【実施例1】
【0013】
本発明の第1の実施例について
図1-4を用いて説明する。
図1は本実施例における空気調和装置の構成を示すサイクル系統図である。本実施例では1台の室外機90に対して、3台の室内機(91a、91b、91c)が接続された例を示している。本発明はこのような構成に限定されるものではなく、室外機90、室内機91ともに接続台数が異なっていてもよい。
【0014】
3台の室内機(91a、91b、91c)は、液管13とガス管12を介して、室外機90に並列に接続される。室外機90は、冷媒を圧縮する圧縮機1、室外ファン4によって供給される室外空気、冷媒と熱交換する室外熱交換器3、及び、圧縮機1の吸込口と吐出口のうち一方を室外熱交換器3へ他方をガス管12へと切替えて接続させるための四方弁5を備える。四方弁5と接続される室外熱交換器3の他端は室外膨張弁8を介して液管13へと接続される。
【0015】
室内機91では、室内熱交換器16の一方がガス管12へ他方が室内膨張弁18を介して液管13へと接続されており、室内熱交換器16には室内ファン17によって室内空間からの吸込空気が供給される。室内機91にはリモコン92が接続されており、ユーザにより室内機の運転開始及び停止、冷房及び暖房の運転モードの指定、設定温度の入力等が可能となっている。空調機の空調能力は、設定温度と吸込空気温度センサ21の検知温度との温度差に基づいて決定される。
【0016】
図2に示すように、リモコン92からコントローラ60に運転開始の信号が入力されると、空調機の運転が開始され、コントローラ60から室外機90及び室内機91の各アクチュエータへ制御信号が送られる。
【0017】
リモコン92aから冷房運転の要求がある場合について動作を説明する。リモコン92aから冷房運転の要求があると、四方弁2を図の実線で示す回路へ切替え、室外ファン4と室内ファン17aを所定の回転数で動作させる。
【0018】
圧縮機1により圧縮された冷媒は、室外熱交換器3で室外空気と熱交換器することで凝縮・液化する。全開状態の室外膨張弁8を介して液管13へと流出した液冷媒は、室内膨張弁18aで減圧され低温・低圧となって室内熱交換器16に流入する。室内空気から吸熱した冷媒は蒸発して過熱ガス冷媒となりガス管12へ流出する。この作用により冷却された室内空気が室内空間へと供給され室内空間が冷房される。ガス化した冷媒は、ガス管12を通って、室外機90内の四方弁2を介して、圧縮機1へと戻る。このとき、室内膨張弁18b、18cは全閉状態であり、室内ファン17b、17cは停止状態である。
【0019】
リモコン92b、92cからも運転開始信号がある場合には、室内膨張弁18b、18cも適度に開度が調整され、液管13内の冷媒が減圧されて、室内熱交換器16b、16cに流入し、室内ファン17b、17cによって供給された室内空気と熱交換する。蒸発したガス冷媒は、ガス管12で室内機91、91b、91cで蒸発した冷媒が合流して室外機90へと戻る。
【0020】
一方、リモコン92a、92b、92cから暖房運転の要求がある場合には、四方弁を
図1の破線で示す回路へと切替え、室外ファン4と室内ファン17を所定の回転数で動作させる。圧縮機1によって圧縮された冷媒は、ガス管12を通って室内熱交換器16a、16b、16cへと流入する。室内熱交換器16では、室内ファン17によって供給される室内空気へ放熱することによって、冷媒を凝縮・液化させる一方、室内空間を暖房する。凝縮した液冷媒は液管13で合流した後、室外膨張弁8で減圧され低温・低圧冷媒となり、室外熱交換器3にて室外空気から熱をもらい蒸発する。その後、四方弁2を介して圧縮機1へと戻り、再度圧縮される工程を繰り返す。
【0021】
このような空調機における冷房時の動作について詳細に説明する。
【0022】
圧縮機1の回転数は、各室内機91の吸込サーミスタ21が検知した吸込空気温度(Tr1)が、リモコンで設定された設定温度(Ts1)と等しくなるように制御される。しかし、室内負荷に対して、空調機の能力が過剰な場合や、圧縮機1の下限能力で運転した際の空調機の能力よりも室内の負荷が小さな場合などには、室内機91の吸込空気温度(Tr)が設定温度よりも低下してしまう場合がある。
【0023】
このような場合には、室内機91の室内膨張弁18を閉止し、冷房動作を休止するサーモオフ運転とする。この場合、室内熱交換器16へ冷媒が供給されなくなるので、冷媒の蒸発による冷却作用はなくなる。したがって、室内空間の負荷によって室温は徐々に上昇する。その後、所定の温度まで吸い込み温度が高くなると、再度室内膨張弁18を開き、サーモオン運転を再開する。
【0024】
図3は従来の空気調和機における制御動作を模式的に示した図である。横軸が時間、縦軸に室内機91a、91b、91cの室温(吸込空気温度(Tr))、サーモオン運転及びサーモオフ運転の状態、及び、圧縮機の運転状態を示す。
【0025】
室内機91は、吸込空気温度が設定温度を基準とした所定の温度範囲内になるように、吸込空気温度(Tr1)がサーモオン下限値(Toff1)(サーモオフ温度)に達すると冷房運転を休止するサーモオフ運転となり、その後温度が上昇してサーモオフ上限値(Ton1)(サーモオン温度)に達すると休止していた冷房運転を再開するサーモオン運転となる。本実施例においては、Ton1が設定温度に対して+1℃、Toff1が-1℃で、温度幅を2℃とする。なお、設定温度に対するTon1やToff1の幅や、サーモオン又はサーモオフする際の条件については、本実施例は1例であり、吸込空気温度(Tr)だけでなく時間などの条件を加えてもよい。
【0026】
図3に示すように、コントローラ60がサンプリング(所定のタイミングでコントローラ60が室内機91の吸込空気温度を検出して、各室内機91が領域I(Toff<Tr≦Ts)/領域II(Ts<Tr≦Ton)の何れであるかを判定等する)を開始する。サンプリングの開始時点で、室内機91は3台とも運転しているが、時刻(t1)に室内機91aの吸込空気温度(Tr1)が下限値(Toff1)に達したので、室内機91aはサーモオフ運転となる。その後室内機91b、92cの2台で運転を継続し、時刻(t2)において室内機91aは上限値(Ton1)に達してサーモオン運転となり、室内機91a、91b、91cが同時に運転する。時刻(t3)になり、室内機91b、91cが下限値(Toff2、Toff3)に達すると、室内機91b、91cがサーモオフ運転となる。そして、時刻(t4)において、室内機91aが再びサーモオフ温度(Toff1)に達してサーモオフ運転となる。
【0027】
このとき、室内機91a、91b、91cの全てがサーモオフ運転になるので、圧縮機1も停止状態となる。このように、複数の室内機91a、91b、91cがサーモオフ運転となる時間が偶発的に一致すると、圧縮機1が停止してしまう。圧縮機1が停止すると、高温冷媒と低温冷媒が混合するなどエネルギー的なロスが発生するため、停止しない運転に比べて消費電力が増大する。
【0028】
そこで本実施例においては、室内機の動作領域をToff<Tr≦Tsの領域IとTs<Tr≦Tonの領域IIに分離し、室内機91a、91b、91cの吸込空気温度(Tr)の状態が領域I、IIのどちらに存在するかを検知し判断する判断手段を備え、室内機91a、91b、91cが同期してサーモオフするか否かを判断する。
【0029】
例えば、領域Iに属する室内機91a、91b、91cの空調容量の合計が一定の閾値(台数や割合でもよく、例えば、2台又は60%等とすることができる。)を超えた場合、次のサンプリング時には、室内機91a、91b、91cのいくつかの室内機91が同期してサーモオフ温度(Toff)に達すると判断することができる。尚、本実施例では、室外機の容量制御下限値は30%とする。
【0030】
このような状況になった場合、領域Iに属する室内機91を強制サーモオフする。但し、領域Iに属する全ての室内機91を強制サーモオフさせると圧縮機が停止してしまう可能性があるため、領域Iに属する室内機91であって設定温度(Ts)近傍の室内機91のうち、室外機90の空調容量の下限値以下にならない台数だけ、強制サーモオフする。尚、領域Iに属する室内機91であって設定温度(Ts)近傍の室内機91(例えば、吸込空気温度が設定温度(Ts)に最も近い室内機91)を強制サーモオフすることにより、領域Iに属する他の室内機91とのサーモオフ周期をより大きくずらすことができる。
【0031】
強制サーモオフした室内機91は他の室内機91と識別するために、フラグ(F1)を立て、コントローラ60がフラグを記憶する。フラグ(F1)が立った室内機91は、以後のサンプリング時において、領域Iに存在する室内機91の空調容量が閾値以上になった場合、フラグ(F1)が立っている室内機91の中で、領域IIにある室内機91を強制的にサーモオンさせる。これによって、室内機の容量低下による圧縮機の停止を回避する。
【0032】
フラグ(F1)は、サーモオン温度(Ton)に達した場合又は強制サーモオンさせた場合において、フラグを(F3)に変更し、コントローラ60が記憶する。稼働している室内機の全てにフラグがF3に変更された場合、コントローラ60のフラグをリセットする。フラグがF3である室内機91(既に強制サーモオフされた実績のある室内機91)は、領域Iに属していても、強制サーモオフ運転は行わない。以上のように室内機のフラグをコントローラ60によって管理することで、同じ室内機が繰り返して強制サーモオフ運転することを回避できる。
【0033】
以上のように、フラグ(F1、F3)を管理する場合においても、領域Iに属する室内機の容量が閾値を越えるような場合であって、領域Iにフラグ(F1、F3)がたっていない室内機91が存在しない場合は、においては、フラグ(F1、F3)が立っていない室内機91のうち領域IIに属する室内機であって吸込空気温度(Tr)が設定温度(Ts)近傍にある室内機91を室外機90の容量下限値以下にならない台数だけ、強制サーモオフさせる。
【0034】
強制サーモオフした室内機91はフラグ(F2)を立てて、コントローラ60が記憶する。フラグF2もフラグF1と同様に、強制サーモオンした場合又はサーモオン(Ton)度に達した場合、フラグF3へ変更する。
【0035】
以上のような、判断手段及びフラグを管理して室内機91のサーモオン・オフ運転の周期をずらす具体的な例を
図4によって説明する。
【0036】
図4は
図3と同一のサーモオン・オフ周期を有する室内機91a、91b、91cの位相を本発明によりずらして圧縮機の停止を回避する実施例を示した図である。
【0037】
まず、時刻t1において、室内機91a、91cが領域Iに属するため、領域Iに存在する容量の閾値を超過することをコントローラ60が判断する。設定温度(Ts)近傍の室内機91cを強制サーモオフし、室内機91cにフラグF1を立て、コントローラ60が記憶する。このとき、室内機91bが稼働しているので圧縮機1は停止しない。
【0038】
時刻t2において、室内機91a、91bが領域Iに存在するため、室内機91cを強制オンしフラグF3を立て、コントローラ60が記憶する。室内機91cのサーモ周期の位相がずれる。
【0039】
時刻t3において、室内機91b、91cが領域Iに存在するため、室内機91bを強制サーモオフし、コントローラ60がフラグF1を記憶する。このとき、室内機91aが稼働しているため、圧縮機1は停止しない。
【0040】
時刻t4において、室内機91b、91cが領域Iに存在し、且つ室内機91b、91cにフラグF1、F3がコントローラ60によって記憶されているため、領域IIにある室内機91aを強制サーモオフさせる。室内機91aにフラグF2を立て、コントローラ60によって記憶する。
【0041】
時刻t5において、室内機91aがサーモオン温度(Ton1)に達する。室内機91aにフラグF3を立て、サーモオン運転を行う。
【0042】
時刻t7において、室内機91bがサーモオン温度(Ton2)に達し、サーモオン運転を行う。このとき、室内機91bのフラグをF3へ変更する。フラグF3の数が稼働している室内機の台数と合致するため、フラグF3をリセットする。
【0043】
以上のように、室内機91a、91b、91cを制御し、フラグを管理することで、室内機が同期してサーモオフし圧縮機1を停止させてしまう動作を回避することができる。
【0044】
この結果、快適を確保しながら、圧縮機の発停に伴う空調装置の消費電力の増加を抑制することができる。
【0045】
尚、本実施例では冷房運転時の動作のみを記述しているが、暖房運転時においても同様の動作によって、室内機91a、91b、91cのサーモオフが同期して発生することを回避することができる。