【実施例】
【0039】
[実施例1]
ヤケヒョウヒダニ属(Dermatophagoides pteronyssinus)のダニ抽出物の、KCNOによる、およびこれに続くKCNO/PGO結合による化学修飾法
ヤケヒョウヒダニ属(Dermatophagoides pteronyssinus)のダニ抽出物(Greer Labs, Lenoir, NC, USA)は、エチルエーテルによる脱脂の後、0.05%のアジドを含む100mLのPBS(0.015M リン酸バッファー、0.135M NaCl、pH 7.2)(PBS-A)を5gの乾燥ダニの体に加え、その後、ダニの外骨格を壊してダニの中に含まれているアレルゲンタンパク質の抽出を容易にするために、混合物を1分間超音波処理(Branson Ultrasonics, Sonifier 450, Darbury CT, USA)することにより調製した。最後に、調製物を4℃で一晩攪拌した。14000rpmで30分間の遠心分離および不溶性ペレットの除去の後、上清を蒸留水に対して透析し、凍結乾燥させた。
【0040】
凍結乾燥抽出物をその後、20mMのリン酸ナトリウムバッファー(pH 6.86)中に加え、Lowryに従って、タンパク質濃度を2.5 mg/mLにした。続いて、この抽出物をSephadex(TM) G-25 (GE Healthcare Uppsala, Sweden)にて、同じバッファーで溶出してゲル濾過し、排除ピークを採取した。この操作は、引き続く化学修飾法において妨げとなり得る低分子量化合物を除去するために行われる。50mLのこの溶液に、1.92gの四ホウ酸ナトリウム十水和物と2.05gのシアン酸カリウムを加える。この塩をゆっくり攪拌することにより溶液にし、1 M NaOHを用いてpHを任意に9.3に調整した。得られた溶液を密閉フラスコ中、サーモスタットで40℃に調温した浴中で16時間ゆっくり攪拌し続けた。最初の数時間の間、pHをモニターし、1Mリン酸を添加することにより任意に調整した。このようにして得られた調製物を、G-25カラムにて再びゲル濾過して過剰量の試薬を除去し、Millipore 0.22ミクロン膜にて滅菌した。引き続く分析には、その最小量を用いた。抽出物のアミン基の置換割合は、TNBS法によって評価され、その結果76%であった。KCNO修飾抽出物の残りは、下記の実験条件の下でPGOとの第二の化学修飾法に用いた。
【0041】
タンパク質濃度2.0mg/mLのKCNO修飾DP抽出物、すなわち修飾前のDP抽出物(Lowry)を、0.1Mの炭酸水素ナトリウムの添加によってpH8にする。続いて、KCNO修飾サンプルに、タンパク質に関して過剰量の800MのPGOを添加した。サンプルが抽出物であって単一のタンパク質ではないので、モル過剰量を算出するために、DP抽出物アレルゲンの既知の配列をすべて、UniProtKBデータベースからアンロード(unloaded)した。既知のアレルゲンの各々の分子量、特許請求の範囲に記載のアミノ酸配列に基づくアルギニン残基の数、およびDP抽出物のSDS-PAGE後の可視バンドの強度に基づく様々なアレルゲンの相対量を考慮することにより、DP抽出物について、平均分子量は40kDaであり、アルギニン残基の平均個数は15であると考えられることが任意に確立された。PGOの溶解を促進するために、PGOを濃度0.3Mでエチルアルコール中に予め溶解させた。混合物を25℃で4時間穏やかに攪拌した。その後反応物は、20mM PBSに対して透析またはゲル濾過する。検討されているサンプルのアルギニン残基の置換度は、37%という結果である。続いて、可能である場合には、KCNO/PGO修飾DPサンプルは、EAST阻害法によるアレルゲン可能性、ELISAによる免疫原性、およびSDS-PAGEによる分子サイズに関して、KCNO修飾DPサンプルおよび天然DPサンプルと比較される。
【0042】
EAST阻害法によるアレルゲン性の評価
この目的のために、予めグルタルアルデヒドで処理したポリスチレンビーズを、ビーズ当たりのタンパク質が1μgの比率で、DP抽出物を用いて活性化した。
【0043】
同時に、ダニアレルギーの臨床記録を有する、DP抽出物に対してアレルギーを示す患者から選択して、ヒト貯蔵血清を調製する。
【0044】
ELISAプレートのウェルに、予め同じ濃度にしておいた検討するサンプル(天然DP抽出物、KCNO修飾DP抽出物、KCNO/PGO修飾DP抽出物)のPBS-2% BSA(希釈剤)中の連続希釈液30μLと、20μLの貯蔵血清とを加え、混合物を室温で2時間攪拌する。同時に、阻害剤が希釈剤から構成される、陽性対照サンプルを調製する。2時間終了時に、DP活性化ビーズと50μLのPBS-2% BSAとを各ウェルに加え、プレートを室温で一晩攪拌し続ける。その後、ビーズを洗浄し、100μLのペルオキシダーゼ結合抗ヒトIgE抗体溶液を各ウェルに加え、攪拌しながら2時間インキュベーションする。3回洗浄した後、100μLのTMB試薬(BioFX Laboratories, Owings Mills, MD)を加えて、25℃で15分間インキュベーションすることにより、比色反応を呈する。この反応は、50μLの1M HClを添加することにより消失し、その後、100μLの各ウェルからの混合物を新しいプレートに移し、呈色強度を450nmでの分光光度計の記録により評価する。
【0045】
検出された光学密度を陽性対照と比較した阻害割合に変換し、Y軸に阻害割合を示し、X軸に試験に使用したサンプルの容量の対数を示すグラフを作成する。示されたデータ点から線形回帰直線を作図し、線形回帰直線からIC50値を計算する。IC50値は、ビーズに対するIgE結合の50%阻害に必要なサンプルの容量(マイクロリットル)を示す。この値は、検討しているサンプルのアレルゲン可能性に逆比例する。
【0046】
図1に示された結果は、KCNOを用いた修飾によりアレルゲン活性が18倍減少し、一方、KCNO/PGOを組み合わせた修飾により相乗効果を奏して、DP抽出物のアレルゲン活性が227倍減少することを示す。KCNO/PGO修飾後のDP抽出物のアレルゲン活性がこのようにさらに減少するのは、Der p1アレルゲンの二重修飾の効果に因るものである可能性があるように思われる(実施例2を参照)。
【0047】
予め免疫されたマウスの血清についての、ELISAによるKCNO/PGO修飾DP抽出物の免疫原性の評価
a)マウスの免疫化プロトコール
4匹のBalb/c株雌マウス(Charles River)からなる群を、100μLのフロイント完全アジュバントと100μLの生理学的溶液中20μgのKCNO/PGO修飾DP抽出物とからなるエマルションを200μL用いて、皮下免疫した。他の3回の追加免疫は、完全アジュバントを不完全アジュバントに置き換えることにより、2週間の間隔で実施された。最後の免疫化の7日後、マウスの尾からの採血を実施し、このサンプルは、免疫原に対する抗体反応、ならびに天然タンパク質を認識する能力に関し、ELISAによって検査される。
【0048】
b)試験方法
天然の非修飾DP抽出物に対してもまた指向されるIgG反応をマウスにおいて誘導する能力を意味する免疫原性を、下記のプロトコールに従って投与された場合にKCNO/PGO修飾DP抽出物が維持するかどうか証明するために、試験は実施される。この目的のために、50mM炭酸塩/炭酸水素塩バッファー(pH 9.6)中の等量(0.25μg)のDP抽出物(天然またはKCNO/PGO修飾)を、4℃で16時間インキュベーションすることにより、ELISAアッセイ用ポリスチレンプレートのウェルに吸着させた。その後、洗浄溶液(0.05% Tween 20を含む60mMリン酸バッファー;pH 6.5)を用いてウェルを洗浄し、希釈溶液(150mMリン酸バッファー(pH 7.4)中、25%ウマ血清、1mM EDTA、0.05% Tween 20、0.01%チオメルサール)を用いて、未反応の吸着サイトを飽和した。等量(100μL)のマウス貯蔵血清10倍連続希釈液(希釈バッファー中)を各ウェルに加え、25℃で2時間インキュベーションする。3回洗浄した後、ウサギペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG血清を、希釈バッファー中1:2000の希釈度で加え、混合物を25℃で1.5時間インキュベーションする。3回洗浄した後、100μLのTMB試薬(BioFX Laboratories, Owings Mills, MD)を加え、25℃で15分間インキュベーションすることにより、比色反応を呈する。この反応は、100μLの1N HClを添加することにより消失し、450nmでの分光光度計の記録により評価する。免疫するのに用いられた抽出物のタンパク質と非修飾(天然)対照物のタンパク質との両方に対する、KCNO/PGO修飾DP抽出物を用いて免疫したマウスの貯蔵血清の特異的IgG反応性に関する結果は、
図2に示す。観察することができるように、KCNO/PGO修飾DP抽出物を用いた処理により誘導されるIgG抗体は、天然DPタンパク質もまた(修飾タンパク質に対する濃度よりも低い濃度でではあるが)認識することができ、このことは、天然DP抽出物中に存在するエピトープに類似するエピトープTが、KCNO/PGO修飾DP抽出物中において保存されることを示す。したがって、KCNO/PGO修飾抽出物は、免疫系を適切に刺激する能力を維持し、天然DP抽出物のタンパク質に対してもまた指向する特異的IgG抗体を産生する。
【0049】
この観察は、KCNO/PGO修飾DP抽出物が、アレルゲン活性がさらに減少することから考えて、天然DPタンパク質に対してもまたIgG反応を潜在的に誘導することができる状態を維持することを意味するので、ヒトに関連する場合には重要であり、そして、したがって、特異的IgG抗体の産生はITS(Int Arch Allergy Immunol. 2003; 132: 13-24. Renaissance of the blocking antibody concept in type I allergy., Flicker S, Valenta R)の治療有効性の発現において重要な要素であるので、臨床上の有益性を潜在的に引き出すことができる。
【0050】
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)
電気泳動は、パッケージ製品である、4〜12%勾配のアクリルアミドゲルを用いて実施され、製造者の指示書に従って用いられた(NuPAGE(登録商標) Novex(登録商標) mini gels, Invitrogen, Milan)。この中性pHバッチ電気泳動システムによって、本発明者らが対象とする分子量範囲におけるバンドをよりよく分析することができる。
【0051】
DP抽出物サンプル(天然、またはKCNO修飾もしくはKCNO/PGO修飾)は、還元条件下(5% 2-メルカプトエタノールの存在下)で、同量(20μg)のサンプルをゲルにのせることにより、上記の手法によって評価された。分離は、装置をMicrocomputer Electrophoresis Power Supply 400/1000に接続し、180mAの一定の電流を約1時間流すことにより実施される。最後に、ゲルをコロイドクーマシーで染色する(Colloidal Blue staining kit, Novex(登録商標), Invitrogen)。
図3に見ることができる結果は、天然DPサンプルとKCNOまたはKCNO/PGOで修飾されたサンプルとの両方において、多数のバンドが存在することを示す。KCNO/PGOによる反応によりもたらされる分子サイズの増加可能性をこのような複雑なサンプルにおいて評価することが事実上困難であるとしても、SDS-PAGEプロファイルは、実質的に同様に思われる。しかしながら、単一タンパク質について実施される逐次実施例においては、KCNO/PGOを用いた修飾が、検討しているタンパク質の分子サイズの有意な増加を伴わないことは明らかである。
【0052】
[実施例2]
KCNOを用いて精製された、およびこれに続くKCNO/PGO結合による、主要アレルゲンDer p1の化学修飾法
a)DP抽出物からのDer p1アレルゲンの精製ステップ
Der p1アレルゲンは、たとえばCNBr-Sepharose (GE Helthcare, Milan)などの適切なマトリックスに共有結合した特異的モノクローナル抗体(イソタイプIgGl, Lofarma laboratoriesで製造)を用いて、製造者によって指示される方法に従って、アフィニティクロマトグラフィーによりDP抽出物から精製された。カラム中に保持されたDer p1アレルゲンは、5 mMグリシン、50%エチレングリコールから構成されるバッファー(pH 10.0)を用いてカラムから溶出される。精製されたアレルゲンは、そのモル吸光係数(E
280)(47330に等しい)、したがって濃度1mg/mLでの吸光度(1.89に等しい)を考慮することにより、280nmでの分光光度計の記録によって定量した。最後に、1%のサッカロース存在下、Der p1を凍結乾燥させた。
【0053】
その後、凍結乾燥Der p1サンプルを、20mMリン酸ナトリウムバッファー(pH 6.86)中に入れ、タンパク質濃度が0.2mg/mLになるようにする。KCNOを用いた修飾のために、50.25mgの無水四ホウ酸ナトリウムと101.4mgのシアン酸カリウムを、2.5mLのDer p1溶液に加える。この塩をゆっくり攪拌することにより溶液にし、1 M NaOHを用いてpHを任意に9.3に調整した。得られた溶液を密閉フラスコ中、サーモスタットで40℃に調温した浴中で16時間ゆっくり攪拌し続けた。最初の数時間の間、pHをモニターし、1Mリン酸を添加することにより任意に調整した。このようにして得られた調製物を、G-25カラムにて再びゲル濾過して過剰量の試薬を除去し、Millipore 0.22ミクロン膜にて滅菌した。引き続く分析には、その最小量を用いた。抽出物のアミン基の置換割合は、TNBS法によって評価され、その結果50%であった。KCNO修飾サンプルの残りは、下記の実験条件の下でフェニルグリオキサールとの第二の化学修飾法に用いた。
【0054】
タンパク質濃度0.14mg/mL(Abs 280nm)のKCNO修飾Der p1サンプルは、0.1 M炭酸水素ナトリウムの添加によりpH 8にする。次に、タンパク質に対して過剰量の800MのPGOをそれに加える。モル過剰量を算出するために、本発明者らは、UniProtKBデータベースに従い、Der p1アレルゲンについて分子サイズを25KDであると考え、このことから、アルギニン残基の数は15であるという結果を得た。PGOの溶解を促進するために、PGOを濃度0.15Mでエチルアルコール中に予め溶解させた。混合物を25℃で4時間軽く攪拌した。その後反応物は、20mM PBSに対して透析またはゲル濾過する。アルギニン残基の置換度は、41%という結果である。続いて、可能である場合には、KCNO/PGO修飾Der p1サンプルは、EAST阻害法によるアレルゲン可能性、ELISAによる免疫原性、およびSDS-PAGEによる分子サイズに関して、KCNO修飾サンプルまたは天然サンプルと比較される。
【0055】
EAST阻害法によるアレルゲン性の評価
この目的のために、予めグルタルアルデヒドで処理したポリスチレンビーズを、ビーズ当たりのタンパク質が1μgの比率で、Der p1を用いて活性化した。
【0056】
同時に、ダニアレルギーの臨床記録を有する、DP抽出物に対してアレルギーを示す患者から選択して、ヒト貯蔵血清を調製する。
【0057】
ELISAプレートのウェルに、予め同じ濃度にしておいた検討するサンプル(天然Der p1、KCNO修飾Der p1、KCNO/PGO修飾Der p1)のPBS-2% BSA(希釈剤)中の連続希釈液30μLと、20μLの貯蔵血清とを加え、混合物を室温で2時間攪拌する。同時に、阻害剤が希釈剤から構成される、陽性対照サンプルを調製する。2時間終了時に、Der p1活性化ビーズと50μLのPBS-2% BSAとを各ウェルに加え、プレートを室温で一晩攪拌し続ける。その後、ビーズを洗浄し、100μLのペルオキシダーゼ結合抗ヒトIgE抗体溶液を各ウェルに加え、攪拌しながら2時間インキュベーションする。3回洗浄した後、100μLのTMB試薬(BioFX Laboratories, Owings Mills, MD)を加えて、25℃で15分間インキュベーションすることにより、比色反応を呈する。この反応は、50μLの1N HClを添加することにより消失し、その後、100μLの各ウェルからの混合物を新しいプレートに移し、呈色強度を450nmでの分光光度計の記録により評価する。
【0058】
検出された光学密度を陽性対照と比較した阻害割合に変換し、Y軸に阻害割合を示し、X軸に試験に使用したサンプルの容量の対数を示すグラフを作成する。示されたデータ点から線形回帰直線を作図し、線形回帰直線からIC50値を計算する。IC50値は、ビーズに対するIgE結合の50%阻害に必要なサンプルの容量(マイクロリットル)を示す。この値は、検討しているサンプルのアレルゲン可能性に逆比例する。
【0059】
図4に示された結果は、KCNOを用いた修飾により、Der p1のアレルゲン活性が16倍減少し、一方、KCNO/PGOを用いた修飾により相乗効果を奏して、Der p1のアレルゲン活性が303倍減少することを示す。
【0060】
予め免疫されたマウスの血清についての、ELISAによるKCNO/PGO修飾Der p1の免疫原性の評価
a)マウスの免疫化プロトコール
4匹のBalb/c株雌マウス(Charles River)からなる群を、100μLのフロイント完全アジュバントと100μLの生理学的溶液中20μgのKCNO/PGO修飾Der p1とからなるエマルションを200μL用いて、皮下免疫した。他の3回の追加免疫は、完全アジュバントを不完全アジュバントに置き換えることにより、2週間の間隔で実施される。最後の免疫化の7日後、採血を実施し、免疫原に対するIgG抗体反応、ならびに天然タンパク質を認識する能力を、ELISAによって検査する。
【0061】
b)試験方法
天然の非修飾Der p1に対してもまた指向されるIgG反応をマウスにおいて誘導する能力を意味する免疫原性を、下記のプロトコールに従って投与された場合にKCNO/PGO修飾Der p1が維持するかどうか証明するために、試験は実施される。この目的のために、50mM炭酸塩/炭酸水素塩バッファー(pH 9.6)中の等量(0.1μg)のDer p1(天然またはKCNO/PGO修飾)を、4℃で16時間インキュベーションすることにより、ELISAアッセイ用ポリスチレンプレートのウェルに吸着させた。その後、洗浄溶液(0.05% Tween 20を含む60mMリン酸バッファー;pH 6.5)を用いてウェルを洗浄し、希釈溶液(150mMリン酸バッファー(pH 7.4)中、25%ウマ血清、1mM EDTA、0.05% Tween 20、0.01%チオメルサール)を用いて、未反応の吸着サイトを飽和した。等量(100μL)のマウス貯蔵血清10倍連続希釈液(希釈バッファー中)を各ウェルに加え、25℃で2時間インキュベーションする。3回洗浄した後、ウサギペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG血清を、希釈バッファー中1:2000の希釈度で加え、混合物を25℃で1.5時間インキュベーションする。3回洗浄した後、100μLのTMB試薬(BioFX Laboratories, Owings Mills, MD)を加え、25℃で15分間インキュベーションすることにより、比色反応を呈する。この反応は、100μLの1N HClを添加することにより消失し、450nmでの分光光度計の記録により評価する。免疫するのに用いられたアレルゲンと非修飾(天然)対照物との両方に対する、KCNO/PGO修飾Der p1を用いて免疫したマウスの貯蔵血清の特異的IgG反応性に関する結果は、
図5に示す。観察することができるように、KCNO/PGO修飾Der p1を用いた処理により誘導されるIgG抗体は、天然Der p1タンパク質もまた(修飾タンパク質に対する濃度よりも低い濃度でではあるが)認識することができ、このことは、天然対照物中に存在するエピトープに類似するT細胞エピトープが、KCNO/PGO修飾Der p1中において保存されることを示す。したがって、KCNO/PGO修飾Der p1は、免疫系を適切に刺激する能力を維持し、天然Der p1に対してもまた指向する特異的IgG抗体を産生する。
【0062】
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)
電気泳動は、パッケージ製品である、4〜12%勾配のアクリルアミドゲルを用いて実施され、製造者の指示書に従って用いられた(NuPAGE(登録商標) Novex(登録商標) mini gels, Invitrogen, Milan)。この中性pHバッチ電気泳動システムによって、本発明者らが対象とする分子量範囲におけるバンドをよりよく分析することができる。
【0063】
Der p1サンプル(天然、またはKCNO修飾もしくはKCNO/PGO修飾)は、還元条件下(5% 2-メルカプトエタノールの存在下)で、同量(5μg)のサンプルをゲルにのせることにより、上記の手法によって評価された。分離は、装置をMicrocomputer Electrophoresis Power Supply 400/1000に接続し、180mAの一定の電流を約1時間流すことにより実施される。最後に、ゲルをコロイドクーマシーで染色する(Colloidal Blue staining kit, Novex(登録商標), Invitrogen)。
図6に表される結果は、検討しているサンプルのプロファイルに差はないことを示しており、したがって、このことは、Der p1アレルゲンの分子サイズがKCNO/PGOを用いた反応によっては変更されず、修飾された場合にもまた、そのモノマー型を維持することを示している。
【0064】
[実施例3]
KCNOを用いた、およびこれに続くKCNO/PGO結合による、主要アレルゲン 卵アルブミン(OVA)の化学修飾法
適切な量の、卵白から精製された市販OVAアレルゲン(Sigma Aldrich, Milan)を秤量し、20mMリン酸ナトリウムバッファー(pH 6.86)中に入れ、Lowryに従って、タンパク質濃度が2mg/mLになるようにする。KCNOを用いた修飾のために、50.25mgの四ホウ酸ナトリウム十水和物と101mgのシアン酸カリウムを、2.5mLのOVA溶液に加える。この塩をゆっくり攪拌することにより溶液にし、1M NaOHを用いてpHを任意に9.3に調整した。得られた溶液を密閉フラスコ中、サーモスタットで40℃に調温した浴中で16時間ゆっくり攪拌し続けた。最初の数時間の間、pHをモニターし、1Mリン酸を添加することにより任意に調整した。このようにして得られた調製物を、G-25カラムにて再びゲル濾過して過剰量の試薬を除去し、Millipore 0.22ミクロン膜にて滅菌した。引き続く分析には、その最小量を用いた。アレルゲンのアミン基の置換割合は、TNBS法によって評価され、その結果82%であった。KCNO修飾サンプルの残りは、下記の実験条件の下でフェニルグリオキサールとの第二の化学修飾法に用いた。
【0065】
タンパク質濃度1.4mg/mL(Lowry)のKCNO修飾OVAサンプルは、0.1 M炭酸水素ナトリウムの添加によりpH 8にする。次に、タンパク質に対して過剰量の800MのPGOをこれに加える。モル過剰量を算出するために、本発明者らは、UniProtKBデータベースに従い、OVAアレルゲンについて分子サイズを43KDであると考え、このことから、アルギニン残基の数は15であるという結果を得た。PGOの溶解を促進するために、PGOを濃度0.3Mでエチルアルコール中に予め溶解させた。混合物を25℃で4時間軽く攪拌した。その後反応物は、20mM PBSに対して透析またはゲル濾過する。サンプルのアルギニン残基の置換度は、35%という結果である。続いて、可能である場合には、KCNO/PGO修飾OVAサンプルは、EAST阻害法によるアレルゲン可能性、ELISAによる免疫原性、およびSDS-PAGEによる分子サイズに関して、KCNO修飾サンプルまたは天然サンプルと比較される。
【0066】
EAST阻害法によるアレルゲン性の評価
この目的のために、予めグルタルアルデヒドで処理したポリスチレンビーズを、ビーズ当たりのタンパク質が1μgの比率で、OVAを用いて活性化した。
【0067】
同時に、特定の血清学的検査で確認された、卵アレルギーの臨床記録を有する患者から選択して、ヒト貯蔵血清を調製する。
【0068】
ELISAプレートのウェルに、予め同じ濃度にしておいた検討するサンプル(天然OVA、KCNO修飾OVA、KCNO/PGO修飾OVA)のPBS-2% BSA(希釈剤)中の連続希釈液30μLと、20μLの貯蔵血清とを加え、混合物を室温で2時間攪拌する。同時に、阻害剤が希釈剤から構成される、陽性対照サンプルを調製する。2時間終了時に、OVA活性化ビーズと50μLのPBS-2% BSAとを各ウェルに加え、プレートを室温で一晩攪拌し続ける。その後、ビーズを洗浄し、100μLのペルオキシダーゼ結合抗ヒトIgE抗体溶液を各ウェルに加え、攪拌しながら2時間インキュベーションする。3回洗浄した後、100μLのTMB試薬(BioFX Laboratories, Owings Mills, MD)を加えて、25℃で15分間インキュベーションすることにより、比色反応を呈する。この反応は、50μLの1N HClを添加することにより消失し、その後、100μLの各ウェルからの混合物を新しいプレートに移し、呈色強度を450nmでの分光光度計の記録により評価する。
【0069】
検出された光学密度を陽性対照と比較した阻害割合に変換し、Y軸に阻害割合を示し、X軸に試験に使用したサンプルの容量の対数を示すグラフを作成する。示されたデータ点から線形回帰直線を作図し、線形回帰直線からIC50値を計算する。IC50値は、ビーズに対するIgE結合の50%阻害に必要なサンプルの容量(マイクロリットル)を示す。この値は、検討しているサンプルのアレルゲン可能性に逆比例する。
【0070】
図7に示された結果は、KCNOを用いた修飾により、OVAのアレルゲン活性が178倍減少し、一方、KCNO/PGOを用いた修飾により、OVAのアレルゲン性の更なる減少がもたらされ、より正確にはOVAのアレルゲン活性が1687倍減少することを示しており、これは、このケースにおいてもまた、一連のKCNO/PGO結合が相乗効果を奏することを示す。
【0071】
予め免疫されたマウスの血清についての、ELISAによるKCNO/PGO修飾OVAの免疫原性の評価
a)マウスの免疫化プロトコール
4匹のBalb/c株雌マウス(Charles River)からなる群を、100μLのフロイント完全アジュバントと100μLの生理学的溶液中20μgのKCNO/PGO修飾OVAとからなるエマルションを200μL用いて、皮下免疫した。他の3回の追加免疫は、完全アジュバントを不完全アジュバントに置き換えることにより、2週間の間隔で実施される。最後の免疫化の7日後、マウスの尾から採血を実施し、免疫原に対する抗体反応、ならびに天然タンパク質を認識する能力を、ELISAによって検査する。
【0072】
b)試験方法
天然の非修飾OVAに対してもまた指向されるIgG反応をマウスにおいて誘導する能力を意味する免疫原性を、下記のプロトコールに従って投与された場合にKCNO/PGO修飾OVAアレルゲンが維持するかどうか証明するために、試験は実施される。この目的のために、50mM炭酸塩/炭酸水素塩バッファー(pH 9.6)中の等量(0.1μg)のOVA(天然またはKCNO/PGO修飾)を、4℃で16時間インキュベーションすることにより、ELISAアッセイ用ポリスチレンプレートのウェルに吸着させた。その後、洗浄溶液(0.05% Tween 20を含む60mMリン酸バッファー;pH 6.5)を用いてウェルを洗浄し、希釈溶液(150mMリン酸バッファー(pH 7.4)中、25%ウマ血清、1mM EDTA、0.05% Tween 20、0.01%チオメルサール)を用いて、未反応の吸着サイトを飽和した。等量(100μL)のマウス貯蔵血清10倍連続希釈液(希釈バッファー中)を各ウェルに加え、25℃で2時間インキュベーションする。3回洗浄した後、ウサギペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG血清を、希釈バッファー中1:2000の希釈度で加え、混合物を25℃で1.5時間インキュベーションする。3回洗浄した後、100μLのTMB試薬(BioFX Laboratories, Owings Mills, MD)を加え、25℃で15分間インキュベーションすることにより、比色反応を呈する。この反応は、100μLの1N HClを添加することにより消失し、450nmでの分光光度計の記録により評価する。免疫するのに用いられたアレルゲンと非修飾(天然)対照物との両方に対する、KCNO/PGO修飾OVAを用いて免疫したマウスの貯蔵血清の特異的IgG反応性に関する結果は、
図8に示す。示されているように、KCNO/PGO修飾OVAを用いた処理により誘導されるIgG抗体は、天然OVAタンパク質もまた(修飾タンパク質に対する濃度よりも低い濃度でではあるが)認識することができ、このことは、天然対照物中に存在するエピトープに類似するT細胞エピトープが、KCNO/PGO修飾OVA中において保存されることを示す。したがって、KCNO/PGO修飾OVAは、免疫系を適切に刺激する能力を維持し、天然OVAに対してもまた指向する特異的IgG抗体を産生する。
【0073】
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)
電気泳動は、パッケージ製品である、4〜12%勾配のアクリルアミドゲルを用いて実施され、製造者の指示書に従って用いられた(NuPAGE(登録商標) Novex(登録商標) mini gels, Invitrogen, Milan)。この中性pHバッチ電気泳動システムによって、本発明者らが対象とする分子量範囲におけるバンドをよりよく分析することができる。
【0074】
OVAサンプル(天然、またはKCNO修飾もしくはKCNO/PGO修飾)は、還元条件下(5% 2-メルカプトエタノールの存在下)で、同量(5μg)のサンプルをゲルにのせることにより、上記の手法によって評価された。分離は、装置をMicrocomputer Electrophoresis Power Supply 400/1000に接続し、180mAの一定の電流を約1時間流すことにより実施される。最後に、ゲルをコロイドクーマシーで染色する(Colloidal Blue staining kit, Novex(登録商標), Invitrogen)。
図9に表される結果は、OVAアレルゲンの分子サイズがKCNO/PGOを用いた反応によっては有意には変更されず、修飾された場合にもまた、そのモノマー型を維持することを示している。
【0075】
[実施例4]
KCNO結合またはKCNO/PGO結合を用いた、組換え型で得られる主要モモアレルゲンPru p3の化学修飾法
大腸菌(E.coli)におけるrPru p3アレルゲンの産生ステップ
Pru p3 cDNAは、クレムソン大学ゲノム研究所(Genomics Institute of Clemson University(USA))により提供された、PP LEa0029C22Fクローン(GenBank, Acc. No. BU047210)中に含まれるヌクレオチド配列AY792996を増幅することにより得られる。PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)増幅反応に用いられたオリゴヌクレオチドは、Pru p 3-6H ECO (5' ccg gaa ttc cat atg cat cac cat cac cat cac ata aca tgt ggc caa gtg)とPru p 3 Bam (5' cgc gga tcc tca ctt cac ggt ggc gc)であり、成熟タンパク質に対応する転写物の5’および3’末端配列に相当する。下線を引いた配列は、増幅および発現ベクターにおけるクローニングに必要な、制限酵素Eco R I、Nde I、およびBam H Iの切断部位であり、6個のヒスチジン残基をコードする配列をイタリックで強調表示する。得られたcDNAは、精製した後、発現ベクターに挿入され、増幅され、自動配列決定(M-Medical/MWG-Biotech)により配列の正確性を確かめられた。
【0076】
Pru p3は、抗生物質(100μg/mL Amp、15μg/mL Kan、および12.5μg/mL Tet)の存在下37℃で増殖するEscherichia coli BL21 Origami (DE3)細胞(Stratagene)において、OD600=0.6に相当する密度にまで発現し、この発現は、培養培地に1mM IPTGを添加することにより誘導される。25℃で16時間の増殖の後、細胞を遠心分離によって回収し、50mM NaH
2PO
4(pH 8)中に再懸濁し、音波処理により細胞溶解させる。遠心分離により不溶性残留物から分離された可溶性の組換えタンパク質は、ヒスチジン配列と結合するNi-NTAアガロースカラム(Qiagen, Italy)を用いて、製造者の指示書に従い、アフィニティークロマトグラフィーにて精製する。
【0077】
このようにして精製したタンパク質(SDS-PAGEプロファイルにより示される純度は98%以上)は、モル吸光係数(E
280)(3480に等しい)、したがって濃度1mg/mLでの吸光度(0.345に等しい)を考慮することにより、280nmでの分光光度計の記録によって定量した。最後に、Pru p3溶液をH
2Oに対して透析し、その後、1%サッカロースの存在下で凍結乾燥させた。
【0078】
その後、凍結乾燥rPru p3サンプルを、20mMリン酸ナトリウムバッファー(pH 6.86)中に入れ、タンパク質濃度が0.7mg/mLになるようにする。KCNOを用いた修飾のために、50.25mgの四ホウ酸ナトリウム十水和物と101.4mgのシアン酸カリウムを、2.5mLのrPru p3溶液に加える。この塩をゆっくり攪拌することにより溶液にし、1 M NaOHを用いてpHを任意に9.3に調整した。得られた溶液を密閉フラスコ中、サーモスタットで40℃に調温した浴中で16時間ゆっくり攪拌し続けた。最初の数時間の間、pHをモニターし、1Mリン酸を添加することにより任意に調整した。このようにして得られた調製物を、G-25カラムにて再びゲル濾過して過剰量の試薬を除去し、Millipore 0.22ミクロン膜にて滅菌した。引き続く分析には、その最小量を用いた。Pru p3のアミン基の置換割合は、TNBS法によって評価され、その結果74%であった。KCNO修飾サンプルの残りは、下記の実験条件の下でフェニルグリオキサールとの第二の化学修飾法に用いた。
【0079】
タンパク質濃度0.5mg/mLのKCNO修飾Pru p3サンプルは、0.1 M炭酸水素ナトリウムの添加によりpH 8にする。次に、タンパク質に対して過剰量の800MのPGOをこれに加える。モル過剰量を算出するために、本発明者らは、UniProtKBデータベースに従い、Pru p3アレルゲンについて分子サイズを10KDであると考え、このことから、アルギニン残基の数は4であるという結果を得た。PGOの溶解を促進するために、PGOを濃度0.3Mでエチルアルコール中に予め溶解させた。混合物を25℃で4時間軽く攪拌した。その後反応物は、20mM PBSに対して透析またはゲル濾過する。アルギニン残基の置換度は、50%という結果である。続いて、KCNO/PGO修飾Pru p3サンプルは、EAST阻害法によるアレルゲン可能性、ELISAによる免疫原性、およびSDS-PAGEによる分子サイズに関して、KCNO修飾サンプルまたは天然サンプルと比較される。
【0080】
EAST阻害法によるアレルゲン性の評価
この目的のために、予めグルタルアルデヒドで処理したポリスチレンビーズを、ビーズ当たりのタンパク質が1μgの比率で、Pru p3を用いて活性化した。
【0081】
同時に、特定の血清学的検査で確認された、モモアレルギーの臨床記録を有する患者から選択して、ヒト貯蔵血清を調製する。
【0082】
ELISAプレートのウェルに、予め同じ濃度にしておいた検討するサンプル(天然Pru p3、KCNO修飾Pru p3、KCNO/PGO修飾Pru p3)のPBS-2% BSA(希釈剤)中の連続希釈液30μLと、20μLの貯蔵血清とを加え、混合物を室温で2時間攪拌する。同時に、阻害剤が希釈剤から構成される、陽性対照サンプルを調製する。2時間終了時に、Pru p3活性化ビーズと50μLのPBS-2% BSAとを各ウェルに加え、プレートを室温で一晩攪拌し続ける。その後、ビーズを洗浄し、100μLのペルオキシダーゼ結合抗ヒトIgE抗体溶液を各ウェルに加え、攪拌しながら2時間インキュベーションする。3回洗浄した後、100μLのTMB試薬(BioFX Laboratories, Owings Mills, MD)を加えて、25℃で15分間インキュベーションすることにより、比色反応を呈する。この反応は、50μLの1N HClを添加することにより消失し、その後、100μLの各ウェルからの混合物を新しいプレートに移し、呈色強度を450nmでの分光光度計の記録により評価する。
【0083】
検出された光学密度を陽性対照と比較した阻害割合に変換し、Y軸に阻害割合を示し、X軸に試験に使用したサンプルの容量の対数を示すグラフを作成する。示されたデータ点から線形回帰直線を作図し、線形回帰直線からIC50値を計算する。IC50値は、ビーズに対するIgE結合の50%阻害に必要なサンプルの容量(マイクロリットル)を示す。この値は、検討しているサンプルのアレルゲン可能性に逆比例する。
【0084】
図10に示された結果は、KCNOを用いた修飾により、rPru p3アレルゲンのアレルゲン活性が64倍減少し、一方、KCNO/PGOを用いた修飾により上記の活性がさらに減少して、天然対照物よりも1422倍減少する結果となることを示す。
【0085】
予め免疫されたマウスの血清についての、ELISAによるKCNO/PGO修飾Pru p3アレルゲンの免疫原性の評価
a)マウスの免疫化プロトコール
4匹のBalb/c株雌マウス(Charles River)からなる群を、100μLのフロイント完全アジュバントと100μLの生理学的溶液中20μgのKCNO/PGO修飾Pru p3とからなるエマルションを200μL用いて、皮下免疫した。他の3回の追加免疫は、完全アジュバントを不完全アジュバントに置き換えることにより、2週間の間隔で実施される。最後の免疫化の7日後、採血を実施し、免疫原に対する抗体反応、ならびに天然タンパク質を認識する能力を、ELISAによって検査する。
【0086】
b)試験方法
天然の非修飾Pru p3に対してもまた指向されるIgG反応をマウスにおいて誘導する能力を意味する免疫原性を、下記のプロトコールに従って投与された場合にKCNO/PGO修飾Pru p3が維持するかどうか証明するために、試験は実施される。この目的のために、50mM炭酸塩/炭酸水素塩バッファー(pH 9.6)中の等量(0.1μg)のPru p3(天然またはKCNO/PGO修飾)を、4℃で16時間インキュベーションすることにより、ELISAアッセイ用ポリスチレンプレートのウェルに吸着させた。その後、洗浄溶液(0.05% Tween 20を含む60mMリン酸バッファー;pH 6.5)を用いてウェルを洗浄し、希釈溶液(150mMリン酸バッファー(pH 7.4)中、25%ウマ血清、1mM EDTA、0.05% Tween 20、0.01%チオメルサール)を用いて、未反応の吸着サイトを飽和した。等量(100μL)のマウス貯蔵血清10倍連続希釈液(希釈バッファー中)を各ウェルに加え、25℃で2時間インキュベーションする。3回洗浄した後、ウサギペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG血清を、希釈バッファー中1:2000の希釈度で加え、混合物を25℃で1.5時間インキュベーションする。3回洗浄した後、100μLのTMB試薬(BioFX Laboratories, Owings Mills, MD)を加え、25℃で15分間インキュベーションすることにより、比色反応を呈する。この反応は、100μLの1N HClを添加することにより消失し、450nmでの分光光度計の記録により評価する。免疫するのに用いられたPru p3と非修飾(天然)対照物との両方に対する、KCNO/PGO修飾Pru p3を用いて免疫したマウスの貯蔵血清の特異的IgG反応性に関する結果は、
図11に示す。観察することができるように、KCNO/PGO修飾Pru p3を用いた処理により誘導されるIgG抗体は、天然Pru p3タンパク質もまた認識することができ、このことは、天然対照物中に存在するエピトープに類似するT細胞エピトープが、KCNO/PGO修飾Pru p3中において保存されることを示す。したがって、KCNO/PGO修飾Pru p3は、免疫系を適切に刺激する能力を維持し、天然Pru p3に対してもまた指向する特異的IgG抗体を産生する。
【0087】
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)
電気泳動は、パッケージ製品である、4〜12%勾配のアクリルアミドゲルを用いて実施され、製造者の指示書に従って用いられた(NuPAGE(登録商標) Novex(登録商標) mini gels, Invitrogen, Milan)。この中性pHバッチ電気泳動システムによって、本発明者らが対象とする分子量範囲におけるバンドをよりよく分析することができる。
【0088】
Pru p3サンプル(天然、またはKCNO修飾もしくはKCNO/PGO修飾)は、還元条件下(5% 2-メルカプトエタノールの存在下)で、同量(5μg)のサンプルをゲルにのせることにより、上記の手法によって評価された。分離は、装置をMicrocomputer Electrophoresis Power Supply 400/1000に接続し、180mAの一定の電流を約1時間流すことにより実施される。最後に、ゲルをコロイドクーマシーで染色する(Colloidal Blue staining kit, Novex(登録商標), Invitrogen)。
図12に表される結果は、rPru p3アレルゲンの分子サイズがKCNO/PGOを用いた修飾によっては変更されず、修飾された場合に、そのモノマー型を維持することを示している。
【0089】
アレルゲン抽出物、または上記のように修飾された単一精製タンパク質は、アレルギー患者の治療に用いることができ、適切な器具を用いて、非経口経路、または経鼻、または舌下、または口腔粘膜、または経口、または気管支を介して投与することができる。上述した生成物はまた、凍結乾燥形態で調製し、その後再構成して水溶性形態について指示されたように投与することができ、あるいは、送達システム(例えばリポソーム)に挿入することができ、あるいは、専用器具により経鼻または気管支の経路により投与できるように、不活性賦形剤(例えばラクトース)中に組み込まれている散剤として製剤化するか、または舌下/口腔粘膜投与のための速やかな溶解性を任意に備えた錠剤に製剤化するか、または経口投与に適する方法で任意に胃耐性にされたカプセルに製剤化するか、または口腔粘膜との接触時間を増加させて局所の樹状細胞との相互作用を促進するバイオフィルムもしくは粘膜付着性散剤として製剤化することもできる。
【0090】
上述した生成物はまた、油性懸濁液、シロップ、エリキシルの形態で、舌下、口腔粘膜、または経口投与にとって好ましくするための賦形剤または物質を任意に添加して調製することができる。
【0091】
上述した生成物はまた、ThI型またはTreg型のアジュバント活性を発現することが知られている物質(例えば、CpG、バクテリア誘導体、マイコバクテリア、マイコプラズマ、ナイセリア属(Neisseria)、ウイルスもしくは原生動物、非メチル化CpG、リポタンパク質、またはトリアシル化リポペプチド、リポ多糖(LPS)、およびA型脂質の誘導体)、合成物質(例えば、イミキモド(imiquimod)、レシキモド(resiquimod)、ポリI‐C(poly (I:C)))に結合またはコンジュゲートすることができる。
【0092】
本発明の組成物は一般的に、当技術分野の当業者の知識、および、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences Handbook, Mack Pub. Co., N. Y., USA, 第17版, 1985に報告されている事項に従い、選択される投与形態に適合する様々な賦形剤および/または担体を含有することができる。
【0093】
これらのすべての医薬製剤において、本発明の調製物は、特異的免疫療法の実施に用いられる投与経路に従い、総タンパク質が0.5μg(最小用量)から200μg(維持用量)の範囲の量で存在することができる。