(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の導電性薄膜は、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、グラフェン及び亜鉛(Zn)のうち一つ以上の材質を含んで形成されることを特徴とする、請求項1に記載の透明導電性フィルム。
前記第1の導電性薄膜及び前記第3の導電性薄膜は、透明伝導性酸化物で形成され、前記透明伝導性酸化物は、インジウムスズ酸化物(ITO)またはフッ素がドーピングされたスズ酸化物(FTO)であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の透明導電性フィルム。
前記透明導電性フィルムは、前記第1の導電性薄膜、前記第2の導電性薄膜及び前記第3の導電性薄膜の合算厚さが20nm〜100nmであることを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の透明導電性フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の利点及び特徴、そして、それらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述している実施例を参照すれば明確になるだろう。しかし、本発明は、以下で開示する実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に具現可能である。但し、本実施例は、本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであって、本発明は、請求項の範疇によって定義されるものに過ぎない。明細書全体にわたって同一の参照符号は、同一の構成要素を称する。
【0014】
以下では、添付の図面を参照して本発明に係る透明導電性フィルム及びこれを用いたタッチパネルについて説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施例に係る透明導電性フィルムを示した断面図である。
【0016】
図1を参照すると、本発明の一実施例に係る透明導電性フィルム100は、フィルム基材101、フィルム基材101上に順次積層された第1の誘電体薄膜102、第2の誘電体薄膜103、第1の導電性薄膜104、第2の導電性薄膜105及び第3の導電性薄膜106を含むことができる。
【0017】
フィルム基材101は、第1の誘電体薄膜102または第1の導電性薄膜104の形成面を提供し、透明導電性フィルム100に機械的強度を提供するためのものであって、ガラスや透明高分子フィルムなどの透明性を有する基材であり得る。例えば、透明高分子フィルムとしては、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエポキシ系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系及びセルロース系などからなる群より選ばれたプラスチックフィルムを使用することができる。
【0018】
透明高分子フィルムからなるフィルム基材101は、表面平坦性と耐熱性を備えるために、透明高分子フィルムにプライマーコーティング処理をした後、ハードコーティング処理をしたものであり得る。
【0019】
フィルム基材101の厚さは、機械的強度などを考慮すると、20μm〜1000μm程度であることが好ましい。フィルム基材101の厚さが20μm未満であると、機械的
強度が不足し、第1及び第2の誘電体膜102、103と第1ないし第3の導電性薄膜104、105、106を連続的に形成する操作が難しくなり得る。その一方、フィルム基材101の厚さが1000μmを超えると、タッチパネルなどに適用されたとき、打点特性などが悪く、透過率を低下させるという問題がある。
【0020】
第1の誘電体薄膜102及び第2の誘電体薄膜103は、第1ないし第3の導電性薄膜104、105、106の下地薄膜であって、透明導電性フィルム100の透明性、耐擦傷性、耐屈曲性及び耐久性などの特性を向上させるために形成することができる。
【0021】
例えば、第1の誘電体薄膜102及び第2の誘電体薄膜103は、NaF(1.3)、Na
3AlF
6(1.35)、LiF(1.36)、MgF
2(1.38)、CaF
2(1.4)、BaF
2(1.3)、BaF
2(1.3)、SiO
2(1.46)、LaF
3(1.55)、CeF(1.63)、Al
2O
3(1.63)などの無機物(括弧内の数値は光の屈折率を示す)や、光の屈折率が1.4〜1.6程度であるアクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマーなどの有機物や、前記無機物と前記有機物との混合物で形成することができる。
【0022】
前記材料のうち第1の誘電体薄膜102の材料は、有機物であるか、または有機物と無機物との混合物であることが好ましい。特に、有機物としては、メラミン樹脂、アルキド樹脂及び有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用することが好ましい。
【0023】
また、第2の誘電体薄膜103の材料は、無機物であるか、または有機物と無機物との混合物であることが好ましい。特に、無機物としては、SiO
2、MgF
2、Al
2O
3などを好ましく使用することができる。
【0024】
第1の誘電体薄膜102は、10nm〜25nmの厚さ、好ましくは13nm〜20nmの厚さに形成することができる。第2の誘電体薄膜103は、15nm〜100nmの厚さ、好ましくは20nm〜60nmの厚さに形成することができる。第1及び第2の誘電体薄膜102、103の各厚さを前記の範囲にすることによって、透明性、耐擦傷性、耐屈曲性などの特性を両立させやすい。
【0025】
第1の誘電体薄膜102及び第2の誘電体薄膜103は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、塗工法などによって形成することができる。
【0026】
前記透明導電性フィルム100は、第1及び第2の誘電体薄膜102、103などの下地薄膜を積層することによって、透明性、耐擦傷性や耐屈曲性が向上するとともに、タッチパネル用としての打点特性の向上に良好な結果を得ることができる。
【0027】
しかし、第1及び第2の誘電体薄膜102、103は、必ず形成すべきものではなく、省略可能である。
【0028】
第1の導電性薄膜104及び第3の導電性薄膜106は、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銅(Cu)などの金属、酸化チタン(TiO
2)、酸
化カドミウム(CdO)などの金属酸化物、ヨウ化銅(CuI)などの金属ハロゲン化物及びインジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)、フッ素がドーピングされたスズ酸化物(Flourine doped tin oxide;FTO)などの透明伝導性酸化物などの公知となっている物質で形成することができる。第1の導電性薄膜104及び第3の導電性薄膜106は、これらから選ばれた1種または2種以上の材質を含んで形成することができる。このとき、第1の導電性薄膜104及び第3の導電性薄膜106は、透明導電性フィルム100内の屈折率変化による光学的特性変化
を最小化するために同一の材質で形成されることが好ましい。
【0029】
また、第1の導電性薄膜104及び第3の導電性薄膜106は、光透過率及び電気的特性を向上させるために、光透過率が85%以上で、表面抵抗が400Ω/square以下であるITO材質で形成することが好ましい。
【0030】
このとき、第3の導電性薄膜106は、第2の導電性薄膜105によって反射される光を補償する役割をする。
【0031】
第2の導電性薄膜105は、透明導電性フィルム100の電気的特性を向上させるためのものであって、第1の導電性薄膜104及び第3の導電性薄膜106のうち一つ以上よりも導電性の高い材質で形成される。
【0032】
例えば、第2の導電性薄膜105は、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、グラフェン、亜鉛(Zn)などから選ばれた一つ以上の材質を含んで形成することができる。
【0033】
このような第2の導電性薄膜105は、光特性に対する影響を最小限に減少させるために、1nm〜10nmの厚さt2に形成することができる。第2の導電性薄膜105の厚さt2が1nm未満である場合は、透明導電性フィルム100に対して目標値の電気的特性の向上を期待することができない。その一方、第2の導電性薄膜105の厚さt2が10nmを超える場合は、透明性を低下させるので、透明導電性フィルム100の光学的特性が低下し得る。
【0034】
好ましくは、第2の導電性薄膜105は、透明導電性フィルム100の透過率及び電気的特性を最適化するために5nmの厚さに形成することができる。
【0035】
透明導電性フィルム100は、第1の導電性薄膜104の厚さをt1、第2の導電性薄膜105の厚さをt2、第3の導電性薄膜106の厚さをt3、これらの合算厚さ(t1+t2+t3)をtと定義すると、tは20nm〜100nmに形成することができる。
【0036】
tが20nm未満である場合は、透明導電性フィルム100の電気的特性を期待することができない。その一方、tが100nmを超える場合は、透明性を低下させるので、透明導電性フィルム100の光学的特性が低下し得る。
【0037】
第1ないし第3の導電性薄膜104、105、106は、当該技術分野でよく知られている通常の導電性薄膜の形成方法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学めっき法、電気めっき法、ウェットコーティング法またはこれらの組み合わせを使用して形成することができる。このうち、特に、導電性薄膜の形成速度や生産性などを考慮すると、第1ないし第3の導電性薄膜104、105、106は、真空蒸着法、スパッタリング法、ウェットコーティング法を使用して形成することが好ましい。
【0038】
このような構造の透明導電性フィルム100は、第1の導電性薄膜104と第3の導電性薄膜106との間にこれらのうち少なくともいずれか一つよりも導電性の高い材質を有する第2の導電性薄膜105の形成により、金属物質による光学的特性の影響は微々たるものであるが、薄い膜での電気的特性はより向上し得る。
【0039】
また、第1の導電性薄膜104及び第3の導電性薄膜106のうち少なくともいずれか一つがITO材質からなる透明導電性フィルム100である場合、第1の導電性薄膜10
4と第3の導電性薄膜106との間に金属材質の第2の導電性薄膜105を挿入することによって、インジウムなどの希金属の使用を減少させる効果を期待することができる。
【0040】
一方、本発明の透明導電性フィルム100は、タッチパネル、特に抵抗膜方式のタッチパネルに好ましく適用することができる。
【0041】
図2は、
図1の透明導電性フィルムを用いた第1の実施例に係るタッチパネルを示した断面図で、
図3は、
図1の透明導電性フィルムを用いた第2の実施例に係るタッチパネルを示した断面図で、
図4は、
図1の透明導電性フィルムを用いた第3の実施例に係るタッチパネルを示した断面図である。説明の便宜上、
図1の透明導電性フィルムを第1の透明導電性フィルムと混用して言及する。
【0042】
図2を参照すると、タッチパネル200は、第1の透明導電性フィルム100を有する第1のパネル板P1と、第1のパネル板P1と対向し、第2の透明導電性フィルム100aを有する第2のパネル板P2と、これら二つの第1及び第2の透明導電性フィルム100、100aの間に配置されたスペーサー130とを含む。
【0043】
第1の透明導電性フィルム100は、粘着剤層(図示せず)によって第1の透明基体110と接合し得る。第2の透明導電性フィルム100aは、第2の透明基体120上に形成することができる。
【0044】
第1の透明導電性フィルム100と第2の透明導電性フィルム100aは互いに直交し、ラインタイプに形成することができる。第1及び第2の透明基体110、120は、プラスチックフィルムまたはガラスなどの材質で形成することができる。第2の透明導電性フィルム100aは、通常の透明導電性フィルムであり得る。
【0045】
すなわち、タッチパネル200は、第1または第2の透明導電性フィルム100、100aを有する一対の第1及び第2のパネル板P1、P2を、互いに直交するように形成した第1及び第2の透明導電性フィルム100、100a同士が対向するようにスペーサー130を挟んで対向配置してなる。
【0046】
前記タッチパネル200は、加圧する上側の第1のパネル板P1に
図1の透明導電性フィルム100を使用したものである。このタッチパネル200は、指やペンなどで上側の第1のパネル板P1を加圧・打点すると、第1及び第2の透明導電性フィルム100、100aが接触して通電することによって電気回路がオン状態になり、加圧を解除すると、元のオフ状態に戻る透明スイッチ横体として機能する。このとき、第1のパネル板P1が本発明の電気的特性に優れた透明導電性フィルム100を採用するので、電気的特性がより向上したタッチパネル200を具現することができる。
【0047】
一方、
図2のタッチパネル200は、上部の第1のパネル板P1のみに本発明の透明導電性フィルム100を採用するが、これに限定されることはない。
【0048】
これと異なって、
図3に示したように、タッチパネル300は、下部の第2のパネル板P2のみに本発明の透明導電性フィルム100を採用することができる。また、
図4に示したように、タッチパネル400は、上部の第1のパネル板P1及び下部の第2のパネル板P2の全てに本発明の透明導電性フィルム100を採用することができる。これを除いた
図3及び
図4の内容は
図2の内容と同一であるので、重複する内容は省略する。
【0049】
本発明の第1ないし第3の実施例に係るタッチパネル200、300、400は、液晶表示装置(Liquid Crystal Display;LCD)、プラズマ表示パ
ネル(Plasma Display Panel;PDP)、発光ダイオード(Light Emitting Diode;LED)、有機発光ダイオード(Organic
Light Emitting Diodes;OLED)または電子紙(E−Paper)などのディスプレイ装置に装着して使用することができる。
【0050】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して記載し、これについてより具体的に説明する。
【0051】
透明導電性フィルムの電気的特性は、熱処理前後のキャリア濃度、移動度及び抵抗を測定して評価した。また、透明導電性フィルムの光学的特性は、透過率及び反射率などを測定して評価した。
【実施例】
【0052】
実施例1
125μm厚のポリエチルレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという)からなる透明なフィルム基材の一面上にDCスパッタリング法を用いて10nm厚の下部ITO薄膜、5nm厚のSn薄膜及び10nm厚の上部ITO薄膜を順次形成して透明導電性フィルムの試片を製作した。その後、150℃の温度で60分間透明導電性フィルムの試片を熱処理した。
【0053】
実施例2
上側からITO薄膜20nm、Sn薄膜5nm、ITO薄膜20nmを形成したことを除いては、残りの構成は実施例1と同一である。
【0054】
実施例3
上側からITO薄膜10nm、Sn薄膜10nm、ITO薄膜10nmを形成したことを除いては、残りの構成は実施例1と同一である。
【0055】
実施例4
上側からAu薄膜10nm、Sn薄膜10nm、Au薄膜10nmを形成したことを除いては、残りの構成は実施例1と同一である。
【0056】
実施例5
上側からAu薄膜20nm、グラフェン薄膜5nm、Cu薄膜20nmを形成したことを除いては、残りの構成は実施例1と同一である。
【0057】
比較例1
下部ITO薄膜を20nmの厚さに形成し、Sn薄膜及び上部ITO薄膜を形成しないことを除いては、実施例1と同一である。
【0058】
比較例2
下部ITO薄膜を15nmの厚さに形成し、上部ITO薄膜を形成しないことを除いては、実施例1と同一である。
【0059】
比較例3
下部ITO薄膜を20nmの厚さに形成し、上部ITO薄膜を形成しないことを除いては、実施例1と同一である。
【0060】
<透明導電性フィルムの電気的特性評価>
表1は、実施例1〜5及び比較例1〜3による透明導電性フィルムの電気的特性評価結果を示したものである。
【0061】
【表1】
【0062】
表1を参照すると、実施例3〜4の場合は、相対的に抵抗が低く、実施例1〜2、5の場合は、実施例3〜4に比べて抵抗が少し高かったが、比較例1〜3に比べて抵抗が低かった。
【0063】
すなわち、実施例1〜5の場合、比較例1〜3に比べて低い抵抗を有するので、優れた電気的特性を示すことを確認することができた。
【0064】
前記表において、抵抗は、キャリア濃度と移動度の二つの因子によって示される結果であり、キャリアの濃度が高く、移動度が高い場合、抵抗は低くなる。
【0065】
また、実施例1〜3を通じて、抵抗は、Sn薄膜の厚さに反比例し、それぞれのITO薄膜の厚さに比例することを確認することができた。したがって、相対的に薄い各ITO薄膜間にSn薄膜を厚く挿入すると、電気伝導度の向上を通じて優れた電気的特性を示すことができると判断できる。
【0066】
また、実施例4〜5を通じて、金属のみで層を構成したり、各金属間にグラフェンを挿入して層を構成することによっても、優れた電気的特性を示すことを確認することができた。
【0067】
<透明導電性フィルムの光学的特性評価>
表2は、実施例1〜5及び比較例1〜3の透明導電性フィルムの光学的特性評価結果を示したものである。
【0068】
【表2】
【0069】
ここで、Tは、550nm波長での光透過率を意味し、Y(D65)は、550nm波長での全体の透過率または全体の反射率を意味し、b*は、黄色く見える(yellowish)程度を意味し、Hazeは濁度を意味し、Rは、550nm波長での光反射率を意味する。
【0070】
表2を参照すると、透過率は、実施例1〜2及び比較例1で相対的に高い一方、比較例2では著しく低く、実施例3〜5及び比較例3では、実施例1〜2に比べて少し低い結果を示した。
【0071】
また、b*値は、比較例1で最も低く、実施例1〜2では、実施例3〜4及び比較例2〜3に比べて少し低く、実施例5では最も高い結果を示した。
【0072】
また、濁度は、比較例1、3で相対的に低い一方、実施例4〜5では相対的に高く、実施例1〜3及び比較例2では相対的に中間程度の値を示した。
【0073】
また、反射率は、実施例4〜5及び比較例2で相対的に高い一方、実施例1〜3及び比較例1、3では相対的に低かった。
【0074】
これを通じて、実施例1〜3と比較例1の場合、本発明の透明導電性フィルムに要求される光学的特性に好ましい条件であることを確認することができた。
【0075】
前記の実験結果をまとめると、実施例1〜3の場合、電気的及び光学的側面のいずれにおいても優れた特性を示すことを確認することができた。実施例4〜5の場合、電気的特性に優れる一方、光学的特性は相対的に低下することが分かった。
【0076】
また、比較例1の場合、光学的特性には最も優れるが、電気的特性は非常に低下し、比較例2〜3の場合、光学的及び電気的側面、特に光学的側面で非常に特性が低下することが分かった。
【0077】
以上では、本発明の実施例を中心に説明したが、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する技術者の水準で多様な変更や変形を加えることができる。このような変更と変形は、本発明が提供する技術思想の範囲を逸脱しない限り、本発明に属するものと言える。したがって、本発明の権利範囲は、以下で記載する特許請求の範囲によって判断すべきであろう。