(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872236
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】光学モジュールおよび光学システム
(51)【国際特許分類】
G02B 3/08 20060101AFI20160216BHJP
F21V 13/02 20060101ALI20160216BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20160216BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20160216BHJP
【FI】
G02B3/08
F21V13/02 400
F21V5/04
F21Y101:02
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-222463(P2011-222463)
(22)【出願日】2011年10月7日
(65)【公開番号】特開2013-83734(P2013-83734A)
(43)【公開日】2013年5月9日
【審査請求日】2014年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英隆
【審査官】
藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−293797(JP,A)
【文献】
特開2009−009926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/08
F21V 13/02
F21V 5/04
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに光軸が1つの点に交差するように配置された複数の光源と、該複数の光源の光軸が交差する1つの点を焦点とする光学レンズとを備え、
前記光学レンズは、各光源のそれぞれに対応させて、第1の入光面と、第2の入光面と、全反射面とを有するとともに、光学レンズ光軸を有しており、
前記第1の入光面は、これに対応する光源からの光を前記焦点へ向けて屈折させ、
前記第2の入光面は、これに対応する光源からの光を前記全反射面に向けて屈折させ、 前記全反射面は、前記第2の入光面からの光を前記焦点へ向けて全反射するようになっており、
前記焦点は、前記光学レンズの出光面に対して前記光学レンズの内部に位置しており、
前記光学レンズの出光面は、球形状(球体)の少なくとも一部となっており、前記焦点は、この球形状(球体)の中心点となるように設定されており、
前記全反射面から前記焦点に向けて全反射された光の全てを出射できる位置まで、前記出光面の球形状(球体)が形成されており、
前記複数の光源の光軸は、前記出光面上のうち少なくとも前記出光面の端部、及び前記光学レンズ光軸と前記出光面との交点を通過せず、前記端部と前記交点との間の領域を通過することを特徴とする光学モジュール。
【請求項2】
請求項1記載の光学モジュールと、該光学モジュールの前記焦点を仮想光源として設計された光学系とを有し、該光学系によって前記光学モジュールからの光を制御することを特徴とする光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学モジュールおよび光学システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の光源からの光を1つの焦点に集光させる光学モジュールとして、特許文献1に記載されているものが知られている。
図1は特許文献1に示されている光学モジュールの一例を示す図、
図2は
図1の光学モジュールの変形例を示す図である。
【0003】
図1または
図2に示す従来の光学モジュールでは、複数の光源30からの光を光学レンズ100内に平行光で入光させ、または、光学レンズ100内で屈折、全反射により平行光にした上で、この平行光を出光部20で全反射、屈折させて、光学レンズ100の外部の1つの焦点Fに集光させるようになっている。
【0004】
このような光学モジュールは、
図3に示すように他の光学レンズ110と組み合わせたり、
図4に示すように反射面120と組み合わせたりして、光学システムを設計、構築することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−108584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の光学モジュールでは、光学レンズ100内において平行光を出光部20で全反射と屈折とにより1つの焦点(集光点)Fに集光させるようにしているので、平行光を全反射、屈折させる分、光の利用効率が悪く、また、1つの焦点(集光点)Fにおける光の集光幅(面積)が大きくなってしまう(1つの焦点(集光点)を中心に所定の幅でばらついてしまう)という問題があった。
【0007】
また、上述した従来の光学モジュールでは、光学レンズ100の外部の1つの焦点(集光点)Fに集光させるようになっているため、
図3に示すような他の光学レンズ110と組み合わせたり、
図4に示すような反射面120と組み合わせたりして、光学システムを設計、構築するときに、上記焦点(集光点)Fの位置がどこにあるかを把握しにくく、光学システムを設計、構築しずらい(他の光学レンズ110や反射面120を設計しずらい)という問題もあった。
【0008】
本発明は、光の利用効率を高め、1つの焦点(集光点)における光の集光幅(面積)を小さくすることができ、上記焦点(集光点)の位置を容易に把握することが可能な光学モジュールおよび光学システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、互いに光軸が1つの点に交差するように配置された複数の光源と、該複数の光源の光軸が交差する1つの点を焦点とする光学レンズとを備え、
前記光学レンズは、各光源のそれぞれに対応させて、第1の入光面と、第2の入光面と、全反射面とを
有するとともに、光学レンズ光軸を有しており、
前記第1の入光面は、これに対応する光源からの光を前記焦点へ向けて屈折させ、
前記第2の入光面は、これに対応する光源からの光を前記全反射面に向けて屈折させ、 前記全反射面は、前記第2の入光面からの光を前記焦点へ向けて全反射するようになっており、
前記焦点は、前記光学レンズの出光面に対して前記光学レンズの内
部に位置し
ており、
前記光学レンズの出光面は、球形状(球体)の少なくとも一部となっており、前記焦点は、この球形状(球体)の中心点となるように設定されており、
前記全反射面から前記焦点に向けて全反射された光の全てを出射できる位置まで、前記出光面の球形状(球体)が形成されており、
前記複数の光源の光軸は、前記出光面上のうち少なくとも前記出光面の端部、及び前記光学レンズ光軸と前記出光面との交点を通過せず、前記端部と前記交点との間の領域を通過することを特徴とする光学モジュールである。
【0011】
また、
請求項2記載の発明は、請求項
1記載の光学モジュールと、該光学モジュールの前記焦点を仮想光源として設計された光学系とを有し、該光学系によって前記光学モジュールからの光を制御することを特徴とする光学システムである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば
、光の利用効率を高め、1つの焦点(集光点)における光の集光幅(面積)を小さくすることができ、さらに、上記焦点(集光点)の位置を容易に把握することが可能となる。
【0014】
また、
請求項2記載の発明によれば、請求項
1記載の光学モジュールと、該光学モジュールの前記焦点を仮想光源として設計された光学系とを有し、該光学系によって前記光学モジュールからの光を制御するようになっており、請求項1記載の光学モジュールが用いられることにより、光学システムの設計、構築を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】特許文献1に示されている光学モジュールの一例を示す図である。
【
図2】
図1の光学モジュールの変形例を示す図である。
【
図4】従来の光学システムの他の例を示す図である。
【
図5】本発明の光学モジュールの一構成例を示す図である。
【
図6】本発明の光学モジュールの一構成例を示す図である。
【
図7】本発明の光学モジュールの一構成例を示す図である。
【
図8】本発明の光学モジュールを用いた光学システムの構成例を示す図である。
【
図9】
図8の光学システムの具体例を示す図である。
【
図10】
図8の光学システムの具体例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図5、
図6、
図7は本発明の光学モジュールの一構成例を示す図である。なお、
図5は断面図、
図6は
図5の矢印Aの方向から見た上面図、
図7は
図5の矢印Bの方向から見た底面図である。
【0018】
図5、
図6、
図7を参照すると、この光学モジュール10は、互いに光軸X1が1つの点F0に交差するように配置された複数の光源1と、該複数の光源1の光軸X1が交差する1つの点F0を焦点とする光学レンズ2とを備えている。なお、
図5、
図6、
図7において、X2は光学レンズ2の光軸である。
【0019】
ここで、各光源1には、発光ダイオード(LED)等を用いることができる。
【0020】
また、光学レンズ2は、各光源1のそれぞれに対応させて、第1の入光面3と、第2の入光面4と、全反射面5と、出光面6とを有し、第1の入光面3は、これに対応する光源1からの光を焦点F0へ向けて屈折させ、第2の入光面4は、これに対応する光源1からの光を全反射面5に向けて屈折させ、全反射面5は、第2の入光面4からの光を焦点F0へ向けて全反射するようになっている。
【0021】
より詳細に、
図5、
図6、
図7の例では、第1の入光面3、第2の入光面4、全反射面5は、これに対応する光源1の光軸X1を回転軸とした回転体形状となっている。また、第2の入光面4は、これに対応する光源1の光軸X1に対して角度θ(0°〜臨界角(実用的には、2°〜臨界角))で開いた面形状となっており、角度θが大きい程、第2の入光面4に入射した光は屈折角が小さくなるので、角度θはできる限り小さい方が好ましい。また、全反射面5の裏側には、アルミ蒸着等の表面処理が施されていても良い。
【0022】
また、この光学モジュール10では、上記焦点F0は、光学レンズ2の出光面6に対して光学レンズ2の内部、または、光学レンズ2の出光面6上に位置しており、焦点F0に集光された後の光は、光学レンズ2の出光面6から外部に出射するようになっている。ここで、
図5、
図6、
図7の例では、出光面6は、例えば所定の半径R(実用的な任意の大きさに設定可能)をもつ球形状(球体)の表面の少なくとも一部となっており、この球形状(球体)の中心点が焦点F0となるように設定されている(すなわち、出光面6は、焦点F0に集光された後の光が出光面6によって屈折されずにそのまま透過する形状のものとなっている)。
【0023】
このような構成の光学モジュール10では、互いに光軸X1が1つの点F0に交差するように配置された複数の光源1と、該複数の光源1の光軸X1が交差する1つの点F0を焦点とする光学レンズ2とを備えており、複数の光源1からの光の多くをより直接的に焦点F0に集光させるので(複数の光源1の各々と焦点F0とが光学的に直結しているので)、従来技術のように平行光を全反射と屈折とにより焦点(集光点)Fに集光させる場合に比べて、光の利用効率(光の利用率)を高めることができ、また、1つの焦点(集光点)F0における光の集光幅(面積)を小さくすることができる。
【0024】
また、このような構成の光学モジュール10では、上記焦点F0は、光学レンズ2の出光面6に対して光学レンズ2の内部、または、光学レンズ2の出光面6上に位置しているので、上記焦点(集光点)F0の位置を容易に把握することが可能となる。特に、光学レンズ2の出光面6が、例えば所定の半径をもつ球形状(球体)の表面の少なくとも一部となっており、この球形状(球体)の中心点が焦点F0となるように設定されているときには、上記焦点(集光点)F0の位置を極めて容易に把握することが可能となる。
【0025】
このように、光学モジュール10は上記のような利点を有しているので、
図8に示すように、光学モジュール10と、光学モジュール10の上記焦点F0を仮想光源として設計された光学系12とを組み合わせ、該光学系12によって光学モジュール10からの光を制御する光学システムを設計、構築するとき、このような光学システムを容易に設計、構築することが可能となる。
【0026】
図9には、
図8に示すような光学システムの一例が示されている。
図9の光学システムは、光学系12が、光学モジュール10の光学レンズ2の上方に設けられた集光レンズ13として構成されており、集光レンズ13は、光学レンズ2の焦点F0に集光され出光面6から出射された光を所定の光分布のものにするようになっている(
図9の例では、出光面6から出射された光を光学システム(例えば灯具)の光軸方向X2(この例では、光学レンズ2の光軸X2と同じ方向となっている)へ平行光にするようになっている)。この場合、本発明では、上述したような光学モジュール10が用いられることにより(光学レンズ2の焦点(集光点)F0の位置を極めて容易に把握することができ、光学レンズ2の焦点(集光点)F0における光の集光幅(面積)を小さくすることができることにより)、集光レンズ13の設計が極めて容易となる(視覚的に設計、検討することができる)。
【0027】
また、
図10には、
図8に示すような光学システムの他の例が示されている。
図10の光学システムは、光学系12が、光学モジュール10の光学レンズ2の上方に設けられた集光レンズ14と、反射面15として構成されており、集光レンズ14は、光学レンズ2の焦点F0に集光され出光面6から出射された光を所定の光分布のものにするようになっている(
図10の例では、光学システム(例えば灯具)の光軸方向X2(この例では、光学レンズ2の光軸X2と同じ方向となっている)へ平行光にするようになっている)。また、反射面15は、焦点F0に焦点をもつ放物面であり、この放物反射面15の内面には、アルミ蒸着等の表面処理が施されている。この放物反射面15は、焦点F0に焦点をもつ放物面であることから、光学レンズ2の焦点F0に集光され出光面6から出射された光を所定の光分布のものにするようになっている(
図10の例では、光学システム(例えば灯具)の光軸方向X2(この例では、光学レンズ2の光軸X2と同じ方向となっている)へ平行光にするようになっている)。このように、
図10の光学システムも、集光レンズ14と反射面15とにより、出光面6から出射された光を所定の光分布のものにするようになっている(
図10の例では、光学システム(例えば灯具)の光軸方向X2(この例では、光学レンズ2の光軸X2と同じ方向となっている)へ平行光にするようになっている)。この場合、本発明では、上述したような光学モジュール10が用いられることにより(光学レンズ2の焦点(集光点)F0の位置を極めて容易に把握することができ、光学レンズ2の焦点(集光点)F0における光の集光幅(面積)を小さくすることができることにより)、集光レンズ14、反射面15の設計が極めて容易となる(視覚的に設計、検討することができる)。
【0028】
具体的に、光学システムとして例えばスポットレンズを設計する際に、本発明では、上述したような光学モジュール10が用いられることにより(光学レンズ2の焦点(集光点)F0における光の集光幅(面積)を小さくすることができることにより)、光源面積を小さな扱いで設計できるので、従来に比べて、スポット光をより容易に得ることができる。
【0029】
なお、上述の例では、光学レンズ2の第1の入光面3、第2の入光面4、全反射面5は、これに対応する光源1の光軸X1を回転軸とした回転体形状であるとしたが、光学レンズ2の第1の入光面3、第2の入光面4、全反射面5を多角形形状(例えば8角形形状など)のものにすることも可能である。
【0030】
また、上述した光学システムにより、灯具を構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、スポットライト照明、ビームライト照明、ライトアップ照明等の一般照明全般に利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 光源
2 光学レンズ
3 第1の入光面
4 第2の入光面
5 全反射面
6 出光面
10 光学モジュール
12 光学系
13、14 集光レンズ
15 反射面