特許第5872072号(P5872072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872072
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】内燃エンジンの排出物制御における改良
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/00 20060101AFI20160216BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20160216BHJP
   B60W 10/11 20120101ALI20160216BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20160216BHJP
   B60W 10/18 20120101ALI20160216BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20160216BHJP
   B60W 10/188 20120101ALI20160216BHJP
   B60W 30/194 20120101ALI20160216BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20160216BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   F02D29/00 D
   B60W10/00 106
   B60W10/00 126
   B60W10/06
   B60W10/11
   B60W10/188
   B60W30/194
   B60T7/12 A
   F16H61/02
【請求項の数】17
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-552624(P2014-552624)
(86)(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公表番号】特表2015-504139(P2015-504139A)
(43)【公表日】2015年2月5日
(86)【国際出願番号】EP2013050856
(87)【国際公開番号】WO2013107825
(87)【国際公開日】20130725
【審査請求日】2014年8月26日
(31)【優先権主張番号】1200936.1
(32)【優先日】2012年1月20日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512308720
【氏名又は名称】ジャガー ランド ローバー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Jaguar Land Rover Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(72)【発明者】
【氏名】ロブ・イェルガー
(72)【発明者】
【氏名】ニック・ウィックス
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・ヘイデン
(72)【発明者】
【氏名】サイモン・ジャービス
【審査官】 立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−203637(JP,A)
【文献】 特開2010−127128(JP,A)
【文献】 特開2000−097076(JP,A)
【文献】 特開2010−090840(JP,A)
【文献】 特開2007−112208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00−29/06
B60T 7/12
B60W 10/00−10/30
B60W 30/00−50/16
F16H 59/00−61/12
F16H 61/16−61/24
F16H 61/66−61/70
F16H 63/40−63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪ブレーキおよびドライブラインを有する車両の内燃エンジンを冷間始動後に制御する方法であって、
車両エンジンを始動させるステップと、
車両エンジンを第1のアイドル速度で回転させるステップと、
車両の車輪ブレーキが作動しているときに、ドライブラインセレクタがニュートラル状態からドライブ状態へ移動したことを検知した場合に、ドライバが車両の走行開始を望むことを示す少なくとも1つの指標が検知されるまで、第1のアイドル速度の継続時間を延長するように、ドライブラインの作動を遅延させるステップと、
ドライブラインを作動させるために、第1のアイドル速度からより低速の第2のアイドル速度にエンジン速度を減速させるステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも1つの指標は、車輪ブレーキが解放されることを含み、
この方法は、車輪ブレーキが解放されたことを判断するために、ブレーキ圧をモニタするステップを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
車両姿勢を検知するステップと、
動かないように車両を静止させる最小ブレーキ力を決定するステップと、
車輪ブレーキが解放されたときに減少するブレーキ力を検知するステップと、
ドライブラインが作動するまで、最小ブレーキ力で動かないように車両を静止させる手順を実行するステップとを有することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
最小ブレーキ力よりも大きい所定のブレーキ力で前記手順を実行することを有することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
所定のブレーキ力に対応するブレーキ圧を決定するステップと、
車両のブレーキ圧をリアルタイムでモニタするステップとを有することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記手順は、
車両のハンドブレーキを掛けるステップと、
車両のヒルホールド機能を作動させるステップと、
ドライブラインの出力部品を停止させるステップと、
多段変速のトランスミッションの2つのギヤ比を同時に接続するステップのうち、少なくとも1つのステップを有することを特徴とする請求項3〜5のいずれか1に記載の方法。
【請求項7】
ドライブラインの構成部品内の流体温度が所定値よりも低いとき、ドライブラインの作動を遅延させるステップを中止するステップを有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1に記載の方法。
【請求項8】
アクセルペダルの位置をモニタするステップと、
アクセルペダルが解放状態から移動したことを検知したとき、エンジン速度を第1のアイドル速度から第2のアイドル速度に減速させるステップとを有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1に記載の方法。
【請求項9】
車両の移動をモニタするステップと、
車両の移動を検知したとき、ドライブラインの作動を遅延させるステップを中止するステップとを有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1に記載の方法。
【請求項10】
車両姿勢を検知するステップと、
車両が所定の傾斜閾値より大きく傾斜したとき、ドライブラインの作動を遅延させるステップを中止するステップとを有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1に記載の方法。
【請求項11】
電子的に制御されたドライブラインと、電子的に検知された車輪ブレーキとを備えた車両であって、
請求項1〜10のいずれか1に記載の方法を制御するように構成されたことを特徴とする車両。
【請求項12】
車両のブレーキ圧とドライブラインセレクタ位置に関する入力信号を受信し、エンジンのアイドル速度および車両のドライブラインの作動を命令するように構成された電子制御ユニットを備えたことを特徴とする請求項11に記載の車両。
【請求項13】
電子制御ユニットは、車両姿勢に関する入力信号を受信し、現時点の姿勢で車両を静止させるための最小ブレーキ圧を決定するように構成されたことを特徴とする請求項12に記載の車両。
【請求項14】
前記指標は、解放された車輪ブレーキを含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1に記載の方法。
【請求項15】
内燃エンジン、車輪ブレーキ、ドライブライン、ドライブラインセレクタ、およびコントローラとを備えた車両であって、
コントローラは、
ドライブラインセレクタがニュートラル状態に対応するとき、第1のアイドル速度でエンジンを回転させ、
車輪ブレーキが作動しているときに、ニュートラル状態からドライブ状態へのドライブラインセレクタの動作を検出し、
少なくとも1つの基準を満たすと判断するまで、第1のアイドル速度を維持する一方、ドライブラインセレクタの動作を検出した後、ドライブラインの作動を遅延させ、
少なくとも1つの基準を満たしたとき、ドライブラインを作動させ、第1のアイドル速度から、より低い第2アイドル速度にエンジン速度を減速させるように構成されたことを特徴とする車両。
【請求項16】
少なくとも1つの基準は、ドライバが車両の走行開始を望むことを示す少なくとも1つの指標に対応することを特徴とする請求項15に記載の車両。
【請求項17】
少なくとも1つの基準は、
車輪ブレーキが解放されこと、
アクセルペダルが押圧されること、
エンジン始動後、所定の時間が経過したこと、または
排気ガスが所定の温度に達したことのうちの少なくとも1つに対応することを特徴とする請求項15または16に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジンの排出物制御における改良に関し、とりわけエンジン冷間始動後により速やかに排ガス処理を行うための改善に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の排出物の法律は、内燃エンジンの排気流中の有害ガスの排出について規制している。通常、触媒コンバータが、車両排気システム内に設けられ、有害ガスを比較的無害な代替物に化学的に変換するよう機能する。
【0003】
触媒コンバータは、効率的に機能するための最低温度を必要とし、この最低温度は、熱い排気流からの熱伝導によって短時間に得られる。車両が比較的冷たい状態で始動すると、触媒コンバータが効率的に機能するまでに時間がかかることがある。冷間始動後の未処理の排ガスの排出物を最低限にするように、こうした時間の遅れ小さくすることが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明に係る態様は、添付クレームで定義された方法及び車両を提供するものである。
【0005】
例示的な実施形態によれば、電子的に検知される車輪ブレーキおよび電子的に検知されるドライブラインを有する車両の内燃エンジンの排気流を処理する方法が提供され、この方法は、
車両エンジンを始動させるステップと、
車両エンジンを第1のアイドル速度で回転させるステップと、
車両の車輪ブレーキが作動しているときに、ドライブラインセレクタがニュートラル状態からドライブ状態へ移動したことを検知するステップと、
ドライバが車両の走行開始を望むことを示す少なくとも1つの指標が検知されるまで、第1のアイドル速度の継続時間を延長するように、ドライブラインの作動を遅延させるステップと、
ドライブラインを作動させるために、第1のアイドル速度からより低速の第2のアイドル速度にエンジン速度を減速させるステップとを有する。
【0006】
この例示的な実施形態に係る方法は、車輪ブレーキの解放を検知するまで、ドライブラインの作動を延期する。これは、ドライブラインセレクタの動作に応じてドライブラインを作動させる従来式のドライブライン作動方法とは異なるものである。この例示的な実施形態は、手動でない作動方法を有する任意の車両のドライブラインに適用させることを意図したものであり、従来式の手動で選択して接続するクラッチ付きトランスミッションを排除するものである。通常、フットブレーキを掛けていなければ、こうしたドライブラインセレクタの車両動作および/またはドライブラインの作動は禁止される。さらに、ドライブラインセレクタがニュートラル位置またはパーキング位置になければ、車両エンジンの始動が禁止される。本発明に係る実施形態によるアイドル速度制御を実施する車両のドライブラインは、典型的には、油圧式の自動トランスミッションまたは自動化された手動トランスミッション等のアクチュエータを介した自動制御される作動装置を有する。
【0007】
本願において、「ドライブライン」とは、車両エンジンを車両の駆動輪に連結するトルク伝達部品を意味する。
【0008】
ドライブラインセレクタが動作した後に直ちにドライブラインを作動させると、本質的に車両エンジンに負荷をかけることになり、その結果、エンジン速度が高速アイドル速度から通常のアイドル速度に減速する。ただし、ドライブラインの円滑な接続を確実なものとするために、運転状態の選択を検知した後に、エンジン速度を減速するように電子的に命令してもよい。一般に、車両に許容可能な発車性能を与え、滑らかで高い質の体感を車両の乗員に与えるためには、通常のアイドル速度が要求される。
【0009】
いくつかの実施形態では、ドライブラインの作動を遅らせることにより、高速アイドル速度をより長時間維持することができ、アイドル速度が通常のアイドル速度に減速されるまでに触媒コンバータ内に流れる高温排ガス流をより多く確保することができ、その結果、触媒温度を作動温度までより速やかに昇温させる。
【0010】
この例示的な実施形態によれば、車両ドライバが気付かないように、より迅速に触媒を点火(触媒作動温度まで昇温)させることができる。理解されるように、こうした種類の電子的に制御される車両トランスミッションにおいて、ドライブラインをきわめて迅速に作動させることができる。
【0011】
典型的には、ドライブラインは、クラッチを接続することにより、車両エンジンからのトルクを車両車輪に伝達する。クラッチは、湿式クラッチまたは乾式クラッチでもよく、適当な電子制御ユニット(ECU)により命令される多段変速トランスミッションの一部を構成するものであってもよい。円滑な発車を確実なものとするように、ドライブラインの作動(接続)シーケンスが選択される。いくつかの事例では、たとえば多段変速トランスミッションは、発車クラッチ自身が円滑に接続できるように、発車クラッチの前に一連のクラッチを一時的に接続してもよい。ドライブラインの作動シーケンスは、車両ドライバにより感じられるものではなく、アイドル速度が適当な時間で減速するように、作動シーケンスのタイミングは制御ユニットで調整するべきである。
【0012】
ドライブラインの作動シーケンスは2段階で行ってもよく、たとえば第1の段階では、アクチュエータを作動流体で満たす。第2の段階では、ドライブラインを作動させるために、作動流体で満たしたアクチュエータ内の圧力を増大させる。例示的な実施形態は、トルクを伝達することができるのは第2の段階であるので、アイドル速度を高く維持しているときに第1の段階を調整する。こうした構成は、特定の状況下において、ドライブラインの作動シーケンスにかかる時間を短縮することができる。
【0013】
車両の車輪ブレーキは、通常、ブレーキ圧を検知し、車輪の動きを検知または予測するように構成された電子的に制御されるABS(アンチロックブレーキシステム)を備える。
【0014】
十分に理解されるように、ほとんどの車両のドライバは、車両エンジンの冷間始動直後または運転条件(典型的には、前方低速ギア比または後方ギア比)の選択直後に走り出さない。したがって開示された実施形態の利点は、ほとんどの使用環境で実現できる。迅速な急発進が要求された場合には、電子制御ユニットは、高速アイドル速度期間を短縮させ、速やかにドライブラインを作動させる。ただし、一般に、エンジンが高温排ガスをより多く排出している状況では、触媒コンバータが効率的に機能する前の遅れを小さくすることができる。
【0015】
例示的な実施形態に係る方法の変形例において、排気触媒の温度をモニタしてもよく、触媒が確実に機能するまで、この方法の実施を中止してもよい。すなわち、この方法は、冷間始動または冷却始動の場合にのみ限定して用い、高速アイドルに適当な最も短時間を与えることができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、この方法は、車両姿勢を考慮したものであってもよい。理解されるように、車両が坂道で駐車している場合には、実質的に水平な路面上に駐車している場合に比して、車両が動かないように、より大きなブレーキ圧を必要とすることがある。坂道が急勾配であるほど、車両を動かないように静止させるブレーキ圧は大きくなる。
【0017】
いくつかの実施形態では、この方法は、
車両姿勢を検知するステップと、
動かないように車両を静止させる最小ブレーキ力を決定するステップと、
車輪ブレーキが解放されたときに減少するブレーキ力を検知するステップと、
ドライブラインが作動するまで、最小ブレーキ力で動かないように車両を静止させる手順を実行するステップとを有していてもよい。
【0018】
これらの追加的なステップにより、ドライブラインが作動する前の車両が動き出し得る期間において、勾配に起因して車両が動き出すことを防止することができる。こうした車両の移動はごく僅かではあるが、防止することが好ましい。
【0019】
動かないように車両の車輪を静止させる手順は、たとえばハンドブレーキ機能操作を実施するステップ、ヒルホールド機能操作を実施するステップ、多段トランスミッションの出力部品(たとえばトランスミッションケーシング)を停止させるステップ、多段変速のトランスミッションの2つのギヤ比を同時に接続して固定するステップ、またはドライブラインの作動(接続)を命令するステップを有していてもよい。その他の解決手法も可能であるが、各ステップは、関連する電子制御ユニット(ECU)の命令により電子制御されるべきである。
【0020】
1つの実施形態において、認識できるほど車両が後退することなく、円滑に走り出すように、ドライブラインの作動(接続)を車両の車輪の動きに合わせて調整する(すなわち、車輪ブレーキを解放し、または動かないように車両の車輪を静止させる手順を中止する。)。
【0021】
従来の電気的ハンドブレーキまたはヒルホールド機能の自動解除に応じた漸進的な走り出しが、1つの任意的な構成を提供する。
【0022】
この方法は、車輪ブレーキが解放されたときに減少するブレーキ力を検知するステップと、所定のブレーキ力でドライブラインの作動(接続)を命令するステップとを有していてもよい。所定のブレーキ力は、車両姿勢を参照して選択してもよい。
【0023】
この方法において、車両が制御されることなく動く傾向を防ぐために、エンジントルクが車両車輪に伝達されるようにドライブラインが作動される。所定のブレーキ力は、車両姿勢を参照して、たとえばルックアップテーブルに記載してもよいし、適当なアルゴリズムを用いて計算してもよい。
【0024】
車両のドライブラインは、電子制御されるトランスミッションを有していてもよい。従来の多段変速式の油圧のトランスミッションおよびデュアルクラッチトランスミッションを含む数多くのトランスミッションが適当である。
【0025】
本願の範疇において、上記段落、クレーム、および/または以下の明細書および図面に記載された、さまざまな態様、実施形態、実施例、および択一例、特に個々の特徴物は、独立してまたは組み合わせて採用することができる。たとえば1つの実施形態に関連して説明された特徴物は、その特徴物が矛盾するものでなければ、すべての実施形態に適用することができる。
【0026】
添付図面を参照しながら、ほんの一例としてのみ、本発明に係る実施形態について以下説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】従来の冷間始動シーケンスにおけるエンジン速度を示すグラフである。
図2】本発明にかかる冷間始動シーケンスを示す、図1に対応するグラフである。
図3】本発明の別の実施形態にかかる冷間始動シーケンスを示すグラフである。
図4】本発明の実施形態にかかる典型的なエンジン冷間始動シーケンスのフローチャートである。
図5】本発明の実施形態にかかる冷間始動シーケンスを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を参照すると、従来の電子制御内燃エンジンの冷間始動は、通常、2000回転/分の初期のエンジン速度を有し、このエンジン速度はほぼ直ちに1350回転/分の高速アイドル速度に落ちる。高速アイドル速度は、例えば燃焼を安定させるために、始動から約15秒まで維持される。その後、ドライブラインが選択され接続されるとき、アイドル速度はポイントAにおいて、約850回転/分まで減速する。この速度はドライバが円滑かつ徐々に動き出すのに適したものである。通常、さらに約5秒経過後のポイントBで、車両が発車し、すなわち走行し始める。
【0029】
自動ドライブラインまたは自動化されたドライブラインにおいて、コントローラはドライバの命令に応じて適切な駆動ギア比を選択する。通常、ドライバは、パーキング(P)またはニュートラル(N)から、低速ギア比またはドライブ(D)を選択する。一般に、パーキング(P)が選択されていない場合、車両エンジンを始動できず、フットブレーキが踏まれていない場合、ドライブラインを作動できない。
【0030】
すなわち、典型的な冷間始動シーケンスにおいて、トランスミッションをパーキング(P)にしてエンジンを始動し、エンジンを高速でアイドリングし、フットブレーキを踏み込んで、低速度ギア比を選択し、フットブレーキを放して走行させる。このシーケンスは、従来の油圧式オートマチックギヤボックス、自動化されたマニュアルトランスミッション、またはツインクラッチトランスミッション等、特定の種類のトランスミッションに応じて異なっていてもよい。
【0031】
ドライブラインのコントローラは、通常、トランスミッション内のアクチュエータを命令するトランスミッション電子制御ユニットである。これらのアクチュエータは、電子アクチュエータ、油圧アクチュエータ、または空気圧アクチュエータであってもよく、1つまたはそれ以上の速度ギヤ比、および/または1つまたはそれ以上のトルク伝達摩擦部品を接続することができる。
【0032】
車両のホイールをドライブラインに確実に滑らかに接続するために、運転条件の選択に応じて、高速アイドリングを停止してもよい。こうした高速アイドリングの停止は、例えばトルクコンバータのトランスミッション負荷によるものであってもよいし、選択された運転条件を検知した電子制御ユニットの命令によるものであってもよい。
【0033】
理解されるように、この実施例において、ドライバがエンジンを始動し、ドライブラインが接続されて走行するまでに、短い遅延時間が想定されており、このときドライバは、たとえばシートベルトを締め、計器ディスプレイをチェックすることができる。
【0034】
同様に理解されるように、エンジンのアイドル速度およびアイドリング時間は、エンジンのタイプや仕様、および環境条件に応じて変化し、上記説明した図面は単に説明するためのものである。
【0035】
本発明の効果を図2に示す。ドライブは、先行技術と同様にポイントAで選択されるが、ドライブラインには接続されない。従って、エンジンに負荷はかからず、ホイールブレーキの解除が検知されるポイントCまで高速アイドル速度を維持することができる。その後、アイドル速度が1350回転/分から850回転/分に減少する期間において、このドライブ接続は、これに付随したクラッチ圧力の緩やかな増大として図2のトレース(軌跡)Dで示される。トレースDは、解放状態から接続状態に徐々に移行する任意の適当な構成を表すものである。
【0036】
追加的な高速アイドリングによる効果は、図2に示す斜線で示した領域によって表されている。
【0037】
さらに改善するために、ドライブラインがドライブの選択時点では接続されていないので、図3に示すようにアイドル速度をより高いレベル(たとえば1750回転/分)に維持してもよい。その結果、ホイールブレーキの解除が検知されるまで、エンジンは、ドライブラインの選択に適した速度(図1および図2によれば1350回転/分)である必要はない。この実施形態では、ドライブラインが接続されたとき、やがてアイドル速度が(図2のトレースDに示すように)一体になるが、こうしたドライブラインの接続は、エンジン速度がたとえば1750回転/分の高いアイドル速度から1350回転/分の閾値を超えて減少するときに始まる。追加的なより高いアイドル速度による効果は、図3で斜線を示した領域で表されている。
【0038】
車両のドライバが急発進するように命令した場合、ドライブラインを直ちに円滑に作動できるように(作動可能状態とするように)、コントローラは、通常、高いアイドル速度を早期に終了させる。こうした状況において、エンジンは、実質的なパワーを出力するように直ちに命令され、触媒作用が速やかに得られるように排ガス温度を急激に上昇させることができる。
【0039】
ドライバがドライブラインの接続を要求しないとき、触媒作用が検知または予期されることに応じて、同様に速い(高い)アイドル速度を早期に終了させてもよい。触媒装置の入口に設けた排ガス温度センサを用いて、触媒作用が予め決められた温度閾値で始まることを推定してもよい。
【0040】
図4は、ドライブラインが選択されているが作動状態にない、本発明に係る典型的なニュートラル維持のエンジン冷間始動(CSN)であって、高速アイドリングを可能にする冷間始動を示す。電子制御の油圧の多段変速トランスミッションが想定されている。
【0041】
ステップ11において、本発明に係る認証ルーチンが実行され、車両の始動スイッチがオンに切り換えられる(ステップ12)。車両の走行準備を確認するために、他のシステムをチェックし(ステップ13)、エンジンが回転していることを確認する。
【0042】
ニュートラル維持の冷間始動(CSN)の機能が起動していないとすると(ステップ15)、触媒温度が判断され(ステップ16)、閾値未満ならば、ニュートラル維持の冷間始動(CSN)の機能が停止状態でないことを条件として(ステップ31)、ルーチンは継続される。触媒が動作温度以上であるならば、ステップ16において、ニュートラル維持の冷間始動(CSN)の機能を停止させる。ニュートラル維持の冷間始動(CSN)の機能は、次のエンジン始動時まで不能状態とされる(ステップ32)。
【0043】
ステップ17では、診断チェックにより、関連する通信が作動していること、たとえばブレーキシステムおよびトランスミッションセレクタからの制御入力が作動していることを確認する。作動していない場合には、ニュートラル維持の冷間始動(CSN)の機能を停止する。
【0044】
ステップ18では、オートマチックトランスミッションの流体温度(ATF)がチェックされる。オートマチックトランスミッションの液体温度が、0℃未満の所定の最低値、たとえば約−6℃未満である場合、ニュートラル維持の冷間始動(CSN)の機能を停止させてもよい(ステップ33)。
【0045】
ステップ19では、ニュートラル維持の冷間始動(CSN)の機能が停止していない場合、たとえばモーションセンサからの信号を用いて、車両が静止しているか否か、チェックがなされる。
【0046】
ステップ20では、たとえば車両を静止状態に保持する最小ブレーキ圧を決定するために、車両姿勢をチェックする。閾値より大きい場合、ニュートラル維持の冷間始動(CSN)の機能を停止する。車両姿勢が所定値を超える場合、すなわち車両が15度または20度よりも大きく前方または後方に傾斜している場合、ニュートラル維持の冷間始動(CSN)の機能を停止させてもよい。
【0047】
ステップ21では、ニュートラル維持の冷間始動(CSN)の機能が停止していない場合、ドライバまたはヒルホールド機能が加えたブレーキ圧が、車両を停止させる最小ブレーキ圧を超えるか否か確認する。
【0048】
ステップ22では、ニュートラル維持の冷間始動(CSN)の機能が停止していない場合、運転状態の選択について確認する。
【0049】
ステップ23では、ニュートラル維持の冷間始動(CSN)の機能が停止していない場合、車両が発車(走行)しようとしているか否か判断するために、アクセルペダル位置を確認する。アクセルペダルが解放状態から移動させるか、所定の閾値を超えたとき、発車させてもよい。
【0050】
ステップ23では、ニュートラル維持の冷間始動(CSN)の機能が停止していない場合、CSN機能が動作中に車両が逆行することを防止するために、アンチロックブレーキシステムのヒルホールド機能を実行する。
【0051】
ステップ25では、認証を完了して、本発明に係るニュートラル維持の冷間始動(CSN)の機能を作動させ、高速アイドリングの維持を許容する。
【0052】
当然に、当業者は、図4に示すルーチンにおいて、必要なチェック機能を選択する。上記説明したステップは、選択された実施形態に適した単なる一例である。
【0053】
図5において、典型的なニュートラル維持の冷間始動(CSN)ルーチンが具体例として図示されている。冷間始動時、ドライバがブレーキをかけるか、ヒルホールド機能により、ブレーキ圧(B)が加えられているとき、エンジン回転数(N)は高いアイドリング回転数に維持される。
【0054】
時刻t1で、ブレーキ圧が減少し始めると、それに応じて車両が動き始めることが予想される。時刻t2で、予め選択されたトランスミッション比(変速ギア比)で円滑に接続できるように、エンジン速度は、速いアイドル速度から通常のアイドル速度に減少し始める。時刻t3で、ブレーキ圧はゼロになるが、時刻t2と時刻t3の間でトランスミッションクラッチが接続されて、ドライブラインを作動させ、車両の逆行を防止することができる。
【0055】
時刻t4で、アクセルペダル(A)が踏み込まれ、エンジン速度が増大し、走行が可能となる。
【0056】
車両発車の許容可能なファクタ、トランスミッションクラッチのトルク特性、および車両のブレーキペダルとアクセルペダルに関する他のパラメータに応じて、エンジンのアイドル速度を長く増大させたことをドライバに実質的に感知させないように、時刻t1〜t4が選択される。
【0057】
理解されるように、通常のアイドル速度、高速のアイドル速度、より高速のアイドル速度に対応するエンジン速度が、エンジンおよび要求される機能の技術的仕様に応じて選択され、さらにアイドル速度が低減して、適当な円滑さと品位をもたらす速度でドライブラインを接続する。これらのファクタの選択は、当業者の技術範囲に属するものである。
図1
図2
図3
図4
図5