(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
引込柱の上部に設置された係止具に係止される本線側のドロップケーブルに固定された第1引留め具と、家屋側のドロップケーブルに固定された第2引留め具とを係脱する引留め具係脱ツールであって、
操作棒と、
前記操作棒の先端に固定され、前記操作棒の軸方向と略直交する第1及び第2腕部を備える略L字状の支持部と、
前記第1及び第2腕部の先端に前記第1又は第2腕部の長手方向と略直交する状態に配置され、前記第1及び第2引留め具をそれぞれ収納し、前記ドロップケーブルを出し入れ可能なスリットを側面部に備える略ボックス状のケース体を有する第1及び第2収納ケースと、
前記第1及び第2収納ケースを前記第1及び第2腕部の先端でそれぞれ前記スリットの方向と同方向に向けた回動軸によって回動自在に支持するケース支持部と、
を備えることを特徴とする引留め具係脱ツール。
前記ケース体は、両端部にテーパ面を有し前記ドロップケーブルの前記ケース体への引き込み動作を補助する前面ガイド及び後面ガイドを備えていることを特徴とする請求項1に記載の引留め具係脱ツール。
引込柱の上部に設置された係止具に係止される本線側のドロップケーブルに固定された第1引留め具と家屋側のドロップケーブルに固定された第2引留め具とを係止する引留め具係止方法であって、
操作棒の先端に固定され、前記操作棒の軸方向と略直交する方向に配置された第1腕部及び第2腕部を備える略L字状の支持部の先端に設けられるケース支持部の回動軸を中心に回動自在の前記第1又は第2腕部の長手方向と略直交するボックス状のケース体を有する第1収納ケース及び第2収納ケースの側面部に設けられるスリットが前記軸方向の下方向を向く下向き位置に前記第1収納ケース及び前記第2収納ケースを配置し、
前記下向き位置に配置された前記第1収納ケース及び前記第2収納ケースのそれぞれに前記ドロップケーブルの第1引留め具及び第2引留め具を収納することと、
前記第1引留め具が収納された前記第1収納ケースを前記係止具の位置まで接近させ、前記第1収納ケースに収納されている第1引留め具を前記第1収納ケースの回動動作に伴い前記係止具へ係止することと、
前記第1収納ケースを前記係止具から離れる方向へ動かす動作にともない前記第1収納ケースから前記第1引留め具を取り出すとともに前記スリットから前記ドロップケーブルを抜き出すことと、
前記第2引留め具が収納された前記第2収納ケースを前記係止具の位置まで接近させ、前記第2収納ケースに収納されている第2引留め具を前記第2収納ケースの回動動作に伴い前記係止具へ係止することと、
前記第2収納ケースを前記係止具から離れる方向へ動かす動作にともない前記第2収納ケースから前記第2引留め具を取り出すとともに前記スリットから前記ドロップケーブルを抜き出すことと、を具備することを特徴とする引留め具係止方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず初めに本発明の実施形態に係る引留め具係脱ツール1を用いて、取付け又は撤去がされるドロップケーブル2及び引留め具6について説明する。ドロップケーブル2とは、光ファイバ等の通信ケーブルの敷設に用いられるケーブルである。ドロップケーブル2は、例えば、
図14に示すように、光ファイバを内包した本体部21と電柱E2へケーブルを固定する支持線部23とが一体に形成されている。ドロップケーブル2は、電柱E2への取付け時に本体部21と支持線部23との間を割き、支持線部23を2つの引留め具6(第1引留め具61、第2引留め具63)へ固定して電柱E2の係止具4のフック部41へ係止することで本体部21を電柱E2へ架設するものである。
【0013】
引留め具6は、
図14に示すように、電柱E2にドロップケーブル2を固定するためにドロップケーブル2側に設けられる固定具である。ここでは、本線側のドロップケーブル2Aに近い図示左側の引留め具6を第1引留め具61とし、家屋側のドロップケーブル2Bに近い図示右側の引留め具6を第2引留め具63とした。第1引留め具61及び第2引留め具63は同じ構造である。具体的に引留め具6は、支持体65とリング部67とを有している。支持体65は、略方形の平板の一面に複数の凸部69を有する。これらの凸部69にドロップケーブル2の本体部21から割かれた支持線部23を巻き付けて固定する。また、リング部67は、支持体65の一端に設けられ、係止具4のフック部41に引っ掛けられる金属製の輪である。
【0014】
次に、ドロップケーブル2を電柱E2へ固定する方法について簡単に説明する。
【0015】
ドロップケーブル2を電柱E2に固定する場合は、固定する箇所で支持線部23をドロップケーブル2の軸方向に沿って割き、本体部21と支持線部23とを必要な長さに亘って分離する。分離されたドロップケーブル2の本線側の部分であるドロップケーブル2Aの支持線部23を第1引留め具61の支持体65に設けられた凸部69に巻きつけ固定する。同様に、所定の間隔を空けて分離されたドロップケーブル2の家屋側の部分であるドロップケーブル2Bの支持線部23を第2引留め具63の支持体65に設けられた凸部69に巻きつけることにより固定する。本体部21は、保護カバー25により覆われる。さらに、分離された本体部21の略中心位置を第1引留め具61と第2引留め具63の間に設けられた支持線部23とテープ27等で固定する。ドロップケーブル2と固定された第1引留め具61及び第2引留め具63のリング部67を係止具4のフック部41へ引っ掛けることにより固定し、ドロップケーブル2を電柱E2に架設する。ドロップケーブル2は、第1引留め具61と、第2引留め具63とがフック部41に係止され、本線側及び家屋側の両側から張られることにより固定される。
【0016】
次に、本発明の実施形態に係る引留め具係脱ツール1の構成について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る引留め具係脱ツール1の斜視図である。
図2は、
図1の引留め具係脱ツール1の側面図である。
図3は、
図1の引留め具係脱ツール1の平面図である。引留め具係脱ツール1は、操作棒100と、支持部200と、第1収納ケース300と、第2収納ケース400とを有する。
【0018】
操作棒100は棒状の部材であって、電柱の所定の高さに設けられた係止具4に引留め具係脱ツール1が届く長さを有している。本実施形態においては、軽量で操作性が良いアルミ製の棒材を用いた。なお、複数段、例えば5段階に伸縮可能な棒材を操作棒100として用いることも可能である。
【0019】
支持部200は、
図3に示すように2つの腕部が平面略L字状に結合された結合部210を有する金属製の部材である。その一方を第1腕部230とし、他方を第2腕部250とする。支持部200は、第1腕部230と第2腕部250とが交わる結合部210に取付け部270を有する。取付け部270に操作棒100の先端が取付けられる。
【0020】
第1腕部230は矩形棒状の中実部材又は矩形棒状の中空部材で第1面231、第2面233、第3面235及び第4面237の4つの側面を有している。第2腕部250は矩形棒状の中実部材又は矩形棒状の中空部材で第1面251、第2面253、第3面255及び第4面257の4つの側面を有している。
【0021】
また、第1腕部230の結合部210と反対の端部には、第1収納ケース300が備えられている。第2腕部250の結合部210と反対の端部には、第2収納ケース400が備えられている。第1腕部230と第2腕部250の長さ及び両腕部が結合するときの角度については、特に限定されないが、ドロップケーブル2の架設時において、ドロップケーブル2に固定された第1引留め具61及び第2引留め具63が、それぞれ第1収納ケース300及び第2収納ケース400に収納可能に形成されている必要がある。また、第1収納ケース300の前面ガイド330と第2収納ケース400の前面ガイド430との距離が近すぎる場合には、取付け時の妨げとなる可能性があるため、これらを考慮して適宜設計される。
【0022】
第1収納ケース300は、
図1、
図2及び
図3に示すように、結合部210と反対側の端部に設けられる第1腕部230のボックス状のケース体310と、前面ガイド330と、後面ガイド350と、側面ガイド370と、ケース支持部390と、を有する。
【0023】
ケース体310は断面角形の筒状に形成される矩形の中空部材である。ケース体310は、4つの側面部から形成される。4つの側面部は、それぞれ第1側面部312、第2側面部314、第3側面部316及び第4側面部318を有する。また、第1側面部312には、その中央部に長手方向に延びる直線状のスリット311が設けられている。スリット311の両側部から外側へ向かって広がる傾斜面を備えた一対の側面ガイド370を有する。側面ガイド370は、第1側面部312のスリット311の両側に沿って配置される、板を所定の角度で折り曲げた部材である。例えば、側面ガイド370は、アルミ板を折り曲げ加工し第1側面部312に接着される。なお、側面ガイド370は、ケース体310の側面の一部を折り曲げ加工して一体に形成することも可能である。
【0024】
スリット311の幅については特に定められていないが、ドロップケーブル2が通過可能で、且つ、収納された第1引留め具61が外れない程度の幅を有していることが好ましい。
【0025】
また、後面ガイド350は、側面ガイド370の中央部付近からケース体310の後端部に設けられている。また、前面ガイド330はケース体310の前端部に設けられている。ケース体310の前端部には第1開口部331、後端部には第2開口部351を有する。ケース体310の後端部には、第2開口部351を縮径する略環状の突部313が設けられている。突部313の内側の開口は、例えば、ダイヤ型に形成されている。
【0026】
本実施形態において、第1収納ケース300は、軽量である程度の剛性を有するアルミ合金を用いている。第1収納ケース300の材料としては、アルミ合金に限られることなく、樹脂材料やその他の軽量な金属材料等を用いることも可能である。
【0027】
前面ガイド330は、ケース体310の前端部に設けられる外向きに広がるテーパ面を有するラッパ状の部材である。前面ガイド330は、ケース体310の前端部近辺の側面部を外側へ所定量折り曲げた箇所に樹脂材料のプレートを巻き付けて形成されている。なお、前面ガイド330の一部には、ケース体310のスリット311と連続するスリット332がプレートの一部に設けられている。なお、前面ガイド330の形状は、ドロップケーブル2をスリット332から第1収納ケース300の内部へ取り込む機能を有するものであれば、本実施形態の形状に限定されない。
【0028】
後面ガイド350は、側面ガイド370の中央部からケース体310の第2開口部351を有する後端部に外向きに広がる2枚の羽形状を有する部材である。後面ガイド350は、側面ガイド370の傾斜面の中央部から樹脂材料のプレートをケース体310の後端部に向けてスリット311の両側に形成されている。なお、2枚の羽形状のプレートを有する後面ガイド350には、ケース体310のスリット311と連続するスリット352が設けられている。なお、後面ガイド350の形状は、ドロップケーブル2をスリット352から第1収納ケース300の内部へ取り込む機能を有するものであれば、本実施形態の形状に限定されない。
【0029】
ケース支持部390は、第1収納ケース300と第1腕部230とを回動可能に接続するヒンジ部である。ケース支持部390は、ケース体310のスリット311が設けられている第1側面部312と対向する第3側面部316の前面ガイド330側に形成される。ケース支持部390は、第1腕部230の第1面231から第3面235の幅よりも若干広い幅を有する略U字状の部材である。第1収納ケース300と第1腕部230は、ケース支持部390から突出する2枚の対抗する板状部材の間に第1腕部230の先端を挟み込むとともに、ケース支持部390の板状部材及び第1腕部230を貫通する回動軸391で回動可能に固定される。本実施形態においては、回動軸391としてボルトを用いた。
【0030】
本実施形態において、ケース支持部390は、軽量である程度の剛性を有するアルミ合金を用いている。ケース支持部390の材料としては、アルミ合金に限られることなく、樹脂材料やその他の金属材料等を用いることも可能である。
【0031】
第2収納ケース400は、
図1、
図2及び
図3に示すように、第2腕部250の結合部210と反対側の端部に設けられるボックス状のケース体410と、前面ガイド430と、後面ガイド450と、側面ガイド470と、ケース支持部490と、を有する。
【0032】
ケース体410は断面角形の筒状に形成される矩形の中空部材である。ケース体410は、4つの側面部から形成される。4つの側面部は、それぞれ第1側面部412、第2側面部414、第3側面部416及び第4側面部418を有する。また、第1側面部412には、中央部に長手方向に延びる直線状のスリット411が設けられている。第1側面部412には、スリット411の両側部から外側へ向かって広がる傾斜面を備えた一対の側面ガイド470を有する。側面ガイド470は、第1側面部412のスリット411の両側に沿って配置される板を所定の角度で折り曲げた部材である。例えば、側面ガイド470は、アルミ板を折り曲げ加工し第1側面部412に接着される。なお、側面ガイド470は、ケース体410の側面の一部を折り曲げ加工して一体に形成することも可能である。
【0033】
スリット411の幅については特に定められていないが、ドロップケーブル2が通過可能で、且つ、収納された第2引留め具63が外れない程度の幅を有していることが好ましい。
【0034】
また、後面ガイド450は、側面ガイド470の中央部付近からケース体410の後端部に設けられている。また、前面ガイド430はケース体410の前端部に設けられている。ケース体410の前端部には第1開口部431、後端部には第2開口部451を有する。ケース体410の後端部には、第2開口部451を縮径する略環状の突部413が設けられている。突部413の内側の開口は、例えば、ダイヤ型に形成されている。
【0035】
本実施形態において、第2収納ケース400は、軽量である程度の剛性を有するアルミ合金を用いている。第2収納ケース400の材料としては、アルミ合金に限られることなく、樹脂材料やその他の軽量な金属材料等を用いることも可能である。
【0036】
前面ガイド430は、ケース体410の前端部に設けられる外向きに広がるテーパ面を有するラッパ状の部材である。前面ガイド430は、ケース体410の前端部近辺の側面を外側へ所定量折り曲げた箇所に樹脂材料のプレートを巻き付けて形成されている。なお、前面ガイド430の一部には、ケース体410のスリット411と連続するスリット432がプレートの一部に設けられている。なお、前面ガイド430の形状は、ドロップケーブル2をスリット432から第2収納ケース400の内部へ取り込む機能を有するものであれば、本実施形態の形状に限定されない。
【0037】
後面ガイド450は、側面ガイド470の中央部からケース体410の第2開口部451を有する後端部に外向きに広がる2枚の羽形状を有する部材である。後面ガイド450は、側面ガイド470の傾斜面の中央部から樹脂材料のプレートをケース体410の後端部に向けてスリット311の両側に形成されている。なお、2枚の羽形状のプレート間には、ケース体410のスリット411と連続するスリット452が設けられている。なお、後面ガイド450の形状は、ドロップケーブル2をスリット452から第1収納ケース400の内部へ取り込む機能を有するものであれば、本実施形態の形状に限定されない。
【0038】
ケース支持部490は、第2収納ケース400と第2腕部250とを回動可能に接続するヒンジ部である。ケース支持部490は、ケース体410のスリット411が設けられている第1側面部412と対向する第3側面部416の前面ガイド430側に固定される。ケース支持部490は、第2腕部250の第1面251から第3面255の幅よりも若干広い幅を有する略U字状の部材である。第2収納ケース400と第2腕部250は、ケース支持部490から突出する2枚の対抗する板状部材の間に第2腕部250の先端を挟み込むとともに、ケース支持部490の板状部材及び第2腕部250を貫通する回動軸491で回動可能に固定される。本実施形態においては、回動軸491としてボルトを用いた。
【0039】
本実施形態において、ケース支持部490は、軽量である程度の剛性を有するアルミ合金を用いている。ケース支持部490の材料としては、アルミ合金に限られることなく、樹脂材料やその他の金属材料等を用いることも可能である。
【0040】
次に、このように形成された引留め具係脱ツール1の動作について説明する。
【0041】
(引留め具6の係止方法)
図4、
図5、
図6、
図7及び
図8は、本実施形態に係る引留め具係脱ツール1を用いた引留め具の係止方法を順番に示した説明図である。
【0042】
まず、引留め具係脱ツール1を使用する前に、電柱E2へ架設するドロップケーブル2と第1引留め具61及び第2引留め具63とを固定する。次に、第1収納ケース300の第3側面部316を第1腕部230の第4面237と対向する下向き位置に回動させる。また、第2収納ケース400の第3側面部416を第2腕部250の第4面257と対向する下向き位置に回動させる。言い換えれば、ケース体310のスリット311及びケース体410のスリット411が図示下方向に向く位置に第1収納ケース300及び第2収納ケース400を回動させる。
【0043】
次に、ドロップケーブル2の第1引留め具61を第1収納ケース300に収納し、第2引留め具63を第2収納ケース400に収納する。第1引留め具61は、リング部67が前面ガイド330側に来る向きに第1収納ケース300に収納される。第2引留め具63は、リング部67が前面ガイド430側に来る向きに第2収納ケース400に収納される。また、第1引留め具61及び第2引留め具63は、係止具4へ係止時において引留め具6の支持体65の凸部69が電柱E2と反対側を向くように第1収納ケース300及び第2収納ケース400内に収容される。具体的には、第1収納ケース300に収容された第1引留め具61は、凸部69が第2側面部314を向く位置に配置される。第2収納ケース400に収容された第2引留め具63は、凸部69が第2側面部414を向く位置に配置される。
【0044】
次に、操作棒100を操作してドロップケーブル2に固定された第1引留め具61及び第2引留め具63が収容された引留め具係脱ツール1を持ち上げる。支持部200が電柱E2の係止具4の位置まで持ち上げられたら、第1収納ケース300を係止具4のフック部41へ操作棒100を用いて接近させる。
【0045】
次に、
図5に示すように、第1収納ケース300をさらにフック部41へ接近させる。第1収納ケース300がフック部41へ接近することにより第1収納ケース300に収容されている第1引留め具61もフック部41へ接近する。
【0046】
第1引留め具61のリング部67がフック部41と抜け防止部43との隙間45を通り、リング部67の輪の中にフック部41の先端部42が収まる位置で操作棒100の動きを停止する。
【0047】
ここで、操作棒100操作して、支持部200を電柱E2から
図5中の矢印Z方向に移動させる。支持部200が電柱E2からZ方向に動かされると
図6に示すように、第1収納ケース300が矢印Xの方向に略90度回動する。この第1収納ケース300の回動動作と連動して、第1引留め具61のリング部67がフック部41の先端部42からフック部41の基端方向へ移動し確実に係止される。
【0048】
第1引留め具61がフック部41に係止されたことを確認後、
図7に示すように、第1収納ケース300の軸方向に操作棒100を操作して、第1引留め具61を第1収納ケース300から引き抜く。そして、引き抜かれた第1引留め具61と固定されているドロップケーブル2をスリット311、332及び352から抜く。
【0049】
続いて、第2収納ケース400に収容されている引留め具63を係止具4へ取付ける。なお、引留め具63を係止具4へ係止させる方法は、上述の第1引留め具61を係止具4へ係止させる方法と同様である。このため、第2引留め具63の第2収納ケース400を用いた係止方法の詳細についてはその説明を省略する。これにより
図8に示すように係止具4へ第1引留め具61及び第2引留め具63が係止され、ドロップケーブル2が電柱E2に架設される。
【0050】
(引留め具6の撤去方法)
次に引留め具6の撤去方法について説明する。
図9、
図10、
図11及び
図12は、本実施形態に係る引留め具係脱ツール1を用いた引留め具の撤去方法を順番に示した説明図である。
【0051】
また、以下に説明する引留め具6の撤去方法においては、上述の引留め具6の係止方法により、第1引留め具61の上に第2引留め具63が重なって配置されている。このため、撤去時においては、取付け時とは逆に第2引留め具63から撤去する。
【0052】
まず、
図9に示すように、引留め具係脱ツール1を持ち上げる前に、引留め具係脱ツール1の第1収納ケース300の第3側面部316を第1腕部230の第2面233と対向する上向き位置にセットする。また、第2収納ケース400の第3側面部416を第2腕部250の第2面253と対向する上向き位置にセットする。言い換えれば、
図9に示すように、ケース体310のスリット311が図示上方に向く位置に第1収納ケース300を配置する。ケース体410のスリット411が図示上方に向く位置に第2収納ケース400を配置する。
【0053】
第1収納ケース300及び第2収納ケース400が上記上向き位置にセットされていることを確認後、操作棒100を用いて支持部200を持ち上げて、第2引留め具63を収容する第2収納ケース400を電柱E2へ近接させる。
【0054】
ドロップケーブル2が第2収納ケース400の中へ収容されるように操作棒100を操作する。具体的には、ドロップケーブル2を第2収納ケース400のスリット411、432及び452に沿って収納する。
【0055】
図10に示すように、第2収納ケース400に収納されたドロップケーブル2に沿って第2引留め具63に向かって第2収納ケース400を操作し、係止具4に係止されている第2引留め具63を第2収納ケース400内に収納する。
【0056】
この状態で操作棒100を図示上方へ操作して
図11に示すように、第2収納ケース400を約90度回動させると、第2腕部250の端部に第2収納ケース400が位置する。この動作に連動して、第2収納ケース400に収納されている第2引留め具63も回動する。第2引留め具63が90度回動すると
図12に示すように、リング部67の輪が係止具4のフック部41の曲げ加工がされている先端部42と略直交する位置に変わる。ここで、操作棒100を用いて支持部200を先端部42と略並行に隙間45の方向へ動かすことにより、リング部67はフック部41から抜ける。これにより、第2引留め具63が係止具4から撤去される。
【0057】
第2引留め具63が係止具4から撤去された後、第2収納ケース400をドロップケーブル2に沿って電柱E2から離間する方向へ引く。このとき、ドロップケーブル2で繋がっている第1引留め具61が係止具4に係止されているため、第2引留め具63は、第2収納ケース400から外れる。第2引留め具63が第2収納ケース400から外れた後に、ケース体410からドロップケーブル2を抜く。
【0058】
続いて、第1収納ケース300を用いて第1引留め具61の撤去作業を行う。なお、第1収納ケース300を用いて引留め具61を係止具4から撤去する方法は、上述の第2収納ケース400を用いた第2引留め具63の撤去方法と同様の方法により可能であるため、第1引留め具61の第1収納ケース300を用いた撤去方法の詳細についてはその説明を省略する。これにより係止具4に係止されていた第1引留め具61及び第2引留め具63が撤去され、ドロップケーブル2を電柱E2から取り外すことができる。
【0059】
このように構成された引留め具係脱ツール1、引留め具の係止方法及び引留め具の撤去方法によれば、地上から数メートルの高さに位置する電柱E2の係止具4にドロップケーブル2に固定された第1引留め具61及び第2引留め具63を地上から直接係止することができる。また、地上から数メートルの高さに位置する電柱E2の係止具4に係止された第1引留め具61及び第2引留め具63を地上から撤去することができる。また、引留め具係脱ツール1を用いたドロップケーブル2の新設及び撤去作業は、高所作業車を用いることができない傾斜地や狭隘地においても使用することが可能である。このため、ドロップケーブル2の新設及び撤去作業の度にはしごを電柱E2に設置して登り降りする必要が無い。
【0060】
また、例えば、上述のように第1収納ケース300に収納された第1引留め具61は、支持部200を上下又は左右の方向に動作させることにより簡単に係止することができる。このため、支持部200が大きく傾くことがない。よって、同時に第2収納ケース400に収納されている第2引留め具63が第1引留め具61の取付け作業中に落下することがない。さらに、ケース体310及び410の後端部には突部313及び413が設けられているため、一度収納された引留め具6が第1収納ケース300又は第2収納ケース400の後端部から滑り落ちることもない。このため、例えば、引留め具6を撤去したときに、引留め具6は、第1収納ケース300又は第2収納ケース400内に収められているため、操作者や、近隣へドロップケーブル2が落下することを防ぐことができる。
【0061】
また、ケース支持部390及び490から突出する2枚の対抗する板状部材の間に第1腕部230又は第2腕部250の先端を挟み込み回動軸を兼ねたボルトで固定する簡易な構造であるため、故障しにくく、修理しやすい。なお、ケース支持部390及び490と第1腕部230及び第2腕部250との回動具合と停止具合をボルトの締め具合で調整可能である。さらに、ケース支持部390及び490と第1腕部230又は第2腕部250との間にゴム材等の弾性体を挟むことにより係る摩擦を変化させて所望の角度で固定可能とすることも可能である。
【0062】
また、第1収納ケース300及び第2収納ケース400は、作業者が手で引留め具6を係止具4から取り外すときのように動作する。具体的には、フック部41の形状に沿って、第1収納ケース300または第2収納ケース400内に固定された引留め具6を回転させ、フック部41からリング部67を外すことが可能である。このため、係止具4及び引留め具6のリング部67の両方とも壊れることがないため、再利用も可能である。また、引留め具6のリング部67が壊れて係止具4に残ることや、電柱E2の周りに破片が飛ぶ虞もない。
【0063】
また、本実施形態に係る引留め具係脱ツール1は、ケース体310又は410の前端部に前面ガイド330又は440を有している。このため、引留め具6の撤去時において、ドロップケーブル2を第1開口部351又は451の上方からスリット352又は452へ導入し易い。さらに、引留め具係脱ツール1は、側面ガイド370又は470、及び、羽形状の後面ガイド350又は450を有している。このため、例えば、前面ガイド330又は440で捉えたドロップケーブル2が、その後方位置で湾曲している場合でもケース体310又は410の後方に形成されている羽形状の後面ガイドがドロップケーブル2を捉えてスリット311又は411へ導入することができる。
【0064】
よって、引留め具6の撤去時において、ドロップケーブル2を第1収納ケース300又は第2収納ケース400に導入しやすいため、引留め具6の撤去に係る作業時間を短縮することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る引留め具係脱ツール1及び引留め具係止方法を用いることにより、係止具4と係止されるドロップケーブル2に固定される2つの引留め具6を第1腕部230及び第2腕部250を用いて一回の係止操作で2つの引留め具6を係止具4へ係止することができる。このため、操作棒100を上げ下げする負担が軽減されるとともに、作業時間を短縮することができる。
【0066】
本発明の実施形態に係る引留め具係脱ツール1、引留め具係止方法及び撤去方法によれば、地上からドロップケーブルの新設及び撤去作業をすることが可能であり、且つ、操作性にも優れた低コストの引留め具係脱ツール、引留め具の係止方法及び撤去方法を提供することができる。
【0067】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0068】
本発明の実施形態に係る引留め具係脱ツール1において、ケース支持部390及び490は、回動軸391及び491において、第1腕部230及び第2腕部250との摩擦により回動及び固定自在に形成されているが、固定方法はこれに限られない。例えば、回動軸391及び491を回動自在に形成するとともに、ケース支持部390、490からそれぞれ第1腕部230、第2腕部250へ延びる押さえ部材を設けて任意の角度で固定可能に形成することも可能である。押さえ部材を用いてより確実に固定することで電柱に配線されている他のケーブルに第1収納ケース300又は第2収納ケース400が当接し、角度が不意に変化することを防ぐことができる。
【0069】
また、本実施形態の前面ガイド330、430及び後面ガイド350、450は、樹脂材料のプレートを用いて形成しているが、ある程度の可撓性と強度を備えているものであれば、この材料に限られない。例えば、金属性のプレートや、紙製のプレートを使用することも可能である。また、前面ガイド330、430及び後面ガイド350、450の羽形状の大きさ、形については、ドロップケーブル2の太さや曲り具合、電柱の太さ等を考慮して適宜設計変更可能である。例えば、前面ガイド330、430及び後面ガイド350、450は、複数種類の形状を用意してケース体310、410と交換可能とすることもできる。
【0070】
また、本実施形態においては、略L字の第1腕部230及び第2腕部250を備えているが、引留め具6の撤去においては特にこの形状に限られない。例えば、略L字部材ではなく、I字状部材の先端に収納ケースを設けた形状でもよい。言い換えれば、一つの腕部の先端に一つの収納ケースを設けたツールを用いて引留め具6の撤去することも可能である。腕部を一つにすることにより、ツールの重量をより軽量化することが可能である。
【0071】
また、ケース体310及び410の後端部に設けられている突部313及び413により形成される開口の形状については、ダイヤ型に限られない。円形や楕円形その他の形状であってもよく、引留め具6が後端部から落下することを防止する構造で且つ引留め具6を係止後にドロップケーブル2がスムーズに抜ける構造であればよい。
【0072】
また、ケース体310及び410の外面に反射面や目盛等をつけて、引留め具6の係脱時における係止具4との距離感をつかみやすくすることも可能である。
【0073】
この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施が可能であるのはもちろんである。
【解決手段】本実施形態に係る引留め具係脱ツールは、操作棒100と、操作棒100の先端に固定され、操作棒100の軸方向と直交する第1及び第2腕部230、250を備えるL字状の支持部200と、第1及び第2腕部230,250の先端に第1又は第2腕部230、250の長手方向と直交する状態に配置され、第1及び第2引留め具61、63を収納し、ドロップケーブル2を出入れ可能なスリット311、411を側面部312、412に備えるボックス状のケース体310、410を有する第1及び第2収納ケース300、400と、第1及び第2収納ケース300、400を第1及び第2腕部230、250の先端でスリット311、411方向に向けた回動軸391、491によって回動自在に支持するケース支持部390、490と、を備える。