(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872047
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】自動車の可動部品の電動移動を行うための駆動システム
(51)【国際特許分類】
H02P 3/14 20060101AFI20160216BHJP
H02P 7/29 20160101ALI20160216BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20160216BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20160216BHJP
E05F 15/603 20150101ALI20160216BHJP
【FI】
H02P3/14 C
H02P3/14 E
H02P7/29 G
B60J5/04 C
B60J5/10 K
E05F15/603
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-528883(P2014-528883)
(86)(22)【出願日】2012年8月24日
(65)【公表番号】特表2014-531885(P2014-531885A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】EP2012003579
(87)【国際公開番号】WO2013034253
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2014年4月4日
(31)【優先権主張番号】102011112273.0
(32)【優先日】2011年9月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508072408
【氏名又は名称】ブローゼ ファールツォイクタイレ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニ コマンディートゲゼルシャフト ハルシュタット
【氏名又は名称原語表記】Brose Fahrzeugteile GmbH & Co. KG, Hallstadt
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】トーニ ナーグラー
【審査官】
宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−172704(JP,A)
【文献】
特開平06−030572(JP,A)
【文献】
特開2005−098065(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/083999(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 1/00−31/00
B60J 5/04
B60J 5/10
E05F 15/603
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の可動部品(1)を電動移動させるための駆動システムであって、
駆動モータ(3)を有する少なくとも1つの駆動装置(2)と、
前記駆動装置(2)に対して設けられており、かつ、給電電圧(UV)を有する給電部(V)に接続された駆動装置制御部(5)と
が設けられており、
前記駆動装置(2)は、前記可動部品(1)の非電動移動時には前記駆動モータ(3)はジェネレータとして動作してジェネレータ電圧(UG)を生成し、
前記駆動装置制御部(5)は、前記少なくとも1つの駆動装置(2)に駆動電力を供給するためのドライバユニット(6)を有し、
前記駆動装置制御部(5)は、
前記給電電圧(UV)を前記ドライバユニット(6)に導通させるためのスイッチングユニット(7)と、
前記可動部品(1)の非電動移動を検出するための検出装置(8)と
を有し、
前記駆動装置制御部(5)は、前記可動部品(1)の所定の非電動移動を検出した場合、前記スイッチングユニット(7)によるスイッチング過程で前記給電電圧(UV)を前記ドライバユニット(6)の給電端子(9,10)に導通させることにより、前記駆動モータ(3)は前記給電部(V)に対してジェネレータとして動作し、それにより制動し、
前記駆動装置制御部(5)は、前記給電電圧(UV)の極性に関する逆極性接続保護部(VS)を有し、
前記スイッチングユニット(7)は前記逆極性接続保護部(VS)の一部であり、
前記給電電圧(UV)の極性が誤っている場合、前記スイッチングユニット(7)は当該給電電圧(UV)を前記ドライバユニット(6)から分離するか、または分離した状態に維持する
ことを特徴とする駆動システム。
【請求項2】
前記駆動モータ(3)のジェネレータ電圧(UG)は、前記ドライバユニット(6)を介して、当該ドライバユニット(6)の給電端子(9,10)に印加されることにより、前記給電電圧(UV)の導通時に前記駆動モータ(3)は前記給電部(V)に対してジェネレータとして動作し、それにより制動する、
請求項1記載の駆動システム。
【請求項3】
前記駆動装置制御部(5)は静止動作時には必ず、前記スイッチングユニット(7)によって前記給電電圧(UV)を前記ドライバユニット(6)から分離する、
請求項1または2記載の駆動システム。
【請求項4】
前記駆動装置制御部(5)は、前記ドライバユニット(6)を駆動制御するための制御ユニット(13)を有する、
請求項1から3までのいずれか1項記載の駆動システム。
【請求項5】
前記駆動装置制御部(5)、とりわけ制御ユニット(13)は、前記可動部品(1)を電動移動させる動作モードと、省電流のスタンバイモードとに移行可能であり、
前記動作モードでは、前記給電電圧(UV)は前記スイッチングユニット(7)によって前記ドライバユニット(6)の給電端子(9,10)に導通され、
前記スタンバイモードでは、前記給電電圧(UV)は前記ドライバユニット(6)から分離される、
請求項1から4までのいずれか1項記載の駆動システム。
【請求項6】
前記逆極性接続保護部(VS)の一部が制御ユニット(13)であり、
前記給電電圧(UV)の極性が誤っている場合、前記制御ユニット(13)は前記スイッチングユニット(7)によって当該給電電圧(UV)を前記ドライバユニット(6)から分離するか、または分離された状態に維持する、
請求項1から5までのいずれか1項記載の駆動システム。
【請求項7】
前記スイッチングユニット(7)は、制御ユニット(13)によりオン制御されない限り、前記給電電圧(UV)を常に前記ドライバユニット(6)から分離する、
請求項1から6までのいずれか1項記載の駆動システム。
【請求項8】
前記検出装置(8)によって、前記可動部品(1)の非電動移動の移動速度が検出され、スイッチング閾値を超えた場合に初めて、前記駆動装置制御部(5)は前記給電電圧(UV)を前記ドライバユニット(6)の給電端子(9,10)に導通させる、
請求項1から7までのいずれか1項記載の駆動システム。
【請求項9】
限界給電電圧UVを超えることによりトリガされる過電圧保護部(US)が、前記駆動装置制御部(5)に備えられており、
さらに、前記可動部品(1)の非電動移動が行われ、かつ、ジェネレータ限界電圧UGを超えることにより、更に前記過電圧保護部(US)もトリガされるように構成されている、
請求項1から8までのいずれか1項記載の駆動システム。
【請求項10】
前記過電圧保護部(US)はトリガされた状態では、前記駆動モータ(3)の両端子(11,12)を相互に電気的に接続し、とりわけ短絡させることにより、当該駆動モータ(3)を制動させる、
請求項9記載の駆動システム。
【請求項11】
前記給電電圧(UV)が分離されているときに移動速度が、スイッチング移動速度を上回る限界移動速度より高い場合にのみ、前記過電圧保護部(US)は前記可動部品(1)の非電動移動によってトリガされるように構成されている、
請求項9または10記載の駆動システム。
【請求項12】
前記ドライバユニット(6)は、前記駆動モータ(3)を駆動制御するためのHブリッジ回路(15)を有し、
前記Hブリッジ回路(15)は、2つのローサイドスイッチ(16,17)と2つのハイサイドスイッチ(18,19)とを有する、
請求項1から11までのいずれか1項記載の駆動システム。
【請求項13】
前記Hブリッジ回路(15)は、前記ローサイドスイッチ(16,17)のうち1つと前記ハイサイドスイッチ(18,19)のうち1つとをそれぞれ有する2つのハーフブリッジ(15a,15b)を有する、
請求項12記載の駆動システム。
【請求項14】
前記ローサイドスイッチ(16,17)および前記ハイサイドスイッチ(18,19)はMOSFETとして構成されており、
前記Hブリッジ回路(15)の一方のハーフブリッジ(15a,15b)のハイサイドスイッチ(18,19)のボディダイオード(21)と、他方のハーフブリッジ(15a,15b)のローサイドスイッチ(16,17)のボディダイオード(21)とを介して、前記ジェネレータ電圧(UG)は少なくとも一部が、当該Hブリッジ回路(15)の給電端子(9,10)に印加されるように構成されている、
請求項12記載の駆動システム。
【請求項15】
前記駆動装置(2)は2つ設けられており、
前記駆動装置制御部(5)は、各駆動装置(2)の駆動モータ(3)を駆動制御するためにそれぞれドライバユニット(6)を、とりわけHブリッジ回路(15)を有し、
両ドライバユニット(6)の各対応する給電端子(9,10)が、とりわけ両Hブリッジ回路(15)の各対応する給電端子(9,10)が相互に接続されており、
前記スイッチングユニット(7)によって前記給電電圧(UV)は両ドライバユニット(6)の給電端子(9,10)に、とりわけ両Hブリッジ回路の給電端子(9,10)に導通されるように構成されている、
請求項1から14までのいずれか1項記載の駆動システム。
【請求項16】
前記可動部品(1)は、リアゲート、リアリッド、エンジンフード、または前記自動車のドア、とりわけサイドドアであるか、または前記自動車の荷室床板である、
請求項1から15までのいずれか1項記載の駆動システム。
【請求項17】
前記給電電圧(UV)の極性が誤っている場合、前記制御ユニット(13)は前記スイッチングユニット(7)をオン制御しない、
請求項1から16までのいずれか1項記載の駆動システム。
【請求項18】
前記スイッチングユニット(7)は分離スイッチング位置になるように機械的に付勢されている、
請求項1から17までのいずれか1項記載の駆動システム。
【請求項19】
とりわけリアゲート(1)である可動部品(1)と、
請求項1から18までのいずれか1項記載の、前記可動部品(1)を電動移動させるための駆動システムと
を有する、自動車の可動部品システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の、自動車の可動部品の電動移動を行うための駆動システムと、請求項15に記載の自動車の可動装置システムとに関する。
【0002】
本発明では、「可動部品」とは広い意味を持っており、この用語には、リアゲート、リアリッド、エンジンフード、特にサイドドア等である自動車のドア、荷室床板等が含まれる。
【0003】
しかし、ここで取り上げる駆動システムは、主に自動車のリアゲートやサイドドアに用いられ、可動部品を開閉方向に電動移動するのに用いられる。ここで常に重要になるのは、駆動システムによって電動移動モードの他に手動移動モードも行えることである。手動移動モードは特に非常時に、たとえば衝突時や配電故障時に重要となる。
【0004】
公知の駆動システム(DE202005007155U1)はリアゲートに対応して設置され、この駆動システムには2つのスピンドル駆動装置が備えつけられており、各スピンドル駆動装置はそれぞれ1つのコンパクトなユニットで、駆動モータと、クラッチを備えた中間ギアと、スピンドル‐スピンドルナットギアとを有する。各ユニットには、両ユニットが設けられたリアゲートの重力に抗するばね装置が設けられている。この駆動システムはさらに、両駆動装置を駆動制御するための、特に両駆動モータを駆動制御するための駆動装置制御部を有する。両駆動装置は自己保持形でないので、簡単に手動モードを実現することができる。
【0005】
上述の駆動システムにより、相当の大きさのサイズおよび/または相当の高重量のリアゲートを電動移動することができ、このことが可能になることにより、リアゲートの構成の自由度が増える。しかし基本的には、重量が増大するほど、駆動装置部品の不具合時のリスクも高くなり、たとえば、上述のばね装置の破損時には、リアゲートが制動されることなく重力によって閉扉方向に落ちないようにしなければならない。
【0006】
本発明の背景技術である公知の駆動システム(WO2010/083999A1)では、可動部品の移動を電動式で行わないときに移動速度が通常動作時の速度を上回る場合、駆動装置を短絡モードで制動するために、当該駆動システムの過電圧保護装置を用いる。この駆動システムでは、駆動装置に駆動電力を供給するドライバユニットが駆動装置制御部に備えられており、このドライバユニットは通常のHブリッジ回路を有する。
【0007】
この公知の駆動システムでは、非電動式の移動時には駆動モータがジェネレータとして動作してジェネレータ電圧を生成し、このジェネレータ電圧によって駆動装置制御部の過電圧保護装置がトリガすることを利用している。ここで過電圧保護装置がトリガすることにより各駆動モータが短絡し、この短絡によって各駆動モータが制動する。
【0008】
この公知の駆動システムの利点は、非常時に簡単な手段を用いて、駆動装置が迅速かつ強く制動されることを保証でき、ひいては高い動作確実性を保証できることである。しかし、快適性の上昇としてユーザが感じられるような適度な制動が望ましいケースも数多くある。
【0009】
本発明の課題は、動作確実性を変えずにユーザに対する快適性を向上できるように、上述の公知の駆動システムを構成および発展させることである。
【0010】
請求項1の上位概念に記載の駆動システムでは、上述の課題は、請求項1の特徴部分に記載の構成により解決される。
【0011】
ここで重要なのは、駆動モータが制動するために単に短絡するだけでなく、給電部に対してジェネレータとして動作することにより、各駆動モータの制動を適度にできるという基本的な事実認識である。ここで給電部とは、通常は車両バッテリーである。
【0012】
具体的には駆動装置制御部は、給電電圧をドライバユニットに導通するためのスイッチングユニットと、前記可動部品の非電動移動を検出するための検出ユニットとを有し、前記駆動装置制御部は、当該可動部品の所定の非電動移動を検出すると、前記スイッチングユニットによるスイッチング過程で、前記給電電圧を前記ドライバユニットの給電端子に導通することにより、駆動モータが上述のように前記給電部に対するジェネレータとして動作し、これにより制動するようにする。
【0013】
本発明のこのような解決手段により、謂わば、ジェネレータとして動作する駆動モータにより給電部への給電が行われ、これによって必ず、駆動モータを単に短絡させる場合よりも、駆動モータに及ぼされる制動作用が小さくなる。さらに、上述のように駆動モータを短絡させる、駆動装置制御部の過電圧保護がトリガするほど大きなジェネレータ電圧が生じる確率も低くなる。
【0014】
請求項6にて特定した特に有利な実施形態では、駆動装置制御部の逆極性接続保護部を、とりわけ当該逆極性接続保護部に配属されたスイッチングユニットを用いて、所定の非電動移動が生じた場合に給電電圧をドライバユニットに導通させて上述の制動を引き起こすようにする。必ず設置されている逆極性接続保護部をこのように2つの用途に用いることにより、特に簡単に実現することが可能になる。
【0015】
請求項10にて特定したさらに有利な実施形態では、前記逆極性接続保護部の他にさらに、ジェネレータ限界電圧を超えるとトリガして駆動モータを短絡モードで制動させる過電圧保護部も設けられる。このような構成は、非電動作動が極度に高速である場合に有利であり、特に、給電電圧の上述の導通にある程度の応答時間がかかる場合に有利である。この場合に有利なのは、スイッチングユニットによって上述のように給電電圧が導通されるまで、前記過電圧保護部が適切な短絡制動により短時間応答することである。このことにより、可動部品の非電動移動が極度に高速で行われる場合の動作確実性を向上させることができる。
【0016】
独立請求項である請求項15に係る別の発明では、上記課題は同項にて特定した可動装置システムにより解決される。
【0017】
本発明の可動装置システムには、自動車の可動部品と、当該可動部品を電動移動させるための本発明の駆動システムとが備えつけられており、前記可動部品はとりわけリアゲートである。この別の発明の詳細については、駆動システムに関するすべての記載事項を参照することができる。
【0018】
以下、単に一実施例を示しているだけの図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】リアゲートと、当該リアゲートを電動移動するための本発明の駆動システムとを備えた自動車の後部を示す側面図である。
【
図2】
図1の駆動システムの2つの駆動装置のうち1つの断面を示す図である。
【
図3】
図2の駆動装置を制御するための、駆動装置制御部の制御ユニットおよびドライバユニットを概略的に示す図である。
【
図4】
図3に示したHブリッジ回路のハーフブリッジモジュールのブロック回路図である。
【0020】
図1に示した駆動システムは、自動車のリアゲート1の電動移動に用いられるが、有利には、本願明細書の冒頭部分にて挙げた他のすべての可動部材を使用することができる。よって、以下のリアゲートに関する記載事項はすべて、本願明細書の冒頭部分にて挙げた他の可動部材すべてにも当てはまる。
【0021】
図1に示した駆動システムには2つの同一の駆動装置2が設けられており、これらの駆動装置2はそれぞれ駆動モータ3を有している。両駆動装置2は、リアゲート開口部4の両側の側方領域に配置されている。
図1には、両駆動装置2のうち1つのみを示す。
図2は、この1つの駆動装置2の断面図である。以下の記載は、
図1に示したように1つの駆動装置2のみが設けられた場合に関するものであるが、更に他に駆動装置を設ける場合には、この記載はこの他の駆動装置にも当てはまる。
【0022】
駆動モータ3は有利には直流モータである。しかし、ここで交流モータを用いることも可能である。
【0023】
前記駆動システムにはさらに、駆動装置2に配属する駆動装置制御部5が備えられており、この駆動装置制御部5は通常、給電電圧U
Vを有する給電部Vに接続されている。「給電部」とは、本願では広い意味で、車載電気網に給電電圧U
Vを供給する装置を指す。これは通常は車両バッテリーであり、このバッテリーは
図3において概略的にのみ示されている。また、給電部Vが電圧安定化および/または電圧平滑化のための回路部品を有することも可能である。給電電圧U
Vはここでは、給電電位V
0と接地電位V
Gndとの電位差によって生じる。
【0024】
ここでは駆動装置制御部5は両駆動装置2に対して設けられており、こうするのが有利であるが、各駆動装置2にそれぞれ専用の駆動装置制御部5を設けることも可能である。
【0025】
本発明の駆動システムにより、比較的複雑でない構造で、リアゲート1の手動移動を行うことができる。というのも、駆動装置2は自己保持形でないからである。すなわち、リアゲート1を電動式でなく、特に手動で、ばね力により、または重力により移動させると、駆動モータ3が一緒に回転してジェネレータとして動作するということである。その際には駆動モータ3は、対応するジェネレータ電圧U
Gを生成する。
【0026】
駆動装置制御部5は、駆動装置2に駆動電力を供給するためのドライバユニット6を有する。ドライバユニット6の構成については、従来技術から種々の実施形態が知られている。ここで有利な1つの実施形態は、ドライバユニット6にHブリッジ回路を設けた構成であり、このHブリッジ回路については下記にて説明する。
【0027】
図3には、駆動装置制御部5がドライバユニット6の給電端子9,10に給電電圧U
Vを導通させるためのスイッチングユニット7を有する構成が示されている。このスイッチングユニット7は有利には逆極性接続保護部VSの一部であり、このことについては下記にて詳しく説明する。
【0028】
ここで「給電電圧を導通する」との記載は広い意味を有し、給電電位V
0をドライバユニット6の給電端子9,10に導通させることも、また、接地電位V
Gndをドライバユニット6の給電端子9,10に導通させることも意味する。多くの適用例では有利には、給電電位V
0と接地電位V
Gndとの双方を導通させる。図中の実施例はその点で有利であり、この実施例では、
図3に示されているように、もっぱら給電電位V
0のみを導通させる。
【0029】
駆動装置制御部5にはさらに、リアゲート1の非電動移動を検出するための検出装置8も備えつけられている。この検出装置8を実現するための手段は数多く知られている。有利には、駆動装置2にインクリメンタル式のセンサが備えつけられ、その際には駆動装置2はスピンドル駆動装置2であり、前記センサは有利にはホールセンサである。前記センサには、他のどの種類のセンサを用いることも可能である。
【0030】
前記検出装置8をリアゲート1に配属させることにより、駆動装置2の移動を介して間接的にではなく、リアゲートの移動を直接検出するように構成することも可能である。
【0031】
ドライバユニット6が駆動制御されていない状態で検出装置8によりリアゲート1の移動が検出された場合、駆動装置制御部5では必ず、リアゲートの非電動移動が行われたということになる。
【0032】
ここで重要なのは、リアゲート1の所定の非電動移動が検出された場合、駆動装置制御部5がスイッチングユニット7を用いたスイッチング過程で給電電圧U
Vをドライバユニット6の給電電圧9,10に導通させることにより、駆動モータ3が給電部Vに対してジェネレータとして機能し、これにより制動することである。
【0033】
「可動部品の所定の電動移動」との記載はここでは、可動部品1の非電動移動が検出されるたびに本発明のスイッチング過程が必ず行われることを意味するものではない。むしろ有利には、スイッチング移動速度を超えたときに初めて前記スイッチング過程を行う。このことについては、下記にて詳細に説明する。
【0034】
本発明の解決手段において興味深いのは、可動部品1の所定の非電動移動が行われるときに、謂わば、ジェネレータとして動作する駆動モータ3から充電電流が負荷Vへ送られることである。給電電圧U
Vが0でない場合、この充電電流は必ず、モータ端子11,12の短絡時に生じる短絡電流より小さくなるので、これにより生じる制動作用は、短絡制動による制動作用より小さくなる。
【0035】
図中の特に有利な実施例では、ドライバユニット6を介して当該ドライバユニット6の給電端子9,10に駆動モータ3のジェネレータ電圧U
Gがかかり、これにより、給電電圧U
Vが上述のように導通されている場合には駆動モータ3は給電部Vに対してジェネレータとして動作し、これにより制動する。給電電圧U
Vを給電端子9,10に導通させるためには、
図3に示したスイッチングユニット7を閉成するだけで十分である。
【0036】
ドライバユニット6を介して当該ドライバユニット6の給電端子9,10に駆動モータ3のジェネレータ電圧U
Gが具体的にどのようにかかるかについては、以下、Hブリッジ回路を有するドライバユニット6の構成を参照して詳細に説明する。
【0037】
とりわけ静止動作時の損失を可能な限り低減させるために有利なのは、駆動装置制御部5が静止動作時に必ず、スイッチングユニット7によってドライバユニット6から給電電圧U
Vを分離するように構成することである。その後に、電動移動を行う場合、または、可動部品1の上記の所定の非電動移動が検出された場合、給電電圧U
Vをドライバユニット6に導通させる。
【0038】
ドライバユニット6を駆動制御するために有利なのは、駆動装置制御部5に制御ユニット13を備えつけることである。この制御ユニット13は有利には、所定の移動推移を実施する閉ループ制御機能も果たす。ここでは、この制御ユニット13はさらに、スイッチングユニット7の制御も行う。こうするために制御ユニット13は、制御線路13a,13bを介してドライバユニット6に接続されており、制御線路13cを介してスイッチングユニット7に接続されており、かつ、制御線路13dを介して検出装置8に接続されている。
【0039】
通常、前記制御ユニット13は、駆動システムの領域に末端設置されたマイクロコントローラである。しかし、制御ユニット13を自動車中央コントローラの構成要素とすることも可能である。
【0040】
動作電流を削減するためには、駆動装置制御部5を、ここでは制御ユニット13を、リアゲート1を電動移動させる動作モードにするだけでなく、省電流スタンバイモードにすることも可能である。ここでは、制御ユニット13を省電流スタンバイモードにするのが有利である。このスタンバイモードでは通常、制御ユニット13のうち、当該制御ユニット13を後で起動させるために必要な部分、すなわち、当該制御ユニット13を動作モードに移行させるのに必要な部分のみを起動させておく。制御ユニット13は有利には、制御線路13eを介して当該制御ユニット13に接続された作動装置14を介してのユーザ作動により起動される。このような作動装置14は、リアゲート1に設置されたキー等とすることができる。
【0041】
有利には、作動モード時には給電電圧U
Vがスイッチングユニット7によりドライバユニット6の給電端子9,10に導通され、スタンバイモード時には給電電圧U
Vがドライバユニット6から分離されるように構成する。この構成は、逆極性接続保護部VSの実現に関しても特に有利である。つまり、特に有利な実施形態では給電電圧U
Vの接続極の正否の点で、駆動装置制御部5に逆極性接続保護部VSが設けられている。その際に有利なのは、前記スイッチングユニット7を逆極性接続保護部VSの構成要素とすることである。逆極性接続保護部VSの機能は、給電電圧U
Vの極性が誤っている場合にスイッチングユニット7が当該給電電圧U
Vをドライバユニット6から分離するか、または分離した状態のままに維持することである。
【0042】
ここでは、制御ユニット13は逆極性接続保護部VSの構成要素であり、このような構成が有利である。その際には、給電電圧U
Vの極性が誤っている場合に制御ユニット13がスイッチングユニット7によって当該給電電圧U
Vをドライバユニット6から分離するか、または分離した状態に維持するように構成する。
【0043】
具体的には前記システムは、スイッチングユニット7は制御ユニット13によりオン制御されていないときには、給電電圧U
Vを常にドライバユニット6から分離し、かつ有利には、給電電圧U
Vの極性が誤っている場合には制御ユニット13がスイッチングユニット7をオン制御しないように構成されている。特に有利な実施形態では、その際には、スイッチングユニット7は機械的に分離開放位置になるように付勢されている。このような付勢構成は、スイッチングユニット7が電気機械的リレーとして構成されている場合に当てはまる。
【0044】
給電電圧U
Vをドライバユニット6の給電端子9,10に導通させるという本発明の手段は、リアゲート1の所定の非電動移動時にのみ実施すべきであることを既に述べた。その際には、検出装置8によってリアゲート1の非電動移動の移動速度が検出され、スイッチング移動速度を超えた場合に初めて、駆動装置制御部5が給電電圧U
Vをドライバユニット6に導通させるように構成され、このように構成するのが有利である。このような構成により、たとえば通常動作時の手動移動のようにリアゲート1を緩慢に、ひいては危険を伴わずに、制動せずに非電動移動できることを保証することができる。たとえば異常時の速度のような、所定のスイッチング移動速度を超えたときに初めて、制動を行う。
【0045】
特に有利な実施形態では、駆動装置制御部5には、本願明細書の冒頭箇所にて言及した過電圧保護部USも設けられており、この過電圧保護部USは、限界給電電圧U
Vを超えることによりトリガされるように構成されている。その際には、前記システムはさらに、リアゲート1の非電動移動があり、かつ、ジェネレータ限界電圧U
Gを超えることにより、更に過電圧保護部USもトリガされるように構成されている。特に有利な実施形態では、前記過電圧保護部USは、トリガされた状態では、駆動モータ3の両モータ端子11,12を相互に電気的に接続する。この接続によっても駆動モータ3は制動される。ここでは、過電圧保護部USのトリガにより両モータ端子11,12が短絡され、このようにするのが有利である。
【0046】
したがって、リアゲート1の非電動移動時には、駆動モータ3を制動させるために設けられているメカニズムは総じて2つである。その場合に有利なのは、給電電圧U
Vがドライバユニット6から分離されているときに移動速度が、スイッチング移動速度より大きい限界移動速度を超えた場合にのみ、前記過電圧保護部USがリアゲート1の非電動移動によりトリガされるように、前記システムが構成されていることである。このことは、リアゲート1の非電動移動時には、駆動モータ3の制動は基本的にスイッチングユニット7により行われ、給電電圧U
Vが未だ分離されている状態でリアゲート1の極度に高速な非電動移動が生じた場合に、過電圧保護部USをトリガさせるという例外的措置をとることを意味する。したがって過電圧保護部USは、リアゲート1の極度の非電動移動が生じた場合の追加的なセーフティ手段となる。
【0047】
上述の過電圧保護部USの動作と、リアゲート1を制動させるための当該過電圧保護部USの使用方法については、同出願人の国際特許出願公開WO2010/083999A1に記載されており、同文献の記載内容はすべて、本願の開示内容とする。
【0048】
駆動装置制御部5には、
図3および4に示しているように、駆動モータ3を駆動制御するためのHブリッジ回路15が設けられており、このHブリッジ回路15は2つのローサイドスイッチ16,17と2つのハイサイドスイッチ18,19とを有する。Hブリッジ回路15は通常のように、両ローサイドスイッチ16,17のうち1つと両ハイサイドスイッチ18,19のうち1つとをそれぞれ有する2つのハーフブリッジ15a,15bにより構成されている。各1つのハーフブリッジ15a,15bのローサイドスイッチ16,17およびハイサイドスイッチ18,19のスイッチング出力端は直列接続されている。駆動モータ3のモータ端子11,12は、それぞれ直列接続されたスイッチ対16,18;17,19の接点に接続されている。
【0049】
ここでは過電圧保護部USは、トリガされた状態では両ハイサイドスイッチ18,19を導通状態に切り替えて両ローサイドスイッチ16,17を阻止状態にするように構成されており、このような構成が有利である。しかしそれとは逆に、過電圧保護部USがトリガされた状態では両ローサイドスイッチ16,17を導通状態に切り替えて両ハイサイドスイッチ18,19を阻止状態にするように構成も可能である。上述の両ケースではいずれも、駆動モータ3は短絡されて制動モードになる。
【0050】
ローサイドスイッチ16,17およびハイサイドスイッチ18,19の実際の構成については、複数の有利な構成が可能である。ここでは、両スイッチ16,17,18,19はMOSFETとして構成されており、このことが有利である。その際には、ローサイドスイッチ16,17はNチャネルMOSFETであり、ハイサイドスイッチ18,19はPチャネルMOSFETである。各スイッチ16,17,18,19のゲート端子16a,17a,18a,19aは論理ユニット20に接続されており、この論理ユニット20は
図4にのみ示している。
図4については、下記にて詳細に説明する。
【0051】
ここで前記システムは、前記Hブリッジ回路15の一方のハーフブリッジ15a,15bのハイサイドスイッチ18,19のボディダイオード21と他方のハーフブリッジ15a,15bのローサイドスイッチ16,17のボディダイオード21とを介して、ジェネレータ電圧U
Gが少なくとも一部、ドライバユニット6の給電端子9,10に、ここではHブリッジ回路15の給電端子9,10に導通されるように構成されている。
【0052】
ボディダイオード21は、MOSFETスイッチ素子に寄生的に内蔵されているものであり、下記にて詳しく説明する
図4では見やすくするため、ボディダイオード21は個別素子として示されている。スイッチングユニット7により給電電圧U
Vがドライバユニット6の給電端子9,10に導通されている場合、リアゲート1の非電動移動時に、ジェネレータとして動作している駆動モータ3の充電電流がボディダイオード21と当該スイッチングユニット7とを介して負荷Vへ流れ込み、このことにより駆動モータ3の上述の制動が引き起こされる。
図3を見ると、その際にはこのジェネレータ電圧U
Gの一部は必ず給電電圧U
Vに重畳され、このことにより、給電電圧U
Vに必ず変動が短時間生じるのが分かる。しかし、ジェネレータとして動作している駆動モータ3と給電部Vとの間で迅速な電荷相殺が生じるので、給電電圧U
Vのこの変動は許容範囲内に収まる。
【0053】
Hブリッジ回路15の両ハーフブリッジ15a,15bをそれぞれ集積ハーフブリッジモジュールとして構成し、両ハーフブリッジモジュールにそれぞれ別個の過電圧保護部USを備えつけた構成により、標準的部品を用いて本発明の駆動システム5を低コストで実用化することができる。「集積」とはここでは、各ハーフブリッジモジュールが集積回路であることを意味する。
図4に、上述の構成のハーフブリッジモジュールの基本的構成を示す。
【0054】
図4に示したハーフブリッジモジュールには、ローサイドスイッチ16およびハイサイドスイッチ18を制御するための論理ユニット20が設けられている。この構成では、両ハーフブリッジモジュールの過電圧保護部USはそれぞれ、論理ユニット20に接続された検出ユニット22を有し、この検出ユニット22は、給電電圧U
Vが限界給電電圧を超えたか否かを検出するように構成されている。
【0055】
駆動システムが有利には2つの駆動装置2を有し、駆動装置制御部5が各駆動装置2の駆動モータ3を駆動制御するためにそれぞれドライバユニット6を有し、両ドライバユニット6の各対応する給電端子9,10が相互に接続されており、スイッチングユニット7によって給電電圧U
Vが両ドライバユニット6の給電電圧9,10に導通されること、前記両ドライバユニット6はここではHブリッジ回路15であり、そうするのが有利であることは、既に述べた通りである。
【0056】
本発明の解決手段は、リアリッド、エンジンフード、または自動車のドア、特にサイドドアであるか、または自動車の荷室床板である。
【0057】
本願の独立項にて特定した別の発明は、特にリアゲート1である可動部材1と、当該可動部材1を電動移動させるための本発明の上述の駆動システムとを備えた、自動車の可動部品システムを対象とする。ここでは、本発明の駆動システムについての上述の記載事項すべてを参照することができる。