特許第5872018号(P5872018)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5872018
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】偏波共用アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/24 20060101AFI20160216BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20160216BHJP
   H01Q 19/10 20060101ALI20160216BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20160216BHJP
   H01Q 9/16 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   H01Q21/24
   H01Q21/08
   H01Q19/10
   H01Q1/38
   H01Q9/16
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-257557(P2014-257557)
(22)【出願日】2014年12月19日
【審査請求日】2014年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000217653
【氏名又は名称】電気興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】天川 英二
【審査官】 緒方 寿彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−026707(JP,A)
【文献】 特開2001−196846(JP,A)
【文献】 特表2009−534942(JP,A)
【文献】 特開2005−086658(JP,A)
【文献】 特開2009−200776(JP,A)
【文献】 特開2007−214618(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0163477(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/24
H01Q 1/38
H01Q 9/16
H01Q 19/10
H01Q 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定径の円周の0°,90°,180°,270°位置においてそれぞれの長手方向中心点が接するように配列する第1、第2、第3、第4の2線式折返しアンテナ素子と、
前記第1〜第4の2線式折返しアンテナ素子の給電点に先端がそれぞれ接続された第1〜第4の平衡2線路と、
前記第1の平衡2線路の一方の線路の基端と前記第2の平衡2線路の一方の線路の基端とが接続された第1の給電点と、
前記第2の平衡2線路の他方の線路の基端と前記第3の平衡2線路の一方の線路の基端とが接続された第2の給電点と、
前記第3の平衡2線路の他方の線路の基端と前記第4の平衡2線路の一方の線路の基端とが接続された第3の給電点と、
前記第4の平衡2線路の他方の線路の基端と前記第1の平衡2線路の他方の線路の基端とを接続した第4の給電点と、
第1、第2の平衡不平衡変換回路と、を備え、
前記第1の平衡不平衡変換回路を用いて前記第1、第3の給電点に平衡給電を行い、前記第2の平衡不平衡変換回路を用いて前記第2、第4の給電点に平衡給電を行い、
前記第1〜第4の2線式折返しアンテナは、それらの給電点を含む円周の直径が約0.45λ(λは使用周波数帯域の中心周波数の波長)となるように配列されており、
前記第1〜第4の2線式折返しアンテナ素子は、相互の端部の干渉を回避するため、円弧状にかつ一端部と他端部が異径の円周上に位置するように形成されていることを特徴とする偏波共用アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1〜第4の2線式折返しアンテナ素子、前記第1〜第4の平衡2線路、及び、前記第1〜第4の給電点を第1の誘電体基板にプリント形成したことを特徴とする請求項に記載の偏波共用アンテナ装置。
【請求項3】
前記第1、第2の平衡不平衡変換回路をそれぞれ第2、第3の誘電体基板にプリント形成し、この第2、第3の誘電体基板を交差結合するとともに、この交差結合した第2、第3の誘電体基板を前記第1の誘電体基板に対して鉛直に結合することを特徴とする請求項に記載の偏波共用アンテナ装置。
【請求項4】
前記第2の電体基板は、前記第1の誘電体基板への結合時に該第1の誘電体基板を貫通して前記第1、第3の給電点に前記第1の平衡不平衡変換回路を接続させる一対の第1の接続端子を備え、前記第3の電体基板は、前記第1の誘電体基板への結合時に該第1の誘電体基板を貫通して前記第2、第4の給電点に前記第2の平衡不平衡変換回路を接続させる一対の第2の接続端子を備えることを特徴とする請求項に記載の偏波共用アンテナ装置。
【請求項5】
前記第1の誘電体基板を貫通した前記一対の第1の接続端子とこれらに対応する前記第1、第3の給電点との間、及び、前記第1の誘電体基板を貫通した前記一対の第2の接続端子とこれらに対応する前記第2、第4の給電点との間に補強用のL型金属片をそれぞれ介在させたことを特徴とする請求項に記載の偏波共用アンテナ装置。
【請求項6】
前記前記第1の誘電体基板には、前記第1、第2の接続端子を貫通させるための孔が打ち抜き形成され、前記孔の縁端には、打ち抜き部に存在していた金属箔からなる補強用の立上げ片が形成され、前記第1の接続端子と前記第1、第3の給電点との間、及び、前記第2の接続端子と前記第2、第4の給電点との間にそれぞれ前記立上げ片を介在させたことを特徴とする請求項に記載の偏波共用アンテナ装置。
【請求項7】
請求項1〜に記載の偏波共用アンテナ装置を、垂直方向に複数個配列したことを特徴とするアレイ構成の偏波共用アンテナ装置。
【請求項8】
背面に反射板を配置したことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の偏波共用アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信基地局のアンテナ装置として好適な偏波共用アンテナ装置に関し、詳しくは2つの直交する偏波を独立して送受信することができる偏波ダイバーシチアンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムの基地局では、偏波ダイバーシチ効果を得るために、独立した2つの偏波を共用するように構成された偏波共用アンテナ装置が使用されている。この偏波共用アンテナ装置には、垂直偏波及び水平偏波を用いる方式のものと、+45°偏波及び−45°偏波を用いる方式のものがあり、特許文献1には後者の方式に係る偏波ダイバーシチアレイアンテナ装置が開示されている。
【0003】
特許文献1のアンテナ装置は、+45度偏波用の第1のダイポールアンテナ素子と−45度偏波用の第2のダイポールアンテナ素子とを交差配置した偏波ダイバーシチアンテナユニットを複数備え、これらのアンテナユニットを垂直方向に所定の間隔をおいて配列させるとともに、それらのアンテナユニットの背部に反射板を配設した構成を有する。
この特許文献1のアンテナ装置によれば、第1、第2のダイポールアンテナ素子の素子導体に設けた調整用導体部により垂直偏波成分と水平偏波成分の差を低減して、偏波面のくずれを補正するようにしているので、交差偏波特性や偏波間結合量特性の劣化を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−26707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、移動通信システムの基地局は、通信容量の向上等の目的でセクタ分割して構成する。従って、基地局アンテナ装置に求められる水平面内ビーム幅は、セクタ分割数やセクタ間での干渉回避等により異なることになる。すなわち、セクタ分割数が多い場合や、セクタ間での干渉を発生するおそれがある場合には、それに対応するために狭い水平面ビーム幅が要求される。
また、通信容量の確保や通信速度の向上などの観点から、基地局アンテナ装置には水平面内ビーム幅を狭くすることが要求される傾向にある。
【0006】
しかし、特許文献1のアンテナ装置を用いて狭い水平面内ビーム幅を得ようとすると、このアンテナ装置を水平方向に複数配列(アレイ化)する、反射板の面積を増大する、などの策を講じなければならないので、構成の複雑化、大型化、高コスト化を招くことになる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑み、小型かつ簡易な構造で狭い水平面内ビーム幅を実現することが可能な偏波共用アンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、所定径の円周の0°,90°,180°,270°位置においてそれぞれの長手方向中心点が接するように配列する第1、第2、第3、第4の2線式折返しアンテナ素子と、
前記第1〜第4の2線式折返しアンテナ素子の給電点に先端がそれぞれ接続された第1〜第4の平衡2線路と、
前記第1の平衡2線路の一方の線路の基端と前記第2の平衡2線路の一方の線路の基端とが接続された第1の給電点と、
前記第2の平衡2線路の他方の線路の基端と前記第3の平衡2線路の一方の線路の基端とが接続された第2の給電点と、
前記第3の平衡2線路の他方の線路の基端と前記第4の平衡2線路の一方の線路の基端とが接続された第3の給電点と、
前記第4の平衡2線路の他方の線路の基端と前記第1の平衡2線路の他方の線路の基端とを接続した第4の給電点と、
第1、第2の平衡不平衡変換回路と、を備え、
前記第1の平衡不平衡変換回路を用いて前記第1、第3の給電点に平衡給電を行い、前記第2の平衡不平衡変換回路を用いて前記第2、第4の給電点に平衡給電を行う。
さらに、前記第1〜第4の2線式折返しアンテナは、それらの給電点を含む円周の直径が約0.45λ(λは使用周波数帯域の中心周波数の波長)となるように配列される。
前記第1〜第4の2線式折返しアンテナ素子は、相互の端部の干渉を回避するため、円弧状にかつ一端部と他端部が異径の円周上に位置するように形成される。
【0010】
一態様として、前記第1〜第4の2線式折返しアンテナ素子、前記第1〜第4の平衡2線路、及び、前記第1〜第4の給電点は第1の誘電体基板にプリント形成される。
また、一態様として、前記第1、第2の平衡不平衡変換回路をそれぞれ第2、第3の誘電体基板にプリント形成し、この第2、第3の誘電体基板を交差結合するとともに、この交差結合した第2、第3の誘電体基板を前記第1の誘電体基板に対して鉛直に結合する。
【0011】
一態様として、前記第2の電体基板は、前記第1の誘電体基板への結合時に該第1の誘電体基板を貫通して前記第1、第3の給電点に前記第1の平衡不平衡変換回路を接続させる一対の第1の接続端子を備え、前記第3の電体基板は、前記第1の誘電体基板への結合時に該第1の誘電体基板を貫通して前記第2、第4の給電点に前記第2の平衡不平衡変換回路を接続させる一対の第2の接続端子を備える。
【0012】
一態様として、前記第1の誘電体基板を貫通した前記一対の第1の接続端子とこれらに対応する前記第1、第3の給電点との間、及び、前記第1の誘電体基板を貫通した前記一対の第2の接続端子とこれらに対応する前記第2、第4の給電点との間に補強用のL型金属片がそれぞれ介在される。
また、一態様として、前記第1の誘電体基板には、前記第1、第2の接続端子を貫通させるための孔が打ち抜き形成される。前記孔の縁端には、打ち抜き部に存在していた金属箔からなる補強用の立上げ片が形成され、前記第1の接続端子と前記第1、第3の給電点との間、及び、前記第2の接続端子と前記第2、第4の給電点との間にそれぞれ前記立上げ片が介在される。
【0013】
一態様として、前記偏波共用アンテナ装置を垂直方向に複数個配列してアレイアンテナとしての機能を持たせることができる。
また、一態様として、背面に反射板を配置することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にによれば、水平方向へのアレイ化や反射板の面積増大等の手段を講じることなく、つまり、構造の大型化、複雑化を伴うことなく水平面内ビーム幅を狭くすることが可能である。従って、移動通信システムの基地局で使用する水平面ビーム幅の狭い偏波共用アンテナ装置を小型かつ簡易な構造で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る偏波共用アンテナ装置の一実施形態を示す斜視図である
図2】平衡不平衡変換回路を形成した誘電体基板の一方の面を示す図である。
図3】平衡不平衡変換回路を形成した誘電体基板の他方の面を示す図である。
図4図2図3の誘電体基板を結合させた状態を示す斜視図である。
図5】補強用のL型金属片とその取付け部を示す斜視図である。
図6】誘電体基板に形成した金属箔からなる補強用立上げ片を示す斜視図である。
図7図1に示す偏波共用アンテナ装置を反射板上で垂直方向に2個配列させた状態を示す斜視図である。
図8】第1の給電点に平衡給電した場合の零相系動作説明図である。
図9】第2の給電点に平衡給電した場合の零相系動作説明図である。
図10】第1の給電点に平衡給電した場合の正相系動作説明図である。
図11】第2の給電点に平衡給電した場合の正相系動作説明図である。
図12】各平衡2線路の先端接続点を含む円の半径が0.45波長である場合の水平面指向性を示すグラフである。
図13】各平衡2線路の先端接続点を含む円の半径が0.50波長である場合の水平面指向性を示すグラフである。
図14】各平衡2線路の先端接続点を含む円の半径が0.55波長である場合の水平面指向性を示すグラフである。
図15】+45°偏波のリターンロス特性を示すグラフである。
図16】−45°偏波のリターンロス特性を示すグラフである。
図17】結合量特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において用いる上下、左右等の語句は、該当図面上での方向を示すものであって、実装状態下での方向とは必ずしも一致しない。
図1に本発明に係る偏波共用アンテナ装置の一実施形態を示す。図1において、円形の誘電体基板1の上面には、2線式折返しダイポールアンテナ素子2〜5、平衡2線路(6a,6b)〜(9a,9b)及び接続導体10〜13が形成されている。これらは金属箔(例えば銅箔)からなり、プリント配線パターンの作成手法を用いてプリント形成されている。
【0017】
折返しダイポールアンテナ素子2,3,4,5は円弧形状を有し、円形誘電体基板1の中心点を中心とする円周の0°,90°,180°,270°位置にそれぞれの長手方向中心点が接するように配列されている。各折り返しアンテナ素子2〜5は、一端部と他端部が異径の円周上に位置するように形成されている。このように形成すれば、折り返しアンテナ素子2〜5の隣接する端部相互を互い違いに位置させることができるので、該アンテナ素子2〜5を近接配置してそれらの給電点を含む円周の直径を小さくしても、それらの端部相互の干渉を回避することが可能となる。
なお、折り返しアンテナ素子2〜5の全長は約0.5λ(λは使用周波数帯域の中心周波数の波長)に設定されている。
【0018】
平衡2線路(6a,6b)〜(9a,9b)は、折返しダイポールアンテナ素子2〜5の給電点にそれぞれの先端が接続され、それらの給電点から誘電体基板1の中心側に向かって延びている。
接続導体10,11,12及び13は、誘電体基板1の中心部に位置し、平衡2線路(6a,6b)〜(9a,9b)における線路6a,7bの基端間、線路7a,8bの基端間、線路8a,9bの基端間、線路9a,6bの基端間にそれぞれ介在している。
【0019】
誘電体基板1には、別の誘電体基板14,15が組み合わされている。図2に示すように、誘電体基板14は、一方の面に接地導体141,142が形成され、他方の面に給電導体143が形成されている。なお、接地導体141,142及び給電導体143も金属箔によってプリント形成されている。
接地導体141,142は、誘電体基板14の上下方向中心軸線に対して対称に形成されている。給電導体143は、接地導体141の背部において誘電体基板14の下端から上方に延びた後、横に折り曲げられて接地導体142の背部まで延びている。この給電導体143は、接地導体141,142と共に平衡不平衡変換回路(バラン)を構成している。
【0020】
また、誘電体基板14には、上端から突出する一対の接続端子144,145と、下端から突出する一対の接続端子146,147とが形成されている。図示のように、接地導体141は接続端子144,147の面上まで延在し、接地導体142は接続端子145,147の面上まで延在している。
また、誘電体基板14には、直線状の切り欠き溝148が形成されている。この切り欠き溝148は、誘電体基板14の上下中心軸線上に位置し、該誘電体基板14の下端から給電導体143の直前位置まで延びている。
【0021】
図3に示すように、他方の誘電体基板15には、接地導体151,152、給電導体153、接続端子154,155、156,157及び切り欠き溝158がそれぞれ形成されている。これらは、図2に示す接地導体141,142、給電導体143、接続端子144,145、146,147及び切り欠き溝148にそれぞれ対応している。
給電導体153は、接地導体151の背部において誘電体基板15の下端から上方に延びた後、横に折り曲げられて接地導体152の背部まで延びている。この線給電導体153は、接地導体151,152と共に平衡不平衡変換回路を構成している。また、切り欠き溝158は、誘電体基板15の上下中心軸線上に位置し、該誘電体基板15の上端から給電導体153の直前位置まで延びている。
【0022】
上記誘電体基板14,15は、切り欠き溝148、158を介して互いの面が直交するように一体結合される(図4参照)。この一体化された誘電体基板14,15の上部には、接続端子144,145,154,155が突出している。一方、誘電体基板1には、接続導体10,11,12,13の中央部を貫通する孔16,17,18,19がそれぞれ形成されている。そこで、一体化された誘電体基板14,15の接続端子144,145,154,155を誘電体基板1の孔16,18,19,17にそれぞれ挿入する。この結果、図1に示すように、誘電体基板14,15が誘電体基板1に対し鉛直に組み合わされる。
【0023】
この状態においては、接続導体10,11,12,13の面上に接続端子144,155,145,154が突出している。接続端子144,155,145,154には、接地導体141,152,142,151が延在しているので、これらの接地導体141,152,142,151をハンダ付け等の手段により10,11,12,13の面に接続する。
【0024】
このとき、接続部の機械的強度を増すために、図5に示すL型金属片20をあてがった状態で上記ハンダ付け等の接続処理を施すことも可能である。
また、図4に示す孔16,17,18,19の打ち抜き加工は、その加工場所にもともと存在していた金属箔を残すように実施することが可能であるので、そのような打ち抜き加工によって、図6に示すような金属箔からなる立上げ片10a,11a,12a,13aを孔16,17,18,19の縁端に形成し、この立上げ片10a,11a,12a,13aをあてがった状態で上記ハンダ付け等の接続処理を施せば、給電点接続部の機械的強度を向上することができる。
基地局用のアンテナ装置には、設置後、風等による鉄塔の振動が繰り返し伝達されることから、上記に例示したような対策を講じて、給電点接続部の機械的強度を高くすることが望ましい。。
【0025】
上記構成の偏波共用アンテナ装置ANは、図1に示すように、給電用誘電体基板21に立設される。すなわち、図2に示す誘電体基板14の接続端子146,147及び図3に示す誘電体基板15の接続端子156,157を上記誘電体基板21に貫通形成された図示していない孔に挿入することによって該誘電体基板21に立設される。
このとき、接続端子146,147に形成された接地導体141,142及び接続端子156,157に形成された接地導体151,152が誘電体基板21の下面全域に形成された金属箔からなる接地導体(図示せず)にハンダ付け等の手段を用いて接続され、また、図2に示す給電導体143の下端及び図3に示す給電導体153の下端が誘電体基板21の表面にプリント形成された金属箔からなる+45°偏波用給電線路導体及び−45°偏波用給電線路導体(共に図示せず)にハンダ付け等の手段を用いて接続される。
【0026】
本実施形態に係る偏波共用アンテナ装置ANは、必要に応じて背部に反射板22が配設される。この反射板22は、誘電体基板21の背面側に位置され、その長手方向に沿った両端部に指向性成形のための立上げ部22aがそれぞれ形成される。
また、本実施形態に係る偏波共用アンテナ装置ANは、必要に応じて垂直方向Vに所定の間隔をおいて複数個配列される。図示の例では、図面の簡素化を図るために配列段数を2としているが、一般的には配列段数(アレイ数)を3以上に設定することが多い。
【0027】
次に、本実施形態に係る偏波共用アンテナ装置ANの動作について説明する。本実施形態に係る偏波共用アンテナ装置は、図7に示すように、誘電体基板1の面が垂直に向くように、かつ、折返しダイポールアンテナ素子2,4が上、下に位置され、ダイポールアンテナ素子5,3が左右に位置されるように配置される。
図1において、接続導体10,12の中央部は第1の給電点を構成し(図8の黒丸P1,P2参照)、接続導体11,13の中央部は第2の給電点を構成している(図9
の黒丸P3,P4参照)。
【0028】
ここで、図7に示す給電用誘電体基板21に形成された+45°偏波用給電線路導体と接地導体間に同軸ケーブル等を介して高周波信号を不平衡給電すると、この高周波信号は図4に示す誘電体基板14に形成された平衡不平衡変換回路を介して上記第1の給電点P1,P2に平衡給電される。
この給電により線路6a,7bに図8に示す方向の電流が流れるとともに、その電流とは逆向きの電流が線路6b,7aに生起される。その結果、折返しダイポールアンテナ素子2が90°方向に励振されるとともに、折返しダイポールアンテナ素子3が0°方向に励振される。一方、線路6b,7aに生起された電流はそれぞれ線路9a,8bを進み、それに伴ってその電流とは逆向きの電流が線路9b,8aに生起される。その結果、折返しダイポールアンテナ素子5が0°方向に励振されるとともに、折返しダイポールアンテナ素子4が90°方向に励振される。
上記のように折返しダイポールアンテナ素子2〜5が励振されると、それらの励振方向の合成によって+45°偏波が発生することになる。
【0029】
ところで、給電される高周波信号の周波数が使用周波数帯域の中心周波数である場合には、線路8aからの電流と線路9bからの電流が給電点P2において互いに逆相になって打ち消し合うことになる。これに対して、給電される高周波信号の周波数が使用周波数帯域の中心周波数から離れている場合には、上記両電流の逆相関係が成立しなくなるが、この場合、誘電体基板14に形成された平衡不平衡変換回路がこの逆相関係のずれを補正するように作用するので、このずれに起因したリターンロス特性の悪化を抑制して広帯域化を図ることができる。
【0030】
次に、図7に示す給電用誘電体基板21に形成された−45°偏波用給電線路導体と接地導体間に高周波信号を給電した場合について説明する。この場合、給電された高周波信号は、図4に示す誘電体基板15に形成された平衡不平衡変換回路を介して上記第2の給電点P3,P4に平衡給電される。
この給電により線路6b,9aに図9に示す方向の電流が流れるとともに、その電流とは逆向きの電流が線路6a,9bに生起される。その結果、折返しダイポールアンテナ素子2が270°方向に励振されるとともに、折返しダイポールアンテナ素子5が0°方向に励振される。一方、線路6a,9bに生起された電流はそれぞれ線路7b,8aを進み、それに伴ってその電流とは逆向きの電流が線路7a,8bに生起される。その結果、折返しダイポールアンテナ素子3が0°方向に励振されるとともに、折返しダイポールアンテナ素子4が270°方向に励振される。
上記のように折返しダイポールアンテナ素子2〜5が励振されると、それらの励振方向の合成によって315°偏波(−45°偏波)が発生することになる。
【0031】
ここで、給電される高周波信号の周波数が使用周波数帯域の中心周波数である場合には、線路7aからの電流と線路8bからの電流が給電点P4において互いに逆相になって打ち消し合うことになる。一方、給電される高周波信号の周波数が使用周波数帯域の中心周波数から離れている場合には、上記両電流の逆相関係が成立しなくなるが、この場合、誘電体基板15に形成された平衡不平衡変換回路がこの逆相関係のずれを補正するように作用するので、このずれに起因したリターンロス特性の悪化を抑制して広帯域化を図ることができる。
以上のように、本実施形態に係る偏波共用アンテナ装置ANによれば、+45°偏波と−45°偏波を共用することができる。もちろん、本実施形態に係る偏波共用アンテナ装置ANによって水平偏波と垂直偏波を共用することも可能である。すなわち、図7においてアンテナ装置ANを垂直面内で45°回転して配置すれば、水平偏波と垂直偏波を共用することが可能になる。
【0032】
本実施形態に係る偏波共用アンテナ装置ANにおいては、どちらの偏波についても、折返しダイポールアンテナ素子2,4相互の励振方向及び折返しダイポールアンテナ素子3,5相互の励振方向が同じであるので、平衡2線路(6a,6b)〜(9a,9b)の各先端接続点(折返しダイポールアンテナ素子2〜5の各給電点)を含む円の直径が約0.45λに近づくにつれて、垂直偏波成分と水平偏波成分の差が小さくなるという効果が得られる。
【0033】
ところで、2線式折返しダイポールアンテナ素子2〜5において、給電点を含む線導体を一次導体とし、この一次導体に接続される他の線導体を二次導体とすると、この2線式折返しダイポールアンテナ素子2〜5の等価回路は零相系と正相系に分けられる(例えば、電気通信学界雑誌 第48巻4号 昭和40年4月 「第8章 折返空中線」参照)。
【0034】
零相系では、上記一次導体と二次導体が一括されてそれらの導体に同方向の電流が流れることから、それらの導体が共に放射に関与することになる。つまり、それらの導体が二線一括の単一ダイポールアンテナとして動作する。前記した図8図9の動作は、この零相系での動作を示している。
【0035】
一方、正相系では、上記一次導体と二次導体が給電点より左右に二分された終端短絡の平衡線路を構成することになるため、それらの導体に往復電流が流れ、その結果、各導体は放射に寄与しないことになる。図10図11の動作は、この正相系での動作を示している。
平衡2線路(6a,6b)〜(9a,9b)を含めて説明すると、2線式折返しダイポールアンテナ素子2と平衡2線路(6a,6b)、2線式折返しダイポールアンテナ素子3と平衡2線路(7a,7b)、2線式折返しダイポールアンテナ素子4と平衡2線路(8a,8b)、2線式折返しダイポールアンテナ素子5と平衡2線路(9a,9b)は、それぞれ終端短絡の平衡回路として動作する。
【0036】
この動作は、各2線式折返しダイポールアンテナ素子2〜5の給電インピーダンスが折返し構造を有さない通常のダイポールアンテナのそれに比べて高くなることを意味している。
この結果、本実施形態によれば、給電点P1〜P4から2分岐されて高くなった平衡2線路(6a,6b)〜(9a,9b)のインピーダンスと2線式折返しダイポールアンテナ素子2〜5のインピーダンスとが良好に整合されることになり、これは広帯域化に寄与する。
【0037】
上記のように動作する本実施形態に係る偏波共用アンテナ装置ANは、スタックアンテナとしての機能を持つことになるので、水平方向(図7のH方向)にアレイ化することなく、かつ、反射板22の面積を大きくすることなく水平面内ビーム幅を狭くすることが可能である。
また、給電点が4か所(P1〜P4)でかつそれらが放射方向側に位置されるので、給電点における接続作業も容易になる。
【0038】
図12図13及び図14は、平衡2線路(6a,6b)〜(9a,9b)の各先端接続点を含む円の直径を0.45λ、0.50λ及び0.55λに設定した場合の水平面指向性をそれぞれ示す。これらの図において、実線は主偏差成分に係る指向性、太い点線は垂直偏波成分に係る指向性、細い点線は水平偏波成分に係る指向性、一点鎖線は交差偏波成分に係る指向性である。
各図から明らかなように、本実施形態に係る偏波共用アンテナ装置ANによれば、垂直偏波成分と水平偏波成分の差を少なくしかつ良好な交差偏波特性を維持しながら水平面内ビーム幅を狭くすることができる。そして、平衡2線路(6a,6b)〜(9a,9b)の各先端接続点を含む円の直径を大きく設定するほど、水平面内ビーム幅が狭くなることが認識される。
【0039】
図15及び図16は、+45°偏波及び−45°偏波についてのリターンロス特性それぞれ示す。これらの図において,fcは使用周波数帯域の中心周波数を示している。これらの図から明らかなように、本実施形態に係る偏波共用アンテナ装置ANによれば、高い周波数においても広帯域特性を実現することが可能である。
また、本実施形態に係る偏波共用アンテナ装置ANによれば、図17に示す結合量特性から明らかなように、良好な偏波間特性を得ることができる。
【0040】
本発明は上記実施形態に限定されず、他の種々の変形態様を含み得るものである。例えば、実施形態に示す円弧状の2線式折返しダイポールアンテナ素子2〜5を直線状に形成しても本発明は実施可能である。また、2線式折返しアンテナ素子2〜5、平衡2線路(6a,6b)〜(9a,9b)、及び、前記第1〜第4の平衡2線路及び平衡不平衡変換回路は、誘電体基板を用いないで形成することも可能である。
【0041】
1 誘電体基板
2〜5 2線式折返しダイポールアンテナ素子
6a,6b〜9a,9b 平衡2線路
10〜13 接続導体
10a〜13a 立上げ片
14 誘電体基板
141,142 接地導体
143 給電導体
144〜147 接続端子
148 切り欠き溝
15 誘電体基板
151,152 接地導体
153 給電導体
154〜157 接続端子
158 切り欠き溝
16〜19 孔
20 L型金属片
21 給電用誘電体基板
22 反射板
22a 立上げ部
【要約】
【課題】小型かつ簡易な構造で狭い水平面内ビーム幅を実現する。
【解決手段】所定径の円周の0°,90°,180°,270°位置においてそれぞれの長手方向中心点が接するように配列する第1、第2、第3、第4の2線式折返しアンテナ素子(2〜5)と、アンテナ素子(2〜5)の給電点に先端がそれぞれ接続された第1〜第4の平衡2線路(6a,6b〜9a,9b)を備える。線路(6a)の基端と線路(7b)の基端とが接続された給電点と、線路(8a)の基端と線路(9b)の基端とが接続された給電点との間に一方の偏波に係る給電がなされ、線路(7a)の基端と線路(8b)の基端とが接続された給電点と、線路(9a)の基端と線路(9b)の基端とが接続された給電点との間に他方の偏波に係る給電がなされる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17