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特許5872041幹細胞由来微小胞を含む神経生成促進用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872041
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】幹細胞由来微小胞を含む神経生成促進用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/12 20150101AFI20160216BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20160216BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20160216BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20160216BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20160216BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20160216BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   A61K35/12
   A61K35/545
   A61P9/10
   A61P25/00
   A61P25/08
   A61P25/16
   A61P25/28
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-525931(P2014-525931)
(86)(22)【出願日】2012年8月14日
(65)【公表番号】特表2014-524437(P2014-524437A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】KR2012006478
(87)【国際公開番号】WO2013025042
(87)【国際公開日】20130221
【審査請求日】2014年2月17日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0081147
(32)【優先日】2011年8月16日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0088778
(32)【優先日】2012年8月14日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】511284203
【氏名又は名称】サムスン ライフ パブリック ウェルフェア ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100152319
【弁理士】
【氏名又は名称】曽我 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】バン,オーヤン
(72)【発明者】
【氏名】ムーン,ギィオン ジューン
(72)【発明者】
【氏名】チョ エオン ヒー
(72)【発明者】
【氏名】キム スク ジェー
(72)【発明者】
【氏名】キム ドン ヒー
(72)【発明者】
【氏名】スン ジン ヒー
【審査官】 加藤 文彦
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0122087(KR,A)
【文献】 特表2011−513217(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/053257(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/12
A61K 35/545
A61P 9/10
A61P 25/00
A61P 25/08
A61P 25/16
A61P 25/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚血刺激により誘導された幹細胞由来微小胞を有効成分で含むことを特徴とする神経生成促進用組成物。
【請求項2】
前記虚血刺激は、幹細胞を虚血個体の脳組織抽出物で処理することを特徴とする請求項に記載の神経生成促進用組成物。
【請求項3】
前記幹細胞由来微小胞は、CD105陽性及びアネキシンV陰性微小胞であることを特徴とする請求項1に記載の神経生成促進用組成物。
【請求項4】
前記幹細胞は、誘導多能性幹細胞(iPS:induced pluripotent stem cell)、成体幹細胞、胚芽幹細胞、中間葉幹細胞、脂肪幹細胞、造血母細胞、臍帯血幹細胞で構成された群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の神経生成促進用組成物。
【請求項5】
前記幹細胞由来微小胞は、神経細胞の生成及び移動を促進させることを特徴とする請求項1に記載の神経生成促進用組成物。
【請求項6】
前記幹細胞由来微小胞は、血管内皮細胞の血管生成を促進することを特徴とする請求項1に記載の神経生成促進用組成物。
【請求項7】
虚血刺激により誘導された幹細胞由来微小胞を有効成分で含むことを特徴とする神経生成促進用薬学的組成物
【請求項8】
前記虚血刺激は、幹細胞を虚血個体の脳組織抽出物で処理することを特徴とする請求項に記載の神経生成促進用薬学的組成物
【請求項9】
前記幹細胞は、誘導多能性幹細胞(iPS:induced pluripotent stem cell)、成体幹細胞、胚芽幹細胞、中間葉幹細胞、脂肪幹細胞、造血母細胞、臍帯血幹細胞で構成された群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項に記載の神経生成促進用薬学的組成物
【請求項10】
虚血刺激により誘導された幹細胞由来微小胞を有効成分で含むことを特徴とする退行性神経疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項11】
前記退行性神経疾患は、虚血性脳卒中、脳梗塞、神経外傷、パーキンソン病、アルツハイマー病ルーゲーリック病及び癲癇で構成された群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項10に記載の退行性神経疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項12】
神経損傷が発病したヒトを除外した個体に虚血刺激により誘導された幹細胞由来微小胞を処理する段階を含むことを特徴とする神経損傷治療方法。
【請求項13】
前記神経損傷は、物理的損傷または退行性神経疾患による神経損傷であることを特徴とする請求項12に記載の神経損傷治療方法。
【請求項14】
前記物理的損傷は、脳外傷、脊髓損傷、脳梗塞、脳出血及び神経外傷からなる群より選択された1種以上であることを特徴とする請求項13に記載の神経損傷治療方法。
【請求項15】
前記退行性神経疾患は、虚血性脳卒中、脳梗塞、神経外傷、パーキンソン病、アルツハイマー病ルーゲーリック病及び癲癇で構成された群から選択された1種以上であることを特徴とする請求項13に記載の神経損傷治療方法。
【請求項16】
前記ヒトを除外した個体は、ラット、アカギツネ、スカンク、狸、犬、オオカミ、マングース、コヨーテ、フェレット、及び猫からなる群より選択された1種以上であることを特徴とする請求項12に記載の神経損傷治療方法。
【請求項17】
前記幹細胞由来微小胞は、神経細胞の生成及び移動を促進させることを特徴とする請求項12に記載の神経損傷治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幹細胞由来微小胞を含む神経生成促進用組成物及び神経生成促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、幹細胞治療に対して脳梗塞、外傷性神経損傷、筋骨格系疾患など多様な疾患において多様な前臨床、臨床研究が試みされている。しかし、現在の技術的な水準は単純な幹細胞の抽出及び培養/増殖とこれを注入する程度に関する研究しか行われていないで、最近までの臨床研究結果、このような幹細胞治療はまだ明確な効果を示していないと知られた。効果を増進するための多様な遺伝子組換え幹細胞に対する研究が進行されているが、遺伝子を利用した細胞治療は倫理的な問題のため人体への適用が不可能である限界点がある。
また、幹細胞を利用する方法を臨床に適用するためにはいくつかの問題点がある。1.細胞治療剤の場合、幹細胞が組職に生着した後に腫瘍塊が形成される危険がある。2.幹細胞の場合、サイズが相対的に大きいため、動脈閉塞を誘発して脳梗塞をもたらす可能性がある。3.幹細胞の場合、急性期のように脳−血管壁が開けた状態では脳内へ移動が容易であるが、慢性期では大きいサイズのため移動に制限を受ける。4.細胞治療剤は、希望する特性を有する特化された細胞を形成する幹細胞を誘導することに限界がある。
一方、微小胞を利用した治療法は、幹細胞自体を利用する細胞治療法と差別化される方法で最近注目を引いている。通常的に微小胞とは、直径0.1〜1μm以下の小さい小胞として、刺激により内皮細胞、血小板などの細胞膜の一部が血中に離れたきたことを意味するが、幹細胞から来由された微小胞は、受容体及びタンパク質だけではなく核成分を含んでいるので、細胞間コミュニケーション役目をすると知られている。また、前記微小胞は、幹細胞に比べて動物血清を相対的に少なく含んでいるので、動物血清感染による症状(zoonosis)の危険性も排除することができる。このような微小胞の特性を考慮するとき、微小胞を利用した細胞治療方法は既存の幹細胞治療法の限界を克服することができる新しいパラダイム(paradiam)になることで期待される。
したがって、このような幹細胞から来由された微小胞を幹細胞の代わりを使用しようとする研究が活発に進行されている。例えば、国際特許公開WO10/070141号公報には、脂肪幹細胞由来微小胞の生成方法、前記生成された微小胞の免疫疾患、アレルギー反応、炎症性疾患の治療効果などに対して開示されており、韓国特許公開第2010-122087号公報には、中間葉幹細胞により分泌され、一つ以上の中間葉幹細胞の生物学的特性を含む粒子及び前記粒子を心臓保護用治療剤として使用する技術が開示されている。
しかし、現在まで幹細胞由来微小胞に対する研究成果が多くなくて、各種疾患の治療用途として使用できる幹細胞を全て微小胞に代替することはできない。特に、微小胞と神経細胞生成促進効果との相関関係に対しても報告されたことがない。
したがって、幹細胞由来微小胞を利用して神経細胞生成を促進することができたら、これを神経損傷と関連された疾患の治療に使用することができる長所があるので、幹細胞由来微小胞と神経細胞との相関関係に対する研究が切実に必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際特許公開WO10/070141号公報
【特許文献2】韓国特許公開第2010-122087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、幹細胞由来微小胞と神経細胞との相関関係に関して研究するうち、幹細胞由来微小胞が神経細胞の生成及び移動を促進して血管内皮細胞での血管生成を促進する効果が優秀であることを確認して、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために本発明は、幹細胞由来微小胞を有効成分で含む神経生成促進用組成物を提供する。
また、本発明は、幹細胞由来微小胞を神経幹細胞に加える段階を含む神経生成促進方法を提供する。
また、本発明は、幹細胞由来微小胞を有効成分で含む退行性神経疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
また、本発明は、神経損傷が発病したヒトを除外した個体に幹細胞由来微小胞を処理する段階を含む神経損傷治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明による幹細胞由来微小胞は、神経の生成及び神経の移動を促進し、血管内皮細胞での血管生成を促進することができるので、神経の損傷を治療する優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、CD105陽性/アネキシンV陰性、CXCR4陽性/アネキシンV陰性微小胞の血中水準を脳病変が小さい患者(A)、脳病変が大きい患者(B)で比較した結果、及びCD105陽性とCD90陽性との関係(C)を示した図である。
図2図2は、CD105陽性/アネキシンV陰性である幹細胞由来微小胞(A)、CD105陽性/CXCR4陽性/アネキシンV陰性微小胞(B)、SDF−1α(C)と脳病変のサイズ(DWI)、NIHSS、脳梗塞発病後の経過時間との相関関係を示した図である。
図3図3は、KnDEME(ノックアウトDEME)、STS 100nM(スタウロスポリンA処理群)、20%虚血脳抽出物(BE(whole))及び20%虚血血清(serum)で処理した骨髓由来中間葉幹細胞での幹細胞由来微小胞の数をCD105とアネキシンVを利用したフローサイトメトリーで確認した結果を示した図である。
図4図4は、虚血刺激を通じて得られた幹細胞由来微小胞を神経細胞に処理(1、3、10、30μg/ml)するか、対照群で30μmNMDAを処理して、神経細胞の壊死有無をLDH分析を通じて確認した結果を示した図である。
図5図5は、虚血刺激を与えないで得られた微小胞(A)または虚血刺激を通じて得られた幹細胞由来微小胞(B)を神経幹細胞に処理した後、神経生成能力を光学顕微鏡及び共焦点顕微鏡で確認した結果を示した図である。
図6図6は、虚血刺激を通じて得られた微小胞を処理(1、3、10、30μg/m)した後、血管内皮細胞の血管生成能力を蛍光顕微鏡で確認した結果を示した図である。
図7図7は、虚血刺激を通じて得られた微小胞を虚血性脳卒中を誘導したラットの脳室に注入した後、神経前駆細胞の移動距離を蛍光染色を通じて確認した結果(A)及びこれを数値化した結果(B)を示した図である。
図8図8は、虚血刺激を通じて得られた幹細胞由来の微小胞を虚血性脳卒中を誘導したラットの脳室に注入した後、血管内皮細胞の微細血管生成を蛍光染色を通じて確認した結果(A)及びこれを数値化した結果(B)を示した図である(Contra: contralateral, ipsi: ipsilateral, sham:正常対照群)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、幹細胞由来微小胞を有効成分で含む神経生成促進用組成物を提供する。
また、本発明は、幹細胞由来微小胞を神経幹細胞に加える段階を含む神経生成促進方法を提供する。
本発明の「幹細胞由来微小胞」とは、幹細胞から来由され、受容体、タンパク質を含んで、直径0.1〜1μm以下のサイズを有する小さい小胞を意味する。
前記幹細胞由来微小胞は、虚血刺激を通じて誘導された微小胞であり、前記虚血刺激は、好ましくは、虚血前処理(ischemic preconditioning)刺激である。前記虚血性前処理刺激は、 虚血を誘発する環境に幹細胞を露出させたりまたは虚血個体の脳組織抽出物を幹細胞に処理して行われる。
前記の虚血個体の脳組織抽出物は虚血症状を示す個体の脳から得られた抽出物である。前記の虚血症状の一例は虚血性脳卒中仕できる。
【0009】
前記幹細胞由来微小胞では、特別にこれに限定されなるものではないが、中間葉幹細胞に特異性を示すCD105陽性微小胞、アネキシンV(annexin V)陰性微小胞などを含むことができる。
この時、前記微小胞の根源になる幹細胞は、種類が限定されるものではないが、一例で、誘導多能性幹細胞(iPS:induced pluripotent stem cell)、成体幹細胞、胚芽幹細胞、中間葉幹細胞、脂肪幹細胞、造血母細胞、臍帯血幹細胞の中でいずれの一つであり、好ましくは、中間葉幹細胞である。
本発明による幹細胞由来微小胞は、神経細胞の生成及び移動を促進させることができ、血管内皮細胞での血管生成を促進させることができる。
また、本発明は、幹細胞由来微小胞を有効成分で含む退行性神経疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
本発明による幹細胞由来微小胞は、神経の生成及び神経の移動を促進し、血管内皮細胞での血管生成を促進することができるので、神経損傷の治療においてすぐれた効果がある。したがって、本発明による幹細胞由来微小胞は、退行性神経疾患の予防または治療に有用に使用することができる。
前記退行性神経疾患は、神経損傷により誘発される多様な疾患を種類に制限なしに含む意味で、一例で、虚血性脳卒中、脳梗塞、神経外傷、パーキンソン病、アルツハイモ、ルゲリック病及び癲癇の中でいずれの一つである。
【0010】
本発明の幹細胞由来微小胞を有効成分で含む退行性神経疾患の予防または治療用薬学的組成物は、幹細胞由来微小胞の外に本発明が目的とする主効果を損傷させない範囲内で、好ましくは、主効果に上昇効果を与えることができる他の成分などを含むことができる。
また、本発明の薬学的組成物は、投与のために前記記載した有効成分の外に追加で薬学的に許容可能な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含むことができる。例えば、担体、賦形剤及び希釈剤では、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、未晶質セルロース、ポリビニールピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、マグネシウムステアレート、鉱物油からなる群より選択されることができる。
【0011】
本発明の薬学的組成物は、公知の方法によって多様な非経口または経口投与用形態で製造することができる。非経口投与用剤形の代表的なものでは、注射用剤形で等張性水溶液または懸濁液が好ましい。注射用剤形は、適切な分散剤または湿潤剤及び懸濁化剤を用いて当業界に公知された技術によって製造することができる。例えば、各成分を食塩水または緩衝液に溶解させて注射用に剤形化することができる。
【0012】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、料粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記有効成分に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどを混合して調剤される。また、単純な賦形剤以外にもマグネシウムステアレート、タルクのような滑剤も使用することができる。
【0013】
前記幹細胞由来微小胞では、特別にこれに限定されなるものではないが、中間葉幹細胞に特異性を示すCD105陽性微小胞、アネキシンV(annexin V)陰性微小胞などを含むことができる。
この時、前記微小胞の根源になる幹細胞は、種類が限定されるものではないが、一例で、誘導多能性幹細胞(iPS:induced pluripotent stem cell)、成体幹細胞、胚芽幹細胞、中間葉幹細胞、脂肪幹細胞、造血母細胞、臍帯血幹細胞の中でいずれの一つであり、好ましくは、中間葉幹細胞である。
本発明による幹細胞由来微小胞は、神経細胞の生成及び移動を促進させることができ、血管内皮細胞での血管生成を促進させることができる。
また、本発明は、幹細胞由来微小胞を有効成分で含む退行性神経疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
本発明による幹細胞由来微小胞は、神経の生成及び神経の移動を促進し、血管内皮細胞での血管生成を促進することができるので、神経損傷の治療においてすぐれた効果がある。したがって、本発明による幹細胞由来微小胞は、退行性神経疾患の予防または治療に有用に使用することができる。
前記退行性神経疾患は、神経損傷により誘発される多様な疾患を種類に制限なしに含む意味で、一例で、虚血性脳卒中、脳梗塞、神経外傷、パーキンソン病、アルツハイマールーゲーリック病及び癲癇の中でいずれの一つである。
【0014】
本発明の薬学的組成物の有効投与量は、患者の年齢、性別、体重によって変わることができるが、100μg/kg〜1mg/kgで投与することができ、好ましくは、200μg/kg〜500μg/kgで投与することができる。
本発明の組成物は、退行性神経疾患の予防または治療のために単独で、または手術、化学的治療、放射性治療、ホルモン治療、薬物治療及び生物学的反応調節剤を用いる方法と併用して使用することができる。
また、本発明は、神経損傷が発病したヒトを除外した個体に幹細胞由来微小胞を処理する段階を含む神経損傷治療方法を提供する。
前記幹細胞由来微小胞の処理により、神経細胞の生成及び移動が促進され、血管内皮細胞での血管生成が促進され、神経損傷を効果的に治療することができる。
【0015】
本発明の用語「神経損傷」とは、物理的要因または退行性神経疾患により神経が損傷される症状を意味する。前記物理的要因による神経損傷は、特別にその種類に限定されるものではないが、脳外傷、脊髓損傷、脳梗塞、脳出血、神経外傷などを挙げることがあり、前記退行性神経疾患による神経損傷は、特別にその種類に限定されるものではないが、虚血性脳卒中、脳梗塞、神経外傷、パーキンソン病、アルツハイモ、ルゲリック病及び癲癇などの退行性神経疾患による神経損傷などを挙げることができる。
前記ヒトを除外した個体は、これに限定されるものではないが、好ましくは、ラット、アカギツネ、スカンク、狸、ムジナ、犬、オオカミ、モングース、コヨーテ、フェレット、犬及び猫である。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を製造例及び実施例により詳しく説明する。しかし、下記製造例及び実施例は本発明を例示することに過ぎず、本発明の内容が下記製造例及び実施例により限定されるものではない。
【0017】
実施例1.幹細胞由来微小胞の血清内水準の比較
脳梗塞患者からクエン酸(citrate)血清を得て19,800g、10℃の条件で10分間遠心分離して幹細胞由来微小胞を収得した。前記収得した幹細胞由来微小胞を20μlのPBSに顕濁した後、フローサイトメトリー分析(flow cytometric analysis)を利用して、幹細胞由来微小胞(CD105陽性/アネキシンV陰性)とSDF−1受容体CXCR4を発現する微小胞(CXCR4陽性/アネキシンV陰性)の血中水準を脳病変が小さい患者(DWIvolume 10cc未満)と大きい患者(DWI volume 10cc以上)の間で比較した。CD105陽性細胞の場合、CD90陽性が現われる二重陽性であるか否かを確認した。前記実験結果を図1に示した。
図1に示したように、脳梗塞後の脳病変が大きい患者(B)が脳病変が小さい患者(A)よりCD105陽性細胞及びCXCR4陽性細胞がさらに多いことを確認した。これを通じて、脳梗塞後の脳病変が大きい患者では、幹細胞由来微小胞とSDF−1走化性により移動することができる微小胞の数が増加することが分かる。また、CD105陽性細胞の場合、大部分CD90二重陽性であることを確認(C)した。これを通じて、CD105陽性微小胞が幹細胞由来の微小胞であることを検証した。
一方、脳梗塞患者の臨床記録を土台で、脳病変の大きさを示す拡散強調画像(DWI:diffusion weighted image)、NIHSS(NationalInstitutes of Health Stroke Scale)と脳梗塞発病後の経過時間による幹細胞由来微小胞(CD105陽性/アネキシンV陰性微小胞)、SDF−1受容体であるCXCR4を発現する微小胞(CXCR4陽性/アネキシンV陰性微小胞)及びSDF−1αとの関係を分析した。前記実験結果を図2に示した。
図2に示したように、CD105陽性/アネキシンV陰性である幹細胞由来微小胞は、脳病変のサイズ(DWI)が大きくて、NIHSS数値が高いほど増加する傾向を示し(A)、CD105陽性/CXCR4陽性/アネキシンV陰性である微小胞は、NIHSS数値が高いほど増加して脳梗塞発病後の経過時間が長くなることによって減少する傾向を示した(B)。これを通じて、脳梗塞重症度がひどいほど運動性が高い幹細胞の血中数値が増加することを微小胞を通じて検証した。これは発病後に時間が経過すれば、内在的幹細胞の発生が減少できることを示すことである。一方、SDF−1αの血中濃度は、脳病変が大きいほど減少し、発病後に経過時間が長いほど増加した(C)した。
【0018】
実施例2.骨髓由来幹細胞から微小胞の分離
2.1 中間葉幹細胞の採取及び培養
ラットの大腿骨から骨髓を採取して培養を通じて骨髓由来中間葉幹細胞を収得した。前記収得した中間葉幹細胞をT75フラスコに1×10cell/mlの濃度で5%CO及び37℃で培養し、全体面積の80%以上伸びた時継代培養した。前記継代培養は、バッジを除去してPBSで1回以上やわらかく洗浄した後にTrypLE(Invitrogen)を入れて、37℃培養機で約1分培養して、10%FBS(Fetal bovine serum)を含んだバッジに入れて反応を中和した後、細胞を集めて1,300g、5分間遠心分離して実行した。細胞沈殿物をFBSを含むバッジに再顕濁して細胞数を計算して培養した。4〜6世代細胞を実験に使用した。バッジは、10%FBS、1%ペニシリン /ストレプトマイシンを含んだ低濃度グルコースDMEMを使用した。
2.2虚血刺激のための刺激物の準備
シロネズミに中脳動脈梗塞を誘発させてから損傷された脳半球組職を150mg/mlの濃度でDMEMバッジとともに粉送した後、10,000gで10分間遠心分離して上清液を取って虚血−脳組織抽出物(ischemic brain extract)を収得した。前記収得した虚血−脳組織抽出物を同量で分注して−70℃で保管した。幹細胞に加える虚血刺激のために、DMEMに20%虚血−脳組織抽出物が含まれるように顕濁して、20%虚血脳組職抽出物または20%虚血血清を含む虚血刺激のための刺激物を準備した。
2.3筋細胞由来微小胞の分離及び分析
前記2.1で準備した骨髓由来中間葉幹細胞を10%FBSを含むDMEMバッジがある60mm培養皿で培養した。培養皿に前記2.2で準備された虚血刺激のための刺激物 (20%虚血脳抽出物または20%虚血血清)を加えた後、培養物から培養上清液を収得した。培養上清液を低速で遠心分離(2,500g、10℃、10分)して前記培養上清液から不純物を除去した後、これを再び高速で遠心分離(14,500g、10℃、45分)して幹細胞から来由された微小胞を収得した。前記収得した各微小胞の数を下記の数式に適用して算出し、前記各微小胞で現われるCD105とアネキシンV発現程度をフローサイトメトリー(flow cytometry)を利用して分析した。
微小胞の数(n/L)=N x (全体微小胞懸濁液の量/抗体反応に使用した微小胞の量) x (フローサイトメトリー分析用微小胞希釈液の全体量/フローサイトメトリーの分析に使用した量) x (10/全体血清の量)
CD105とアネキシンVの発現程度は、微小胞が中間葉幹細胞から来由されたかを確認するための標識子として使われた。対照群では、ノックアウト(knockout)DMEMまたはスタウロスポリンA(staurosporin A)を処理した骨髓由来中間葉幹細胞から収得した微小胞を使用した。前記実験結果を図3に示した。
図3に示したように、対照群であるKn DEME(ノックアウトDEME)、STS 100nM(スタウロスポリンA)処理群及び20%虚血血清処理群(20%Serum)は、骨髓由来中間葉幹細胞から収得した微小胞の量が増加しなかったが、虚血脳組職抽出物を処理した処理群(20%BE(Whole))は、微小胞の量が大きく増加することが確認できた。したがって、微小胞の分泌量を増加させるためには虚血脳組職抽出物を使用することが好ましいことを確認した。
2.4筋細胞来由微小胞の安全性検査
虚血前処理を通じて得た微小胞を培養中の神経細胞に処理する場合、これによって細胞死が誘発されるかを確認した。虚血前処理を通じて得た微小胞(1、3、10、30μg/ml)あるいは30μlNMDA(良性対照群)を神経細胞培養に処理した後、24時間後にLDH分析を通じて神経細胞死が起きたかを確認した。前記実験結果を図4に示した。
図4に示したように、預血前処理を通じて得た微小胞は、神経細胞死を起こさなかったが、NMDAを処理した群では、60%以上神経細胞死が起きることを確認した。したがって、虚血前処理を通じて得た微小胞は、神経幹細胞死を誘発しなくて安全性が認められる物質であることが分かる。
【0019】
本発明の用語「神経損傷」とは、物理的要因または退行性神経疾患により神経が損傷される症状を意味する。前記物理的要因による神経損傷は、特別にその種類に限定されるものではないが、脳外傷、脊髓損傷、脳梗塞、脳出血、神経外傷などを挙げることがあり、前記退行性神経疾患による神経損傷は、特別にその種類に限定されるものではないが、虚血性脳卒中、脳梗塞、神経外傷、パーキンソン病、アルツハイマールーゲーリック病及び癲癇などの退行性神経疾患による神経損傷などを挙げることができる。
前記ヒトを除外した個体は、これに限定されるものではないが、好ましくは、ラット、アカギツネ、スカンク、狸、ムジナ、犬、オオカミ、マングース、コヨーテ、フェレット、犬及び猫である。
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