(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記セグメントは、コンクリートを主成分とする本体部と、該本体部の内部に配置された金属製の補強材と、前記本体部の軸方向の側面に配置されたリング間継手と、前記本体部の周方向の側面に配置されたセグメント間継手と、を備え、前記補強材及び前記リング間継手又は前記セグメント間継手を介して軸方向又は周方向に隣接するセグメント間の前記電極板が通電可能に構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の生物付着防止装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載された方法では、海中に薬液を注入していることから、環境保全の観点から好ましくない。また、上述した特許文献2に記載された方法では、電極を導水路の略中央部分に配置していることから、流水に対して電極が抵抗体となってしまい、導水効率が低下してしまう等の問題がある。
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、導水効率を維持しつつ導水路の内表面への生物付着を抑制することができる、生物付着防止装置及び導水路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、導水路の内表面への生物付着を抑制する生物付着防止装置であって、水中に電流を流す電極を構成するカソード及びアノードと、前記電極の印加電圧及び極性反転を制御する電源装置と、を備え、前記導水路の内表面の周方向に前記カソード及び前記アノードが交互に配置されて
おり、さらに、前記導水路は、周方向及び軸方向に複数に分割されたセグメントにより構成されており、前記セグメントは、前記導水路の内表面を形成する内側に配置された電極板と、該電極板の外周に形成された絶縁部と、を備えていることを特徴とする生物付着防止装置が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、水中に浸漬されて取水又は放水する導水路において、前記導水路の内表面への生物付着を抑制する生物付着防止装置を備え、前記生物付着防止装置は、水中に電流を流す電極を構成するカソード及びアノードと、前記電極の印加電圧及び極性反転を制御する電源装置と、を備え、前記導水路の内表面の周方向に前記カソード及び前記アノードが交互に配置されて
おり、さらに、前記導水路は、周方向及び軸方向に複数に分割されたセグメントにより構成されており、前記セグメントは、前記導水路の内表面を形成する内側に配置された電極板と、該電極板の外周に形成された絶縁部と、を備えていることを特徴とする導水路が提供される。
【0011】
前記セグメントは、軸方向に隣接するセグメントと電気的に接続可能な連結部材を有していてもよい。
【0012】
前記セグメントは、コンクリートを主成分とする本体部と、該本体部の内部に配置された金属製の補強材と、前記本体部の軸方向の側面に配置されたリング間継手と、前記本体部の周方向の側面に配置されたセグメント間継手と、を備え、前記補強材及び前記リング間継手又は前記セグメント間継手を介して軸方向又は周方向に隣接するセグメント間の前記電極板が通電可能に構成されていてもよい。
【0013】
前記電極板は、前記本体部との接続面に複数の突起を有していてもよい。また、前記セグメントは、前記電極板と前記本体部との間に絶縁層が形成されていてもよいし、緩衝層が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
上述した本発明に係る生物付着防止装置及び導水路によれば、導水路の周方向に水中で通電可能なカソード及びアノードを交互に配置したことにより、導水路の流水中に抵抗体を形成することなく導水路の周方向に通電させることができ、導水路の軸方向の長さに関係なく導水路の内表面に電流を流すことができる。また、水中でカソード及びアノード間に電流を流すことにより、カソード側の表面に低酸素層や無酸素層を形成することができ、生物付着を抑制することができる。また、電極を極性反転させることにより、導水路の内表面の全てについて、生物付着を抑制することができる。
【0015】
したがって、本発明によれば、導水効率を維持しつつ導水路の内表面への生物付着を抑制することができる。また、本発明は、水中に薬液を注入する必要がなく、環境保全の観点においても優れている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る生物付着防止装置及び導水路の実施形態について、
図1〜
図7を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の一実施形態に係る導水路を示す図であり、(a)は外観斜視図、(b)は正面中心投影図、を示している。
図2は、
図1に示したセグメントの斜視図である。なお、
図2において、説明の便宜上、セグメントを構成するコンクリートの一部を除去した状態を図示している。
【0018】
本発明の一実施形態に係る導水路1は、
図1(a)及び(b)に示したように、水中に浸漬されて取水又は放水する導水路であって、導水路1の内表面への生物付着を抑制する生物付着防止装置2を備え、生物付着防止装置2は、水中に電流を流す電極3を構成するカソード3c及びアノード3aと、電極3の印加電圧及び極性反転を制御する電源装置4と、を備え、導水路1の内表面の周方向にカソード3c及びアノード3aが交互に配置されている。
【0019】
導水路1は、例えば、火力発電所や原子力発電所等の設備に配置され、冷却水として海水を汲み上げる取水路又は使用済みの冷却水を海中に放出する放水路であるが、これらに限定されるものではない。なお、導水路1は、常時、完全に内部が水中に浸漬しているものに限定されず、導水路1の一部のみが常時又は一時的に水中に浸漬しているものも含まれる。本実施形態は、この水中に浸漬している部分への生物の付着を抑制する。
【0020】
導水路1は、周方向及び軸方向に複数に分割されたセグメント5により構成されている。例えば、
図1(b)に示したように、導水路1は周方向に5分割されており、楔形状を有する一つのキーセグメント5kと、キーセグメント5kに隣接する台形状の台形セグメント5tと、これら以外の略四角形状の通常セグメント5nと、により構成されている。なお、キーセグメント5k、台形セグメント5t及び通常セグメント5nは、外形の形状以外は基本的に同一の形状を有しており、特に断りのない限り、単に「セグメント5」と表示した場合は、キーセグメント5k、台形セグメント5t及び通常セグメント5nの全てを含むものとする。
【0021】
セグメント5は、例えば、
図2に示したように、コンクリートを主成分とする本体部51と、本体部51の内部に配置された金属製の補強材52と、本体部51の軸方向の側面に配置されたリング間継手53と、本体部51の周方向の側面に配置されたセグメント間継手54と、導水路1の内表面を形成する本体部51の内側に配置された電極板55と、電極板55の外周に形成された絶縁部56と、を備えている。
【0022】
なお、図示したセグメント5は、補強材52として鉄筋を使用しているが、補強材52は鉄筋に限定されるものではなく鋼材や鋼繊維等の金属部材であればよいし、必要に応じて補強材52を省略することもできる。また、セグメント5の略中央部には、導水路1の外面と掘削面(土の部分)との隙間を埋めるためのモルタル材を注入する注入口57が形成されていてもよく、この注入口57には、開口部を水密に封止する封止栓(図示せず)が配置される。封止栓(図示せず)は、例えば、樹脂製又はコンクリート製であり、表面に電極板55を有していてもよい。
【0023】
ここで、セグメント5の構造について、
図3(a)〜
図4(b)を参照しつつ説明する。
図3は、
図2におけるS−S矢視断面図であり、(a)は第一実施形態、(b)は第二実施形態、(c)は第三実施形態、を示している。
図4は、
図2におけるS−S矢視断面図であり、(a)は第四実施形態、(b)は第五実施形態、を示している。
【0024】
図3(a)に示した第一実施形態におけるセグメント5は、本体部51を形成するコンクリートの表面に電極板55を埋め込んだものである。電極板55は、本体部51との接続面に複数の突起55aを有していてもよい。かかる突起55aを形成することにより、コンクリートと電極板55との付着強度を向上させることができる。電極板55は、例えば、炭素鋼板、ステンレス鋼板、白金板、酸化イリジウムがコーティングされた金属板、炭素繊維シート等の導電性を有する板状又はシート状の部材により構成される。例えば、電極板55が炭素鋼板の場合、通電することによってアノード側(陽極側)が溶解することから、電極板55の板厚は生物付着防止装置2の使用時間や印加電圧等の条件によって適宜設計される。
【0025】
図3(a)に示したように、電極板55の外周は、本体部51を形成するコンクリートにより充填されており、絶縁部56を構成している。本実施形態において、コンクリートは絶縁材として機能している。コンクリートは、一般に、鋼材等の金属と比較して格段に導電性が低く、湿潤時に導電性が高くなった場合であっても金属と比較すれば著しく導電性が低いことから、相対的に絶縁材とみなすことができる。このように、電極板55の外周に絶縁部56を形成することにより、隣接する電極板55間における過度の通電を抑制することができ、電極板55の表面における電流密度分布を分散させることができる。
【0026】
また、セグメント5は、電極板55と本体部51との間に緩衝層58が形成されていてもよい。緩衝層58は、電極板55とコンクリートとの素材の違いによる歪み差を吸収するための層である。緩衝層58には、例えば、海水等に対して腐食性の高い樹脂材(例えば、エポキシ樹脂等)が用いられる。なお、電極板55が炭素繊維シート等のようにコンクリートの歪みに追従して変形可能な素材である場合には、緩衝層58を省略するようにしてもよい。
【0027】
図1(a)及び(b)に示したように、導水路1は、軸方向に連接された複数のリング体により構成されており、リング体は複数のセグメント5により構成されている。また、
図1(b)に示したように、リング体の周方向にカソード3cとアノード3aとが交互に配置されており、導水路1の切羽側から抗口までの間に渡って電流を流すためには、隣接するリング体間の同じ極性を有する電極板55同士(カソード3c同士及びアノード3a同士)を通電可能に構成する必要がある。
【0028】
そこで、本実施形態では、補強材52及びリング間継手53を介して軸方向に隣接するセグメント5間の電極板55を通電可能に構成している。具体的には、セグメント5は、電極板55と補強材52とが導電線59により接続され、補強材52とリング間継手53とが導電線59により接続されることによって、通電可能に構成される。なお、セグメント5が補強材52を有しない場合には、電極板55とリング間継手53とを導電線59により直接的に接続するようにしてもよい。
【0029】
また、キーセグメント5kのように、周方向に隣接する台形セグメント5tと同一の極性を有する場合には、セグメント間継手54と補強材52とを導電線59により接続することによって、補強材52及びセグメント間継手54を介して周方向に隣接するセグメント5間の電極板55を通電可能に構成することができる。
【0030】
上述したように、補強材52や継手(リング間継手53又はセグメント間継手54)を介して通電させることにより、セグメント5を構成する部品を利用して容易に通電可能な構造を形成することができる。例えば、電極板55、補強材52、リング間継手53、セグメント間継手54等を型枠に配置した後、導電線59の配線を行い、コンクリートを型枠に流し込んで養生することにより、隣接するセグメント5と通電可能なセグメント5を形成することができる。なお、複数のリング間継手53及びセグメント間継手54を有する場合にどの継手を介して通電可能に構成するか否かは、セグメント5の配置によって任意に選択することができる。
【0031】
図3(b)に示した第二実施形態におけるセグメント5は、電極板55と補強材52とを接続する導電線59に替えて、補強材52の位置決めを行うスペーサ60を導通部材として利用したものである。その他の構成については、上述した第一実施形態におけるセグメント5と同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0032】
図3(c)に示した第三実施形態におけるセグメント5は、電極板55をボルト等の締結部材61により本体部51に固定するようにしたものである。本体部51を形成するコンクリートには、締結部材61を螺合させるためのインサート62が埋設されている。電極板55には、締結部材61を挿通可能な開口部が形成されている。締結部材61及びインサート62は、導通可能な金属部材により形成されている。また、インサート62と補強材52とが導電線59により接続されている。
【0033】
したがって、電極板55は、締結部材61、インサート62、導電線59、補強材52、リング間継手53等を介して通電可能に構成されている。なお、締結部材61により電極板55を本体部51に固定する場合には、電極板55の背面に形成される突起55aを省略するようにしてもよい。
【0034】
図4(a)及び(b)に示した第四実施形態及び第五実施形態におけるセグメント5は、上述した導電線59に替えて、軸方向に隣接するセグメント5と電気的に接続可能な連結部材63を有するものである。
図4(a)に示した連結部材63は、本体部51の一部を貫通して電極板55に接続可能な金属製の棒状部材又は薄板部材により構成されている。電極板55と連結部材63との接合部には、いわゆるワンタッチジョイント構造を使用するようにしてもよい。
【0035】
例えば、セグメント5の本体部51を形成するコンクリートが鋼繊維を混入したものである場合のように、本体部51の導電性が高く、コンクリート内に導電線59を配置することが困難な場合に、本実施形態における連結部材63を採用することができる。この場合、電極板55と本体部51との間に絶縁層64を形成することが好ましい。絶縁層64は、絶縁性及び耐腐食性の高い樹脂材により形成される。絶縁層64は、電極板55とコンクリートとの素材の違いによる歪み差を吸収するための緩衝層としても機能する。
【0036】
また、絶縁層64は、電極板55の外周を覆うように形成されており、絶縁部56を形成している。また、連結部材63の本体部51を貫通する部分は、連結部材63の外面又は貫通部の内面を絶縁材により被覆するようにしてもよいし、絶縁層64を拡張して連結部材63の貫通部を絶縁層64で形成するようにしてもよい。
【0037】
図4(b)に示した連結部材63は、電極板55の表面にボルト等の締結部材により固定される金属製の薄板部材により構成されている。連結部材63と本体部51との接触面には絶縁層64を形成してもよいし、連結部材63の接触面を絶縁材で被覆するようにしてもよい。
【0038】
上述したセグメント5は、いわゆる通常のRCセグメント(Reinforced concrete segment)の場合に基づいて説明したが、本実施形態に使用されるセグメント5は、かかるセグメントに限定されるものではない。例えば、
図5に示した変形例のように、セグメント5は、本体部51を形成するコンクリートの外周に鋼枠50を配置したものであってもよい。また、セグメント5は、SBL(Steel Beam Lining)やSFRCセグメント(Steel Fiber Reinforced Concrete segment)等であってもよい。
【0039】
次に、導水路1の配線方法について、
図6を参照しつつ説明する。ここで、
図6は、
図1に示した導水路の平面展開図である。
図6に示した平面展開図は、導水路1の内表面を上面にして平面上に展開して図示したものである。ここで、説明の便宜上、カソード3cを構成するセグメント5を灰色に塗り潰し、アノード3aを構成するセグメント5を白抜きで表示している。また、カソード3cの配線を点線で図示し、アノード3aの配線を一点鎖線で図示している。
【0040】
図6に示したように、カソード3c及びアノード3aは、周方向(図の左右方向)に交互に配置されるとともに、軸方向(図の上下方向)にも交互に配置される部分を有するように、略千鳥状に配置される。かかる配置により、カソード3cの周囲にアノード3aを略均等に配置することができ、カソード3cとその外周を囲う複数のアノード3aとにより電流を流すことができ、カソード3cの表面における電流密度を略均等にすることができる。
【0041】
また、カソード3cを構成するセグメント5は、軸方向に重なり合う部分を有し、このカソード3cを構成するセグメント5同士を連結するリング間継手によって、軸方向に通電可能に配線される。同様に、アノード3aを構成するセグメント5は、軸方向に重なり合う部分を有し、このアノード3aを構成するセグメント5同士を連結するリング間継手によって軸方向に通電可能に配線される。
【0042】
なお、
図6に示した図面上では、奇数段の右端に配置されたアノード3aを構成するセグメント5と、偶数段の左端に配置されたアノード3aを構成するセグメント5と、を接続する配線が分断されているように見えるが、セグメント5を環状に組み立てた場合には、奇数段の右端に配置されたアノード3aを構成するセグメント5と、偶数段の左端に配置されたアノード3aを構成するセグメント5と、は通電可能に配線された状態となる。
【0043】
また、キーセグメント5kは、台形セグメント5tや通常セグメント5nよりも小さい形状を有することが多く、隣接するカソード3c又はアノード3aと同一の極性を有するように構成してもよい。この場合、キーセグメント5kと周方向に隣接する台形セグメント5tとを連結するセグメント間継手によって周方向に通電可能に配線される。
【0044】
なお、ここでは、周方向にキーセグメント5kを含めて5分割した場合について説明しているが、キーセグメント5kを含めて6分割してもよく、この場合には、キーセグメント5kも含めてカソード3c及びアノード3aを交互に配置するようにしてもよい。
【0045】
電源装置4は、例えば、導水路1の抗口側の端部に配置されたセグメント5に電圧を印加可能に接続されている。例えば、電源装置4の端子は、セグメント5のリング間継手に導電線により接続される。また、電源装置4のプラス端子及びマイナス端子を定期的に入れ替えることにより、セグメント5の電極板55を極性反転させることができる。
【0046】
すなわち、
図6に示したカソード3c及びアノード3aの配置で一定期間通電した後、極性反転してカソード3cをアノード3aとして使用し、アノード3aをカソード3cとして使用する。かかる極性反転により、カソード3cとアノード3aとを交互に使い分けることができ、生物付着防止作用の均質化を図ることができる。
【0047】
次に、電極3における生物付着防止作用について、
図7を参照しつつ説明する。ここで、
図7は、電極表面における微弱電流法の作用を示す説明図である。いま、電源装置4により電極3間に微弱電流(例えば、0.05〜2A/m
2程度の電流密度)を流し、ある電極3を最初にカソード3cとして使用し、極性反転してアノード3aとして使用する場合について説明する。
図7(a)は通電前の状態を示している。図中の斜線部は電極3(カソード3c又はアノード3a)を示し、点線の横線で示した部分は水中であることを示している。
【0048】
カソード3cとアノード3aとの間に電圧を印加して電流を流すと、カソード3cの表面では、O
2+2H
2O+4e
−→4OH
−の化学反応を生じる。したがって、カソード3cの表面近傍の酸素が消費され、
図7(b)に示したように、酸素濃度の低い低酸素層31が形成される。さらに時間が経過すると、
図7(c)に示したように、酸素濃度が0に等しい無酸素層32が形成される。このように、カソード3cの表面に酸素濃度の低い層を形成することにより、生物が生息することができず、カソード3cの表面に付着する生物を低減することができる。
【0049】
なお、上述したカソード3cにおける化学反応は、例えば、特開2012−36614号公報(特許文献2)等に詳細に記載されており、ここでは詳細な説明を省略する。
【0050】
その後、電源装置4により極性反転し、カソード3cをアノード3aに切り替える。この極性反転により、電極表面に形成されていた無酸素層32は、徐々に酸素濃度を増やし、
図7(d)に示したように、低酸素層31を経由して、
図7(e)に示したように、最終的に無酸素層32及び低酸素層31は消失する。また、アノード3aの表面では、例えば、Fe→Fe
2++2e
−の化学反応が生じ、海水中にアノード3aを構成する金属の金属イオン33が溶出することとなる。したがって、アノード3aの表面では、通電中、常に面更新が行われていることとなり、生物の付着を抑制することができる。以後、極性反転する毎に、
図7に示した(b)→(c)→(d)→(e)の処理を繰り返す。
【0051】
上述した本発明の実施形態に係る生物付着防止装置2及び導水路1によれば、導水路1の周方向に水中で通電可能なカソード3c及びアノード3aを交互に配置したことにより、導水路1の流水中に抵抗体を形成することなく導水路1の周方向に通電させることができ、導水路の軸方向の長さに関係なく導水路1の内表面に電流を流すことができる。
【0052】
また、水中でカソード3c及びアノード3a間に電流を流すことにより、カソード3c側の表面に低酸素層31や無酸素層32を形成することができ、導水路1内表面への生物付着を抑制することができる。また、電極3を極性反転させることにより、導水路1の内表面の全てについて、生物付着を抑制することができる。また、本発明は、水中に薬液を注入する必要がなく、環境保全の観点においても優れている。
【0053】
上述した実施形態では電極3に炭素鋼板を用いた場合について説明したが、例えば、電極3に酸化イリジウムがコーティングされた金属板を用いた場合にも、以下の化学反応により同様の効果を得ることができる。カソード3cでは、4Na
++O
2+2H
2O+4e
−→4NaOHの化学反応により、電極表面に低酸素層31及び無酸素層32が形成される。また、アノード3aでは、4Cl
−+O
2+4HCl+4e
−の化学反応により、酸素(O
2)と塩酸(HCl)が形成され、これらの殺菌効果により電極表面を防汚することが可能である。なお、塩酸の生成量は極微量であり、環境に与える影響はないと考えられるレベルである。
【0054】
本発明は上述した実施形態に限定されず、例えば、淡水中に配置される導水路1にも適用することができる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【解決手段】導水路1の内表面への生物付着を抑制する生物付着防止装置2を備え、生物付着防止装置2は、水中に電流を流す電極3を構成するカソード3c及びアノード3aと、電極3の印加電圧及び極性反転を制御する電源装置4と、を備え、導水路1の内表面の周方向にカソード3c及びアノード3aが交互に配置されている。また、導水路1は、周方向及び軸方向に複数に分割されたセグメント5により構成されており、セグメント5は、導水路1の内表面を形成する内側に配置された電極板55と、電極板55の外周に形成された絶縁部56と、を備えている。