合により75:1〜300:1の範囲でのモル比(例えば、約100:1、約200:1)でα−ガラクトシダーゼと反応させられる。
【0237】
上記プロセスは場合によりさらに、架橋されたタンパク質を精製すること、例えば、過剰な架橋剤を除くことを含む。一般的な精製方法を使用することができる(例えば、適切なカットオフ・メンブランを使用する透析および限外ろ過、ならびに/または、さらなるクロマトグラフィー工程、これには、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよび疎水性相互作用クロマトグラフィーなどが含まれる)。
【0238】
反応基は、α−ガラクトシダーゼモノマーにおける相補的な官能性との結合形成をもたらす化学反応を受けるために好適な反応基が選択される。場合により、それぞれの反応基が、共有結合性の結合を、(例えば、本明細書中に記載されるように、ポリペプチドに結合する官能基を形成するように)、本明細書中に記載される連結成分と、少なくとも1つのポリペプチドとの間で形成することができる。
【0239】
架橋剤の反応基は互いに同一であってもよく、または、異なっていてもよい。
【0240】
本明細書中で使用される場合、表現「反応基」は、典型的には結合形成をもたらす化学反応を受けることができる化学基を表す。結合は、本実施形態によれば、好ましくは、(例えば、反応基のそれぞれについて)共有結合性の結合である。結合形成をもたらす化学反応には、例えば、求核置換および求電子置換、求核付加反応および求電子付加反応、アルキル化、付加脱離反応、付加環化反応、転移反応、ならびに、官能基を伴う何らかの他の知られている有機反応、同様にまた、それらの組合せが含まれる。
【0241】
反応基は場合により、例えば、反応基の反応性部分を本明細書中に記載される連結成分(例えば、ポリ(アルキレングリコール)またはそのアナログ)に結合するために役立ち得る非反応性部分(例えば、アルキル)を含むことができる。
【0242】
反応基は好ましくは、α−ガラクトシダーゼへのそのコンジュゲート化を可能にするように選択される。例示的な反応基には、カルボキシラート(例えば、−CO
2H)、チオール(−SH)、アミン(−NH
2)、ハロ、アジド(−N
3)、イソシアナート(−NCO)、イソチオシアナート(−N=C=S)、ヒドロキシ(−OH)、カルボニル(例えば、アルデヒド)、マレイミド、スルファート、ホスファート、スルホニル(例えば、メシル、トシル)など、ならびに、活性化された基、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(例えば、NHSエステル)、スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド、無水物、アシルハリド(−C(=O)−ハロゲン)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0243】
いくつかの実施形態において、反応基は脱離基を含み、例えば、求核置換を受けやすい脱離基(例えば、ハロ、スルファート、ホスファート、カルボキシラート、N−ヒドロキシスクシンイミド)などを含む。
【0244】
場合により、反応基はその活性化形態であってもよい。
【0245】
本明細書中で使用される場合、表現「活性化形態」は、化学基(例えば、反応基)の誘導体で、当該化学基よりも反応性が大きく、したがって、結合形成をもたらす化学反応を受けることが容易に可能であるものを表す。活性化形態は、特に好適な脱離基を含むことができ、それにより、置換反応を容易にする。例えば、−C(=O)−NHS基(N−ヒドロキシスクシンイミドエステルまたは−C(=O)−O−スクシンイミド)は、−C(=O)OHの広く知られている活性化形態である。これは、NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)は−C(=O)OHと反応して、−C(=O)−NHSを形成することができ、−C(=O)−NHSは、−C(=O)OH基を伴う反応に特徴的な生成物(例えば、アミドおよびエステル)を形成するために容易に反応するからである。
【0246】
反応基は、種々の基、原子または結合を介して連結成分(例えば、ポリ(アルキレングリコール)またはそのアナログ)の残部に結合することができる。これらには、エーテル結合[例えば、−O−アルキル−]、エステル結合[例えば、−O−C(=O)−アルキル−]、カルバマート結合[例えば、O−C(=O)−NH−アルキル−]などが含まれ得る。したがって、様々な末端基を用いることができる。
【0247】
下記は、本明細書中に記載されるような反応基を構成し得る種々の基の限定されない例である:−CH
2CO
2H、−CH
2CH
2CO
2H、−CH
2CH
2SH、−CH
2CH
2NH
2、−CH
2CH
2N
3、−CH
2CH
2NCO、−CH
2−C(=O)−NHS、−CH
2CH
2−C(=O)−NHS、−C(=O)−CH
2−C(=O)−NHS、−CH
2CH
2−NHC(=O)CH
2CH
2−マレイミドなど。
【0248】
上記反応基のそれぞれにおけるメチレン基の数は単に例示にすぎず、変化し得る。
【0249】
反応基はまた、ポリ(アルキレングリコール)鎖の末端におけるヘテロ原子(例えば、−OH)を含むことができる。
【0250】
本発明の例示的な実施形態において、反応基はカルボキシラート(例えば、活性化カルボキシラート、例えば、N−ヒドキシスクシンイミドエステルなど)を含む。
【0251】
場合により、反応基はα−ガラクトシダーゼにおけるアミン基(例えば、リシン残基および/またはN末端におけるアミン基)と反応して、アミド結合を形成する。
【0252】
いくつかの実施形態において、反応基の反応は還元的アミン化を含み、この場合、アミン基がアルデヒド基と反応して、イミンを形成し、このイミンが(例えば、還元剤(例えば、シアノホウ水素化ナトリウムなど)の添加によって)還元されて、アミン結合を形成する。反応基は、α−ガラクトシダーゼのアルデヒド基(例えば、タンパク質のポリペプチドに結合する糖類成分におけるアルデヒド基)と反応するアミン基であってもよく、または、反応基は、α−ガラクトシダーゼのアミン基(例えば、リシン残基におけるアミン基)と反応するアルデヒド基であってもよい。場合により、α−ガラクトシダーゼの糖類成分は、反応基と、α−ガラクトシダーゼとの反応の前に、酸化剤によって酸化されて、アルデヒド基を形成する。例えば、糖類と、過ヨウ素酸ナトリウムとの反応を、1対のアルデヒド基を糖類成分において生じさせるために使用することができる。
【0253】
いくつかの実施形態において、反応基の少なくとも1つが、α−ガラクトシダーゼモノマーの1つの官能性(例えば、リシン残基またはN末端のアミン基)と反応するように選択され、かつ、反応基の少なくとも1つが、α−ガラクトシダーゼモノマーの異なる官能性(例えば、システイン残基のチオール基)と反応するように選択される。
【0254】
場合により、本明細書中に記載される1つまたは複数のポリペプチドは、(例えば、本明細書中に記載されるような)M6P含有の多量体型タンパク質構造体を得るために、1つまたは複数のM6P成分を導入するためのグリコシル化試薬と反応させられる。好適なM6P含有グルコシル化試薬およびそれらの使用が、例えば、国際公開WO2009/024977に記載される。
【0255】
本明細書中で使用される場合、用語「アミン」および用語「アミノ」は、−NR’R’’基(式中、R’およびR’’は、水素、アルキル、シクロアルキル、複素脂環式(これは環炭素を介して結合する)、アリールおよびヘテロアリール(これらは環炭素を介して結合する)からなる群から選択される)を示す。R’およびR’’はその炭素原子を介して結合する。場合により、R’およびR’’は、水素、および、1個〜4個の炭素原子を含むアルキルからなる群から選択される。場合により、R’およびR’’は水素である。
【0256】
本明細書中で使用される用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和した脂肪族炭化水素を示す。好ましくは、アルキル基は1個〜20個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「1個〜20個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などの20個までの炭素原子を含むということを意味する。さらに好ましくは、アルキル基は、1個〜10個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルである。最も好ましくは、他に示さない限り、アルキル基は、1個〜4個の炭素原子を有するアルキルである。アルキル基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アジド、スルフォンアミド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミドおよびアミノであり得る(これらの用語は本明細書中で定義される)。
【0257】
本明細書中で使用される用語「シクロアルキル」基は、環の1つまたは複数が完全共役のπ電子系を有しない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。シクロアルキル基の非限定な例には、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエンおよびアダマンタンがある。シクロアルキル基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アジド、スルフォンアミド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミドおよびアミノであり得る(これらの用語は本明細書中で定義される)。
【0258】
「アルケニル」基は、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素二重結合からなるアルキル基を示す。
【0259】
「アルキニル」基は、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素三重結合からなるアルキル基を示す。
【0260】
「アリール」は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。アリール基の非限定的な例には、フェニル、ナフタレニルおよびアントラセニルがある。アリール基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アジド、スルフォンアミド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミドおよびアミノであり得る(これらの用語は本明細書中で定義される)。
【0261】
用語「ヘテロアリール」基には、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有し、さらには完全共役のπ電子系を有する単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基が含まれる。ヘテロアリール基の非限定的な例には、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが含まれる。ヘテロアリール基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アジド、スルフォンアミドホスホニル、ホスフィニル、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミドおよびアミノであり得る(これらの用語は本明細書中で定義される)。
【0262】
「複素脂環」基は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有する単環基または縮合環基を示す。環はまた、1つまたは複数の二重結合を有することができる。しかしながら、環は完全共役のπ電子系を有しない。複素脂環基は、置換または非置換であり得る。置換されるとき、置換基は、例えば、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、スルフィニル、スルホニル、シアノ、ニトロ、アジド、スルフォンアミド、ホスホニル、ホスフィニル、オキソ、カルボニル、チオカルボニル、尿素、チオ尿素、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、スルホンアミドおよびアミノであり得る(これらの用語は本明細書中で定義される)。
【0265】
「アルコキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−O−アルキル基および−O−シクロアルキル基の両方を示す。
【0266】
「アリールオキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−O−アリール基および−O−ヘテロアリール基の両方を示す。
【0267】
「エーテル」は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたは複素脂環基に結合されたアルコキシ基およびアリールオキシ基の両方を示す。
【0268】
エーテル結合は、−O−結合を記述する。
【0269】
「チオヒドロキシ」または「チオール」基は−SH基を示す。
【0270】
「チオアルコキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−S−アルキル基および−S−シクロアルキル基の両方を示す。
【0271】
「チオアリールオキシ」基は、本明細書中で定義されるように、−S−アリール基および−S−ヘテロアリール基の両方を示す。
【0272】
「チオエーテル」は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたは複素脂環基に結合されたチオアルコキシ基およびチオアリールオキシ基の両方を示す。
【0273】
チオエーテル結合は、−S−結合を記述する。
【0274】
「ジスルフィド」基は、−S−チオアルコキシ基および−S−チオアリールオキシ基の両方を示す。
【0275】
ジスルフィド結合は、−S−S−結合を記述する。
【0276】
「カルボニル」基は、−C(=O)−R′基(式中、R′は、上述のように定義される)を示す。
【0277】
「チオカルボニル」基は−C(=S)−R′基(式中、R′は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0278】
「カルボキシル」は、「C−カルボキシ」および「O−カルボキシ」の両方を示す。
【0279】
「C−カルボキシ」基は−C(=O)−O−R′基(式中、R′は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0280】
「O−カルボキシ」基はR′C(=O)−O−基(式中、R′は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0282】
「カルボキシレート」または「カルボキシル」は、本明細書中で定義される通り、C−カルボキシおよびO−カルボキシの両方を包含する。
【0283】
「カルボン酸」基は、R′が水素であるC−カルボキシ基を示す。
【0284】
「チオカルボキシ」基または「チオカルボキシレート」基は、−C(=S)−O−R′基および−O−C(=S)R′基の両方を示す。
【0285】
「エステル」は、R′が水素でないC−カルボキシ基を示す。
【0286】
エステル結合は、−O−C(=O)−結合を示す。
【0287】
チオエステル結合は、−O−C(=S)−結合または−S−C(=O)結合を示す。
【0288】
「ハロ」基は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示す。
【0289】
「スルフィニル」基は−S(=O)−R′基(式中、R′は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0290】
「スルホニル」基は−S(=O)
2−R′基(式中、R′は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0291】
「スルホネート」基は−S(=O)
2−O−R′基(式中、R′は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0292】
「スルフェート」基は、−O−S(=O)
2−O−R′基(式中、R′は本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0293】
「スルホンアミド」基は、本明細書中で定義される通り、S−スルホンアミド基およびN−スルホンアミド基の両方を包含する。
【0294】
「S−スルホンアミド」基は−S(=O)
2−NR′R′′基(式中、R′およびR′′は各々本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0295】
「N−スルホンアミド」基はR′S(=O)
2−NR′′基(式中、R′およびR′′は各々本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0296】
「O−カルバミル」基は−OC(=O)−NR′R′′−基(式中、R′およびR′′は各々本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0297】
「N−カルバミル」基はR′OC(=O)−NR′′−基(式中、R′およびR′′は各々本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0298】
「カルバミル」基または「カルバメート」基は、O−カルバミル基およびN−カルバミル基を包含する。
【0299】
カルバメート結合は、−O−C(=O)−NR′−結合(式中、R′は本明細書中で定義される通りである)を記述する。
【0300】
「O−チオカルバミル」基は−OC(=S)−NR′R′′基(式中、R′およびR′′は各々本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0301】
「N−チオカルバミル」基はR′OC(=S)NR′′−基(式中、R′およびR′′は各々本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0302】
「チオカルバミル」基または「チオカルバメート」基は、O−チオカルバミル基およびN−チオカルバミル基を包含する。
【0303】
チオカルバメート結合は、−O−C(=S)−NR′−結合(式中、R′は本明細書中で定義される通りである)を記述する。
【0304】
「C−アミド」基は−C(=O)−NR′R′′基(式中、R′およびR′′は各々本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0305】
「N−アミド」基はR′C(=O)−NR′′−基(式中、R′およびR′′は各々本明細書中で定義される通りである)を示す。
【0306】
「アミド」基はC−アミド基およびN−アミド基の両方を包含する。
【0307】
アミド結合は−NR′−C(=O)−結合(式中、R′は本明細書中で定義される通りである)を記述する。
【0308】
アミン結合は、(本明細書中で定義される通りの)アミン基中の窒素原子と、アミン基中のR′基との間の結合を記述する。
【0309】
チオアミド結合は−NR′−C(=S)−結合(式中、R′は本明細書中で定義される通りである)を記述する。
【0310】
「尿素」基は−N(R′)−C(=O)−NR′′R′′′基(式中、R′およびR′′は各々本明細書中で定義される通りであり、R′′′はR′およびR′′が本明細書中で定義される通りに定義される)を示す。
【0313】
用語「ホスホニル」または「ホスホネート」は−P(=O)(OR′)(OR′′)基を示し、式中、R′およびR′′は上述の通り定義される。
【0314】
用語「ホスフェート」は−O−P(=O)(OR′)(OR′′)基を示し、式中、R′およびR′′は各々上述の通り定義される。
【0315】
「リン酸」は、各々のRが水素であるホスフェート基を示す。
【0316】
用語「ホスフィニル」は−PR′R′′基(式中、R′およびR′′は各々上述の通り定義される)を示す。
【0317】
用語「チオ尿素」は、−N(R′)−C(=S)−NR′′−基(式中、R′およびR′′は各々上述の通り定義される)を示す。
【0318】
本明細書中に記載されるように、本明細書中に記載される多量体型タンパク質構造体は、改善された安定性、ならびに、より強いおよび/またはより長く持続するα−ガラクトシダーゼ活性をインビボにおいて治療的重要な部位で示すことができる。したがって、そのような多量体型タンパク質構造体は、治療適用および研究適用を含めて、α−ガラクトシダーゼ活性が望ましい様々な医療適用における使用のために非常に有益である。
【0319】
したがって、いくつかの実施形態によれば、本明細書中に記載される多量体型タンパク質構造体は、医薬品として、例えば、ファブリー病を処置するための医薬品として使用されるためのものである。
【0320】
本発明の実施形態の別の局面によれば、ファブリー病を処置する方法であって、本明細書中に記載される多量体型タンパク質構造体の治療効果的な量をその必要性のある対象に投与することを含む方法が提供される。
【0321】
本発明の実施形態の別の局面によれば、本明細書中に記載されるような多量体型タンパク質構造体と、医薬的に許容され得る担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0322】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される多量体型タンパク質構造体の1つまたは複数と、他の化学的成分(例えば、医薬的に許容され得る好適な担体および賦形剤など)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、生物に対する化合物の投与を容易にすることである。
【0323】
本明細書中以降、用語「医薬的に許容され得る担体」は、生物に対する著しい刺激を生じさせず、かつ、投与された化合物の生物学的な活性および性質を妨げない担体または希釈剤を示す。医薬的に許容され得る担体の例は、プロピレングリコール、生理的食塩水、有機溶媒と水とのエマルジョンおよび混合物、並びに固型(例えば粉末)および気体状担体であるが、これらに限定されない。
【0324】
本明細書中において、用語「賦形剤」は、化合物の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0325】
医薬組成物は、多量体型タンパク質構造体のα−ガラクトシダーゼをさらに安定にする追加の成分を任意選択的に含むことができる。任意選択的に、追加の成分はガラクトースである。
【0326】
代替的に、ガラクトース誘導体(例えばガラクトース含有グリコシド)がガラクトースの代わりに使用されることができる。任意選択的に、非還元ガラクトース誘導体が使用される。
【0327】
薬物の配合および投与のための技術が「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)に見出されることができ、これは参考として本明細書中に組み込まれる。
【0328】
本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られているプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥のプロセスによって製造されることができる。
【0329】
本発明に従って使用される医薬組成物は、医薬品として使用されることができる調製物への多量体型タンパク質構造体の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の医薬的に許容され得る担体を使用して従来の様式で配合されることできる。適正な配合は、選ばれた投与経路に依存する。
【0330】
注射または注入の場合、本発明の実施形態の多量体型タンパク質構造体は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合しうる緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的な食塩緩衝液など)において、プロピレングリコールやポリエチレングリコールなどの有機溶媒と共に、またはこれらの有機溶媒なしで、配合されることができる。
【0331】
経粘膜投与の場合、浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
【0332】
経口投与の場合、本発明の多量体型タンパク質構造体は、多量体型タンパク質構造体をこの分野でよく知られている医薬的に許容され得る担体と組み合わせることによって容易に配合されることができる。そのような担体は、本明細書中に記載された多量体型タンパク質構造体が、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤および懸濁物などとして配合されることを可能にする。経口使用される薬理学的調製物は、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、錠剤または糖衣錠コアを得るために、望ましい好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製されることができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容され得るポリマーである。もし望むなら、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤が加えられることができる。
【0333】
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有しうる。色素または顔料は、活性多量体型タンパク質構造体の投与量を明らかにするために、または活性多量体型タンパク質構造体の投与量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えられることができる。
【0334】
経口使用されうる医薬組成物としては、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびに、ゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟いシールされたカプセルが挙げられる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(例えば、ラクトースなど)、結合剤(例えば、デンプンなど)、滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)、および場合により安定化剤との混合で有効成分を含有することができる。軟カプセルでは、多量体型タンパク質構造体は、好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁されることができる。さらに、安定化剤が加えられることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路について好適な投薬形態でなければならない。
【0335】
口内投与の場合、組成物は、従来の方法で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
【0336】
鼻吸入による投与の場合、本発明の実施形態による使用のための多量体型タンパク質構造体は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物(これは典型的には、粉末状、液状および/または気体状の担体を含む)の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投与量は、計量された量を送達するためのバルブを備えることによって決定されることができる。ディスペンサーにおいて使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジは、多量体型タンパク質構造体および好適な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはデンプンなどであるが、これらに限定されない)の粉末混合物を含有して配合されることができる。
【0337】
本明細書中に記載される多量体型タンパク質構造体は、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために配合されることができる。注射または注入用配合物は、場合により保存剤が添加された、例えば、アンプルまたは多回用量容器における単位投薬形態で提供されることができる。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクルにおける懸濁物または溶液剤またはエマルションにすることができ、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの配合剤を含有することができる。
【0338】
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態の多量体型タンパク質構造体調製物の水溶液が含まれる。さらに、多量体型タンパク質構造体の懸濁物は、適切な油性の注射用懸濁物およびエマルジョン(例えば、油中水型、水中油型、または油中の油中水型エマルジョン)として調製されることができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが挙げられる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁物はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために、多量体型タンパク質構造体の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有することができる。
【0339】
あるいは、多量体型タンパク質構造体は、好適なビヒクル(例えば、無菌の、パイロジェン不含水)を使用前に用いて構成される粉末形態であることができる。
【0340】
本発明の実施形態の多量体型タンパク質構造体はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合されることができる。
【0341】
本明細書で記載される医薬組成物は、ゲル相担体または賦形剤の好適な固体も含むことができる。かかる担体または賦形剤の例は、炭化カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーを含むが、これらに限定されない。
【0342】
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物として、有効成分が、その意図された目的を達成するために有効な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、「治療有効量」は、処置されている対象の疾患の症状を予防、緩和あるいは改善するために効果的であるか、または、処置されている対象の生存を延ばすために効果的である、多量体型タンパク質構造体の量を意味する。
【0343】
本発明の方法において使用されるいかなる多量体型タンパク質構造体についても、投与量または治療有効量は、動物での活性アッセイから最初に推定されることができる。例えば、投与量は、活性アッセイによって決定されるようなIC
50を含む循環濃度範囲(例えば、多量体型タンパク質構造体の生物学的活性における最大の半分の増大を達成する試験タンパク質構造体の濃度)を達成するために動物モデルにおいて決定されることができる。そのような情報は、ヒトにおける有用な投与量をより正確に決定するために使用されることができる。
【0344】
以下の実施例において示されるように、本発明の実施形態の多量体型タンパク質構造体の治療効果的な量は、体重1kg当たり約1μg〜約500mgの範囲であることができる。
【0345】
本明細書中に記載される多量体型タンパク質構造体の毒性および治療効力は、実験動物における標準的な薬学的手法によって、例えば対象タンパク質構造体についてEC
50,IC
50およびLD
50(試験された動物の50%の死を生ずる致死量)を測定することによって明らかにすることができる。これらの活性アッセイおよび細胞培養アッセイならびに動物研究から得られたデータは、ヒトへの使用のための投薬量範囲を定める際に使用することができる。
【0346】
投与量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に依存して変化しうる。正確な配合、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択されることができる(例えば、Finglら、(1975)「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,Ch.1 p.1を参照のこと)。
【0347】
投薬量および投薬間隔を、所望の効果を維持するために十分である活性な成分の血漿中レベル(これは最小有効濃度(MEC)と呼ばれる)を提供するために個々に調節することができる。MECはそれぞれの調製物について変化するが、インビトロデータから推定することができ、例えば、インビトロでの活性の所望のレベルを達成するために必要な濃度を、本明細書中に記載されるアッセイを使用して求めることができる。MECを達成するために必要な投薬量は個々の特性および投与経路に依存する。HPLCアッセイまたはバイオアッセイを使用して、血漿中濃度を求めることができる。
【0348】
投薬間隔もまた、MEC値を使用して決定することができる。調製物は、時間の10%〜90%について、好ましくは30%〜90%の間、最も好ましくは50%〜90%の間、MECを越える血漿中レベルを維持する治療法を使用して投与されなければならない。
【0349】
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬は、上述の低速放出組成物の単回投与で行われることもでき、この場合、処置期間は、数日から数週間まで、または治療が達成されるまで、または疾患状態の軽減が達成されるまで続く。
【0350】
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている対象、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存するだろう。
【0351】
本発明の組成物は、所望されるならば、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態物を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA(米国食品医薬品局)承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、金属ホイルまたはプラスチックホイルを含むことができる(例えば、限定されないが、ブリスターパックまたは加圧容器(吸入用)など)。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が付随し得る。パックまたはディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式で、容器に関連した通知によって適応させることがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態、あるいはヒトまたは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局によって承認されたラベル書きであり得るか、または、承認された製品添付文書であり得る。適合し得る医薬用担体に配合された本発明の実施形態の多量体型タンパク質構造体を含む組成物もまた、本明細書中で詳述されたように、示された症状を処置するためにまたは診断のために調製され、適切な容器に入れられ、かつ標識され得る。
【0352】
従って、本発明の実施態様によれば、選択された多量体型タンパク質構造体に応じて、本明細書中に記載された医薬組成物は、本明細書中上記において記載されるように、多量体型タンパク質構造体の活性が有益である症状の治療における使用のために、包装材に充填され、前記包装材内または前記包装材の表面において活字で識別される。
【0353】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0354】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0355】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0356】
用語「例示的」は、本明細書では「例(example,instance又はillustration)として作用する」ことを意味するために使用される。「例示的」として記載されたいかなる実施形態も必ずしも他の実施形態に対して好ましいもしくは有利なものとして解釈されたりかつ/または他の実施形態からの特徴の組み入れを除外するものではない。
【0357】
用語「任意選択的」は、本明細書では、「一部の実施形態に与えられるが、他の実施形態には与えられない」ことを意味するために使用される。本発明のいかなる特定の実施形態も対立しない限り複数の「任意選択的」な特徴を含むことができる。
【0358】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0359】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0360】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0361】
本明細書中で使用される用語「方法(method)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0362】
本明細書で使用される場合、用語「治療する/処置する」には、状態の進行を取り消すこと、実質的に阻害すること、遅くすること、または、逆向きにすること、状態の臨床的症状または審美的症状を実質的に改善すること、あるいは、状態の臨床的症状または審美的症状の出現を実質的に防止することが含まれる。
【0363】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0364】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0365】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0366】
材料および方法
材料:
ビス−N−ヒドロキシスクシンイミド−ポリ(エチレングリコール)(ビス−NHS−PEG)を、Iris Biotech GmbHからPEG
8形態および2000ダルトン(PEG
45)PEG形態で、また、PierceからPEG
5形態で得て、ジメチルスルホキシド(DMSO)に25mg/mLの濃度で溶解した;
クエン酸をSigmaから得た;
クーマシーブルーG250をBio−Radから得た;
ジメチルスルホキシドをSigmaから得た;
D−(+)−ガラクトースをSigmaから得た;
ヒト血清(K3EDTA)をBioreclamation Inc.から得た;
4−メチルウンベリフェロンをSigmaから得た;
4−メチルウンベリフェリル−α−D−ガラクトピラノシドをSigmaから得た;
N−ドデカノイル−ニトロベンゾオキサジアゾール−セラミドトリヘキソシド(Gb
3−NBD)をMatreyaから得た;
2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸をMerckから得た;
リン酸塩緩衝化生理的食塩水をSigmaから得た;
p−ニトロフェニル−α−D−ガラクトピラノシドをSigmaから得た;
プリムリンをSigmaから得た;プリムリン噴霧試薬を、12.5mgのプリムリンを200mlのアセトン:水(8:2の体積比)に溶解することによって調製した;
ピリジンをSigmaから得た;
シナピン酸をSigmaから得た;
炭酸ナトリウムをSigmaから得た;
リン酸ナトリウムをSigmaから得た;
タウロコール酸ナトリウムをSigmaから得た;
トリフルオロ酢酸をSigmaから得た。
【0367】
植物組換えヒトα−GAL−I:
配列番号1を有する植物組換えヒトα−GAL(prh−α−GAL)(これは本明細書中では植物組換えヒトα−GAL−I(prh−α−GAL−I)として示される)を国際特許出願PCT/IL2008/000576(これは国際公開WO2008/132743として公開された)に記載されるように調製した。
【0368】
トランスジェニック植物材料を、ヒトα−GAL−Aタンパク質を発現するために、α−GAL−Aのための発現カセットを含有する遺伝子構築物を浸透させたタバコ(Nicotiana Benthamiana)植物を使用して作製した。これを、制御された条件のもとでの生育チャンバーにおいて行った。この後、植物材料を集め、可溶性タンパク質を植物細胞から抽出した。その後、prh−α−GAL−Aを、タンパク質精製のための標準的方法を伴う精製プロセスによって精製し、その後、架橋タンパク質を製造するために化学的修飾工程を行った。本prh−α−GAL−Aを、ホモジナイザーを使用して植物材料から抽出した。植物破片を遠心分離によって除き、タンパク質を、硫酸アンモニウム沈殿工程および酸性化工程を使用してさらに精製した。上清をろ過し、疎水性カラムに負荷し、その後、脱塩し、カチオン交換カラムに負荷した。カチオン交換カラムのプールを濃縮した。
【0369】
植物組換えヒトα−GAL−II:
配列番号2を有するα−GALと、(配列番号1に存在するN末端アミノ酸EFを有しない)配列番号3を有するα−GAL(これは本明細書中ではprh−α−GAL−IIとして示される)との混合物を含む植物組換えヒトα−GALを、異なる遺伝子構築物を使用して、prh−α−GAL−Iについて上記で記載されるプロセスと類似するプロセスによって調製した。
【0370】
ヒトα−ガラクトシダーゼタンパク質(EC3.2.1−22、GenBank:X05790)をコードするcDNAが、GENEART AG(Regensburg、ドイツ)によって最適化され、合成された。リーダーペプチド(小胞体標的シグナルペプチド)を含まないコドン使用法を、タバコ(Nicotiana tabaccum)遺伝子のコドンバイアスに合わせた。最適化プロセスのとき、下記のシス作用配列モチーフを避けた:内部TATAボックス、chi部位およびリボソーム進入部位、ATリッチ配列領域またはGCリッチ配列領域、RNA不安定性エレメント(「キラーモチーフ」)、反復配列およびRNA二次構造部、スプライスドナー(潜在性)部位およびスプライスアクセプター部位、分岐点。加えて、GC含量が非常に大きい(80%超)領域または非常に低い領域(30%未満)が避けられている。
【0371】
全長型ヒトα−ガラクトシダーゼタンパク質(GenBank:X05790)の天然型ヒトα−ガラクトシダーゼリーダーペプチド(小胞体標的シグナルペプチド)のヌクレオチド配列を、アラビドプシス(Arabidopsis)ABPIタンパク質の33アミノ酸の小胞体標的化シグナルペプチド(リーダーペプチド)をコードするヌクレオチド配列により置き換えた。このシグナルペプチドは、分泌経路へのα−ガラクトシダーゼの効率的な標的化をもたらし、タンパク質が小胞体内に輸送されると、シグナルペプチダーゼによってポリペプチドから切断される。小胞体保持シグナルSEKDELをコードするヌクレオチド配列を3’末端においてcDNA配列に加え、これにより、タンパク質を小胞体内に効果的に維持しながら、ゴルジ装置からの発現タンパク質の回収を可能にした。
【0372】
目的とするタンパク質をコートタンパク質の強力なサブゲノムウイルスプロモーターから発現させた。このシステムは、アグロバクテリウムによって植物に送達されるウイルスベクターの(アグロインフェクションによる)一過性の増幅に依拠する。アグロインフェクションにおいて、植物機能性プロモーターと、ウイルスレプリコンをコードするcDNAとが、T−DNAとして、アグロバクテリウムから植物細胞内に移される。T−DNAが植物プロモーターによって植物内で転写されて、自己複製を開始する生物学的に活性なウイルスRNAを生じさせる。
【0373】
一過性発現のために、以前に開発されたシステムに基づく3−ベクター組換えシステムが、記載[Gleba他、Vaccine、2005、23:2042〜2048]通りに調製された。ベクターの1つにはα−ガラクトシダーゼのcDNAが挿入され、それ以外の2つのベクターは、ウイルスレプリコン全体を構築するための遺伝子(RdRpおよびインテグラーゼ)を含有し、したがって、自己複製を開始することができる生物学的に活性なウイルスRNAを生じさせた。
【0374】
タバコ(N.Benthamiana)植物を、24℃〜25℃での長日(16時間照明/8時間消灯)照明法のもと、顆粒状緩行肥料(Scott Marysville、OH)が補充された市販のミックス土壌(Givaat Ada、IL)で発芽させ、成長させた。
【0375】
アグロバクテリアを、エレクトロポレーション(2500V、5ミリ秒)を使用して、pICH20866−alpha−GALに基づくレプリコンベクターシステムにより形質転換した[den Dulk−RaおよびHooykaas、Methods Mol Biol、1995、55:63〜72]。植物に、3つのICONプラスミドを含有するアグロバクテリアをこの技術分野で知られている標準的方法による真空浸透によって浸透させた。簡単に記載すると、タバコ(N.Benthamiana)植物(5週齢〜6週齢)への浸透を、すべての地上部植物器官を細菌懸濁物に浸けることによって行い、植物を真空チャンバーに入れた。マイナス(−)0.8barの真空を1分間加え、その後、直ちに大気圧に戻した。植物を温室に戻し、同じ生育条件のもとでさらに5日間〜7日間置いた。
【0376】
タバコ(Nicotiana benthamiana)の葉のサンプルを浸透後5日で集め、SDS−PAGEのためにLaemmli緩衝液において、または、植物発現タンパク質の触媒活性をアッセイするために活性アッセイ緩衝液(20mMクエン酸、30mMリン酸ナトリウム、0.1%ウシ血清アルブミンおよび0.67%エタノール、pH4.6)において抽出した。
【0377】
植物抽出物から得られるヒトα−ガラクトシダーゼタンパク質を、2工程の硫酸アンモニウム示差的沈殿化(「塩析」:第1工程、0.57M;第2工程、2.27M)、それに続く、疎水性相互作用クロマトグラフィー(Phenyl650M樹脂)およびカチオン交換クロマトグラフィーによって精製した。
【0378】
2つの配列(すなわち、配列番号2および配列番号3)(これらはN末端グリシンの有無において異なる)が、異なるリーダー配列プロセシングのために得られた。
【0379】
α−GAL活性の4−メチルウンベリフェリル−α−D−ガラクトピラノシドアッセイ:
α−GAL活性を、4−メチルウンベリフェリル−α−D−ガラクトピラノシドを加水分解基質として使用して測定した。このアッセイをクエン酸塩−リン酸塩緩衝液(20mMクエン酸、30mMリン酸ナトリウム、pH4.6)において行った。試験α−GALを含有する10μLのサンプルを、5mMの4−メチルウンベリフェリル−α−D−ガラクトピラノシドを含有する40μLのアッセイ緩衝液とインキュベーションした。反応混合物を37℃で60分間インキュベーションした。反応混合物の10μLを黒色96ウエルプレート(Greiner)に移し、90μLの停止液(2M炭酸ナトリウム)を加え、蛍光を365nmの励起波長および450nmの放射波長で測定した。蛍光を、4−メチルウンベリフェロン(反応生成物)の較正曲線を使用して生成物濃度に変換し、さらに活性に変換した。
【0380】
α−GAL活性のN−ドデカノイル−ニトロベンゾオキサジアゾール−セラミドトリヘキソシド(Gb
3−NBD)アッセイ
蛍光標識基質のN−ドデカノイル−ニトロベンゾオキサジアゾール−セラミドトリヘキソシド(Gb
3−NBD)は、Gb
3よりも親油性が小さく、インビトロ酵素反応におけるその使用を容易にする。
【0381】
10μLの0.1μg/μL Gb
3−NBD(10%エタノールを含む水において)と、5μLの0.2mg/mL α−GALとを、pHが4.6であるクエン酸塩−リン酸塩緩衝液の85μLに加えた。最終的α−GAL濃度が10μg/mLであった。α−GALを含まないバックグラウンドまたは非触媒反応が、pHが4.6であるクエン酸塩−リン酸塩緩衝液の90μLと、10μLの0.1μg/μL Gb
3−NBD(10%エタノールを含む水において)とから構成された。反応混合物を37℃で60分間インキュベーションした。インキュベーション後、50μLのメタノールを反応混合物に加え、溶液を1分間ボルテックス撹拌した。その後、100μLのクロロホルムを加え、溶液をさらに、1分間ボルテックス撹拌した。水および有機溶媒を、Speed Vacシステムを使用して真空下で除いた。残渣を80μLのクロロホルム:メタノール(1:1)に溶解した。各サンプルの30μLを、Linomat Vシステム(CAMAG)を使用してHPTLC(高性能薄層クロマトグラフィー)シリカゲル60プレート(Merck)に負荷した。HPTLCプレートを、100:42:6の比率でのクロロホルム:メタノール:H
2O溶液を溶媒システムとして使用して展開した。その後、プレートを乾燥させ、基質および生成物のスポットを365nmの波長でのUV光のもとでの照射によって可視化した。
【0382】
α−GAL活性のp−ニトロフェニル−α−D−ガラクトピラノシド(p−NP−G)アッセイ:
p−ニトロフェニル−α−D−ガラクトピラノシドをα−GAL活性アッセイのための加水分解基質として使用した。アッセイ緩衝液は、pH4.6において、20mMクエン酸、30mMリン酸ナトリウム、0.1%BSA(ウシ血清アルブミン)および0.67%エタノールを含有した。アッセイを96ウエルELISAプレート(Greiner)で行った。50μLのサンプルを150μLのアッセイ緩衝液とインキュベーションし、30μLの基質を加えて、8mMのp−ニトロフェニル−α−D−ガラクトピラノシドの最終濃度を得た。反応混合物を37℃で90分間インキュベーションした。90分後、100μLの1.98M炭酸ナトリウムを、反応を停止させるためにそれぞれのウエルに加えた。反応生成物の量を、吸光度を405nmで測定することによって求めた。
【0383】
インビトロにおけるα−GAL安定性の測定:
様々な供給源から得られるα−GALの安定性を、α−GALを下記の条件の1つに加えることによって求めた:
1)模擬リソソーム条件:クエン酸塩−リン酸塩緩衝液(20mMクエン酸、30mMリン酸ナトリウム)、pH4.6、37℃;
2)模擬生理学的条件:リン酸塩緩衝化生理的食塩水(PBS)、pH7.4、37℃;
3)ヒト血漿、37℃。
【0384】
α−GALを、溶液におけるα−GAL活性によって求められる場合、1μg/mLの濃度で加え、溶液を37℃でインキュベーションした。各溶液のサンプルを所定の時点で抜き取り、α−GAL活性を本明細書中上記のように測定した。試験α−GALをそれぞれの環境に加えた直後の酵素活性の値を100%として定義し、さらに、試験された時点での活性結果をその初期活性の百分率として計算した。
【0385】
α−GALの薬物動態学:
個々のFabry(α−GAL−A −/0)マウスを、照明されたプレキシガラス製拘束具に入れ、酵素を尾静脈に注入した。血液サンプルを、ヘパリン添加ミクロヘマトクリットチューブを使用して尾採血または後眼窩での眼採血のどちらかによって注入後の示された時間で得た。血漿を4−メチルウンベリフェリル−α−D−ガラクトピラノシド活性緩衝液で希釈した。4−メチルウンベリフェリル−α−D−ガラクトピラノシドアッセイを上記のように行った。
【0386】
消失期排出半減期(T
1/2)を血漿活性結果に基づいて計算した。消失期半減期(排出半減期)は、血漿中の濃度が、分布の偽平衡に達した後で50%低下するために必要とされる時間である。消失期半減期を時間対log濃度の線形回帰によって曲線の消失期(log−直線)部分から計算した[Toutain&Bousquet−Melou、J Vet Pharmacol Ther、2004、27:427〜39]。
【0387】
α−GALの体内分布:
Fabry(α−GAL−A −/0)マウスにα−GALを2mg/Kgの用量で(尾静脈に)静脈内注入した。組織(肝臓、腎臓、心臓および脾臓)を、酵素注入後2時間、24時間、3日、7日、14日または28日で回収した。正常なコントロールマウスおよび生理的食塩水投与(非処置)Fabryマウスにおけるα−GALレベルを、外因性α−GALを受けたFabryマウスにおけるレベルと比較した。組織におけるα−GAL活性を求めるために、解凍した組織サンプルを、Oshima他[PNAS、1997、94:2540〜2544]に記載されるような溶解緩衝液(28mMクエン酸、44mM第二リン酸ナトリウム、0.5%タウロコール酸ナトリウム、pH4.4)を含有する2mLポリプロピレンチューブに入れた。サンプルを、Tissuelyzer(Retsch MM400)の使用によって10分間ホモジネートした。破片を4℃での遠心分離によってペレット化し、得られた上清を上記のように4−メチルウンベリフェリル−α−D−ガラクトピラノシドアッセイによってα−GAL活性についてアッセイした。同じサンプルはまた、ウエスタンブロット分析にも供された。
【0388】
インビボGb
3アッセイ:
注入されたα−GALの終点効力を、Gb
3レベルがα−GAL活性によって低下するかどうかを明らかにするために、動物組織のGb
3レベルのアッセイによって測定した。
【0389】
Gb
3の加水分解を測定するために、中性スフィンゴ糖脂質を標的器官(例えば、肝臓、腎臓、心臓および脾臓)から抽出した。100mgの組織サンプルを2:1(v/v)のクロロホルム:メタノールの1mLにおいてホモジネートし、13500rpmで20分間遠心分離した。62μLの水を1mLのホモジネートに加えて、20:10:2のクロロホルム:メタノール:水の溶液を得た。10μLのピリジンをホモジネートに加えて、1%の最終ピリジン濃度を得た。サンプルを48℃で24時間撹拌した。溶媒および水を、SpeedVacシステムを使用して真空下で除いた。サンプルを2.5mLのメタノールに再懸濁し、その後、メタノールにおける1M KOHの250μLを加えた。その後、サンプルを37℃で2時間振とうした。けん化反応を10μLの酢酸の添加によって停止させた。その後、2.5mLのクロロホルムをサンプルに加え、続いて、2.5mLの冷水を加えた。サンプルを5分間激しく振とうし、5分間静置させて、相分離させた。上部相(メタノールおよび水から構成される)を捨て、下部相(クロロホルムおよびメタノールから構成される)を真空下でエバポレーションし(SpeedVac)、残渣をHPTLCによるスフィンゴ糖脂質の分析のために1:1(v/v)のクロロホルム:メタノールの300μLに再懸濁した。
【0390】
組織の糖脂質の定性分析および半定量分析を高性能薄層クロマトグラフィー(HPTLC)(CAMAG、スイス)によって行った。HPTLC分析をHPTLCシリカゲル60ガラス被覆プレート(Merck)で行った。サンプルを、Linomat5システム(CAMAG、スイス)を使用してプレートに負荷した。プレートを、クロロホルム−メタノール−水(60:35:4)を溶媒システムとして使用して展開した。中性スフィンゴ糖脂質をプリムリン噴霧試薬により検出した。Gb
3を、ブタ赤血球Gb
3(Matreya)を標準物として使用して特定し、N−ヘプタデカノイルセラミドトリヘキソシド(Matreya)(半合成標準物)の較正曲線を使用して定量した。プレートを可視化し、関連スポットを、winCATSソフトウエア(CAMAG、スイス)によって支援されるTLC Scanner III(CAMAG、スイス)を使用して定量した。
【0391】
SDS−PAGE:
SDS−PAGEを、Bio−Rad Criterion(商標)システムおよび自家製注入の12%アクリルアルミゲルを使用して還元条件下で行った。ゲルをクーマシーブルーG250染色によって染色した。
【0392】
IEF(等電点フォーカシング):
IEFを、Invitrogen Novex(登録商標)ミニセル、および、3〜7のpH範囲を有する注入済みIEFゲル(Invitrogen)を使用して行った。ゲルをクーマシーブルーG250によって染色した。
【0393】
質量分析法(MALDI−TOF):
MALDI−TOFを、Bruker Reflex IV MALDI−ToF質量分析計システム(Bruker−Franzen Analytik GmbH、ドイツ)およびシナピン酸/トリフルオロ酢酸(TFA)(0.1%TFA/アセトニトリル(2:1、v/v))飽和マトリックス溶液を使用して行った。
【0394】
実施例I
組換えα−GALのインビトロ安定性
組換えα−GALのインビトロ安定性を、材料および方法の節において本明細書中上記で記載されるような様々な条件で測定した。植物組換えヒトα−GAL−I、ならびに、Fabrazyme(登録商標)およびReplagal(登録商標)の市販されている組換えヒトα−GALを試験した。
【0395】
図1に示されるように、α−GALの試験されたタイプのすべてが活性の喪失を模擬リソソーム条件のもとで示した。
【0396】
加えて、
図2に示されるように、α−GALの試験されたタイプのすべてが活性の喪失を模擬生理学的条件のもとで示した。
図2においてさらに示されるように、100mg/mLのガラクトースの存在は植物組換えα−GAL−Iの活性をそのような条件のもとで部分的に保護した。
【0397】
同様に、
図3に示されるように、α−GALの試験されたタイプのすべてが活性の喪失を37℃でのヒト血清において示した。
【0398】
図4に示されるように、100mg/mLのガラクトースの存在は植物組換えα−GAL−Iの活性を模擬リソソーム条件のもとで部分的に保護した。
【0399】
リソソームpHレベルおよび中性pHレベルでのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)実験では、タンパク質構造における変化が明らかにされ(データは示されず)、一方で、SDS−PAGE分析およびウエスタンブロット分析では、一次アミノ酸配列の減成が何ら示されなかった(データは示されず)。
【0400】
これらの結果は、α−GALがα−GALタンパク質構造の変化のためにリソソーム条件および生理学的条件のもとでは活性を失うこと、また、ガラクトースにより、この活性喪失が部分的に防止されることを示している。
【0401】
実施例II
ビス−N−ヒドロキシスクシンイミド−ポリ(エチレングリコール)(ビス−NHS−PEG)剤による植物組換えヒトα−GAL−Iの架橋
植物組換えヒトα−GAL−I(prh−α−GAL−I)を、50:1、100:1および200:1のモル比で、様々な分子量のビス−N−ヒドロキシスクシンイミド−ポリ(エチレングリコール)(ビス−NHS−PEG)により、すなわち、ビス−NHS−PEG
5、ビス−NHS−PEG
8またはビス−NHS−PEG
45(2000ダルトンのPEGを有するビス−NHS−PEG)(それらの構造が
図5に示される)により架橋した。
【0402】
ビス−NHS−PEGはタンパク質上の2個所(例えば、リシン残基)でタンパク質に結合し、これにより、架橋を形成することができ、または、タンパク質上の1個所でタンパク質に結合することができる。これら2つの結合形態が
図6に示される。
【0403】
28.5μLの2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝液(25mM、pH6)における100μgのα−GAL−Iを、100mg/mlのガラクトースを含有する13.5μLのリン酸塩緩衝液(100mM、pH8)に加えた。
【0404】
α−GAL−Iを、8μLのDMSOにおけるビス−NHS−PEG
5をα−GAL−I溶液(1:50のモル比については27.4μgのα−GAL−Iの溶液、1:100のモル比については54.8μgのα−GAL−Iの溶液、1:200のモル比については109.7μgのα−GAL−Iの溶液)を加えることによって、1:50、1:100および1:200のタンパク質:試薬のモル比でビス−NHS−PEG
5により架橋した。
【0405】
α−GAL−Iを、8μLのDMSOにおけるビス−NHS−PEG
45をα−GAL−I溶液(1:50のモル比については103μgのα−GAL−Iの溶液、1:100のモル比については206μgのα−GAL−Iの溶液、1:200のモル比については412μgのα−GAL−Iの溶液)を加えることによって、1:50、1:100および1:200のタンパク質:試薬のモル比でビス−NHS−PEG
45により架橋した。α−GAL−Iを、11.5μLのDMSOにおけるビス−NHS−PEG
8をα−GAL−I溶液(1:50のモル比については37μgのα−GAL−Iの溶液、1:100のモル比については73μgのα−GAL−Iの溶液、1:200のモル比については146μgのα−GAL−Iの溶液)を加えることによって、1:50、1:100および1:200のタンパク質:試薬のモル比でビス−NHS−PEG
8により架橋した。
【0406】
ビス−NHS−PEG剤をα−GAL−Iに加えた後、反応液をピペッティングし、室温で2時間、回旋式振とう機で撹拌した。
【0407】
すべての反応液において、過剰なビス−NHS−PEG架橋剤を生理的食塩水に対する透析(50KDaカットオフ)によって除いた。
【0408】
ダイマーの収率がタンパク質濃度およびDMSO濃度の増大とともに増大し、30%にまで達した。
【0409】
反応生成物を、本明細書中上記のように、SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム−アクリルアミドゲル電気泳動)、IEF(等電点フォーカシング)、ウエスタンブロットおよびMALDI−TOF質量分析法によって分析した。
【0410】
図7に示されるように、標準物の天然型prh−α−GAL−Iが、ゲル電気泳動後、(48KDaの分子量を有する)モノマーとして認められ、これに対して、prh−α−GAL−Iをビス−NHS−PEGと反応させた後では、prh−α−GAL−Iが、(若干のモノマーが存在するが)主にダイマーの形態で現れた。このことは、2つのモノマーがビス−NHS−PEGによる架橋によって共有結合で連結されたことを示している。
【0411】
図7においてさらに示されるように、より大きい割合のモノマー型prh−α−GAL−Iが、より長い架橋剤(ビス−NHS−PEG
45)による場合に比べて、より短い架橋剤(ビス−NHS−PEG
5およびビス−NHS−PEG
8)により認められた。ビス−NHS−PEG
45は大きい割合の架橋タンパク質をもたらした。これらの結果は、より短い架橋剤は、モノマーを共有結合で架橋することにおいてあまり効果的でないことを示している。
【0412】
図7においてさらに示されるように、試験された架橋剤のそれぞれについて、prh−α−GAL−Iのモノマー部分の分子量が架橋剤との反応の後で増大した。この分子量増大は、架橋剤対タンパク質のより大きい比率が使用されたとき(例えば、200:1)、および、架橋剤の分子量が大きくなったとき(例えば、ビス−NHS−PEG
45)、より大きくなった。これらの結果は、架橋によってダイマー化されないタンパク質モノマーがビス−NHS−PEG架橋剤に共有結合で結合したこと、すなわち、タンパク質がPEG化されたことを示している。
【0413】
上記の結果は、架橋剤対タンパク質のより大きいモル過剰の使用により、ダイマーを形成するための架橋およびタンパク質のPEG化の両方を含めて、より大きいレベルのα−GAL修飾がもたらされることを示している。しかしながら、100:1のモル比は、大きいレベルの架橋を、とりわけ、ビス−NHS−PEG
45試薬を使用する反応においてもたらし、その結果、200:1のモル比は架橋効率に対するほんのわずかな増加をもたらしただけであった。
【0414】
図8に示されるように、prh−α−GAL−Iをビス−NHS−PEGと反応させることにより、prh−α−GAL−Iの等電点(pI)が低下した。これにより、ビス−NHS−PEGがprh−α−GAL−Iに共有結合で結合していることが確認される。ビス−NHS−PEGがprh−α−GAL−Iに結合することにより、リシン残基における塩基性アミン基が中性のアミド基に変換され、したがって、pIが低下する。pIにおける低下は、ビス−NHS−PEGのより大きいモル過剰(例えば、200:1)が使用されたとき、より顕著であった。このことから、SDS−PAGEにより得られる上記の結果が確認される。
【0415】
図8においてさらに示されるように、pIは、ビス−NHS−PEG
5およびビス−NHS−PEG
8による方がビス−NHS−PEG
45によるよりも大きく低下する。
【0416】
この結果は、ビス−NHS−PEG
5およびビス−NHS−PEG
8の方が、ビス−NHS−PEG
45よりも、架橋剤の一方の末端のみがα−GALに結合するPEG化を生じさせやすいことを示している。一方の末端のみでα−GALに結合する架橋剤は、pIを低下させることにおいてより効果的である。これは、そのような架橋剤は、リシンのアミン基を結合末端においてアミド基に変換することに加えて、酸性のカルボン酸(−CO
2H)基を非結合末端において含むからである。
【0417】
図9に示されるように、prh−α−GAL−Iをビス−NHS−PEG
45架橋剤と反応させることにより、prh−α−GAL−Iダイマーの分子量が、MALDI−TOF質量分析法によって求められるように、97KDaから113KDaに増大した。この分子量増大は、およそ8分子のビス−NHS−PEG
45がprh−α−GAL−Iダイマーに付加したことを示している。
【0418】
図10に示されるように、prh−α−GAL−Iをビス−NHS−PEG
8架橋剤と反応させることにより、prh−α−GAL−Iダイマーの分子量が、MALDI−TOF質量分析法によって求められるように、97KDaから104KDaに増大した。この分子量増大は、およそ10分子のビス−NHS−PEG
8がprh−α−GAL−Iダイマーに付加したことを示している。
【0419】
実施例III
架橋された植物組換えヒトα−GAL−Iの活性
実施例IIに記載される架橋された植物組換えα−GAL−I(prh−α−GAL−I)が酵素活性を保持するかどうかを明らかにするために、架橋されたprh−α−GAL−Iを、本明細書中上記で記載される4−メチルウンベリフェリル−α−D−ガラクトピラノシドアッセイを使用してその酵素活性についてアッセイした。
【0420】
下記の表1に示されるように、ビス−NHS−PEG
5、ビス−NHS−PEG
8またはビス−NHS−PEG
45と、50:1、100:1および200:1のビス−NHS−PEG試薬のモル過剰で反応させたprh−α−GAL−Iはすべての場合で、天然型prh−α−GAL−Iの活性と類似するレベルの酵素活性を示した。表1に示されるように、活性における適度な増大および適度な低下の両方がいくつかの場合において認められた。これは配合効果の結果であるかもしれない。これらの結果は、架橋がprh−α−GAL−Iの活性を低下させなかったことを示している。
【0421】
ビス−NHS−PEG
45により架橋されるprh−α−GAL−Iの活性を、本明細書中上記で記載されるN−ドデカノイル−NBD−セラミドトリヘキソシドアッセイを使用してさらに確認した。このアッセイはα−GALの活性をその天然基質のセラミドトリヘキソシド(Gb
3)に対してアッセイする。Replagal(登録商標)哺乳動物組換えヒトα−GALを比較のためにアッセイした。
【0422】
図11に示されるように、架橋された植物組換えヒトα−GAL−Iを蛍光性基質とインキュベーションした後、ほとんどすべての基質が、哺乳動物組換えα−GAL(Replagal(登録商標))によって触媒される反応と同様に、生成物のN−ドデカノイル−ニトロベンゾオキサジアゾール−ラクトシルセラミドに変換された。この結果から、架橋により、prh−α−GAL−Iの酵素加水分解効率が、天然基質の近縁アナログを使用した場合、損なわれていなかったことが確認される。
【0423】
実施例IV
架橋された植物組換えヒトα−GAL−Iのインビトロ安定性
実施例IIに記載されるように得られる架橋された植物組換えヒトα−GAL−I(prh−α−GAL−I)のインビトロ安定性を、材料および方法の節において本明細書中上記で記載されるような様々な条件で測定した。Fabrazyme(登録商標)およびReplagal(登録商標)の市販の組換えヒトα−GALの安定性を比較のために測定した。
【0424】
図12A〜
図12Cに示されるように、模擬リソソーム条件下での植物組換えヒトα−GAL−Iの安定性が、ビス−NHS−PEG
5による架橋(
図12A)、ビス−NHS−PEG
8による架橋(
図12B)およびビス−NHS−PEG
45による架橋(
図12C)によって高まった。これらの図においてさらに示されるように、1週間の経過にわたる架橋prh−α−GAL−Iの安定性は、市販の組換えヒトα−GALの安定性と比べて遜色がなかった。最初の24時間の期間中での残存活性における小さい低下の後では、架橋prh−α−GAL−Iは、10日後でさえ、活性を維持した。活性におけるこの初期低下は、最初の24時間の期間中に認められるので、架橋を受けていない部分の植物組換えヒトα−GAL−Iを反映しているかもしれない。
【0425】
図12A〜
図12Cにおいてさらに示されるように、ビス−NHS−PEG
45によって架橋されるprh−α−GAL−Iは、模擬リソソーム条件下で、最も大きい安定性を示した。
【0426】
37℃でのヒト血漿における植物組換えヒトα−GAL−Iの安定性もまた、ビス−NHS−PEG
45による架橋によって高まった(データは示されず)。
【0427】
これらの結果は、α−GALを本明細書中に記載されるように架橋することにより、インビボでのα−GALの効力が、リソソームにおけるα−GALの安定性を増大させ、それにより、α−GALがリソソームにおいてより長期間にわたって作用することを可能にすることによって、また、血液におけるα−GALの安定性を増大させ、それにより、α−GALの循環半減期を増大させることによって増大し得ることを示している。
【0428】
実施例V
架橋された植物組換えヒトα−GAL−Iのインビボでの薬物動態学および体内分布
実施例IIに記載されるようにビス−NHS−PEG
45またはビス−NHS−PEG
8により架橋される植物組換えヒトα−GAL−I(prh−α−GAL−I)の薬物動態学および体内分布を、材料および方法の節において本明細書中上記で記載されるように、2mg/Kgのα−GALが注入されたFabryマウスにおいて求めた。非架橋の植物組換えヒトα−GAL−IおよびReplagal(登録商標)組換えヒトα−GALの薬物動態学および体内分布を比較のために求めた。血液サンプルを、注入後1分、3分、5分、10分、20分、30分、40分、60分および120分で薬物動態学分析のために採取した。α−GALのそれぞれのタイプについて、処置群は6匹のマウスからなった。
【0429】
下記の表2に示されるように、prh−α−GAL−Iをビス−NHS−PEG
8およびビス−NHS−PEG
45により架橋することにより、植物組換えヒトα−GAL−Iの循環消失期半減期が増大し、この場合、後者がより顕著な効果を示した。
【0430】
図13および表2に示されるように、ビス−NHS−PEG
45によって架橋されるprh α−GAL−Iの消失期半減期は、Replagal(登録商標)α−GALの消失期半減期よりもかなり大きかった。
【0431】
図13においてさらに示されるように、ビス−NHS−PEG
45により架橋される植物組換えヒトα−GAL−Iの20分での活性は1分での活性の約40%であった。さらには、この架橋prh−α−GAL−Iは、注入後4時間でさえ、血漿における活性な存在を示した。
【0432】
これらの結果は、この架橋prh−α−GAL−Iは比較的長期間にわたってインビボで相変わらず活性であり、このことは、この酵素がさらなる組織および器官に達することを可能にし得ることを示している。
【0433】
図14Aおよび
図14Bに示されるように、ビス−NHS−PEG
8およびビス−NHS−PEG
45により架橋される植物組換えα−GAL−Iの、注入後2時間でのFabryマウスの脾臓におけるレベルは、非架橋の植物組換えα−GAL−Iのレベル、ならびに、Replagal(登録商標)哺乳動物組換えα−GALのレベルよりもかなり高かった。これらの図においてさらに示されるように、ビス−NHS−PEG
45により架橋されるprh−α−GAL−Iのレベルは、ビス−NHS−PEG
8により架橋されるprh−α−GAL−Iのレベルよりも高かった。ウエスタンブロット分析(
図14B)は、α−GALの酵素活性をアッセイすることによって得られる体内分布の結果(
図14A)と一致している。
【0434】
図15Aおよび
図15Bに示されるように、ビス−NHS−PEG
8およびビス−NHS−PEG
45により架橋される植物組換えα−GAL−Iの、注入後2時間でのFabryマウスの肝臓におけるレベルは、非架橋の植物組換えα−GAL−Iのレベルよりもかなり高かったが、肝臓におけるReplagal(登録商標)哺乳動物組換えα−GALのレベルよりも低かった。これらの図においてさらに示されるように、ビス−NHS−PEG
45により架橋されるprh−α−GAL−Iのレベルは、ビス−NHS−PEG
8により架橋されるprh−α−GAL−Iのレベルよりもわずかに高かった。ウエスタンブロット分析(
図15B)は、α−GALの酵素活性をアッセイすることによって得られる体内分布の結果(
図15A)と一致している。
【0435】
肝臓におけるα−GALのレベルがより低いことは、治療的に好都合であるかもしれない。これは、酵素補充療法における回復酵素の約95%が典型的には肝臓に見出され、したがって、肝臓における組換えα−GALのレベルが高いことは、標的器官(例えば、心臓および腎臓など)における外因性α−GALのレベルがより低いことを示しているからである。
【0436】
図16に示されるように、ビス−NHS−PEG
8およびビス−NHS−PEG
45により架橋される植物組換えα−GAL−Iの、注入後2時間でのFabryマウスの心臓におけるレベルは、非架橋の植物組換えα−GAL−Iのレベルよりも高かった。この図においてさらに示されるように、ビス−NHS−PEG
45により架橋されるprh−α−GAL−Iのレベルは、ビス−NHS−PEG
8により架橋されるprh−α−GAL−Iのレベル、ならびに、Replagal(登録商標)哺乳動物組換えα−GALのレベルよりも高かった。
【0437】
図17に示されるように、ビス−NHS−PEG
8およびビス−NHS−PEG
45により架橋される植物組換えα−GAL−Iの、注入後2時間でのFabryマウスの腎臓におけるレベルは、非架橋の植物組換えα−GAL−Iのレベルよりも高かった。この図においてさらに示されるように、ビス−NHS−PEG
45により架橋されるprh−α−GAL−Iのレベルは、ビス−NHS−PEG
8により架橋されるprh−α−GAL−Iのレベル、ならびに、Replagal(登録商標)哺乳動物組換えα−GALのレベルよりも高かった。
【0438】
同様に、
図18〜
図21に示されるように、ビス−NHS−PEG
45により架橋される植物組換えα−GAL−Iのレベルは、注入後7日までの間、Fabryマウスの脾臓(
図18)、肝臓(
図19)、心臓(
図20)および腎臓(
図21)において非架橋の植物組換えα−GAL−Iのレベルよりも高かった。これらの図においてさらに示されるように、ビス−NHS−PEG
45により架橋される植物組換えα−GAL−Iのレベルは、脾臓、心臓および腎臓においてReplagal(登録商標)哺乳動物組換えα−GALのレベルよりも高かった。
【0439】
これらの結果は、ビス−NHS−PEG(特に、ビス−NHS−PEG
45)により架橋されるα−GALが、腎臓および心臓(これらはファブリー障害の処置における主要な標的器官である)を含めて、様々な器官への高まった取り込みを示すことを示している。これらの結果は、架橋α−GALの増大した循環半減期および高まった安定性と一致している。
【0440】
実施例VI
ビス−N−ヒドロキシスクシンイミド−ポリ(エチレングリコール)(ビス−NHS−PEG)による哺乳動物組換えヒトα−GALの架橋
本明細書中上記で記載される架橋の好都合な効果を確認するために、Replagal(登録商標)哺乳動物組換えヒトα−GAL(これはヒト線維肉腫株HT−1080から製造される)を架橋した。
【0441】
100mg/mlのD−(+)−ガラクトースを含むリン酸塩緩衝液(100mM、pH8)の333μLを、151μLのDMSO溶液(25mg/ml)における3.8mgのビス−NHS−PEG
45、および、130μLのクエン酸塩緩衝液(25mM、pH6)における1.8mgのReplagal(登録商標)組換えヒトα−GALに加えた。Replagal(登録商標)α−GALの濃度を活性アッセイによって求めた。反応混合物を、室温で2時間、回旋式振とう機を使用して撹拌した。過剰なビス−NHS−PEG
45架橋試薬を、50KDaのカットオフを有するVivaspin6濃縮器を使用して、生理的食塩水に対する透析によって除いた。架橋されたReplagal(登録商標)α−GALのα−GAL活性は、α−GAL濃度が3mg/mLであることを示した。
【0442】
反応生成物を、本明細書中上記のように、SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)、IEF(等電点フォーカシング)およびMALDI−TOF質量分析法によって分析した。
【0443】
図22に示されるように、標準物の天然型Replagal(登録商標)α−GALが、ゲル電気泳動後、モノマーとして認められ、これに対して、Replagal(登録商標)α−GALをビス−NHS−PEG
45と反応した後では、α−GALがダイマーの形態で現れた。このことは、2つのモノマーがビス−NHS−PEGによる架橋によって共有結合で連結されたことを示している。
【0444】
図23に示されるように、Replagal(登録商標)α−GALをビス−NHS−PEG
45と反応させることにより、α−GALの等電点(pI)が低下した。これにより、ビス−NHS−PEGがα−GALに共有結合で結合していることが確認される。
【0445】
図24に示されるように、Replagal(登録商標)α−GALをビス−NHS−PEG
45架橋剤と反応させることにより、Replagal(登録商標)α−GALダイマーの分子量が、MALDI−TOF質量分析法によって求められるように、103.0KDaから121.3KDaに増大した。この分子量増大は、およそ9分子〜10分子のビス−NHS−PEG
45がα−GALダイマーに付加したことを示しており、このことは、prh−α−GAL−Iについて本明細書中上記で記載される結果と類似している。
【0446】
実施例VII
架橋された哺乳動物組換えヒトα−GALの活性
実施例VIに記載される哺乳動物組換えα−GALの架橋が酵素活性に影響を及ぼすかどうかを明らかにするために、架橋α−GALを、本明細書中上記の手順に従って、p−ニトロフェニル−α−D−ガラクトピラノシド(pNP−G)アッセイを使用してその酵素活性についてアッセイした。
【0447】
図25および下記の表3に示されるように、ビス−NHS−PEG
45により架橋された哺乳動物組換えヒトα−GALは、天然型の哺乳動物組換えヒトα−GALの酵素活性パラメーターと非常に類似する酵素活性パラメーターを示した。これらの結果は、架橋がこの哺乳動物組換えヒトα−GALの活性または触媒装置および触媒機能に著しい影響を及ぼさなかったことを示している。
【0448】
実施例VIII
架橋された哺乳動物組換えヒトα−GALのインビトロ安定性
実施例VIに記載されるように得られる架橋されたReplagal(登録商標)哺乳動物組換えヒトα−GALのインビトロ安定性を、材料および方法の節において本明細書中上記で記載されるような様々な条件で測定した。架橋の影響を評価するために、非架橋のReplagal(登録商標)α−GALの安定性を比較のために測定した。
【0449】
図26Aおよび
図26Bに示されるように、模擬リソソーム条件下(
図26A)およびヒト血漿中(
図26B)の両方における哺乳動物組換えヒトα−GALの安定性が、ビス−NHS−PEG
45による架橋によってかなり高まった。架橋された哺乳動物組換えヒトα−GALは、模擬リソソーム条件下において、血漿中よりも大きい安定性を示した。
【0450】
これらの結果は、α−GALを本明細書中に記載されるように架橋することにより、多数の供給源および発現プラットフォームから得られる組換えα−GALが安定化され得ることを示している。
【0451】
実施例IX
架橋された哺乳動物組換えヒトα−GALのインビボでの薬物動態学および体内分布
実施例VIに記載される架橋された哺乳動物組換えヒトα−GALの薬物動態学および体内分布を、材料および方法の節において本明細書中上記で記載されるように、注入後2時間、7日、14日および28日でのFabryマウスの脾臓、肝臓、心臓および腎臓におけるα−GAL活性、ならびに、これらの器官におけるGb
3レベルを測定することによって求めた。非架橋のReplagal(登録商標)哺乳動物組換えヒトα−GALの体内分布を比較のために求めた。
【0452】
図27A〜
図27Dに示されるように、Fabryマウスの脾臓(
図27A)、肝臓(
図27B)、心臓(
図27C)および腎臓(
図27D)における架橋された哺乳動物組換えα−GALのレベルは、非架橋の哺乳動物組換えα−GALのレベルよりもかなり高かった。
【0453】
図28A〜
図28Dに示されるように、架橋された哺乳動物組換えα−GALは、Gb
3レベルを、注入後28日の経過にわたって、Fabryマウスの心臓(
図28A)、腎臓(
図28B)、肝臓(
図28C)および脾臓(
図28D)において低下させた。架橋された哺乳動物組換えα−GALは、Gb
3レベルを、Fabryマウスの腎臓(
図28B)および脾臓(
図28D)において、非架橋の哺乳動物組換えα−GALが低下させたよりも大きな程度に低下させ、心臓(
図28A)および肝臓(
図28C)においては非架橋の哺乳動物組換えα−GALとほぼ同じ程度に低下させた。
【0454】
これらの結果は、ビス−NHS−PEGによる架橋により、様々な供給源および発現プラットフォームから得られる組換えα−GALが、腎臓および心臓(これらはファブリー障害の処置における主要な標的器官である)を含めて、様々な器官に取り込まれることがかなり高まることを示している。これらの結果はさらに、ビス−NHS−PEGによる架橋により、様々な器官におけるGb
3レベルのより大きい実質的低下がもたらされることを示している。
【0455】
実施例X
ビス−N−ヒドロキシスクシンイミド−ポリ(エチレングリコール)(ビス−NHS−PEG)による植物組換えヒトα−GAL−IIの架橋
植物組換えヒトα−GAL−II(prh−α−GAL−II)(これは、prh−α−GAL−IのN末端に存在するアミノ酸EFを有しない)を、実施例IIに記載されるプロトコルに従って、ビス−NHS−PEG対α−GALの200:1のモル比で、ビス−NHS−PEG
45、ビス−NHS−PEG
21またはビス−NHS−PEG
68により架橋した。
【0456】
prh−α−GAL−IIは、ビス−NHS−PEGによる架橋の後、その生物学的活性を保持していた(データは示されず)。
【0457】
反応生成物を、本明細書中上記のように、SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム−アクリルアミドゲル電気泳動)およびMALDI−TOF質量分析法によって分析した。
【0458】
図29A〜
図29Bに示されるように、標準物の天然型prh−α−GAL−IIが、ゲル電気泳動後、モノマーとして認められ、これに対して、prh−α−GAL−IIをビス−NHS−PEG
45またはビス−NHS−PEG
21と反応させた後(
図29A)、あるいは、ビス−NHS−PEG
68と反応させた後(
図29B)では、prh−α−GAL−IIが、(若干のモノマーが存在するが)主にダイマーの形態で現れた。このことは、2つのモノマーがビス−NHS−PEG架橋剤による架橋によって共有結合で連結されたことを示している。
【0459】
図29A〜
図29Bにおいてさらに示されるように、試験された架橋剤のそれぞれについて、prh−α−GAL−IIのモノマー部分の分子量が架橋剤との反応の後で増大した。この分子量増大は、ビス−NHS−PEG
45についてはビス−NHS−PEG
21よりも大きく(
図29A)、また、ビス−NHS−PEG
68については最も大きかった(
図29Aを
図29Bと比較せよ)。これらの結果は、架橋によってダイマー化されないモノマーがビス−NHS−PEG架橋剤に共有結合で結合したこと、すなわち、タンパク質がPEG化されたことを示している。
【0460】
図30A〜
図30Cに示されるように、prh−α−GAL−IIをビス−NHS−PEG
21架橋剤と反応させることにより、prh−α−GAL−IIダイマーの分子量が、MALDI−TOF質量分析法によって求められるように、95KDa(
図30A)から109KDa(
図30B)に増大し、一方、prh−α−GAL−IIをビス−NHS−PEG
45架橋剤と反応させることにより、prh−α−GAL−IIダイマーの分子量が114KDa(
図30C)に増大した。この分子量増大は、およそ13分子のビス−NHS−PEG
21またはおよそ9分子のビス−NHS−PEG
45がprh−α−GAL−IIダイマーに付加したことを示している。
【0461】
実施例XI
架橋された植物組換えヒトα−GAL−IIのインビトロ安定性
実施例Xに記載されるように得られる架橋された植物組換えヒトα−GAL−II(prh−α−GAL−II)のインビトロ安定性を、材料および方法の節において本明細書中上記で記載されるような様々な条件で測定した。Replagal(登録商標)の市販の組換えヒトα−GALの安定性を比較のために測定した。
【0462】
図31A〜
図31Dに示されるように、植物組換えヒトα−GAL−IIの安定性が、模擬リソソーム条件下(
図31Aおよび
図31B)およびヒト血漿中(
図31Cおよび
図31D)の両方において、ビス−NHS−PEG
68による架橋(
図31Bおよび
図31D)、ビス−NHS−PEG
45による架橋(
図31A〜
図31D)またはビス−NHS−PEG
21による架橋(
図31Aおよび
図31C)のいずれによっても高まった。これらの異なる架橋剤はprh−α−GAL−IIの安定性を同等程度に高めた。これらの図においてさらに示されるように、架橋prh−α−GAL−IIの安定性はReplagal(登録商標)組換えヒトα−GALの安定性よりも大きかった。架橋prh−α−GAL−IIは、より大きい安定性を、模擬リソソーム条件下、ならびに、血漿条件下において示した。
【0463】
図31A〜
図31Dにおいてさらに示されるように、非架橋のprh−α−GAL−IIは、模擬リソソーム条件下(
図1および
図31A〜
図31B)およびヒト血漿中(
図3および
図31C〜
図31D)の両方において、非架橋のprh−α−GAL−Iよりもかなり安定である(比較のために
図1および
図3を参照のこと)。だが、prh−α−GAL−IIは依然として、若干の不安定性を示す。
【0464】
これらの結果は、α−GALを本明細書中に記載されるように架橋することにより、種々のタイプのα−GALが安定化され得ることを示している。
【0465】
実施例XII
架橋された植物組換えヒトα−GAL−IIのインビボでの薬物動態学および体内分布
実施例Xに記載されるPEG
45架橋およびPEG
21架橋の植物組換えヒトα−GAL−II(prh−α−GAL−II)の薬物動態学および体内分布を、材料および方法の節において本明細書中上記で記載されるように、α−GAL活性を血漿および器官において測定することによって求めた。非架橋のReplagal(登録商標)哺乳動物組換えヒトα−GALの薬物動態学および体内分布を比較のために求めた。
【0466】
血液サンプルを、1mg/Kgのα−GALをFabryマウスに注入した後1分、5分、10分、30分、60分、120分、240分、480分および1440分で薬物動態学分析のために採取した。
【0467】
α−GALの体内分布を、2mg/Kgのα−GALを注入した後2時間、7日、14日および28日でのFabryマウスの肝臓、腎臓、心臓および脾臓を回収することによって求めた。
【0468】
図32Aおよび
図32Bならびに表4に示されるように、prh−α−GAL−IIをビス−NHS−PEG
45により架橋することにより、prh−α−GAL−IIの循環消失期半減期がかなり増大し、これにより、哺乳動物組換えα−GALまたは非架橋のprh−α−GAL−IIの循環半減期よりもかなり大きい循環半減期がもたらされた。
【0469】
図33A〜
図33Lに示されるように、prh−α−GAL−IIをビス−NHS−PEG
45により架橋することにより、prh−α−GAL−IIの取り込みが、Fabryマウスの心臓(
図33A)、腎臓(
図33B)、肝臓(
図33C)および脾臓(
図33D)において増大した。だが、肝臓においてはより小さい程度であった。
【0470】
図33E〜
図33Lに示されるように、prh−α−GAL−IIをビス−NHS−PEG
21により架橋することによってもまた、prh−α−GAL−IIの取り込みが、Fabryマウスの心臓(
図33Eおよび
図33I)、腎臓(
図33Fおよび
図33J)、肝臓(
図33Gおよび
図33K)および脾臓(
図33Hおよび
図33L)において増大した。だが、そのような増大は、ほんの2時間の後では必ずしも明白ではなかった。
【0471】
それらの図においてさらに示されるように、架橋prh−α−GAL−IIのレベルが、Fabryマウスの心臓(
図33A、
図33Eおよび
図33I)、腎臓(
図33B、
図33Fおよび
図33J)および脾臓(
図33D、
図33Hおよび
図33L)において哺乳動物組換えα−GALのレベルよりも大きく、肝臓(
図33C、
図33Gおよび
図33K)においては哺乳動物組換えα−GALのレベルよりも低かった。
【0472】
これらの結果は、架橋prh−α−GAL−IIが血漿中および様々な器官(特に、肝臓以外の器官)においてα−GALのかなり高まった活性を示すことを示している。
【0473】
実施例XIII
植物組換えヒトα−GALの活性に対するpHの影響
環境のpHは、リソソーム酵素(例えば、α−GALなど)の安定性および速度論に対する著しい影響を有する。pHは、基質の酵素への結合に影響を及ぼすかもしれない。pHはまた、酵素の活性部位の一部である触媒作用基(例えば、カルボキシル基またはアミノ基など)のプロトン化または脱プロトン化に影響を与えることができ、したがって、酵素の速度論的挙動に影響を与えることができる。酵素の三次構造または四次構造の安定性もまたpH依存的であり、とりわけ、極端に酸性またはアルカリ性のpH値では、酵素反応の速度に影響を与える。
【0474】
PEG
45架橋の植物組換えヒトα−GAL−IIおよび非架橋の植物組換えヒトα−GAL−IIの活性を、α−GAL活性のpH依存性およびそれに対する架橋の影響を調べるために、pNP−G基質を使用して様々なpH値において求めた。測定を、20mMクエン酸塩および30mMリン酸ナトリウムの溶液において行った。
【0475】
様々なpH値におけるα−GAL活性を特徴づける速度論的パラメーターが下記の表5および
図34A〜
図34Cにまとめられる。
【0476】
図34A〜
図34Cに示されるように、α−GAL−IIの架橋はV
maxパラメーター(
図34A)およびk
catパラメーター(
図34C)を増大させたが、K
Mパラメーター(
図34B)に対する著しい影響を有していなかった。
【0477】
V
maxおよびk
catの両パラメーターの高まりは触媒活性における増大を示している。この増大は、非架橋のα−GAL−IIの触媒活性が無視できるほどである少なくとも約7のpH値では特に著しい。
【0478】
K
Mは、酵素/基質親和性に関連する速度論的パラメーターである。K
M値に対する架橋の著しい影響がないことは、架橋はpNP−G基質へのα−GAL親和性に対する著しい影響がないことを示している。
【0479】
実施例XIV
α−GALの安定性に対するPEG化の影響
α−GAL安定性に対するPEG化自体の影響を、PEG架橋剤の安定化効果がPEGの性質に起因するか、または、架橋に起因するかを明らかにするために確認した。
【0480】
植物組換えヒトα−GAL−Iを、異なる分子量(2KDa、5KDaおよび10KDa)を有するN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)活性化メトキシ−キャップ化PEGと反応させた。そのようなPEG試薬はただ1つだけのNHS基を有しており、その結果、タンパク質を、架橋を形成することなくPEG化する。反応生成物をSDS−PAGEによって分析した。
【0481】
図35に示されるように、メトキシ−キャップ化されたPEG化剤はα−GALをPEG化し(これはα−GALの分子量における増大として視認された)、しかし、α−GALダイマーを実質的に生じさせなかった。このことは、α−GALが架橋されなかったことを示している。
【0482】
図36Aおよび
図36Bに示されるように、植物組換えヒトα−GAL−Iを、架橋を形成することなくPEG化することにより、植物組換えα−GALの安定性が模擬リソソーム条件下(
図36A)またはヒト血漿中(
図36B)のどちらにおいても実質的に増大しなかった。
【0483】
これらの結果は、本明細書中上記で記載される架橋の安定化効果がPEG化自体の結果でないことを示している。
【0484】
実施例XV
架橋α−GALの活性に対するPEG鎖長の影響
α−GAL活性に対するPEG架橋剤の鎖長の影響を評価するために、植物組換えヒトα−GAL−Iを、実施例IIに記載されるのと本質的に同じ手順を使用して、ビス−NHS−PEG
2剤、ビス−NHS−PEG
4剤、ビス−NHS−PEG
68剤およびビス−NHS−PEG
150剤により架橋した(PEG
68およびPEG
150はほぼ等しい鎖長である)。α−GAL−Iを、50:1、100:1および200:1のビス−NHS−PEG:α−GALのモル比で架橋した。反応生成物を、本明細書中上記のように、SDS−PAGEによって分析した。実施例IIに記載されるようにビス−NHS−PEG
45により架橋されるα−GAL−Iもまた、比較のために分析した。
【0485】
図37に示されるように、SDS−PAGE分析により、ビス−NHS−PEG剤のすべてが、共有結合で架橋されたダイマーをもたらすようにα−GALを架橋したこと、および、架橋は、200:1のモル比が使用されたとき、より効率的であったことが示された。
【0486】
その後、架橋α−GAL−Iの酵素活性を、実施例IIIに記載されるように求めた。結果が下記の表6にまとめられる。
【0487】
表6に示されるように、PEG
2およびPEG
4による架橋はα−GAL活性を中程度に(およそ30%〜50%)低下させ、これに対して、より長いPEG鎖による架橋はα−GAL活性に著しい影響を与えなかった。
【0488】
これらの結果は、PEG
4よりも長いPEG鎖による架橋が、架橋α−GALの活性を保つという点で好都合であることを示している。
【0489】
実施例XVI
ビス−COOH−PEG剤を使用するα−GALの架橋
事前に調製された(例えば、市販の)ビス−NHS−PEG剤を使用するα−GALの上記架橋の代替として、α−GALを、架橋反応が行われる直前にカルボキシル(すなわち、COOH)基をその場で活性化することによってビス−COOH−PEG剤により架橋した。
【0490】
ビス−COOH−PEG
12、ビス−COOH−PEG
28およびビス−COOH−PEG
45をそれぞれ、カルボキシル基あたり1.1モル当量(すなわち、ビス−COOH−PEGあたり2.2モル当量)のNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)およびEDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドの両方と反応させることによって活性化した。その後、反応混合物を、室温で30分間、DMSO中で振とうした。活性化されたビス−COOH−PEG(これは本質的にはビス−NHS−PEGである)をその後、実施例IIに記載されるように、50:1、100:1および200:1のモル比で植物組換えヒトα−GALと反応させた。反応生成物を、本明細書中上記のようにSDS−PAGEによって分析した。実施例IIに記載されるようにビス−NHS−PEG
45により架橋されるα−GAL−Iもまた、比較のために分析した。
【0491】
図38に示されるように、SDS−PAGE分析により、ビス−COOH−PEG剤のすべてが、ある程度にα−GALを架橋したが、架橋は、200:1のモル比が使用されたとき、より効率的であったことが示された。
【0492】
その後、架橋α−GAL−Iの酵素活性を、実施例IIIに記載されるように求めた。結果が下記の表7にまとめられる。
【0493】
表7に示されるように、試験されたビス−COOH−PEG剤のそれぞれによる架橋は、ほぼ予想された活性を有するα−GALをもたらした。
【0494】
これらの結果は、架橋するビス−COOH−PEG剤は、ビス−NHS−PEG剤による架橋と比較した場合、α−GAL活性を低下させないことを示している。
【0495】
これらの結果からさらに、PEG
4よりも長いPEG鎖による架橋は架橋α−GALの活性を著しく低下させないという上記の発見が確認される。
【0496】
実施例XVII
架橋された植物組換えヒトα−GAL−Iのインビトロ安定性に対する架橋剤の長さおよびタイプの影響
架橋α−GALの安定性に対する鎖長の影響をさらに特徴づけるために、また、ビス−COOH−PEG剤(例えば、実施例XVIに記載されるようなビス−COOH−PEG剤)により架橋されるα−GALの安定性を、ビス−NHS−PEG剤により架橋されるα−GALの安定性と比較するために、実施例XVおよび実施例XVIに記載されるように得られる、ビス−NHS−PEG
2、ビス−NHS−PEG
4、ビス−COOH−PEG
12、ビス−COOH−PEG
28およびビス−COOH−PEG
45により架橋される植物組換えヒトα−GAL−I(prh−α−GAL−I)のインビトロ安定性を、材料および方法の節において本明細書中上記で記載されるような様々な条件で測定し、実施例IIに記載されるようにビス−NHS−PEG
45により架橋されるprh−α−GAL−Iの安定性と比較した。Replagal(登録商標)の市販の組換えヒトα−GALおよび非架橋のprh−GAL−Iの安定性を比較のために測定した。
【0497】
図39に示されるように、模擬リソソーム条件下での植物組換えヒトα−GAL−Iの安定性が、ビス−NHS−PEG剤およびビス−COOH−PEG剤のそれぞれによる架橋によって高まった。
【0498】
この図においてさらに示されるように、架橋されたprh−α−GAL−Iの安定性が、架橋するPEG鎖の長さと相関し、ビス−NHS−PEG
45およびビス−COOH−PEG
45が最大の安定性をもたらし、ビス−NHS−PEG
2が最小の安定性をもたらした。しかしながら、ビス−NHS−PEG
45による架橋は、ビス−COOH−PEG
45による架橋がもたらしたよりもほんのわずかに大きい安定性をもたらしただけであった。このことは、ある特定の長さを超えると、安定性がPEG鎖長によって影響を受けないことを示唆する。
【0499】
図39においてさらに示されるように、ビス−NHS−PEG
45による架橋は、ビス−COOH−PEG
45による架橋がもたらしたよりもわずかに大きい安定性をもたらした。これは、このビス−COOH−PEG剤の不完全な活性化の結果であるかもしれない。しかしながら、安定性における差はわずかであった。
【0500】
加えて、ビス−NHS−PEG剤およびビス−COOH−PEG剤のそれぞれによる架橋は植物組換えヒトα−GAL−Iの安定性を37℃でのヒト血漿中において高めた(データは示されず)。
【0501】
これらの結果は、α−GALを本明細書中に記載されるように架橋することにより、インビボでのα−GALの効力が、リソソーム中および血液中におけるα−GALの安定性を増大させることによって増大し得るという証拠、そして、長さが約28ユニット〜45ユニットであるPEG鎖が、α−GALを架橋によって安定化することにおいて、より短いPEG鎖よりも効果的であるという証拠をさらに提供する。
【0502】
実施例XVIII
架橋された植物組換えヒトα−GAL−IIの速度論的パラメーター
実施例Xに記載されるように得られる架橋された植物組換えヒトα−GAL−IIの速度論的パラメーター、ならびに、非架橋の植物組換えヒトα−GAL−IIの速度論的パラメーターを、それらに対する架橋の影響を調べるために、pNP−G基質およびミカエリス−メンテン分析を使用して求めた。測定を、20mMクエン酸塩、30mMリン酸ナトリウム、0.1%ウシ血清アルブミンおよび0.67%エタノールの溶液において、4.6のpHで行った。速度論的パラメーターを、活性アッセイに基づくタンパク質含有値を使用して計算した。
【0503】
下記の表8に示されるように、α−GAL−IIの架橋は、非架橋のα−GAL−IIと比較して、改善された速度論的性質をもたらした。ミカエリス定数(K
M)が低下した。このことは、基質に対する酵素の親和性がより大きいことを示している。さらには、k
cat/K
M(これは、記載された条件のもとでのこの基質に関する酵素の全体的な触媒効率を意味する)が、架橋された化学種について高まった。
【0504】
実施例XIX
植物組換えヒトα−GAL−IIの架橋の再現性
架橋の回分処理毎の再現性を、実施例IIに記載される手順と類似する手順を使用して、ビス−NHS−PEG
45により200:1の比率で架橋される植物組換えヒトα−GAL−II(prh−α−GAL−II)の5つの回分処理物を調製した後で評価した。
【0505】
第1、第2、第4および第5の回分処理において、1mgのprh−α−GAL−IIを3.98mgのビス−NHS−PEGと反応させた。
【0506】
第3の回分処理において、20.5mgのprh−α−GAL−IIを80.7mgのビス−NHS−PEGと反応させた。
【0507】
架橋prh−α−GAL−IIの酵素活性を実施例IIIに記載されるように求めた。結果が下記の表9にまとめられる。
【0508】
表9に示されるように、測定された活性は、5つすべての回分処理物において、予想された活性に近かった。5つの回分処理物のうちの4つにおいて、測定された活性が、予想された活性と約10%以下で異なった。
【0509】
これらの結果は、架橋prh−α−GAL−IIの得られた活性が比較的予測可能かつ再現可能であることを示している。
【0510】
リソソーム条件下およびヒト血漿中における架橋prh−α−GAL−IIの安定性を本明細書中上記のように求めた。
【0511】
図40Aおよび
図40Bに示されるように、架橋prh−α−GAL−IIの安定性は、良好な再現性を模擬リソソーム条件下およびヒト血漿中の両方において示した。
【0512】
架橋はまた、本明細書中上記のように、SDS−PAGE分析、IEF(等電点フォーカシング)分析およびMALDI−TOF質量分析法によって分析された。非架橋のprh−α−GAL−IIを比較のために分析した。
【0513】
図41に示されるように、これらの異なる回分処理から得られる架橋prh−α−GAL−IIは、同じ程度の共有結合ダイマー化をSDS−PAGE分析のもとで示した。
【0514】
図42に示されるように、これらの異なる回分処理から得られる架橋prh−α−GAL−IIは、同じ等電点をIEF分析のもとで示した。
【0515】
図43A〜
図43Fに示されるように、回分処理1〜5から得られる架橋prh−α−GAL−II(それぞれ、
図43B〜
図43F)はすべて、非架橋のprh−α−GAL−II(
図43A)と比較して、ダイマー型形態でのおよそ20KDa〜21KDaの増大を示した。そのような増大は、α−GALダイマーあたり約10個のPEG分子に対応する。
図43B〜
図43Fにおいてさらに示されるように、これらの異なる回分処理から得られる架橋prh−α−GAL−IIはモノマー対ダイマーの類似する割合を示した。
【0516】
これらの結果はさらに、α−GALの架橋における良好な再現性を示している。
【0517】
架橋prh−α−GAL−IIの速度論的パラメーターを、酵素活性の再現性を調べるために、pNP−G基質およびミカエリス−メンテン分析を使用して求めた。測定を、20mMクエン酸塩、30mMリン酸ナトリウム、0.1%ウシ血清アルブミンおよび0.67%エタノールの溶液において、4.6のpHで行った。速度論的パラメーターを、280nmでの光学密度に基づくタンパク質含有値を使用して計算した。
【0518】
図44に示されるように、これらの異なる回分処理から得られる架橋prh−α−GAL−IIは、基質濃度に対する触媒作用速度の類似するプロフィルを示した。
【0519】
下記の表10に示されるように、これらの異なる回分処理から得られる架橋prh−α−GAL−IIは、V
maxおよびk
catのパラメーターの良好な再現性を示した。K
mパラメーターが回分処理間ではより大きく変化した。だが、これはタンパク質定量の人為的影響であるかもしれない。
【0520】
上記の結果は、架橋α−GALの酵素性質における良好な再現性を示している。
【0521】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0522】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。