特許第5872265号(P5872265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5872265
(24)【登録日】2016年1月22日
(45)【発行日】2016年3月1日
(54)【発明の名称】酸化染毛料第1剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20160216BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20160216BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20160216BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20160216BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20160216BHJP
   A61K 8/23 20060101ALI20160216BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20160216BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20160216BHJP
   A61K 8/22 20060101ALI20160216BHJP
【FI】
   A61K8/49
   A61Q5/10
   A61K8/41
   A61K8/34
   A61K8/67
   A61K8/23
   A61K8/46
   A61K8/44
   A61K8/22
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-260280(P2011-260280)
(22)【出願日】2011年11月29日
(65)【公開番号】特開2013-112641(P2013-112641A)
(43)【公開日】2013年6月10日
【審査請求日】2014年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】楊 玉亭
(72)【発明者】
【氏名】平野 祐司
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−521925(JP,A)
【文献】 特開平07−267836(JP,A)
【文献】 特開2008−285415(JP,A)
【文献】 特開2003−160453(JP,A)
【文献】 特表2012−524080(JP,A)
【文献】 特表2004−536793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分A、B、C及びDを含み、成分Aと成分Bのモル比(成分A/成分B)が0.05〜0.55である酸化染毛料第1剤。
成分A:3-メチル-1-(p-トリル)-5-ピラゾロン
成分B:トルエン-2,5-ジアミン又はその塩及びパラアミノフェノール又はその塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のプレカーサー
成分C:オルトアミノフェノール又はその塩、メタアミノフェノール又はその塩、4-アミノ-2-ヒドロキシトルエン(5-アミノオルトクレゾール)又はその塩及びレゾルシノールよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を全カップラー中の75質量%以上含むカップラー
成分D:アスコルビン酸又はその塩、亜硫酸又はその塩、亜硫酸水素又はその塩、チオ乳酸又はその塩、システアミン又はその塩、システイン又はその塩、及びチオグリコール酸又はその塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の水溶性還元性化合物
【請求項2】
成分Aに対する成分Dのモル比(成分D/成分A)が6〜0.1である請求項1記載の酸化染毛料第1剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の酸化染毛料第1剤と過酸化水素を含有する酸化染毛料第2剤を含む染毛料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均染性に優れた酸化染毛料第1剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪を永久的に染色する場合、一般に、アルカリ剤、酸化剤等の共存下でのプレカーサーとカップラーの酸化カップリング反応からの生成物を利用する染毛料を使用する。この染毛料の重要な機能の一つとして、均染性(均一に染まること)が挙げられる。この均染性を妨げる要因、すなわち不均一な染まりの原因としては、染毛剤の第1剤と第2剤の混合ムラ、毛髪への染毛剤の塗布ムラ、毛髪の部位毎でのダメージの程度差などが挙げられるが、近年、日常的に染毛剤を使用する習慣が根付き、根元と毛先でのダメージの程度差による不均一な染まりは、より深刻な問題となりつつある。
【0003】
毛髪の部位毎でのダメージの程度差に起因する不均一な染まりを改善する技術として、種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸モノエタノールアミド等のレベリング剤を染毛剤に配合し染料が繊維に吸着する状態を制御することで、最終染色の均染性を改善する技術が開示されている。特許文献2では、予め塩基性染料を含む前処理剤によりダメージした髪を処理した後に、通常の酸化カップリング反応生成物を利用した染毛剤で処理することで、健康毛髪から損傷毛髪までを均一に染めることができる技術が開示されている。特許文献3では、(a)室温で固形の炭化水素類及び/又はロウ類、(b)グリセリン及び/又はポリグリセリン、(c)ノニオン界面活性剤、並びに(d)特定の四級アンモニウム塩を含む染毛剤で処理することで、毛髪の根元から毛先まで均一に染めることができる技術が開示されている。特許文献4では、脂肪性物質、ジアミノピラゾロン酸化塩基、及び当該酸化塩基以外の染料前駆物質を含む染毛剤で処理することで、毛髪の根元から毛先まで均一に染めることができる技術が開示されている。しかし、いずれの技術も、現状の過度なダメージ状態の毛先部分と根元部分の均染性の達成には不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-035539号公報
【特許文献2】特開2003-252729号公報
【特許文献3】特開2008-056606号公報
【特許文献4】特開2010-143905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、毛髪の部位毎でのダメージの程度差に関わらず、根元から毛先まで均一に染色できる酸化染毛料第1剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、一般式(1)で示されるメチルピラゾロン化合物、特定の選択肢から選ばれるプレカーサー、特定の選択肢から選ばれるカップラーを含み、上記メチルピラゾロン化合物と上記プレカーサーのモル比を一定範囲内とした酸化染毛料第1剤により、毛髪の部位毎で異なるダメージの程度差に関わらず、根元から毛先まで均一に染色できることを見出した。
【0007】
本発明は、次の成分A、B、C及びDを含み、成分Aと成分Bのモル比(成分A/成分B)が0.05〜0.55である酸化染毛料第1剤を提供するものである。
成分A:一般式(1)で表されるメチルピラゾロン化合物
【0008】
【化1】
【0009】
〔式中、Rは炭素数6〜9のアリール基を示す。〕
成分B:トルエン-2,5-ジアミン又はその塩及びパラアミノフェノール又はその塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のプレカーサー
成分C:オルトアミノフェノール又はその塩、メタアミノフェノール又はその塩、4-アミノ-2-ヒドロキシトルエン(5-アミノオルトクレゾール)又はその塩及びレゾルシノールよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を全カップラー中の75質量%以上含むカップラー
成分D:アスコルビン酸又はその塩、亜硫酸又はその塩、亜硫酸水素又はその塩、チオ乳酸又はその塩、システアミン又はその塩、システイン又はその塩、及びチオグリコール酸又はその塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の水溶性還元性化合物
【0010】
また本発明は、酸化染毛料第1剤と過酸化水素を含有する酸化染毛料第2剤を含む染毛料を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の酸化染毛料第1剤は、毛髪の部位毎で異なるダメージの程度差に関わらず、根元から毛先まで均一に染色することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の作用機構は、酸化カップリング反応抑制剤(成分A)及び染料成分(成分Bのプレカーサー及び成分Cのカップラー)の毛髪への浸透挙動と、酸化カップリング反応抑制剤(成分A)の主な作用部位(毛髪の内部又は外部)によって説明することができる。すなわち、毛髪のダメージが進行した部位のように、酸化カップリング反応抑制剤及び染料成分の両者が毛髪内部へ浸透しやすい条件では、酸化カップリング反応抑制剤は主に毛髪内部で機能するため、酸化カップリング反応抑制剤の配合量に比例して染色性は低下する傾向を示す。一方、毛髪の健常な部分のように、酸化カップリング反応抑制剤及び染料成分の両者が浸透しにくい条件では、適量範囲で添加された酸化カップリング反応抑制剤は、毛髪外部での酸化カップリング反応を抑制し、未反応の染料成分の毛髪への浸透機会を高めることから、染色性を改善させるが、適量範囲を超えて過剰に酸化カップリング反応抑制剤を添加すると、毛髪外部だけでなく毛髪内部での酸化カップリング反応までも抑制することから、逆に染色性を悪化させることになる。
【0013】
このように、一般に、酸化カップリング反応抑制剤の添加量と染色性の間には、毛髪のダメージ部と健常部とでそれぞれ異なる関係性が存在する。ここにおいて本発明者は、カップラー、プレカーサー及びカップリング反応抑制剤としてそれぞれ特定の化合物を使用した場合において、毛髪のダメージ部と健常部との染色性の差が小さくなる、すなわち、高い均染性効果の得られる毛髪の処理条件が、酸化カップリング反応抑制剤(成分A)とプレカーサー(成分B)のモル比によって関係付けられることを見出した。
【0014】
〔成分A:メチルピラゾロン化合物=酸化カップリング抑制剤〕
成分Aのメチルピラゾロン化合物は一般式(1)で表され、当該式中のRは炭素数6〜9のアリール基であるが、均染性には不都合な、染料成分が毛髪に浸透する前における酸化カップリング反応の抑制効果に優れると共に、染色性に悪影響を与えない、という観点から、Rとしてはフェニル基、p-トリル基が好ましい。すなわち、成分Aのメチルピラゾロン化合物としては、1-フェニル-3-メチル-5-ピラゾロン、3-メチル-1-(p-トリル)-5-ピラゾロンが好ましい。これらは、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
本発明の酸化染毛料第1剤中における成分Aの含有量は、毛髪外部での酸化カップリング反応を抑制し、未反応の染料成分の毛髪への浸透機会を高める観点から、好ましくは0.009以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上である。また、毛髪内部における酸化カップリング反応の過度な抑制を避ける観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。すなわち、0.009〜20質量%、更には0.01〜15質量%、特に0.05〜10質量%が好ましい。
【0016】
〔成分B:プレカーサー〕
本発明で使用するプレカーサーは、トルエン-2,5-ジアミン又はその塩、パラアミノフェノール又はその塩よりなる群から選ばれ、塩としては、塩酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酢酸が挙げられる。これらのうち、ダメージの程度が比較的小さい健常部での染色性の良さの観点から、塩ではなくトルエン-2,5-ジアミン、パラアミノフェノールそれ自体がより好ましい。これらは、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
本発明の酸化染毛料第1剤中における成分Bの含有量は、0.01〜20質量%、更に0.1〜15質量%、特に0.5〜10質量%が好ましい。
【0018】
更に、均染性には不都合な、染料成分が毛髪に浸透する前における酸化カップリング反応の抑制効果に優れると共に、染色性に悪影響を与えない、という観点から、成分Aと成分Bのモル比(成分A/成分B)が、0.05〜0.55であることを要するが、0.07〜045、特に0.08〜0.35であることが好ましい。
【0019】
〔成分C:カップラー〕
本発明で使用するカップラーは、特定のカップラーがカップラー全体の75質量%以上を占めるものである。この特定のカップラーは、オルトアミノフェノール又はその塩、メタアミノフェノール又はその塩、4-アミノ-2-ヒドロキシトルエン(5-アミノオルトクレゾール)又はその塩及びレゾルシノールよりなる群から選ばれ、その塩は、塩酸塩、炭酸塩、硫酸塩及び酢酸などが挙げられる。これらのうち、成分Aの使用量を抑制できることによる染料の発色性の改善効果の観点から、塩ではなくレゾルシノール、メタアミノフェノール、5-アミノオルトクレゾール、オルトアミノフェノールそれ自体がより好ましい。これら成分Cに用いられる特定のカップラーは、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
上記特定のカップラー以外のカップラーはカップラー全体の25質量%以下であることが必要であるが、好ましくはカップラー全体の10質量%以下である。
【0021】
酸化染毛料第1剤中における成分Cの含有量は、0.009〜20質量%、更には0.01〜15質量%、更には0.05〜10質量%が好ましく、特に0.1〜5質量%が好ましい。
【0022】
〔成分D:水溶性還元性化合物〕
水溶性還元性化合物は、本発明の酸化染毛料第1剤の保存安定性及び均染性を向上させる機能を有する。水溶性還元性化合物の具体例としては、アスコルビン酸又はその塩、亜硫酸又はその塩、亜硫酸水素又はその塩、チオ乳酸又はその塩、システアミン又はその塩、システイン又はその塩、チオグリコール酸又はその塩が挙げられ、塩としては、アルカリ金属塩、塩酸塩、モノエタノール塩が挙げられる。これらのうち、より優れた均染性を達成する観点から、アスコルビン酸又はその塩、亜硫酸又はその塩、亜硫酸水素又はその塩、チオグリコール酸又はその塩が好ましく、更に、アスコルビン酸又はその塩、亜硫酸又はその塩が好ましい。これら水溶性還元性化合物は、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
また、より優れた均染性を達成する観点から、成分Aに対する成分Dのモル比(成分D/成分A)は、6〜0.1が好ましい。
【0024】
〔アルカリ剤〕
酸化染毛料第1剤は、アルカリ剤を含有する必要がある。使用できるアルカリ剤としては、アンモニア、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノブタノール等のアルカノールアミン及びその塩;1,3-プロパジアミン等のアルカンジアミン及びその塩;炭酸グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩等が挙げられ、本発明の均染性性能を高める観点から、骨格内に窒素原子を含むアルカリ剤が好ましく、更にアンモニア、モノエタノールアミンが好ましい。これらは、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
本発明の染色剤組成物第1剤中におけるアルカリ剤の含有量は、0.01〜20質量%、更に0.1〜10質量%、特に0.5〜5質量%が好ましい。
【0026】
〔界面活性剤、油剤〕
酸化染毛料第1剤を種々の剤型へ製剤する際には、界面活性剤及び油剤を用いることかできる。
【0027】
界面活性剤としては、染色性、均染性及び使用感の観点から、アルキル基の炭素数が6〜22で糖部分の重合度が1〜5であるアルキルグルコシド、及びHLBが7〜20の非イオン界面活性剤よりなる群から選ばれるものが好ましく、アルキル基の炭素数が8〜16で糖部分の重合度が1〜3であるアルキルグルコシド、HLBが7〜20のポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましい。これらの界面活性剤は、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、本発明の染色剤組成物第1剤中における含有量は、0.1〜20質量%、更に0.3〜15質量%、特に0.5〜10質量%が好ましい。
【0028】
油剤としては、脂肪族アルコール、脂肪酸、パラフィン、エステル油よりなる群から選ばれるものが好ましく、脂肪族アルコール、脂肪酸がより好ましい。これらの油剤は、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、本発明の染色剤組成物第1剤中における含有量は、0.1〜20質量%、更に0.3〜15質量%、特に0.5〜10質量%が好ましい。
【0029】
〔pH〕
本発明の酸化染毛料第1剤は、均染性と染毛時のヘアダメージの低減の観点から、pH8.0〜12.0、更にpH9.0〜11.5、特にpH10.0〜11.0に調整するのが好ましい。
【0030】
〔直接染料〕
更に、調色上に必要であれば、酸化染毛料第1剤に利用可能である公知の酸性染料、塩基性染料、分散染料等の直接染料を用いることができる。酸性染料としては、例えば、青色1号、紫色401号、黒色401号、だいだい色205号、赤色227号、黄色203号及び酸性橙3等が挙げられ、塩基性染料としては、例えば、塩基性青99、塩基性茶16、塩基性茶17、塩基性赤76及び塩基性黄57等が挙げられ、酸性染料及び塩基性染料以外の直接染料としては、例えば、2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、3-ニトロ-p-ヒドロキシエチルアミノフェノール、4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、4-アミノ-3-ニトロフェノール、4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノール、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、分散紫1、分散青1、分散黒9、HC青2、HC橙1、HC赤1、HC赤3、HC黄2、HC黄4及びHC黄5等が挙げられる。
【0031】
〔その他の成分〕
本発明の酸化染毛料第1剤には、上述した成分以外に、通常の化粧品や染毛料分野で用いられる成分を、目的に応じて加えることができる。このような任意の成分としては、例えば、起泡剤、乳化剤、溶剤、感触向上剤、毛髪補修剤、キレート剤、増粘剤、防腐剤、保湿剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、香料などが挙げられる。
【0032】
本発明の酸化染毛料第1剤は、現在広く利用されている酸化型染毛剤と同様に、アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤よりなる二剤式として提供される。これらの第1剤及び第2剤の剤形は、例えば、液状、泡状、乳液、クリーム、ゲル、ペースト等とすることができ、エアゾール形態とすることもできる。
【0033】
〔剤型等〕
本発明の酸化染毛料第1剤は、現在広く利用されている酸化型染毛剤と同様に、過酸化水素等の酸化剤を含有する第2剤と組み合わせた二剤型として、又は脱色力向上のため、更に第3剤として過硫酸塩(過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等)等の造粒物からなる粉末状酸化剤を組み合わせてなる三剤型として提供される。第1剤及び第2剤の剤形は、例えば、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、ムース状などとすることができ、エアゾール形態とすることもできる。第1剤と第2剤(三剤型の場合は更に第3剤)を混合し、毛髪に塗布したときに液だれしにくいような粘度になることが望ましく、25℃、ヘリカルスタンド付きB型回転粘度計(B8R型粘度計,TOKIMEC社)で測定した粘度が2000〜10万mm2/sが好ましい。ここで、粘度は、ローターT-Cを用い、10rpm、1分間回転させた後の値とする。
【0034】
第2剤に使用される酸化剤としては、過酸化水素、及び過酸化水素発生剤である過酸化尿素、過酸化メラミン、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム等が挙げられ、特に過酸化水素が好ましい。酸化剤の含有量は、十分な脱色・染毛効果、及び毛髪損傷や頭皮刺激の低減の点から、過酸化水素換算量として、第2剤組成物中の0.1〜12重量%が好ましく、更には0.5〜9重量%、特に1〜6重量%が好ましい。
【0035】
〔処理法〕
本発明の酸化染毛料第1剤を用いて毛髪を染色又は脱色処理するには、例えば本発明の第1剤を、酸化剤を含有する第2剤(三剤型の場合は更に第3剤)と混合した後、15〜45℃の温度で毛髪に適用し、3〜45分間、好ましくは15〜30分間の作用時間をおいた後毛髪を洗浄し、乾燥すればよい。この場合、まず染毛剤又は脱色剤組成物を水で軽く洗い流した後、アニオン界面活性剤を含有するシャンプーを用いて洗髪し、次いで水洗すると、カチオン性ポリマーは適度に流出し、シリコーン類は適度に毛髪に残留し、良好なコンディショニング効果を示す。シャンプーとしては、ラウリルエトキシ(1〜3)硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤を5〜20重量%程度含有する一般的な水性シャンプーが好適である。
【0036】
本発明の技術思想は、以下の実施形態を包含するものである。
(1) 次の成分A、B、C及びDを含み、成分Aと成分Bのモル比(成分A/成分B)が0.057〜0.533である酸化染毛料第1剤。
成分A:一般式(1)で表されるメチルピラゾロン化合物
【0037】
【化2】
【0038】
〔式中、Rは炭素数6〜9のアリール基を示す。〕
成分B:トルエン-2,5-ジアミン又はその塩及びパラアミノフェノール又はその塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のプレカーサー
成分C:オルトアミノフェノール又はその塩、メタアミノフェノール又はその塩、4-アミノ-2-ヒドロキシトルエン(5-アミノオルトクレゾール)又はその塩及びレゾルシノールよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を全カップラー中の75質量%以上含むカップラー
成分D:アスコルビン酸又はその塩、亜硫酸又はその塩、亜硫酸水素又はその塩、チオ乳酸又はその塩、システアミン又はその塩、システイン又はその塩、及びチオグリコール酸又はその塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の水溶性還元性化合物
(2) 成分Aのメチルピラゾロン化合物が、1-フェニル-3-メチル-5-ピラゾロン又は3-メチル-1-(p-トリル)-5-ピラゾロンである上記(1)の酸化染毛料第1剤。
(3) 成分Aの含有量が、0.009〜20質量%、好ましくは0.01〜15質量%、より好ましくは0.05〜10質量%である、上記(1)又は(2)の酸化染料第1剤。
(4) 成分Bの含有量が、0.01〜20質量%、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である、上記(1)〜(3)の酸化染料第1剤。
(5) 成分Aと成分Bのモル比(成分A/成分B)が、0.050〜0.50、好ましくは0.065〜045、より好ましくは0.080〜0.35である、上記(1)〜(4)の酸化染料第1剤。
(6) 成分Cの含有量が、0.009〜20質量%、好ましくは0.01〜15質量%、より好ましくは0.05〜10質量%である、上記(1)〜(5)の酸化染料第1剤。
(7) 成分Aに対する成分Dのモル比(成分D/成分A)が、6〜0.1である、上記(1)〜(6)の酸化染料第1剤。
(8) 上記(1)〜(7)のいずれかの酸化染毛料第1剤と過酸化水素を含有する酸化染毛料第2剤を含む染毛料。
【実施例】
【0039】
例1〜9
表1に示す酸化染毛料第1剤、表2に示す酸化染毛料第2剤を調製し、下記の染毛方法に従いヘアトレスを染色し、次いで下記の染色性評価方法に従い均染性を評価し、その結果を表3にまとめた。
【0040】
<染毛工程>
表1に示す酸化染毛料第1剤と表2に示す酸化染毛料第2剤を調製した。第1剤と第2剤を質量比1:1.5で混合し、浴比(剤:毛髪の質量比)=1:1で毛束に塗布した後、剤がヘアトレス全体に行き渡るように刷毛で馴染ませた。30℃で20分間放置し後、毛束を水で30秒間すすぎ流し、次いで市販のシャンプーで2度洗いし(シャンプーを浴比1:0.2で塗布した後、15秒泡立て、水で15秒すすぐ)、最後に冷風乾燥した
【0041】
<染色性評価>
前記の染毛工程に従い、白髪のブリーチ処理した毛束(ダメージモデル毛)と健常毛束を染色した。それぞれの毛束の染まりについて、コニカミノルタ センシング社製の色彩色差計CR-400にてCIE表色系(L*,a*,b*)で3箇所計測して下記式によりΔEを算出し、その平均値を表3に示す。ダメージ毛と健常毛のΔEの差が小さいほど、均染性が高い。
【0042】
ΔE=[(L2*−L1*)2+(a2*−a1*)2+(b2*−b1*)2]1/2
〔式中、L1*、a1*及びb1*は染毛前、L2*、a2*及びb2*は染毛後の測色値を示す。〕
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
表3より、均染性が2.9以下となる成分Aと成分Bのモル比が0.05〜0.55の範囲である場合(例3〜5)に、良好な均染性が得られることが分かる。一方、例8の染色性評価の結果から、たとえ、成分Aと成分Bのモル比が本発明の範囲内であっても、カップラー中の特定化合物の比率が低い(カップラーが成分Cとしての要件を満たさない)場合は、均染性が低下することが分かる。
また、例9の染色性評価の結果から、成分D(水溶性還元物質)を含有しない場合にも均染性が低下することが分かる。
【0047】
例10
(酸化染毛料第1剤)
INCI名 (質量%)
1-フェニル-3-メチル-5-ピラゾロン(成分A) 0.75
パラアミノフェノール(成分B) 0.1
トルエン-2,5-ジアミン(20質量%)(成分B) 1.1
5-アミノオルトクレゾール(成分C) 0.4
アスコルビン酸 0.4
無水亜硫酸ナトリウム 0.5
デシルグリコシド 13.0
ラウレス-23 3.0
12-14セク-パレス-9 3.0
ミリスチルアルコール 0.5
アンモニア(28質量%) 5.0
エタノールアミン 3.0
プロピレングリコール 5.0
エタノール 10.0
ラウレス-6 カルボン酸ナトリウム 10.0
テトラナトリウム EDTA 0.1
精製水 残量
成分Aと成分Bのモル比:0.43
【0048】
(酸化染毛料第2剤)
INCI名 (質量%)
過酸化水素(35質量%) 14.3
ステアリルトリモンニウムクロライド 2.5
セテアリルアルコール 0.7
ミリスチルアルコール 0.3
セテス-40 0.5
オキシキノリン硫酸塩 0.05
エチドロン酸 0.1
水酸基ナトリウム(48質量%) 0.03
精製水 残量
【0049】
上記の酸化染毛料第1剤と酸化染毛料第2剤は、フォーマー容器内で混合し、該容器から泡の状態で吐出させ、髪に馴染ませる泡タイプの酸化染毛料である。
上記の酸化染毛料第1剤と第2剤とを、質量比1:1.5でフォーマー容器内において混合し、浴比(剤:毛髪)=1:0.7で毛束に塗布した後、剤がヘアトレス全体に行き渡るように手袋を着用した手で直接馴染ませた。30℃で30分間放置した後、毛束を水で30秒間すすぎ流し、次いで市販のシャンプーで2度洗いし(シャンプーを浴比1:0.2で塗布した後、15秒泡立て、水で15秒すすぐ)、最後に冷風乾燥した。測色した結果、ダメージ毛と健常毛のΔEの差は2.1であった。
【0050】
例11
(酸化染毛料第1剤)
INCI名 (質量%)
1-フェニル-3-メチル-5-ピラゾロン(成分A) 0.5
パラアミノフェノール(成分B) 0.1
トルエン-2,5-ジアミン(20質量%)(成分B) 1.1
5-アミノオルトクレゾール(成分C) 0.40
アスコルビン酸 0.5
無水亜硫酸ナトリウム 0.3
セテス-2 2.0
セテス-40 2.5
オレイルアルコール 1.0
セテアリルアルコール 6.5
ベヘニルアルコール 2.0
アンモニア(28質量%) 0.5
エタノールアミン 3.5
プロピレングリコール 3.0
ジメチコン及びアミドメチコン 3.0
ポリクオタニウム-22 3.0
ステアリルトリモニウムクロライド 3.0
ジ-C12-18アリキルジモニウムクロライド 0.4
テトラナトリウム EDTA 0.1
精製水 残量
成分Aと成分Bのモル比:0.29
【0051】
(酸化染毛料第2剤)
INCI名 (質量%)
過酸化水素(35質量%) 14.3
ベヘントリモニウムクロライド 3.5
セテアレス-13 4.0
ベヘニルアルコール 5.0
セテアリルアルコール 3.0
ミネラルオイル 18.0
グリセリン 6.0
オキシキノリン硫酸塩 0.05
エチドロン酸 0.1
水酸基ナトリウム(48質量%) 0.03
精製水 残量
【0052】
上記の酸化染毛料第1剤と酸化染毛料第2剤は、混合後にクリーム状を呈し、手や刷毛を用いて髪に馴染ませるクリームタイプの酸化染毛料である。
上記の酸化染毛料第1剤と第2剤とを、質量比1:1.5で混合した後、浴比(剤:毛髪)=1:1で毛束に塗布した後、剤がヘアトレス全体に行き渡るように刷毛で馴染ませた。30℃で20分間放置した後、毛束を水で30秒間すすぎ流し、次いで市販のシャンプーで2度洗いし(シャンプーを浴比1:0.2で塗布した後、15秒泡立て、水で15秒すすぐ)、最後に冷風乾燥した。測色した結果、ダメージ毛と健常毛のΔEの差は1.5であった。